説明

液状食品増粘化剤及びその製造法

【課題】加熱や冷却の必要がなく、常温や冷蔵状態の濃厚な液状食品(流動食など)に直接添加してもダマにならず、その使用時において適宜、その添加量によってトロミ(粘性)を調整できる、液状食品増粘化剤及びその製造法を提供する。
【解決手段】キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を含有する液状食品増粘化剤。前記有機酸及び/又は無機酸の塩をさらに含有している液状食品増粘化剤。前記有機酸がクエン酸、無機酸がリン酸である液状食品増粘化剤。難消化性デキストリンをさらに含有している液状食品増粘化剤。解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する液状食品増粘化剤の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状食品増粘化剤及びその製造法に関し、特に、水和分散性の優れた液状食品増粘化剤及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼・嚥下困難者が飲み込み(摂食し)易い様に、液状食品に粘性(粘度)を発現させる(付ける)トロミ調整食品が数多く上市されており、特にクリアタイプが現在の主流となっている。クリアタイプのトロミ調整食品は、透明性の高さや付着性の小ささといった特徴により、市場や消費者の評価が高くなっている。さらに、クリアタイプのトロミ調整食品は、食品本来の持つ美味しい風味や美味しそうな色調をほとんど変化させないといった優れた特徴もある。
【0003】
しかし、クリアタイプのトロミ調整食品では、牛乳や流動食などの濃厚な液状食品への水和分散性や親和性が不十分であり、溶解時にダマ(ままこ)が発生したりして水和溶解が遅れてしまい、トロミが付く(増粘する)までに長時間を要するといった問題があった。
【0004】
流動食などの濃厚な液状食品は高栄養であり、少量しか召し上がれない(摂食できない)要介護者などにとって極めて優れた総合栄養食品である。例えば、介護の過程で経管栄養から経口摂取へ移行する場合、トロミ調整食品により液状食品に粘性を付けるなどの嚥下機能に配慮した工夫が行われている。
【0005】
しかし、前述した通り、現在の主流であるキサンタンガムを主原料としたクリアタイプのトロミ調整食品では、濃厚な液状食品に対して水和分散性や親和性が不十分であり、トロミが付きにくい場合、仮に添加量を増やしてもゲル化(堅さ)が不十分となり、却って摂食しにくい物性で、ベタついた食感になってしまうといった問題があった。
【0006】
一方、寒天を主原料としたトロミ調整食品では、寒天を予め熱水に加熱溶解しておき、この寒天水溶液を液状食品と混合した後に、固形化するために冷蔵で冷却するという煩雑な操作(作業)が必要であり、しかも、この寒天水溶液と濃厚な液状食品を混合するため、液状食品を希釈してしまうこととなり、要介護者の摂食(喫食)量が増えてしまうといった問題があった。
【0007】
特開2001-275584号公報(特許文献1)に、ダマ(ままこ)ができずに溶解させることができるとともに、即座に粘性を発現させることができる粉末状又は顆粒状の糊料が記載されている。しかしながら、この発明の糊料(液状食品増粘化剤)では、あくまで水(あるいは希薄な液状食品)への溶解性や分散性と、増粘性に関してしか検討されておらず、濃厚な液状食品の場合に関して検討も示唆もされていない。
【0008】
特開2004-147567号公報(特許文献2)に、化工澱粉水溶液をバインダーとして用いることにより、増粘多糖類の持つ膨潤溶解・増粘効果をできるだけ低減させることなく造粒し、速く十分な増粘効果と経時的に安定した増粘性を発揮できる顆粒状の液状食品増粘化剤が記載されている。しかしながら、この発明の液状食品増粘化剤では、牛乳や100%果汁への溶解性や分散性と、増粘性に関してしか検討されておらず、濃厚な液状食品の場合に関して検討が不十分である。
【0009】
前述した通り、加熱や冷却などの煩雑な操作がなく、常温程度にある濃厚な液状食品へ容易に分散もしくは溶解して、短時間で粘性を発現させることのできるトロミ調整食品(液状食品増粘化剤)は従来、存在しておらず、その開発が望まれてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001-275584号公報
【特許文献2】特開2004-147567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述した背景技術の課題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、加熱や冷却の必要がなく、常温や冷蔵状態の液状食品に直接添加してもダマ(ままこ)にならない、水和分散性の優れた液状食品増粘化剤及びその製造法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、常温や冷蔵状態の濃厚な液状食品(流動食など)に直接添加してもダマにならない、水和分散性の優れた液状食品増粘化剤及びその製造法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、常温や冷蔵状態の液状食品に直接添加し、その使用時において適宜、その添加量によってトロミ(粘性)を調整できる、水和分散性の優れた液状食品増粘化剤及びその製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、流動層造粒装置などを用いて、キサンタンガムに、クエン酸、ピロリン酸、リン酸といった有機酸や無機酸、あるいはこれらの有機酸や無機酸とその塩などをコーティングしたり、コーティングと同時に顆粒化(造粒)することにより、水や液状食品への分散性が良くなることを見出し、本発明の液状食品増粘化剤を完成するに至った。
