説明

液面指示マーカー及びその製造方法

【課題】簡易な構成でありながら、容器内の液面位置を容易に視認可能な液面指示マーカー及び該液面指示マーカーの製造方法を提供する。
【解決手段】液面指示マーカー40は、基材42と、気体を保持するように構成された気体保持層44と、気体保持層44の上面に配置された透明又は半透明の保護層46とを有する。指示マーカー40はさらに、保護層46の全面を覆うように配置されたライナーレジン等のライナー材48を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液面位置を視認できるようにした液面指示マーカー、及び該液面指示マーカーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ状の容器等に水等の液体が収容されている場合において、特に容器が不透明であるときは、液面の位置の視認が困難になることがあり、容器内の液面位置を容易に視認できる手段が求められている。
【0003】
例えば、ドラム缶液面指示計を開示する特許文献1には、「上記外管11は、その液面を外部から直接目視することができるように、例えば、透明合成樹脂ないしガラス等の透明または半透明等の内部液面を透視可能な材質のもので形成することができ」と記載されている。
【0004】
また例えば、液面指示方法を開示する特許文献2には、「フロート3の中心部に内ネジ1を支持枠19で支え内ネジ中心部にネジ付きシャフト2を貫通させ回転自在とする」と記載されている。
【0005】
さらに例えば、液位ゲージ装置を開示する特許文献3には、「透明材による前部板と、可視情報を備えた後部板と、前記前部板と前記後部板との間に介在する空気層から成るゲージ板を前記タンク内に固定すると共に、前記タンクに備えられた視認エリア側に前記前部板を向け、前記ゲージ板が液体に浸かっているときに、前記前部板と前記空気層との境界で前記視認エリアからの光が全反射することで、その光の作用によって液面より下は前記前部板だけが前記視認エリアから見え、液面より上は前記前部板を透して前記後部板の可視情報が見えるようにした」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−250942号公報
【特許文献2】特開平3−238324号公報
【特許文献3】特開2008−292634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
容器が不透明でかつ比較的小型のものである場合は、特許文献1及び2に記載されるような大掛かりかつ複雑な構成の液面指示計は適用が難しい。また容器が炊飯器の釜のように耐熱性を要求される場合、液面指示マーカーも同等の耐熱性や耐久性を具備する必要があり、コストアップ要因となる。
【0008】
また特許文献3では、厚みが0.4mm程度の空気層を画定するために厚み0.5mm程度の板材を使用して液位ゲージ装置を構成する旨が記載されているが、このような装置を構成するためには各部材の作製精度や強度に一定以上の水準が求められる。
【0009】
そこで本発明は、簡易な構成でありながら、容器内の液面位置を正確に視認可能な指示マーカー及び該指示マーカーの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、液体浸漬時に気体を保持し得る表面構造を持つ気体保持層を有する、液面指示マーカーを提供する。
【0011】
また本発明の他の態様は、容器の全体又は一部に、液体浸漬時に気体を保持し得る表面構造を持つ気体保持層を設ける工程と、前記気体保持層上を透明又は半透明の保護層で被覆する工程とを有する液面指示マーカーの作製方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成でありながら耐久性に優れ、容器内の液面位置を明瞭に視認することができる液面指示マーカーが提供される。
【0013】
本発明に係る液面指示マーカーの製造方法によれば、簡易な方法で、容器内の液面位置を明瞭に視認することができる液面指示マーカーを作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液面指示マーカーの基本構成を示す断面図である。
【図2】図1の液面指示マーカーを容器に適用した例を示す図である。
【図3】本発明の液面指示マーカーの作用原理を説明する図である。
