説明

液面浮遊異物検査方法及び装置

【課題】大掛かりな搬送装置を用いて異物を移動させたり異物を液中に引き込んだりする必要がなく、プルタブの背後の液面付近に異物がある場合にも、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所にある異物を精度良く検出することができる液面浮遊異物検出方法を提供する。
【解決手段】口部をプルタブ付キャップ2で密封した容器1内に充填された液体Lの液面Le又は液面L付近に浮遊した異物を検出する検査方法において、容器1の下方に配置された照明5によって容器1内を容器底面側から照明し、容器1内の液体Lを介して液面Leを照明し、液面Leに到達する光の一部を液面と容器1内面が接触する部位で液面が盛り上がった箇所に入射させ、この入射光を前記盛り上がった箇所の液面Leと気体との界面で反射させ、界面で反射した反射光を容器1の側方に配置されたCCDカメラ6により撮像する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面浮遊異物検査方法及び装置に係り、特に容器内に充填された液体の液面付近に浮遊した異物を検出する液面浮遊異物検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から清酒等の飲料を充填するためにコップ兼用のガラス製の広口容器(広口壜)が多用されている。この円筒容器状の広口容器の口部は、アルミ等の金属板からなるキャップ(蓋)により密封されている。そして、広口容器のキャップ(蓋)には、開栓を容易にするために指を掛けて引き上げるためのプルタブやプルリングと称される略リング状の部分が形成されている。この略リング状の部分は、キャップ(蓋)の外周縁から広口容器の外周面に沿って下方に延び、容器に充填された飲料の液面より下方まで延びている。
【0003】
近年、食品衛生管理上の観点から、清酒等の飲料を充填した広口容器についても、飲料に混入した異物を作業員の目視によらず自動的に検出することができる検査装置の需要が増加している。この場合、液中にある異物や容器の底部に沈殿した異物を検査する検査装置は、多数存在し、検査方法も確立されてきている。
【0004】
一方、液面付近に浮遊した異物を検査する場合には、液面を静止させた状態で検査することが難しいと考えられていたため、特開2005−17004号公報(特許文献1)等において液体が充填されているガラス瓶(実瓶)をロータリー式検査テーブルの載置部によって円環状の経路に沿って高速で搬送することにより、遠心力で液面が斜めにせり上がってくると共に、液面のせり上がりに遅れて、液面浮遊異物が液面の低い部分から高い部分に移動(及び傾斜前に高い部分に存在した異物が低い方へ移動)する状態となり、投光手段を、検査テーブルの載置部より内側に配置すると共に、撮像手段を、実瓶を介して投光手段の反対側に対向して配置し、高速で搬送されてくる実瓶の傾斜した液面の上方へ移動する液面浮遊異物を捉えるようにした検査装置が提案されている。
【0005】
また、スピン搬送装置を用いて容器を高速で回転させ、遠心力によって液面に浮遊した異物を液中に引き込んだところを撮像することにより異物を検出するようにした検査装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−17004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したようにロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を使用して液面を傾斜させて異物を移動させ又は遠心力によって異物を液中に引き込む等の手段をとっても、必ずしも異物が予期したように移動するわけではなく、液面付近に浮遊した異物を精度良く検出することができないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明者らは、ロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を用いることなく、液面付近に浮遊した異物を精度良く検出することができる検査方法及び装置について鋭意研究を行ったものである。
まず、本発明者らは、液体を充填した容器を挟むように照明とカメラとを対向させて配置し、容器を傾斜させたり回転させたりすることなく液面を静止させた状態で透過照明により異物が浮遊した液面を撮像する実験を繰り返し行った。この実験の結果、液面付近に浮遊した異物を検査する際、液体の表面張力及び液体と容器壁面との付着力の影響で液面と容器内面が接触する部位で液面が急激に盛り上がり、この盛り上がった箇所が暗い画像になり、この盛り上がった箇所の暗い画像部分の中に液面に浮遊した異物が隠れてしまい、異物を検出することができないという現象を見出したものである。
