説明

淡水化システムおよび淡水化方法

【課題】下水を可及的に有効利用できるとともに、システム全体の造水コストを低減できる淡水化システムおよび淡水化方法を提供する。
【解決手段】本発明の淡水化システムは、下水や海水を淡水化する淡水化システムSであって、下水を透過させて浄化する浄化装置1と、浄化装置1を透過した透過水s5aを透過させ、その塩分が第1の濃縮水s6aに含まれ除去されるとともに工業用水s1を生成する第1のRO膜2と、第1の濃縮水s6aが、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる第1の前処理装置3と、第1の前処理装置3で前処理が行われた第1の被処理水s7aを透過させ、その塩分が第2の濃縮水s6bに含まれ除去されるとともに工業用水s2を生成する第2のRO膜4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水や海水を淡水化する淡水化システムおよび淡水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な人口増や新興国を含む広域な産業の進展から、砂漠地域などでの飲料水や工業用水の造水需要が顕在化している。
従来、海水、下水を淡水化するシステムとして、図7に示す淡水化システムS100がある。
淡水化システムS100における下水を用いた生産水s101(工業用水)の生産は、以下のように遂行される。なお、下水の塩分濃度は、0.1%程度である。
【0003】
下水は、ポンプp101により、膜分離活性汚泥法が適用されるMBR(Membrane Bioreactor)101に送水され、MBR101で下水中の固形分の活性汚泥などが除去され、MBR101を透過したMBR透過水が、ポンプp102により低圧RO膜(Reverse Osmosis Membrane:逆浸透膜)102に送水される。
なお、MBR101を透過したMBR透過水は、塩分濃度0.1%程度で低いので、低圧RO膜102は、低圧の約1〜2MPa(メガパスカル)のRO膜が使用される。
【0004】
ポンプp102により送水されたMBR透過水は、低圧RO膜102を透過することで淡水化され、ほぼ半分が生産水s101(工業用水)として生産され、残り半分が塩分などの不純物を含む濃縮水s104として分離、除去される。
【0005】
一方、低圧RO膜102で除去された塩分などの不純物を含む塩分濃度0.2%程度に濃縮された下水の約1/2の容量の濃縮水s104は低圧RO膜102から攪拌槽104に送水される。
【0006】
淡水化システムS100における海水からの生産水s102(工業用水)の生産は以下のように遂行される。なお、海水の塩分濃度は、3〜4%程度である。
海水は、ポンプp103により、UF膜(Ultrafiltration Membrane)103に送水され、UF膜103で粒子が除去され攪拌槽104に送水される。攪拌槽104では、このUF膜103を透過したUF膜透過海水と、前記した低圧RO膜102で下水から濃縮された下水の1/2程度の容量の濃縮水s104とが攪拌されて生成された混合水s103が、ポンプp104により、中圧RO膜105に送水される。
【0007】
UF膜103を透過したUF膜透過海水は、3〜4%の塩分濃度であるが、塩分濃度0.2%程度の濃縮水s104で希釈されるため、中圧RO膜105は、中圧の約3〜5MPaのRO膜(逆浸透膜)が使用される。
攪拌槽104からポンプp104により中圧RO膜105に送水された混合水s103は、中圧RO膜105を透過することで淡水化され、1/2程度が淡水化された生産水s102(工業用水)として生産され、残り1/2程度が塩分などの不純物を含むブラインs105として分離、除去される。つまり、生産水s102(工業用水)は、海水の1/2プラス下水の1/4程度の容量をもって生産される。
【0008】
ブラインs105は、海水の1/2プラス下水の1/4程度の容量をもって分離され排水される。
なお、ブラインs105の圧力エネルギは、動力回収装置106で回転エネルギとして回収され、ポンプp104を迂回した一部の混合水s103の中圧RO膜105への送圧の動力源(エネルギ源)として用いられる。
【0009】
従来のその他の淡水化システムとして、図8に示す淡水化システムS200がある。
