説明

液状試薬を安定化させる方法および組成物

本発明は、流体媒質中に浸した固相からその媒質溶液由来の解離種を脱離中および脱離後に、その解離種を除去することにより遊離種の濃度をゼロに近く維持することができるように解離種を除去するための、そしてまた検定においてシグナル対ノイズ比を改善するための方法および組成物に関する。これは、基質、例えば、特異的結合種のために1個または複数個の付着結合パートナー(“スカベンジャー”)を有しそして貯蔵中に存在するスカベンジング固相を用いることにより成就される。この基質はまた、固相に付着するシグナル発生成分を結合させるための領域を有する。この基質は、固相から離れてブリードするいずれもの遊離種を結合させ、検定の信頼性および感度を増加させる。本発明における各基質のサブセットはさらに、固相粒子の架橋ネットワークを形成し、検定の感度をさらに増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検定のシグナル対ノイズ比を改善し、そして試薬の溶液または懸濁液中で遊離結合種を取込むことによって液状試薬を安定化させるための方法および組成物に関する。特に、本発明はシグナル発生ネットワークを形成することによりシグナル強度を増加させる方法、並びに所定の種を結合させる選択性を有する結合基質を使用することにより試薬溶液中の遊離結合種を固定化する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
現代のインビトロ臨床診断法において、多種の方法が試料中検体の検出に使用されている。診断方法の一つの形態である免疫検定法では、1種またはそれ以上の特異的結合種が使用されている。代表的な例としては、2つの特異的結合種(抗体または抗原)が所定の検体に結合するサンドイッチ免疫検定法、並びに所定の検体およびこの検体の類似体が特異的結合種に結合するために競争する競合免疫検定法がある。特異的結合種の一方は、通常、1つの原子(例えば放射性)、分子(例えば酵素、蛍光性化合物もしくは発光性化合物)または粒子(磁気性またはラテックス)であることができる、いわゆるラベルまたはタグに付着する。このラベルにより、用いるラベルに対応する多種の検出方法で所定の検体を検出することができる。競合検定では、特異的結合種または検体類似体のいずれかがラベルを担持することができる。
【0003】
他方の特異的結合種は、共有結合または吸着によって固形または懸濁性の基質("固相")に会合することが多い。あるいはまた、それは第2結合対の第1メンバー(例えばビオチン)に連結することができ、一方第2結合対の第2メンバー(例えばストレプトアビジン)は固相に付着する。これにより、特異的結合種は、第2結合対相互作用(例えばビオチン−ストレプトアビジン)を介して固相に結合することができる。
【0004】
固相は、肉眼で見える固相、例えばマイクロタイターウエル、チューブデバイス中の管および器具のボール、または懸濁性固相、例えばビーズ、ラッテクスビーズ、磁気性ラテックスビーズ、並びに他の常磁性物質であるのがよい。2次結合種は通常、タグを用いて標識される。タグと固相との間の相互作用により、用いる標識に対応する多種の検出方法で所定の検体の検出および定量化が可能になる。
【0005】
診断検定の安定性および再現性に関しては、固相結合種のその結合パートナーに対する結合能力が長期にわたって損なわれないようになることが重要である。これは、結果として信頼性の減少および検体感度の減少をもたらすことがある。このような損害(不安定性として明白である)をもたらし得る1つの機序は、周囲媒質中への固相付着種の一部分のブリードである。遊離種は、標的への結合のために固相付着種と競合し、そして通常は、より迅速な拡散による反応速度での著しい利点を有する。したがって、試薬中、固相付着種と競合する遊離種の量を一定に、好ましくは極めてゼロに近く維持することが有利である。これにより、安定でしかも再現性のある手法で検体の高感度な検出が可能になる。遊離種の好ましい除去方法は、解離を排除する結合方法を見出すことである。吸着会合とは反対に、共有結合は、そのより強い結合力のために重要な方法であるかもしれない。しかし、多くの場合、これは種々の理由のために不可能であるかまたは実行不可能であることがある。
【0006】
例えば、固相用に選択される物質は、共有結合に適切な活性基を欠くことがある。そのような場合には、検定のタイプまたはコストの理由から、吸着が会合のより好ましい選択である。別法としては、補助結合種を介して間接的に固相物質に付着する結合種を有する方法がある。この例としては、アビジンコーティング基質に付着するビオチン化抗原または抗体があり、ここでアビジンは補助種である。この補助結合種それ自体は、共有結合を介してまたは吸着により固相と会合することができる。この方法は、固相物質と直接的に会合するならば結合種が不活化されるようになる場合に用いるのがよい。さらに、補助結合種の親和定数は無限ではないので、いくらかの解離がブリード(bleeding)の形で起こることがある。