【0009】
本発明者らは、この現象を解明した結果、以下の理由であることを見出したものである。
容器1の側面から光を照射した場合には、図10に示すように、光はガラス製の容器壁面を通過し容器内に入射する。容器内に入射した光の一部は、ガラス壁面にせり上がった液体部分に入射し、液体及び液体に接触しているガラス壁面を通過し、容器壁面から空気中へ出る。容器内の空気中から液体に入射するときは入射角(θ1)が屈折角(θ2)より大きいため、光は図10に示すように下方に屈折する。液体及びガラス壁面の屈折率はわずかな差であるので液体及びガラス壁面中では光は直進に近い光路をとる。ガラス壁面から空気中に出るときには、ガラス壁面における入射角(θ3)より空気中に出るときの屈折角(θ4)の方が大きいため、容器1を出た光はさらに下方に進み、カメラ6には入射しない。この結果、液面付近に浮遊した異物を検査する際、液面と容器内面が接触する部位で液面が急激に盛り上がり、この盛り上がった箇所が暗い画像になり、この盛り上がった箇所の暗い画像部分の中に液面に浮遊した異物が隠れてしまい、異物を検出することができない。そのため、異物が液面の中央部分にあったとしても、異物が盛り上がった箇所の暗い画像部分の中に隠れてしまうようなサイズの場合には異物を検出することができない。
【0010】
また、広口容器のキャップ(蓋)には、プルタブ又はプルリングと称される略リング状の部分が形成されており、この略リング状の部分は液面より下方まで延びているため、この略リング状の部分の背後に異物がある場合には略リング状の部分と異物とを判別できないという問題点もある。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、ロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を用いて異物を移動させたり異物を液中に引き込んだりする必要がなく、プルタブ又はプルリングと称される略リング状の部分の背後の液面付近に異物がある場合にも、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所にある異物を精度良く検出することができる液面浮遊異物検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の液面浮遊異物検査方法は、口部をプルタブ付キャップで密封した容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査方法において、容器の下方に配置された照明によって容器内を容器底面側から照明し、容器内の液体を介して液面を照明し、前記液面に到達する光の一部を液面と容器内面が接触する部位で液面が盛り上がった箇所に入射させ、この入射光を前記盛り上がった箇所の液面と気体との界面で反射させ、前記界面で反射した反射光を容器の側方に配置されたCCDカメラにより撮像することを特徴とする。
【0013】
本発明の液面浮遊異物検査装置は、口部をプルタブ付キャップで密封した容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査装置において、容器の下方に配置され、容器内を容器底面側から照明する照明と、容器の側方に配置されたCCDカメラとを備え、前記照明によって容器内を容器底面側から照明し、容器内の液体を介して液面を照明し、前記液面に到達する光の一部を液面と容器内面が接触する部位で液面が盛り上がった箇所に入射させ、この入射光を前記盛り上がった箇所の液面と気体との界面で反射させ、前記界面で反射した反射光を容器の側方に配置されたCCDカメラにより撮像することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、容器の下方に配置された照明によって容器内を容器底面側から照明すると、容器内に入射した光は液面に到達し、液面に到達する光の一部は液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に入射し、この入射光が前記盛り上がった箇所の液面と気体との界面で反射し、この反射光がCCDカメラに入射して撮影されるため、盛り上がった箇所が明るい画像部分になり、この盛り上がった箇所に異物が存在する場合には、異物は明るい背景の中に暗い影となって映り、この暗い影を判別することにより、異物を検出することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記容器の上方に第2の照明を配置し、第2の照明により前記プルタブを照明することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第2の照明からの拡散光は、キャップの外周縁から垂下するプルタブを照明する。その結果、プルタブが明るく照明される。