【図4】(a)液面指示マーカーを、物理的構造を容器内面に向けて取り付けた例を示す図であり、(b)液面指示マーカーを容器外面に取り付けた例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る液面指示マーカーの基本構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る液面指示マーカーの概略構成を示す図である。
【図7】実施例1の液面指示マーカーの物理的構造を示す図である。
【図8】実施例5の液面指示マーカーの物理的構造を示す図である。
【図9】実施例6の液面指示マーカーの物理的構造を示す図である。
【図10】実施例7の液面指示マーカーの物理的構造を示す図である。
【図11】実施例16の液面指示マーカーの作製に使用するシリコーン型の表面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液面指示マーカーは、液体浸漬時に気体を保持し得る表面構造を持つ気体保持層を有することを特徴とする。気体保持層の具体的形態については、以下の各実施形態にて説明するが、少なくとも、気体保持層が備えた表面構造の物理的又は化学的性状に基づき、液体浸漬時に気体を保持し得る層をいう。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液面指示マーカー10の基本構成を示す断面図である。液面指示マーカー10は、少なくとも表面が撥水性材料等の撥液性材料からなる基材12と、液体に浸漬されたときに気体を保持するように構成された表面構造である物理的構造14とを有する。基材12は、その全体が撥水性材料から構成されてもよいし、他の材料の表面に撥水性材料をライニングしたものでもよい。該撥水性材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が使用可能である。
【0017】
物理的構造14は、例えば基材12の表面、すなわち撥水性樹脂又はライニングされた撥水性樹脂面に形成された複数の溝形状、又はレーザーアブレージョン、サンドブラスト又は切り込み等により形成された微細な凹凸構造である。溝形状の場合は、各々の溝深さが0.1μm以上であることが好ましく、100μm以下であることが好ましい。また各々の溝幅は1μ以上であることが好ましく、5mm以下であることが好ましい。
【0018】
図2は、指示マーカー10を容器20に適用した例を示す図である。図示例では、物理的構造14が基材12の表面に帯状に形成されており、該帯状部分の長手方向と水深方向が概ね一致するように指示マーカー12が略円筒形の容器20の内表面22に取り付けられているものとする。
【0019】
図2に示すように、帯状の物理的構造14が部分的に浸漬するように、容器20内に二点鎖線24の高さまで水を入れた場合、物理的構造14の浸漬部分14aには空気保持層の表面に空気が保持(トラップ)された状態となり、換言すれば容器20の内側に部分的に空気が保持される。すると、容器20の底面26の一部が該空気によって反射され、容器20の上方から容器20内を目視する人間の眼には、物理的構造14の浸漬部分14aは、浸漬されていない部分14bとは異なった状態で視認される。以下、その原理について説明する。
【0020】
図3は、本発明の液面指示マーカーの作用原理を説明する図である。同図に示すように、空気が保持されていない場合、容器の内壁が液面の上方(浸漬されていない)か下方(浸漬されている)かに関わらず、人の眼28には指示マーカー10の基材12(基材12が透明であれば容器20の内側面22)の色彩や模様が視認される。一方、空気等の気体が保持されている場合は、液面24の下方においては、気体と液体との屈折率の差に起因して、底面26からの光の少なくとも一部が該液体と気体との境界面で反射するので、人の眼28は容器28の底面26の色彩や模様を視認することができる。例えば、基材12が黒色であり、容器の底面が白色である場合は、容器内の内壁の液面より下方の部分は、上方の部分に比べて白みがかって見えることになり、液面を境としたコントラストが明確となる。このようにして、容器内の液面の位置(高さ)が容易に視認可能となる。
【0021】
なお液面位置を容易に識別するためには、容器の側面と底面の色彩は互いに異なることが好ましく、例えば白色と黒色、黄色と紫色、又は他の補色関係にある色彩のような、対比しやすい色彩であることがより好ましい。或いは、色彩が同じであっても模様を異なるようにしてもよいし、色彩及び模様の双方が異なるようにしてもよい。
【0022】
なお、容器内の液体がアルコール等の濡れ性が高い(表面張力が小さい)液体の場合は、溝や傷等の物理的構造内に容易に液体が進入してしまうので、物理的構造が液体に浸漬されたときに気体を保持するためには、容器内の液体は水又は水に近い濡れ性の液体であることが好ましい。