【0007】
さらに別の方法は、互いに非共有的に会合するかまたは通常の貯蔵条件下で可逆的である共有結合を有するサブユニットからなる結合種を包含する。このように可逆的および間接的に固相に付着するサブユニットは、表面結合サブユニットから解離することができる。遊離サブユニットが検定法でその結合能力を保持するならば、または他の遊離サブユニットと合一した後にそれを取り戻すならば、その遊離サブユニットは検定法で干渉することがある。
【0008】
ブリードを排除することができない場合には、ブリードを補うためにいくつかの手法が用いられてきたが、それぞれに特定の不利点がある。それらの手法は下記のとおりである。
1)結合種のブリードによりもたらされるドリフトについて修正するための頻繁な再測定。最も明白な不利点は、再測定に費やす試薬および時間の追加コストである。また、このブリードは、不適当なレベルに下がる検定シグナルが原因で保存寿命を限定することもある。
2) 免疫検定法およびその他の診断検定用の乾燥形態試薬、例えば凍結乾燥または空気乾燥した製品の供給。この方法は通常、ブリードを排除するが、乾燥試薬は、典型的には、液体の添加により再調製されなければならず、ユーザーが時間および労力を要することになる。乾燥方法それ自体が、生産者による追加工程を必要とし、そして液状形態の試薬中で見られない不均質性およびボトル間変動(bottle-to-bottle variation)の原因をもたらす。また、この乾燥方法は、ロット間変動(lot-to-lot variation)も増加させることがある。
3)固相が固定されている場合(例えばマイクロタイタープレート)か、または液体から都合よく分離され得る場合(磁気ビーズまたは他のより大きいかもしくはより小さいサイズのビーズ)には、検定開始前に水または適当な液体で試薬を“洗浄する(wash)”ことが可能である。この方法の不利点は、“前洗浄(pre-wash)”工程に要する追加の時間、労力および材料、並びに検定順序を決める際の自由度に課せられた限界を包含する。
【0009】
米国特許第5,212,063号には、ビオチン標識化抗体(または他のビオチン化種)を用いる免疫検定中でビオチン干渉を減少または排除するのに有用なリガンドトラップが開示されている。体液中に本来存在しているビオチンは、これらの検定法で用いるアビジンまたはストレプトアビジン複合体上の結合部位のビオチン化種と競合し、そして誤った結果をもたらすことがある。ビオチンは、ストレプトアビジン修飾コアおよび生体高分子コーティングからなるポリマー粒子で試料溶液をインキュベートすることにより、免疫学的反応から選択的に除去される。
【0010】
米国特許第5,863,740号には、ビオチン飽和、化学修飾または遺伝子工学によるストレプトアビジン分子の修飾および不活化による干渉排除剤が開示されている。
【0011】
米国特許第4,256,834号には、蛍光スカベンジャー粒子免疫検定法が開示されている。この反応に用いる試薬は、シグナルリプレッサーを含有する。このシグナルリプレッサーは、大量溶液中でシグナル産生システムのメンバーに接続された標識と相互作用する。その標識およびシグナル産生システムのメンバーが、シグナル発生システムの相同性メンバーに結合すると、シグナルリプレッサーはもはや干渉しない。
【0012】
結合種のその固相への付着が不可逆的でなく、そして前記で論述した可能性のある改善方法が選択の対象でない場合には、結合種の所定量が流体媒質中に放出される。これは、典型的には不安定として証明されるように検定法を損なうことになる。
【0013】
典型的には、試薬の製造のために、それらを実際に使用する前にかなりの時間がかかるので状況がさらに悪化される。このために種々の条件下で検定試薬を貯蔵する必要性が生じる。貯蔵および輸送中、温度が不規則であることがあり、固相結合種の放出に悪影響を及ぼすことがある。時間、温度および動きのこれら変化するものの全てが、固相物質からの結合種の解離の一因になる。
【0014】
解離は主として、検定試薬の使用前に起こるけれども、例えば体液のような試料を加える場合には障害が起こる。次いで、その解離された種は、標的に結合するために固相付着種と競合しそして通常、それのより迅速な拡散速度による反応速度での著しい利点を有する。標的量が限定される場合、遊離物質の少量でさえ固相に結合する標的の数を著しく減少させることができる。次いで、これは、誤った結果をもたらすことがあり、検出の時ですら、再実施および再校正を要する。