このプルタブの明るさは、CCDカメラの撮像素子が明るくなるように調光され、画像中ではこの明るい部分が白く映ってしまう状態になる。このようにプルタブの部分が白い画像部分になっているので、画像処理装置による画像処理により、プルタブと暗い影として映っている異物とを容易に判別することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記容器の上方に拡散板を配置し、前記照明から拡散板に直接に光を入射させ、拡散板により反射した反射光により前記キャップの外周面およびプルタブを照明することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、照明からの拡散光の一部は、容器の外周側を通って容器の上方にある拡散板に入射し、拡散板は白色拡散板からなり入射光を乱反射させることが可能であるため、照明からの照明光を乱反射して反射光によりキャップの外周縁から垂下するプルタブを照明する。その結果、プルタブが明るく照明される。このプルタブの明るさは、CCDカメラの撮像素子が明るくなるように調光され、画像中ではこの明るい部分が白く映ってしまう状態になる。このようにプルタブの部分が白い画像部分になっているので、画像処理装置による画像処理により、プルタブと暗い影として映っている異物とを容易に判別することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様は、前記盛り上がった箇所に存在する異物を前記界面で反射した反射光とともに前記CCDカメラにより撮像することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記異物が遮光性異物である場合には、前記CCDカメラにより得られた画像中では、反射光による画像部分が明るく、異物による画像部分が暗くなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記異物が透過性異物である場合には、前記CCDカメラにより得られた画像中では、反射光による画像部分と比べて、異物による画像部分が異物内部の屈折により暗くなるか、または集光効果により周囲よりさらに明るくなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、容器の胴部を保持し、容器を前記照明の上方にある搬送経路に沿って搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)本発明によれば、容器の下方に配置された照明によって容器内を容器底面側から照明すると、容器内に入射した光は直接または容器内面で反射して液面に集光し、液面に集光した光の一部は液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に入射し、この入射光が前記盛り上がった箇所の液面と気体との界面で反射し、この反射光がCCDカメラに入射して撮影されるため、盛り上がった箇所が明るい画像部分になり、この盛り上がった箇所に異物が存在する場合には、異物は明るい背景の中に暗い影となって映り、この暗い影を判別することにより、異物を検出することができる。
(2)ロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を用いて異物を移動させたり異物を液中に引き込んだりする必要がなく、液面が静止した状態において、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所にある異物を検出することができる。
(3)プルタブには、照明(又は拡散板)から光を入射させ、この箇所の明るさはCCDカメラの撮像素子が明るくなるように調光しているため、画像中ではこの明るい部分が真っ白に映ってしまう状態になる。このようにプルタブの部分が白い画像部分になっているので、異物がプルタブの背後にあってプルタブと重なっている場合にも、異物がプルタブから露出して外側に出ていれば、プルタブと暗い影として映っている異物とを容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る液面浮遊異物検査装置の基本構成を示す正面図である。
【図2】図2は、図1に示すように構成された液面浮遊異物検査装置の作用を説明する図である。
【図3】図3は、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に底面照明5からの光が到達し、この盛り上がった箇所で反射した光がCCDカメラにより撮影される場合の光路を示す図である。
【図4】図4は、図2に示す照明撮像系を用いて撮影した画像である。
【図5】図5は、図2に示す照明撮像系を用いて撮影した別の画像である。
【図6】図6は、図1に示すように構成された液面浮遊異物検査装置の作用を説明する図である。