【0015】
そして、キサンタンガムのコーティング剤として用いる、クエン酸、ピロリン酸、リン酸などの何種類かの有機酸と無機酸について分散性への影響を比較した結果、解離定数pKaが3.86で解離度が小さい乳酸では分散性を良くする効果が小さく、pKaが3.13のクエン酸、pKaが2.15のリン酸、pKaが0.85のピロリン酸などの解離度が比較的大きい有機酸や無機酸では分散性を良くする効果が大きいことを見出した。
【0016】
さらに、流動層造粒装置などを用いて、キサンタンガムに、クエン酸、ピロリン酸、リン酸、クエン酸といった有機酸や無機酸と、あるいはこれらの有機酸や無機酸及びその塩などと、難消化性デキストリンとを併用して、コーティングしたり、コーティングと同時に顆粒化(造粒)することにより、水や液状食品への分散性が良くなると同時に増粘性も速くなる(短時間で増粘する)ことを見出した。そして、このとき、特に流動食などの濃厚な液状食品への分散性が良くなると同時に増粘性も速くなることを見出した。
【0017】
こうした液状食品増粘化剤は水和分散性に優れており、あらゆる添加量で液状食品へ溶解して、ゲル状にしたりすることができるため、その使用時において適宜、その添加量によってトロミ(粘性)を調整することができる。
【0018】
すなわち、本願が提案する発明は以下の通りである。
【0019】
(請求項1)キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を含有することを特徴とする液状食品増粘化剤。
【0020】
(請求項2)前記含有されている有機酸及び/又は無機酸の塩をさらに含有していることを特徴とする請求項1記載の液状食品増粘化剤。
【0021】
(請求項3)有機酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の液状食品増粘化剤。
【0022】
(請求項4)無機酸がリン酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の液状食品増粘化剤。
【0023】
(請求項5)難消化性デキストリンをさらに含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液状食品増粘化剤。
【0024】
(請求項6)解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化することを特徴とする液状食品増粘化剤の製造法。
【0025】
(請求項7)前記コーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する際に、さらに前記有機酸及び/又は無機酸の塩を用いることを特徴とする請求項6記載の液状食品増粘化剤の製造法。
【0026】
(請求項8)前記コーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する際に、さらに難消化性デキストリンを用いることを特徴とする請求項6又は7記載の液状食品増粘化剤の製造法。
【0027】
(請求項9)前記コーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する際に流動層造粒装置、固定層造粒装置又は、噴霧乾燥装置を用いることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項記載の液状食品増粘化剤の製造法。
【0028】
本発明において「キサンタンガム」とは、例えば、微生物(Xanthomonas campestris)により産生された多糖類を意味する。冷水や常温水に溶解した際に、擬塑性(シュードプラスティック)の粘性を示すという特徴がある。水と混合することにより容易に粘性を発現し、ローカストビーンガムとの相互作用によりゲル状となる。
【0029】
本発明において「難消化性デキストリン」とは、例えば、トウモロコシ澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、α-アミラーゼとグルコアミラーゼで処理して得られた食物繊維画分を分取したものや、小麦澱粉を加熱し、その一部を加水分解して、難消化性の画分を選別・精製した水溶性の食物繊維を意味する。
【0030】
本発明において「コーティング剤」とは粉体の表面を被覆する物質を意味し、「バインダー」とは粉体同士を結着して顆粒化(造粒)する物質を意味する。
【0031】
本発明において「分散性」とは粉体が液体表面へ広がりやすいことを意味し、「親和性」とは粉体が液体内部へ沈みやすいことや入り込みやすいことを意味する。そして、何れも粉体がダマ(ままこ)を作らず、粉体が液体と極端に馴染みやすすぎず、極端に馴染みにくすぎず、適度な馴染みやすさとなることを意味する。
【0032】
