説明

液量測定装置

【課題】液量測定装置において、大掛かりにならず、また、低コスト化を図ることを可能にする。
【解決手段】液量測定装置である尿量測定装置1は、患者から排出された尿(電解液)が入れられる測定容器2と、測定容器2に入れられている尿を排出するための電磁弁3と、測定端子4と、検出部5と、制御部6等を備える。測定端子4は、測定容器2の中に設置されており、測定容器2の中に入れられた尿に少なくとも一部が浸されるようになっている。また、測定端子4は、導電体の表面を誘電体で覆った構成となっている。測定容器2に尿が入れられると、測定容器2に入れられた尿と測定端子4とによってコンデンサが構成される。検出部5は、測定容器2に入れられた尿と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量を検出し、制御部6は、検出部5により検出した静電容量から、測定容器2に入れられている尿の量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液の液量を測定する液量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、病院などでは、入院している患者から排出された尿の量を測定、管理することが行われており、患者から排出された尿の量を測定するのに、液量測定装置が用いられている。このような液量測定装置としては、測定用ビーカに入れられている液(尿)の量を超音波センサや圧力センサを用いて測定するものがある。超音波センサを用いた液量測定装置は、測定用ビーカに入れられている液位(液面の高さ)を超音波センサによって検出することで、液の量を測定するものである。圧力センサを用いた液量測定装置は、測定用ビーカに入れられている液の重量により計測部にかかる加重を圧力センサによって検出することで、液の量を測定するものである。また、患者が排出した尿を収容袋に入れ、その重量を測定することにより、尿の量を測定するようにしたものも知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−238879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した従来の液量測定装置においては、装置が大掛かりになり、また、装置のコストが高い。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、大掛かりにならず、また、低コスト化を図ることができる液量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、電解液の液量を測定する液量測定装置であって、電解液が入れられる測定容器と、測定容器の中に設置され、測定容器の中に入れられた電解液に少なくとも一部が浸される、導電体の表面を誘電体で覆った測定端子と、測定容器に入れられた電解液と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又はその静電容量に対応する静電容量対応値を検出する検出手段と、検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値から、測定容器に入れられている電解液の液量を算出する算出手段とを備えるものである。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の液量測定装置において、検出手段は、測定端子の導電体に所定の電圧を印加した後、測定端子の導電体に蓄積された電荷を放電させて、測定端子の導電体に蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間に基いて、測定容器に入れられた電解液と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又はその静電容量に対応する静電容量対応値を検出するものである。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の液量測定装置において、測定端子は、誘電体から成るフィルム基板と、フィルム基板の表面に設けられた導電体である1対の銅箔と、1対の銅箔の表面を被覆する誘電体から成る表面レジストとを有するものである。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1に記載の液量測定装置において、検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値と測定容器に入れられている電解液の液量との対応関係を示す換算テーブルを記憶した換算テーブル記憶手段をさらに備え、算出手段は、換算テーブル記憶手段に記憶している換算テーブルに基いて、検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値から、測定容器に入れられている電解液の液量を算出するものである。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1に記載の液量測定装置において、測定容器は、該測定容器の底部に、電解液を排出するための排出口を有し、排出口を開閉する電磁弁と、電磁弁を開いて、測定容器に入れられている電解液を排出口から排出させる排出手段とをさらに備え、排出手段は、定期的に、又は、算出手段により所定量以上の液量が算出される度に、電磁弁を開いて、測定容器に入れられている電解液を排出口から排出させるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、測定容器に電解液が入れられると、測定容器に入れられた電解液と測定端子とによってコンデンサが構成され、このコンデンサの静電容量は、測定容器に入れられる電解液の液量によって異なるものとなる。