説明

液面浮遊異物検査方法及び装置

【課題】大掛かりな搬送装置を用いて異物を移動させたり異物を液中に引き込んだりする必要がなく、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所にある異物を精度良く検出することができる液面浮遊異物検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】容器1内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査方法において、容器1の首部または肩部の斜め上方に配置された照明3から、照明光を前記容器1内の液面Sに照射し、容器の側方に配置されたカメラ4によって、前記液面又は液面付近からの光を撮像し、前記カメラ4には、液面又は液面付近に異物が存在する場合には異物からの反射光が入射し、異物が存在しない場合には入射する光がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面浮遊異物検査方法及び装置に係り、特に容器内に充填された液体の液面付近に浮遊した異物を検出する液面浮遊異物検査方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品衛生管理上の観点から、日本酒や栄養ドリンク等の飲料を充填したガラス製の容器について、飲料に混入した異物を作業員の目視によらず自動的に検出することができる検査装置の需要が増加している。この場合、液中にある異物や容器の底部に沈殿した異物を検査する検査装置は、多数存在し、検査方法も確立されてきている。
【0003】
一方、液面付近に浮遊した異物を検査する場合には、液面を静止させた状態で検査することが難しいと考えられていたため、特開2005−17004号公報(特許文献1)等において液体が充填されているガラス瓶(実瓶)をロータリー式検査テーブルの載置部によって円環状の経路に沿って高速で搬送することにより、遠心力で液面が斜めにせり上がってくると共に、液面のせり上がりに遅れて、液面浮遊異物が液面の低い部分から高い部分に移動(及び傾斜前に高い部分に存在した異物が低い方へ移動)する状態となり、投光手段を、検査テーブルの載置部より内側に配置すると共に、撮像手段を、実瓶を介して投光手段の反対側に対向して配置し、高速で搬送されてくる実瓶の傾斜した液面の上方へ移動する液面浮遊異物を捉えるようにした検査装置が提案されている。
【0004】
また、スピン搬送装置を用いて容器を高速で回転させ、遠心力によって液面に浮遊した異物を液中に引き込んだところを撮像することにより異物を検出するようにした検査装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−17004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようにロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を使用して液面を傾斜させて異物を移動させ又は遠心力によって異物を液中に引き込む等の手段をとっても、必ずしも異物が予期したように移動するわけではなく、液面付近に浮遊した異物を精度良く検出することができないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明者らは、ロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を用いることなく、液面付近に浮遊した異物を精度良く検出することができる検査方法及び装置について鋭意研究を行ったものである。
【0008】
まず、本発明者らは、容器(ガラス壜)をベルトで挟持して持ち上げ、容器の底部から照明を当て、容器の側方からカメラで撮影することによって液面縁部を光らせて異物を検出する実験を行った。実験の結果、この方法で液面の異物が検出できるのは容器が透明容器であるか着色していても色も薄い容器の場合であり、茶色の容器や黒色容器など濃い色の着色容器の場合には、この方法では液体の液面付近に浮遊した異物を検出するのが困難であった。透明容器に液体を充填し、異物として0.5mm角の発泡スチロール片を使用し、この方法により得られた画像を図7及び図8に示す。
図7に示すように、液面に浮遊する異物が中央部にあるような場合には、白く写っている液面縁部に異物が黒い点として写るため異物の検出が可能であるが、図8に示すように、異物が中央部でなく横にずれたりすると、一台のカメラ当たりの検査可能エリアが狭いため、異物は背景の黒い画像部分に入り込み検出が困難である。
【0009】
