説明

液相ホモジニアスアッセイ

すべての試薬が水溶液に可溶性である場合の、被検体を含有している疑いのある試料中の被検体を測定するための方法、試薬、キット、およびシステムが開示される。1つのアッセイ法は、被検体を含有している疑いのある試料を、被検体が存在する場合、アクチベーターが、化学発光化合物と反応性の配置にされることによって、これを活性化する条件下で処理するステップを含む。試料はまた、被検体に関係しないシグナルを低減するための作用剤を用いて処理される。最後に、試料はトリガー溶液で処理され、それによって、活性化された化学発光化合物から光を生じさせる。試薬は、表面または他の固相にまったく結合していない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特異的結合アッセイは、物質の量の存在を検出するための試験方法であり、特異的結合パートナーの特異的な認識およびこれとの結合に基づく。イムノアッセイは、特異的結合アッセイの例であり、抗体が特定のタンパク質または化合物に結合する。この例では、抗体は、特異的結合対メンバーの一メンバーである。核酸結合アッセイは、別の型であり、相補的核酸鎖が特異的結合対である。特異的結合アッセイは、技術の広く、成長しつつある分野を占め、これは、疾患状態、感染性の生物、および乱用薬物の正確な検出を可能にする。要求される感度、ダイナミックレンジ、ロバスト性、自動化のための広い適用性および適正を有するアッセイおよびアッセイ法を考案するために、多くの研究が過去数十年にわたって捧げられている。これらの方法は、2つのカテゴリーに広く分類することができる。
【0002】
ホモジニアス法は、被検体特異的結合反応を利用することによって、被検体特異的反応物と被検体非特異的反応物の間の分離ステップを必要とすることなく、検出可能なシグナルを調節し、または作り出す。ヘテロジニアス形式は、被検体が結合した、および遊離した(被検体に結合していない)検出可能な程度に標識された特異的結合パートナーの物理的な分離に依拠する。分離は一般に、極めて重要な反応物が、いくつかの型の物理的プロセス、例えば、濾過、沈殿、凝集、または磁気分離を使用することができるように、いくつかの型の固体基材上に固定されることを必要とし、一般に、遊離した検出可能な程度に標識された特定の結合パートナーを除去するために、洗浄ステップも必要とする。
【0003】
化学発光シグナルの生成に依拠し、これを被検体の量に関連づけるアッセイ法は、ますます使用されてきている。そのような方法は、相対的に単純な機器を用いて実施され、それでも良好な分析特性を示すことができる。特に、被検体のために酵素標識特異的結合パートナー(enzyme−labeled specific binding partner)、および検出のために化学発光酵素基質を使用する方法は、広範な用途がある。一般的な標識酵素には、アルカリホスファターゼ、および西洋わさびペルオキシダーゼが含まれる。
【0004】
特許文献1は、第1の膜上の増感剤または増感剤標識プローブに結合したポリヌクレオチド被検体を検出する方法を開示している。この膜は、固定化された化学発光前駆体を有する第2の膜と接触している。サンドイッチ状になった膜中の増感剤が励起されると一重項酸素が生成し、これは、化学発光前駆体と反応することによって、第2の膜上に作動可能な(triggerable)化学発光化合物を生成する。作動可能な化学発光化合物は、試薬と反応することによって、第2の膜上で、被検体を検出するための化学発光を生じさせる。これらの方法は、反応物を接触させるための特異的結合反応に依拠せず、むしろ第2の膜は、試薬送達デバイスとして機能を果たす。
【0005】
特許文献2は、被検体が、光感受性物質および化学発光化合物をごく接近させるような条件下で、被検体を含有する疑いのある媒質を処理するステップを含むアッセイ法を開示している。光増感剤は、光源で照射されると一重項酸素を生成し、一重項酸素は、溶液を通じて拡散し、化学発光化合物がごく近くにあるとき、化学発光化合物を活性化する。活性化された化学発光化合物は、引き続いて光を生成する。生成される光の量は、媒質中の被検体の量に関係する。一実施形態では、光増感剤または化学発光化合物の少なくとも1つは、懸濁可能な(suspendible)粒子と結合し、特異的な結合対メンバーがそれに結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,911,305号明細書
【特許文献2】米国特許第6,406,913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許出願公開第US20070264664号、および同第US20070264665号は、固定化された化学発光化合物と、特異的な結合反応によって反応性の配置にされたアクチベーター化合物との反応を伴う、特異的結合対アッセイを実施するためのアッセイ法を開示している。過剰の非結合の化学発光化合物またはアクチベーターの分離または除去をまったく必要としない。これらのアッセイ形式は、従来技術のアッセイ技法と比較して、自動化における優れた操作の利便性および柔軟性をもたらす。これらの利点にもかかわらず、アッセイ設計および性能の追加の改善は、依然としてアッセイ開発者の目標となっている。本開示のアッセイ法は、改善された感度の単純なアッセイ法を提供することによって、これらの必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すべての試薬が水溶液に可溶性である、被検体を含有している疑いのある試料中で、被検体を測定するための方法、試薬、キット、およびシステムが開示されている。1つのアッセイ法は、被検体を含有している疑いのある試料を、被検体が存在する場合、アクチベーターが、化学発光化合物と反応性の配置にされることによって、化学発光化合物を活性化する条件下で処理するステップを含む。試料はまた、被検体に関係しないシグナルを低減するための作用剤を用いて処理される。最後に、試料はトリガー溶液で処理され、それによって、活性化された化学発光化合物から光を生じさせる。試薬は、表面または他の固相にまったく結合していない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
アルキル −− 1〜20個の炭素を含有する分枝、直鎖、または環状の炭化水素基であり、これは、H以外の1つ以上の置換基と置換されていてもよい。低級アルキルは、本明細書で使用する場合、最大8個の炭素を含有するアルキル基を指す。
【0010】
被検体 −− アッセイにおいて検出されるべき試料中の物質。被検体への特異的な結合親和性を有する1つ以上の物質が、被検体を検出するのに使用される。被検体は、タンパク質、ペプチド、抗体またはハプテン(それに結合する抗体が作られ得る)とすることができる。被検体は、相補的な核酸またはオリゴヌクレオチドによって結合される核酸またはオリゴヌクレオチドであってもよい。被検体は、特異的結合対のメンバーを形成する任意の他の物質とすることができる。他の例示的な型の被検体として、ステロイドなどの薬物、ホルモン、タンパク質、糖タンパク質、ムコタンパク質、核タンパク質、リンタンパク質、乱用薬物、ビタミン、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス剤、プリン、抗腫瘍薬、アンフェタミン、アゼピン化合物、ヌクレオチド、およびプロスタグランジン、ならびにこれらの薬物のいずれかの代謝産物、農薬および農薬の代謝産物、ならびに受容体が挙げられる。被検体には、細胞、ウイルス、細菌、および真菌も含まれる。
【0011】
アクチベーター:トリガーの存在下で、化学発光が生じるような化学発光化合物の活性化をもたらす、標識と呼ばれる場合もある化合物。
【0012】
アクチベーター標識sbm、またはアクチベーター特異的結合メンバーコンジュゲート − 連結している配置で少なくとも以下のものを含むアッセイミックス中の反応物:a)被検体のための特異的結合メンバー、およびb)化学発光化合物の活性化をもたらすアクチベーター化合物または標識。
【0013】
抗体 −− 完全免疫グロブリン、ならびに天然断片および操作された断片を含む。
【0014】
アラルキル −− アリール基で置換されたアルキル基。例には、ベンジル、ベンズヒドリル(benzyhydryl)、トリチル、およびフェニルエチルが含まれる。
【0015】
アリール −− H以外の1つ以上の置換基で置換されている場合がある、1〜5個の炭素環式芳香環を含有する芳香環含有基。
【0016】
生体物質 −− 例えば、全血、抗凝固処理全血(anticoagulated whole blood)、血漿、血清、組織、動物細胞および植物細胞、細胞の内容物、ウイルス、ならびに真菌を含む。
【0017】
化学発光化合物 −− 例えば、電子励起状態において形成される別の化合物に変換されることによって、光の放出を引き起こすように反応を起こす、標識と呼ばれる場合もある化合物。励起状態は、一重項励起状態であっても、三重項励起状態であってもよい。励起状態は、基底状態に緩和すると光を直接放出することができ、または放出性エネルギーアクセプター(emissive energy acceptor)に励起エネルギーを移し、それによって基底状態に戻ることができる。エネルギーアクセプターは、このプロセスにおいて励起状態に上げられ、光を放出する。
【0018】
化学発光標識固定sbm:連結している配置で少なくとも以下のものを含むアッセイミックス中の反応物:a)被検体のための特異的結合メンバー、b)化学発光化合物または標識、およびc)固相。
【0019】
連結している −− 本明細書で使用する場合、2つ以上の化学種または支持体材料(support material)が、例えば、1つ以上の共有結合によって化学的に連結され、または例えば、吸着、イオン引力、もしくは親和結合などの特異的結合プロセスによって受動的に結合されていることを示す。そのような種または物質が互いに連結されているとき、1つを超える型の連結を伴っていてもよい。
【0020】
用量反応 − 試料中で測定されている被検体の量に関係する、アッセイ反応からの化学発光出力などのシグナル。
【0021】
ヘテロアルキル −− 環または非末端鎖炭素原子の少なくとも1つが、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子で置換されているアルキル基。
【0022】
ヘテロアリール −− 環炭素原子の1〜3個が、N、O、またはSから選択されるヘテロ原子で置換されているアリール基。例示的な基には、ピリジル、ピロリル、チエニル、フリル、キノリル、およびアクリジニル(acridnyl)基が含まれる。
【0023】
試料 −− アッセイにおいて測定される被検体を含有するか、または含有する疑いのある混合物。被検体として、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、ホルモン、抗体、薬物、およびステロイドが挙げられる。本開示の方法において使用することができる典型的な試料として、体液、例えば、収集された血液試料中に一般に見出されるような抗凝固処理血液であってもよい血液、血漿、血清、尿、精液、唾液、細胞培養物、組織抽出物などが挙げられる。他の型の試料として、溶媒、海水、工業用水試料、食物試料、および土壌または水などの環境試料、植物材料、真核生物、細菌、プラスミド、ウイルス、真菌、および原核生物に由来する細胞が挙げられる。
【0024】
sbp −− 特異的結合対メンバーまたは特異的結合パートナーは、別の物質(例えば、被検体)に対して特異的な結合親和性を有する、生体分子を含めた分子である。好ましくは被検体上の異なる結合部位を伴う、被検体についての2つの特異的結合パートナーは、特異的結合対と呼ばれる。
【0025】
SSIA、(選択的シグナル阻害剤(Selective Signal Inhibiting Agent)) − 非特異的なシグナルまたはバックグラウンドシグナルが、アッセイ反応混合物の化学発光生成反応から生じる被検体特異的シグナルより大きい量で低減されるように、本開示のアッセイ反応混合物で提供される化合物。
【0026】
固体支持体 −− アッセイ成分が固定化される表面を有する、サイズが少なくとも1ミクロンの物質。物質は、粒子、微粒子、ナノ粒子、金属コロイド、繊維、シート、ビーズ、膜、フィルター、ならびに他の支持体、例えば、試験管、マイクロウェル、チップ、ガラススライド、およびマイクロアレイなどの形態とすることができる。
【0027】
可溶性の、溶解度、可溶化する − 1つの物質が、別の物質と均一にブレンドする能力または傾向。本開示では、溶解度および関連用語は一般に、液体中の固体、例えば、水性緩衝液中のSSIAの特性を指す。固体は、これらがその結晶形態を失い、溶媒(例えば、液体)中に、分子的またはイオン的に溶解または分散した状態になることによって真の溶液を形成する程度に可溶性である。対照的に:1つの相が、沈殿を阻止するように安定化されていても、安定化されていなくても、バルク物質全体にわたって分布した小さい粒子(微粒子またはコロイドサイズの粒子を含む)からなる2相系。
【0028】
置換された −− 1つの基上の少なくとも1つの水素原子の、非水素基による置換を指す。置換される基に関して、別段の明らかな指示のない限り、複数の置換箇所が存在し得ることが意図されていることに留意すべきである。
【0029】
反応容器 −− 本発明によるアッセイの試料および他の成分を入れるための容器または装置。例えば、様々なサイズおよび形状の試験管、ならびにマイクロウェルプレートが含まれる。
【0030】
開示
本開示は、ホモジニアスアッセイ法、特に、化学発光標識特異的結合パートナー、およびアクチベーター標識特異的結合パートナーコンジュゲート、および被検体が結合した後の、被検体の化学発光検出を使用するホモジニアスアッセイ法を提供する。ホモジニアスアッセイおよび方法は、複合体中で結合した特異的結合パートナーから遊離の特異的結合パートナーを分離することなく実施される。
【0031】
本開示は、特異的な結合対反応によって物質の存在、位置、または量を検出するための迅速で単純なホモジニアスアッセイを提供する。このアッセイは、溶液相およびトリガー溶液中で、第1の特異的結合パートナーに連結している化学発光化合物(「化学発光標識sbp」)、第2の特異的結合パートナーにコンジュゲートされたアクチベーター化合物(「アクチベーター標識sbp」)、選択的シグナル阻害剤(「SSIA」)、エンハンサーを使用することが必要である。
【0032】
他のホモジニアスアッセイと対照的に、本開示の基本の実施形態では、アクチベーター標識sbp、および化学発光標識sbpを含めたすべての反応物は、水溶液に可溶性である。実際に、本開示のアッセイは、固相を必要とせず、または利用しない。本アッセイ法はまた、特殊化されたコンストラクト、すなわち、不活化されているか、または複合体中で別の成分と結合された後に特定の検出可能なシグナルを生成することができるだけである検出可能な成分と共に設計される標識された特異的結合対メンバーを必要としないことによって、他のホモジニアスアッセイ法と異なる。本開示のアッセイシステムと対照的に、他のホモジニアスアッセイシステムは、これらがそのような特殊化された成分を必要とすることから、準備するのに複雑、困難、または高価である。本アッセイは、アッセイの設計および開発に対してより単純で、より柔軟な手法を提供し、多種多様な被検体へのより素早い適用を可能にする。本アッセイ法は、複合体中で結合した特異的結合パートナーから遊離の特異的結合パートナーを区別するために分離ステップまたはプロセスを利用しないことによって、従来のヘテロジニアスアッセイ法または分離に基づくアッセイ法と異なる。分離を回避する本アッセイ法を使用することによって、アッセイの実施が単純化され、アッセイ時間を低減することができ、自動化が促進される。
【0033】
本開示のアッセイ法では、化学発光標識sbp、アクチベーター標識sbp、および選択的シグナル阻害剤(「SSIA」)が、水溶液中で試料と共に一緒にされる。一実施形態では、sbpメンバーによって認識される被検体が試料中に存在する場合、化学発光標識sbp、およびアクチベーター標識sbpはそれぞれ、被検体の異なる範囲に結合する。被検体に関係する特定のシグナルが生成され、トリガー溶液を添加すると検出が始まる。別の実施形態では、被検体の化学発光標識類似体が、競合アッセイ形式で使用するために提供される。被検体および化学発光標識類似体が、アクチベーター標識sbpに競合的に結合する。競合的結合アッセイの一実施形態では、化学発光標識類似体とアクチベーター標識sbpの複合体を予め形成し、被検体を添加することによって標識類似体を置換することができる。別の実施形態では、化学発光標識類似体、被検体、およびアクチベーター標識sbpは、結合複合体を予め形成することなく、一緒に混合することができる。被検体に関係する特異的なシグナルが生成され、トリガー溶液を添加すると検出が始まる。このアッセイ形式において、シグナルは、被検体濃度と逆に関係する。
【0034】
特異的結合パートナーが被検体に結合する結果として、アクチベーターが、トリガー溶液を添加すると化学発光を生じさせる反応を活性化するのに有効であるように、化学発光化合物に作動可能に近接した状態にされる。アクチベーターと化学発光化合物の反応は、化学発光化合物を活性化し、または変化させ、その結果、トリガー溶液を用いた処理により、さらなる反応が生じ、光の生成がもたらされる。作動可能に近接とは、化学発光化合物およびアクチベーターが、最大で物理的接触を含めて、これらが反応することができるほど十分に近いことを意味する。過剰量のアクチベーター標識特異的結合パートナーおよび/または化学発光標識特異的結合パートナーを、被検体の濃度を判定するのに必要な量に関連させてシステムに供給することができる。過剰の非結合のアクチベーター標識sbpおよび/または非結合の化学発光コンジュゲートは、トリガー溶液の添加、および検出の前に除去されず、その理由は、アッセイシステムにおけるこれらの存在および固相の欠如が、化学発光検出シグナルが被検体の量に正確に相関することを妨げないためである。非結合の標識された特異的結合パートナーは、同じ化学発光検出反応を起こすことができ、反応物は固相に連結されていないので、シグナルの被検体との有用な相関のまったくないこと、またはせいぜい、非常に限定された相関が予期される。この特徴は、従来の知識によれば、通常アッセイを失敗させる。
【0035】
目ざましいことに、この問題は、本方法において選択的シグナル阻害剤を使用することによって克服された。本方法では、溶解していて固相にまったく連結しない反応物、ならびに除去されない過剰のアクチベーターおよび/または過剰の化学発光化合物の存在は、感度のよい、特異的な、被検体濃度依存性結合アッセイを実施する能力を無効にしない。この知見は、予期されておらず、または予測可能でなかった。特に、アクチベーターが酵素(これが反応する分子が溶けていて遊離しているときに、通常毎秒数百から数千の反応性変換を生じる)などの触媒である場合、広範囲の被検体濃度にわたって用慮反応性のシグナルを生成するために、結合したアクチベーターを、遊離アクチベーター反応物から有用に識別し得るとは予期されていなかった。それにもかかわらず、本発明者らは、優れた識別は、ある特定のSSIA化合物の添加からおこることを発見した。SSIAを使用することにより、標識された特異的結合対メンバーと被検体との複合体により共に反応性の配置にある、化学発光標識とアクチベーター標識の間の反応によって生じるシグナルと、存在するが、そのような複合体中ではない標識からのシグナルとの比は、劇的に改善される。
【0036】
アッセイ感度の改善におけるSSIAの機能は、スキーム1を参照して理解される。遊離した(例えば、被検体に結合されていない)、および複合体形成した(例えば、被検体が結合した)、化学発光標識sbp(「CLSBP」)、およびアクチベーター標識特異的結合対(「ALSBP」)の複数の異なる組合せが、トリガー溶液が添加されるとき、観察される化学発光シグナルにおそらく寄与することができる。4つの提案される反応スキームを以下に列挙する。
1 結合−ALSBP+結合−CLSBP→特異的シグナル
2 結合−ALSBP+遊離−CLSBP→非特異的シグナル
3 遊離−ALSBP+結合−CLSBP→非特異的シグナル
4 遊離−ALSBP+遊離−CLSBP→非特異的シグナル
上記リストに示したように、4つの異なる型の化学発光物質(chemiluminescer)−アクチベーター対が、反応ミックス中で反応することができる;それにもかかわらず、第1の型のみが、アッセイにおいて被検体の量に関係づけられるシグナルを生成する。SSIAは、反応1からのシグナルの量と関連して、反応2〜4からのシグナルの量を選択的に阻害または抑制することによって、その目ざましい機能を実現する。いくつかの実施形態では、これは、4つすべての反応を低減するが、2〜4からのシグナルをはるかに多く比例して低減することによって起こり得る。
【0037】
本発明の実施形態では、被検体および被検体についての特異的結合パートナー(sbp)を伴う特異的結合反応によって、試料中の対象とする被検体をアッセイする方法であって、一方の特異的結合パートナーが、酵素、特にペルオキシダーゼ酵素などの触媒とすることができるアクチベーター化合物で標識される方法が提供される。被検体についての別の特異的結合パートナーは、化学発光化合物で標識される。標識されたsbpと被検体の結合は、標識された複合体を形成する。化学発光化合物は、トリガー溶液が添加されると、アクチベーターによって誘発される化学発光反応を起こす。生じる化学発光は、試料中の被検体の量に関係する。特異的結合対反応および化学発光反応は、溶液、一般に水溶液中に溶解したすべての成分と共に実施される。重要なことには、標識された特異的結合パートナーは、標識されたsbpのすべてが被検体と複合体を形成しないように、試料中の被検体の量に関して過剰量で提供される。過剰の標識されたsbpは、化学発光反応に関与することができるが、反応溶液から除去されない。複合体中でなく、除去されない標識されたsbpの反応性は、通常、そのようなホモジニアスアッセイが実施されることを妨げ、その理由は、被検体によって媒介される複合体形成の存在によるものではない、容認しがたく高いシグナルが生成されるためである。多くの場合では、非常に多くの「バックグラウンド」シグナルが生成され、有用な用量−反応関係をまったく引き出すことができない。化学発光シグナル生成に必要な反応成分のすべてが、結合複合体、および遊離または非結合形態の両方に存在する場合に、ホモジニアス非分離アッセイを実施することができるために、物理的な分離以外のいくつかの手段が、結合した標識されたsbpと非結合の標識されたsbpを識別するために提供されなければならない。本発明は、この問題に対する、長く求められていた解決策を提供し、すべての成分が溶けて存在しており、分離が実施されないアッセイ法を提供する。公知のホモジニアスアッセイ法と異なり、本方法は、特別に設計された、標識された結合パートナーであって、これらが結合複合体にされない限りシグナル生成反応を起こすことができないパートナーを必要とせず、または使用しない。
【0038】
本発明によって具現されるアッセイ法において、被検体との複合体中で結合した標識されたsbpメンバーの、遊離した非結合の標識されたsbpメンバーからの必要な識別は、反応溶液に選択的シグナル阻害剤(SSIA)を供給することによって実現される。反応溶液に有効量のSSIAを添加することにより、結合した標識されたsbpメンバーからのシグナル(シグナル)が、非結合の標識されたsbpメンバーからの任意のシグナル寄与を含むバックグラウンドシグナルを、SSIAの非存在下で起こるより有意に大きい程度に上回る。シグナルとバックグラウンドの関係のこの改善が実現されるとき、より高いレベルの検出感度を含めたアッセイの有用性が増大する。
【0039】
一実施形態では、アッセイ法、特に、結合アッセイ法であって、化学発光標識sbpおよびアクチベーター標識sbpが、被検体の存在による少なくとも1つの特異的結合反応を介して、作動可能に近接され、結合したアクチベーター標識sbpが反応を活性化し、トリガー溶液を添加すると化学発光を生成して、被検体の存在、位置、または量を検出するアッセイ法が提供される。
【0040】
一実施形態では、本方法はまた、被検体と特異的に連結している量に対して大過剰で存在する非結合のアクチベーター標識sbpを除去しないことにおいて、従来の試験方法と異なる。過剰の非結合のアクチベーターアクチベーター標識sbpの洗浄および分離をまったく必要としない。別の実施形態では、本方法は、被検体と特異的に連結している量に対して過剰に存在する非結合の化学発光コンジュゲートも除去しない。過剰の非結合の化学発光コンジュゲートの洗浄および分離をまったく必要としない。
【0041】