本発明において「ゲル状」とは、「トロミ状」ともいい、所謂、「ゾル状」も含むこととする。
【発明の効果】
【0033】
従来の液状食品増粘化剤では、液状食品へ直接添加する際に、ダマの発生を軽減する目的で、キサンタンガムを顆粒化したり、既に顆粒状となったキサンタンガムを用いるなどの工夫が行われていた。これによって、液状食品増粘化剤の水への分散性は、ある程度で改善されていたが、濃厚な液状食品などへの分散性や親和性が不十分であるといった未解決の課題があった。
【0034】
本発明によれば、お茶や水などの希薄溶液でもダマにならず、優れた分散性を有し、一方で、流動食などの濃厚な液状食品でも優れた溶解性と、速やかな増粘性を有する液状食品増粘化剤及びその製造法を提供できる。
【0035】
本発明によれば、液状食品に直接添加し、その使用時において適宜、その添加量によってトロミ(粘性)を調整できる、水和分散性に優れた液状食品増粘化剤及びその製造法を提供できる。
【0036】
本発明の水和分散性の優れた液状食品増粘化剤及びその製造法よれば、摂食機能の個人差や日内変動によって異なる、適切な物性へ容易に対応することが可能である。これによって、常に同じ物性しか得ることのできないカップゼリーのようなReady-to-Eatタイプの栄養食品による喫食率の低下、廃棄量の増大の問題も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の液状食品増粘化剤を流動食へ添加し混合した際の粘度の経時変化を示したグラフ。
【図2】本発明の液状食品増粘化剤を牛乳へ添加し混合した際の粘度の経時変化を示したグラフ。
【図3】本発明の他の液状食品増粘化剤を流動食へ添加し混合した際の粘度の経時変化を示したグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の液状食品増粘化剤は、キサンタンガムを含有している。このとき、キサンタンガムを主成分として、グァガム、カラギナン、ローカストビーンガム、タラガム、グァガム、サイリウムシードガムなどの、あらゆる粘性発現物質を併用することができる。
【0039】
クリアタイプのトロミ調整食品では例えば、キサンタンガムやグァガムを粘性発現物質の主成分として含有している。
【0040】
従来のクリアタイプのトロミ調整食品では、牛乳や流動食などの濃厚な液状食品への水和分散性や親和性が不十分であり、溶解時にダマが発生したりして水和溶解が遅れてしまい、トロミが付くまでに長時間を要するといった問題があった。
【0041】
また、従来のクリアタイプのトロミ調整食品では、トロミが付きにくい場合、仮に添加量を増やしても粘性発現が不十分となり、却って摂食しにくい物性で、ベタついた食感になってしまうといった問題があった。
【0042】
しかし、後述する通り、本発明の液状食品増粘化剤は、これらの問題を解決した画期的なものである。
【0043】
本発明の液状食品増粘化剤に対するキサンタンガムの含有量は、その用途に応じて適宜、調整すれば良いが、好ましくは液状食品増粘化剤の5〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。このとき、含有量が小さすぎると、要求される粘性が得られず、トロミの付き具合が不十分となり、含有量が大きすぎると、原料費が高くなり、経済的でないばかりか、ダマの発生が懸念されることとなる。
【0044】
本発明の液状食品増粘化剤は、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を含有するものである。
【0045】
本発明者らは、お茶や水などの希薄溶液へのキサンタンガムの分散性(粉体の液体表面への広がりやすさ)を改善し、液状食品へ添加する際に、ダマにならないことを可能とするために、様々な物質の効果について検討した。その結果、キサンタンガムと、クエン酸、ピロリン酸、リン酸などとを含有させることにより、お茶や水などの希薄溶液でダマにならず、優れた分散性を有することを見出した。そして、クエン酸、リン酸、ピロリン酸などの効果と特性について詳細に検討し、これらの有機酸や無機酸では共通して、解離度が乳酸よりも大きく、解離定数pKaが3.86よりも小さいことを見出した。
【0046】
前記において、解離度が乳酸よりも大きい有機酸としてクエン酸、無機酸としてリン酸が例示できる。
【0047】
キサンタンガムに対する有機酸や無機酸の含有量は、その用途に応じて適宜、調整すれば良いが、好ましくはキサンタンガムの0.3〜17重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。このとき、含有量が小さすぎると、要求される分散性が十分に得られず、含有量が大きすぎると、原料費が高くなり、経済的でないばかりか、有機酸や無機酸が高濃度となり、取り扱い上の問題も生じる。
【0048】
本発明の液状食品増粘化剤は、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、前記有機酸及び/又は無機酸の塩とを含有しているものとすることができる。
【0049】
ここで、有機酸及びその塩として、クエン酸及びクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、無機酸及びその塩として、リン酸及びリン酸ナトリウム、リン酸カリウムが例示できる。
【0050】