【0015】
したがって、試薬中の遊離種の量を一定に、好ましくは極めてゼロに近く保持することが非常に望ましい。結合種の固相への永久会合が物理的に不可能であるかまたは経済的に高くて手が出ない場合には、間違った試験結果をもたらし得る不安定性を回避するために改善方法が提供されなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、検定法の信頼性および感度を改善するための方法および組成物を提供することによって解決手段を提供する。一つの実施態様において、この解決手段は、流体媒質溶液由来の解離種が固相から脱離されつつある間および脱離された後に、その種を固定化し、それにより遊離種の濃度をゼロに近く保持させることで検定試薬を安定化することにより成就される。これは、貯蔵中、試薬中に存在する特異的結合種に付着する1個の結合パートナーまたは複数個の結合パートナー(“スカベンジャー”)を有する基質、例えばスカベンジング固相を用いることにより成就される。この基質は、固相からブリードするいずれもの遊離種を結合させそしてそのような種が検定を妨害するのを防止する。
【0017】
別の実施態様において、一つの解決手段は、検定法で発生する免疫検定反応シグナルを増幅させることにより成就される。増幅は、固相に付着する結合対メンバーのために多重結合部位を包含する基質を用いることにより得られる。固相に結合した結合対メンバーは、基質の共通粒子に付着し、それによって架橋シグナル発生成分が固相の結合対メンバーと会合する。固相結合対メンバーのこの凝集は、シグナル発生ネットワークを形成し、シグナル強度を非常に増幅させる。検定の信頼性および感度を最大にするために、解離種を固定化しそしてまた固相結合対メンバーも凝集させる単一基質を提供することによってシグナル発生ネットワークを得ることが好ましい。このネットワークはまた、結合対メンバーのために多重結合部位を有する蛋白質またはポリマーを導入することによっても作製され、ここでそれらの蛋白質またはポリマーは結合対メンバーのための多重結合部位と複合している。ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体、または重合BSA、重合抗体、デキストラン類、およびデンドリマー類(dendrimers)は、多重結合部位用のこのような担体として作用することができる。
【0018】
したがって、本発明は、付着する第1結合種を有する第1基質含有の流体媒質を含む試薬を包含する。さらに、第1結合種が第1基質から解離すると、該結合種を選択的に結合する領域を有する第2基質が包含され、そしてそれはまた第1基質に付着する結合対メンバーのために多重結合部位を含むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のスカベンジング基質が多くの基準を満たすことは必須である。それらの基準は以下に示すとおりであるが、それに限定されるものではない。
1)選択する物質が多孔性の場合、それらの細孔は遊離種を細孔系中に拡散させるのに十分大きくなければならない。細孔系でスカベンジャー基質が遊離種を捕獲する。
2)固相が懸濁性物質である場合、スカベンジャー基質は遊離種の保持を可能にしなければならない。その間その基質は、シグナル強度または固相結合種への結合標的の結合に有害な影響を及ぼすようにその懸濁性固相物質には付着しない。
3)スカベンジャー基質中のスカベンジャーの数および親和性は、製品の保存寿命中、固相を離れてブリードし得る遊離結合種を捕獲しそして保持するのに十分でなければならない。
4)スカベンジャー基質は、ピペット操作を妨害してはならない。すなわち、それは試薬貯蔵容器に接続され、ピペット操作前にすっかり分離される(沈殿による沈降を含む)か、またはピッペット器具を通過するのに十分小さなサイズからなるかのいずれかである。
5)スカベンジャー基質を、安定化すべき試薬と一緒にピペットで取る場合、スカベンジャー基質は、検定法の一部分である反応を妨害してはならない。すなわち、付着するスカベンジャーを別にして、そのスカベンジャー基質は、検定法での全ての関連成分に対しておおむね不活性でなければならない。
6)さらに、スカベンジャー基質を、それが安定化する試薬と一緒にピペットで取る場合、スカベンジャー基質は検出系を妨害してはならない。スカベンジャー基質が検出を妨害する可能性のある場合には、その基質は、検出前に、沈降、ろ過または磁気分離のような通常の方法によって除去可能でなければならない。
7)スカベンジャー基質は、その基質からブリードするスカベンジャーの量があまりにも少ないため検定を妨害できないように、十分安定でなければならない。
【0020】