アッセイ成分、すなわち、被検体を含有する試料、アクチベーター標識sbp、化学発光標識sbp、選択的シグナル阻害剤、およびトリガー溶液は、洗浄および分離をすることなく、試験容器に順次添加することができ、発光を読むことができる。最後に添加されるトリガー溶液以外のアッセイ成分は、試験容器に任意の順序または組合せで添加することができる。一実施形態では、試料およびアクチベーター標識sbpを、予め混合し、化学発光標識sbpの入った試験容器に添加した後、トリガー溶液を導入することができる。
【0042】
化学発光基質、および酵素標識コンジュゲートを使用する従来のアッセイは、標識酵素の量に対して大過剰で化学発光基質を供給する。しばしば、基質/酵素のモル比は、10の9乗、すなわち、10億倍過剰を超える場合がある。連続的な酵素ターンオーバーのために基質の適切な供給を確実にし、このプロセスがアッセイ法において適切な検出感度を保証するために、そのような非常に大過剰の化学発光化合物を供給することが、従来のアッセイにおいて必要であると考えられている。出願人らは、化学発光化合物とアクチベーターの比を数桁低減する高感度のアッセイ法を考案することが可能であることを見出した。この点において、本明細書に記載されるこれらの方法は、公知の酵素連結アッセイ法と基本的に異なる。
【0043】
上記したように、かつ以下に記載される例示的なアッセイにおいて実証されるように、洗浄ステップおよび分離ステップの排除は、アッセイプロトコールの設計を単純化する機会をもたらす。操作ステップの数の低減は、アッセイ時間、不完全な洗浄に由来するアッセイ間ばらつき、および費用を減少させる。同時に、これは、自動化および小型化に付帯的な固有の利点のすべてを伴って、アッセイの実行を自動化および小型化する能力を増強する。
【0044】
本方法によって実施されるアッセイは、対象とする被検体を特異的に結合または捕捉するための特異的結合パートナー(「sbp」)を提供するステップを含む。特異的結合パートナーは、検出される被検体に直接または間接的に結合することができる。特異的結合パートナーは、直接または間接的にそれに結合した化学発光標識化化合物(chemiluminescent labeling compound)と共にさらに提供される。化学発光標識は、以下により詳細に記載されるように、いくつかの異なる方法で提供することもできる。各変形において、化学発光標識は、「化学発光標識sbp」の水溶解度を維持する様式で、特異的結合パートナーと直接または間接的に、安定に、または不可逆的に連結される。「不可逆的に」とは、化学発光標識が、意図されたアッセイにおける使用条件下で、化学発光標識sbpから実質的に除去されないことを意図する。受動的な、または非共有結合性の結合も企図されており、ただし、標識は、使用条件下で化学発光標識sbp上に安定に結合および保持される。
【0045】
このアッセイは、被検体を有するアクチベーター標識sbp、および被検体のための化学発光標識sbpが連結している特異的結合パートナーを提供するステップ、ならびにこれらの成分に特異的な結合複合体を形成させるステップをさらに含む。試料、化学発光標識sbp、およびアクチベーターアクチベーター標識sbpは、任意の順序もしくは任意の組合せで順次もしくは同時に別個に添加することができ、または予め混合し、組合せとして添加することができる。一般に、被検体を標識されたsbpメンバーに結合させるのにある時間の期間が必要となる。これは、結合反応を起こさせるのに任意選択の遅延時間によって結合成分が順次添加される、いくつかの実施形態において実現することができる。
【0046】
結合複合体が形成された後、トリガー溶液が添加されることによって、被検体を検出するための化学発光が生じ、化学発光が検出される。一般に、ピーク光強度レベル、または光強度が固定時間間隔について積分され、または全積分光強度が測定される。生成される光の量は、反応容器内に含まれる試料中に存在する被検体の量に関係する。光の量は、一般に公知の方法に従って較正曲線を構築することによって、被検体の数値的量を決定するのに使用することができる。発光が、トリガー溶液を添加すると急速に引き続いて起こる場合、測定の開始を、適当な注射器による添加に対して機械的に調節し、または検出器にすでに曝された反応容器を用いて添加を実施することが望ましい。反応物の最適量、体積、希釈度、特異的結合対反応のためのインキュベーション時間、反応物の濃度などは、日常の実験によって、特異的結合アッセイを実施する方法に対する標準的な論文を参照することによって、および以下に詳細に記載される具体例を指針として使用して容易に決定することができる。
【0047】
本方法およびアッセイにおいて使用されるsbpメンバーの濃度または量は、被検体濃度、所望の結合の速度/アッセイ時間、費用、およびコンジュゲートの利用可能性、sbpメンバーの非特異的結合の程度などの要因に依存する。通常、sbpメンバーは、最小の予測される被検体濃度に少なくとも等しく、より通常には、少なくとも予期される最高の被検体濃度またはそれより高い濃度で存在することになり、非競合的アッセイについては、濃度は、最高被検体濃度の10倍〜10倍である場合がある。通常、sbpメンバーの濃度は、10−4M未満、好ましくは10−6M未満、しばしば10−11〜10−7Mの間である。sbpメンバーと連結されるアクチベーターまたは化学発光化合物の量は、通常、sbpメンバー当たり少なくとも1つの分子となり、10以上もの多さとなり得る。多くの実施形態では、sbpメンバーと連結されるアクチベーターまたは化学発光化合物の量は、1〜20分子である。アクチベーターと化学発光化合物との比の例および他の比は、実施例に示されている。
【0048】
化学発光標識sbp
この方法は、第1の特異的結合パートナーと連結される化学発光化合物(「化学発光標識sbp」)の使用を必要とする。
【0049】
本開示のアッセイおよび方法では、化学発光標識sbpは、水溶液に可溶性である。本開示のアッセイおよび方法では、化学発光標識化化合物は、他の親和性アッセイおよび方法において見出されるように、固体表面、例えば、粒子、マルチウェルプレート、または膜、フィルター、試験管、ディップスティック、またはピペットチップなどに固定化されない。
【0050】
化学発光標識sbpは、化学発光標識化合物、および特異的結合対のメンバーを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、化学発光標識sbpは、1つ以上の化学発光標識化合物を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、化学発光標識sbpは、特異的結合対のメンバーの1つ以上のコピーを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、化学発光標識化合物は、特異的結合対のメンバーの1つ以上のコピーに直接連結される。いくつかの他の実施形態では、1つ以上の化学発光標識化合物が、特異的結合対のメンバーの1つのコピーに直接連結される。直接標識された、とも呼ばれる直接連結には、共有結合相互作用、イオン結合相互作用、および疎水性相互作用が含まれる。一実施形態では、化学発光標識は、被検体のための特異的結合パートナーに共有結合でつながれる。
【0054】
いくつかの実施形態では、化学発光標識化合物は、特異的結合対のメンバーの1つ以上のコピーに間接的に連結される。いくつかの他の実施形態では、1つ以上の化学発光標識化合物が、特異的結合対のメンバーの1つのコピーに間接的に連結される。間接的な連結は、化学発光標識化合物および特異的結合対のメンバーに加えて、1つ以上の補助物質(auxiliary substance)を含む。
【0055】
補助物質は、水溶液に可溶性である。1つ以上の補助物質を含む化学発光標識sbpは、水溶液に可溶性である。
【0056】
様々な実施形態では、補助物質として、可溶性タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラビジン、ビオチン、陽イオン化されたBSA、fos、jun、キーホールリンペットヘモシニアン「KLH」、天然であるかまたは操作された免疫グロブリンおよびその断片または部分、可溶性合成デンドリマー(例えば、PAMAM)、可溶性合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸「PAA」)、可溶性天然ポリマー(例えば、官能性デキストラン、アミノ−デキストランなどの多糖、オリゴヌクレオチド、タンパク質、およびこれらの任意の組合せ)、リポソーム、ミセル、およびベシクル、ならびに可溶性合成ポリマー、可溶性天然ポリマー、および可溶性タンパク質の1つ以上の組合せ(例えば、IgG/ビオチン/ストレプトアビジン/PAA)が挙げられる。水溶液に可溶性であり、1つ以上の化学発光標識化合物および/またはsbpへの結合のために機能化可能である他の補助物質も、開示される方法およびアッセイにおける使用が想定されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、化学発光標識が共有結合でつながれる補助物質は、タンパク質またはペプチドである。例示的な可溶性タンパク質として、アルブミン、アビジン類、ストレプトアビジン、アビジン、α−ヘリックスタンパク質、fos、jun、キーホールリンペットヘモシニアン「KLH」、天然であるかまたは操作された免疫グロブリンおよびその断片または部分、ならびにこれらの任意の組合せが挙げられる。一実施形態では、補助物質は、IgGなどのユニバーサル抗体であり、化学発光標識は、被検体特異的な捕捉抗体に対してその結合親和性を維持する様式でユニバーサル抗体に共有結合でつながれる。別の化学発光標識sbpの実施形態では、化学発光化合物は、ビオチン−ストレプトアビジンまたはビオチン−ニュートラビジン結合を介して1つ以上のsbpに連結される。ストレプトアビジン−ビオチン、または等価な結合を組み込んでいる化学発光標識sbpは、例えば、ビオチンコンジュゲートとして特異的結合パートナーを提供することができ、この場合、化学発光化合物は、ストレプトアビジンコンジュゲートである。ビオチン−ストレプトアビジンおよび同様の結合の代替の配置は、一般に公知である。あるいは、ストレプトアビジン−ビオチン、または等価な結合を組み込んでいる化学発光標識sbpは、sbpまたは化学発光化合物の、1つ以上の追加の補助物質への結合(attachment)のための結合(linkage)を利用することができる。
【0058】
別の実施形態では、化学発光標識が共有結合でつながれる補助物質は、合成ポリマーである。化学発光化合物を連結するのにポリマー助剤を使用するアッセイ形式は、ビオチン−アビジンコンジュゲートとして、共有結合によって、または種特異的な免疫グロブリンなどのユニバーサル捕捉成分を通じた間接的な結合によって、被検体についての特異的結合パートナーに連結することができる。
【0059】
選ばれた実施形態では、化学発光標識sbpは、多糖または可溶性自己集合タンパク質から選択される補助物質を含む。いくつかの実施形態では、化学発光標識sbpは、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖を含む。いくつかのそのような実施形態では、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖は、10kDa〜500kDaの範囲内の平均分子量を有し、他の実施形態では、25〜150kDaの範囲内の平均分子量を有する。さらなる実施形態では、化学発光標識sbpは、50〜100kDaの範囲内の平均分子量を有する、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖を含む。なおさらなる実施形態では、化学発光標識sbpは、70kDaの平均分子量を有する、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖を含む。
【0060】
多くの実施形態では、化学発光標識sbpの平均直径は、5nM〜800nMの包含範囲内である。可溶性タンパク質、または他の可溶性天然ポリマー(plymer)もしくは可溶性合成ポリマー、あるいはこれらの組合せを組み込む、選ばれた実施形態では、化学発光標識sbpの平均直径は、200nM〜600nMの包含範囲内であり、いくつかのさらなる実施形態では、300nM〜500nMの包含範囲内である。
【0061】
アクチベーター標識sbp
この方法は、第1の特異的結合パートナーに連結しているアクチベーター化合物(「アクチベーター標識sbp」)の使用を必要とする。
【0062】
本開示のアッセイおよび方法では、アクチベーター標識sbpは、水溶液に可溶性である。本開示のアッセイおよび方法では、アクチベーター化合物は、他の親和性アッセイおよび方法において見出されるような、固体表面、例えば、粒子、マルチウェルプレート、または膜、フィルター、試験管、ディップスティック、またはピペットチップなどに固定化されない。
【0063】
アクチベーター標識sbpは、アクチベーター標識化合物、および特異的結合対のメンバーを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、アクチベーター標識sbpは、1つ以上のアクチベーター化合物を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、アクチベーター標識sbpは、特異的結合対のメンバーの1つ以上のコピーを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、アクチベーター化合物は、特異的結合対のメンバーの1つ以上のコピーに直接連結される。いくつかの他の実施形態では、1つ以上のアクチベーター標識化合物が、特異的結合対のメンバーの1つのコピーに直接連結される。直接標識された、とも呼ばれる直接連結には、共有結合相互作用、イオン結合相互作用、および疎水性相互作用が含まれる。一実施形態では、アクチベーター標識は、被検体のための特異的結合パートナーに共有結合でつながれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、アクチベーター化合物は、特異的結合対のメンバーの1つ以上のコピーに間接的に連結される。いくつかの他の実施形態では、1つ以上のアクチベーター化合物が、特異的結合対のメンバーの1つのコピーに間接的に連結される。間接的な連結は、化学発光標識化合物および特異的結合対のメンバーに加えて、補助物質を含む。
【0068】
補助物質は一般に、水溶液に可溶性である。1つ以上の補助物質を含むアクチベーター標識sbpは、水溶液に可溶性である。様々な実施形態では、補助物質として、可溶性タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラビジン、ビオチン、陽イオン化されたBSA、fos、jun、キーホールリンペットヘモシニアン「KLH」、天然であるかまたは操作された免疫グロブリンおよびその断片または部分、ならびにこれらの任意の組合せ)、可溶性合成デンドリマー(例えば、PAMAM)、可溶性合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸「PAA」)、可溶性天然ポリマー(例えば、デキストランなどの多糖、オリゴヌクレオチド、タンパク質、およびこれらの任意の組合せ)、リポソーム、ミセル、およびベシクル、ならびに可溶性合成ポリマー、可溶性天然ポリマー、および可溶性タンパク質の1つ以上の組合せ(例えば、IgG/ビオチン/ストレプトアビジン/PAA)が挙げられる。水溶液に可溶性であり、1つ以上のアクチベーター標識化合物および/またはsbpへの結合のために機能化可能である他の補助物質も、開示される方法およびアッセイにおける使用が想定されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、アクチベーター標識が共有結合でつながれる補助物質は、タンパク質またはペプチドである。例示的な可溶性タンパク質として、アルブミン、アビジン類、ストレプトアビジン、アビジン、α−ヘリックスタンパク質、fos、jun、キーホールリンペットヘモシニアン「KLH」、天然であるかまたは操作された免疫グロブリンおよびその断片または部分、ならびにこれらの任意の組合せが挙げられる。一実施形態では、補助物質は、IgGなどのユニバーサル抗体であり、アクチベーター標識は、被検体特異的な捕捉抗体に対してその結合親和性を維持する様式でユニバーサル抗体に共有結合でつながれる。別のアクチベーター標識sbpの実施形態では、アクチベーター化合物は、ビオチン−ストレプトアビジン結合を介して1つ以上のsbpに連結される。ストレプトアビジン−ビオチン、または等価な結合を組み込んでいるアクチベーター標識sbpは、例えば、ビオチンコンジュゲートとして特異的結合パートナーを提供することができ、この場合、アクチベーター化合物は、ストレプトアビジンコンジュゲートである。ビオチン−ストレプトアビジンおよび同様の結合の代替の配置は、一般に公知である。あるいは、ストレプトアビジン−ビオチン、または等価な結合を組み込んでいるアクチベーター標識sbpは、sbpまたはアクチベーター化合物の、1つ以上の追加の補助物質への結合のための結合を利用することができる。
【0070】
別の実施形態では、アクチベーター標識が共有結合でつながれる補助物質は、合成ポリマーである。アクチベーター化合物を連結するのにポリマー助剤を使用するアッセイ形式は、共有結合、非共有結合によって、または種特異的な免疫グロブリン、またはビオチン−アビジンコンジュゲーションなどのユニバーサル捕捉成分を通じた間接的な結合によって、被検体についての特異的結合パートナーに連結することができる。
【0071】
選ばれた実施形態では、アクチベーター標識sbpは、多糖または可溶性自己集合タンパク質から選択される補助物質を含む。いくつかの実施形態では、アクチベーター標識sbpは、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖を含む。いくつかのそのような実施形態では、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖は、10kDa〜500kDaの範囲内の平均分子量を有し、または他の実施形態では、25kDa〜150kDaの範囲内の平均分子量を有する。さらなる実施形態では、化学発光標識sbpは、50〜100kDaの範囲内の平均分子量を有する、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖を含む。なおさらなる実施形態では、化学発光標識sbpは、70kDaの平均分子量を有する、アミノ−デキストランまたはカルボキシル−デキストランなどの多糖を含む。
【0072】
ほとんどの実施形態では、アクチベーター標識sbpの平均分子量は、200kDa〜3000kDaの包含範囲内である。いくつかの実施形態では、アクチベーター標識特異的結合対の平均分子量は一般に、350kDa〜1500kDaである。
アクチベーター標識
アクチベーター化合物は、アクチベーター標識sbpの一部を形成し、これは、アクチベーター−特異的結合パートナーコンジュゲートと呼ばれる場合もある。アクチベーター標識sbpは、二重の機能を果たす:1)直接に、または中間の特異的結合パートナーを通じて、特異的結合パートナー部分を通じて、アッセイにおける被検体の量に比例した特異的結合反応を起こし、かつ2)アクチベーター部分を通じて化学発光化合物を活性化する。アクチベーター標識sbpのアクチベーター部分は、トリガー溶液の存在下で化学発光が生じるように、化学発光化合物の活性化を起こす化合物である。アクチベーター標識として機能を果たすことができる化合物には、遷移金属の塩および錯体ならびに酵素を含めたペルオキシダーゼ様活性を有する化合物、特に遷移金属含有酵素、最も特に、ペルオキシダーゼ酵素が含まれる。アクチベーター化合物において有用な遷移金属として、周期表の3〜12族のもの、特に、鉄、銅、コバルト、亜鉛、マンガン、クロム、およびバナジウムが挙げられる。
【0073】
化学発光反応を起こすことができるペルオキシダーゼ酵素として、例えば、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、バナジウムブロモペルオキシダーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、真菌ペルオキシダーゼ類、リグニンペルオキシダーゼ、Arthromyces ramosusに由来するペルオキシダーゼ、白色腐朽菌(white rot fungi)で産生されるMn依存性ペルオキシダーゼ、およびダイズペルオキシダーゼが挙げられる。hemeなどの鉄錯体、およびMn−TPPS4を含めた、酵素でないが、ペルオキシダーゼ様活性を有する他のペルオキシダーゼ模倣化合物も公知である(Y.−X. Ciら、Mikrochem. J.、52巻、257〜62頁(1995年))。これらは、基質の化学発光酸化を触媒し、本明細書で使用する場合、ペルオキシダーゼの意味の範囲内であると明確に見なされる。
【0074】
いくつかの実施形態では、アクチベーター標識sbpは、化学発光を生じさせるための方法において、ペルオキシダーゼおよび生体分子のコンジュゲートまたは複合体を含むことができ、唯一の条件は、コンジュゲートがペルオキシダーゼ活性またはペルオキシダーゼ様活性を示すことである。ペルオキシダーゼの1つ以上の分子にコンジュゲートすることができる生体分子として、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体断片、抗体−DNAキメラ、抗原、ハプテン、タンパク質、ペプチド、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびビオチンが挙げられる。ペルオキシダーゼを含む、または組み込んでいる複合体、例えば、生体分子への結合に関して機能化されているリポソーム、ミセル、ベシクル、およびポリマーなども、本開示の方法において使用することができる。
選択的シグナル阻害剤(SSIA)
本発明の選択的シグナル阻害剤は、遊離した、および/または被検体が結合した化学発光標識sbp、遊離した、および/または被検体が結合したアクチベーター標識sbp、エンハンサー、ならびにトリガー溶液を含むアッセイ反応混合物中に含められる場合、被検体が結合した標識sbpメンバーから得られるシグナルが、SSIAの非存在下で起こるより、有意に大きい程度でバックグラウンドシグナルを超えるような化合物である。
【0075】
1つ以上の選択的シグナル阻害剤が、10−6M〜10−1Mの間、しばしば10−6M〜10−2Mの間、多くの場合10−5M〜10−3Mの間、時折10−5M〜10−4Mの間の濃度で、反応方法において存在する。いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、5×10−6M〜5×10−4Mの間で、本方法による反応において存在する。なおさらなる実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、5×10−5M〜5×10−4Mの間で、本方法による反応において存在する。
【0076】
選択的シグナル阻害剤は、反応溶液中で意図されるより高い濃度で、別個の試薬または溶液として供給することができる。この実施形態では、測定された量の作業溶液(working solution)が反応溶液中に投与されることによって、所望の反応濃度が実現される。別の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、標識sbpメンバーの1つ以上を含有する溶液中に合わされる。別の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、トリガー溶液の成分として提供される。
【0077】
選択的シグナル阻害剤が、シグナル:バックグラウンド比を改善する程度は、他の要因の中でも、化合物の素性、およびこれが使用される濃度に応じて変化する。この程度は、改善係数の観点からその枠を決めることができ、この観点では、アッセイが選択的シグナル阻害剤を用いて実施される、特定の被検体濃度でのアッセイのシグナル:バックグラウンド比が、選択的シグナル阻害剤を用いない、同じ被検体濃度でのアッセイのシグナル:バックグラウンド比と比較される。改善係数>1は、改善されたアッセイの尺度、および選択的シグナル阻害剤の有益な効果の証拠である。本発明の実施形態では、少なくとも5など、および少なくとも10、または少なくとも50を含めた少なくとも2の改善係数が実現される。以下の実施例を参照すると、改善係数は、被検体濃度の関数としてアッセイ内で変化し得ることが分かる。例えば、改善係数は、被検体濃度が増大するにつれて増大する場合がある。別の実施形態では、濃度間の改善係数の変動は、より直線的な較正曲線、すなわち、化学発光強度対被検体濃度のプロットをもたらす場合がある。
【0078】
以下の表は、選択的シグナル阻害剤として有効に機能することができる化合物を、限定することなく列挙する。明確に列挙されていない追加の化合物は、実施例に記載されるアッセイおよびスクリーニング検査方法の通常の適用によるものを含めて、本開示の技法を使用して見出すことができる。
【0079】
【表1】

