説明

液状蓄光材料及びそれを用いた蓄光体の製造方法

【課題】 熱硬化性液状樹脂中に多量の蓄光顔料を混合することができ、かつ、硬化特性の良好な液状蓄光材料を提供する。
【解決手段】 主鎖がポリオキシアルキレンで末端にアリル基が結合している末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、液状樹脂を硬化させるための硬化剤と、液状樹脂と硬化剤との硬化反応を促進させるための硬化触媒と、ストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料とを含有する液状蓄光材料である。硬化剤としては、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物が用いられる。硬化触媒としては、白金錯体系触媒が用いられる。この液状蓄光材料を基材シートに塗布して後、加熱させて硬化させることにより、蓄光体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昼間の光エネルギーを吸収し、夜間に放光して発光する蓄光体を得るための液状蓄光材料に関するものである。また、この液状蓄光材料を用いて蓄光体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夜間に発光する蓄光体は、従来より各種用途に用いられている。たとえば、公共施設等の案内板や避難誘導標識等に蓄光体を用い、夜間に視認しうるようにして、安全又は防災を図っている。また、衣料品、身の回り品又は自転車等に蓄光体を貼付して用い、夜間に視認しうるようにして、交通安全を図っている。その他にも、趣向性向上のためにアクセサリーに用いられたり、夜釣りに便利なように釣り針等の漁具に用いられたりしている。
【0003】
蓄光体は、基本的には蓄光顔料とこの蓄光顔料を保持するための樹脂とよりなるものである。また、場合によっては、これに基材シート等が貼着されている場合もある。蓄光体を製造する方法としては、種々の方法が採用され又は提案されている。具体的には、(i)塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に、蓄光顔料を混練した後、これをシート状に押し出して蓄光体を製造する方法、(ii)アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂を有機溶剤に溶解させた樹脂溶液に、蓄光顔料を添加混合した後、この樹脂溶液を基材シート等に塗布し、有機溶剤を揮発させ固化させて蓄光体を製造する方法、(iii)水性アクリルエマルジョンや水性酢酸ビニルエマルジョン等の水性エマルジョンに、蓄光顔料を添加混合した後、このエマルジョンを基材シート等に塗布し、水を蒸発させ固化させて蓄光体を製造する方法、(iv)紫外線硬化性常温液状樹脂に、蓄光顔料を添加混合した後、この液状樹脂を基材シート等に塗布し、紫外線を照射して液状樹脂を硬化させて蓄光体を製造する方法、(v)熱硬化性常温液状樹脂に、蓄光顔料を添加混合した後、この液状樹脂を基材シート等に塗布し、熱を付与して液状樹脂を硬化させて蓄光体を製造する方法(特許文献1)が挙げられる。
【0004】
ところで、蓄光体に高輝度を実現するためには、蓄光体中に多量の蓄光顔料を混合させる必要がある。しかしながら、前記した方法では、多量の蓄光顔料を混合させることが困難であった。すなわち、前記(i)の方法では、多量の蓄光顔料を混合させて混練機で混練すると、蓄光顔料によって混練機の金属製攪拌羽や金属製内壁が削られて、蓄光体に金属粉が混入し、所望の燐光輝度が得にくいということがあった。前記(ii)の方法では、多量の蓄光顔料を混合させると、樹脂溶液が混合時に高粘度化して、基材シート等に塗布しにくくなり、蓄光体が得にくくなるということがあった。また、有機溶剤を使用しているため、蓄光体中の残留有機溶剤によって異臭がするということもあった。前記(iii)の方法においても、多量の蓄光顔料を混合させると、水性エマルジョンが混合時に高粘度化して、基材シート等に塗布しにくくなり、蓄光体が得にくくなるということがあった。前記(iv)の方法では、多量の蓄光顔料を混合させると、照射した紫外線を蓄光顔料が吸収し、紫外線硬化性液状樹脂の硬化が阻害され、十分に硬化した蓄光体が得にくいということがあった。
【0005】