【図7】図7は、図6に示す照明撮像系を用いて撮影した画像である。
【図8】図8は、図6に示す照明撮像系を用いて撮影した画像である。
【図9】図9は、容器を直線搬送しながら異物検査を行うことができる液面浮遊異物検査装置の具体的構成を示す図であり、液面浮遊異物検査装置の正面図である。
【図10】図10は、容器側面から容器に光を照射した場合の光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る液面浮遊異物検査方法及び装置の実施形態について図1乃至図9を参照して説明する。図1乃至図9において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係る液面浮遊異物検査装置の基本構成を示す正面図である。図1に示すように、容器1は、無色透明の円筒容器状のガラス製の広口容器からなっており、清酒等の飲料としての液体Lが充填されている。容器1の口部は、アルミ等の金属板からなるキャップ(蓋)2により密封されている。キャップ(蓋)2には、開栓を容易にするために指を掛けて引き上げるためのプルタブやプルリングと称される略リング状の部分3が形成されている。以下、この略リング状の部分をプルタブと総称する。プルタブ3は、キャップ2の外周縁から容器1の外周面に沿って下方に延び、容器1に充填された液体Lの液面Leより下方まで延びている。キャップ2の裏面には、容器1の口部頂面に密着してシールを行うためのリング状パッキンが貼着されている。キャップ2はアルミ等の金属板からなるが、キャップ裏面には金属板素地に白色の光沢のあるカラーコーティングが施こされている。またリング状パッキンも白色である。
【0023】
容器1の下方には、容器1内を容器底面側から照明する底面照明5が配置されている。底面照明5は、容器1の底面より大きい面積をもった円板状または平板状をなし、多数のLEDを配列することにより構成された拡散照明からなっている。また、容器1の側方には、容器1を挟むようにCCDカメラ6と側面照明9が対向して配置されている。すなわち、CCDカメラ6と側面照明9とは、円周方向に180°の間隔で配置されている。
【0024】
一方、容器1の上方には、容器1を上方から照明する上部照明7が配置されている。上部照明7はキャップ2の直上に配置されており、キャップ2の外周縁から垂下するプルタブ3を照明するようになっている。上部照明7は、キャップ(蓋)2より大きい面積をもった円板状または平板状をなし、多数のLEDを配列することにより構成された拡散照明からなっている。なお、上部照明7は、底面照明5からの照明光を乱反射して反射光により容器1を照明するための拡散板に代えてもよい。この場合、拡散板7は、例えば、白色拡散板からなり、底面照明5からの照明光を乱反射して反射光によりキャップ2の外周縁から垂下するプルタブ3を照明する。そして、拡散板7の上面に白色の反射板を配置し、底面照明5からの照明光のごく一部が拡散板7を透過しても白色の反射板で反射させて、光を容器側に戻して容器側を照明するようにしてもよい。
【0025】
前記CCDカメラ6の光軸6xは、容器1内の液体Lの液面Leと概略一致しており、容器1内を容器側面側から撮影するように構成されている。CCDカメラ6は、画像を処理する画像処理装置(図示せず)に接続されている。
【0026】
次に、図1に示すように構成された液面浮遊異物検査装置の作用を図2および図3を参照して説明する。
容器1の上方に配置された上部照明(又は拡散板)7の作用効果を検証するために、上部照明7を設置しない場合と上部照明7を設置した場合とを分けて説明する。
【0027】
1)上部照明(又は拡散板)7を設置しない場合
図2に示すように、底面照明5からの拡散光は、容器1の底面1aに入射し、底面1aを透過して容器1内に入射する。容器1内に入射した光は、液中を進行してキャップ(蓋)2の裏面に到達する。キャップ2の裏面は白色で光沢があり光を乱反射することが可能であるため、乱反射によりあたかも蓋裏面で照明が点灯しているような状態になる。すなわち、底面照明5からの光とキャップ2の裏面で乱反射した光とによって、容器1内の液面および液中は明るく照明される。液体の表面張力および液体と容器壁面との付着力の影響で液面と容器内面が接触する部位で液面が急激に盛り上がるが、この液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に底面照明5からの光が入射し、この盛り上がった箇所の円弧状の界面(液体と気体の境界の面)で反射し、反射光がCCDカメラ6により撮影される。したがって、盛り上がった箇所がほぼ均一に明るい画像部分になる。
【0028】