いくつかの他の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、ジアルキルヒドロキシアミンから選択される。
【0080】
いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、オルトまたはパラ関係に配向した少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物から選択される。例示的な化合物を表2に示す。
【0081】
【表2】

いくつかの他の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、オルトまたはパラ関係に配向した、少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を有する芳香族化合物から選択される。例示的な化合物を表3に示す。
【0082】
【表3】

さらに他の実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、エンジオールとしても公知である、C−C二重結合上で置換された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物から選択される。例示的な化合物を表4に示す。
【0083】
【表4】

一実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、窒素複素環式化合物から選択される。例示的な化合物を表5に示す。
【0084】
【表5】

一実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、過酸化物と接触すると活性SSIAに変換可能な化合物として、マスクされた形態で供給される。適当なマスクされたSSIA化合物は、例えば、ヒドロキシル置換またはアミノ置換アリールボロン酸化合物から選択される。例示的な化合物を表6に示す。
【0085】
【表6】

一実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、表7に示される化合物から選択される。
【0086】
【表7】

様々な実施形態では、上記選択的シグナル阻害剤の1つ以上が、本開示のアッセイ法、アッセイ、またはキットにおいて組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、選択的シグナル阻害剤は、10倍の作業溶液濃度の水溶液中で溶解性を有する。作業溶液は、濃縮水溶液の一部が反応混合物に添加されることによって、トリガー溶液を添加した後に必要とされる最終濃度を与えるような濃縮水溶液として定義される。
【0087】
選択的シグナル阻害剤の作業溶液のための適当な水溶液は、以下の追加の成分のうちの1つ以上を含む:塩、生物学的緩衝液、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール、メタノール、グリコールを含めたアルコール、および界面活性剤。いくつかの実施形態では、水溶液には、Tris緩衝水溶液、25%のエタノール/75%のTris緩衝水溶液、25%のエタノール/75%の水性Triton−X−100(1%)、10%の0.1NのNaOH/90%のTris緩衝水溶液が含まれる。1つの例のTris緩衝水溶液は、TRIS緩衝食塩水、界面活性剤、<0.1%のアジ化ナトリウム、および0.1%のProClin(登録商標)300(Rohm and Haas)からなり、緩衝液IIと本明細書で呼ばれ、Beckman Coulter,Inc.、Brea CAから市販されている。
トリガー溶液&エンハンサー
トリガー溶液は、化学発光に必要な励起状態の化合物を生成するのに必要な反応物を提供する。反応物は、化学発光標識と直接反応することによって化学発光反応を実施するのに必要なものとすることができる。これは、この機能の代わりに、またはこの機能に加えて、アクチベーター化合物の作用を促進する機能を果たすことができる。これは、例えば、アクチベーターがペルオキシダーゼ酵素である場合、そのようになる。一実施形態では、トリガー溶液は、過酸化物化合物を含む。過酸化物成分は、ペルオキシダーゼと反応することができる、任意の過酸化物またはアルキルヒドロペルオキシドである。例示的な過酸化物には、過酸化水素、尿素過酸化物、および過ホウ酸塩が含まれる。トリガー溶液中に使用される過酸化物の濃度は、一般に約10−8M〜約3M、より一般に約10−3M〜約10−1Mという値の範囲内で変更することができる。別の実施形態では、トリガー溶液は、過酸化物、およびペルオキシダーゼ活性を有するアクチベーターの触媒ターンオーバーを促進するエンハンサー化合物を含む。
【0088】
代表的な実施形態では、アクチベーターとしてのペルオキシダーゼコンジュゲート、被検体のアクリダン標識特異的結合パートナー(ここで、アクリダン標識は、以下に記載されるように、特異的結合パートナーをアクリダン標識化化合物と反応させることによって提供される)、および過酸化水素を含むトリガー溶液が使用される。過酸化物は、ペルオキシダーゼと反応することによって、おそらく、酵素の活性部位における鉄の酸化状態を、異なる酸化状態に変化させる。この変化した状態の酵素は、エンハンサー分子と反応することによって、酵素の触媒ターンオーバーを促進する。エンハンサーまたは酵素から形成される反応性種は、酵素に近接して維持されたアクリダン標識と反応する。化学発光反応は、化学発光化合物から形成される中間体と過酸化物とのさらなる反応を含み、最終反応生成物および光を生成する。
【0089】
ある特定のエンハンサー化合物をトリガー溶液中に取り込むことにより、酵素の反応性が促進され、もしくはバックグラウンドシグナルが低減され、または両方の機能が実施される。これらのエンハンサーの中に含まれるのは、ペルオキシダーゼ反応を増強することが公知であるフェノール化合物および芳香族アミンである。米国特許第5,171,668号に開示されているような、フェノキサジン化合物またはフェノチアジン化合物の、インドフェノール化合物またはインドアニリン化合物との混合物を、本発明においてエンハンサーとして使用することができる。置換ヒドロキシベンゾオキサゾール、2−ヒドロキシ−9−フルオレノン、および米国特許第5,206,149号に開示されているような化合物I、
【0090】
【化1】

も、本発明においてエンハンサーとして使用することができる。米国特許第5,512,451号に開示されているような置換および非置換のアリールボロン酸化合物、ならびにこれらのエステルおよびアンヒドリド誘導体も、本開示において有用なエンハンサーの範囲内であると見なされる。例示的なフェノールエンハンサーとして、それだけに限らないが、p−フェニルフェノール、p−ヨードフェノール、p−ブロモフェノール、p−ヒドロキシケイ皮酸、p−イミダゾリルフェノール、アセトアミノフェン、2,4−ジクロロフェノール、2−ナフトール、および6−ブロモ−2−ナフトールが挙げられる。
【0091】
上記したクラスからの1つを超えるエンハンサーの混合物も使用することができる。
【0092】
本発明を実施するのに有用な追加のエンハンサー、および誘導体には、ヒドロキシベンゾチアゾール化合物、ならびに以下の式IIおよびIIIのフェノキサジン化合物およびフェノチアジン化合物が含まれる。
【0093】
【化2】

フェノキサジンエンハンサーおよびフェノチアジンエンハンサーの窒素原子上で置換されたR基には、1〜8炭素原子のアルキル、およびスルホン酸塩またはカルボン酸塩の基で置換された1〜8炭素原子のアルキルが含まれる。例示的なエンハンサーとして、3−(N−フェノチアジニル)−プロパンスルホン酸塩、3−(N−フェノキサジニル)プロパンスルホン酸塩、4−(N−フェノキサジニル)ブタンスルホン酸塩、5−(N−フェノキサジニル)−ペンタン酸塩、およびN−メチルフェノキサジン、ならびに関連同族体が挙げられる。トリガー溶液中で使用されるエンハンサーの濃度は、一般に約10−5M〜約10−1M、より一般に約10−4M〜約10−2Mという値の範囲内で変更することができる。
【0094】
本開示の検出反応は、一般に水性緩衝液であるトリガー溶液を用いて実施される。適当な緩衝液には、化学発光反応の進行を可能にする環境を維持することができる、任意の一般に使用される緩衝液が含まれる。一般に、トリガー溶液は、約5〜約10.5の範囲内のpHを有する。例示的な緩衝液として、ホスフェート、ボレート、アセテート、カーボネート、tris(ヒドロキシ−メチルアミノ)メタン[tris]、グリシン、トリシン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、MOPS、HEPES、MESなどが挙げられる。
【0095】
トリガー溶液は、光生成反応の発光効率を増強し、またはアッセイのシグナル/ノイズ比を改善するために、1つ以上の界面活性剤またはポリマー界面活性剤も含有することができる。本開示を実施するのに有用な非イオン性界面活性剤には、例として、ポリオキシエチレン化(polyoxyethylenated)アルキルフェノール、ポリオキシエチレン化アルコール、ポリオキシエチレン化エーテル、およびポリオキシエチレン化ソルビトールエステルが含まれる。CTABなどの4級アンモニウム塩化合物、および4級ホスホニウム塩化合物を含めた、モノマーの陽イオン性界面活性剤を使用することができる。4級アンモニウム塩およびホスホニウム塩の基を含むものを含めた、ポリマーの陽イオン性界面活性剤も、この目的のために使用することができる。
【0096】
一実施形態では、トリガー溶液は、水性緩衝液、約10−5M〜約1Mの濃度の過酸化物、および約10−5M〜約10−1Mの濃度のエンハンサーを含む組成物である。この組成物は、界面活性剤、金属キレート化剤、および微生物混入を予防し、または最小限にするための保存剤を含めた添加剤を必要に応じて含有することができる。トリガー溶液のpHは一般に、pH6.0〜pH9.0の間である。いくつかの実施形態では、pHは、pH6.5〜pH8.5であり、さらなる実施形態では、pHは、pH7.0〜8.0の範囲内である。
特異的結合対
特異的結合対メンバーまたは特異的結合パートナー(sbp)は、別の物質に対して特異的な結合親和性を有する、生体分子を含めた分子として本明細書で定義される。特異的結合対メンバーとして、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体断片、抗体−DNAキメラ、抗原、ハプテン、タンパク質、ペプチド、レクチン、アビジン、ストレプトアビジン、およびビオチンが挙げられる。特異的結合対の各特異的結合対メンバーは、同じ物質(例えば、被検体)に対して特異的な結合親和性を有する。各特異的結合対メンバーは、少なくとも、被検体上の同じまたは重複結合部位を競合するべきでないという点で、特異的結合対中の他の特異的結合対メンバーと非同一である。例えば、特異的結合対が2つの抗体からなる場合、各sbp抗体は、被検体上に、異なる、非競合エピトープを有する。
【0097】
特異的な結合物質として、限定することなく、抗体および抗体断片、抗原、ハプテンおよびその同族抗体、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、プロテインAおよびIgG、相補的核酸またはオリゴヌクレオチド、レクチンおよび炭水化物が挙げられる。
【0098】
上記の抗原−抗体、ハプテン−抗体、または抗体−抗体対に加えて、特異的結合対として、相補性のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、アビジン−ビオチン、ストレプトアビジン−ビオチン、ホルモン−受容体、レクチン−炭水化物、IgGプロテインA、結合タンパク質−受容体、核酸−核酸結合タンパク質、および核酸−抗核酸抗体も挙げることができる。薬物候補のスクリーニングにおいて使用される受容体アッセイは、本方法についての使用の別の範囲である。これらの結合対のいずれも、上記した3成分サンドイッチ技法または2成分競合技法によって、本方法において使用するのに適応することができる。
化学発光化合物
本開示の実施において化学発光標識として使用される化合物は、一般式CL−L−RGを有し、式中、CLは、化学発光部分を表し、Lは、化学発光部分と反応基を連結するための連結部分(linking moiety)を表し、RGは、別の物質にカップリングするための反応基部分を表す。用語「化学発光基」および「化学発光部分」は、用語「連結部分」および「連結基(linking group)」と同様に互換的に使用される。化学発光部分CLは、アクチベーターと反応を起こし、活性化された化合物に変換される化合物を含む。活性化された化合物とトリガー溶液の反応により、電子励起状態化合物が形成される。励起状態は、一重項励起状態であっても、三重項励起状態であってもよい。励起状態は、基底状態に緩和すると光を直接放出することができ、または放出性エネルギーアクセプターに励起エネルギーを移し、それによって基底状態に戻ることができる。エネルギーアクセプターは、このプロセスにおいて励起状態に上げられ、光を放出する。CL基、アクチベーター、およびトリガー溶液の化学発光反応は急速であり、非常に短期間で起こることが望ましいが、必須ではなく、一実施形態では、数秒以内にピーク強度に到達する。
【0099】
本開示の一実施形態では、化学発光化合物は、アクチベーターおよびトリガー溶液の存在下で、酸化されることによって化学発光を生じることができる。リンカーおよび反応基を取り込むことによって、化学発光標識として機能することができる化合物の例示的なクラスとして、イソルミノール、アミノブチルエチルイソルミノール(ABEI)、アミノヘキシルエチルイソルミノール(AHEI)、7−ジメチルアミノナフタレン−1,2−ジカルボン酸ヒドラジド、環置換アミノフタルヒドラジド、アントラセン−2,3−ジカルボン酸ヒドラジド、フェナントレン−1,2−ジカルボン酸ヒドラジド、ピレンジカルボン酸ヒドラジド、5−ヒドロキシフタルヒドラジド、6−ヒドロキシフタルヒドラジド、ならびにMasuyaらへの米国特許第5,420,275号およびYamaguchiへの米国特許第5,324,835号において開示された他のフタラジンジオン類似体を含めた、ルミノールならびに構造的に関連した環状ヒドラジドなどの芳香族環状ジアシルヒドラジドが挙げられる。
【0100】
過酸化水素およびペルオキシダーゼの作用によって化学発光を生じることが公知である任意の化合物が、本開示において使用される化学発光標識化合物の化学発光部分として機能すると考えられる。キサンテン色素(例えば、フルオレセイン色素、エオシン色素、ローダミン色素、またはロドール色素など)、芳香族アミン、および複素環式アミンを含めた、様々な構造上のクラスの多数のそのような化合物が、これらの条件下で化学発光を生じることが当技術分野で公知である。別の例は、化合物MCLA、2−メチル−6−(p−メトキシフェニル)−3,7−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オンである。別の例はインドール酢酸であり、別の例はイソブチルアルデヒドであり、後者は一般に、可視光の出力を増大させるための蛍光エネルギーアクセプターを伴っている。トリヒドロキシ芳香族化合物のピロガロール、フロログルシノール、およびプルプロガリンは、個々に、または組合せて、本開示の化学発光標識化化合物中の化学発光部分として機能を果たすことができる化合物の他の例である。
【0101】
一実施形態では、本開示の方法において有用なアクリダンケテンジチオアセタール(AK)を含む一群の化学発光標識化合物は、式IVを有するアクリダン化合物
【0102】
【化3】

を含み、式中、基R〜R11の少なくとも1つは、式−L−RGの標識化置換基であり、Lは、結合、または別の二価もしくは多価の基となり得る連結基であり、RGは、化学発光標識化化合物が別の化合物に結合することを可能にする反応基であり、R、R、およびRは、1〜50の非水素原子を含有する有機基であり、R〜R11のそれぞれは、水素、または干渉しない置換基である。標識化置換基−L−RGは、RまたはRの1つに存在することができるが、これは、RまたはR〜R11の1つに置換基として存在することもできる。
【0103】
式IVの化合物中の基RおよびRは、光生成を可能にするC、N、O、S、P、Si、およびハロゲン原子から選択される、1〜約50の非水素原子を含有する任意の有機基とすることができる。後者とは、式Iの化合物が本開示の反応を起こすとき、励起状態生成物の化合物が生成され、1つ以上の化学発光中間体の生成を含むことができることを意味する。励起状態生成物は、直接光を放出することができ、またはエネルギー移動を通じて蛍光アクセプターに励起エネルギーを移し、この蛍光アクセプターから光を放出させることができる。一実施形態では、RおよびRは、1〜20炭素原子の、置換または非置換のアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキル基から選択される。RまたはRが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。一実施形態では、RまたはRは、式−L−RGの標識化置換基で置換されており、式中、Lは連結基であり、RGは反応基である。
【0104】
基Rは、基内の原子の価数を満たすのに要求される必要な数のH原子に加えて、C、N、O、S、P、Si、およびハロゲンから選択される1〜50の非水素原子を含有する有機基である。一実施形態では、Rは、1〜20の非水素原子を含有する。別の実施形態では、有機基は、1〜20炭素原子の、アルキル、置換アルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のアラルキル基からなる群から選択される。別の実施形態では、Rについての基には、置換または非置換のC〜Cアルキル基、フェニル、置換または非置換のベンジル基、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、およびアルキルスルホン酸基が含まれる。Rが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい。基Rは、5または6員環を完成するために、RまたはRに結合することができる。一実施形態では、Rは、式−L−RGの標識化置換基で置換されている。
【0105】
式IVの化合物では、基R〜R11はそれぞれ、独立してH、または励起状態生成物が生成されるのを可能にし、一般にC、N、O、S、P、Si、およびハロゲンから選択される1〜50の原子を含有する置換基である。存在することができる代表的な置換基として、限定することなく、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミノ、置換アミノ、カルボキシル、カルボアルコキシ、カルボキサミド、シアノ、およびスルホネート基が挙げられる。隣接する基の対、例えば、R−RまたはR−Rは、一緒に結合することによって、この2つの基が結合されている環に縮合した少なくとも1つの5員環または6員環を含む炭素環系または複素環系を形成することができる。そのような縮合複素環は、N、O、またはS原子を含有することができ、上記したものなどのH以外の環置換基を含有することができる。基R〜R11の1つ以上は、式−L−RGの標識化置換基とすることができる。一実施形態では、R〜R11は、水素、ハロゲン、およびアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、t−ブトキシなどから選択される。別の実施形態では、一群の化合物は、ハロゲンとしてR、R、R、またはR10の1つを有し、R〜R11の他のものは、水素原子である。
【0106】
置換基は、化合物の特性を改変し、または合成の利便性をもたらすために、様々な量で、アクリダン環内の選択された環または鎖の位置で組み込むことができる。そのような特性として、例えば、化学発光量子収率、酵素との反応速度、最大光強度、発光の継続時間、発光波長、および反応媒質中の溶解度が挙げられる。特定の置換基およびこれらの効果は、以下の具体例において例示されているが、これは、本開示の範囲を限定すると決して見なされるべきではない。合成の便宜のために、式Iの化合物は、水素原子としてR〜R11のそれぞれを有することが望ましい。
【0107】
別の実施形態では、一群の化合物は式Vを有し、式中、R〜R11のそれぞれは水素である。基R、R、およびRは上記に定義された通りである。
【0108】
【化4】

