説明

液面検出装置及びそれを用いた液面検出方法

【課題】測温抵抗体を用いて液面を検出する方法において、測温抵抗体の劣化を防止するとともに消費電力も抑えることを可能すること。
【解決手段】一対の測温抵抗体2a、2bを具備した液面レベルセンサーBと、装置本体Aを具備し、装置本体Aは、測温抵抗体の一方2aに比較的大きな定電圧を加える第1の定電圧回路3aと、測温抵抗体の他方2bに微小な定電圧を加える第2の定電圧回路3bと、測温抵抗体の一方と第1の定電圧回路間及び測温抵抗体の他方と第2の定電圧回路間に介在される抵抗4と、測温抵抗体の一方の抵抗値を測定する第1の抵抗値測定回路7aと、測温抵抗体の他方の抵抗値を測定する第2の抵抗値測定回路7bと、第1の抵抗値測定回路の出力と第2の抵抗値測定回路の出力を入力して比較する比較手段8と、装置全体の作動を制御する制御手段9を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液面検出装置及びそれを用いた液面検出方法に係り、より詳しくは、測温抵抗体を用いて液面を検出する装置及び方法において、測温抵抗体の劣化を抑えることを可能にするとともに消費電力を抑えることを可能にした液面検出装置及びそれを用いた液面検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液タンク等の容器内の液体レベルを検知する方法として、液相と気相とで熱放散定数が異なる測温抵抗体を具備した液面レベルセンサーを用いた液面検出装置が提供されている。
【0003】
即ち、液面レベルセンサーとしては、光を利用した液面センサー、静電容量タイプの液面センサー等が知られているが、光を利用した液面センサーでは、光の照射によって原料化合物を分解させる恐れが有って好ましいとは言えず、又、静電容量タイプの液面センサーでは、電流(電荷)によって原料化合物が分解する恐れが有って好ましいとは言えないため、このような問題点が無い液面レベルセンサーとして、測温抵抗体を用いた液面レベルセンサーが提供されている。
【0004】
ここで、測温抵抗体を用いた前記液面レベルセンサーについて説明すると、測温抵抗体を用いた液面レベルセンサーでは一般的に、それぞれに測温抵抗体を封入した2本の保護管を具備しており、この2本の保護管を容器内に挿入して、一方の保護管内の測温抵抗体には比較的大きな電流を流し、他方の保護管内の測温抵抗体には微小な電流を流す。
【0005】
そうすると、大きな電流を流した測温抵抗体は発熱するが、このとき、測温抵抗体は液相と気相とで熱放散定数が異なるため、即ち、測温抵抗体が液相中にある場合の熱放散定数は、気相中にある場合の熱放散定数よりも大きいため、気相中にある場合の測温抵抗体の温度は、液相中にある場合と比べると高くなる。
【0006】
そしてこのことは、気相中の測温抵抗体は、液相中の測温抵抗値よりも抵抗値が高いことを意味するため、大きな電流を流した測温抵抗体の電圧出力と、微小な電流を流した測温抵抗体の電圧出力との差分を見ることで、測温抵抗体が液面の上方か下方かを判別することが可能となる。即ち、差分が小さいときは測温抵抗体は液面よりも下方にあり、差分が大きい場合には測温抵抗体は液面よりも上方にあると判断することができるので、これにより、液面を検出することが可能となる。
【0007】
ここで、測温抵抗体を用いた液面検出装置51の基本的な構成について図7を用いて説明すると、図7において、52、53が、液面レベルセンサーに具備された測温抵抗体である。そして、52は一方側の測温抵抗体、53は他方側の測温抵抗体であり、一方側の測温抵抗体52には比較的大きな電流を流して、他方側の測温抵抗体53には微小な電流を流す。
【0008】
そして、一方の測温抵抗体52には、比較的大きな定電流を流すための第1の定電流回路54が接続され、他方の測温抵抗体53には、微小な定電流を流すための第2の定電流回路55が接続されている。
【0009】
また、従来の液面検出装置51では、一方の測温抵抗体52の端子電圧と他方の測温抵抗体53の端子電圧を入力し、両者の差電圧を出力する作動増幅器56を有しており、この作動増幅器56の出力はコンパレーター57に入力される。
【0010】
更に、前記コンパレーター57には、第1の分圧抵抗器58と第2の分圧抵抗器59により設定された動作点電圧が入力され、コンパレーター57において、前記作動増幅器56の出力と前記動作点電圧が比較される。
【0011】