淡水化システムS200は、図7の淡水化システムS100における下水の濃縮水s104を、攪拌槽204に送水せず、下水の淡水化と海水の淡水化とを独立して構成したものである。
【0010】
淡水化システムS200においては、海水は、UF膜203で粒子が除去されるが、攪拌槽204で下水からの送水(図7の下水の濃縮水s104)で希釈されないため、塩分濃度が約3〜4%と高い。そのため、高圧の約6〜8MPaのRO膜(逆浸透膜)である高圧RO膜205を用いている。
【0011】
淡水化システムS200は、下水が低圧RO膜202を透過して淡水化され、下水の約半分の生産水s201(工業用水)が得られる。一方、海水がUF膜203で粒子が除去され、高圧RO膜205を透過して淡水化され、海水の1/2の量の生産水s202(飲料水)が得られる。
【0012】
その他の構成は、図7の淡水化システムS100と同様であるから、淡水化システムS100の構成要素に200番台の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
なお、本願に係る先行技術文献として特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4481345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、従来の淡水化システムS100、S200においては、以下の問題がある。
第1に、工業用水、飲料水それぞれにニーズが大なる場合に対応が困難である。例えば、図7の淡水化システムS100では、工業用を増水できるものの、濃縮水s104を海水の淡水化過程における攪拌槽104に送水するため、飲料水を取水できない。
一方、図8の淡水化システムS200では、飲料水(生産水s202)を取水できるものの、工業用水を増水しようとすると、下水の取水量を増加させる必要がある。そのため、下水の量が限られる地域では、工業用水の増水が困難となる。
【0015】
第2に、淡水化システムS100、S200とも下水の流入量の変動が大きい場合、下水の流入量の変動に対応する構成になっていない。そのため、下水の流入量の変動に対応できない。
【0016】
第3に、造水コストは下水を淡水化する方が廉価であるが、下水を有効に利用できる構成となっていないため、システム全体の造水コストが上昇し易い。
例えば、図8の淡水化システムS200では、取水した下水の半分が生産水s201(工業用水)となるが、半分はブラインとして系外に排出される。一方、図7の淡水化システムS100では、下水のうち半分は生産水s101(工業用水)となり、下水の半分の濃縮水s104はその半分が生産水s102(工業用水)となるが、濃縮水s104の半分はブラインとして系外に排出される。
結果的には、下水の3/4は工業用水として利用されるが、淡水化システムS100においても、下水を可及的に有効利用しているものではない。
【0017】
一方、下水に代替して海水の取水量を増加させることはコストがかかるため、海水の取水量を増加させることは、システム全体の造水コスト上昇の起因となる。
【0018】
本発明は上記実状に鑑み、下水を可及的に有効利用できるとともに、システム全体の造水コストを低減できる淡水化システムおよび淡水化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる淡水化システムは、下水や海水を淡水化する淡水化システムであって、前記下水を透過させて浄化する浄化装置と、前記浄化装置を透過した透過水を透過させ、その塩分が第1の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第1のRO膜と、前記第1の濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる第1の前処理装置と、前記第1の前処理装置で前処理が行われた第1の被処理水を透過させ、その塩分が第2の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第2のRO膜とを具備している。
【0020】
第3の本発明に関わる淡水化方法は、第1の本発明に関わる淡水化システムを実現する方法である。
【0021】