特許文献1記載の(v)の方法は、具体的には、常温で液状の無溶剤型のカチオン重合性エポキシ樹脂に、蓄光顔料を混合して、基材シートに塗布した後、熱を与えてエポキシ樹脂を硬化させて蓄光体を得る方法である。しかしながら、この方法においては、カチオン重合性エポキシ樹脂に多量の蓄光顔料を混合すると、エポキシ樹脂が硬化しにくく、十分に硬化した蓄光体が得られにくくなるということがあった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−241052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のとおり、前記(i)〜(v)の方法は、いずれも樹脂中に多量の蓄光顔料を混合した蓄光体が得にくくなるのであるが、その原因を分類すれば、次のとおりである。前記(i)の方法は混練機による混練に原因があり、前記(ii)及び(iii)の方法は多量の蓄光顔料を混合すると塗布に適した粘度を持つ溶液形態が保てないところに原因があり、前記(iv)及び(v)は蓄光顔料を混合した後の硬化特性に原因がある。本発明は、基本的に前記(v)の方法を用いながら、硬化特性を阻害することなく、熱硬化性液状樹脂中に多量の蓄光顔料を混合させうるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、多種多数の熱硬化性液状樹脂を用い、多種多数の蓄光顔料を用いて、膨大な実験を行った。その結果、特定の熱硬化性液状樹脂と特定の蓄光顔料を組み合わせれば、蓄光顔料に対する熱硬化性液状樹脂の親和性が極めて良好で多量の蓄光顔料を混合することができ、かつ、硬化特性を阻害しないことを発見した。本発明は、このような発見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、主鎖がポリオキシアルキレンで末端にアリル基が結合している末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、該液状樹脂を硬化させるための硬化剤と、該液状樹脂と該硬化剤との硬化反応を促進させるための硬化触媒と、ストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料とを含有することを特徴とする液状蓄光材料に関するものである。また、この液状蓄光材料を用いて蓄光体を製造する方法、及びこの方法によって得られた蓄光体に関するものである。
【0009】
本発明で用いる熱硬化性樹脂は、末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂である。ここで、末端アリル化ポリオキシアルキレンとは、主鎖がポリオキシアルキレンで末端にアリル基が結合している化合物である。主鎖を構成するポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が用いられる。ポリオキシアルキレンの重合度は、200〜600程度である。重合度が低いと得られる蓄光体の機械的強度が不十分となり、逆に重合度が高いと液状樹脂の粘度が高くなりすぎ蓄光顔料を混合しにくくなる傾向が生じる。末端アリル化ポリオキシアルキレンは、たとえば、ポリオキシアルキレングリコールにアリルクロライドを添加して、加熱して反応させれば、得ることができる。しかしながら、このような方法に限定されず、従来公知の他の方法でも得ることもできる。なお、本発明で用いる末端アリル化ポリオキシアルキレンは、蓄光体の母体となるものであるから、基本的には無色透明であることは言うまでもない。
【0010】
本発明では、末端アリル化ポリオキシアルキレンのアリル基と結合して、末端アリル化ポリオキシアルキレンを硬化させるための硬化剤を併用する。このような硬化剤としては、従来公知の任意の化合物を採用することができる。本発明においては、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物が硬化剤として好適である。具体的には、特許第2866181号公報に記載されている、分子中に3〜12個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物が用いられる。
【0011】
また、本発明では、末端アリル化ポリオキシアルキレンと硬化剤との硬化反応を促進させるための硬化触媒が用いられる。この硬化触媒としても、従来公知の任意の化合物を採用することができる。硬化剤として、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物を用いた場合には、硬化触媒として白金を用いるのが好ましい。白金は、白金単体でも、白金単体をアルミナ等の担持体に担持させたものでも、また白金錯体系のものであってもよい。本発明においては、特に白金錯体系触媒を用いるのが好ましい。白金錯体系触媒としては、白金/オレフィン錯体、白金/ビニルシロキサン錯体、白金/ホスフィン錯体、白金/ホスファイト錯体等が用いられる。なお、白金錯体系触媒は、一般的にアルコールに溶解させた溶液の形態で用いられる。
【0012】