次に、本発明者らは、液体を充填した容器を挟むように照明とカメラとを対向させて配置し、容器を傾斜させたり回転させたりすることなく液面を静止させた状態で透過照明により異物が浮遊した液面を撮像する実験を行った。この実験の結果、液面付近に浮遊した異物を検査する際、液体の表面張力及び液体と容器壁面との付着力の影響で液面と容器内面が接触する部位で液面が急激に盛り上がり、図9に示すように、実際には丸印で示される場所に0.5mm角の発泡スチロール片が存在するにもかかわらず、液面と容器内面が接触する部位で液面が盛り上がった箇所が暗い画像になり、この盛り上がった箇所の暗い画像部分の中に液面に浮遊した発泡スチロール片(異物)が隠れてしまい、異物を検出することができないという現象を見出した。
【0010】
本発明者らは、この現象を解明した結果、以下の理由であることを見出したものである。
容器1の側面から光を照射した場合には、図10に示すように、光はガラス製の容器壁面を通過し容器内に入射する。容器内に入射した光の一部は、ガラス壁面にせり上がった液体部分に入射し、液体及び液体に接触しているガラス壁面を通過し、容器壁面から空気中へ出る。容器内の空気中から液体に入射するときは入射角(θ1)が屈折角(θ2)より大きいため、光は図10に示すように下方に屈折する。液体及びガラス壁面の屈折率はわずかな差であるので液体及びガラス壁面中では光は直進に近い光路をとる。ガラス壁面から空気中に出るときには、ガラス壁面における入射角(θ3)より空気中に出るときの屈折角(θ4)の方が大きいため、容器1を出た光はさらに下方に進み、カメラ4には入射しない。この結果、液面付近に浮遊した異物を検査する際、液面と容器内面が接触する部位で液面が急激に盛り上がり、この盛り上がった箇所が暗い画像になり、この盛り上がった箇所の暗い画像部分の中に液面に浮遊した異物が隠れてしまい、異物を検出することができない。そのため、異物が液面の中央部分にあったとしても、異物が盛り上がった箇所の暗い画像部分の中に隠れてしまうようなサイズの場合には異物を検出することができないという問題点があった。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、ロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を用いて異物を移動させたり異物を液中に引き込んだりする必要がなく、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所にある異物を精度良く検出することができ、また濃色の容器であっても液面に浮遊した異物を精度良く検出することができる液面浮遊異物検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の液面浮遊異物検出方法は、容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査方法において、容器の首部または肩部の斜め上方に配置された照明から、照明光を前記容器内の液面に照射し、容器の側方に配置されたカメラによって、前記液面又は液面付近からの光を撮像し、前記カメラには、液面又は液面付近に異物が存在する場合には異物からの反射光が入射し、異物が存在しない場合には入射する光がないことを特徴とする。
本発明の液面浮遊異物検出装置は、容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査装置において、容器の首部または肩部の斜め上方に配置され、照明光を前記容器内の液面に照射する照明と、容器の側方に配置され、前記液面又は液面付近からの光を撮像するカメラとを備え、前記カメラには、液面又は液面付近に異物が存在する場合には異物からの反射光が入射し、異物が存在しない場合には入射する光がないことを特徴とする。
【0013】
本発明の液面浮遊異物検出方法及び装置によれば、照明からの照明光は、容器の首部に照射され、照射された光の一部は容器の表面で反射して反射光は容器の外部を下方に進行するため、カメラには入射しない。一方、容器の表面で反射せずに容器内に入射した光は、容器内の空気中を進行して液面に照射され、一部の光は液中に入射して下方に進行し、また一部の光は液面で反射して反射光は容器内の空気中を上方へ進行するため、カメラに入射する光はない。
液面に浮遊する異物が存在する場合には、液面に照射された光の一部が異物にあたり、異物表面で乱反射するため、異物からの反射光がカメラに入射する。この場合、異物に照射される光の強度が高いため、異物からの反射光の強度も高く、カメラにより撮影された画像中で、暗い背景の中に異物に相当する画像部分が明るい点(または領域)となる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、前記照明は、容器内に充填された液体の液面を集中して照らすスポットライトであることを特徴とする。