第2の本発明に関わる淡水化システムは、下水や海水を淡水化する淡水化システムであって、前記下水を透過させて浄化する浄化装置と、前記浄化装置を透過した透過水を透過させ、その塩分が濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する複数のRO膜と、前記複数のRO膜の何れかで除去された濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる単数または複数の前処理装置とを具備している。
【0022】
第4の本発明に関わる淡水化方法は、第2の本発明に関わる淡水化システムを実現する方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の淡水化システムおよび淡水化方法によれば、下水を可及的に有効利用できるとともに、システム全体の造水コストを低減できる淡水化システムおよび淡水化方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施形態1の淡水化システムの概念的構成図である。
【図2】実施形態1の変形形態の淡水化システムの概念的構成図である。
【図3】実施形態2の淡水化システムの概念的構成図である。
【図4】実施形態2の変形形態の淡水化システムの概念的構成図である。
【図5】実施形態3の淡水化システムの概念的構成図である。
【図6】実施形態3の変形形態の淡水化システムの概念的構成図である。
【図7】従来の淡水化システムを示す概念的構成図である。
【図8】従来のその他の淡水化システムを示す概念的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<実施形態1>>
図1は、本発明に係る実施形態1の淡水化システムの概念的構成図である。
実施形態1の淡水化システムSは、下水から工業用水s1、s2を造水するための工業用水造水システムSaと、海水から飲料水s3を造水するための飲料水造水システムSbとを具備している。
【0026】
淡水化システムSの工業用水造水システムSaは、工業用水s1を生成するため、下水を透過させて固形分や細菌などを除去し浄化するMBR(Membrane Bioreactor)1と、下水を透過して下水に含有される塩分やイオンなどの不純物を除去し淡水化する第1の低圧RO膜(Reverse Osmosis Membrane)2とを備えている。
【0027】
さらに、工業用水造水システムSaは、工業用水s2を生成するため、第1の低圧RO膜2で分離される下水濃縮水s6aを透過させて凝集ろ過または/およびNF処理する前処理装置3と、前処理装置3で前処理された被処理水s7aを透過させて被処理水s7aに含有される塩分やイオンなどの不純物を除去し淡水化する第2の低圧RO膜(Reverse Osmosis Membrane)4とを備えている。
【0028】
MBR1は、固液分離を行い、下水から固形分や細菌などを除去して浄化する。
RO膜(逆浸透膜)は、水は通すが塩分などの低分子物質やイオンを通しにくい半透膜である。第1の低圧RO膜2は、下水の塩分濃度が0.1%程度で低いので、下水を透過させる(ろ過する)ことで、比較的低い透過圧約1〜2MPa(メガパスカル)で塩分などを除去する低圧のRO膜である。
【0029】
前処理装置3は、凝集ろ過および/またはNF処理の機能を有している。
前処理装置3の凝集ろ過は、下水濃縮水s6aを凝集ろ過してスケール分を減らしたり、シアン(CN)化合物などの有害物質やクロムなどの重金属を除去する。
前処理装置3のNF処理は、NF膜を用いる処理である。NF膜(Nanofiltration Membrane:ナノろ過膜)は、元素、イオンに対して選択性があり、下水を透過させる(ろ過する)ことで、毒性があるシアン(CN)化合物などの低分子の不純物や微生物をカットする。
【0030】
第2の低圧RO膜4は、被処理水s7aの塩分濃度が0.2%程度で低いので、下水を透過させる(ろ過する)ことで、比較的低い透過圧約1〜2MPa(メガパスカル)で塩分などを除去する低圧のRO膜である。
【0031】
一方、淡水化システムSにおいて飲料水を造水する飲料水造水システムSbは、以下の構成を備えている。