式IVまたはVの標識化化合物は、基RまたはR上に置換基として基−L−RGを有する。一実施形態では、標識化化合物は、式VIを有する。
【0109】
【化5】

代表的な標識化化合物は、以下の構造を有する。追加の例示的な化合物、ならびに他の分子および固体表面への結合におけるこれらの使用は、以下の具体例において記載されている。以下に示された構造は、式CL−L−RGの例示的な化合物を例示する。
【0110】
【表8】

上記の特定のAK化合物、ならびに上に示された一般式IV、V、およびVIの化合物は、公開された出願US2007/0172878に開示された方法を含む、一般に公知の方法を使用して、熟練した有機化学者によって調製することができる。例示的な方法では、N−置換、かつ必要に応じて環置換アクリダン環化合物は、強塩基、その後にCSと反応されることによって、アクリダンジチオカルボキシレートを形成する。ジチオカルボキシレートは、従来法によってエステル化されることによって、Rと命名した置換基の1つが組み込まれる。得られたアクリダンジチオエステルは、非プロトン性溶媒中で、n−BuLiまたはNaHなどの強塩基を用いて再び脱プロトン化され、脱離基およびR部分を含有する適当な試薬を用いてS−アルキル化される。R部分は、適当な反応基を組み込むためにさらなる操作にかけることができることが、有機化学における当業者に容易に明らかである。
【0111】
別のクラスの化学発光部分には、米国特許第5,491,072号;同第5,523,212号;同第5,593,845号;および同第6,030,803号に開示された、アクリダンエステル、チオエステル、およびスルホンアミドが含まれる。このクラスにおける化学発光標識化化合物は、以下の式VIIの化学発光部分CLを有し、式中、Zは、O、S、またはNR11SOArであり、R11は、アルキルまたはアリールであり、Arは、アリール、またはアルキル置換アリールであり、Rは、C1〜8アルキル、ハロ置換C1〜8アルキル、アラルキル、アリール、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロゲン、カルボニル、カルボキシル、カルボキサミド、シアノ、トリフルオロメチル、トリアルキルアンモニウム、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、およびメルカプト基で置換されたアリールであり、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、およびアラルキル基から選択され、R3〜10はそれぞれ、水素であり、または1もしくは2個の置換基が、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、およびハロゲンから選択され、R3〜10の残りは水素である。一実施形態では、R3〜10のそれぞれは水素であり、Rは標識化置換基である。別の実施形態では、R3〜10の1つは標識化置換基であり、R3〜10の他のものは水素である。
【0112】
【化6】

別のクラスの化学発光部分には、米国特許第5,922,558号;同第6,696,569号;、および同第6,891,057号に開示された複素環式化合物が含まれる。一実施形態では、この化合物は、窒素、酸素、または硫黄を含有する5員もしくは6員の環、または複数の環基を含む複素環式環を含み、これに環外の二重結合が結合しており、その末端炭素は、酸素および硫黄原子から選択される2つの原子で置換されている。
【0113】
別の実施形態では、化学発光標識化合物は、以下の式VIIIの化学発光アクリダンエノール誘導体を含み、式中、Rは、1〜20炭素原子のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキル基から選択され、そのいずれも、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、1〜20炭素原子を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立して、C〜Cアルキル、シアノアルキル、アリール、およびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、Zは、OおよびS原子から選択され、Rは、置換または非置換のC〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、アルコキシアルキル、およびカルボキシアルキル基から選択され、R7〜14はそれぞれ、水素であり、または1もしくは2個の置換基が、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、およびハロゲンから選択され、R7〜14の残りは水素である。一実施形態では、R7〜14のそれぞれは水素であり、Rは標識化置換基である。別の実施形態では、R7〜14の1つは標識化置換基であり、R7〜14の他のものは水素である。
【0114】
【化7】

別の実施形態では、化学発光標識化化合物は、以下の式IXの化学発光化合物を含み、式中、Rは、1〜20炭素原子のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキル基から選択され、そのいずれも、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、1〜20炭素原子を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立して、C〜Cアルキル、シアノアルキル、アリール、およびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、ZおよびZはそれぞれ、OおよびS原子から選択され、RおよびRは独立して、水素およびC〜Cアルキルから選択される。
【0115】
【化8】

連結基(L)。本開示において使用される任意の化学発光化合物における連結基は、結合、原子、二価の基、および多価の基、またはいくつかは環状構造の一部となり得る、直鎖もしくは分枝鎖の原子とすることができる。置換基は通常、1〜約50の非水素原子、より通常には1〜約30の非水素原子を含有する。別の実施形態では、鎖を構成する原子は、C、O、N、S、P、Si、B、およびSe原子から選択される。別の実施形態では、鎖を構成する原子は、C、O、N、P、およびS原子から選択される。鎖中の炭素以外の原子の数は、通常0〜10である。ハロゲン原子は、鎖または環上の置換基として存在することができる。連結置換基を構成する典型的な官能基として、アルキレン、アリーレン、アルケニレン、エーテル、過酸化物、カルボニル(ケトン、エステル、炭酸エステル、チオエステル、またはアミド基としての)、アミン、アミジン、カルバメート、尿素、イミン、イミド、イミデート、カルボジイミド、ヒドラジノ、ジアゾ、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、ホスホン酸エステル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、硫酸エステル、およびチオ尿素基が挙げられる。別の実施形態では、基は、−CH−、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiO−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−SC(=O)−、−C(=O)S−、−NRC(=O)−、−NRC(=S)−、または−C(=O)NR−基で終止する1〜20原子のアルキレン鎖であり、式中、RはC1〜8アルキルである。別の実施形態では、連結基は、−CH−、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiO−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−SC(=O)−、−C(=O)S−、−NRC(=O)−、−NRC(=S)−、または−C(=O)NR−基で終止する3〜30原子のポリ(アルキレン−オキシ)鎖であり、式中、RはC1〜8アルキルである。
【0116】
反応基。反応基RGは、その存在が、共有結合または物理的な力による別の分子への結合を促進する原子または基である。いくつかの実施形態では、本開示の化学発光標識化化合物の、別の化合物または物質への結合は、例えば、反応基が、ハロゲン原子またはトシレート基などの脱離基である場合、反応基から1つ以上の原子を失うことになり、化学発光標識化化合物は、求核置換反応によって別の化合物に共有結合的に結合している。
【0117】
一実施形態では、RGは、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル基である。当業者は、NHSエステル基を含むそのような標識化化合物で標識される物質は、その物質上の部分、一般にアミン基と、エステルのC−O結合を分割し、N−ヒドロキシスクシンイミドを放出し、その物質の原子(アミン基の場合N)と、標識化化合物のカルボニル炭素との間に新しい結合を形成するプロセスにおいて反応することを容易に理解する。別の実施形態では、RGは、ヒドラジン部分、−NHNHである。当技術分野で公知であるように、この基は、標識される物質中のカルボニル基と反応することによって、ヒドラジド結合を形成する。
【0118】
他の実施形態では、化学発光標識化化合物の、共有結合形成による別の化合物への結合は、マイケル付加などの付加反応において起こる場合、または反応基がイソシアネートまたはイソチオシアネート基である場合、反応基内の結合の再編成を伴う。さらに他の実施形態では、結合は、共有結合形成を伴わず、むしろ物理的な力を伴い、この場合、反応基は変化しないままである。物理的な力とは、引力、例えば、水素結合、静電気引力またはイオン引力、塩基スタッキングなどの疎水性引力など、ならびに特定の親和性相互作用、例えば、ビオチン−ストレプトアビジン、抗原−抗体、およびヌクレオチド−ヌクレオチド相互作用などを意味する。
【0119】
標識が有機分子および生体分子に化学結合するための反応基として、それだけに限らないが、以下のものが挙げられる:a)アミン反応基:−N=C=S、−SO2Cl、−N=C=O、−SO2CH2CF3;b)チオール反応基:−S−S−R;c)カルボン酸反応基:−NH、−OH、−SH、−NHNH;d)ヒドロキシル反応基:−N=C=S、−N=C=O、−SOCl、−SOCHCF;e)アルデヒド/ケトン反応基:−NH、−ONH、−NHNH;およびf)他の反応基、例えば、R−N、R−C≡CH。
【0120】
一実施形態では、反応基として、OH、NH、ONH、NHNH、COOH、SOCHCF、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエーテル、およびマレイミド基が挙げられる。
【0121】
二官能性カップリング試薬も、適度に反応性の基を有する有機分子および生体分子に標識をカップリングさせるのに使用することができる(L. J. Kricka、Ligand−Binder Assays、Marcel Dekker, Inc.、New York、1985年、18〜20頁、表2.2、およびT. H Ji、「Bifunctional Reagents」、Methods in Enzymology、91巻、580〜609頁(1983年)を参照)。2つの型の二官能性試薬、すなわち、最終的な構造中に組み込まれた状態になるもの、および組み込まれず、2つの反応物をカップリングするためだけに機能を果たすものが存在する。
【0122】
水溶液
本開示において使用するのに適した水溶液は、一般に、50%超の水を含有する溶液である。反応混合物、試料希釈物、キャリブレーター溶液、化学発光標識sbp溶液、アクチベーター標識sbp溶液、エンハンサー溶液、ならびにトリガー溶液、または化学発光標識sbp、アクチベーター標識sbp、エンハンサー、トリガー、試料、および/もしくは選択的シグナル阻害剤の1つもしくは複数の濃縮溶液を含めて、本明細書に記載される水溶液は、使用に適している。多くの実施形態では、水溶液は緩衝水溶液である。適当な水性緩衝液には、水溶液中の環境を維持し、被検体の溶解度を維持し、反応物の溶解度を維持し、および化学発光反応を進行させることができる、一般に使用される緩衝液のいずれも含まれる。例示的な緩衝液として、ホスフェート、ボレート、アセテート、カーボネート、tris(ヒドロキシ−メチルアミノ)メタン(tris)、グリシン、トリシン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ジエタノールアミン、MOPS、HEPES、MESなどが挙げられる。一般に、本開示によって使用するための水溶液は、約5〜約10.5の範囲内のpHを有する。
【0123】
適当な水溶液は、以下の追加の成分の1つ以上を含むことができる:塩、生物学的緩衝液、エタノール、メタノール、グリコールを含めたアルコール、および界面活性剤。いくつかの実施形態では、水溶液には、緩衝液II(Beckman Coulter, Inc.、Brea CAから市販されている、TRIS緩衝食塩水、界面活性剤、<0.1%のアジ化ナトリウム、および0.1%のProClin(登録商標)300(Rohm and Haas))などのTris緩衝水溶液が含まれる。
【0124】
いくつかの実施形態では、ヒト血清を模倣する水溶液が利用される。1つのそのような合成マトリクスは、0.1%のProClin(登録商標)300を含む、20mMのPBS、7%のBSA、pH7.5である。合成マトリクスは、それだけに限らないが、試料希釈液、キャリブレーター溶液、化学発光標識sbp溶液、アクチベーター標識sbp溶液、エンハンサー溶液、およびトリガー溶液に使用することができる。用語「PBS」は、慣例的な意味において、当技術分野で公知であるような、リン酸緩衝食塩水を指す。用語「BSA」は、慣例的な意味において、当技術分野で公知であるような、ウシ血清アルブミンを指す。
【0125】
アッセイ形式
アッセイ形式は、化学発光標識sbpの化学発光標識と、アクチベーター標識sbpのアクチベーター標識とが近接するのを媒介する特異的結合作用を必要とする。
【0126】
別の実施形態では、被検体の類似体が使用され、アクチベーター−被検体類似体コンジュゲートを構成する。別の実施形態では、標識された被検体が使用され、アクチベーター−被検体コンジュゲートを構成する。アクチベーター−被検体類似体コンジュゲートまたはアクチベーター−被検体コンジュゲート、および被検体は、被検体についての特異的結合パートナーと競合的に結合する。この型のアッセイ法において、試料中の被検体の量と化学発光の強度の間に負の相関が生じることは明らかである。
【0127】
抗原もしくは他のタンパク質に結合するための抗体、またはイムノアッセイを介した他の抗体を通じた化学発光標識の結合に加えて、本方法は、相補的核酸の結合を通じて核酸を検出するための化学発光標識核酸を使用することができる。この点において、使用は、核酸のサイズに関して特に限定されず、唯一の基準は、相補性パートナーが、安定なハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な長さのものであることである。核酸には、本明細書で使用する場合、遺伝子長の核酸、核酸のより短い断片、ポリヌクレオチド、およびオリゴヌクレオチドが含まれ、そのいずれも一本鎖であっても二本鎖であってもよい。特異的結合パートナーとして核酸を使用して本開示を実施する際、核酸は、被検体核酸を捕捉するために、固体支持体の表面上に共有結合しているか、または物理的に固定化されている。化学発光標識は、捕捉核酸に結合することができ、または標識は、上記に説明したように、やはり捕捉核酸に結合した補助物質に連結することができる。捕捉核酸は、被検体核酸の配列領域と完全、または実質的に完全な配列相補性を有する。実質的に相補性である場合、捕捉核酸は、被検体と相補性でない末端オーバーハンギング部分、末端ループ部分、または内部ループ部分を有することができ、ただし、これは、被検体とのハイブリダイゼーションを妨害または阻止しない。逆の状況も起こり得、この場合、オーバーハングまたはループは、被検体核酸内に属する。捕捉核酸、被検体核酸、アクチベーターのコンジュゲート、および第3の核酸が、ハイブリダイズさせられる。第3の核酸は、捕捉核酸と相補性の配列領域とは異なる、分析物核酸の配列領域と実質的に相補性である。捕捉核酸およびアクチベーターコンジュゲート核酸の被検体とのハイブリダイゼーションは、いずれの順序でも連続して、または同時に実施することができる。このプロセスの結果として、化学発光標識は、支持体の表面に結合した化学発光標識付近にアクチベーターを運ぶ特異的なハイブリダイゼーション反応によって、アクチベーターと反応性の配置にされる。上記したように、トリガー溶液が供給され、化学発光が検出される。
【0128】
別の実施形態は、被検体のアクチベーターとのコンジュゲートが使用される変形を含む。被検体核酸−アクチベーターコンジュゲートおよび被検体核酸は、被検体核酸についての特異的結合パートナーと競合的に結合する。この型のアッセイ法において、試料中の被検体の量と化学発光の強度の間に負の相関が生じることは明らかである。
【0129】
抗体に基づくシステムおよび核酸に基づくシステムに加えて、結合アッセイの当業者に一般に公知であるような他の特異的結合対も、本開示による試験方法の基礎として機能を果たすことができる。抗体−ハプテン対も使用することができる。フルオレセイン/抗フルオレセイン、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン、およびニトロフェニル/抗ニトロフェニルの対は、例示的である。
【0130】
検出
本方法によって放出される光は、任意の適当な公知の手段、例えば、ルミノメーター、X線フィルム、高速写真フィルム、CCDカメラ、シンチレーションカウンター、化学光量計、または視覚的などによって検出することができる。各検出手段は、異なるスペクトル感度を有する。ヒトの眼は、緑色光に対して最適に感度がよく、CCDカメラは、赤色光に対して最大感度を示し、UVから青色光または緑色光に最大応答を有するX線フィルムは、利用可能である。検出デバイスの選択は、用途、および費用の考慮、利便性、および永続的な記録の作成が必要とされるかどうかによって支配される。発光の時間過程が急速である実施形態では、検出デバイスの存在下で、化学発光を生じさせるためのトリガー反応を実施することが有利である。例として、検出反応は、ルミノメーター内に収容された試験管またはマイクロウェルプレート、または試験管もしくはマイクロウェルプレートを受け入れるように適応した収納容器内のCCDカメラの前に配置された試験管またはマイクロウェルプレートで実施することができる。
【0131】
用途
本アッセイ法は、多くの型の特異的結合対アッセイにおいて適用性を見出す。これらの中で主要なのは、ELISAなどの化学発光酵素結合イムノアッセイである。免疫化学的ステップを実施するための様々なアッセイ形式およびプロトコールは、当技術分野で周知であり、競合アッセイおよびサンドイッチアッセイの両方を含む。本開示によるイムノアッセイによってアッセイすることができる物質の型には、タンパク質、ペプチド、抗体、ハプテン、薬物、ステロイド、およびイムノアッセイの技術分野で一般に公知である他の物質が含まれる。
【0132】
本開示の方法は、核酸の検出にも有用である。一実施形態では、一方法は、酵素標識核酸プローブを使用する。例示的な方法として、溶液ハイブリダイゼーションアッセイ、サザンブロット法におけるDNA検出、ノーザンブロット法によるRNA、DNA配列決定、DNAフィンガープリント法、コロニーハイブリダイゼーション、およびプラークリフトが挙げられ、その実施は、当業者に周知である。
【0133】
キット
本開示は、本開示の方法に従ってアッセイを実施するためのキットを提供することも企図する。
【0134】
本開示の別の実施形態では、化学発光標識sbp、アクチベーター標識sbp、選択的シグナル阻害剤、およびトリガー溶液を含めたアッセイ材料を含有するキットが提供される。いくつかの実施形態では、これらのアッセイ材料は、水溶液で提供される。いくつかの実施形態では、アッセイ材料の1つ以上は、濃縮水溶液で提供される。アッセイ材料の濃縮水溶液は、各アッセイ材料の所望の最終濃度に到達する体積で、反応混合物に供給される。いくつかの実施形態では、追加の水溶液が、濃縮水溶液を希釈するために供給される。他の実施形態では、1つ以上のアッセイ材料は、凍結乾燥形態または固体形態で提供される。そのような実施形態では、追加の水溶液を供給することによって、凍結乾燥した、または固体のアッセイ材料を水溶液または水溶液濃縮物に変換することができる。
【0135】
いくつかのキット実施形態では、各アッセイ材料は、別個の容器で提供される。他のキットの実施形態では、1つ以上のアッセイ材料が、共通の容器で提供される。さらに他のキットの実施形態では、1つ以上のアッセイ材料が、ウェルで分割された共通の容器で提供され、各ウェルは、1つのアッセイ材料を保持する。
【0136】
キットは、パッケージされた組合せで、トリガー溶液および使用するための指示書と共に、化合していない標識化化合物、化学発光標識特異的結合パートナー、またはブロッキングタンパク質などの化学発光標識補助物質のいずれかとして化学発光標識を含むことができる。キットは、化学発光標識化がユーザーによって実施される場合、アクチベーターコンジュゲート、被検体キャリブレーター、および対照、希釈剤、および反応緩衝液も必要に応じて含有することができる。
【0137】
システム
本開示において記載されるアッセイ法は、システムを使用することによって、迅速に実行するために自動化することができる。本開示のアッセイを実施するためのシステムは、他の反応物を含有する反応容器にトリガー溶液をアリコートおよび送達し、得られる化学発光シグナルを読むための流体取り扱い能力を必要とする。そのようなシステムの実施形態では、ルミノメーターが、トリガー溶液注入の時点および箇所で、反応容器の近位に配置される。ルミノメーターまたは他の検出デバイスを含む検出システムは、トリガー溶液を注入する流体取り扱いシステムと協調して作用することが好ましい。さらに、本開示のアッセイを実施するための自動システムは、他の反応物および試料を反応容器にアリコートおよび送達するための流体取り扱い能力を有する。一実施形態では、本発明のアッセイ法を実施するためのシステムは、反応混合物中に試料を送達するための流体取り扱いシステム、化学発光標識特異的結合パートナー、アクチベーター標識特異的結合パートナー、選択的シグナル阻害剤を、反応混合物中に送達するための流体取り扱いシステム、および化学発光シグナルを放出するために、トリガー溶液を反応混合物中に送達するための流体取り扱いシステム、ならびに化学発光シグナルを検出するための検出システムを含み、トリガー溶液を送達するための流体取り扱いシステムは、トリガー流体を注入する時、および注入した後に化学発光シグナル放出を測定するための検出システムと協調して作用する。これらの流体取り扱いシステムは、システムの配置に応じて、同じシステムであっても、異なるシステムであってもよい。
【0138】
改変DXI800機器は、本開示のアッセイ法を実施するために改変された。改変されていないDXI800機器のさらなる説明は、参照により本明細書に組み込まれている、UniCel DXI User’s Guide、(著作権)2007年、Beckman Coulterにおいて入手可能である。本明細書に記載される方法を実施するのに使用するために、DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器は、トリガー溶液注入の間、および注入直後に、反応容器の位置付近(反応容器から約19mm)で検出するために配置された光子計数ルミノメーター(市販のDXI800機器において使用されるのと同じモデル)を組み込むことによって改変された。
【0139】
DXI(登録商標)800イムノアッセイ内の基質送達システムが、トリガー溶液を送達するのに使用された。本明細書に記載される方法によるアッセイに必要でない、DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器のいくつかの追加のコンポーネント、例えば、従来のイムノアッセイに必要であるが、本発明の方法において使用されない、分離および洗浄のために使用される磁石および吸引システムは、便宜上取り除かれた。改変DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器は、反応容器の取り扱い、試薬のピペッティング、検出を自動化することにおいて便宜上利用され、温度制御を37℃で施された。他の市販の計測装置も、機器が、トリガー溶液を反応容器中に注入し、同時またはほぼ同時の様式で化学発光シグナルの検出を開始するように改変することができ、または改変されてもよい限り、本明細書に記載されるアッセイ法を実施するために、同様に利用することができる。化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。
【0140】
化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。例えば、以下に記載される一般的な手順では、光強度は、閃光に集中させて0.25秒間合計され、他の手順では、光強度は、注入を最初の0.5秒遅らせて、5秒間合計される。
【実施例】
【0141】
用語集:
AHTL:N−アセチルホモシステインラクトン
AK:アクリダン
CKMB:クレアチンキナーゼイソエンザイム
DMF:ジメチルホルムアミド
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
HRP:西洋わさびペルオキシダーゼ
MS−PEG:末端メチル基を有するアミン反応性直鎖状ポリエチレングリコールポリマー
Na2EDTA:エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩
NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド
PEG:ポリエチレングリコール;特に、分子量<20,000g/molのオリゴマーまたはポリマー
PEO:ポリエチレンオキシド;特に、分子量>20,000g/molのポリマー
PMP:1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン
PSA:前立腺特異的抗原
Sulfo−SMCC:スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート
TBS:Tris緩衝食塩水
TnI:トロポニンI;cTnIは心臓トロポニンIである。
Tris:2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール、tris−(ヒドロキシメチル)アミノメタンとしても公知
Tween(登録商標)−20:ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(sodium)モノラウレート;Sigma−Aldrich、St.Louis(MO)から市販されている。
【0142】
材料:
既知の濃度の試料:以下に記載されるアッセイおよびアッセイ法において使用するための既知の濃度の試料は、一般に、指定された被検体の精製タンパク質を、その被検体を含まないヒト血清に添加することによって調製した。例えば、公知のPSAタンパク質のPSA試料は、ヒト精液に由来するPSAを、以下の実施例に示される表において提示されたPSA濃度に到達するように、PSAを含まない女性の血清中にスパイクすることによって調製した。試料は、使用する前に貯蔵される場合、4℃で貯蔵し、または凍結させ、使用前に解凍した。既知の濃度の試料は、一般に、未知の被検体濃度の試料中の被検体濃度を決定するために、アッセイ法と組み合わせて使用される検量線を作成するのに有用な較正セットについて慣例的であるように調製した。
【0143】
エンハンサーを含むトリガー溶液:以下の実施例の多くにおいて使用したトリガー水溶液を、トリガー溶液Aと呼ぶ。トリガー溶液Aは、約3%のエタノールを含む、pH8.0の、25mMのTrisの緩衝水溶液中に、8mMのp−ヒドロキシケイ皮酸、1mMのNa2EDTA、105mMの尿素過酸化物、および0.2%のTween(登録商標)−20を含有する。すべての成分は、Sigma、St.Louis、MOなどの様々な供給者から市販されている。
【0144】
緩衝液II:(Beckman Coulter,Inc.、Brea CAから市販されている、TRIS緩衝食塩水、界面活性剤、<0.1%のアジ化ナトリウム、および0.1%のProClin(登録商標)300(Rohm and Haas))。
【0145】
機器:
改変DxI(登録商標)800イムノアッセイ機器(Beckman Coulter,Inc.Brea、CA):改変DXI(登録商標)800機器を、以下のいくつかの実施例において記載されるアッセイ法を実施するのに使用し、そこで注記した。本明細書に記載される方法を実施するのに使用するために、DXI(登録商標)800機器は、トリガー溶液注入の間、および注入直後に、反応容器の位置付近(反応容器から約19mm)で検出するために配置された光子計数(photo−counting)ルミノメーター(市販のDXI(登録商標)800機器において使用されるのと同じモデル)を組み込むことによって改変した。DXI(登録商標)800イムノアッセイ内の基質送達システムを、トリガー溶液を送達するのに使用した。本明細書に記載される方法によるアッセイに必要でない、DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器のいくつかの追加のコンポーネント、例えば、従来のイムノアッセイに必要であるが、本発明の方法において使用されない、分離および洗浄のために使用される磁石および吸引システムは、便宜上取り除いた。改変DXI(登録商標)800イムノアッセイ機器は、反応容器の取り扱い、試薬のピペッティング、検出を自動化することにおいて便宜上利用され、温度制御を37℃で施した。他の市販の計測装置も、機器が、トリガー溶液を反応容器中に注入し、同時またはほぼ同時の様式で化学発光シグナルの検出を開始するように改変することができ、または改変されてもよい限り、本明細書に記載されるアッセイ法を実施するために、同様に利用することができる。他の例の機器は、以下に列挙されている。
【0146】
化学発光シグナルの検出は、非常に短い継続時間、すなわち、光電子増倍管(PMT)の1周期などの数ミリ秒のものとすることができ、または数秒間に延長することもできる。収集されるシグナルのすべてまたは一部を、後続のデータ分析に使用することができる。
【0147】
Luminoskan Ascent(登録商標)プレートルミノメーター、(Thermo Fischer Scientific,Inc.、Waltham、MA)。改変されていない。室温で実施された方法。
【0148】
SpectraMax(登録商標)Lマイクロプレートルミノメーター、(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)。改変されていない。高速読取りキネティックモードを使用して、室温で実施された方法。
【0149】
(実施例1)
SSIAとしての有効性についての化合物のスクリーニング
A.ホモジニアスPSAイムノアッセイによるSSIAのスクリーニング
この実施例は、本開示のアッセイにおけるSSIAの機能性について、候補化合物を試験するのに使用した一方法を示す。試験は、タンパク質PSAのモデルスクリーニングイムノアッセイにおいて行った。試験は、96ウェルマイクロタイタープレート形式を使用して行った。マウス抗−PSA−AK1 30μL(66ng)、マウス抗−PSA−HRPコンジュゲート30μL(7.8ng)、ヒト女性の血清36μL、およびPSAキャリブレーター24μLを含有する溶液を、ピペットで各ウェルに入れた。プレートを37℃で10分間インキュベートした。試験化合物のアリコート5μL(様々な濃度)を各ウェルに添加した。化学発光は、トリガー溶液の溶液100μLを添加することによってトリガーした。その組成を以下に列挙する。化学発光の閃光は、Luminoskan Asent(登録商標)プレートルミノメーター、(Thermo Fischer Scientific, Inc.、Waltham、MA)を使用して、トリガー溶液を添加した後に5秒間積分した。
【0150】
各候補化合物は、少なくとも2つレベルのPSA、すなわち、ゼロ、ならびに129ngのPSA/mL(キャリブレーターS5)および/または2ngのPSA/mL(キャリブレーターS2)で試験した。簡潔さのために、各候補化合物の1つの代表的な濃度の結果のみを示した。S5/S0が、対照との関連で改善されている場合、化合物は、アッセイ性能の改善に有効であると見なされる。本スクリーニングにおいて、改善係数は、少なくとも2(S5/S0≧約20〜30)であることが望ましく、改善係数は、少なくとも5(S5/S0≧約50)であることがより望ましく、S5/S0は、≧100であることがさらにより望ましい。多くの化合物は、このスクリーニング検査においてSSIAとして有効性を示すことが見出され、他の化合物は、効果的でないか、または限定された効果を有することが見出された。
【0151】
【表9−1】