【0023】
図4は、液面指示マーカーの異なる使用形態を説明する図である。基材12が透明又は半透明である場合は、図4(a)に示すように、物理的構造14を容器20の内側面22に向けた状態で指示マーカー10を容器20に取り付けてもよい。このようにすれば、物理的構造14内への液体の進入を確実に防止することが可能となるので、基材12の作製に撥水性材料を使用する必要はなく、また容器内の液体も水又は水に近い濡れ性のものに限定されない。
【0024】
また、容器20の壁面の少なくとも一部が透明又は半透明である場合は、図4(b)に示すように、容器20の該透明又は半透明の部分に、容器20の外側から、物理的構造14を容器20の外側面に向けた状態で指示マーカー10を容器20の外側に取り付けてもよい。このようにすれば、物理的構造14に容器内の液体が進入することはないので、基材12の作製に撥水性材料を使用する必要はなく、また容器内の液体も水又は水に近い濡れ性のものに限定されない。
【0025】
なお液面指示マーカーは、容器の内壁に一体的に設けることもできる。例えば、容器をフッ素樹脂から作製し又はその内壁にフッ素樹脂コートを形成し、物理的構造として、例えばレーザーアブレージョンやサンドブラストによって容器の内表面に微細な傷や溝を形成して液面指示マーカーとすることが挙げられる。レーザーアブレージョンやサンドブラストを利用すると、簡単に所望の部位に物理的構造すなわち液面表示部を形成することができる。
【0026】
或いは、指示マーカーとなる材料や容器の内面を構成する材料の成形時又はライニング製造時に、物理的構造に相当する形状が形成されるように型を使用し、該形状を転写するようにしてもよい。
【0027】
次に、図5は本発明の第2の実施形態に係る液面指示マーカー30の概略構成を示す断面図である。液面指示マーカー30は、基材32と、気体を保持するように構成された物理的構造34と、物理的構造34の上面に配置された透明又は半透明のフィルム等の保護層36とを有する。物理的構造34の形状は第1の実施形態の物理的構造14と同等でよい。
【0028】
第2の実施形態では、保護層36により物理的構造34内への液体の進入が確実に阻止されるので、表面張力の低い液体であっても液面表示が可能となり、また基材32の作製に撥水性材料を使用する必要はない。また保護層36により、サンドブラスト等で溝又は傷等の物理的構造34の耐久性の向上を図ることができる。
【0029】
保護層36は例えば、物理的構造34の上に粘着剤又は接着剤で貼り付けられ、物理的構造34内の気体(空気)を保持するように構成された膜とすることができる。或いは粘着剤又は接着剤の替わりに、加熱されることにより物理的構造34上に密着固定されるように構成された膜を使用してもよい。
【0030】
液面支持マーカーを例えば炊飯器の釜のような高温に晒される対象物に適用するためには、耐熱性を具備する必要がある。そこで以下に説明する第3の実施形態では、基材又は容器の内壁をフッ素樹脂ライニングのような耐熱性樹脂で形成し、保護層を使用する場合はポリイミドフィルム又はガラスのような耐熱性材料を使用する。
【0031】
図6は本発明の第3の実施形態に係る液面指示マーカー40の概略構成を示す断面図である。液面指示マーカー40は、基材42と、気体を保持するように構成された物理的構造としての気体保持層44と、気体保持層44の上面に配置された透明又は半透明の保護層46とを有する。基材42はフッ素樹脂のような耐熱性樹脂で形成され、又は基材42の表面にフッ素樹脂ライニングが施される。一方保護層46としては、ポリイミドフィルム又はガラスのような耐熱性材料が使用される。また指示マーカー40はさらに、保護層46の全面を覆うように配置されたライナーレジン等のライナー材48を有してもよい。
【0032】
なお液面指示マーカー40は、取付け対象の容器とは別の基材42を用いて別途作製された後に該容器の内壁に取り付けられてもよいし、基材42を省略し、気体保持層44に相当する構成を容器の内壁に直接形成し、該構成の上に保護層46を固着してなるものでもよい。
【0033】
気体保持層44を構成する材料としては、紙、不織布、繊維紙又は粉末より構成される、実質的に表面に凹凸構造を形成できる材料が使用可能である。粉末としては、種々の金属粉末、酸化物、炭化物、窒化物等のセラミックス粉末が使用可能であり、好ましくは、カーボン粉末が使用できる。なお粉末として、ガラスバブルと呼ばれる多数のガラス微小中空粉体を用いることもできる。これらの球状粉末層は表面に凹凸構造を形成できる。詳細は以下の実施例15〜22に説明されている。気体保持層44内に保持された空気等の気体は、図3を用いて説明した気体と概ね同等の作用効果を有し、すなわち液面の下方においては、容器の底面からの光の少なくとも一部を反射して、人の眼が容器底面の色彩や模様を視認することができるようにする。