飲料水造水システムSbは、海水を透過させて海水に含有される粒子を除去するUF膜(Ultrafiltration Membrane)5と、UF膜5を透過して粒子が除去された海水を撹拌して一様にする撹拌槽6と、粒子が除去され一様にされた海水に含有される塩分やイオンなどの不純物を除去して淡水化する高圧RO膜7とを備えている。
【0032】
UF膜(限外ろ過膜)5は、海水を透過させる(ろ過する)ことで膜の孔径と海水中の除去対象物質の分子の大きさによって分子レベルのふるい分けを行い、海水中の粒子を除去する。
高圧RO膜7は、海水の塩分濃度が3〜4%程度であるので、比較的高い海水の透過圧、約6〜8MPa(メガパスカル)で海水を透過させる(ろ過する)ことで海水の塩分などを除去する高圧なRO膜(逆浸透膜)である。
【0033】
次に、淡水化システムSの工業用水造水システムSaにおいて、下水から工業用水s1、s2を造水する過程について説明する。
下水は、ポンプp1により工業用水造水システムSa内に圧送され、MBR1に送水される。下水は、MBR1を透過することで活性汚泥フロックや細菌などが除去される。
【0034】
MBR1を透過した下水のMBR透過水s5aは、ポンプp2により、第1の低圧RO膜2に送水され、第1の低圧RO膜2を透過することで、塩分やイオンなどの不純物を含む下水濃縮水s6aが除去され淡水化され、工業用水s1が生産される。
工業用水s1は、下水の1/2程度得られる一方、下水の残余の分、すなわち下水の1/2程度が塩分やイオンなどの不純物を含む下水濃縮水s6aとして除去される。
【0035】
第1の低圧RO膜2で分離された下水濃縮水s6aは、前処理装置3に送られ、前処理装置3において、凝集ろ過および/またはNF処理され、スケール分やシアン化合物などが除去される。下水濃縮水s6aが前処理装置3で前処理された被処理水s7aは、ポンプp3により、第2の低圧RO膜4に送水され、第2の低圧RO膜4を透過することで、塩分やイオンなどの不純物を含む被処理濃縮水s6bが除去され淡水化され、工業用水s2が生産される。
【0036】
工業用水s2は、下水濃縮水s6aの1/2程度得られる一方、下水の残余の分、すなわち下水濃縮水s6aの1/2程度が塩分やイオンなどの不純物を含む被処理濃縮水s6bとして除去される。下水濃縮水s6aは下水の1/2程度であるから、工業用水s2は、下水の1/4程度得られる。
結果的に、工業用水s1が下水の1/2程度得られ、また、工業用水s2が下水の1/4程度得られることから、下水の約3/4の容量の工業用水が取水できる。
【0037】
次に、淡水化システムSの飲料水造水システムSbにおいて、海水から飲料水s3を造水する過程について説明する。
海水は、ポンプp4により飲料水造水システムSb内に圧送され、UF膜5に送水される。海水は、UF膜5を透過することで海水中の粒子が除去される。UF膜5で粒子が除去された海水であるUF膜透過海水s5bは、撹拌槽6で攪拌され一様にされる。
【0038】
そして、攪拌されたUF膜透過海水s5bは、ポンプp5により、高圧RO膜7に送水される。UF膜透過海水s5bは、高圧RO膜7を透過することで、ほぼ半分が塩分やイオンなどの不純物を含むブラインs8として除去され、残り半分が淡水化された飲料水s3として生産される。
従って、海水の約半分の量の飲料水s3が取水できる。
【0039】
実施形態1の淡水化システムSによれば、工業用水造水システムSaにより下水の約3/4の量の工業用水を取水できるとともに、飲料水造水システムSbにより無尽蔵な海水の取水量を増加することで飲料水を増水することができる。
従って、工業用水、飲料水それぞれのニーズが大きな場合に適合できる。
【0040】
また、下水の流入量の変動が大きい場合にも、下水の約3/4の量の工業用水を取水できるので、取水した工業用水を貯留することで対応可能である。さらに、下水の量が少ない場合にも、下水の約3/4の量の工業用水を取水できるので、少ない下水を有効に利用して多くの工業用水を取水できる。従って、下水の再利用率を高めることができる。
【0041】
また、第2の低圧RO膜4を透過する前に、下水濃縮水s6aが前処理装置3で凝集ろ過および/またはNF処理するので、後段の第2の低圧RO膜4で目詰まりを起こすことが未然に防止される。
【0042】
なお、実施形態1においては、淡水化システムSに工業用水造水システムSaと飲料水造水システムSbとを具備する場合を例示して説明したが、図2に示すように、淡水化システムS´に工業用水造水システムSaのみを具備する構成としてもよい。