そしてこの構成において、測温抵抗体52、53が気相中にあるときは、一方の測温抵抗体52の端子電圧が、他方の測温抵抗体53の端子電圧+動作点電圧よりも大きくなるために、コンパレーター57はハイレベルの電圧を出力し、一方、測温抵抗体52、53が液相中にあるときには、一方の測温抵抗体52の端子電圧が、他方の測温抵抗体53の端子電圧+動作点電圧よりも小さくなり、コンパレーター57はローレベルの電圧を出力するので、それにより、測温抵抗体52、53が気相中にあるか液相中にあるかを弁別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3869169号公報
【特許文献2】特許第3009809号公報
【特許文献3】特許第3985071号公報
【特許文献4】特許第3985072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述したような従来の液面検出装置では、定電流回路を用いて測温抵抗体に定電流を流しているために、測温抵抗体の劣化が激しいとともに、消費電力が大きくならざるを得ないという問題点が指摘される。
【0014】
即ち、測温抵抗体の抵抗値は測温抵抗体の温度の上昇に伴って大きくなるが、このとき、前述した従来の定電流方式では、供給される電流値(I)が一定であるために、次式(1)からも導き出せるように、抵抗値(R)が大きくなるに従って消費電力が大きくなるとともに、測温抵抗体の発熱量も多くなっていき測温抵抗体の劣化が激しくなるとい問題点が指摘できる。
P(発熱量)=I×R ・・・(1)
【0015】
そこで、本発明は、測温抵抗体を用いて液面を検出する装置及び方法において、測温抵抗体の劣化を防止するとともに消費電力も抑えることも可能な液面検出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の液面検出装置は、
液体を入れた容器内に装挿された少なくとも一対個の測温抵抗体に異なった電圧の定電圧を加えて、前記一対個の測温抵抗体の抵抗値をそれぞれ検出し、該検出した抵抗値の差に基づいて、前記測温抵抗体が液相中か気相中かを検出して液面を検出する液面検出装置であって、
前記少なくとも一対個の測温抵抗体を具備した液面レベルセンサーと、
前記少なくとも一対個の測温抵抗体に異なった電圧の定電圧を加えて一対個の測温抵抗体の抵抗値をそれぞれ検出するとともに検出した抵抗値の差に基づいて測温抵抗体が液相中か気相中かを検出するための装置本体と、を具備して
前記装置本体は、
前記一対個の測温抵抗体の一方に比較的大きな電圧値の定電圧を加えて該測温抵抗体の一方を加熱するための第1の定電圧回路と、
前記一対個の測温抵抗体の他方に微小な電圧値の定電圧を加えるための第2の定電圧回路と、
前記測温抵抗体の一方と前記第1の定電圧回路間に介在される抵抗回路と、
前記測温抵抗体の他方と前記第2の定電圧回路間に介在される抵抗回路と、
前記測温抵抗体の一方の抵抗値を測定するための第1の抵抗値測定回路と、
前記測温抵抗体の他方の抵抗値を測定するための第2の抵抗値測定回路と、
前記第1の抵抗値測定回路の出力と前記第2の抵抗値測定回路の出力を入力して比較するための比較手段と、
装置全体の作動を制御するための制御手段と、を具備して、
該比較手段の比較結果によって、前記測温抵抗体が液相中か気相中かを検出することで、液面を検出可能としたことを特徴としている。
【0017】
そして、この液面検出装置を用いた本発明の液面検出方法は、
一対個の測温抵抗体を容器内に挿装して、一対個の測温抵抗体の一方に比較的大きな電圧値の定電圧を加えて該測温抵抗体の一方を加熱し、
一対個の測温抵抗体の他方に微小な電圧値の定電圧を加えて、
測温抵抗体の一方の抵抗値及び測温抵抗体の他方の抵抗値をそれぞれ測定するとともに、
測温抵抗体の一方の抵抗値と測温抵抗体の他方の抵抗値を比較し、
比較した結果を予め設定した値と比較することで測温抵抗体が液相中か気相中かを検出して、容器内の液面を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液面検出装置及び液面検出方法では、比較的大きな電流を加えられることで加熱される測温抵抗体の一方と、微小な電流を加えられる測温抵抗体の他方との抵抗値の差に基づいて、前記測温抵抗体が液相中か気相中かを検出する液面検出装置及び方法において、測温抵抗体のそれぞれに、定電圧を加えることとしている。そのため、これにより、測温抵抗体の自己発熱を抑えるとともに、消費電力を抑えることを可能としている。
【0019】
即ち、次式(2)にあるように、電流値(I)は抵抗値(R)に反比例するが、本発明においては定電圧を測温抵抗体に加えるために電圧(E)は一定であるため、測温抵抗体の温度上昇に伴って測温抵抗体の抵抗値(R)が大きくなると、電流値(I)が小さくなる。