【0034】
気体保持層44は、図3に示したような原理を利用して容器底面の色彩又は模様を反射するためのものであるので、厚さ方向に大きな寸法を有する必要はなく、その厚さは0.1μm以上とすることができ、また100μm以下とすることができる。また気体保持層44の実質多孔質の表面における個々の孔は、表面に凹凸を形成できればどのような形状でもよいが、上述の好適な底面反射効果を得るためには、例えば0.1μmの寸法部位を有することが好ましい。
【0035】
第3の実施形態に係る指示マーカーは耐熱性を具備するので、炊飯器や浴槽等に使用可能であり、また保護層によって耐久性の向上も図られている。さらに、気体保持層として実質的に表面に凹凸構造を有する構成を採用することにより、気体保持層の上に保護層を固定した際に該保護層が部分的に凹んだり、局所的に高い応力が保護層に作用したりすることが防止され、長期に亘り安定した性能を発揮する液面指示マーカーが得られる。
【0036】
図3にて説明したような容器底面の反射効果を得るためには、液面指示マーカーの指示部分は、全面的に気体となっている必要はなく、例えば上述の実質多孔質層のように、気体を含む微細な空隙や溝を多数有することで、表面に凹凸構造を形成できるものでもよい。この場合、空隙や溝の各々は1μm以上の幅を有するものであればよく、上記紙、不織布、カーボン繊維紙又はカーボン粉末より構成される実質的に表面に凹凸構造を有する材料はこのような指示部分を好適に提供するものである。
【0037】
次に、上述の第3の実施形態に係る液面指示マーカーの一作製方法について説明する。先ず、基材又は容器の全体若しくは一部に、気体保持層を形成する。形成プロセスとしては、サンドブラストや粒子コーティングによって基材又は容器に気体保持層を形成してもよいし、紙、不織布、カーボン繊維紙、カーボン粉末又はガラスバブルを利用してもよい。
【0038】
次に、透明又は半透明のフィルムの一方の面の全面又は周囲のみに耐熱接着剤をコーティングする。該フィルムとしては、耐熱性を具備するポリイミドフィルム、フッ素化ポリイミドフィルム又はガラスリボン等が使用可能である。次に耐熱接着剤がコーティングされたフィルムを、上記気体保持層の上に一時的に接着させる。耐熱性接着剤により、フィルムは気体保持層に対して容易に位置決め可能となる。
【0039】
さらに、上記フィルムの全面を透明又は半透明のライナー材でコーティング(好ましくは加熱固定)する。ライナー材としては、種々のポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン等)が使用可能であるが、特に、フッ素樹脂、例えばPFA、PTFE、ETFEフィルム等を使用する場合は、耐熱性及び耐久性に優れた液面指示マーカーが得られる。なお気体保持層を容器と別体の基材に形成した場合は、得られた指示マーカーを容器内側面の適当な位置に取り付ける。一方気体保持層を容器内側面に形成した場合は、容器と実質一体の液面指示マーカーが得られる。
【0040】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0041】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がライニングされた金属板に、市販の炭酸ガスレーザー加工機を使用したレーザーアブレージョン(連続発振での加工時出力3W)によって、図7に示すように、切り込み幅160〜170μmの複数の直線状溝50を平行に形成し、隣接する溝間に50μm幅の畝状部分52が形成されるようにし、幅10mm、長さ50mmの面積の物理的構造54を備えた横ライン指示マーカーを作製した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例2】
【0042】
実施例1と同様の構成であるが、図7において溝50の幅(切り込み幅)を150μmとし、隣接する溝間の畝状部分52の幅を130μmとした。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例3】
【0043】
実施例1と同様の構成であるが、図7において溝50の幅(切り込み幅)を170μmとし、隣接する溝間の畝状部分52の幅を570μmとした。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例4】
【0044】