【0043】
<<実施形態2>>
図3は、実施形態2の淡水化システムを示す概念的構成図である。
実施形態2の淡水化システム2Sは、実施形態1の淡水化システムSの工業用水造水システムSaに、第2の前処理装置3a、第3の低圧RO膜4aをさらに1段加え、低圧RO膜を3段で構成し、前処理装置を2段で構成したものである。
その他の構成は、実施形態1と同様であるから、同様な構成要素には実施形態1と同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0044】
淡水化システム2Sは、3段の低圧RO膜および2段の前処理装置を備えて下水から工業用水s1、s2、s2aを造水するための工業用水造水システム2Saを具備している。また、淡水化システム2Sは、実施形態1と同様に、海水から飲料水s3を造水するための飲料水造水システムSbを具備している。
【0045】
淡水化システム2Sの工業用水造水システム2Saは、実施形態1の工業用水造水システムSaに、第2の低圧RO膜4で除去される被処理濃縮水s6bを前処理する第2の前処理装置3aと、第2の前処理装置3aで前処理された第2の被処理濃縮水s7bを透過させる第3の低圧RO膜4aとをさらに備えている。
【0046】
第2の前処理装置3aは、前処理装置3と同様な凝集ろ過および/またはNF処理を行う装置である。
第2の前処理装置3aの凝集ろ過は、前記したように、被処理濃縮水s6bを凝集ろ過してスケール分を減らしたり、シアン(CN−)化合物などの有害物質やクロムなどの重金属を除去する。
【0047】
第2の前処理装置3aのNF処理は、前記したように、NF膜を用いる処理であり、被処理濃縮水s6bをNF膜に透過させることで、シアン(CN−)化合物などの低分子の不純物や微生物をカットする。
第3の低圧RO膜4aは、下水の塩分濃度が0.4%程度で低いので、比較的低い透過圧約1〜2MPa(メガパスカル)で下水を透過させる(ろ過する)ことで、塩分などを除去する低圧のRO膜である。
【0048】
次に、図3に示す淡水化システム2Sの工業用水造水システム2Saにおいて、下水から工業用水s1、s2、s2aを造水する過程について説明する。
下水は、ポンプp1により工業用水造水システム2Sa内に圧送され、MBR1に送水される。下水は、MBR1を透過する(でろ過される)ことで活性汚泥フロックや細菌などが除去される。
【0049】
MBR1を透過した下水のMBR透過水s5aは、ポンプp2により、第1の低圧RO膜2に送水され、第1の低圧RO膜2を透過することで、塩分やイオンなどの不純物を含む下水濃縮水s6aが除去され淡水化され、工業用水s1が生産(生成)される。
工業用水s1は、下水の1/2程度得られる一方、下水の残余の分、すなわち下水の1/2程度が塩分やイオンなどの不純物を含む下水濃縮水s6aとして除去される。
【0050】
第1の低圧RO膜2で分離された下水濃縮水s6aは、前処理装置3に送られ、前処理装置3において、凝集ろ過および/またはNF処理され、スケール分やシアン化合物などが除去される。下水濃縮水s6aが前処理装置3で前処理された被処理水s7aは、ポンプp3により、第2の低圧RO膜4に送水され、第2の低圧RO膜4を透過することで、塩分やイオンなどの不純物を含む被処理濃縮水s6bが除去され淡水化され、工業用水s2が生産(生成)される。
【0051】
工業用水s2は、被処理水s7aの1/2程度得られる一方、被処理水s7aの残余の分、すなわち被処理水s7aの1/2程度が塩分やイオンなどの不純物を含む被処理濃縮水s6bとして除去される。
被処理水s7aは下水の1/2程度であるから、工業用水s2は、下水の1/4程度得られる。
【0052】
第2の低圧RO膜4で除去された被処理濃縮水s6bは、第2の前処理装置3aに送られ、第2の前処理装置3aにおいて、凝集ろ過および/またはNF処理され、スケール分やシアン化合物などが除去される。被処理濃縮水s6bが第2の前処理装置3aで前処理された第2の被処理水s7bは、ポンプp3aにより、第3の低圧RO膜4aに送水され、第3の低圧RO膜4aを透過することで、塩分やイオンなどの不純物を含む第2の被処理濃縮水s6cが除去され淡水化され、工業用水s2aが生産(生成)される。
【0053】