本発明の一つの実施態様において、免疫検定法または他のインビトロ診断法で使用する液状試薬の安定性を改善することができる方法および組成物が提供される。それは、デバイス中で使用する表面またはその他の固相からブリードまたは浸出することにより解離する結合種を除去または中和するための手段を提供するものであり、そして本発明以外の別の手段では検定が妨害されることがある。一つの例において、本発明は、発光酸素チャネル免疫検定(LOCITM)で使用するように、ストレプトアビジン(SA)修飾ラテックス試薬に適用された。表面に(SA)を結合させることにより共有結合で修飾し、染色しそして親水的にコーティングしたラテックスビーズは、LOCITM免疫検定法で有用な一般試薬である。
【0021】
意外なことに、物理的に吸着した物質を検出すること、またはビーズおよびその他の物質にSA(例えば親水性コーティングを有するクロム粒子または磁気コアを有するラテックス上のSA)を連結している共有結合の切断を検出することは可能ではなかったとしても、多くの試薬組成物は懸濁状態で貯蔵するとSAを徐放するということが発見された。おそらくSAのサブユニット構造が、溶液中で、表面からの非共有結合SAサブユニットの解離および元のままのSAとの再会合を可能にするのであろう。表面からのブリードはSAの固有の性質によると思われるので、ビーズの安定化は困難であると予想されたであろう。
【0022】
〔実施態様〕
一つの例において、ビオチンで共有結合修飾した多孔性基質の少量を加えた。ポリマー物質、例えばアミノ官能基(90μmol/mL)、約100nm(1000Å)の孔サイズ、および約65μmの粒径を有するアフィニティークロマトグラフィー用に使用する物質(Toyopearl AF−Amino−650M, Lot 65NHM52W)を選択し、そしてビオチン(スルホ−NHS−LC−ビオチン)をその表面に共有結合させた。アミノ基対ビオチン誘導体のモル比は約2であり、そして結合媒質は0.15M炭酸水素ナトリウムであった。その物質は非常に小さい外部表面(<0.1m2/ml)を有するのに十分な大きさであり、そしてSAビーズの可能性のある吸着を最小にした。それらの細孔は、その構造がビオチン修飾、ブロッキング蛋白質およびSAでの部分飽和のためにより狭くなってからでも、SA分子(約5nm)のアクセスを可能にするのに十分な大きさである(約100nm)。同時に、それらの細孔はその物質が大きな内部表面積(>50m2/g)および対応する高い結合能力を有するのに十分に小さい。それによって必要とするスカベンジャービーズの量を最小にする。また、それらの細孔は、典型的には200nmまたはそれより大きいSAビーズを除外するのに十分に小さい。
【0023】
スカベンジャー基質のために選択するパラメーターは、経済上可能性ある最高条件を示す(免疫検定法試薬を安定化させるためにできるだけ少ないスカベンジャーを使用することを望むならば)。しかし、種々の粒径(<100nmから約5mmまで)、種々の孔平均サイズ(例えば50〜5000Å)、種々の官能基タイプおよび密度を有するスカベンジャー基質もまた、適当な状況下で作用するであろう。
【0024】
一つの例において、ビオチン結合スカベンジャー基質例えばToyopearlビーズをSAビーズ試薬(1400μgビーズ/mlの濃度を有する)に、試薬1ml当り決められたビーズ容量約0.350μlの濃度で加えた。最初にビーズを渦状に混合し、次いでDade Behring Inc., Deerfield, ILより入手できるFlexTM)試薬容器内のウエル中に、それ以上攪拌せずに貯蔵した。スカベンジャービーズはウエルの底に沈降させ、そしてそこから作用させた。SAビーズ試薬は、65μmのビーズサイズ、 300Aの孔サイズ、90μmol/mLの表面上アミノ基(Tosoh Haasの製品、Sigma社から入手)を有するToyopearlビーズ(AF−アミノ−650M, Lot 65NHM52W)およびPierce社製のビオチン−LC−NHS(スルホ) を用いて調製した。
【0025】
次いで実施したのは以下の操作であった。
1.1mLのToyopearlビーズ懸濁液(約0.7ml沈降ビーズ)をエンドキャッピングを行った小さなカラム(広い末端(end)および狭い末端用のキャップを有する黄色カラム)中に加えた。
2.ビーズを15〜20mLのNaHCO3 (0.15M)で洗浄した。
3.1mLの0.15M NaHCO3溶液を加えそして渦状に混合してビーズを再懸濁した。
4.20mgのビオチン−LC−NHS (スルホ) を1mLのDI−水の中に溶解した。
5.(4)を(3)の中に渦状混合しながら加えた。
6.エンドキャッピングを行ったカラムを室温で一夜(約24時間)回転した。
7.50mgのBSAをその溶液に加え、そして室温で一夜回転した。