そして、検出手段によって、測定容器に入れられた電解液と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又は静電容量対応値が検出され、算出手段によって、検出手段により検出された静電容量又は静電容量対応値から、測定容器に入れられている電解液の液量が算出される。つまり、測定容器に入れられた電解液と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量に基いて、測定容器に入れられている電解液の液量が測定される。このような構成により、大掛かりにならず、また、低コスト化を図ることができる液量測定装置を実現できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、測定容器に入れられた電解液と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又は静電容量対応値を、簡単な構成によって検出することができ、より低コスト化を図ることができる液量測定装置を実現できる。
【0012】
請求項3の発明によれば、測定端子を安価に作製することができ、より低コスト化を図ることができる液量測定装置を実現できる。また、測定端子を安価に作製することができるため、例えば、電解液の液量として尿の量を測定する場合などでは、衛生面を考慮して、測定端子を使い捨てにすることもできる。
【0013】
請求項4の発明によれば、検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値と測定容器に入れられている電解液の液量との対応関係を示す換算テーブルに基いて、電解液の液量をより正確に測定することができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、測定容器に定期的に又は不定期に電解液が入れられる場合であっても、測定容器から電解液が溢れ出す事態を生じることがなく、測定容器に定期的に又は不定期に入れられる電解液の液量を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態による液量測定装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態による液量測定装置である尿量測定装置の構成を示す。尿量測定装置1は、例えば、病院などにおいて、入院している患者から排出された尿の量を測定、管理するために用いられる装置である。
【0016】
尿量測定装置1は、患者から排出された尿が入れられる測定容器2と、測定容器2に入れられた尿を排出するための電磁弁3と、測定端子4と、検出部5と、制御部6等を備える。この尿量測定装置1は、測定容器2に入れられた尿と測定端子4とによってコンデンサを構成し、そのコンデンサの静電容量に基いて、測定容器2に入れられた尿の量を測定するようになっている。
【0017】
測定容器2は、内部が中空で、上部が開口している。測定容器2の上部の開口している部分から、測定容器2に尿が入れられる。また、測定容器2は、底部に、尿を排出するための排出口2oを有している。測定容器2の尿が入れられる容積部分の空間は、略直方体形状をしている。すなわち、測定容器2は、内底面(排出口2oのある面)と、この内底面から起立する4つの内側面によって、尿が入れられる容積部分の空間を形成しており、そして、4つの内側面は、内底面に対して略垂直になっており、各内側面は、対向する内側面に対して略平行になっている。
【0018】
測定容器2は、例えば、ベッドの横などに、排出口2oを下側(床側)にし、内底面を略水平に(内側面を略鉛直に)して設置され、測定容器2の上部の開口している部分に、患者から排出された尿を導くカテーテル7の尿導出口7oが配置される。
【0019】
電磁弁3は、測定容器2の排出口2oを開閉するようになっている。従って、電磁弁3が排出口2oを閉じているときには、測定容器2に入れられた尿は、測定容器2に蓄えられ、電磁弁3が排出口2oを開くことにより、測定容器2に入れられている(蓄えられている)尿は、排出口2oから測定容器2の外に排出される。
【0020】
測定端子4は、測定容器2の中に設置されており、測定容器2の中に尿が入れられると、測定容器2の中に入れられた尿に少なくとも一部が浸されるようになっている。この測定端子4は、導電体の表面を誘電体(絶縁体)で覆った構成となっている。従って、測定容器2の中に尿が入れられると、測定容器2の中に入れられた尿と測定端子4とによってコンデンサが構成されることになる。つまり、尿は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、塩化物イオンなどの電解質を含んだ電解液であり、導電体であるため、2つの導電体(1つは測定端子4の導電体、もう1つは尿)の間に誘電体(測定端子4の誘電体)が介在する状態となって、コンデンサが構成されることになる。測定端子4は、リード線8a、8bを介して検出部4に電気的に接続されている。測定端子4の構成の詳細については後述する。
【0021】
検出部5は、測定容器2に入れられた尿と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量を検出する。制御部6は、検出部5により検出した静電容量から、測定容器2に入れられている尿の量を算出する。また、制御部6は、電磁弁3を開いて、測定容器2に入れられている尿を排出口2oから排出させる。
【0022】
図2(a)(b)(c)は、上記測定端子4の構成を示す。測定端子4は、導電体の表面を誘電体で覆った構成となっており、誘電体から成るフィルム基板41と、フィルム基板41の表面に設けられた導電体である1対の銅箔42a、42bと、1対の銅箔42a、42bの表面を被覆する誘電体から成る表面レジスト43とを有する。
【0023】
銅箔42a、42bは、各々、一定の幅及び厚みで略真っ直ぐに細長く形成されている。そして、銅箔42aと銅箔42bは、互いに平行に配列されている。フィルム基板41は、略均一な厚みに形成されており、表面レジスト43も、略均一な厚みに形成されている。
【0024】