工業用水s2aは、第2の被処理水s7bの1/2程度得られる一方、第2の被処理水s7bの残余の分、すなわち第2の被処理水s7bの1/2程度が塩分やイオンなどの不純物を含む第2の被処理濃縮水s6cとして除去される。
第2の被処理水s7bは、下水の1/4程度であるので、工業用水s2aは下水の1/8程度得られる。
【0054】
結果的に、工業用水s1が下水の1/2程度得られ、また、工業用水s2が下水の1/4程度得られ、また、工業用水s2aが下水の1/8程度得られることから、下水の約7/8の容量の工業用水が取水できる。
【0055】
実施形態2によれば、前処理装置を2段とし、低圧RO膜を3段で構成したので、工業用水が取水した下水の約7/8の容量得られ、下水からより多くの工業用水が生産できる。
その他の実施形態1の作用効果は同様に奏する。
【0056】
なお、実施形態2においては、淡水化システム2Sに工業用水造水システム2Saと飲料水造水システムSbとを具備する場合を例示したが、図4に示すように、淡水化システム2S´に工業用水造水システム2Saのみを具備する構成としてもよい。
また、実施形態2においては、前処理装置を2段とし、低圧RO膜を3段で構成する場合を例示したが、前処理装置を3段以上とし、低圧RO膜を4段以上とする実施形態2と同様な構成としてもよい。これにより、下水からさらに多くの工業用水を生産(生成)できる。
【0057】
<<実施形態3>>
図5は、実施形態3の淡水化システムを示す概念的構成図である。
実施形態3の淡水化システム3Sは、実施形態1、2で説明した複数段の前処理装置、複数段の低圧RO膜を任意の段数に切り換える工業用水量切り換え手段(切り換え手段)を設ける構成としたものである。
その他の構成は、実施形態1、2の淡水化システムS、2Sと同様であるから、同一の構成要素には実施形態1と同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0058】
淡水化システム3Sは、複数段の低圧RO膜、複数段の前処理装置、工業用水量切り換え手段などを備えて下水から工業用水s1、s2、s2a、s2b、…を造水するための工業用水造水システム3Saと、海水から飲料水s3を造水するための飲料水造水システムSbとを具備している。
【0059】
第1・第2・第3・、第4の低圧RO膜2、4、4a、4b、…は、それぞれ下水の塩分濃度が0.1%、0.2%、0.4%、0.8%、…程度で低いので、比較的低い透過圧約1〜2MPa(メガパスカル)で下水を透過させる(ろ過する)ことで、塩分などを除去する低圧のRO膜である。
【0060】
前処理装置3、第2の前処理装置3a、第3の前処理装置3b、…は、それぞれ凝集ろ過および/またはNF処理を行う装置である。凝集ろ過は、前記したように、ブライン(濃縮水)を凝集ろ過してスケール分を減らしたり、シアン(CN−)化合物などの有害物質やクロムなどの重金属を除去する。NF処理は、前記したように、ブライン(濃縮水)をNF膜に透過させる(ろ過する)ことで、シアン(CN−)化合物などの低分子の不純物や微生物をカットする。
【0061】
工業用水量切り換え手段としては、バルブv1、v2、…と、バルブv1、v2、v3、…の流路を切り換える切り換え制御装置9とを有する。
バルブv1、v2、v3、…は、三方弁であり、それぞれ第1の低圧RO膜2、第2の低圧RO膜4、第3の低圧RO膜4a、第4の低圧RO膜4b、…からのブライン(濃縮水)を、排水するか、または、次段の前処理装置3、第2の前処理装置3a、第3の前処理装置3b…に流すかを切り換える。なお、バルブv1、v2、…は、排水か下流の前処理装置へ流すか、継続時間の長い方をノーマル状態とするとよい。
【0062】
切り換え制御装置9は、バルブv1、v2、v3、…の切り換えを制御する制御装置であり、各バルブv1、v2、v3、…がそれぞれ第1の低圧RO膜2、第2の低圧RO膜4、第3の低圧RO膜4a、…からのブラインを、排水するか、または、次段の前処理装置3、第2の前処理装置3a、第3の前処理装置3b、…に流すかを切り換える制御を行う。
【0063】
