説明

液面検出装置及び試料吸引装置

【課題】 ノズルによる液面検出において、ノイズの発生や影響を受けることなく安定性を高めると共に、小型化を達成する。
【解決手段】 少なくとも先端部が導電性を有し容器中の液体試料を採取するノズルに発振回路を電気的に接続することにより、該ノズル先端部が接液したときの電気信号の変化により該液体試料の液面を検知する装置であって、該発振回路をセラミック発振子により構成し、該ノズル接液時における該発振回路の電流変化を検知する。或いは、CMOS−ICによるセラミック発振回路を実装した基板をホルダ内部に収納すると共に、該ホルダの一端にノズルチップ取付部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料を採取するノズルの接液により液面を検出する装置及び液面検出機能を備えた試料吸引装置の改良に関するものである。

【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体サンプルを分析する分析装置においては、多種類の分析項目を分析できるように構成されており、検体ラック上のサンプルをピペットノズルで分注する操作が繰り返し行われる。
【0003】
このような試料をピペットノズルで採取するに際しては、多項目の処理を行う上で定量的に試料を迅速且つ精確に吸引する機能が求められる。従来の分析装置では、無駄なく精確なサンプリングを目的として、電気的や光学的手段などによって液体試料の液面を検出することでノズルの移動量を制御している。
【0004】
例えば特許文献1に開示されているようにコイルで構成された発振回路をノズルに電気的に連結した液面検出手段がある。これによれば、電気抵抗が大きいディスポーザブルなノズルチップ(以下、「ディスポチップノズル」という)でも精確なサンプリングを行うことができ、サンプル間におけるキャリーオーバーの回避が図られる。
【特許文献1】特開平9−133686号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような発振回路にコイルを用いた液面検出装置では、コイルの電気磁気的な共振現象によって放出される磁界がノイズとなり、他の機器を誤作動させる要因となる問題がある。また、ノズルの移動やノズル周辺にある物の移動などにより、コイルからの磁界が通過する磁路の透磁率が変化すると誤検知もしやすくなり、周辺にある金属などを遠ざけて配置する必要が生じる。
【0006】
このため、従来では磁気シールドを施すことによって磁気ノイズを遮断しなければならないことや、コイル自体も大きいことから、小型化が制限されてしまう大きな要因となっていた。

【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者等は上記課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明を成し得たものであり、その特徴とするところは、液面検出装置にあっては、少なくとも先端部が導電性を有し容器中の液体試料を採取するノズルに発振回路を電気的に接続することにより、該ノズル先端部が接液したときの電気信号の変化により該液体試料の液面を検知する装置であって、該発振回路をセラミック発振子により構成し、該ノズル接液時における該発振回路の電流変化を検知することにある。
【0008】
また、試料吸引装置にあっては、CMOS−ICによるセラミック発振回路を実装した基板をホルダ内部に収納すると共に、該ホルダの一端にノズルチップ取付部を設けたことにある。
【0009】
本発明における、液体試料に浸漬し該試料を定量的に分取するノズルとしては、少なくともその先端部を導電性材料で形成する。このノズルと発振回路を電気的に接続し、ノズルの導電性を有する部分の接液によって液面を検出する。ノズルとしては、ディスポチップノズルを使用することも可能であり、ノズルチップ取付部と発振回路を電気的に接続する。
【0010】
本発明では、磁気などによるノイズを極力低減すると共に、安定した発振を目的とするため、セラミック発振子を用いる。セラミック発振子は、安価でしかも小型であり、発振の立ち上がりの面において水晶振動子に比して優れている。また、無調整で精度、信頼性の面でCR、LC発振回路より優れた特性を有している。
【0011】
発振回路としては、コルピッツ発振回路におけるコイルをセラミック発振子に置換して構成するが、CMOS−IC(インバータ)と組み合わせることで、極めて安定度の高い発振出力を得ることができる。本発明は、このような発振回路において、インピーダンス値が変化することによる増幅回路の電源電流の変化を検出することで、ノズルの接液による液面検出を図っている。
【0012】
液面検出装置により試料の液面を検出した後、試料吸引装置によって試料の吸引が行われる。上述したCMOS−ICによるセラミック発振回路を実装したプリント基板は、φ10mm以下のパイプ状のホルダに収納することも可能である。本発明に係る試料吸引装置は、このホルダの一端に導電性素材で形成したノズルチップ取付部を設け、該ノズルチップ取付部にノズルチップを着脱する構造とし、液面検出装置を内蔵したサンプリングノズルとして構成する。ノズルチップ取付部には、サンプリングポンプに連結して試料を吸引するチューブの接続部と、基板との電気的接続部が設けられる。