表面レジスト43は、銅箔42a、42bの一方の側の端部を被覆しておらず、銅箔42a、42bの一方の側の端部は、露出されている。この銅箔42a、42bの露出されている部分(表面レジスト43により被覆されていない部分)は、測定端子4を検出部5に電気的に接続する(銅箔42a、42bを検出部5に電気的に接続する)ための接続部49とされ、この接続部49(銅箔42a、42bの露出されている部分)に、リード線8a、8b(図1参照)が接続される。リード線8a、8bの測定端子4への接続(接続部49への接続)は、例えばクリップ(不図示)を用いて、リード線8a、8bを接続部49に接触させた状態で、リード線8a、8bと測定端子4を挟持することにより行われる。
【0025】
このような構成の測定端子4は、フィルム基板41の背面を測定容器2の内側面に貼り付けることにより、測定容器2の中に設置される。このとき、測定端子4は、接続部49が測定容器2の外部に位置すると共に、銅箔42a、42bの先端(接続部49と反対側の端部)が測定容器2の底に位置するように、測定容器2の中に設置される(図1参照)。
【0026】
図3(a)(b)(c)は、尿量測定装置1による尿量を測定する方法の原理を示す。図3(a)(b)に示すように、測定端子4の設置された測定容器2に尿10が入れられて、測定端子4の一部が尿10に浸されている状態を考える。このような状態では、測定容器2の中に入れられた尿10と測定端子4とによってコンデンサが構成されることになる。つまり、導電体である測定端子4の銅箔42aと導電体である尿10との間に、誘電体である測定端子4のフィルム基板41及び表面レジスト43が介在する状態となって、1つのコンデンサが構成され、また、導電体である測定端子4の銅箔42bと導電体である尿10との間にも、誘電体である測定端子4のフィルム基板41及び表面レジスト43が介在する状態となって、別の1つのコンデンサが構成されることになる。
【0027】
従って、測定端子4の設置された測定容器2に尿10が入れられて、測定端子4の一部が尿10に浸されている状態では、電気回路的には、図3(c)に示すように、2つのコンデンサ11a、11bが直列に接続された状態になる。コンデンサ11aは、銅箔42aと尿10との間にフィルム基板41及び表面レジスト43が介在することにより構成されるコンデンサに対応し、コンデンサ11bは、銅箔42bと尿10との間にフィルム基板41及び表面レジスト43が介在することにより構成されるコンデンサに対応する。
【0028】
ここで、フィルム基板41の背面が測定容器2に密着しており、フィルム基板41の背面に尿10が存在しないことを考慮し、また、銅箔42a、42bの厚さを無視すると、コンデンサ11aの静電容量Ca、及びコンデンサ11bの静電容量Cbは、
Ca=ε×(Sa/d)・・・(1)
Cb=ε×(Sb/d)・・・(2)
εは、表面レジスト43の誘電率
Saは、尿10に浸されている部分の銅箔42aの面積
Sbは、尿10に浸されている部分の銅箔42bの面積
dは、表面レジスト43の厚さ
となる。
【0029】
そして、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量C(測定容器2の中に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量)は、コンデンサ11aとコンデンサ11bが直列に接続されていることから、
C=(Ca×Cb)/(Ca+Cb)・・(3)
であり、(1)(2)(3)式より、
C=ε×[{(Sa×Sb)/(Sa+Sb)}/d]・・・(4)
となる。
【0030】
また、尿10に浸されている部分の銅箔42aの面積Saと、尿10に浸されている部分の銅箔42bの面積Sbが等しいとすると、(4)式、及びSa=Sbより、合成静電容量Cは、
C=(1/2)×ε×(Sa/d)
=(1/2)×ε×(Sb/d)・・・(5)
となる。
【0031】
つまり、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cは、尿10に浸されている部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbに応じて、異なる値になる。すなわち、尿10に浸されている部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbが小さいほど、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cが小さくなり、逆に、尿10に浸されている部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbが大きいほど、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cが大きくなる。
【0032】
また、尿10に浸されている部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbは、測定容器2に入れられている尿10の量に応じて、異なる大きさになる。すなわち、尿10の量が少ないほど、尿10の液面高さHが低くなって、尿10に浸されている部分の面積Sa、Sbが小さくなり、逆に、尿10の量が多いほど、尿10の液面高さHが高くなって、尿10に浸されている部分の面積Sa、Sbが大きくなる。
【0033】
従って、測定容器2に入れられている尿10の量が少ないほど、尿10に浸される部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbが小さくなって、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cが小さくなる。逆に、測定容器2に入れられている尿10の量が多いほど、尿10に浸される部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbが大きくなって、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cが大きくなる。このように、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量C(測定容器2の中に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量)は、測定容器2に入れられている尿10の量に対応した値となる。