このとき、クエン酸ナトリウムとして、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸カリウムとして、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、リン酸ナトリウムとして、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸カリウムとして、リン酸一カリウム、リン酸二カリウムが例示できる。
【0051】
本発明者らは、キサンタンガムの希薄溶液への分散性を改善し、液状食品へ添加する際にダマにならず、一方で、流動食などの濃厚な液状食品で速やかに粘性が発現することを可能とするために、様々な物質の効果について検討し、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、前記有機酸及び/又は無機酸の塩とを含有させることにより、希薄溶液でダマにならず、優れた分散性を有し、濃厚な液状食品でも優れた親和性と、速やかな増粘性を有することを見出した。
【0052】
キサンタンガムに対する解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸、並びにそれらの塩の含有量は、その用途に応じて適宜、調整すれば良いが、例えば、クエン酸及びクエン酸ナトリウムを選択すると、クエン酸の相当量として好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜4重量%である。リン酸とリン酸の塩を選択する場合、リン酸の相当量として好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜4重量%である。このとき、含有量が小さすぎると、要求される分散性や親和性が十分に得られず、含有量が大きすぎると、原料費が高くなるため経済的でないこととなる。
【0053】
また、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、これらの塩とにより調製した緩衝液のpHとして好ましくは2.5〜6、より好ましくは3〜5、さらに好ましくは3〜4.5である。
【0054】
本発明の液状食品増粘化剤は、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、難消化性デキストリンとを含有する、あるいは、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、前記有機酸及び/又は無機酸の塩と、難消化性デキストリンとを含有するものとすることができる。
【0055】
本発明者らは、キサンタンガムの希薄溶液への分散性を、さらに改善し、濃厚な液状食品で、さらに速やかに粘性が発現することを可能とするために、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸、前記有機酸及び/又は無機酸とその塩などと併用しながら、様々な物質の相加効果や相乗効果について検討した。その結果、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、あるいは、前記有機酸及び/又は無機酸とその塩と、難消化性デキストリンとを含有させることにより、希薄溶液で、さらに優れた分散性を有し、濃厚な液状食品でも、さらに優れた親和性と、さらに速やかな増粘性を有することを見出した。
【0056】
キサンタンガムに対する難消化性デキストリンの含有量は、その用途に応じて適宜、調整すれば良いが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。このとき、含有量が小さすぎると、要求される分散性や親和性が十分に得られず、含有量が大きすぎると、原料費が高くなり、経済的でないばかりでなく、造粒適性が悪くなり、顆粒化しにくくなる。
【0057】
本発明の液状食品増粘化剤は、濃厚流動食に直接添加し、その使用時において適宜、その添加量によってトロミ(粘性)を調整する際において、特に効果的な使用が可能であり、分散性、親和性、増粘性などの特性が従来品と比べて格段に優れていることを実感できる。そして、本発明の液状食品増粘化剤は、流動食の組成などが濃厚である程、その特性が従来品と比べて優れていることを実感しやすいこととなる。流動食は開発当初、エネルギー量で1.0 kcal/ml程度の商品が主流であったが、近年の技術革新などにより、2.0 kcal/ml程度の濃厚な商品が開発されている。
【0058】
本発明の液状食品増粘化剤の製造方法は、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化するものである。
【0059】
すなわち、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を含有する本発明の液状食品増粘化剤を製造するにあたり、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸をコーティング剤及び/又はバインダーとして用い、これらによって、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化するものである。
【0060】