I=E/R・・・(2)
【0020】
また、前記式(1)からも導き出されるように、電流値が小さくなると、測温抵抗体の発熱量も小さくなる。
【0021】
従って、本発明によれば、測温抵抗体に電源を供給することで測温抵抗体の温度が上昇し、それにより測温抵抗体の抵抗値が大きくなると、消費電力が少なくなるとともに、測温抵抗体の自己発熱量も下がってくるという効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の液面検出装置の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の液面検出方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の液面検出装置の実施例に用いる液面レベルセンサーの構成を示す側面図である。
【図4】本発明の液面検出装置の実施例に用いる液面レベルセンサーを構成する保護管を説明するための一部断面図である。
【図5】本発明の液面検出装置の実施例に用いる液面レベルセンサーを構成する補強部材と保護管の関係を示す図である。
【図6】本発明の液面検出装置の実施例に用いる液面レベルセンサーの使用方法を説明するための図である。
【図7】従来の液面検出装置の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の液面検出装置は、液体を入れた容器内に装挿された少なくとも一対個の測温抵抗体に異なった電圧の定電圧を加え、定電圧を加えた一対個の測温抵抗体の抵抗値をそれぞれ検出し、検出した抵抗値の差に基づいて、測温抵抗体が液相中か気相中かを検出して液面を検出する液面検出装置としており、少なくとも一対個の測温抵抗体を具備した液面レベルセンサーと、この液面レベルセンサーに具備した少なくとも一対個の測温抵抗体に異なった電圧の定電圧を加えて、一対個の測温抵抗体の抵抗値をそれぞれ検出するとともに、検出した抵抗値の差に基づいて測温抵抗体が液相中か気相中かを検出するための装置本体を具備している。
【0024】
そして、装置本体は、一対個の測温抵抗体の一方に比較的大きな電圧値の定電圧を加えて測温抵抗体の一方を加熱するための第1の定電圧回路と、一対個の測温抵抗体の他方に微小な電圧値の定電圧を加えるための第2の定電圧回路とを有している。
【0025】
また、装置本体は、測温抵抗体の一方と第1の定電圧回路間に介在される抵抗回路と、測温抵抗体の他方と前記第2の定電圧回路間に介在される抵抗回路を有しており、これらの抵抗回路はいずれも、電流調整抵抗と、基準抵抗とで構成されている。
【0026】
更に、装置本体は、測温抵抗体の一方の抵抗値を測定するための第1の抵抗値測定回路と、測温抵抗体の他方の抵抗値を測定するための第2の抵抗値測定回路を有しているとともに、第1の抵抗値測定回路の出力と第2の抵抗値測定回路の出力を入力して比較するための比較手段を具備しており、更に、装置全体の作動を制御するための制御手段を具備している。
【0027】
そして、比較手段の比較結果によって、測温抵抗体が液相中か気相中かを検出し、それにより、容器内の液体の液面を検出可能としている。
【0028】
即ち、このように構成される液面検出装置を用いた本発明の液面検出方法では、一対個の測温抵抗体を容器内に挿装して、測温抵抗体の一方に比較的大きな電圧値の定電圧を加えてこの測温抵抗体の一方を加熱し、測温抵抗体の他方には微小な電圧値の定電圧を加える。
【0029】
そして、測温抵抗体の一方の抵抗値と測温抵抗体の他方の抵抗値をそれぞれ測定するとともに、測温抵抗体の一方の抵抗値と測温抵抗体の他方の抵抗値を比較し、比較した結果を、予め設定した値と比較することで、測温抵抗体が液相中か気相中かを検出して、容器内の液面を検出する。
【0030】
ここで、測温抵抗体の一方の抵抗値と測温抵抗体の他方の抵抗値が一致したときに測温抵抗体が液相中にあると判断し、測温抵抗体の一方の抵抗値が測温抵抗体の他方の抵抗値よりも大きいときに、測温抵抗体が気相中にあると判断可能なように、測温抵抗体に加える電圧値、抵抗等を調整しておくとよい。
【実施例1】
【0031】
本発明の液面検出装置の実施例について図面を参照して説明すると、図1は本実施例の液面検出装置の構成を示すブロック図であり、図において1が本実施例の液面検出装置である。
【0032】
そして、本実施例の液面検出装置1は、液体を入れた容器内に装挿される測温抵抗体を具備した液面レベルセンサーを有しており、前記測温抵抗体は、少なくとも一対個を具備している。