8.ビーズを30mLの50mM HEPESバッファー, pH 7.5で洗浄した。
9.2mLのHEPESバッファーを再懸濁したビーズに加えた。
【0026】
安定性検討の結果(表1および2)は、4℃におけるSAの放出がTSH検定での回収率を減少させることを示している。35日後にSAビーズを遠心分離(洗浄)して遊離SAを除去すると、最初の定量値が得られた。したがって、SAが明白な不安定性の原因であった。スカベンジャービーズの存在下では、検討開始時に遊離しているSAの少量を結合させているスカベンジャービーズにより若干の初期増加があった。その初期期間の後に、回収率は、スカベンジャービーズが遊離SAの量をゼロに近く維持するので一定に保持された。
【0027】
別の例示による実施態様において、スカベンジャー基質は、非多孔性物質、例えばSAはアクセスするが、修飾ビーズはそうではないような方法で修飾した表面からなるものであった。また、窪み、例えば裂け目およびその他のパターン化されていないデザインを有する物質を使用してもよい。あるいはまた、その他のテキスチャーと一緒にして、多孔性基質と同様の方法で作用させるために溝を使用してもよい。さらに、その基質はブラシ様構造から成ってもよい。それにより解離された遊離種はブラシ様付属物を通って移行しそして基質の内側に結合する。固相物質は、サイズの相違により、そのブラシ様基質の結合域中には入らない。
【0028】
さらに別の実施態様は、固相結合種では明らかではないが、遊離解離種の重量、拡散速度および、その他の特性のためにそれを結合させる能力を有する非多孔性基質から成っていてもよい。
【0029】
さらに別の実施態様において、基質は、固相に付着する結合対メンバーのために多重結合部位を有していてもよい。この基質は、必須ではないが、好ましくは前文で論議した遊離種スカベンジング性質を有するのがよい。それらの多重結合部位は、多数の固相粒子由来の結合対メンバーを共通基質粒子に付着させることを可能にする。この方法で、その基質により固相上に結合メンバーを架橋させることができる。その架橋は、粒子凝集物を形成することにより検定の感度およびシグナルノイズ比を改善するシグナル発生ネットワークを作製する。これらの粒子凝集物は、シグナル発生ネットワークを介して検定シグナルの増幅をもたらす。
【0030】
前文で論議したように、貯蔵中のSA修飾試薬からのSA流出は、検定の感度および信頼性を減少させる。この問題を解決するために、染色した増感剤ビーズにビオチンを結合させた。一つの例において、ビオチン化増感剤ビーズは、以下の方法により調製された。コーティングしてない染色された増感剤ビーズロット1053:89を EDAC次いでNHSで活性化し、次にビオチンLC−PEOアミン(+)トリオキサウンデカンジアミン(Pierce 21347ロットDH57849)と室温で72時間反応させた。最終のビーズ重量は29mg/mLであり、最終のバッファーは100mM TRIS, 300mM NaCl, 1mM EDTA, 1mg/mL BSA, 0.1% Triton×405, 0.015 Proclin 300 pH 8.0であった。
【0031】
ビオチン修飾ビーズをSA試薬に種々の濃度で加えた。LOClTM TSH検定およびFT3検定をモデル検定として選択した。TSH検定およびFT3検定のSAビーズ濃度は、それぞれに1400μg/mLおよび400μg/mLであった。ビオチン修飾増感剤ビーズを1%および5% (TSH: 14μg/mL, 70μg/mL; FT3: 4μg/mL, 20μg/mL) のSAビーズ濃度で加えた。混合物を4℃で一夜インキュベートした。TSHおよびFT3のキャリブレータを測定しそしてそれぞれの免疫検定で種々の増感剤ビーズ懸濁液を用いて比較した。
【0032】
結果(表5および表6)は、ビオチン修飾増感剤ビーズの存在下では免疫検定応答シグナルの実質的増加があり、一方TSHのバックグラウンドノイズは本質的に未変化のままであったことを示した。これは、遊離種のスカベンジングの成功に加えて、シグナル発生ネットワークの形成を示している。増幅したシグナル強度は、主として、シグナル発生ネットワークの結果であった。安定性検討過程でのシグナルの良好な再現性は、主として、ビオチン修飾増感剤ビーズのスカベンジング性質の結果であった。
【0033】