また、側面照明9からの拡散光は、容器1の側面を透過して容器1内に入射する。容器1内に入射した光は、所定の屈折率で、液面上の空気中及び液面中を通過し、容器の外に出る。このため底面照明5だけでは暗かった部分、すなわち液面と容器内面が接触して盛り上がった部分の下側も側面照明9により明るく照らされる。以上のように、底面照明5と側面照明9を調光することで、液面と容器内面が接触して盛り上がった部分から、その下側の液中部分までを同じように明るくすることができるため、液面とその付近にある異物の画像処理も容易となる。
【0029】
図3は、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に底面照明5からの光が到達し、この盛り上がった箇所で反射した光がCCDカメラ6により撮影される場合の光路を示す図である。
図3に示すように、液面と容器内面が接触する部位では液面が急激に盛り上がっているが、この盛り上がった箇所に底面照明5からの光が到達し、その光の一部は円弧状の界面(液体と気体の境界の面)で反射し、反射光は容器1を透過してCCDカメラ6に入射する。すなわち、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に底面照明5からの光が入射し、この盛り上がった箇所で反射した光がCCDカメラ6により撮影され、撮像画面上では、盛り上がった箇所が明るい画像部分になる。
【0030】
図4は、図2に示す照明撮像系を用いて撮影した画像である。図4に示すように、CCDカメラ6で撮影した画像では、盛り上がった箇所が明るい画像部分になっている。したがって、この盛り上がった箇所に異物(例えば、黒っぽい異物等の遮光性異物)が存在する場合には、異物は明るい背景の中に暗い影となって映る。図4には、明るい背景の中に小さい矩形状の暗い影が明瞭に映っている。画像処理装置により、この暗い影を判別することにより、異物を検出することができる。
図4に示す画像においては、プルタブ3も暗い影となって映っている。図4の場合、プルタブの画像部分と矩形状の暗い影として映っている画像部分とは離間しているため、画像処理装置による画像処理によりプルタブと異物とを判別できる。
【0031】
図5は、図2に示す照明撮像系を用いて撮影した別の画像である。図5に示すように、CCDカメラ6で撮影した画像では、盛り上がった箇所が明るい画像部分になっている。そして、明るい背景の中に小さい矩形状の暗い影が映っているが、この矩形状の黒い影はプルタブの画像部分と重なってしまっている。このように、異物がプルタブの裏側に入ってしまうと、画像上は異物は矩形状の暗い影として映っているが、画像処理では異物とプルタブとを判別することができない。
【0032】
2)上部照明(又は拡散板)7を設置した場合
図6に示すように、底面照明5からの拡散光は、容器1の底面1aに入射し、底面1aを透過して容器1内に入射する。容器1内に入射した光は、液中を進行してキャップ(蓋)2の裏面に到達する。キャップ2の裏面は白色で光沢があり光を乱反射することが可能であるため、乱反射によりあたかも蓋裏面で照明が点灯しているような状態になる。すなわち、底面照明5からの光とキャップ2の裏面で乱反射した光とによって、容器1内の液面および液中は明るく照明される。液体の表面張力および液体と容器壁面との付着力の影響で液面と容器内面が接触する部位で液面が急激に盛り上がるが、この液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に底面照明5からの光が入射し、この盛り上がった箇所の円弧状の界面(液体と気体の境界の面)で反射し、反射光がCCDカメラ6により撮影される。したがって、盛り上がった箇所がほぼ均一に明るい画像部分になる。底面照明5からの光がCCDカメラ6に到達する光路は、図3に示したとおりである。
【0033】
また、側面照明9からの拡散光は、容器1の側面を透過して容器1内に入射する。容器1内に入射した光は、所定の屈折率で、液面上の空気中及び液面中を通過し、容器の外に出る。このため底面照明5だけでは暗かった部分、すなわち液面と容器内面が接触して盛り上がった部分の下側も側面照明9により明るく照らされる。以上のように、底面照明5と側面照明9を調光することで、液面と容器内面が接触して盛り上がった部分から、その下側の液中部分までを同じように明るくすることができるため、液面とその付近にある異物の画像処理も容易となる。
【0034】
一方、上部照明7からの拡散光は、キャップ2の外周縁から垂下するプルタブ3を照明する。その結果、キャップ2の外周縁から垂下するプルタブ3が明るく照明された状態になる。このプルタブ3の明るさは、CCDカメラの撮像素子が明るくなるように調光されている。これは、容器1の下方の底面照明5の明るさを調整し、かつ上部照明7の明るさを調整することにより行う。上部照明でなく拡散板7の場合には、容器1の下方の底面照明5の明るさを調整し、かつ拡散板7の材質および構造に所望のものを選定することにより行う。
【0035】