【0033】
また、本実施例の液面検出装置1は、前記対となる測温抵抗体に異なった電圧の定電圧を加えて、それぞれの測温抵抗体の抵抗値を検出するとともに、検出した抵抗値の差に基づいて測温抵抗体が液相中か気相中かを検出するための装置本体を具備している。
【0034】
即ち、図においてAが装置本体、また、図においてBが液面レベルセンサーであり、液面レベルセンサーBには、少なくとも2個の、互いに対となる測温抵抗体2a、2bが備えられており、本実施例においてこの測温抵抗体2a、2bはいずれも、Pt1000から構成されている。
【0035】
そして、本実施例においては、装置本体Aによって、前記測温抵抗体の一方(「一方の測温抵抗体2a」という。)に比較的な大きな電圧値の定電圧を加えて、これにより一方の測温抵抗体2aを加熱し、測温抵抗体の他方(「他方の測温抵抗体2b」という。)には、微小な電圧値の定電圧を加える。
【0036】
そして、定電圧を加えたそれぞれの測温抵抗体2a、2bの抵抗値を検出するとともに、一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値を比較して差分を見ることで、測温抵抗体2a、2bが、液相中か気相中かを検出することを可能としている。
【0037】
即ち、図1において、装置本体Aは、前記一方の測温抵抗体2aに定電圧を加えるための第1の定電圧回路3aと、前記他方の測温抵抗体2bに定電圧を加えるための第2の定電圧回路3bを有している。そして、第1の定電圧回路3aは、一方の測温抵抗体2aに比較的大きな電圧値の定電圧を加え、これにより一方の測温抵抗体2aを加熱し、第2の定電圧回路3bは、前記他方の測温抵抗体2bに微小な定電圧を加えるために用いられる。なお、本実施例において前記定電圧回路3a、3bはワンチップマイコンにより構成することとしている。
【0038】
そして、この第1の定電圧回路3aと第2の定電圧回路3bのそれぞれには、電流調整用抵抗5と、基準抵抗6を有した抵抗回路4が接続されており、この抵抗回路4は、前記第1の定電圧回路3aと一方の測温抵抗体2a間、及び前記第2の定電圧回路3bと他方の測温抵抗体2b間にそれぞれ、介在されている。
【0039】
次に、図において7a、7bは、抵抗値測定回路である。即ち、本実施例における装置本体Aでは、前記一方の測温抵抗体2aの抵抗値を測定する第1の抵抗値測定回路7aと、他方の測温抵抗体2bの抵抗値を測定する第2の抵抗値測定回路7bを有しており、この抵抗値測定回路7a、7bはいずれも、ホイーストンブリッジ法による抵抗値測定回路としている。
【0040】
また、本実施例における装置本体Aはコンパレーターを有している。即ち、図において8がコンパレーターであり、本実施例の液面検出装置1では、このコンパレーター8において、前記抵抗値測定回路7a、7bで測定した測温抵抗体2a2bの抵抗値を比較して差分を求めることとしている。
【0041】
即ち、コンパレーター8により一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値の差分を求めて、その結果によって、測温抵抗体2a、2bが液相中か気相中かを判定することとしている。
【0042】
具体的には、測温抵抗体2a、2bが液相中にあるときには、一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値の差分が無く、即ち一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値が一致し、測温抵抗体2a、2bが気相中にあるときには、一方の測温抵抗体2aの抵抗値が他方の測温抵抗体2bの抵抗値よりも大きくなるように、予め、測温抵抗体2a、2bに加える定電圧の値、電流調整用抵抗、基準抵抗等を調整しておく。
【0043】
そして、本実施例における装置本体Aでは、前記コンパレーター8で求めた一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値の差分に応じて、測温抵抗体が液相中か気相中かによって、色が異なるLED等の表示装置11を作動させることとしている。
【0044】
即ち、図において9は、装置本体Aの全体の作動を制御するための制御部としてのマイコンであり、このマイコン9には、スイッチ群10、LED等の表示装置11、電源等(図示せず)が接続されており、更に、前記コンパレーター8、定電圧回路2a、2b等が接続されており、コンパレーター8の出力に応じて、制御部9において、測温抵抗体2a、2bが液相中か気相中かを判定して表示装置11の作動を制御し、液相中にあるときは液相中に対応したLEDを点灯させて、気相中にあるときには、気相中に対応したLEDを点灯させることとしている。