【0152】
【表9−2】

【0153】
【表9−3】

B.有効な選択的シグナル阻害剤(SSIA)の選択のためのモデル系
モデル系も開発および使用することによって、本開示のアッセイにおいて選択的シグナル阻害剤として機能する特性を有する化合物をスクリーニングおよび選択した。このモデル系は、ストレプトアビジンおよび化学発光標識sbpとしてアクリダンケテンジチオアセタール化学発光標識(AK1)を標識されたBSA(ウシ血清アルブミン)にコンジュゲートした微粒子、ならびにアクチベーター標識特異的結合対としてビオチン化HRPを使用する。このモデル系では、様々な量のBtn−HRPを、化学発光標識特異的結合対に、0、1、10、100、および250ng/mLで添加する。各反応混合物中で、500ng/mLの濃度の全HRPに到達するために、追加の未標識HRPを添加する。アクチベーター標識sbpと組み合わせた未標識HRPを化学発光標識sbp微粒子に供給することによって、試料を模倣した。SSIAとして評価するための化合物も添加した。次いでこのモデル系のこの反応混合物を、本開示のアッセイの様式で、トリガー溶液を添加することによってトリガーした。
C.モデル系のための材料の調製:
微粒子上に化学発光標識sbpを調製するために、4倍モル過剰のビオチン−LC−sulfoNHS(Pierce Biotechnology Inc.、Rockford、IL、USA)を用いてウシ血清アルブミン(BSA)をビオチン化した。非結合反応物を脱塩または透析によって除去した。次いで、ビオチン−BSAを、pH7.2の20mMのリン酸ナトリウム:DMSO(75:25、v/v)中のアクリダンケテンジチオアセタールAK1の5倍モル過剰のNHSエステルと反応させ、その後、同じ緩衝液中で脱塩した。次いで二重標識(ビオチンおよびAK1)BSAを、トシル活性化M280微粒子(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA、USA)を用いて、pH9.5の0.1Mのホウ酸塩緩衝液中で、微粒子1mg当たり標識されたBSA約20μgの濃度で、40℃で16〜24時間カップリングさせた。カップリングした後、微粒子を、0.2MのTRIS塩基、2%のSDS、pH約11を用いて40℃で1時間ストリップした。ストリッピングプロセスをさらに1回繰り返した。次いで微粒子を0.1%のBSA/TRIS緩衝食塩水(BSA/TBS)緩衝液中に懸濁させ、ストレプトアビジン(SA)を、微粒子1mg当たりSA約15μgで添加した。ストレプトアビジンを、室温で45〜50分間微粒子と混合した。次いで微粒子を、同じBSA/TBS中で3回洗浄し、懸濁させた。これらの微粒子の負荷は、微粒子1mg当たりビオチン化タンパク質5μgである。
【0154】
HRP、(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN、USA)を、4倍モル過剰のビオチン−LC−sulfoNHS(Pierce Biotechnology Inc.、Rockford、IL、USA)を用いてビオチン化した。あるいは、25倍モル過剰のビオチン−PEO4−NHSを使用することができる。非結合反応物は、脱塩または透析によって除去した。
【0155】
評価するための各SSIA化合物を、作業強度濃度の少なくとも10倍の濃度で緩衝液II中に可溶化した。
D.モデル系を使用する試験手順
1mg/mlの二重標識(ビオチンおよびAK1)BSA M280粒子25μlを、緩衝液II中の作業濃度のSSIA 45μlと混合した。アッセイ体積を、緩衝液II 15μlを添加することによって85μlにした。様々な比のBtn−HRP:HRP(ビオチン化HRPの量は、0から、1、10、100、および250ng/mLで変更した)を含有する試料15μlを添加した。反応混合物を37℃で30分間インキュベートし、次いでトリガー溶液100μLを添加し、光強度を記録した。トリガー溶液を含む反応混合物の全体積は200μLであり、SSIAの最終濃度は100μMであった。
【0156】
【表10】

【0157】
【表11−1】

【0158】
【表11−2】

【0159】
【表12−1】

【0160】
【表12−2】

本開示のアッセイにおいて使用するためのSSIAとしての有用性を実証する化合物には、アスコルビン酸、アスコルビン酸の6−パルミテート誘導体および5,6−イソプロピリデン誘導体、2−アミノフェノール、4−アミノ−3−ヒドロキシ−安息香酸、4−クロロカテコール、ならびにTROLOX、トコフェロールの誘導体が含まれ、S0値を対照と比較することによって示されるバックグラウンドシグナルの低減、およびS1/S0値の増加によって実証されるシグナル対ノイズの改善を伴う。
【0161】
モデル系においてSSIAとして不十分な有効性を示した化合物は、グルタチオン、システイン、N−アセチルシステイン、リポ酸(ジスルフィド)、ペグ化トコフェロール、メラトニン(トリプタミン誘導体)、TEMPOL(安定な窒素酸化物)、ニコチン酸ヒドラジド、ニコチン酸、レスベラトロール、および2つのアクリルアミド/ビスアクリルアミド溶液である。αおよびγ−トコフェロール、尿酸、ならびにフェルラ酸を含む、第2の分類の化合物は、75〜88%の範囲でS0シグナルの低減を示すが、10ng/mLのBtn−HRPでの第3のキャリブレーション(cal)レベルまでS/S0の増大を示さない。
【0162】
スクリーニング検査は、上記した改変DxI(登録商標)イムノアッセイシステム(Beckman Coulter, Inc. Brea、CA)を使用して実施した。
【0163】
(実施例2)
以下の実施例では、固相の非存在下で、SSIAの存在下および非存在下の両方で、被検体のイムノアッセイを実証した。アッセイは、2つの直接標識抗体を含んでいた。そのそれぞれは、被検体、この実施例では、前立腺特異的抗原(PSA)に対して特異的な結合親和性を有する。便宜上「Ab1」と指定した1つの抗体は、AK11の1つ以上の分子、一般に2つの分子に共有結合している。「Ab2」と指定した第2の抗体は、HRPに共有結合している。材料の調製、アッセイの性能、および結果は、以下に記載した通りであった。
A.Ab1〜AKコンジュゲートの調製
以下の実施例において、AK1(上記に示した)と本明細書で呼ばれる、アクリダンケテンジチオアセタール化学発光化合物のNHSエステルは、前立腺特異的抗原(PSA)の抗体に共有結合している。他の抗原または他のアクリダンケテンジチオアセタール化学発光化合物の化学発光標識抗体を調製するのに、以下の方法も使用することができる。
【0164】
AK1、すなわち、アミン反応性アクリダンケテンジチオアセタール化学発光化合物は、10mMで、DMSO中で調製した。pH7.4のPBS中のモノクローナルPSA抗体3mg(6.6mg/mL)に、10倍モル過剰のAK1を添加し、暗所で、周囲温度で1時間インキュベートした。生成物を、pH7.4のPBS中で平衡化したPD−10脱塩カラムに通して精製した。生成物は、抗体上の利用可能なアミノ基において、波線によって示した抗体への結合と共に以下に示した、AK11(AK1の反応生成物)に共有結合したモノクローナル抗PSAを含有した。280nmおよび384nmでの吸光度測定を使用することによって、IgG濃度およびAK11/IgG比(3 AK11:1 IgG)を決定した。
【0165】
【化9】

B.Ab−2〜HRPコンジュゲートの調製
以下の代表的な合成手順において、酵素西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を、前立腺特異的抗原(PSA)に対する抗体に共有結合させる。本明細書に教示した方法に従って、追加の酵素−標識抗体を調製することができる。
C.HRPの活性化
HRP(Roche、10−814−393−001)10mgを、1×PBS(137mMのNaCl、10mMのホスフェート、2.7mMのKCl、および7.4のpH)2.0mL中に溶解させた。DMSO中の30倍モル過剰のsulfo−SMCC(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)(25μg/μL)を、HRP溶液に添加し、暗所で1時間インキュベートした。マレイミド活性化HRPを、pH7.4のPBS中の、PD−10脱塩カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)に通して精製した。HRP濃度は、403nmで2.275mL/mg−cmの吸光係数を使用して、分光光度法で決定した。
D.抗−PSAモノクローナル抗体(Ab2)の活性化
50倍モル過剰の2−イミノチオラン(Thermo Fisher Scientific、Piscataway、NJ)を、pH7.4のPBS中のモノクローナルPSA抗体に添加し、暗所で、周囲温度で1時間反応させた。Ab2と指定したモノクローナルPSA抗体は、PSA上の結合部位において、実施例2のAb1と異なる。チオール化抗体を、pH7.4のPBS中の、PD−10脱塩カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)に通して精製した。抗体濃度は、280nmで1.4mL/mg−cmの吸光係数を使用して、分光光度法で決定した。
E.Ab2−HRPコンジュゲートの調製
5倍過剰の活性化されたHRPを、活性化されたAb2溶液に添加することによって、コンジュゲート反応混合物を作り出した。コンジュゲート反応混合物を、暗所で、室温で2時間、ローテーター上でインキュベートした。コンジュゲート反応混合物に過剰量のL−システインおよびヨードアセトアミドを連続添加することによって(各ステップ、15分)、未反応のチオール基およびマレイミド基をブロックした。第1のステップにおいて、過剰(0.025×反応体積)の50mg/mLのL−システイン−HCl(pH7.4のPBS中に溶解させた)を添加し、15分インキュベートした。第2のステップにおいて、過剰(0.04×反応体積)の50mg/mLのヨードアセトアミド(pH7.4のPBS中に溶解させた)を、pH8.5の50mMのボレート(0.08×反応体積)と一緒に反応混合物に添加し、光から保護して、周囲温度でさらに15分インキュベートした。このコンジュゲートを、pH7.4のPBS中で平衡化したSuperdex200カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ、部品番号17−5175−01)に通して精製した。コンジュゲートを含有する画分をプールし、HRP/IgG比を、AおよびBで記載したように、分光光度法で決定した。計算されたHRP/IgG比は、1.4であった。
SSIAを用いた、直接標識sbpを有するPSAのアッセイ
Ab1−AK11コンジュゲートを、pH7.4のPBS中に、10μg/mlで提供した。Ab2−HRPコンジュゲートを、pH7.4のPBS中に、0.25μg/mlで提供した。第1の反応容器内で、Ab1−AK11コンジュゲート25μl、脱イオン水中の600μMのアスコルビン酸、およびAb2−HRPコンジュゲート25μlを、試料25μlに添加し、15分間インキュベートした。SSIAを用いない比較のために、第2の反応容器内で、Ab1−AK11コンジュゲート25μl、水25μl、Ab2−HRPコンジュゲート25μlを、試料25μlに添加し、15分間インキュベートした。
【0166】
インキュベートした後、トリガー溶液A 100μlを注入することによって、各反応容器内で化学発光反応を開始する。反応容器内にトリガー溶液を注入すると同時に、光子計数光電子増倍管(PMT)を組み込んだルミノメーターによって、化学発光シグナルを検出した。シグナル収集は、3.85秒の過程にわたって継続し、化学発光シグナルデータをコンピューターに保存した。
【0167】
各試料は、三つ組で、上記アッセイ法に従って分析した。反応容器内にトリガー溶液の導入を開始して125ミリ秒から始めて495ミリ秒の時間間隔の間に、各アッセイされる試料について収集されたRLUデータをそれぞれ個々の実施について合計し、各試料について三つ組に対して平均し、表13に示した。シグナル対ノイズの比(S/S0)を各濃度値で計算した。表13中のデータを使用することによって、未知のPSA濃度の試料を分析するための較正曲線を作成することができる。
【0168】
【表13】