図7および図8は、図6に示す照明撮像系を用いて撮影した画像である。図7および図8に示すように、CCDカメラ6で撮影した画像では、盛り上がった箇所が明るい画像部分になっており、この盛り上がった箇所に異物(例えば、黒っぽい異物等の遮光性異物)が存在する場合には、異物は明るい背景の中に暗い影となって映る。一方、プルタブ3には、上部照明7から光が入射し、この箇所の明るさはCCDカメラ6の撮像素子が明るくなるように調光されているため、画像中ではこの明るい部分が白く映ってしまう状態になる。このようにプルタブの部分が白い画像部分になれば、画像処理装置による画像処理により、プルタブと矩形状の暗い影として映っている異物とを容易に判別することができる。
【0036】
図7に示す画像では、プルタブの画像部分と矩形状の暗い影として映っている異物による画像部分とはやや離間しているが、図8に示す画像では、プルタブの画像部分と矩形状の暗い影として映っている異物による画像部分とが重なっている。図7および図8のいずれの場合も、プルタブの部分が白い画像になっているので、画像処理によりプルタブと矩形状の暗い影として映っている異物とを判別することができる。図8では、異物がプルタブの背後にあってプルタブと重なっているが、異物がプルタブから露出して外側に出ているので、プルタブと暗い影として映っている異物とを判別することができる。
【0037】
次に、図1に示す基本概念を具体化した装置であって、容器1を直線搬送しながら異物検査を行うことができる液面浮遊異物検査装置について説明する。
図9は、容器を直線搬送しながら異物検査を行うことができる液面浮遊異物検査装置の具体的構成を示す図であり、液面浮遊異物検査装置の正面図である。図9に示すように、液面浮遊異物検査装置は、容器1を直線搬送する左右一対の搬送装置10,10を備えており、容器1は、1対の搬送装置10,10の搬送ベルト11,11により胴部が挟持された状態で紙面と直交する方向に搬送されるようになっている。搬送ベルト11,11は、搬送方向の前後に設けられた一対のプーリ(図示せず)にそれぞれ巻回されており、プーリが回転することにより、搬送ベルト11,11は容器1を挟持した状態で同一速度で走行するようになっている。
【0038】
容器1の搬送経路の下方には、容器1内を容器底面側から照明する底面照明5が配置されている。底面照明5は、容器1の底面より大きい面積をもった円板状または平板状をなし、多数のLEDを配列することにより構成された拡散照明からなっている。また、容器1の側方には、容器1を挟むようにCCDカメラ6と側面照明9が対向して配置されている。すなわち、CCDカメラ6と側面照明9とは、円周方向に180°の間隔で配置されている。
【0039】
一方、容器1の上方には、容器1を上方から照明する上部照明7が配置されている。上部照明7はキャップ2の直上に配置されている。上部照明7は、キャップ(蓋)2より大きい面積をもった円板状または平板状をなし、多数のLEDを配列することにより構成された拡散照明からなっている。なお、上部照明7は、底面照明5からの照明光を乱反射して反射光により容器1を照明するための拡散板に代えてもよい。
【0040】
前記CCDカメラ6の光軸6xは、容器1内の液体Lの液面Leと概略一致しており、容器1内を容器側面側から撮影するように構成されている。CCDカメラ6は、画像を処理する画像処理装置(図示せず)に接続されている。
【0041】
図9に示すように構成された液面浮遊異物検査装置において、液体Lが充填された容器1は、一対の搬送ベルト11,11により挟持されて搬送されている間に底面照明5の上方を通過する。容器1が底面照明5の上方を通過する間に、容器1内が照明され、液面LeがCCDカメラ6により撮影される。容器1内の液面に浮遊した異物を検出するメカニズムおよびプルタブ3を白くさせるメカニズムは、図6において説明したとおりである。
【0042】
底面照明5および上部照明7は、白色光等の可視光であってもよいし、赤外光であってもよい。
また、図4乃至図8では、黒い遮光性異物を撮像する場合を例示したが、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所に透過性異物がある場合も撮像することができる、この場合、透過性異物は、盛り上がった箇所が明るくなった画像部分と比べて、異物内部の屈折により暗い画像部分として映るか、または集光効果によりさらに明るい画像部分として映る。
さらに、検出対象の異物によっては、カラーCCDカメラを用いてもよい。異物が薄い黄色などの場合には、コントラストの違いでの判別が困難であるため、白黒カメラよりもカラーカメラが有効である。また、照明の色、明るさを適宜調整することなども背景と異物の間にコントラストをつけるために有効である。
【0043】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