【0045】
次に、このように構成される本実施例の液面検出装置1を用いた液面検出方法の実施例について図2のフローチャートを用いて説明すると、本実施例の液面検出方法では、液体を入れた容器内に、液面レベルセンサーBに具備した一対の測温抵抗体2a、2bを装挿する。
【0046】
そしてその状態で、一方の測温抵抗体2aには第1の定電圧回路3aから比較的大きな電圧値の定電圧を加えて、これにより一方の測温抵抗体2aを加熱し、他方の測温抵抗体2bには微小な電圧値の定電圧を加える(S1)。
【0047】
そして、一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値をそれぞれ、第1の抵抗値測定回路7a及び第2の抵抗値測定回路7bで測定するとともに(S2)、第1の抵抗値測定回路7aと第2の抵抗値測定回路7bから出力される抵抗値をコンパレーター8で比較して、一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値の差分を求める(S3)。
【0048】
そして、コンパレーター8の出力に応じて、予め設定してある基準に基づき、制御部9において、測温抵抗体が液相中か気相中かを判定し(S4)、その判定結果によって、異なったLEDを点灯させる(S5)。具体的には、本実施例においては、予め、測温抵抗体2a、2bに加える定電圧の値、電流調整用抵抗、基準抵抗等を調整しておき、測温抵抗体2a、2bが液相中にあるときには、一方の測温抵抗体2aの抵抗値と他方の測温抵抗体2bの抵抗値が一致して差分が0になり、測温抵抗体2a、2bが気相中にあるときには、一方の測温抵抗体2aの抵抗値が他方の測温抵抗体2bの抵抗値よりも大きくなるようにしておき、制御部9においては、この基準に基づき、コンパレーター8から出力される抵抗値の差分に応じて判断して、気相中あるいは液相中に対応したLEDを点灯させることとしている。
【0049】
このように、本実施例の液面検出装置1では、液相中と気相中とで熱放散定数が異なる測温抵抗体を用いて液面を検出することとしているために、光を利用した液面レベルセンサーや静電容量タイプの液面レベルセンサーを用いた液面検出装置と異なり、大きな電圧値の定電圧を加えた測温抵抗体の抵抗値と、微小な電圧値の定電圧を加えた測温抵抗体の抵抗値との差分を見ることのみで、測温抵抗体が液面の上方か下方かを判別することが可能となる。
【0050】
そして、このとき、本実施例の液面検出装置では、測温抵抗体に定電圧を加えることとしているため、測温抵抗体の温度上昇に伴って測温抵抗体の抵抗値(R)が大きくなると、次式(2)から明らかなように、電流値(I)が小さくなり、これにより、測温抵抗体の自己発熱を抑えるとともに、消費電力を抑えることが可能となる。
I=E/R・・・(2)
【0051】
また、前記次式(1)からも導き出されるように、電流値(I)が小さくなると、測温抵抗体の発熱量も小さくなる。
P(発熱量)=I×R ・・・(1)
【0052】
従って、本実施例の液面検出装置によれば、測温抵抗体に電源を供給することで測温抵抗体の温度が上昇し、それにより測温抵抗体の抵抗値が大きくなると、消費電力が少なくなるとともに、測温抵抗体の自己発熱量も下がってくるという効果を得ることが可能である。
【0053】
次に、本発明における前記液面レベルセンサーBの具体的な実施例について説明すると、図3は、本実施例における液面レベルセンサーBの構成を説明するための側面図である。
【0054】
そして、本実施例における液面レベルセンサーBは、複数本の保護管を有しており、この複数本の保護管のそれぞれの内部に測温抵抗体が装挿されている。
【0055】
即ち、図において22が保護管であり、本実施例において前記保護管22は、同じ長さの保護管を2本ずつとして、合計で4本を備えている。そしてこれにより、容器内の2箇所において液面レベルを検知可能とし、具体的には、容器内の薬液残量が僅かになった時点を検知するための短めの保護管一対本と、容器内の薬液が無くなった時点を検知するための長めの保護管一対本を備えており。
【0056】
そして、本実施例において前記保護管22は、所定長及び所定径とした保護管本体と、この保護管本体の先端部に連設された検出部とで構成されており、検出部は、保護管本体よりも小径としている。
【0057】