以下の実施例では、固相の非存在下で、SSIAの存在下および非存在下の両方で、直接標識抗体を使用する、被検体の本開示によるイムノアッセイを実証した。表13に示した結果から、SSIAを用いない直接標識抗体アッセイは、アッセイしたPSA濃度の全範囲にわたって(被検体)用慮反応性でない。対照的に、本開示によるSSIAを組み込んだ直接標識イムノアッセイは機能的であり、ゼロ(対照)から5つすべてのPSAキャリブレーター値を通じて用慮反応をもたらした。その結果として、SSIAを組み込んだ直接標識イムノアッセイは、他の試料中の未知の被検体濃度を決定するのに首尾よく使用することができる。また、SSIAの添加は、較正範囲(PSA、0〜101.6ng/mL)にわたってシグナル対ノイズ比(S/S0)を改善する。
【0169】
(実施例3)
PSAについてのAB1〜AK1、AB2〜HRPコンジュゲートアッセイ
指向性標識された化学発光標識sbpおよびアクチベーター標識sbpを使用する、PSAに向けたアッセイは、以下に記載するように溶液中で行った。この実験により、様々な程度の精製を伴ったコンジュゲートされた試薬を使用することの結果をさらに探索した。
【0170】
マウス抗PSA(M×PSA)(111μL、9mg/mL)およびAK1 NHSエステル(106μL、1mg/mLのDMFストック)を、pH8.25の0.1Mのホウ酸緩衝液(784μL)中で反応させた。この混合物を室温で90分間混合した。反応混合物100μLを取り出し、リシン溶液(2mg/mL)2.6μLを添加し、30分間混合した。この反応混合物をPBS緩衝液で希釈して、「未精製コンジュゲート」アッセイにおいて使用した。同じ様式で調製したコンジュゲートを、「精製コンジュゲート」アッセイにおいて使用するため、当技術分野で公知である脱塩カラムを用いて精製した。
【0171】
MxPSA−AK1コンジュゲート溶液30μL(67ng)、キャリブレーター(0〜129ng/mLのPSA)24μL、MxPSA−HRPコンジュゲート30μL(7.8ng)、および血清36μLを、白色マイクロタイタープレートのウェル中にピペットで入れた。このプレートを37℃で10分間インキュベートした。アスコルビン酸溶液(5.5mM)5μLを添加した。プレートを注入プレートルミノメーター内に配置した。トリガー溶液A 100μLをルミノメーターによって添加し、化学発光シグナルを、トリガー溶液を添加してから5秒間読み取った。
【0172】
反応混合物中のPSAの濃度の関数としての、「未精製」および「精製」MxPSA−AK1コンジュゲートの反応についての、化学発光シグナル(相対発光単位、RLU)の強度を以下の表に提供する。
【0173】
【表14】

表14に提供したデータは、対数−対数プロットに変換したとき、PSAの対数濃度に対する化学発光シグナルの対数強度は、MxPSA−AK1コンジュゲート試薬の精製のレベルに関係なく、0.5ng/mL〜129ng/mLの範囲の[PSA]内で単調であり、近似的に直線であることを示した。
【0174】
(実施例4)
競合的イムノアッセイ
競合的イムノアッセイ反応において、標識された被検体と組み合わせて、化学発光標識捕捉抗体を利用する被検体のホモジニアスイムノアッセイを提供する。本例の被検体の環状−AMP(「cAMP」)は、HRPとコンジュゲートされることによって、cAMP−HRP試薬をもたらし、捕捉抗体(「捕捉Ab」)(AK5とコンジュゲートされることによって捕捉抗体−AK5複合体を形成する)において、被検体cAMPで競合する。したがって、本明細書に記載されるように、捕捉抗体−AK5−cAMP−HRP複合体が形成され、トリガー溶液が添加されると、化学発光(すなわち、「光」)を、捕捉抗体−AK5−cAMP−HRP複合体が形成される程度に対して観察することができる。HRPとコンジュゲートされない被検体(cAMP)は、捕捉抗体−AK1複合体で競合し、トリガー溶液が添加されると、得られる捕捉抗体−AK5−cAMP複合体は、化学発光をまったくもたらさない(すなわち、「光なし」)。したがって、被検体cAMPは、捕捉抗体−AK5複合体で競合し、それによって、捕捉抗体−AK1−cAMP−HRP複合体のためにシグナルを抑制する。
【0175】
ウサギ抗cAMP(IMMUNOTECH、Marseille)0.1mg(4.93mg/mLのストックから20.3μL)を、1.7mLの遠心管中で、pH8.25の、0.1Mのホウ酸ナトリウム緩衝液162μLに添加した。AK5 17.6μg(DMFの1mg/mLストックから17.6μl)を添加した。素早くボルテックス混合した後、管を、回転振盪機上に室温で1時間置いた。3mg/mLのストックからL−リシン1.2μLを添加することによって反応をクエンチした。反応混合物を、0.4%のBSA、およびPBS中で希釈し(1:1)、4℃で貯蔵した。cAMP−HRPは、文献に従って調製した。例えば、J Immunological Methods、1992年、155巻 31〜40頁を参照。cAMPは、Sigma、St. Louis、MOから購入した。cAMPの30nMのストックは、PBS中で調製し、PBS中でさらに希釈することによって、アッセイのための試料キャリブレーターを作製した。表15を参照。
【0176】
競合的イムノアッセイプロトコールは以下の通りであった。AK5標識モノクローナルウサギ抗cAMP(0.275μg/mL)(3μL)、HRP標識cAMP(0.09375μg/mL)(3μl)、およびcAMPキャリブレーター(4μl)を、白色ポリスチレン384低体積プレート中に添加した。コンジュゲート溶液は、BSA中0.2%であった。室温で30分インキュベートした後、2−アミノフェノール(0.6875mM)1μlを添加し、その後トリガー溶液(10μl)を添加した。トリガー溶液は、pH8の25mMのTris、8mMのp−ヒドロキシケイ皮酸、1mMのEDTA、0.2%のTween−20、および0.1Mの尿素ペルオキシドを含有していた。光強度は、トリガーを注入した直後に1秒間測定した(Spectromax)。反応物は、インキュベーションの間、光に曝さず、振盪しなかった。
【0177】
以下の表15に示したように、キャリブレーターを0.137nM〜10000nMの範囲内で使用した。データを表15に提供する。このデータに関して、cAMPについてのIC50は、2.6nMであると計算された。データは、化学発光シグナルの完全な抑制は、100nM過剰の被検体cAMPレベルで実現することができることを実証する。
【0178】
【表15】

(実施例5)
化学発光標識、ビオチン化BSA、ニュートラビジン、および抗体を含む化学発光標識SBPの調製
この実施例は、ビオチンとストレプトアビジンの非共有結合性相互作用を通じた自己組織化によって形成される、「四量体」骨格(scaffold)または複合体を記載する。この実施例は、四量体骨格を使用する、被検体のためのイムノアッセイも実証する。
A.化学発光化合物およびビオチンを用いたBSAの標識化:
スルホ−NHS−LC−ビオチン(Thermo Scientific、Rockford IL)およびAK1−NHSエステル(Lumigen、Southfield MI)で標識されたウシ血清アルブミン(BSA)を、BSA 1モル当たりAK1 7モル;BSA 1モル当たりビオチン3モルのモル比で混合し、この混合物を、実施例17に記載したように、PD−10脱塩カラムに通して精製した。
B.ニュートラビジン−IgGコンジュゲートの調製
チオール化抗PSAモノクローナル抗体を、実施例2に記載したように調製した。
【0179】
3倍モル過剰のマレイミド活性化ニュートラビジン(Thermo Scientific)を、チオール化モノクローナル抗PSA溶液(5mg)に添加し、暗所で、室温で1時間、ローテーター上でインキュベートした。コンジュゲート反応混合物にL−システインおよびヨードアセトアミドを連続添加することによって(各ステップ、15分)、未反応のチオール基およびマレイミド基をブロックした。コンジュゲートを、Superdex(登録商標)200カラム(GE Healthcare、Piscataway NJ)を通して精製し、pH7.4のPBS中で平衡化することによって、未反応のニュートラビジンを除去した。コンジュゲートを含有するHPLC画分をプールし、四量体骨格複合体の調製に使用した。
C.ニュートラビジンをコンジュゲートされたIgG、および標識されたBSAを含有する骨格複合体の調製
上記したような、3倍モル過剰の標識されたBSAを、ニュートラビジンをコンジュゲートされたIgGに添加し、周囲温度で30分間、複合体を形成させた。最終生成物を、上記したようにHPLCによって精製し、生成物を、さらに使用するまで4℃で貯蔵した。
D.四量体骨格を用いたPSAのイムノアッセイ
PSAについてのイムノアッセイは、実質的に実施例2に記載したように実施した。簡単に言えば、等体積(それぞれ25μL)の四量体骨格、HRPコンジュゲート、600μMのアスコルビン酸、およびPSA試料を反応容器内で合わせ、37℃で15分間インキュベートした。インキュベートした後、反応容器内にトリガー溶液A 100μLを注入することによって、化学発光反応を開始した。注入と同時に、光電子増倍管(PMT)を組み込んだルミノメーターによって、275ミリ秒の過程にわたって化学発光シグナルを検出し、データをコンピューターに保存した。
【0180】
既知のPSA濃度の試料は、表16に提供したPSA濃度に到達するように、先に記載したように調製した。次いで、試料を上記したように分析し、データを、未知のPSA濃度の試料を分析するための較正曲線を作成するのに使用した。
【0181】
【表16】

(実施例6)
化学発光標識補助物質(auxillary)、ビオチン化抗体、および自己組織化ストレプトアビジン−IgGポリマーの調製
この実施例では、AK1標識ストレプトアビジンをビオチン化抗体と混合し、それによって、自己組織化によるポリマーを形成した。これらの自己組織化ストレプトアビジン/ビオチン−IgGポリマーは、被検体をイムノアッセイするための骨格として使用することができる。
A.AK1標識ストレプトアビジンの調製
AK1(Lumigen、Southfield、MI)を、30mg/mLの濃度で無水DMSO中に溶解させた。6(6)モル当量を、50mMのNaClを含有する水中で調製した、ストレプトアビジン(Streptavidin−plus(登録商標)、Prozyme、San Leandro、CA)の10.1mg/mLの溶液に添加した。反応を暗所で60分間進行させ、引き続いて、pH7.2のPBSで平衡化したSephadex(登録商標)G−25カラム(GE Healthcare、Piscataway NJ)を使用して、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。AK11:タンパク質のモル比を、以下の式を使用してUV分光法によって決定した:
[AK11]=A384/11,380cm1M
[ストレプトアビジン]=(A280−(A384/(A384/A280 AK1)))/176,000cm1M
第2の式を使用することによって、280nmでのAK1の吸光度を補正した。これらの条件下で、ストレプトアビジン当たり4.3AK1のAK11:ストレプトアビジンのモル比を、94%の収率で実現した。
AK11標識抗cTnIモノクローナル抗体の調製
AK−1標識抗体は、直接標識IgGを調製するのに、IgGに15倍モル過剰のAK−1を使用したことを除いて、実施例2に記載したように調製した。
B.ビオチン化抗cTnIモノクローナル抗体の調製
10倍モル過剰のNHS−LC−ビオチン(Thermo Scientific、Rockford IL)を、抗cTnIモノクローナル抗体に添加し、この混合物を室温で2時間インキュベートした。ビオチン化抗体を、pH7.2のPBS中で透析によって精製した。ビオチン:抗体のモル比は、市販のビオチン定量化キット(Thermo Scientific)を使用して決定した場合、4.9であった。
C.自己組織化ポリマー骨格の調製
自己組織化ポリマーは、2モル当量のビオチン化cTnI抗体を、1モル当量のAK11標識ストレプトアビジンに添加することによって調製した。この混合物を、暗所で、周囲温度で90分間インキュベートすることによって、複合体を形成させた。この反応混合物を、実施例3に記載したように、Superdex(登録商標)200カラムを通して精製した。高分子量(800kDa→1.5MDa)コンジュゲートに対応するHPLC画分をプールし、使用するまで4℃で貯蔵した。
D.cTnIについてのイムノアッセイ
cTnIについてのイムノアッセイを、以下のように実施した。自己組織化ポリマー骨格、または対照としての直接標識抗体、HRPコンジュゲート、600μMのアスコルビン酸、および試料のそれぞれ25μLを反応容器内で混合し、15分間インキュベートした。インキュベートした後、反応容器内にトリガー溶液A 100μLを注入することによって、化学発光反応を開始した。トリガー溶液を反応容器内に注入すると同時に、光子計数光電子増倍管(PMT)を組み込んだルミノメーターによって、275ミリ秒の過程にわたって化学発光シグナルを検出し、データをコンピューターに保存した。
【0182】
既知の濃度のcTnI試料は、表17に示したcTnI濃度に到達するように、既知量の天然cTnIを正常ヒト血清に添加することによって調製した。各試料は、上記した、(およびPSAのイムノアッセイについての実施例4における)方法によって三つ組で分析した。所与の時間間隔にわたって、各アッセイされる試料について収集されたRLUデータを、それぞれ個々の実施について合計し、各試料について三つ組に対して平均した。シグナル対ノイズの比を、各既知の濃度の試料について決定した。
【0183】
【表17】

表17中のデータは、両方のアッセイ形式について、0〜190ng/mlの被検体TnI濃度のイムノアッセイに関して、好結果の用慮反応を例示した。実施例6の結果はまた、アクリダンを用いて直接標識された抗体と比較した場合に、自己組織化ストレプトアビジン/ビオチン−IgG(抗体)ポリマーを利用するアッセイについて、シグナル強度(平均RLUによって示される)の増大およびシグナル対ノイズ(S/S0)の改善を示した。
【0184】
(実施例7)
化学発光標識、KLH、およびストレプトアビジン−ビオチン結合抗体を含む化学発光標識SBPの調製
この実施例は、大きいポリマー骨格の調製における、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)の使用を実証する。マレイミド活性化KLHを抗体とコンジュゲートし、AK1を用いて標識化することによって骨格を形成した。この実施例は、被検体についてのイムノアッセイにおける、そのような骨格の使用も実証する。
A.cTnIモノクローナル抗体のチオール化
50mMのN−アセチルホモシステインラクトン(AHTL)(Sigma−Aldrich、St.Louis MO)をpH9.0で抗体に添加し、この混合物を室温で1時間反応させることによって、モノクローナル抗cTnIをチオール化した。このチオール化抗体を、実施例2に記載したように、PD−10脱塩カラムを使用して精製した。
B.KLH骨格の調製および標識化
チオール化抗−cTnI 3.4mgを、マレイミド活性化KLH(製品番号77605、ThermoScientific)10mgに添加し、得られた溶液を室温で2時間インキュベートした。抗体−KLHコンジュゲートを標識するために、DMSO 0.7mL中に溶解したAK1−NHSエステル0.9mgを溶液に添加し、15分間反応させた。次いで、30kDa MWCO Ultracell遠心濃縮器(Millipore、Billerica MA)を使用して、緩衝液交換(20mMのホスフェート、1mMのEDTA)によって、このコンジュゲートを精製した。
C.大きいタンパク質KLH骨格を用いたイムノアッセイ
大きいタンパク質KLH骨格を使用する、cTnIについてのイムノアッセイは、実施例6に記載したように実施した。既知のcTnI濃度の試料は、実施例6に記載したように調製した。簡単に言えば、等体積(25μL)の10μg/mL(IgG濃度に正規化された)のKLH骨格、1μg/mLのHRPコンジュゲート、水中の600mMのアスコルビン酸、および試料を、反応容器内で一緒に混合した。混合物を、トリガー溶液A(すなわち、トリガー溶液)100μLと共にインキュベートすることによって、化学発光反応を開始した。化学発光反応を開始した後、高速読取りキネティックモードで、SpectraMax(登録商標)Lマイクロプレートルミノメーターで試料を読み取り、化学発光シグナルを、約0.12〜0.21秒の時間期間にわたって記録した。このイムノアッセイの結果を表18に示す。
【0185】
【表18】

(実施例8)
化学発光標識、ストレプトアビジン微粒子、およびビオチン化抗体を含む化学発光標識SBPの調製
この実施例は、脱溶媒和による、AK1標識ストレプトアビジンからのタンパク質微粒子の調製を記載する。ビオチン化抗体とカップリングした後、ストレプトアビジン(streptravidin)粒子を、イムノアッセイのための骨格として使用することができる。
A.タンパク質微粒子の調製
AK1標識ストレプトアビジンを、実施例6に記載したように調製した。AK1標識ストレプトアビジン9.8mg(2mL)を、4mLのガラス反応バイアルに添加し、テフロン(登録商標)撹拌子を使用して、350rpmの一定速度で撹拌した。次いで、無水エタノール(Sigma−Aldrich、St. Louis MO)2.8mLを、溶液が濁るまで、2mL/分の速度で、液滴で添加した。次いで、5%のグルタルアルデヒド溶液(Sigma−Aldrich;蒸留水中で1:10に希釈した)12μLを、反応物に添加し、さらに60分間混合することによって、脱溶媒和によって形成された粒子のストレプトアビジンサブユニットを架橋した。グルタルアルデヒドのモル量は、ストレプトアビジン9.8mg中に存在するリシン残基の数と等しかった。次いで0.832Mのエタノールアミン水溶液(Sigma−Aldrich)12μLを添加することによって、反応をクエンチし、その後、20%のTween(登録商標)−20水溶液2.8μLを添加することによって粒子を安定化させた。
【0186】
粒子をSlide−A−Lyzer透析カセット(Thermo Scientific、Rockford、IL)中に入れ、0.01%のTween−20を含有する、pH7.4のPBSに対して4℃で透析した。透析緩衝液(1L)を、24時間の期間にわたって2回交換することによって、反応副生成物を除去した。次いで、粒子溶液のストレプトアビジン濃度を、市販のビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(製品番号23227、ThermoScientific)を使用して測定した。SA−21ストレプトアビジン(E280=3.2cm−1mg/mL−1)を使用することによって、既知の濃度で標準物質を調製し、粒子のタンパク質濃度を、標準物質または較正曲線から計算した。
【0187】
精製した粒子を、Delsa(商標)Nano Zeta PotentialおよびSubmicron Particle Size Analyzer(Beckman Coulter)を使用して、光子相関分光法によって分析し、約4ミクロンの平均直径を有することが判明した。本明細書に記載される条件(粒子を脱溶媒和するのに使用される溶媒の体積、反応pHなど)を変更することによって、所望の粒径(約200nm〜4μm)を実現することができた。
B.ストレプトアビジン粒子を使用するcTnIについてのアッセイ
AK1標識ストレプトアビジン粒子に、ビオチン化抗cTnI抗体を、pH7.4のPBS中で、粒子1mg当たりIgG 0.23mgの比でコーティングした。この混合物を、穏やかに振盪しながら室温で30分間インキュベートすることによって、ビオチン化IgGを、ストレプトアビジン粒子と複合体形成させた。次いで、粒子を10,000×gで5分間遠心分離し、任意の非結合IgGを含有する上澄みを除去した。粒子ペレットを、0.1%のTween−20を含有する、pH7.4のPBS中に再懸濁し、100μg/mLのストレプトアビジンの最終濃度にした。
【0188】
0.15μg/mLの濃度で抗cTnI抗体をコーティングされた50μg/mLのストレプトアビジン粒子、西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲート、375μMのアスコルビン酸、および1mg/mLのIgG(BCI 品目270904)を含有する混合物を、アッセイ希釈剤中で調製した。アッセイは、反応容器にHRPコンジュゲート/粒子混合物70μLおよび各試料30μLを添加することによって実施した。既知のcTnI濃度の試料は、既知量の天然cTnI(Scipac、Sittingbourne UK)を正常ヒト血清中にスパイクすることによって調製し、試料濃度は、AccuTnIアッセイ(Beckman Coulter)から生じる用量値から定めた。室温で15分インキュベートした後、高速キネティック読取りモードで、SpectraMax(登録商標)Lマイクロプレートルミノメーター(MDS Analytical Technologies)で試料を読み取った。化学発光反応を開始するために、化学発光シグナルをモニターしながら、350μL/秒の速度で等体積のトリガー溶液Aを注入した。SoftMax Proソフトウェアを利用してデータを分析した。値は、化学発光を開始して30ms後に始めて、20データ点(10msの積分時間)の合計として報告し、表19に示す。
【0189】
【表19】