スカベンジングおよび/または架橋の性質を有する第2基質は、前述のように、特異的結合対の一部分を示す化合物のブリード問題に関するほぼ一般的な解決手段を提供する。それは、第1部分および第2部分(解離した第2部分は遊離種である)に分かれる第1結合種を有する第1基質と一緒に流体媒質を用いる検定に対して解決手段を提供する。第2基質を用いるが、それは、検定を妨害せずに溶液由来の第1結合種の第2部分(遊離種)を特異的に結合させるために適応した領域を有する。好ましくは、この第2基質は第1基質を架橋して凝集物にし、シグナル強度を増加させる。第2基質の添加は、“固相”の性質を殆ど限定せず、そしていずれかの分離工程または洗浄工程または凍結乾燥を要しない。遊離種の影響を修正するための短い校正期間の必要はなくそして多くの場合、デバイスの有効期間は著しく延長され得る。
【0034】
前述のように、表1および表2にはさらに、35日のTSH検定安定性の検討結果を記載している。表1から分かるように、検定安定性はスカベンジャー基質の不在下で測定された。計量は、−70℃で貯蔵した物質を用いて生成した曲線を使用して同日に行った。キャリブレーションのレベル2〜5で分かるように、検定により報告された検体値は、時間が経過すると有意に低下した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表3によりさらに説明されるように、0日から測定したキャリブレータレベル2〜5の計量減少は、平均して下記のとおりであった。
【表3】

【0038】
対照的に、表4により説明されるようにスカベンジャーの存在下での減少のレベルは、ゼロに近く一定に保持された。
【表4】

【0039】
表5および表6は、シグナル発生ネットワークの作製に加えて遊離種の排除効果を説明している。前文で論議したように、データは、ビオチン修飾増感剤ビーズの存在下で安定化されたバックグラウンドノイズを有する免疫検定応答シグナルの実質的増加を示している。
【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
これらの結果に基づいて、前述の第2基質の使用は延長された期間にわたって検定の安定性を非常に高め、そしてシグナル強度を高めることが明らかである。これによって、本発明は、使用する検定法が、通常の貯蔵中に遊離種を浸出させる固相基質を含有する場合でさえ、または異常な温度もしくは動きに曝される場合に関係する検体の正確な試験を可能にする。
【0043】
本発明はその好ましい実施態様について特に詳記したけれども、その発明はその他の種々の実施態様について可能であり、そしてその詳細は種々の自明な点において変更可能であることを理解すべきである。当業者には容易に自明であるように、本発明の趣旨および範囲内にある限り、種々の変更および変形を行うことができる。したがって、前述の開示、記載および表は単に説明目的のためであって、各請求項によってのみ定義される本発明を決して限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基質に付着する第1結合種を有する該基質含有の流体媒質; および
第1結合種が第1基質から解離すると、該結合種を選択的に結合する能力を有することを特徴とする結合領域を有する第2基質;
を含む試薬。
【請求項2】
第1結合種は第1基質上の規定の結合表面に付着し、そして第2基質上の結合領域は第2基質上の規定の結合表面に形成され、そしてここで第1基質上の規定の結合表面および第2基質上の規定の結合表面は同一の物質から形成される請求項1記載の試薬。
【請求項3】
第1結合種は第1基質上の規定の結合表面に付着し、そして第2基質上の結合領域は第2基質上の規定の結合表面に形成され、そしてここで第1基質上の規定の結合表面および第2基質上の規定の結合表面は異なる物質から形成される請求項1記載の試薬。
【請求項4】
第1結合種は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、抗原、抗体、ハプテン、レセプターおよびオリゴヌクレオチド並びに結合可能なこれらの誘導体から本質的になる群から選択される請求項1記載の試薬。
【請求項5】
結合パートナーは、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、抗原、抗体、ハプテン、レセプターおよびオリゴヌクレオチド並びに結合可能なこれらの誘導体から本質的になる群から選択される種を選択的に結合する請求項4記載の試薬。
【請求項6】
結合領域は、細孔、隙間空間、窪みおよび溝からなる群より選択される請求項1記載の試薬。
【請求項7】
基質に付着する結合種を含む流体媒質;
結合種に親和性を有する内部表面および基質から解離する場合の結合種に透過性の外部表面を含む透過性物質;
を含む試薬。
【請求項8】
結合種は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、抗原、抗体、ハプテン、レセプターおよびオリゴヌクレオチド並びに結合可能なこれらの誘導体から本質的になる群から選択される請求項7記載の試薬。
【請求項9】