即ち、図において23が保護管本体であり、本実施例においてこの保護管本体23は、全長116mmとした一方側の保護管本体23aと、全長106mmとした他方側の保護管本体23bを有しており、これらの保護管23a、23bはいずれも、中空のパイプ状としており、外径を3.2mmとしている。
【0058】
そして、これらの保護管本体23a、23bの先端部にはそれぞれ、検出部が連設されている。即ち、図において24が検出部であり、本実施例においてこの検出部24はそれぞれ、外径を2.3mmとし、全長を50mmとした中空のパイプ状であり、前記保護管本体23a、23bとの連設部分の内部において保護管本体23a、23bと連通している。
【0059】
なお、本実施例において、前記保護管本体23a、23bと検出部24は、段付溶接で連結しているが、必ずしも溶接により保護管本体23a、23bと検出部4を連設する必要はなく、その他、例えば、保護管本体23a、23bの先端部分をスエージング処理して検出部24を形成してもよい。
【0060】
ここで、図4は前記保護管22の一部分の断面を示した図であり、図において2a、2bが、前記測温抵抗体である。そして、前記測温抵抗体2a、2bは、前記検出部24内に装挿されるとともに、リード線26を介して前記装置本体Aに接続されることとしている。
【0061】
また、本実施例における前記検出部24は、その先端部を球状に形成しており、これにより、容器内の薬液残量が減っていき、薬液の液面が検出部24よりも下方になるときに、薬液が検出部24の先端に残ってしまうことを防止することが可能である。
【0062】
次に、図3において27は取付部である。即ち、液面レベルセンサーBは薬液容器内に装挿されて使用されるが、このとき、本実施例では、取付部27によって、保護管23a、23bを薬液容器内に配設することとしている。
【0063】
即ち、本実施例における前記取付部27は、一端側において、前記保護管22の基端部が連結されており、使用に際しては、保護管22を連結した面を薬液容器側に向けて、薬液容器の上面に形成したポートに連結される。
【0064】
また、前記取付部27の他端側にはチューブ28が連設されており、このチューブ28は、その内部に、前記測温抵抗体2、3に接続された前記リード線26が装挿されている。
【0065】
そして、前記チューブ28の基端側にはコネクタ30が備えられており、このコネクタ30を装置本体Aのコネクタ(図示せず)に連結することで、前記リード線26を介して、前記測温抵抗体2a、2bと装置本体Aとを接続し、これにより、測温抵抗体2a、2bに定電圧を加えるとともに測温抵抗体2a、2bの抵抗値を測定することを可能としている。
【0066】
従って、前記取付部27を薬液容器の上面に取り付けるとともに、コネクタ30を装置本体Aに接続することで、前記保護管22がそれぞれ薬液容器内に装挿され、更に、保護管22内の測温抵抗体2a、2bに定電圧を加えるとともに測温抵抗体の抵抗値を測定することで、薬液容器内の薬液残量を検知することが可能となる。
【0067】
次に、図3において29は、前記保護管22の損傷等を防止するための補強部材である。即ち、本実施例の液面レベルセンサーBでは、容器に振動が加わった際に保護管22が損傷することを防止するための補強部材を備えている。
【0068】
そして、本実施例における前記補強部材29は、正面形状を四角形状の枠体とした無端のベルト状としており、この補強部材29の内周側に四隅部分に前記4本の保護管22を固定している。
【0069】
ここで、図5は、前記補強部材29と前記保護管22との関係を説明するための図であり、正面側から見た状態を示している。そして、前記補強部材29は、図3にも示されているように、前記保護管22における保護管本体23の先端側近傍に備えられており、補強部材29の内壁と前記保護管本体23の外周部分が当接するようにして、補強部材29の内周側の四隅部分に前記保護管22を配設している。
【0070】
そして更に、この状態で、保護管本体23の外周部分と前記補強部材29の内壁における当接部分を、溶接により固着している。そのために、本実施例の液面レベルセンサーBでは、容器に振動が加わった際に保護管22が損傷することを防止することができるとともに、補強部材の加工が容易で、コストを抑えることも可能である。
【0071】
また、このとき、本実施例において前記補強部材29は、図5からも明らかなように、内周側の四隅部分を円弧状に湾曲させているとともに、その湾曲形状を、前記保護管本体23の外周の円弧形状に沿った形状にしている。
【0072】
そのために、本実施例によれば、保護管本体23の外周と補強部材29の内周側の四隅部分との間にスペースができてしまうことを防止することができ、保護管22を強固に補強部材29に固定し、保護管22の損傷を防止することが可能である。