実施例1と同様の構成であるが、図7において溝50の幅(切り込み幅)を170μmとし、隣接する溝間の畝状部分52の幅を870μmとした。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例5】
【0045】
複数の直線状溝を平行に形成する点では実施例1〜4と共通であるが、図8に示すように、溝が形成されていない部分(畝状部分60)の幅が交互に50μm、300μmとなるようにした。なお、溝62の幅(切り込み幅)は170μmである。このような構成の幅10mm、長さ50mmの面積の物理的構造64を有する横ライン指示マーカーを作製し、得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例6】
【0046】
図9に示すように、実施例1〜5のような横方向の溝のみではなく、格子状に切り込みパターンを形成した。切り込まれていない(島状)部分70の寸法は、縦110μm、横280μmであり、縦溝72の幅は200μm、横溝74の幅は170μmであった。このような構成の幅10mm、長さ50mmの面積の物理的構造76を有する横ライン指示マーカーを作製し、得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例7】
【0047】
図10に示すように、互いに隣接配置された複数の円環状に切り込みパターンを形成した。各円環80の外径は540μm、内径は180μmであった。このような構成の幅10mm、長さ50mmの面積の物理的構造82を有する横ライン指示マーカーを作製し、得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例8】
【0048】
PTFEがライニングされた金属板にカッター刃によって約0.5mm間隔で切れ目を入れてなる物理的構造を備えた指示マーカーを作製した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例9】
【0049】
PTFEがライニングされた金属板の表面の、指示マーカー領域とすべき部分以外にマスキングテープを貼り、#280のサンドペーパーで該金属板の表面を擦ってランダムな傷をつけてなる物理的構造を備えた指示マーカーを作製した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例10】
【0050】
図7に示したように、フッ素樹脂がライニングされた金属板に、市販の炭酸ガスレーザー加工機を使用したレーザーアブレージョンによって、切り込み幅160〜170μmの複数の直線状溝を平行に形成し、隣接する溝間に50μm幅の畝状部分が形成されるようにし、幅10mm、長さ50mmの物理的構造を備えた横ライン指示マーカーを作製した。さらに、該指示マーカーの上にポリプロピレン製フィルムを粘着剤で固定した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例11】
【0051】
実施例10と同様の構成であるが、隣接する溝間の畝状部分の幅を570μmとして指示マーカーを作製し、該指示マーカーの上にポリプロピレン製フィルムを粘着剤で固定した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例12】
【0052】
フッ素樹脂がライニングされた金属板にカッター刃によって約0.5mm間隔で切れ目を入れてなる物理的構造を備えた指示マーカーを作製し、該指示マーカーの上にポリプロピレン製フィルムを粘着剤で固定した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例13】
【0053】
住友スリーエム社製フッ素ゴム(EC−2144)に、レーザーアブレージョンによって、図7に示したように、切り込み幅160〜170μmの複数の直線状溝を平行に形成し、隣接する溝間に50μm幅の畝状部分を形成し、幅10mm、長さ50mmの物理的構造を備えた横ライン指示マーカーを作製した。さらに、該指示マーカーの上にポリプロピレン製フィルムを粘着剤で固定した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例14】
【0054】
幅35μmの複数の直線状リブを、互いに平行にかつ190μm離れた状態で表面に有するポリプロピレン製フィルムの裏面を黒色で染色し、該表面にポリプロピレン製フィルムを粘着剤で固定することにより、指示マーカーを作製した。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例15】