【0034】
コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cが、測定容器2に入れられている尿10の量に対応することから、コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量Cを検出できれば、その検出した合成静電容量Cから、実測により予め求めておいた合成静電容量Cと尿10の量との対応関係に基いて、測定容器2に入れられている尿10の量を求めることができる。また、検出した合成静電容量Cから、上記(5)式により、尿10に浸されている部分の銅箔42a、42bの面積Sa、Sbを求め、その面積Sa、Sbから、銅箔42a、42bの形状等に基いて、測定容器2に入れられている尿10の液面高さHを求め、そして、その液面高さHから、測定容器2の形状等に基いて、尿10の量を求めることもできる。
【0035】
図4は、上記検出部5及び制御部6の構成を示す。検出部5は、測定端子4の銅箔42a、42bに電圧を印加した後、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷を放電させて、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間Tに基いて、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量C(コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量)を検出するようになっている。
【0036】
検出部5は、測定ライン50a、50bと、電源接続スイッチ51と、グランド接続スイッチ52と、抵抗53と、電圧値弁別部54と、放電時間計測部55と、静電容量算出部56と、検出制御部57等を備える。
【0037】
測定ライン50aは、電圧値弁別部54に接続されている。測定ライン50aには、リード線8aを介して、測定端子4の銅箔42aが接続される。測定ライン50bは、グランドに接続されている。測定ライン50bには、リード線8bを介して、測定端子4の銅箔42bが接続される。
【0038】
電源接続スイッチ51は、電源ライン59と測定ライン50aの間に接続されており、電源接続スイッチ51がオンのときに、測定ライン50aが電源ライン59に接続され、電源接続スイッチ51がオフのときに、測定ライン50aが電源ライン59から切断される。グランド接続スイッチ52は、測定ライン50bとグランドの間に接続されており、グランド接続スイッチ52がオンのときに、測定ライン50aがグランドに接続され、グランド接続スイッチ52がオフのときに、測定ライン50aがグランドから切断される。抵抗53は、グランド接続スイッチ52とグランドとの間に接続されている。
【0039】
従って、グランド接続スイッチ52がオフしている状態で、電源接続スイッチ51がオンすると、測定ライン50a、50bを介して、測定端子4の銅箔42a、42bに電源電圧E=5vが印加されて、測定端子4の銅箔42a、42bに電荷が蓄積される(コンデンサ11a、11bが充電される)。また、電源接続スイッチ51がオフしている状態で、グランド接続スイッチ52がオンすると、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積されている電荷が、測定ライン50a、50b及び抵抗53を介して、グランドに放電される(コンデンサ11a、11bが放電される)。
【0040】
電源接続スイッチ51及びグランド接続スイッチ52は、検出制御部57による制御のもと、オン、オフされる。すなわち、検出制御部57による制御のもと、グランド接続スイッチ52がオフされている状態で電源接続スイッチ51がオンされることにより、測定端子4の銅箔42a、42bに電源電圧E=5vが印加されて、測定端子4の銅箔42a、42bに電荷が蓄積され、その後、電源接続スイッチ51がオフされている状態でグランド接続スイッチ52がオンされることにより、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積されている電荷が、測定ライン50a、50b及び抵抗53を介して、グランドに放出される。
【0041】
測定端子4の銅箔42a、42bに電荷が蓄積されたときには、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積されている電荷は、Q=C×Eとなり、そのときの測定ライン50aの電圧レベルは、Eとなる。
【0042】
また、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷(Q=C×E)が放電されるときの測定ライン50aの電圧レベルをEとすると、その電圧レベルEは、図5に示すように、時間tの経過と共に次第に低下していき、
=E×e(−λ×t)・・・(6)
λは、時定数であり、λ=1/(C×R)
Rは、抵抗53の抵抗値
となる。
【0043】
ここで、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間をTとすると、この放電時間Tは、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるときの測定ライン50aの電圧レベルEが、Eから所定の電圧レベルEr以下に低下するまでの時間である。従って、(6)式より、
Er=E×e(−(1/(C×R))×T)・・・(7)
の関係が得られる。
【0044】