1a 底面
2 キャップ(蓋)
3 略リング状の部分(プルタブ)
5 底面照明
6 CCDカメラ
6x 光軸
7 上部照明
9 側面照明
10 搬送装置
11 搬送ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部をプルタブ付キャップで密封した容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査方法において、
容器の下方に配置された照明によって容器内を容器底面側から照明し、容器内の液体を介して液面を照明し、
前記液面に到達する光の一部を液面と容器内面が接触する部位で液面が盛り上がった箇所に入射させ、この入射光を前記盛り上がった箇所の液面と気体との界面で反射させ、
前記界面で反射した反射光を容器の側方に配置されたCCDカメラにより撮像することを特徴とする液面浮遊異物検査方法。
【請求項2】
前記容器の上方に第2の照明を配置し、第2の照明により前記プルタブを照明することを特徴とする請求項1記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項3】
前記容器の上方に拡散板を配置し、前記照明から拡散板に直接に光を入射させ、拡散板により反射した反射光により前記プルタブを照明することを特徴とする請求項1記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項4】
前記盛り上がった箇所に存在する異物を前記界面で反射した反射光とともに前記CCDカメラにより撮像することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに一項に記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項5】
前記異物が遮光性異物である場合には、前記CCDカメラにより得られた画像中では、反射光による画像部分が明るく、異物による画像部分が暗くなることを特徴とする請求項4記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項6】
前記異物が透過性異物である場合には、前記CCDカメラにより得られた画像中では、反射光による画像部分と比べて、異物による画像部分が異物内部の屈折により暗くなるか、または集光効果により周囲よりさらに明るくなることを特徴とする請求項4記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項7】
容器の胴部を保持し、容器を前記照明の上方にある搬送経路に沿って搬送することを特徴とする請求項1記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項8】
口部をプルタブ付キャップで密封した容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査装置において、
容器の下方に配置され、容器内を容器底面側から照明する照明と、
容器の側方に配置されたCCDカメラとを備え、
前記照明によって容器内を容器底面側から照明し、容器内の液体を介して液面を照明し、
前記液面に到達する光の一部を液面と容器内面が接触する部位で液面が盛り上がった箇所に入射させ、この入射光を前記盛り上がった箇所の液面と気体との界面で反射させ、
前記界面で反射した反射光を容器の側方に配置されたCCDカメラにより撮像することを特徴とする液面浮遊異物検査装置。
【請求項9】
前記容器の上方に第2の照明を配置し、第2の照明により前記キャップの外周面およびプルタブを照明するとともに前記キャップの直下の容器外周面を照明することを特徴とする請求項8記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項10】
前記容器の上方に拡散板を配置し、前記照明から拡散板に直接に光を入射させ、拡散板により反射した反射光により前記キャップの外周面およびプルタブを照明するとともに前記キャップの直下の容器外周面を照明することを特徴とする請求項8記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項11】
容器の胴部を保持し、容器を前記照明の上方にある搬送経路に沿って搬送する搬送装置を設置したことを特徴とする請求項8記載の液面浮遊異物検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−127987(P2011−127987A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286228(P2009−286228)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】