【0073】
そして、このように構成される本実施例の液面レベルセンサーBを用いて容器内の液の液面を検出する場合について図6を参照して説明すると、図6において31は薬液容器、32は薬液容器31内の薬液、33は薬液32の液面である。
【0074】
そして、この液面レベルセンサーBを用いて液面を検出場合には、前記薬液容器31の上面に、前記取付部27を取り付け、これによって、薬液容器31内に前記保護管22を配設する。
【0075】
そしてそれとともに、前述したように、チューブ28の基端側に備えられたコネクタ30を装置本体Aのコネクタに連結することで、前記リード線26を介して、前記測温抵抗体2a、2bと装置本体Aとを接続する。
【0076】
そして、その状態において、前記2対の保護管22に収容されている測温抵抗体2a、2bのそれぞれについて、一方の測温抵抗体2aには比較的大きな電圧値の定電圧を加えて、他方の測温抵抗体2bには微小な電圧値の定電圧を加えるとともに、それぞれの測温抵抗体2a、2bの抵抗値を測定して、大きな電圧値の定電圧を加えた一方の測温抵抗体2aの抵抗値と、微小な電圧値の定電圧を加えた他方の測温抵抗体2bの抵抗値の差分を比較して、その差分によって、測温抵抗体2a、2bが液相中か気相中かを判断し、気相中あるいは液相中に対応したLEDを点灯させる。
【0077】
従って、本実施例の液面検出装置1では、液面レベルセンサー1を容器の上面に取り付けることのみで測温抵抗体を容器内に配設することができるので、測温抵抗体の装挿作業が極めて容易である。
【0078】
また、本実施例の液面レベルセンサー1では、正面形状を四角形状とした無端のベルト状とした補強部材29を用いており、この補強部材29の内壁と前記保護管本体23a、23bの外周部分が当接するようにして、補強部材29の内周側の四隅部分に前記保護管22を配設するとともに、この状態で、保護管本体23a、23bの外周部分と前記補強部材29の内壁を、溶接により固着しているため、容器に振動が加わった際に保護管22が損傷することを防止することができるとともに、補強部材の加工が容易で、コストを抑えることも可能である。
【0079】
更に、本実施例において前記補強部材29は、内周側の四隅部分を円弧状に湾曲させているとともに、その湾曲形状を、前記保護管本体23a、23bの外周形状に沿った形状にしているため、保護管本体23a、23bの外周と補強部材29の内周側の四隅部分との間にスペースができてしまうことを防止することができ、保護管22を強固に補強部材29に固定し、保護管22の損傷を防止することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、測温抵抗体を用いて液面を検出する装置及び方法において、測温抵抗体の劣化を防止するとともに消費電力も抑えることを可能としているため、測温抵抗体を用いて液面を検出する装置及び方法の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 液面検出装置
A 装置本体
B 液面レベルセンサー
2a 一方の測温抵抗体
2b 他方の測温抵抗体
3a 第1の定電圧回路
3b 第2の定電圧回路
4 抵抗回路
5 電流調整用抵抗(R1)
6 基準抵抗(Rref)
7a 第1の抵抗値測定回路
7b 第2の抵抗値測定回路
8 コンパレーター
9 制御部
10 スイッチ群
11 表示装置
22 保護管
23a、23b 保護管本体
24 検出部
26 リード線
27 取付部
28 チューブ
29 補強部材
30 コネクタ
31 薬液容器
32 薬液
33 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れた容器内に装挿された少なくとも一対個の測温抵抗体(2a、2b)に異なった電圧の定電圧を加えて、前記一対個の測温抵抗体(2a、2b)の抵抗値をそれぞれ検出し、該検出した抵抗値の差に基づいて、前記測温抵抗体(2a、2b)が液相中か気相中かを検出して液面を検出する液面検出装置であって、
前記少なくとも一対個の測温抵抗体(2a、2b)を具備した液面レベルセンサー(B)と、
前記少なくとも一対個の測温抵抗体(2a、2b)に異なった電圧の定電圧を加えて一対個の測温抵抗体(2a、2b)の抵抗値をそれぞれ検出するとともに検出した抵抗値の差に基づいて測温抵抗体が液相中か気相中かを検出するための装置本体(A)と、を具備して
前記装置本体(A)は、