本発明で用いる蓄光顔料は、ストロンチウムアルミネートを主成分とするものである。スチロンチウムアルミネートは、昼間におけるX線、紫外線又は可視光線等の光エネルギーを吸収し、夜間に緑色の燐光を発するものである。したがって、蓄光顔料として使用しうるものである。このスチロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料は、末端アリル化ポリオキシアルキレンとの親和性が良好で、末端アリル化ポリオキシアルキレンに多量に混合することができる。
【0013】
本発明に係る液状蓄光材料は、末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂に、硬化剤、硬化触媒及び蓄光顔料を添加混合することにより得られる。各成分は、その成分の機能を十分に発揮しうる程度の量で、添加混合される。すなわち、硬化剤については、硬化剤が持っているハイドロシリル基等の官能基が、アリル基と結合して硬化するのであるから、ハイドロシリル基等の官能基がアリル基に対して化学量論的に当量以上添加混合すれば、十分に硬化する。硬化触媒は反応を促進させる作用を奏する程度の量で添加混合されるのであるが、一般的にこれは微量でよい。蓄光顔料も所望の輝度を呈する程度に添加混合すればよい。ストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料は、末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂に多量に添加混合しうるものであるから、液状樹脂100質量部に対して、蓄光顔料を300質量部以上添加混合するのが好ましい。
【0014】
本発明に係る液状蓄光材料は、熱硬化性常温液状樹脂に、硬化剤、硬化触媒及び蓄光顔料を含有するものであるが、その他の第三成分が若干量混合されていてもよい。たとえば、予期せぬ硬化を防止するため、マレイン酸ジメチル等の硬化抑制剤を混合しておいてもよい。また、得られた蓄光体の劣化を防止するため、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤を混合してもよい。さらに、得られた蓄光体の耐候性を向上させるため、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤を混合してもよい。また、得られた蓄光体に粘着剤層を設ける際に、この粘着剤層との接着性を向上させるために、スチレン系オリゴマー等からなる粘着付与樹脂を混合してもよい。
【0015】
本発明に係る液状蓄光材料は、熱硬化性樹脂である末端アリル化ポリオキシアルキレンを母体とするものであるから、液状蓄光材料に熱を付与することにより、末端アリル化ポリオキシアルキレンが硬化し、蓄光体を得ることができる。加熱によって熱を付与する場合、100℃前後でよく、また加熱時間は数分〜数十分程度でよい。本発明に係る液状蓄光材料は、常温液状樹脂を母体とするものであるから、液状蓄光材料も室温で液状であり、取り扱いやすく、一般的な生産工程に容易に適用しうるものである。
【0016】
本発明に係る液状蓄光材料を用いて得られた蓄光体は、種々の形態があるため、その形態に則した製造方法が採用される。たとえば、合成樹脂製フィルム、合成樹脂製シート、編織物、不織布又は紙等の基材シートに蓄光本体を担持させた、基材シート付き蓄光体を製造する場合には、以下のようにする。すなわち、本発明に係る液状蓄光材料を基材シートに塗布した後、この液状蓄光材料に熱を付与することにより、液状蓄光材料を硬化させて、基材シート付き蓄光体を得る。基材シートの全面に蓄光本体を担持させる場合には、基材シート全面に液状蓄光材料を塗布すればよい。また、基材シートに模様状や図柄状等の部分的に蓄光本体を担持させる場合には、基材シートに部分的に液状蓄光材料を塗布すればよい。
【0017】
基材シートを具備しないシート状の蓄光体を得る場合には、液状蓄光材料を離型シートに塗布した後、この液状蓄光材料に熱を付与することにより、液状蓄光材料を硬化させ、その後離型シートを除去することによって、シート状蓄光体を得る。シート状蓄光体は、部分的に貫通孔を設けて不連続なシートとしてもよいし、貫通孔の存在しない連続シートとしてもよい。後者のシート状蓄光体を得るには、離型シート上に全面に液状蓄光材料を塗布すればよい。また、前者のシート状蓄光体の場合には、貫通孔に対応する箇所には液状蓄光材料を塗布せず、その他の箇所に液状蓄光材料を塗布すればよい。前者のシート状蓄光体は、貫通孔によって、所望の模様や図柄等を現出することができる。
【0018】