本発明によれば、容器の首部又は肩部の斜め上方から液面に集中して強い光を照射することができるため、容器が濃色容器であっても液面に浮遊する異物の検出が可能となる。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、前記照明は、垂直方向に対する角度が0°から20°の範囲に傾いて配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、照明の位置を、照明からの光が液面に対して垂直に近い角度で入射するように設定している。
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、前記カメラは、カメラの光軸が前記液面の水平線上又は概略水平線上に位置するように配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、カメラは、照明からの光線に対して垂直に近くなるような位置に設置されている。したがって、カメラは、照明からの光が直接入射しないような位置で、また照明からの光が液面で反射して入射しないような位置に設置されている。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記容器の周囲を外乱光が入射しない遮光された雰囲気にすることを特徴とする。
本発明によれば、容器の首部または肩部の斜め上方に配置された照明からの光のみを容器内の液面に入射させることができる。
【0018】
本発明の好ましい態様によれば、前記カメラによって撮像された画像は、液面又は液面付近に異物が存在する場合には暗い背景の画像中に明るい点又は領域がある画像であり、異物が存在しない場合には暗い背景の画像のみであることを特徴とする。
通常の画像処理にあっては、容器の検査部分の輪郭(例えば、首部の輪郭)を求め、求めた輪郭の中に検査ゲートを設定し、検査ゲート内に異物に対応した画像部分があるか否かを判別していたが、本発明によれば、得られた画像全体の中で暗い背景の画像中に明るい点(または領域)があるか否かを判別すればよいため、容器の検査部分の輪郭を求める必要もなく、検査ゲートを設定する必要もない。
【0019】
本発明の好ましい態様によれば、前記容器をコンベアで搬送することを特徴とする。
本発明によれば、容器は、コンベアにより搬送されている間に照明が設置されている場所を通過し、この通過する間に、容器内が照明され、液面およびその近傍がカメラにより撮影される。したがって、容器をコンベアで搬送している間に液面付近に浮遊した異物を検出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)本発明によれば、容器の首部又は肩部の斜め上方から液面に集中して強い光を照射し、液面に浮かぶ異物のみを照らすようにするため、異物に照射された光は異物で反射し、その反射光がカメラに入射するので、異物が液面又は液面付近のどの位置に存在していても異物からの反射光をカメラでとらえることにより異物を精度良く検出できる。
(2)ロータリー式搬送装置やスピン搬送装置等の大掛かりな搬送装置を用いて異物を移動させたり異物を液中に引き込んだりする必要がなく、液面が静止した状態において、液面と容器内面が接触して盛り上がった箇所にある異物であっても検出することができる。
(3)容器の首部又は肩部の斜め上方から液面に集中して強い光を照射しているため、容器が濃色容器であっても液面に浮遊する異物の検出が可能となる。
(4)カメラで得られた画像中、異物だけが暗い背景の中に明るい点(または領域)として映るため、異物を比較的容易なアルゴリズムで検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る液面浮遊異物検査装置の照明撮像系を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すように構成された照明撮像系の作用を説明する図であり、液面の揺れがない場合の作用を説明する図である。
【図3】図3は、図1に示すように構成された照明撮像系の作用を説明する図であり、液面の揺れがある場合の作用を説明する図である。
【図4】図4は、図1に示す照明撮像系を用いて撮影した画像であり、異物が液面のほぼ中央部に存在する場合である。
【図5】図5は、図1に示す照明撮像系を用いて撮影した画像であり、異物が液面の横にずれた位置に存在する場合である。
【図6】図6は、本発明に係る液面浮遊異物検査装置の基本構成を示す正面図である。
【図7】図7は、容器の底部より照明をあて容器側方から撮影する照明撮像系を用いて撮影した画像であり、異物が液面のほぼ中央部に存在する場合である。
【図8】図8は、容器の底部より照明をあて容器側方から撮影する照明撮像系を用いて撮影した画像であり、異物が液面の横にずれた位置に存在する場合である。
【図9】図9は、容器を挟むように照明とカメラとを対向させて撮影する照明撮像系を用いて撮影した画像であり、異物が液面のほぼ中央部に存在する場合である。