本発明の液状食品増粘化剤の製造方法は、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸、並びにこれらの塩を用いて、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化するものとすることもできる。
【0061】
すなわち、キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、前記有機酸及び/又は無機酸の塩とを含有している本発明の液状食品増粘化剤を製造するにあたり、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と、これらの塩とから調製した緩衝液を、コーティング剤及び/又はバインダーとして用いて、これらによって、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化するものである。
【0062】
本発明の液状食品増粘化剤の製造方法では、さらに難消化性デキストリンを前記のコーティング剤及び/又はバインダーに追加して用いることができる。すなわち、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸と難消化性デキストリン、あるいは解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸、並びにこれらの塩と難消化性デキストリンとを用いて、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化するものとするものである。
【0063】
以上に説明した本発明の液状食品増粘化剤の製造方法は、流動層造粒装置、固定層造粒装置又は、噴霧乾燥装置を用いて製造することができる。
【0064】
すなわち、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸、前記有機酸及び/又は無機酸、並びにそれらの塩、前記有機酸及び/又は無機酸、並びに難消化性デキストリン、前記有機酸及び/又は無機酸、並びにそれらの塩と難消化性デキストリンなどを用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する装置に、流動層造粒装置、固定層造粒装置、噴霧乾燥装置などを使用することができる。
【0065】
ただし、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸、当該有機酸及び/又は無機酸と、これらの塩、さらには、これらに難消化性デキストリンを添加したものを、キサンタンガムにコーティングしたり、コーティングと同時に顆粒化したりする機能を発揮できるものであれば、前記に例示した流動層造粒装置、固定層造粒装置、噴霧乾燥装置以外でも、これらに類似する機能を発揮する装置を用いることができる。
【0066】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
(有機酸と無機酸によるキサンタンガムの水和分散性の改善効果)
表1に示した組成の粘性発現物質とバインダーをそれぞれ流動層造粒装置に投入し、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化し、粉体(顆粒)を得た。
【0068】
その後、各試料について水和分散性を評価し、有機酸と無機酸によるキサンタンガムの水和分散性の改善効果を検討した。
【0069】
なお、粘性発現物質は、紛体状態にあるキサンタンガムと、同じく紛体状態にあるサンデック#100(コーンスターチを原料としたデキストリン(三和澱粉工業(株)製、DE値:10〜13))を混合して準備した。すなわち、キサンタンガムとデキストリンとを紛体で混合して粘性発現物質とした。
【0070】
表1中の数字は、各物質の混合割合(成分比)を意味しており、各成分の合計値は100とはならない。つまり、粘性発現物質とバインダーとは、それぞれの表中の数値をそのまま混合割合として顆粒化(造粒)した。
【0071】
表1において、有機酸と無機酸は、クエン酸(和光純薬工業(株)製、結晶物)、乳酸(和光純薬工業(株)製、純度:90%)、ピロリン酸(和光純薬工業(株)製、H4P2O7)、リン酸(太平化学産業(株)製、食品添加物、純度:85%)である。
【0072】
表1中のサンデック#30とはワキシーコーンスターチを原料としたデキストリン(三和澱粉工業(株)製、DE値:2〜5)、エマルスターとはオクテニルコハク酸エステル化澱粉(松谷化学(株)製)である。
【表1】

【0073】
分散性の評価では、各試料2gを水道水100gに添加し、その添加の2秒後に、約5秒間を掛けて10回、薬サジで攪拌した。分散性は攪拌後のダマの発生状況を確認して、「5:大変良い」とし、「4:良い」、「3:やや良い」、「2:普通」、「1:良くない」に分類した。その評価の結果を表1に示した。
【0074】
ピロリン酸(解離定数pKa = 0.85、試料1)が大変良い、リン酸(解離定数pKa = 2.15、試料2)が良い、クエン酸(解離定数pKa = 3.13、試料3)がやや良い、乳酸(解離定数pKa = 3.86、試料4)が普通であった。
【0075】
一方、エマルスター(試料5)、サンデック#30のみ(試料6)が良くなかった。
【0076】