【0055】
フッ素樹脂がライニングされた金属板に、レーザーアブレージョンによって、図7に示したように、切り込み幅160〜170μmの複数の直線状溝を平行に形成し、隣接する溝間に50μm幅の畝状部分を形成し、幅10mm、長さ50mmの物理的構造を備えた横ライン指示マーカーを作製した。さらに、フッ素樹脂粉末(ETFE粉末)(ダイキン工業社製 EC−6520)を3MPa、250℃の環境下でホットプレスして作製したETFEフィルム(厚み50μm)を、該指示マーカーの上に配置し、260℃に加熱して融着させた。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。なお本実施例の指示マーカーは、低表面エネルギーのエタノールに浸漬した場合にも良好な液面視認性を呈することがわかった。
【実施例16】
【0056】
ダイキン工業社製ETFE粉末(EC−6520)10gをカーボンブラック(三菱化学社製 3030B)0.05gと混合し、得られた混合粉末を、図11に示すような表面構造を備えたシリコーン型(東レダウコーニング社製 SH9555)に載せ、3MPa、250℃の環境下でホットプレスして黒色のETFEフィルムを得た。該黒色フィルムの上に、実施例15にて得られたETFEフィルムと同等のフィルムを重ね、1MPa、235℃の環境下で12秒間ホットプレスを行い、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。なお本実施例の指示マーカーは、低表面エネルギーのハイドロフルオロエーテル(HFE)液体に浸漬した場合にも良好な液面視認性を呈することがわかった。
【実施例17】
【0057】
東レ社製カーボン繊維紙(TGP−H−030)を長さ40mm、幅5mmに切断し、金属板上に配置した後、その上に東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(30EN)を貼付して試料を得た。一方、スリーエム社製フッ素樹脂(PFA)ペレットに対して、13MPa、325℃の環境下でホットプレスを行ってPFAフィルムを得、該PFAフィルムを該試料上に配置して400℃で1時間加熱し、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例18】
【0058】
実施例17におけるポリイミドフィルムの代わりに、日本電気硝子社製ガラスリボンを貼付したこと以外は、実施例17と同様の処理により、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例19】
【0059】
実施例17における東レ・デュポン社製ポリイミドフィルムの代わりに、NTTアドバンステクノロジ社製フッ素化ポリイミドフィルムを貼付したこと以外は、実施例17と同様の処理により、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例20】
【0060】
実施例17におけるポリイミドフィルムの代わりに、三菱ガス化学社製ポリイミドフィルム(Neoprim L−3430)を貼付したこと以外は、実施例17と同様の処理により、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例21】
【0061】
実施例17におけるカーボン繊維紙の代わりに、三菱ガス化学社製カーボンパウダー(#3030B)0.67gをトルエン2.5gと混合したものを金属板上に帯状に配置し、170℃にて10分間の乾燥処理を行った後、その上に東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(30EN)を貼付して試料を得た。一方、スリーエム社製フッ素樹脂(PFA)ペレットに対して、13MPa、325℃の環境下でホットプレスを行ってPFAフィルムを得、該PFAフィルムを該試料上に配置して400℃で1時間加熱し、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例22】
【0062】
実施例21におけるカーボンパウダーの代わりに、カーボンパウダー0.67g及びキンセイマテック社製セラミック(SiO2)パウダー(Snowmark SP−3)1gを、トルエン4gと混合したものを金属板上に帯状に配置し、170℃にて10分間の乾燥処理を行った後、その上に東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(30EN)を貼付して試料を得た。一方、スリーエム社製フッ素樹脂(PFA)ペレットに対して、13MPa、325℃の環境下でホットプレスを行ってPFAフィルムを得、該PFAフィルムを該試料上に配置して400℃で1時間加熱し、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例23】