【図10】図10は、容器側面から容器に光を照射し、容器をはさんで対向する容器側面に位置するカメラに光が入射する場合の光路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る液面浮遊異物検査方法及び装置の実施形態を図1乃至図6を参照して説明する。図1乃至図6において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明に係る液面浮遊異物検査装置の基本構成を示す正面図である。図1に示すように、検査対象となる容器1はコンベア(図示せず)上を搬送されており、容器1はガラス製の容器からなり、容器には飲料等の液体が充填されている。容器1の口部は、キャップ(蓋)2により密封されている。
【0023】
容器1の首部1nの斜め上方には、容器1内に充填された液体の液面Sを集中して照らす照明3が配置されている。照明3は、照明光を容器1の首部1nの斜め上方から下方に向けて液面に照射するように設置されている。すなわち、照明3は、照明からの光が液面に対して垂直に近い角度で入射するように、容器1に近づけて配置され、かつ垂直に近い角度で傾けて配置されている。照明3の垂直方向に対する角度(θ)は、0°〜20°の範囲に設定されている。なお、照明3は、照明光を首部1nよりやや下方の肩部の斜め上方から下方に向けて液面に照射するように設置されていてもよい。
【0024】
図1では、照明3は容器1のキャップ2を挟むように対向して2個配置された例が示されているが、照明3は、照明位置による液面の照射むらをなくすため、容器1の周囲に複数個設置することが好ましい。照明3は、ビームの広がりが少ないスポットライトのようなものが好ましく、ファイバ型ライトガイドやレンズで集光されたLEDなどを使用することができる。ビームの広がりが少ないほど液面に浮遊する異物に強い光を当てることができ、また液面の揺れによる乱反射の影響を少なくすることができる。
【0025】
容器1の首部1nの側方にはカメラ4が設置されており、カメラ4はCCDカメラから構成されている。カメラ4は、照明3からの光が直接入射しないような位置で、また液面で反射して入射しないような位置に設置する。したがって、カメラ4は、照明3から容器1内の液面Sに照射される光線に対して垂直に近くなるような位置に設置されることが好ましく、液面Sの概略水平線上にカメラ4の光軸4xがくるように設置される。ただし、照明3およびカメラ4の位置は、容器1の表面反射の影響をなくすため、また容器の首部又は肩部形状に合わせて適宜調整する。カメラ4は、画像を処理する画像処理装置(図示せず)に接続されている。さらに、容器1の周囲は外乱光が入射しないように遮光された状態であることが好ましい。
【0026】
次に、図1に示すように構成された液面浮遊異物検査装置の作用を図2および図3を参照して説明する。
容器1はコンベア上を搬送されるため、容器1に充填された液体は多少揺れることが想定される。そこで液体の液面Sの揺れがない(又はほとんどない)場合と、液面Sの揺れがある場合とをそれぞれ図2、図3に示し説明する。
図2は、本発明の検査装置を使用して液面に浮遊する異物を検査する際に容器1に充填された液体の液面Sの揺れがない(又はほとんどない)場合、照明3からの照明光が容器内の液面に入射して、異物からの反射光がカメラ4により撮影される場合の光路を模式的に表した図である。
【0027】
図2に示すように、照明3からの照明光Lは、ガラス製の容器1の首部1nに照射され、照射された光の一部は容器1の表面で反射して反射光RLは容器1の外部を下方に進行するため、カメラ4には入射しない。一方、容器1の表面で反射せずに容器1内に入射した光は、容器1内の空気中を光線L−1のように進行して液面Sに照射され、一部の光は液中に入射して下方に進行し、また一部の光は液面Sで反射して反射光RL−1は容器内の空気中を上方へ進行するため、カメラ4に入射する光はない。
液面に浮遊する異物Fが存在する場合には、光線L−1が異物Fにあたり、異物表面で乱反射するため、異物からの反射光RL−2がカメラ4に入射する。異物表面は微細な凹凸が多いため、異物Fに光が照射されると乱反射する。この場合、異物Fに照射される光の強度が高いため、異物Fからの反射光RL−2の強度も高く、カメラ4により撮影された画像中で、異物に相当する画像部分は明るい点(または領域)となる。
【0028】
図3は、本発明の検査装置を使用して液面に浮遊する異物を検査する際に容器1に充填された液体の液面Sの揺れがある場合、照明3からの照明光が容器内の液面に入射して、異物からの反射光がカメラ4により撮影される場合の光路を模式的に表した図である。