すなわち、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間Tと、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量Cとは、対応関係にあり(Er、E、e、Rは、一定の値)、静電容量Cが小さいほど、放電時間Tが短くなり、静電容量Cが大きいほど、放電時間Tが長くなる。
【0045】
電圧値弁別部54は、測定ライン50aの電圧レベルを基準電圧(所定の電圧レベルEr)と比較する比較回路等を備えており、測定ライン50aの電圧レベルを弁別する。そして、電圧値弁別部54は、測定ライン50aの電圧レベルが基準電圧よりも高いときにハイレベルの電圧を出力し、測定ライン50aの電圧レベルが基準電圧よりも低いときにローレベルの電圧を出力する。
【0046】
放電時間計測部55は、電圧値弁別部54の出力電圧に基いて、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間Tを測定する。すなわち、放電時間計測部55は、検出制御部57による制御のもと、測定端子4の銅箔42a、42bから電荷の放電が開始されるタイミング(すなわち、電源接続スイッチ51がオフされている状態でグランド接続スイッチ52がオンされるタイミング)に同期して、時間の計測を開始し、その後、電圧値弁別部54の出力電圧がハイレベルである時間を計測する。従って、放電時間計測部55により計測される時間は、測定端子4の銅箔42a、42bから電荷の放電が開始されて(測定ライン50aの電圧レベルがEの状態)から、測定ライン50aの電圧レベルが所定の電圧レベルEr以下に低下するまでの時間となり、測定端子4の銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間Tとなる。
【0047】
静電容量算出部56は、放電時間計測部55により計測された放電時間Tに基いて、上記(7)式の関係から、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量C(コンデンサ11aとコンデンサ11bの合成静電容量)を算出する。
【0048】
制御部6は、メモリ61と、マイコン62等を備える。メモリ61は、検出部5により検出した(静電容量算出部56により算出した)静電容量Cと測定容器2に入れられている尿10の量との対応関係を示す換算テーブルを予め記憶している。換算テーブルの示す対応関係は、予め実測により得た対応関係となっている。メモリ61により、換算テーブル記憶手段が構成されている。
【0049】
マイコン62は、検出部5により検出した静電容量Cから、測定容器2に入れられている尿10の量を算出する。すなわち、マイコン62は、メモリ61に記憶している換算テーブルに基いて、検出部5により検出した静電容量Cから、測定容器2に入れられている尿10の量を算出する。また、マイコン62は、定期的(例えば30分毎)に、電磁弁3を開いて、測定容器2に入れられている尿10を測定容器2の排出口2oから排出させる。マイコン62により、算出手段及び排出手段が構成されている。
【0050】
このような構成の尿量測定装置1によれば、測定容器2に尿10が入れられると、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによってコンデンサが構成され、このコンデンサの静電容量Cは、測定容器2に入れられる尿10の量によって異なるものとなる。そして、検出部5によって、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量Cが検出され、制御部6のマイコン62によって、検出部5により検出された静電容量Cから、測定容器2に入れられている尿10の量が算出される。つまり、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量Cに基いて、測定容器2に入れられている尿10の量が測定される。このような構成により、大掛かりにならず、また、低コスト化を図ることができる尿量測定装置1を実現できる。
【0051】
しかも、測定端子4の銅箔42a、42bに電圧を印加した後、銅箔42a、42bに蓄積された電荷を放電させて、銅箔42a、42bに蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間Tを計測することにより、測定容器2に入れられた尿10と測定端子4とによって構成されるコンデンサの静電容量Cを、簡単な構成によって検出することができ、より低コスト化を図ることができる尿量測定装置1を実現できる。
【0052】
また、誘電体から成るフィルム基板41と、フィルム基板41の表面に設けられた導電体である1対の銅箔42a、42bと、1対の銅箔42a、42bの表面を被覆する誘電体から成る表面レジスト43とによって、測定端子4を安価に作成することができ、より低コスト化を図ることができる尿量測定装置1を実現できる。しかも、測定端子4を安価に作製することができるため、衛生面を考慮して、測定端子4を使い捨てにすることもできる。
【0053】
また、検出部5により検出した静電容量Cと測定容器2に入れられている尿10の量との対応関係を示す換算テーブルを記憶しておき、その換算テーブルに基いて尿10の量を算出することにより、尿10の量をより正確に測定することができる。
【0054】
また、定期的に、電磁弁3を開いて、測定容器2に入れられている尿10を測定容器2の排出口2oから排出させることにより、測定容器2に定期的に又は不定期に尿10が入れられる場合であっても、測定容器2から尿10が溢れ出す事態を生じることがなく、測定容器2に定期的に又は不定期に入れられる尿10の量を正確に測定することができる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、測定容器に入れられた尿と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量に代えて、コンデンサの静電容量に対応する静電容量対応値(コンデンサに蓄積された電荷量、コンデンサの充電時間、コンデンサの放電時間等)を検出し、その静電容量対応値から、尿の量を算出するようにしてもよい。