本発明に係る液状蓄光材料を用いて得られた蓄光体は、従来公知の各種の用途に適宜用いられる。たとえば、基材シート付き蓄光体の場合には、基材シートの他面(蓄光本体を担持されているのと反対面)に粘着剤層を設けて、蓄光粘着シート又はテープとすることもできる。また、シート状蓄光体の場合には、片面に粘着剤層を設けて、蓄光粘着シート又はテープとすることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、熱硬化性樹脂として末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂を用い、かつ、蓄光顔料としてストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料を用いたため、蓄光顔料を多量に液状樹脂中に混合することができると共に、液状樹脂を硬化させる際に硬化特性を阻害せず、十分な硬化を実現することができるという効果を奏する。このような効果を奏しうる作用は定かではないが、末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂とストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料との親和性が良好であるため、及び、アリル基による硬化反応をストロンチウムアルミネートが阻害しないからであると推定しうる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、特定の蓄光顔料が特定の熱硬化性液状樹脂中に多量に混合でき、かつ、この蓄光顔料がこの液状樹脂の硬化を阻害しないとの発見に基づくものであるとして解釈されるべきである。
【0021】
実施例1
硬化触媒含有熱硬化性常温液状樹脂として、カネカ社製の商品名「ACX009」を準備した。この硬化触媒含有熱硬化性常温液状樹脂は、平均分子量約14000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂100質量部に、白金/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の2−プロパノール溶液(錯体濃度3%)よりなる硬化触媒0.07質量部が添加混合されてなるものである。そして、この硬化触媒含有熱硬化性常温液状樹脂100質量部に、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤6質量部、スチロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料(根本特殊化学社製、商品名「GLL−300M)300質量部、マレイン酸ジメチル0.01質量部を、各々添加し攪拌して混合した。その後、減圧脱泡を行い、攪拌混合時に噛み込んだ気泡を取り除き、均一な液状蓄光材料を得た。なお、上記の配合において、末端アリル化ポリオキシプロピレンのアリル基とハイドロジェンシロキサン系化合物のヒドロシリル基のモル比は、前者:後者=1:1.1となっている。
【0022】
実施例2
平均分子量約28000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」)100質量部に、白金/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の2−プロパノール溶液(錯体濃度3%、エヌ・イーケムキャット社製、製品名「3%Pt−VTS−IPA溶液」)よりなる硬化触媒0.07質量部、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤3質量部、スチロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料(根本特殊化学社製、商品名「GLL−300M)300質量部、マレイン酸ジメチル0.01質量部を、各々添加し攪拌して混合した。その後、減圧脱泡を行い、攪拌混合時に噛み込んだ気泡を取り除き、均一な液状蓄光材料を得た。なお、上記の配合において、末端アリル化ポリオキシプロピレンのアリル基とハイドロジェンシロキサン系化合物のヒドロシリル基のモル比は、前者:後者=1:1.1となっている。
【0023】
比較例1
ビスフェノールAの水酸基をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「エピコート828」)よりなる熱硬化性常温液状樹脂100質量部に、カチオン重合開始剤(三新化学工業社製、商品名「サンエイドSI−60L)2質量部、スチロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料(根本特殊化学社製、商品名「GLL−300M」)300質量部を、各々添加し攪拌して混合した。その後、減圧脱泡を行い、攪拌混合時に噛み込んだ気泡を取り除き、均一な液状蓄光材料を得た。
【0024】
比較例2