図3に示すように、照明3からの照明光Lは、ガラス製の容器1の首部1nに照射され、照射された光の一部は容器1の表面で反射して反射光RLは容器1の外部を下方に進行するため、カメラ4には入射しない。一方、容器1の表面で反射せずに容器1内に入射した光は、容器1内の空気中を光線L−1のように進行して液面Sに照射され、一部の光は液中に入射して下方に進行し、また一部の光は液面Sで反射して反射光RL−1は容器内の空気中を上方へ進行する。この場合、容器1内の液体が揺れて液面Sが平らでないため、液面Sでの反射光RL−1は図2に示す場合に比較すると、多方向にわたるが、いずれも容器内を上方に進むためカメラ4には入射しない。
【0029】
液面に浮遊する異物Fが存在する場合には、光線L−1が異物Fにあたり、異物表面で乱反射するため、異物からの反射光RL−2がカメラ4に入射する。この場合、異物Fに照射される光の強度が高いため、異物Fからの反射光RL−2の強度も高く、カメラ4により撮影された画像中で、異物に相当する画像部分は明るい点(または領域)となる。
なお、図2及び図3においては、容器1の左側に配置された照明3からの照明光の光路について説明したが、他の場所、例えば容器1の右側の照明3からの照明光についても同様のことが言える。すなわち、照明3からの照明光Lは、容器1の表面で反射して容器の外部を下方に進行するか、液面Sに照射されて液体中を下方に進行するか、液面で反射して容器内の空気中を上方に進行するため、カメラ4に入射する光はない。しかし、液面に浮遊する異物Fがある場合には、異物Fからの反射光がカメラ4に入射して撮影される。
【0030】
図4及び図5に、本発明の液面浮遊異物検査装置により撮影された画像を示す。
図4は、容器1の液面のほぼ中央部に浮遊する0.5mm角の発泡スチロール片がある場合の画像であり、図7に示す画像を得た状態の容器1について本発明の液面浮遊異物検査装置により撮影したものである。図5は、液面の横にずれた部分に浮遊する0.5mm角の発泡スチロール片がある場合の画像であり、図8に示す画像を得た状態の容器1について本発明の液面浮遊異物検査装置により撮影したものである。
【0031】
図4及び図5に示すように、本発明の液面浮遊異物検査装置を用いてカメラ4で撮影した画像では、真っ暗な背景に小さな白い点(丸印で場所を示す)がはっきりと認識できるため、液面に浮遊する異物が存在するか否か容易に判別することができる。また、黒い画像中に白い点が明瞭に表れるため、画像処理は、得られた画像をスキャン(走査)して暗い背景の中に明るい点(または領域)があるか否かを判別するだけで済み、画像処理が極めて容易となる。通常の画像処理にあっては、容器(ガラス壜)の検査部分の輪郭(例えば、首部の輪郭)を求め、求めた輪郭の中に検査ゲートを設定し、検査ゲート内に異物に対応した画像部分があるか否かを判別していたが、本発明にあっては、得られた画像全体の中で暗い背景の中に明るい点(または領域)があるか否かを判別すればよいため、容器の検査部分の輪郭を求める必要もなく、検査ゲートを設定する必要もない。
【0032】
次に、図1乃至図3に示す基本概念を具体化した装置であって、容器1をコンベアで直線搬送しながら異物検査を行うことができる液面浮遊異物検査装置について説明する。
図6は、容器1を直線搬送しながら異物検査を行うことができる液面浮遊異物検査装置の具体的構成を示す図であり、液面浮遊異物検査装置の正面図である。図6に示すように、液面浮遊異物検査装置は、容器1を直線搬送するコンベア6を備えており、容器1は、コンベア6に載置された状態で紙面と直交する方向に搬送されるようになっている。なお、コンベア6を設置しないで、容器1を左右一対の搬送ベルトにより挟持して直線搬送するように構成してもよい。
【0033】
容器1の首部1nの斜め上方に照明3,3が配置されている。照明3,3は、ファイバ型ライトガイドやレンズで集光されたLEDにより構成された照明からなっている。また、容器1の側方には、カメラ4が配置され、カメラ4の光軸4xは、容器1内の液体の液面Sと概略一致しており、容器1内の液面付近を容器側面側から撮影するように構成されている。カメラ4は、画像を処理する画像処理装置(図示せず)に接続されている。
【0034】
図6に示すように構成された液面浮遊異物検査装置において、液体が充填された容器1は、コンベア6により搬送されている間に照明3,3が設置されている場所(検査ステーション)を通過する。容器1が検査ステーションを通過する間に、容器1内の液面Sに照明光が照射され、液面Sおよびその近傍がカメラ4により撮影される。容器1内の液面に浮遊した異物Fを検出するメカニズムは、図2及び図3において説明したとおりである。
【0035】
照明3からの光は、白色光等の可視光であってもよいし、赤外光であってもよい。