(実施例9)
デキストラン骨格およびSSIAを含む化学発光標識SBPを用いたPSAのアッセイについての、アッセイ成分濃度の変化
以下の実施例は、化学発光化合物で直接標識された可溶性デキストラン骨格および抗体を含む化学発光標識sbpを利用する、被検体のイムノアッセイを実証する。
【0190】
この実施例では、PSAに対するモノクローナル抗体の特異的結合対の1つのメンバーが、抗体がチオール化されており、AK11で標識され、かつマレイミドで活性化されたデキストランに共有結合的に連結していることを除いて、以下の実施例10に記載されているように、AK1とカップリングしたデキストラン分子にコンジュゲートされている。抗PSA−デキストランコンジュゲートは、以下の表に示したように、10μg/ml、2.5μg/ml、または0.5μg/mlの水溶液で提供した。第2のモノクローナルPSA抗体は、上記したようにHRPにコンジュゲートし、以下の表に示したように、0.5μg/ml、0.1μg/ml、または0.03μg/mlの水溶液で提供した。
【0191】
アッセイは、2つの各反応容器内に試料25μlを入れることによって実施した。第1の反応容器内の試料に、Ab1溶液25μl、水25μl、Ab2溶液25μlを添加し、15分間インキュベートした。第2の反応容器内で、Ab1溶液25μl、200μMまたは500μMの濃度(以下の表に示したように)の脱イオン水中のアスコルビン酸(Sigma、St.Louis、MO)、およびAb2溶液25μlを、試料25μlに添加し、15分間インキュベートした。インキュベートした後に、トリガー溶液A 100μlを注入することによって、各反応容器内の化学発光反応を開始した。トリガー溶液を反応容器内に注入すると同時に、光子計数光電子増倍管(PMT)を組み込んだルミノメーターによって、3.85秒の過程にわたって化学発光シグナルを検出し、データをコンピューターに保存した。
【0192】
各試料を、上記アッセイ法に従って三つ組で分析した。反応容器内にトリガー溶液の導入を開始して82.5ミリ秒から始めて495ミリ秒の時間間隔の間に、各アッセイされる試料について収集されたRLUデータをそれぞれ個々の実施について合計し、各試料についての三つ組に関して平均し、表20に示した。シグナル対ノイズの比(S/S0)を各濃度値で計算した。表20中のデータを使用することによって、未知のPSA濃度の試料を分析するための較正曲線を作成し得る。
【0193】
既知の濃度の試料は、先に記載したように調製した。各試料を、上記方法に従って三つ組で分析した。
【0194】
【表20】

これらの次の実証アッセイは、先の実施例と同様の反応物を利用する。PSAについての特異的結合対の1つのメンバーを、AK1とカップリングしたデキストラン分子にコンジュゲートし、以下の表に示したように、10μg/ml、2.5μg/ml、または0.5μg/mlの水溶液で提供する。第2のモノクローナルPSA抗体は、上記したようにHRPにコンジュゲートし、以下の表に示したように、0.5μg/ml、0.1μg/ml、または0.03μg/mlの水溶液で提供した。
【0195】
各試料を、以下の方法に従って三つ組で分析した。
【0196】
アッセイは、反応容器内に試料25μlを入れ、次いで、Ab1溶液25μl、以下の表に示したように、200μMまたは500μMの濃度の水中のアスコルビン酸、およびAb2溶液25μlを添加し、それによって反応混合物を作り出すことによって実施した。混合は、各反応物の送達によってのみであり、その後15分インキュベートした。インキュベートした後、化学発光反応を、各反応容器内にトリガー溶液A 100μlを注入することによって開始し、反応によって生じる光を、3.85秒間、光子計数ルミノメーターによって検出し、RLUデータをコンピューターに保存した。
【0197】
反応容器内にトリガー溶液の導入を開始して125ミリ秒から始めて495ミリ秒の時間間隔の間に、各アッセイされる試料について収集されたRLUデータを、それぞれ個々の実施について合計し、各試料についての3回の繰り返しに関して平均し、表21〜23に示した。シグナル対ノイズの比(S/S0)および%CVを、各濃度値で計算した。表中のデータを使用することによって、この実施例の材料およびガイダンスを利用してPSA濃度を決定するための、試料を分析するための較正曲線を作成することができる。
【0198】
実施例9の結果は、イムノアッセイの成功は、化学発光標識sbp濃度、アクチベーター標識sbp濃度、およびSSIA濃度、ならびにこれらの反応物の様々な比によって多様であることを実証した。実施例9の方法は、標準的な方法によってPSA濃度を決定するための較正曲線の作成を含めた、未知の試料中の被検体濃度の決定において使用するのに適している。
【0199】
【表21】

【0200】
【表22】

【0201】
【表23】

(実施例10)
化学発光標識、デキストラン−ストレプトアビジン骨格、およびビオチン結合抗体を含む化学発光標識SBPの調製、ならびに様々なSSIAを用いた、TnI、CKMB、またはミオグロビンについてのアッセイにおける使用
A.化学発光化合物およびアミンおよびスルフヒドリル反応性ヘテロ二官能性架橋剤でのアミノ改変デキストランの標識化:
NHS−(PEO)8−マレイミド(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)5.2mg、およびAK1、アクリダンケテンジチオアセタール−NHSエステルアンモニウム塩22.1mgをDMSO中に溶解させて30mg/mLにし、合わせ、ポリプロピレン反応容器内で、14mg/mLでpH7.2のPBS中に溶解した70kDaのポリアミノデキストラン(Helix Research、製品番号1209;デキストラン1モル当たりNH 70モル)35mgに添加した。反応混合物を、光から保護して、周囲温度で45分間インキュベートした。ポリアミノデキストラン上の未反応のアミノ基は、MS(PEG)8(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)10μLと共にコンジュゲートを、暗所で、周囲温度でさらに10分間インキュベートすることによってブロックした。活性化されたデキストランを、製造者の指示書に従って、マイクロ遠心分離(14K×g、1分)によって澄ませ、1mMのEDTAを含有するpH7.2のPBS中で平衡化したSephadex G−25カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を通して精製した。
B.ストレプトアビジンのチオール化:
50倍モル過剰(5.63mg)の2−イミノチオラン(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を、ストレプトアビジン−plus(登録商標)(Prozyme、Hayward、CA)45mg(10mg/mL)に添加した。pH7.4のPBS(1mL)を混合物に添加することによって、反応物のpHを7.0に上昇させた。混合物を、暗所で、周囲温度で45分間インキュベートした。チオール化ストレプトアビジンを、製造者の指示書に従って、1mMのEDTAを含有するpH7.2のPBS中で平衡化したSephadex(登録商標)G−25カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を通して精製した。
C.AKで誘導体化され、マレイミドで活性化されたデキストランへの、チオール化ストレプトアビジンのコンジュゲーション
次に、活性化デキストラン(A)およびチオール化ストレプトアビジン(B)を組み合わせ、光から保護して、周囲温度で一晩反応させた。未反応のマレイミド基およびチオール基を、2ステッププロセスにおいて引き続いてブロックした。第1のステップにおいて、過剰(0.025×反応体積)の50mg/mLのL−システイン−HCl(pH7.4のPBS中に溶解した)を、コンジュゲートに添加し、15分間インキュベートした。第2のステップにおいて、過剰(0.04×反応体積)の50mg/mLのヨードアセトアミド(pH7.4のPBS中に溶解した)を、pH8.5の50mMのボレート(0.08×反応体積)と一緒に反応混合物に添加し、光から保護して、周囲温度でさらに15分間インキュベートした。
D.ストレプトアビジン〜デキストラン〜AK1コンジュゲートの精製
コンジュゲートをマイクロ遠心分離(14K×g、2分)によって澄ませ、Gilson FC 203Bフラクションコレクターに結合したBinary Gradient 125ポンプおよびダイオードアレイ168検出器を有するSystem Gold(登録商標)HPLCシステム(Beckman Coulter, Inc.、Brea、CA)において、pH7.4のPBS中で平衡化したSuperdex(登録商標)200カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を通して精製した。プログラムされた流速は1mL/分であり;試料注入ループ体積は1mL;分画は1mL/画分であった。コンジュゲート画分を慎重にプールすることによって、コンジュゲート後に溶出する少量の未反応のストレプトアビジンを除外した。プールされたコンジュゲート中のストレプトアビジンの濃度を、標準物質として所定の濃度のストレプトアビジンplus(登録商標)を使用して、BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を用いて決定した。AK1の濃度は、分光光度法で決定した(E384=13.6mg−1mL−1)。コンジュゲートプールの計算されたストレプトアビジン濃度およびAK:ストレプトアビジンのモル比は、それぞれ1.47mg/mLおよび18:1であった。
E.xPSAモノクローナル抗体のビオチン化
ビオチン化PSA抗体は、DMSO中で2mg/mLに溶解した6倍モル過剰のNHS−(PEO)4−ビオチン(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を、MxPSA抗体(pH7.4のPBS中7.6mg/mL)6mgに添加することによって調製した。周囲温度で60分インキュベートした後、ビオチン化抗体を、製造者の指示書に従って、pH7.4のPBS中で平衡化したSephadex G−25カラム(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を通して精製した。
F.ビオチン化抗体の、ストレプトアビジン〜デキストラン〜AKコンジュゲートへのカップリング
カップリングは、ストレプトアビジン〜デキストラン〜AKコンジュゲート(1.47μg/mL)を、ビオチン化抗PSAモノクローナル(2μg/mL)と共に、希釈剤(100mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、0.2%のTween(登録商標)−20、0.1mMのEDTA、1%のBSA)中で、30分間インキュベートすることによって実施した。これは、2:1のストレプトアビジン:ビオチン化抗体のモル比に対応する。
G.デキストラン骨格化学発光標識sbpおよびSSIAを用いたTnI、CKMB、またはミオグロビンのアッセイ
この実施例は、被検体、例えば、トロポニンI、CKMB、またはミオグロビンなどを検出するためのアッセイ法を実証する。各アッセイについて、使用した特異的結合対は、モノクローナル抗体の対であり、各抗体は、指定された被検体上の異なる抗原部位に特異的である。各アッセイについて、第1の抗体は、ビオチン化し、デキストラン−AK1−ストレプトアビジン骨格(「Ab骨格」)にコンジュゲートし、実施例5で上記したものと同様の方法によって調製し、0.5μg/mlまたは2μg/mlの水溶液で提供した。各アッセイについての第2の抗体は、上記したようにHRPとコンジュゲートし(「HRPコンジュゲート」)、水溶液(100mMのTris、150mMのNaCl、pH8.0、0.2%のTween20、0.1mMのEDTA、1%のBSA)中、0.25μg/mlまたは1μg/mlで提供した。
【0202】
各アッセイは、Ab骨格25μl、水中の600μMのアスコルビン酸25μl、試料25μl、およびHRPコンジュゲート25μLを、反応容器に添加することによって実施した。この反応混合物を、37℃で15分間インキュベートした。反応容器をルミノメーターによる検出のために配置し、次いで、トリガー溶液A 100μLを添加し、数秒の時間期間にわたって光強度を記録した。ピークシグナルにほぼ中心を合わせた302.5ミリ秒の経過時間に対応して、ルミノメーターによって収集したデータを合計し、1試料当たり3回の実施にわたって平均し、表24〜26に示した。シグナル対ノイズを各試料について計算した。
【0203】
この実施例の結果は、本アッセイの、他の被検体への適用を実証する。さらに、この実施例は、化学発光標識sbp、アクチベーター標識sbp、およびSSIAについての、様々な濃度および比の反応物を利用するアッセイを首尾よく実証する。実施例7の方法は、標準的な方法によってTnI、CKMB、またはミオグロビンの濃度を決定するための較正曲線の作成を含めた、未知の試料中の被検体濃度の決定において使用するのに適している。
【0204】
【表24】

【0205】
【表25】

【0206】
【表26】

アッセイは、上記したような改変DxI(登録商標)(Beckman Coulter)自動イムノアッセイ機器を使用して実施した。
H. TnIアッセイにおける様々なSSIAを利用するアッセイ
複数の濃度レベルの5つの異なるSSIAを、本開示によるTnIアッセイシステムとの関連で実証した。すべてSigma Aldrichから入手可能な、アスコルビン酸、TROLOX、フェノキサジン、3−アミノチロシン、および2−アミノフェノールの濃縮原液を、脱イオン水で100mMに調製した。
【0207】
反応管内で、pH.8.0の緩衝水溶液(100mMのTris、150mMのNaCl、0.1mMのEDTA、0.2%のTween−20、および1%のBSA)中の0.5μg/mLのTnI M6抗体HRPコンジュゲート400μL、やはりpH8.0の緩衝水溶液中の2μg/mLのAbで2:1のSA/AbのAK1〜Dex70/31〜ストレプトアビジン(画分1)400μL、および既知の濃度のTnI被検体を含有するキャリブレーター標準溶液400μL。1つの管を、各キャリブレーター濃度のために準備した。Ab−HRPコンジュゲート、骨格、および標準物質のプレミックス溶液75μLを、Corning/Sostar96ウェルポリプロピレンマイクロタイタープレート(白色、Corningカタログ番号3355)の各ウェル中にオクタペット(octapet)によって送達し、室温で38〜49分間インキュベートさせた。次に、2mM、1mM、または0.5mMの濃縮溶液としての各抗酸化剤25μLを、リピーターピペットを使用してプレートのウェル中にピペッティングした。プレートを10秒間回転して混合し、5〜33分の間インキュベートした。検出は、SpectraMax L注入プレートルミノメーターを用いて実施した。ベースラインの読みを取得し、トリガー溶液A 100μLを各ウェル中に注入し、化学発光シグナルを読み取った。
【0208】
【表27】

結論:この代表的なTnI溶液相アッセイ形式で試験されたすべてのSSIAは、シグナル対ノイズの改善に有効に挙動した。
【0209】
(実施例11)
化学発光標識、PAA骨格、およびストレプトアビジン−ビオチン結合抗体を含む化学発光標識SBPの調製
この実施例は、ストレプトアビジンにカップリングし、ビオチン化抗体にコンジュゲートしたポリ(アクリル酸)主鎖を有する骨格の形成を記述する。この実施例は、PAA骨格を使用する被検体のためのイムノアッセイも記述する。
A.化学発光化合物およびビオチンを用いたポリアクリル酸(PAA)の標識化:
ポリアクリル酸(PAA)ナトリウム塩(Polysciences、Warrington PA)2mgを、pH6.0の100mMのMES 0.4mL中に溶解させた。EDC(Thermo Scientific)50(50)モル当量(20mg)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(Thermo Scientific)6mgを脱イオン水中に溶解させ、カルボキシレート基を活性化するために混合しながら、PAA溶液に添加した。活性化して20分後に、ビオチン−PEG4−ヒドラジド(Thermo Scientific)50モル当量(0.843mg)、および無水DMSO中で調製したAK1−ヒドラジド50モル当量(1.01mg)を、PAA溶液に添加し、混合しながら室温で一晩反応させた。標識されたPAAを、10kDa MWCO遠心濃縮器(Millipore、Billerica MA)を使用して、pH7.2のPBS中で、緩衝液交換によって精製し、5(5)回交換した後、PBSで元の体積に回復させた。ビオチンおよびAK1標識PAAを、PAA−Bと指定した。
B.標識されたPAAのストレプトアビジンとのカップリング
ビオチンおよびAK1で標識したPAA(PAA−B)の0.75mg/mLの溶液を、pH7.4のPBS中で調製した。PAA−B 100μLを、ストレプトアビジンとPAAの2:1のモル比に対応するストレプトアビジン(Prozyme、Hayward CA)の10mg/mLの溶液13.75μLと混合し、この混合物を4℃で一晩インキュベートした。
C.最終的な骨格を形成するための、ストレプトアビジン−PAAコンジュゲートへのビオチン化抗体のカップリング
先の実施例で実証したように、抗体をビオチン化した。PAA骨格は、ストレプトアビジン−PAA−Bコンジュゲートをビオチン化抗cTnIと共に、4℃で一晩インキュベートすることにより、ストレプトアビジン−PAA−Bコンジュゲートを抗体にカップリングすることによって形成した。ストレプトアビジン:抗体のモル比は、1:1から1:4まで変化した。
D.PAA骨格を用いたTnIのイムノアッセイ
PAA骨格は、実施例6に記載したように、cTnIなどの被検体を検出するためのアッセイ法において有用である。TnIについての第1の抗体を、上記したように調製したPAA−AK1−ストレプトアビジン骨格にコンジュゲートし、2μg/mLの水溶液で提供した。次いで、実施例2に記載したように、第2の抗体をHRPにコンジュゲートさせ、水溶液中0.5μg/mLで提供した。
【0210】
イムノアッセイは、実施例17に記載したように実施した。簡単に言えば、等体積のPAA骨格、HRPコンジュゲート、水中600μMのアスコルビン酸、および被検体試料を、96ウェルマイクロタイタープレート中で一緒に混合した。
【0211】
cTnI試料を、実施例6に記載したように、既知量の天然の心臓トロポニンI(Scipac;Sittingbourne UK)を正常ヒト血清に添加することによって調製した。簡単に言えば、既知濃度のTnIを正常ヒト血清中にスパイクし、上記したアッセイに従って分析した。データは、未知の濃度のTnIを分析するための較正曲線を作成するのに使用することができる。
【0212】
【表28−1】

【0213】
【表28−2】

b:出力(SA:PAAのモル比)は、標準物質としてストレプトアビジンを使用することによって、サイズ排除クロマトグラフィー分析から計算した。
【0214】
(実施例12)
化学発光標識SBP、PAA骨格、およびチオール化抗体の調製
この実施例は、EDC化学を使用してAK1およびマレイミドで標識され、チオール−マレイミド反応を介してモノクローナル抗TnI(284)抗体とコンジュゲートしたPAA骨格の調製を記述する。この実施例は、PAA骨格を使用する被検体のためのイムノアッセイも実証する。
A.化学発光化合物およびヘテロ二官能性架橋剤でのPAAの標識化
AK1およびマレイミドで標識したPAA(分子量約225,000)を、(N−[k−マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド)(Thermo Scientific)20モル当量、および無水DMSO中で調製したAK2 20モル当量をPAA溶液に添加し、混合しながら室温で1時間反応させたことを除いて、実施例11に記載したように調製した。標識されたPAAを、10kDa MWCO Slide−A−Lyzer(登録商標)透析カセット(Thermo Scientific)を使用して、pH7.2のPBSに対する透析によって精製した。PAAの最終濃度は、透析の間にポリマーの損失がまったくないと仮定して、1.4mg/mlであった。
B.モノクローナル抗TnI(284)抗体のチオール化
モノクローナル抗TnI(284)抗体は、100mMのMES、pH6.0の緩衝液に対して透析した後に使用した。トラウト試薬(2−イミノチオラン・HCl)(Thermo Scientific)を、2mg/mLの濃度で脱イオン水中に溶解させた。3.2mg/mLの濃度の抗体6.4mgを、2−イミノチオラン2.36μL(抗体1当量当たり10モル当量)と、室温で1時間反応させた。チオール化抗体を、pH7.2のPBSで平衡化され、1mMのEDTAを含有するPD−10脱塩カラム(GE Healthcare、Piscataway NJ)を使用して精製した。
C.チオール化抗体のAK1およびマレイミドで標識したPAAへのカップリング
1.4mg/mlの濃度の、AK1およびマレイミドで標識したPAA溶液105μLを、PAA 1当量当たり抗体6当量に対応する、3.8mg/mLの濃度のチオール化モノクローナル抗TnI(284)抗体0.6mgと直ちに混合した。反応は4℃で実施し、反応生成物をサイズ排除HPLCによって精製した。生成物ピーク(表29でFr3、Fr4、およびFr5と表した)の個々のHPLC画分を、イムノアッセイで評価した。
D.PAA骨格を用いたモノクローナル抗TnI抗体についてのイムノアッセイ
AK1およびマレイミドで標識したPAA骨格を使用する、モノクローナル抗TnIについてのイムノアッセイは、実施例20に記載したように実施した。簡単に言えば、等体積のAK1およびマレイミドで標識したPAA骨格、HRPコンジュゲート、水中600μMのアスコルビン酸、および試料を、反応容器内で30分間一緒に混合した。この混合物を、トリガー溶液A、すなわち、トリガー溶液100μLと共にインキュベートすることによって、化学発光反応を開始した。開始した後、試料を、高速読取りキネティックモードで、SpectraMax(登録商標)Lマイクロプレートルミノメーターで読み取り、化学発光シグナルを、約0.12〜0.21秒の時間期間にわたって記録した。各試料について、5つ(5)のベースラインの読みを収集した後、トリガー溶液の添加によって開始した。表29に報告した値は、複数のデータ点の合計である。
【0215】
【表29】