熱硬化性常温液状樹脂として、比較例1で用いたものに代えて、ビスフェノールAの水酸基をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「エピコート828」)50質量部と脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド2021」)50質量部とを混合した熱硬化性常温液状樹脂100質量部を用いる他は、比較例1と同一の方法で、均一な液状蓄光材料を得た。
【0025】
比較例3
溶剤型ウレタン樹脂溶液(ウレタン樹脂濃度50%、DIC社製、商品名「タイフォースAD−865−HV」)100質量部に、スチロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料(根本特殊化学社製、商品名「GLL−300M)300質量部を、添加し攪拌して混合したが、高粘度となって塗布に適した液状蓄光材料を得られなかった。そこで、ここに更にトルエン50質量部を添加し混合したところ、塗布に適した粘度となった。そして、減圧脱泡を行い、攪拌混合時に噛み込んだ気泡を取り除き、均一な蓄光材料溶液を得た。
【0026】
比較例4
水性アクリルエマルジョン(固形分濃度58%、新中村化学社製、商品名「RB500HN」)100質量部に、スチロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料(根本特殊化学社製、商品名「GLL−300M)300質量部を添加し、攪拌して混合したが、高粘度となって塗布に適した蓄光材料を得られなかった。
【0027】
実施例1、2及び比較例1、2で得られた液状蓄光材料、更に比較例3で得られた蓄光材料溶液を用いて、以下のとおり硬化性の試験を行った。
【0028】
試験例1(実施例1の試験例)
実施例1で得られた液状蓄光材料を、表面コロナ処理を行った厚さ75μmのポリエステル上に、厚みが300μmとなるようにバーコータで塗布した。塗布後、120℃で7分間加熱処理を行い、液状蓄光材料を硬化させた。
【0029】
参考試験例1
試験例1との比較のため、実施例1において、蓄光顔料を添加混合しない材料を得た。すなわち、熱硬化性常温液状樹脂100質量部と、硬化触媒0.07質量部と、硬化剤6質量部、マレイン酸ジメチル0.01質量部とが均一に混合された液状樹脂材料を得た。そして、実施例1で得られた液状蓄光材料に代えて、この液状樹脂材料を用いる他は、試験例1と同一の方法により液状樹脂材料を硬化させた。
【0030】
試験例2(実施例2の試験例)
実施例1で得られた液状蓄光材料に代えて、実施例2で得られた液状蓄光材料を用いる他は、試験例1と同一の方法で液状蓄光材料を硬化させた。
【0031】
参考試験例2
試験例2との比較のため、実施例2において、蓄光顔料を添加混合しない材料を得た。すなわち、熱硬化性常温液状樹脂100質量部と、硬化触媒0.07質量部と、硬化剤3質量部、マレイン酸ジメチル0.01質量部とが均一に混合された液状樹脂材料を得た。そして、実施例2で得られた液状蓄光材料に代えて、この液状樹脂材料を用いる他は、試験例2と同一の方法により液状樹脂材料を硬化させた。
【0032】
試験例3(比較例1の試験例)
実施例1で得られた液状蓄光材料に代えて、比較例1で得られた液状蓄光材料を用いる他は、試験例1と同一の方法で液状蓄光材料を硬化させた。
【0033】
参考試験例3
試験例3との比較のため、比較例1において、蓄光顔料を添加混合しない材料を得た。すなわち、熱硬化性常温液状樹脂100質量部にカチオン重合開始剤2質量部を添加混合して得られた液状樹脂材料を得た。そして、比較例1で得られた液状蓄光材料に代えて、この液状樹脂材料を用いる他は、試験例3と同一の方法により液状樹脂材料を硬化させた。
【0034】
試験例4(比較例2の試験例)
実施例1で得られた液状蓄光材料に代えて、比較例2で得られた液状蓄光材料を用いる他は、試験例1と同一の方法で液状蓄光材料を硬化させた。
【0035】
参考試験例4
試験例4との比較のため、比較例2において、蓄光顔料を添加混合しない材料を得た。すなわち、熱硬化性常温液状樹脂100質量部にカチオン重合開始剤2質量部を添加混合して得られた液状樹脂材料を得た。そして、比較例2で得られた液状蓄光材料に代えて、この液状樹脂材料を用いる他は、試験例4と同一の方法により液状樹脂材料を硬化させた。
【0036】
試験例1〜4及び参考試験例1〜4で得られた硬化物の硬化性を、以下の方法で評価した。すなわち、120℃で7分間加熱処理を行った後、30分間室温下で放置して、指触して、指に液状樹脂が付着しないものを「○」と評価し、指に液状樹脂が付着するものを「×」と評価した。その結果を表1に示した。
【0037】
[表1]
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硬化性