【0063】
フッ素樹脂でコーティングされた金属板上に、CO2レーザーアブレージョンを長さ50mm、幅3mmの領域に施し、該領域内に切り込み幅100μmの複数の直線状溝を平行に、かつ隣接する溝間に50μm幅の畝状部分が形成されるようにした。該領域上にポリイミドフィルムを配置し、さらにPFAフィルムで覆った後、400℃にて1時間の加熱処理を行い、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例24】
【0064】
フッ素樹脂でコーティングされた金属板上の長さ50mm、幅3mmの領域に、金属製のやすりで軽く傷を付けた。該領域上にポリイミドフィルムを配置し、さらにPFAフィルムで覆った後、400℃にて1時間の加熱処理を行い、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【実施例25】
【0065】
三菱ガス化学社製カーボンパウダー(#3030B)0.15gをトルエン0.8gと混合したものをアルミニウム板上に塗布し、150℃にて乾燥処理を行ってカーボンコート板を得た。一方スリーエム社製フッ素化エラストマ(Dyneon FT−2430)7gを、28gのメチルエチルケトン(MEK)に溶解して20%溶液を得、得られた溶液を、No.10のワイヤバーを用いたコーティング処理により、東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(30EN)上に塗布してフィルムを得、得られたフィルムを上記カーボンコート板上に配置して試料を得た。該フィルムは、上記コーティング処理により可撓性が増しており、さらに帯電しにくいために扱いやすい。
【0066】
一方、スリーエム社製フッ素樹脂(PFA)ペレットに対して、13MPa、325℃の環境下でホットプレスを行ってPFAフィルムを得、該PFAフィルムを上記試料上に配置して400℃で1時間加熱し、指示マーカーを得た。得られた指示マーカーを水中に部分的に浸漬させ、浸漬した部分としていない部分とで見え方に大きな差が生じ、水面位置の視認が容易になっていることを確認した。
【0067】
なお実施例25において、コーティング処理に使用するワイヤバーの直径(型番)を種々変更し、具体的にはNo.7、16、20、24及び30のワイヤバーを用いて得られた指示マーカーについても、同様に水面位置の視認が容易になっていることを確認できた。
【符号の説明】
【0068】
10、30、40 液面指示マーカー
12、32、42 基材
14、34 物理的構造
16、36、46 保護層
20 容器
44 気体保持層
48 ライナー材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体浸漬時に気体を保持し得る表面構造を持つ気体保持層を有する、液面指示マーカー。
【請求項2】
前記表面構造は、凹凸を有しかつ撥液性を示す、請求項1に記載の液面指示マーカー。
【請求項3】
さらに、前記気体保持層の上に透明又は半透明の保護層を有する、請求項1又は2に記載の液面指示マーカー。
【請求項4】
前記気体保持層は、紙、不織布、又は粉末のいずれかにより構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液面指示マーカー。
【請求項5】
前記気体保持層は、カーボン繊維紙又はカーボン粉末より構成される、請求項4に記載の液面指示マーカー。
【請求項6】
前記保護層の上にコーティングされたライナー材をさらに有する、請求項3に記載の液面指示マーカー。
【請求項7】
容器の全体又は一部に、液体浸漬時に気体を保持し得る表面構造を持つ気体保持層を設ける工程と、
前記気体保持層を透明又は半透明の保護層で被覆する工程と、
を有する、液面指示マーカーの作製方法。
【請求項8】
さらに、ライナー材で前記保護層の全面をコーティングする工程を有する、請求項7に記載の液面指示マーカーの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−108068(P2012−108068A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258679(P2010−258679)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)