前記一対個の測温抵抗体の一方(2a)に比較的大きな電圧値の定電圧を加えて該測温抵抗体の一方を加熱するための第1の定電圧回路(3a)と、
前記一対個の測温抵抗体の他方(2b)に微小な電圧値の定電圧を加えるための第2の定電圧回路(3b)と、
前記測温抵抗体の一方(2a)と前記第1の定電圧回路(3a)間に介在される抵抗回路(4)と、
前記測温抵抗体の他方(2b)と前記第2の定電圧回路(3b)間に介在される抵抗回路(4)と、
前記測温抵抗体の一方(2a)の抵抗値を測定するための第1の抵抗値測定回路(7a)と、
前記測温抵抗体の他方(2b)の抵抗値を測定するための第2の抵抗値測定回路(7b)と、
前記第1の抵抗値測定回路(7a)の出力と前記第2の抵抗値測定回路(7b)の出力を入力して比較するための比較手段(8)と、
装置全体の作動を制御するための制御手段(9)と、を具備して、
該比較手段(8)の比較結果によって、前記測温抵抗体(2a、2b)が液相中か気相中かを検出することで、液面を検出可能としたことを特徴とする液面検出装置。
【請求項2】
前記抵抗回路(4)はそれぞれ、電流調整抵抗(5)と基準抵抗(6)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液面検出装置。
【請求項3】
前記液面レベルセンサー(B)は、
それぞれに測温抵抗体(2a、2b)を封入した複数本の保護管(22)と、
該複数本の保護管(22)の基端部が連結された、前記複数本の保護管(22)を容器に取り付けるための取付部(27)と、
前記複数本の保護管(22)が固定された補強部材(29)と、を具備して、
前記複数本の保護管(22)はそれぞれ、
前記取付部(27)に基端部が連結された保護管本体(23)と、
該保護管本体(23)の先端部に連設された、前記保護管本体(23)よりも小径にするとともに先端部分を球状に形成し、内部に前記測温抵抗体(2a、2b)を配設した検出部(24)と、を具備し、
前記補強部材(29)は無端のベルト状とし、
前記補強部材(29)の内壁と保護管(22)の外周部分が当接する配置で、前記保護管(22)を前記補強部材(29)の内周側に配設し、保護管(22)の外周部分を前記補強部材(29)の内壁に溶接により固着した、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液面検出装置。
【請求項4】
前記補強部材(29)を角柱形状にするとともに、該補強部材(29)の四隅の内壁部分に前記保護管(22)を配設したことを特徴とする請求項3に記載の液面検出装置。
【請求項5】
前記補強部材(29)の内周側の四隅部分を、前記保護管(22)の外周形状に沿った湾曲形状にしたことを特徴とする請求項4に記載の液面検出装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の液面検出装置を用いて、容器内の液面を検出する方法であって、
前記少なくとも一対個の測温抵抗体(2a、2b)を容器内に挿装して、
前記一対個の測温抵抗体の一方(2a)に比較的大きな電圧値の定電圧を加えて該測温抵抗体の一方を加熱し、
前記一対個の測温抵抗体の他方(2b)に微小な電圧値の定電圧を加えて、
前記測温抵抗体の一方(2a)の抵抗値及び測温抵抗体の他方(2b)の抵抗値をそれぞれ測定するとともに、
前記測温抵抗体の一方(2a)の抵抗値と測温抵抗体の他方(2b)の抵抗値を比較し、
比較した結果を予め設定した値と比較することで前記測温抵抗体(2a、2b)が液相中か気相中かを検出して、容器内の液面を検出することを特徴とする液面検出方法。
【請求項7】
前記測温抵抗体の一方(2a)の抵抗値と測温抵抗体の他方(2b)の抵抗値が一致したときに測温抵抗対(2a、2b)が液相中にあると判断し、
前記測温抵抗体の一方(2a)の抵抗値が測温抵抗体の他方(2b)の抵抗値よりも大きいときに、測温抵抗対(2a、2b)が気相中にあると判断することを特徴とする請求項6に記載の液面検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173192(P2012−173192A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36837(P2011−36837)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(591006003)株式会社トリケミカル研究所 (31)
【出願人】(392014933)株式会社ラスコ (16)
【出願人】(507415772)株式会社ジェイ・エフ・シー (3)
【Fターム(参考)】