このように、オクテニルコハク酸エステル化澱粉(試料5)のみ、あるいはデキストリン(試料6)のみをバインダーに用いた場合には、分散性があまり良くなかったが、有機酸や無機酸、特に、解離度が乳酸より大きい有機酸や無機酸をバインダーに用いた場合には、分散性が大幅に改善された。
【0077】
この結果、解離度が乳酸より大きい有機酸や無機酸を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化(造粒)した試料1〜3は本発明の液状食品増粘化剤として有用であると認められた。
【0078】
また、前記のように試料1〜3の分散性の評価を行った後の、試料1〜3が分散されている水道水それぞれの味覚を確認したところ、その風味は最初の水道水から変化していないと認められた。有機酸、あるいは無機酸がバインダー、コーティング剤として使用されているので、風味が変動しないためと考えられた。
【実施例2】
【0079】
(クエン酸とクエン三ナトリウムを併用したクエン酸緩衝液によるキサンタンガムの水和分散性と作用速度の改善効果)
表2、表3に示した組成の粘性発現物質とバインダーをそれぞれ流動層造粒装置に投入し、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化し、粉体(顆粒)を得た。
【0080】
表2、表3に組成を示した各試料とも、キサンタンガムを、有機酸(クエン酸)及びその塩(クエン酸三ナトリウム)からなるクエン酸緩衝液でコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化したものに相当する。
【0081】
その後、各試料について水和分散性と作用速度を評価した。評価結果を表2、表3に示した。
【0082】
水和分散性は実施例1と同様に評価した。
【0083】
なお、実施例1と同様に、粘性発現物質は、紛体状態にあるキサンタンガムと、同じく紛体状態にあるデキストリン(サンデック#100)を混合して準備した。
【0084】
キサンタンガムの作用速度とは、液状食品へキサンタンガムを添加し混合した後に、時間の経過に伴い、粘度が変化する割合(変化率)のことである。キサンタンガムを添加してから60分後(安定時)の粘度に対する20分後の粘度を比率で換算し作用速度として評価した。つまり、「作用速度(%)=20分後の粘度/60分後の粘度×100」とした。
【0085】
ここで、表中の数字は実施例1の場合と同様に、各物質の混合割合(成分比)を意味している。また、クエン酸とクエン酸三ナトリウムの混合比率は、緩衝液のpHを基準にして決定した。
【表2】

【表3】

【0086】
作用速度の評価では、試料の調製などを次の通りとした。すなわち、(1) 各試料2gを流動食100gに添加した。このとき、約30秒間を掛けて、薬サジで撹拌しながら各試料を添加した。(2) 所定の時間間隔で経時的に、液状食品の粘度を測定した。このとき、粘度を測定する前に約10秒間を掛けて20回、薬サジで撹拌ながら組成を均一にした。
【0087】
なお、以下の実施例も含めて粘度は、厚生労働省「特別用途食品 高齢者用食品」の測定方法に準じて、B型粘度計により測定した数値である。具体的には、B型粘度計にローターのNo.2またはNo.3を取り付け、回転数を12rpmに設定して、約60秒後の粘度を測定した。
【0088】
水和分散性及び作用速度の評価で用いた流動食は、明治乳業(株)製で、脂質:2.8重量%、タンパク質:4重量%、糖質:14.5重量%、食物繊維:1重量%の組成である。
【0089】
クエン酸緩衝液の濃度によるキサンタンガムの水和分散性と作用速度の改善効果を表2に示した。
【0090】
クエン酸緩衝液のpHが4では、濃度が1〜4%の何れの場合にも、キサンタンガムの分散性は良好であった。クエン酸緩衝液の濃度が2〜4%の場合には、キサンタンガムの分散性は特に優れていた。一方、クエン酸緩衝液の濃度が4%の場合には、流動食における粘度の作用速度が幾らか劣るものの、全体的には何れの濃度の場合にも良好であった。
【0091】
クエン酸緩衝液のpHによるキサンタンガムの水和分散性と作用速度の改善効果を表3に示した。
【0092】
クエン酸緩衝液のpHが5以下の何れの場合にも、キサンタンガムの分散性は良好であったが、pHが6以上の場合には、分散性は悪くなる傾向であった。一方、クエン酸緩衝液のpHが5以下の場合には、流動食における粘度の作用速度が良好であった。
【0093】
これより、クエン酸緩衝液のpHとして好ましくは6以下、より好ましくは5以下であることが認められた。
【実施例3】
【0094】
(難消化性デキストリンによるキサンタンガムの水和分散性と作用速度の改善効果)
表4に示した組成の粘性発現物質とバインダーをそれぞれ流動層造粒装置に投入し、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化し、粉体(顆粒)を得た。
【0095】
その後、各試料について水和分散性と作用速度を評価し、難消化性デキストリンによるキサンタンガムの水和分散性と作用速度の改善効果を検討した。評価結果を表4に示した。
【0096】
なお、実施例1と同様に、粘性発現物質は、紛体状態にあるキサンタンガムと、同じく紛体状態にあるデキストリン(サンデック#100)を混合して準備した。
【0097】
水和分散性は実施例1、2と同様に、作用速度は実施例2と同様に評価した。
【0098】