(実施例13)
化学発光標識、自己組織化ポリマー、およびストレプトアビジン−ビオチン結合抗体を含む化学発光標識sbpの調製
以下の実施例において、AK1標識ストレプトアビジンをビオチン化ポリアクリル酸(PAA)と混合し、自己組織化によってポリマー複合体が形成する。これらの自己組織化ポリマーは、被検体のイムノアッセイのための骨格材料として機能する。
A.ビオチン化PAAの調製
AK1標識ストレプトアビジンおよびビオチン化モノクローナルcTnI284抗体を、実施例6に記載した方法によって調製した。
【0216】
225kDaのポリ(アクリル酸)ナトリウム塩200mgを、pH6.0の100mMのMES 70mL中に溶解させた。カルボキシレート基を活性化するために、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド2g、およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド0.9gを、脱イオン水10mL中に溶解させ、混合しながらPAA溶液に添加した。20分間活性化した後、無水DMSO中、2.25mg/mLの濃度で調製したビオチン−PEG4−ヒドラジド45mgをPAA溶液に添加し、室温で一晩混合させた。次いで、ビオチン化PAAを、脱イオン水に対して広範に透析することによって反応副生成物を除去した。透析後、ビオチン化したポリマーを、真空下でSpeedVac(登録商標)濃縮器(Thermo/Savant)で乾燥させ、乾燥したポリマー(110mg)を、2mg/mLの濃度で、pH7.2のPBS中に溶解させた。ビオチン:PAAのモル比(25ビオチン:PAA)を、市販のHABAアッセイキット(Thermo Scientific)を使用して決定した。
【0217】
(実施例14)
化学発光標識、PAAを用いる自己組織化ポリマーを含む化学発光標識SBPの調製
この実施例では、ビオチン化ポリアクリル酸(PAA)を使用することによって、実施例6に記載したように、自己組織化によって形成されるポリマー複合体についての重合反応を停止し、形成後のポリマーを安定化させる。簡単に言えば、ビオチン化抗体を、最適化されたモル比でAK1標識ストレプトアビジンとアセンブルする(先に記載したように)。次いで、ビオチン化ポリアクリル酸(PAA)を添加することによって、自己組織化ポリマーを安定化させる。
A.自己組織化ポリマーの調製
2.66mg/mLの濃度のビオチン化IgGを、0.584mg/mLの濃度のAK1標識ストレプトアビジンと混合し、実施例7に記載したように調製した。0.25〜1.25の様々な比のビオチン化IgG:AK1標識ストレプトアビジン、およびその混合物を、4℃で一晩インキュベートすることによって、自己組織化させた。
B.ハイブリッドコンストラクトの調製
自己組織化コンストラクトを等体積に分割し、ビオチン化PAAを、0〜1の、PAA:ストレプトアビジンの様々なモル比で添加した。反応は、4℃で実施し、一晩インキュベートすることによって、安定なハイブリッドPAAコンストラクトを形成した。
C.PAAハイブリッド骨格を用いたイムノアッセイ
PAAハイブリッド骨格を使用する、モノクローナル抗TnIについてのイムノアッセイは、実施例11に記載したように実施した。簡単に言えば、等体積のPAA骨格、HRPコンジュゲート、水中600mMのアスコルビン酸、および試料を、反応容器内で一緒に混合した。この混合物を、トリガー溶液A、すなわち、トリガー溶液と共にインキュベートすることによって、化学発光反応を開始した。化学発光反応を開始した後、試料を、高速読取りキネティックモードで、SpectraMax(登録商標)Lマイクロプレートルミノメーターで読み取り、化学発光シグナルを、約0.12〜0.21秒の時間期間にわたって記録した。イムノアッセイの結果を、表30A〜30Eに示す。
【0218】
【表30A】

【0219】
【表30B】

【0220】
【表30C】

【0221】
【表30D】

【0222】
【表30E】

(実施例15)
化学発光標識、ポリマーHRPコンジュゲート、およびストレプトアビジン−ビオチン結合抗体を含む化学発光標識SBPの調製
この実施例は、IgGおよび酵素西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)のポリマーコンジュゲートの調製、および溶液相イムノアッセイのための骨格材料としてのその使用を実証する。
A.HRP−IgGコンジュゲートの調製
酵素の過ヨウ素酸塩酸化のために、HRPを、10mg/mLの濃度で水中に溶解させた。新たに調製した0.088Mの過ヨウ素酸ナトリウム100μLを、4℃で撹拌しながらHRPに添加し、適切な時間(すなわち、20〜40分間)反応させた。エチレングリコールなどのジオールを添加することによって酸化反応をクエンチし、4℃でさらに20分間インキュベートさせた。酸化した酵素をPD10カラムで脱塩し、PBSなどの適切な反応緩衝液中に溶出することによって、過剰の酸化反応物およびクエンチング反応物から酵素を分離した。
【0223】
酸化したHRPのIgGとのコンジュゲートは、還元的アミノ化によって調製した。IgGを酸化したHRPと、IgGとHRPの1:1の体積比および1:4〜15のIgG:HRPモル比で混合した。この混合物を室温で2時間から一晩反応させた。5Mの水素化ホウ素10μLを、室温で30分間反応させた。反応生成物を透析し、または脱塩により分離することによって、過剰の還元試薬を除去した。次いで、コンジュゲートをSE HPLCカラムにかけ、450〜1500KDaの間の分子量を有するコンジュゲートを収集することによって、生成物を分離した。HRP:IgGの比を評価し、コンジュゲートを、標準的なSpectraMax(登録商標)溶液相SPARCLイムノアッセイにおいて試験した。
【0224】
心臓トロポニンI(cTnI)などの特定の被検体についてのイムノアッセイは、以下に記載するコンジュゲートA、B、またはCを使用して、実施例11に記載したように実施した。簡単に言えば、等体積のIgG(33μg/mL)、HRPコンジュゲートA、B、またはC(5mg/mL)、水中500μMのアスコルビン酸、および試料を、96ウェルマイクロタイタープレート中で一緒に混合した。この混合物を、トリガー溶液A、すなわち、トリガー溶液と共にインキュベートすることによって、化学発光反応を開始した。これらのアッセイについて、cTnIモノクローナル抗体M06を、1〜10mg/mLの最終濃度で、pH9.6の100mMの炭酸水素塩緩衝液中に脱塩した。表31は、ポリマーHRPコンジュゲートA、B、またはCを使用する、cTnIについてのイムノアッセイ結果を示す。これらのコンジュゲートは、実質的に以下に記載するように調製した。
B.酸化したHRPへのコンジュゲーションのためのモノクローナルcTnI抗体の調製
酸化したHRPとコンジュゲートする前に、cTnIモノクローナル抗体を、pH7.2のPBS(コンジュゲートA&B)、またはpH9.6の炭酸ナトリウム(コンジュゲートC)中に緩衝液交換した。
C.コンジュゲートAおよびB:HRPの酸化
HRPを5mg/mLで水中に溶解させた。8.74mg/mL(0.088M)の濃度の新たに調製した過ヨウ素酸ナトリウム100μLを、4℃で撹拌しながらHRP各1ミリリットルに添加した。この混合物を適切な時間反応させた。コンジュゲートAについて、反応時間は約20分であり、コンジュゲートBについて、約40分であった。HRP各5mgについて、エチレングリコール17μLを添加し、4℃でさらに20分間インキュベートすることによって、酸化反応をクエンチした。
【0225】
酸化した酵素1.0mLを、pH7.2のPBS中で平衡化したPD10カラムで脱塩することによって、過剰酸化試薬およびクエンチング試薬を除去した。
D.IgGとのコンジュゲーション
コンジュゲートAおよびBについて、酸化したHRP 2.5mgを、IgG 0.4695mL(2.5mg)と反応させた。コンジュゲートを一晩反応させた。4mg/mLの水素化ホウ素カリウム10μLを新たに調製し、この溶液10μLを、反応混合物各1ミリリットルに添加した。ゆっくり連続的に反転させながら、反応を室温で30分間進行させた。次いで生成物混合物を、PBS中への脱塩により分離することによって、過剰の還元試薬を除去した。脱塩手順後のIgGの濃度は、コンジュゲートAおよびBについて4.26mg/mLであった。コンジュゲーションおよび還元の後、コンジュゲートをSE HPLCカラムにかけ、450〜1500KDaの間の分子量を有するコンジュゲートを収集することによって、生成物を分離した。HRP:IgGの比を、先に記載したように評価した。
E.コンジュゲートC:HRPの酸化
HRPを5mg/mLで水中に溶解させた。8.74mg/mL(0.088M)の濃度の新たに調製した過ヨウ素酸ナトリウム100μLを、4℃で撹拌しながらHRP各1ミリリットルに添加した。この混合物を20分間反応させた。HRP各5mgについてエチレングリコール17μLを添加することによって酸化反応をクエンチし、この混合物を、4℃でさらに20分間インキュベートさせた。
【0226】
酸化した酵素1.0mLを、PD10カラムで、pH4.5の1mMのアセテート緩衝液などの適切な反応緩衝液中に脱塩することによって、過剰の酸化物または酸化試薬およびクエンチング反応物またはクエンチング試薬から酵素を分離した。
D.IgGとのコンジュゲーション
酸化したHRPを、還元アミノ化によってIgGとコンジュゲートした。IgGを酸化したHRPと、1:1の体積比、1:4〜15のIgG:HRPモル比で混合して、室温で2時間から一晩反応させた。組合せ反応の直前に、pH9.6の100mMの炭酸塩緩衝液100μLを、酸化したHRP 1mLに添加した。IgG 1mLを酸化したHRPと、1:1の体積比で、約1:4HRPのIgG:HRPモル比で混合し、最低2時間反応させた。形成したコンジュゲート中間体を、新たに調製した4mg/mLの水素化ホウ素カリウム20μLを添加することによって還元した。ゆっくり連続的に反転させながら、還元を室温で30分間進行させた。混合物をPBS中への脱塩により分離することによって、過剰の還元試薬を除去した。
【0227】
コンジュゲーションおよび還元の後、コンジュゲートをSE HPLCカラムにかけ、450〜1500KDaの間の分子量を有するコンジュゲートを収集することによって、生成物を分離した。HRP:IgG比を先に記載したように評価した。
【0228】
【表31】

本明細書におけるすべての刊行物および特許出願は、本発明が属する技術分野における通常の技術のレベルを示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0229】
上記した様々な実施形態は、例示としてのみ提供され、本発明を限定すると解釈されるべきでない。当業者は、本明細書に例示および記載された実施形態例および用途例に従うことなく、本明細書に例示および記載された実施形態例および用途例に従うことなく本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、以下の特許請求の範囲に示される本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に行うことができる様々な改変および変更を容易に認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の被検体についてのアッセイ法であって、
試料、
化学発光標識特異的結合パートナー、
アクチベーター標識特異的結合パートナー、および
選択的シグナル阻害剤
を任意の順序で、または同時に添加することによって、水溶液中で反応混合物を形成するステップであって、
すべての成分は、水溶液に可溶性であり、
前記化学発光標識特異的結合パートナー、および前記アクチベーター標識特異的結合パートナーは、前記試料中に存在する被検体に結合することによって、結合複合体を形成するステップと、
前記反応混合物にトリガー溶液を添加するステップであって、前記トリガー溶液は、前記反応混合物中の、前記被検体が結合した化学発光標識特異的結合パートナー、および前記被検体が結合したアクチベーター標識特異的結合パートナーの量に相関した、検出可能な化学発光シグナルを放出するステップと
を含むアッセイ法。
【請求項2】
任意の順序で、または同時に反応混合物を形成するステップが、エンハンサーをさらに含む、試料中の被検体についての、請求項1に記載のアッセイ法。
【請求項3】
前記選択的シグナル阻害剤が、前記複合体においてではない場合の化学発光標識とアクチベーター標識との反応からのシグナルを超える、前記被検体との前記複合体における、化学発光標識とアクチベーター標識との反応によって生じるシグナルの割合を引き起こす、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択的シグナル阻害剤が、オルトまたはパラ関係に配向した少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、オルトまたはパラ関係に配向した、少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を有する芳香族化合物、C−C二重結合上で置換された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、ならびに窒素複素環式化合物からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
選択的シグナル阻害剤が、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、Trolox、L−アスコルビン酸6−パルミテート、5,6−イソプロピリデン−L−アスコルビン酸、BHT、グルタチオン、尿酸、トコフェロール、およびカテキンからなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記化学発光標識特異的結合パートナーが、特異的結合対メンバーに直接または間接的に連結している化学発光標識化合物を含み、前記化学発光標識が、芳香族環状ジアシルヒドラジド、トリヒドロキシ芳香族化合物、アクリダンケテンジチオアセタール化合物、アクリダンエステル、アクリダンチオエステル、アクリダンスルホンアミド、アクリダンエノール誘導体、および式VIの化合物
【化10】

[式中、R1は、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個のアルケニル、炭素原子1〜20個のアルキニル、炭素原子1〜20個のアリール、および炭素原子1〜20個のアラルキル基から選択され、そのいずれもカルボニル基、カルボキシル基、トリ(C1〜C8アルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C1〜C8アルキル、アリール、アラルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキルカルボキシル基またはアリールカルボキシル基、トリ(C1〜C8アルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立してC1〜C8アルキル、シアノアルキル、アリールおよびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウムおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、Z1およびZ2はそれぞれ、OおよびS原子から選択され、R2およびR3は独立して、水素およびC1〜C8アルキルから選択される]から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記化学発光標識された、固定化された特異的結合メンバーが、特異的結合メンバーに直接または間接的に連結している化学発光標識化合物を含み、前記化学発光標識が、式
【化11】

[式中、
【化11−1】

は、前記化学発光標識の前記特異的結合メンバーへの結合箇所を指定し、RおよびRは独立して、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルケニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアリール、および炭素原子1〜20個の置換または非置換のアラルキル基から選択され、RまたはRが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、C(=O)NHNH基、四級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Rは、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個の置換アルキル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルケニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアルキニル、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアリール、炭素原子1〜20個の置換または非置換のアラルキル基や、フェニル、置換または非置換のベンジル基、アルコキシアルキル、カルボキシアルキルおよびアルキルスルホン酸基からなる群から選択され、Rが置換された基である場合、これは、カルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、および4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよい]
の化合物である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記アクチベーター標識特異的結合パートナーが、特異的結合対メンバーに直接または間接的に連結しているアクチベーター標識化合物を含み、前記アクチベーター標識が、遷移金属塩、遷移金属錯体、および酵素から選択され、前記アクチベーター標識がペルオキシダーゼ活性を有する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記アクチベーター標識化合物がペルオキシダーゼ酵素である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記化学発光標識特異的結合パートナーおよび前記アクチベーター標識特異的結合パートナーの少なくとも1つが、可溶性タンパク質、ストレプトアビジン、アビジン、ニュートラビジン、ビオチン、陽イオン化されたBSA、fos、jun、可溶性合成デンドリマー、可溶性合成ポリマー、可溶性天然ポリマー、多糖、デキストラン、オリゴヌクレオチド、リポソーム、ミセル、およびベシクルから選択される補助物質を含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記エンハンサーが、ペルオキシダーゼ活性を有するアクチベーターの触媒ターンオーバーを促進する化合物または化合物の混合物である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記エンハンサーが、フェノール化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサゾール、ヒドロキシベンゾチアゾール、アリールボロン酸、およびこれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記トリガー溶液が過酸化物化合物を含む、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記トリガー溶液が、フェノール化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサゾール、ヒドロキシベンゾチアゾール、アリールボロン酸、およびこれらの混合物から選択されるエンハンサーを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記化学発光標識特異的結合パートナーおよび前記アクチベーター標識特異的結合パートナーがそれぞれ、前記試料中の前記被検体に結合する、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
化学発光標識特異的結合パートナーが、前記被検体の類似体に連結している化学発光標識を含み、前記被検体および前記化学発光標識類似体が、前記アクチベーター標識特異的結合パートナーとの結合を競合する、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
すべての成分が水溶液に可溶性である、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記成分のいずれも、粒子または他の固相に、直接または間接的にコンジュゲートされない、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
試料中の被検体を検出するためのキットであって、
前記被検体のための第1の特異的結合パートナーと;
前記第1の特異的結合パートナーにコンジュゲートされる化学発光化合物と;
前記被検体のための第2の特異的結合パートナーと;
前記第2の特異的結合パートナーにコンジュゲートされるアクチベーター化合物と;
選択的シグナル阻害剤と;
トリガー溶液と
を含むキット。
【請求項20】
すべての成分が水溶液に可溶性である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記成分のいずれも、粒子または他の固相に、直接または間接的にコンジュゲートされない、請求項19または20に記載のキット。
【請求項22】
前記選択的シグナル阻害剤が、オルトまたはパラ関係に配向した少なくとも2つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物、オルトまたはパラ関係に配向した、少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を有する芳香族化合物、C−C二重結合上で置換された少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物、ならびに窒素複素環式化合物からなる群から選択される、請求項19から21のいずれかに記載のキット。
【請求項23】
前記化学発光化合物が、芳香族環状ジアシルヒドラジド、トリヒドロキシ芳香族化合物、アクリダンケテンジチオアセタール化合物、アクリダンエステル、アクリダンチオエステル、アクリダンスルホンアミド、アクリダンエノール誘導体、および式VIの化合物
【化12】

[式中、Rは、炭素原子1〜20個のアルキル、炭素原子1〜20個のアルケニル、炭素原子1〜20個のアルキニル、炭素原子1〜20個のアリール、および炭素原子1〜20個のアラルキル基から選択され、そのいずれもカルボニル基、カルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、OSO−2基、グリコシル基、PO基、OPO−2基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、4級アンモニウム基、または4級ホスホニウム基から選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、Xは、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル基、炭素原子1〜20個を有するアルキルカルボキシル基または炭素原子1〜20個を有するアリールカルボキシル基、トリ(C〜Cアルキル)シリル基、SO基、グリコシル基、および式PO(OR’)(OR’’)のホスホリル基(式中、R’およびR’’は独立して、C〜Cアルキル、シアノアルキル、アリールおよびアラルキル基、トリアルキルシリル基、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類陽イオン、アンモニウム陽イオンおよびトリアルキルホスホニウム陽イオンから選択される)から選択され、ZおよびZはそれぞれ、OおよびS原子から選択され、RおよびRは独立して、水素およびC〜Cアルキルから選択される]
から選択される、請求項19から22のいずれかに記載のキット。
【請求項24】
前記アクチベーター化合物が、遷移金属塩、遷移金属錯体、および酵素から選択され、前記アクチベーター標識がペルオキシダーゼ活性を有する、請求項19から23のいずれかに記載のキット。
【請求項25】
前記トリガー溶液が、過酸化水素、尿素過酸化物、および過ホウ酸塩から選択される過酸化物を含む、請求項19から24のいずれかに記載のキット。
【請求項26】
前記トリガー溶液が、フェノール化合物、芳香族アミン、ベンゾオキサゾール、ヒドロキシベンゾチアゾール、アリールボロン酸、およびこれらの混合物から選択されるエンハンサーを含む、請求項19から25のいずれかに記載のキット。
【請求項27】
請求項1に記載のアッセイ法を実施するためのシステムであって、
前記反応混合物中に試料を送達するための流体取り扱いシステムと、
前記反応混合物中に化学発光標識特異的結合パートナー、アクチベーター標識特異的結合パートナー、選択的シグナル阻害剤を送達するための流体取り扱いシステムと、
化学発光シグナルを放出するために、前記反応混合物中にトリガー溶液を送達するための流体取り扱いシステムと、
前記化学発光シグナルを検出するための検出システムであって、前記トリガー溶液を送達するための流体取り扱いシステムが、トリガー流体注入のときおよびトリガー流体注入後に前記化学発光シグナル放出を測定するために、前記検出システムと協調して作用する、検出システムと
を含むシステム。

【公表番号】特表2012−519285(P2012−519285A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552201(P2011−552201)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025657
【国際公開番号】WO2010/099486
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】