基質に付着する結合種を含有する液状媒質;
結合種に親和性を有する内部表面および基質から解離する場合の結合種に透過性の外部表面を含む透過性物質;
を含有する試薬貯蔵容器を用意することからなる、遊離種の不活化により試薬を安定化する方法。
【請求項10】
第1結合種は第1基質上の規定の結合表面に付着し、そして第2基質上の結合領域は第2基質上の規定の結合表面に形成され、そしてここで第1基質上の規定の結合表面および第2基質上の規定の結合表面は同一の物質から形成される請求項9記載の試薬。
【請求項11】
結合種が、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、抗原、抗体、ハプテン、レセプターおよびオリゴヌクレオチド並びに結合可能なこれらの誘導体から本質的になる群から選択される請求項10記載の試薬。
【請求項12】
流体媒質;
流体媒質に接触している第1基質;
第1結合種(ここで第1結合種の第1部分は第1基質に付着し、そして第1結合種の第2部分は第1基質から解離する);および
第1結合種の第2部分を選択的に結合するのに適合した領域を有する第2基質;
を含む試薬であって、ここで第1結合種の第1部分および第1結合種の第2部分は合一すると、第1結合種の全既知量の約100%を構成する、上記の試薬。
【請求項13】
第1基質に付着する第1結合種を有する該基質含有の流体媒質;および
第1結合種を選択的に結合する能力を有することを特徴とする領域を有する第2基質;を含む試薬であって、ここで第1結合種の第2基質への結合は、第1結合種の結合標的への結合を損なわない、上記の試薬。
【請求項14】
第1基質に付着する第1結合種を有する該基質含有の流体媒質;および
第1結合種が第1基質から解離すると、該結合種を選択的に結合する能力を有することを特徴とする領域、および、第1基質と会合する第1結合種を選択的に結合する能力を有することを特徴とする領域を有する第2基質;
からなる試薬であって、
ここで、第2基質は、多数の第1結合種を共通第2基質に結合させ、そして、その第2基質によって架橋された、第1基質に付着する第1結合種を有する多数の第1基質を含む凝集物が形成される、上記試薬。
【請求項15】
第1結合種は第1基質上の規定の結合表面に付着し、そして第2基質上の結合領域は第2基質上の規定の結合表面に形成され、そしてここで第1基質上の規定の結合表面および第2基質上の規定の結合表面は同一の物質から形成される請求項14記載の試薬。
【請求項16】
第1結合種は第1基質上の規定の結合表面に付着し、そして第2基質上の結合領域は第2基質上の規定の結合表面に形成され、そしてここで第1基質上の規定の結合表面および第2基質上の規定の結合表面は異なる物質から形成される請求項14記載の試薬。
【請求項17】
少なくとも1つの第1結合種を有する第1基質含有の流体媒質を提供し;そして
第1結合種が第1基質から解離すると該結合種を結合し、そしてまた付着する第1結合種を有する第1基質を結合する能力を有することを特徴とする領域を有する第2基質を提供する;
ことからなる、検定においてシグナルを増幅させるシグナル対ノイズ比を減少させる方法。
【請求項18】
第1基質は多数の粒子を含む請求項17記載の方法。
【請求項19】
領域は多数の粒子由来の第1結合種を結合する請求項17記載の方法。
【請求項20】
第2基質は、ラテックス粒子、蛋白質、例えばウシの血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、抗体、またはポリマー、例えばポリ−BSA、ポリ−抗体、デキストラン、およびデンドリマーからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項21】
第1結合種が第1基質から解離すると、該結合種を選択的に結合する能力を有することを特徴とする領域は、第1基質と会合した第1結合種を排除するようになっている、請求項20記載の方法。

【公表番号】特表2007−512531(P2007−512531A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541357(P2006−541357)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/038637
【国際公開番号】WO2005/052183
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(500029718)デイド・ベーリング・インコーポレイテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】DADE BEHRING INC.