表4中の数字は実施例1、2の場合と同様に、各物質の混合割合(成分比)を意味している。また、難消化性デキストリンは、ロケット・ジャパン(株)製のニュートリオースFBである。
【表4】

【0099】
有機酸(クエン酸)及びその塩(クエン酸三ナトリウム)からなるクエン酸緩衝液と難消化性デキストリンを併用することにより、クエン酸緩衝液を単独で用いる場合に比べて、キサンタンガムの分散性や作用速度が顕著に改善された。この改善効果の状態について以下で詳述する。
【0100】
試料5では、粉体の水和分散性が悪いだけでなく、流動食への作用速度(親和性)も悪かった。粉体を流動食へ添加した直後に、粉体が液面上に滞留する現象が認められ、流動食へ粘性が発現するまでの時間は非常に遅かった。
【0101】
試料6では、粉体の水和分散性が悪く、水中で白濁塊(ダマ)を形成する現象が認められた。これは、お茶や水などの希薄溶液へ使用する際には問題となる。流動食などの濃厚な液状食品へ使用する際にはダマの形成はなく、水和分散性は問題とならないが、粘性が発現するまでの時間は幾らか遅く、作用速度は十分ではない。
【0102】
試料7や8では、粉体の水和分散性と流動食への作用速度の何れも良好であった。これは、有機酸による水和分散性の改善効果と考えられる。
【0103】
また、これに加えて、顆粒の多孔質(ポーラス)構造による親和性の改善効果が要因であると推察された。顆粒が多孔質構造となった原因として、クエン酸緩衝液の作用が考えられる。
【0104】
試料19では、粉体の水和分散性と流動食への作用速度の何れも良好であり、試料7や8に比べて何れも改善された。これは前述の通り、有機酸による水和分散性の改善効果、顆粒の多孔質構造による親和性の改善効果が主な要因であると考えられるが、さらに、難消化性デキストリンが顆粒の多孔質構造を強化し、安定化させたためと考えられる。
【0105】
この結果、有機酸(クエン酸)及びその塩(クエン酸三ナトリウム)からなるクエン酸緩衝液を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化(造粒)した試料7、8及び、前記クエン酸緩衝液に難消化性デキストリンを併用してキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化(造粒)した試料19は本発明の液状食品増粘化剤として有用であると認められた。また、クエン酸緩衝液と難消化性デキストリンを併用することにより、クエン酸緩衝液を単独で用いる場合に比べて、キサンタンガムの分散性や作用速度が顕著に改善されることが確認された。
【0106】
また、同様にして、リン酸及びその塩からなるリン酸緩衝液を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化(造粒)した試料、及び前記リン酸緩衝液に難消化性デキストリンを併用してキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化(造粒)した試料を、この実施例と同様にして調製し、同様に検討したところ、いずれも本発明の液状食品増粘化剤として有用であると認められた。また、リン酸緩衝液と難消化性デキストリンを併用することにより、リン酸緩衝液を単独で用いる場合に比べて、キサンタンガムの分散性や作用速度が顕著に改善されることも確認された。
【0107】
さらに、クエン酸及びその塩からなるクエン酸緩衝液、リン酸及びその塩からなるリン酸緩衝液に替えて、クエン酸とリン酸とを用いた場合、並びにクエン酸及びリン酸と難消化性デキストリンとを併用した場合、クエン酸とリン酸とクエン酸の塩とリン酸の塩とを用いた場合、並びにこれに難消化性デキストリンを併用した場合でも同様に、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化(造粒)し、前記と同様に検討したところ、いずれも本発明の液状食品増粘化剤として有用であると認められた。また、難消化性デキストリンを併用することにより、併用しない場合に比べて、キサンタンガムの分散性や作用速度が顕著に改善されることも確認された。
【実施例4】
【0108】
(有機酸による粘性発現物質の作用速度の改善効果)
表5に示した組成の粘性発現物質とバインダーをそれぞれ流動層造粒装置に投入し、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化し、粉体(顆粒)を得た。
【0109】
表5にあるように、試料21では、粘性発現物質に、試料1〜試料19の場合の配合に加えて、カラギナンを追加した。
【0110】
なお、この実施例でも、試料20、試料21については、実施例1と同様に、粘性発現物質は、いずれも紛体状態にあるものを混合して準備した。
【0111】
試料22は参考例として検討を行なったものである。
【0112】
試料22におけるエマルスター(顆粒状)とは、キサンタンガムを顆粒状にしたものである。試料22では、この予め顆粒状にしたキサンタンガム(エマルスター)と、サンデック#100を混合して造粒(顆粒化)した。つまり、試料22では、既に顆粒状のキサンタンガムを、さらに造粒したこととなる。
【0113】
前記のようにして調製した粉体(顆粒)を、各種の液状食品などへ添加し混合した後に作用速度を評価した。
【0114】
ここで、表5中の数字は実施例1の場合と同様に、各物質の混合割合(成分比)を意味している。