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試験例1(実施例1の試験例) ○
参考試験例1 ○
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試験例2(実施例2の試験例) ○
参考試験例2 ○
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試験例3(比較例1の試験例) ×
参考試験例3 ○
──────────────────────
試験例4(比較例2の試験例) ×
参考試験例4 ○
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【0038】
試験例1と参考試験例1及び試験例2と参考試験例2とを対比すると、表1の結果から、蓄光顔料が多量に混合されている試験例1及び2の場合においても、蓄光顔料が混合されていない参考試験例1及び2の場合と同様に硬化性が良好であることが分かる。これに対して、試験例3と参考試験例3及び試験例4と参考試験例4とを対比すると、蓄光顔料が多量に混合されている試験例3及び4の場合は、蓄光顔料が混合されていない参考試験例3及び4に比べて、硬化性に劣っていることが分かる。したがって、末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、ストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料との組み合わせは、硬化性を阻害することなく、多量の蓄光顔料を混合しうるものであることが分かる。
【0039】
試験例5(実施例1のその他の試験例)
バーコータで塗布する際の厚みを300μmから600μmに変更した他は、試験例1と同一の方法で液状蓄光材料を硬化させた。この硬化物の硬化性を評価したところ、「○」であった。したがって、蓄光体を得る際の厚みを厚くしても、硬化性が低下しないことが分かった。
【0040】
試験例6(比較例3の試験例)
実施例1で得られた液状蓄光材料に代えて、比較例3で得られた蓄光材料溶液を用い、表面コロナ処理を行った厚さ75μmのポリエステル上に、厚みが300μmとなるようにバーコータで塗布した。塗布後、90℃で10分間加熱処理を行い、溶剤の蒸発及び硬化を行った。このようにして得られた蓄光体は、溶剤が完全に蒸発せずに除去されておらず、溶剤臭のするものであった。また、溶剤の蒸発に伴う気泡が蓄光体中に多数見られた。したがって、実用に適する蓄光体は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖がポリオキシアルキレンで末端にアリル基が結合している末端アリル化ポリオキシアルキレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、該液状樹脂を硬化させるための硬化剤と、該液状樹脂と該硬化剤との硬化反応を促進させるための硬化触媒と、ストロンチウムアルミネートを主成分とする蓄光顔料とを含有することを特徴とする液状蓄光材料。
【請求項2】
硬化剤が、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物である請求項1記載の液状蓄光材料。
【請求項3】
硬化触媒が白金錯体系触媒である請求項2記載の液状蓄光材料。
【請求項4】
熱硬化性常温液状樹脂100質量部に対して、蓄光顔料が300質量部以上混合されている請求項1記載の液状蓄光材料。
【請求項5】
請求項1記載の液状蓄光材料に熱を付与することにより、該液状蓄光材料を硬化させることを特徴とする蓄光体の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の液状蓄光材料を基材シートに塗布した後、該液状蓄光材料に熱を付与することにより、該液状蓄光材料を硬化させることを特徴とする基材シート付き蓄光体の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の液状蓄光材料を離型シートに塗布した後、該液状蓄光材料に熱を付与することにより、該液状蓄光材料を硬化させた後、離型シートを除去することを特徴とするシート状蓄光体の製造方法。
【請求項8】
請求項5記載の方法により得られた蓄光体。
【請求項9】
請求項6記載の方法により得られた基材シート付き蓄光体。
【請求項10】
請求項7記載の方法により得られたシート状蓄光体。

【公開番号】特開2010−90229(P2010−90229A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260283(P2008−260283)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】