また、図2乃至図5では、0.5mm角の発泡スチロール片を異物として撮像する場合を例示したが、わずかな光量であっても光を反射する異物であれば、カメラ4により撮像することができる。なお、カメラ4の設置位置を容器内の液面Sより下方に下げれば、同一のメカニズムによって液中異物も検出することが可能である。
【0036】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 容器
2 キャップ(蓋)
3,3 照明
4 カメラ
4x カメラの光軸
L 照明からの光線
L−1 照明からの光線
RL 容器表面からの反射光
RL−1 液面からの反射光
RL−2 異物からの反射光
6 コンベア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査方法において、
容器の首部または肩部の斜め上方に配置された照明から、照明光を前記容器内の液面に照射し、
容器の側方に配置されたカメラによって、前記液面又は液面付近からの光を撮像し、
前記カメラには、液面又は液面付近に異物が存在する場合には異物からの反射光が入射し、異物が存在しない場合には入射する光がないことを特徴とする液面浮遊異物検査方法。
【請求項2】
前記照明は、容器内に充填された液体の液面を集中して照らすスポットライトであることを特徴とする請求項1記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項3】
前記照明は、垂直方向に対する角度が0°から20°の範囲に傾いて配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項4】
前記カメラは、カメラの光軸が前記液面の水平線上又は概略水平線上に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項5】
前記容器の周囲を外乱光が入射しない遮光された雰囲気にすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項6】
前記カメラによって撮像された画像は、液面又は液面付近に異物が存在する場合には暗い背景の画像中に明るい点又は領域がある画像であり、異物が存在しない場合には暗い背景の画像のみであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項7】
前記容器をコンベアで搬送することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査方法。
【請求項8】
容器内に充填された液体の液面又は液面付近に浮遊した異物を検出する検査装置において、
容器の首部または肩部の斜め上方に配置され、照明光を前記容器内の液面に照射する照明と、
容器の側方に配置され、前記液面又は液面付近からの光を撮像するカメラとを備え、
前記カメラには、液面又は液面付近に異物が存在する場合には異物からの反射光が入射し、異物が存在しない場合には入射する光がないことを特徴とする液面浮遊異物検査装置。
【請求項9】
前記照明は、容器内に充填された液体の液面を集中して照らすスポットライトであることを特徴とする請求項8記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項10】
前記照明は、垂直方向に対する角度が0°から20°の範囲に傾いて配置されていることを特徴とする請求項8又は9記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項11】
前記カメラは、カメラの光軸が前記液面の水平線上又は概略水平線上に位置するように配置されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項12】
前記容器の周囲を外乱光が入射しない遮光された雰囲気にすることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項13】
前記カメラによって撮像された画像は、液面又は液面付近に異物が存在する場合には暗い背景の画像中に明るい点又は領域がある画像であり、異物が存在しない場合には暗い背景の画像のみであることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査装置。
【請求項14】
前記容器をコンベアで搬送することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の液面浮遊異物検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−137324(P2012−137324A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288350(P2010−288350)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】