【表5】

【0115】
液状食品として、流動食(明治乳業(株)製、脂質:2.8重量%、タンパク質:4重量%、糖質:14.5重量%、食物繊維:1重量%)、牛乳(明治乳業(株)製)を使用した。
【0116】
それぞれの粘度と時間の関係を図1、図2に示した。
【0117】
流動食(図1)や牛乳(図2)などの高濃度(高粘度)の液状食品において、有機酸による作用速度の改善効果が大きいことを確認できた。
【実施例5】
【0118】
(無機酸による粘性発現物質の作用速度の改善効果)
表6に示した組成の粘性発現物質とバインダーをそれぞれ流動層造粒装置に投入し、キサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化し、粉体(顆粒)を得た。
【0119】
表6にあるように、試料24では、粘性発現物質に、試料1〜試料19の場合の配合に加えて、カラギナンを追加した。
【0120】
なお、この実施例でも、試料23、試料24については、実施例1と同様に、粘性発現物質は、いずれも紛体状態にあるものを混合して準備した。
【0121】
試料25は実施例4における試料22と同じく参考例として検討を行なったものであり、試料25におけるエマルスター(顆粒状)がキサンタンガムを顆粒状にしたもので、試料25では、この予め顆粒状にしたキサンタンガム(エマルスター)と、サンデック#100を混合して造粒(顆粒化)したものである点は、実施例4における試料22の場合と同様である。
【0122】
前記のようにして調製した粉体(顆粒)を、各種の液状食品などへ添加し混合した後に作用速度を評価した。
【0123】
ここで、表6中の数字は実施例1の場合と同様に、各物質の混合割合(成分比)を意味している。
【0124】
また、表6中のグリエイトとはタマリンドガム分解物溶液(大日本住友製薬(株)製)である。
【表6】

【0125】
液状食品として、流動食(実施例4と同等)を使用した。
【0126】
それぞれの粘度と時間の関係を図3に示した。流動食(図3)のような高濃度(高粘度)の液状食品において、無機酸による作用速度の改善効果が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、加熱や冷却の必要がなく、お茶や水などの希薄溶液に直接添加しても優れた分散性を有し、さらに、流動食などの濃厚な液状食品に直接添加しても優れた親和性(速やかな粘性の発現性)を有しており、その使用時において適宜、その添加量によってトロミ(粘性)を調整できる、液状食品増粘化剤及びその製造法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガムと、解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を含有することを特徴とする液状食品増粘化剤。
【請求項2】
前記含有されている有機酸及び/又は無機酸の塩をさらに含有していることを特徴とする請求項1記載の液状食品増粘化剤。
【請求項3】
有機酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の液状食品増粘化剤。
【請求項4】
無機酸がリン酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の液状食品増粘化剤。
【請求項5】
難消化性デキストリンをさらに含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液状食品増粘化剤。
【請求項6】
解離度が乳酸よりも大きい有機酸及び/又は無機酸を用いてキサンタンガムをコーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化することを特徴とする液状食品増粘化剤の製造法。
【請求項7】
前記コーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する際に、さらに前記有機酸及び/又は無機酸の塩を用いることを特徴とする請求項6記載の液状食品増粘化剤の製造法。
【請求項8】
前記コーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する際に、さらに難消化性デキストリンを用いることを特徴とする請求項6又は7記載の液状食品増粘化剤の製造法。
【請求項9】
前記コーティング及び/又はコーティングすると供に顆粒化する際に流動層造粒装置、固定層造粒装置又は、噴霧乾燥装置を用いることを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項記載の液状食品増粘化剤の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39141(P2013−39141A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257109(P2012−257109)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2008−516712(P2008−516712)の分割
【原出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【Fターム(参考)】