【発明の効果】
【0013】
本発明に係る液面検出装置は、セラミック発振子を用いた発振回路と導電性を有するノズルを電気的に接続し、該ノズルが液面に触れたときのインピーダンス変化による電源電流の変化を検出して液面検出することにより、従来のコイルを用いた発振回路のように磁界によるS/Nの低下が無く、液面検出性能(S/N)が向上する。また、電流による信号伝達はノイズに強く、電源電流の変化を液面検出信号として、ノズルの移動を制御する制御回路までノイズに影響されることなく送ることができる。さらに、比較的大型のコイルを使わないことと、磁気シールドが不要となることから、ノズル本体の内部に回路を組み込むことも可能となる。
【0014】
本発明に係る試料吸引装置は、液面検出装置を内蔵したサンプリングノズルとして構成したことにより、小型化が図れるのみならず、液面検出装置を液面検出部位の近傍に配することでノイズの影響を受けにくくできるなど極めて有益な効果を有するものである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、セラミック発振子による発振回路における、ノズルの接液によるインピーダンス変化によって生じる電源電流の変化を検出することにより、液面検出性能が安定よく向上し、しかも小型化が達成できる。

【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係る液面検出装置1の一例を示し、ディスポチップノズル2と、セラミック発振子を用いた発振回路3を電気的に接続した構造である。ディスポチップノズル2は、ホルダ21に取り換え可能な導電性のノズルチップ22を取り付けたもので、このノズルチップ22の先端が接液すると、これを液面として検出する。
【0017】
発振回路3は、図2に示すようにCMOS−IC(インバータ)、セラミック発振子、コンデンサ(C、C)及び抵抗(R1:帰還抵抗、R:ダンピング抵抗)により構成している。CMOS−ICによる増幅回路の特性として、入力電圧VINが0V又はVDDに近いとき、電源電流IDDは非常に小さい。しかし、入力電圧VINがスレッショルド付近(中間電位)のとき、CMOS−ICのトランジスタ[Q、Q:図3(a)]が両方ONとなって貫通電流が流れる状態となり、図3(b)に示すように電源電流IDDが増加する。
【0018】
この回路3のA点における電圧波形は、通常図4に示す実線の正弦波であるが、ノズルチップ22がサンプル容器5の液体試料4に接液すると、図の点線のように変化する。この結果、電圧波形の中間電位を横切る時間が変化し、電源電流の平均値が図5のように増加若しくは減少する。この電源電流の増減を検出することで安定した極めて精確な接液を検出できることとなる。

【実施例2】
【0019】
本発明に係る試料吸引装置10は、図6に示すように発振回路3を実装した幅4.5mm、長さ42mmのプリント基板23をホルダ21に収納したものである。本例のホルダ21は、外径φ8mm、内径φ5.5mm、長さが110mmの円筒形状であり、一端にはステンレス製のノズルチップ取付部24を設けている。このノズルチップ取付部24に導電性のノズルチップ22を着脱可能に取り付ける。ノズルチップ取付部24には、液体試料4を吸引するタイゴンチューブなどのチューブ接続部25及び基板23の発振回路3と接続するコネクタ接続部26が設けられる。基板23には、図のように発振回路U1(3)、静電気保護回路DM1、DM2、電源ノイズを低減させるバイパスコンデンサを実装している。本例では、コンデンサ内蔵型のセラミック発振子を用いており、これらの回路を図7に示す。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る液面検出装置の一例を示す概略正面図である。(実施例1)
【図2】本発明に係る液面検出装置における発振回路の一例である。
【図3】(a)はCMOS−ICの等価回路、(b)はCMOS−ICの中間電位における電源電流を示すグラフである。
【図4】図2に示す発振回路のA点における電圧波形の変化を示すグラフである。
【図5】CMOS−ICの中間電位における電源電流の増減を示すグラフである。
【図6】本発明に係る試料吸引装置の一例を示す正面図、及びセラミック発振回路等を実装した基板の平面図である。(実施例2)
【図7】図6の基板に実装した液面検出装置の回路図である。
【符号の説明】
【0021】
1 液面検出装置
10 試料吸引装置
2 ディスポチップノズル
21 ホルダ
22 ノズルチップ
23 プリント基板
24 ノズルチップ取付部
25 チューブ接続部
26 コネクタ接続部
3 発振回路
4 液体試料
5 サンプル容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端部が導電性を有し容器中の液体試料を採取するノズルに発振回路を電気的に接続することにより、該ノズル先端部が接液したときの電気信号の変化により該液体試料の液面を検知する装置であって、該発振回路をセラミック発振子により構成し、該ノズル接液時における該発振回路の電流変化を検知することを特徴とする液面検出装置。
【請求項2】
発振回路はCMOS−ICにより構成し、ノズル接液時における該CMOS−ICの電源電流の変化を検知する請求項1記載の液面検出装置。
【請求項3】
CMOS−ICによるセラミック発振回路を実装した基板をホルダ内部に収納すると共に、該ホルダの一端にノズルチップ取付部を設けたことを特徴とする試料吸引装置。
【請求項4】
ノズルチップ取付部は、試料吸引チューブと基板の接続部を設けた請求項3記載の試料吸引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−64661(P2007−64661A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247595(P2005−247595)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(591029518)テラメックス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】