【0056】
また、測定端子は、導電体の表面を誘電体で覆ったものであれば、どのような構成のものであってもよい。但し、測定容器に入れられた尿と測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又は静電容量対応値の検出精度を高めるために、測定端子の導電体の表面積は、大きい方が望ましく、また、測定端子の導電体の表面を覆う誘電体(上記実施形態では表面レジスト)は、薄い方が望ましい。
【0057】
また、定期的に電磁弁を開いて測定容器から尿を排出させることに代えて、所定量以上の尿量が算出される度に電磁弁を開いて測定容器から尿を排出させるようにしてもよい。また、測定する尿量は、体積であってもよいし、液位(所定の基準位置からの液面の高さ)であってもよい。また、本発明は、尿量測定装置に限られず、尿以外の電解液の液量を測定する液量測定装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る尿量測定装置の概略構成図。
【図2】(a)は同尿量測定装置の測定端子の構成の平面図、(b)は同横断面図、(c)は同縦断面図。
【図3】(a)は同尿量測定装置の測定容器に尿が入れられている状態での測定端子の側面側から見た断面図、(b)は同測定端子の正面側から見た断面図、(c)は尿と測定端子とによって構成されるコンデンサを電気回路的に示す図。
【図4】同尿量測定装置の検出部及び制御部の電気的ブロック構成図。
【図5】同尿量測定装置の測定端子に蓄積された電荷が放電されるときの測定ラインの電圧変化を示す図。
【符号の説明】
【0059】
1 尿量測定装置(液量測定装置)
2 測定容器
2o 排出口
3 電磁弁
4 測定端子
5 検出部
6 制御部
7 カテーテル
7o 尿導出口
8a、8b リード線
10 尿
11a、11b コンデンサ
41 フィルム基板(誘電体)
42a、42b 銅箔(導電体)
43 表面レジスト(誘電体)
49 接続部
50a、50b 測定ライン
51 電源接続スイッチ
52 グランド接続スイッチ
53 抵抗
54 電圧値弁別部
55 放電時間計測部
56 静電容量算出部
57 検出制御部
59 電源ライン
61 メモリ(換算テーブル記憶手段)
62 マイコン(算出手段、排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液の液量を測定する液量測定装置であって、
電解液が入れられる測定容器と、
前記測定容器の中に設置され、前記測定容器の中に入れられた電解液に少なくとも一部が浸される、導電体の表面を誘電体で覆った測定端子と、
前記測定容器に入れられた電解液と前記測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又はその静電容量に対応する静電容量対応値を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値から、前記測定容器に入れられている電解液の液量を算出する算出手段とを備える、
ことを特徴とする液量測定装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記測定端子の導電体に所定の電圧を印加した後、前記測定端子の導電体に蓄積された電荷を放電させて、前記測定端子の導電体に蓄積された電荷が放電されるのに要する放電時間に基いて、前記測定容器に入れられた電解液と前記測定端子とによって構成されるコンデンサの静電容量又はその静電容量に対応する静電容量対応値を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液量測定装置。
【請求項3】
前記測定端子は、誘電体から成るフィルム基板と、前記フィルム基板の表面に設けられた導電体である1対の銅箔と、前記1対の銅箔の表面を被覆する誘電体から成る表面レジストとを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液量測定装置。
【請求項4】
前記検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値と前記測定容器に入れられている電解液の液量との対応関係を示す換算テーブルを記憶した換算テーブル記憶手段をさらに備え、
前記算出手段は、前記換算テーブル記憶手段に記憶している換算テーブルに基いて、前記検出手段により検出した静電容量又は静電容量対応値から、前記測定容器に入れられている電解液の液量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液量測定装置。
【請求項5】
前記測定容器は、該測定容器の底部に、電解液を排出するための排出口を有し、
前記排出口を開閉する電磁弁と、
前記電磁弁を開いて、前記測定容器に入れられている電解液を前記排出口から排出させる排出手段とをさらに備え、
前記排出手段は、定期的に、又は、前記算出手段により所定量以上の液量が算出される度に、前記電磁弁を開いて、前記測定容器に入れられている電解液を前記排出口から排出させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−121962(P2010−121962A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293470(P2008−293470)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(595107944)株式会社ローラン (8)
【出願人】(591143375)円田医科工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】