切り換え制御装置9は、淡水化システム3S全体を制御する不図示のコントローラに格納されている。具体的には、切り換え制御装置9は、マイクロコンピュータ(microcomputer)、A/C・D/C変換器などのインターフェース回路、バルブv1、v2、v3、…の動作を切り換える電流制御回路などで構成される。バルブv1、v2、v3、…の切り換え動作は、マイコンのROM(Read Only Memory)に記憶される制御プログラムに記述されている。
【0064】
切り換え制御装置9の制御は、以下のように行われる。
第1のモードとして、バルブv1を排水側に切り換える。その他のバルブv2、v3、…は、上流のバルブv1で下水濃縮水s6aが排水されてしまうので、何れの側に切り換えられていてもよい。
これにより、下水から、MBR透過水s5aが第1の低圧RO膜2を透過した工業用水s1が得られる。
【0065】
第2のモードとして、バルブv1のみを第2の低圧RO膜4への流路を開く一方、バルブv2は排水側に切り換える。その他のバルブv3、…は、上流のバルブv2で被処理濃縮水s6bが排水されてしまうので、何れの側に切り換えられていてもよい。
これにより、下水から、MBR透過水s5aが第1の低圧RO膜2を透過した工業用水s1と、前処理装置3で前処理された被処理水s7aが第2の低圧RO膜4を透過した工業用水s2とが得られる。
【0066】
第3のモードとして、バルブv1、v2をそれぞれ第2の低圧RO膜4、第3の低圧RO膜4aへの流路を開く一方、バルブv3は排水側に切り換える。その他のバルブは、上流のバルブv3で被処理濃縮水s6cが排水されてしまうので、何れの側に切り換えられていてもよい。
これにより、下水から、MBR透過水s5aが第1の低圧RO膜2を透過した工業用水s1と、前処理装置3で前処理された被処理水s7aが第2の低圧RO膜4を透過した工業用水s2と、第2の前処理装置3aで前処理された第2の被処理水s7bが第2の低圧RO膜4aを透過した工業用水s2aとが得られる。
【0067】
第4のモードとして、バルブv1、v2、v3をそれぞれ第2の低圧RO膜4、第3の低圧RO膜4aへの流路を開く一方、その他のバルブは排水側に切り換える。
これにより、下水から、MBR透過水s5aが第1の低圧RO膜2を透過した工業用水s1と、前処理装置3で前処理された被処理水s7aが第2の低圧RO膜4を透過した工業用水s2と、第2の前処理装置3aで前処理された第2の被処理水s7bが第2の低圧RO膜4aを透過した工業用水s2aと、第3の前処理装置3bで前処理された第3の被処理水s7cが第4の低圧RO膜4bを透過して工業用水s2aとが得られる。なお、第4の低圧RO膜4bでは第3の被処理濃縮水s6dが除去される。
以下、同様に任意数のバルブを低圧RO膜側に開くことで工業用水を増水できる。
【0068】
実施形態3によれば、複数段の低圧RO膜、複数段の前処理装置、次段の低圧RO膜にブレイン(濃縮水)を流すか排水するかを切り換えるバルブv1、v2、v3、…および該バルブの切り換えを制御する切り換え制御装置9を設けたので、取水する工業用水量を工業用水の需要量や下水量の多寡で自在に変更することができる。
その他の実施形態1、2の作用効果は同様に奏する。
【0069】
なお、実施形態3においては、淡水化システム3Sに工業用水造水システム3Saと飲料水造水システムSbとを具備する場合を例示したが、図6に示すように、淡水化システム3S´に工業用水造水システム3Saのみを具備する構成としてもよい。
【0070】
また、実施形態3で説明した工業用水量切り換え手段においては、前処理装置を2段とし、低圧RO膜を3段で構成する場合を例示したが、前処理装置を3段以上とし、低圧RO膜を4段以上とする実施形態2と同様な構成としてもよい。これにより、下水からさらに多くの工業用水を生産できる。
【0071】
なお、実施形態3で説明した工業用水量切り換え手段(切り換え手段)(バルブv1、v2、v3、…、切り換え制御装置9)の構成は、実施形態1、2にも適用できることは勿論である。
【0072】
また、前記実施形態では、下水を浄化する浄化装置として、MBR1を例示したが、自然沈殿法、砂ろ過、消毒などMBR以外の浄化装置を適用しても構わない。
なお、前記実施形態の説明で使用した数値は一例を示したものであり、これらの数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 MBR(浄化装置)
2 第1の低圧RO膜(第1のRO膜、RO膜)
3 前処理装置(第1の前処理装置、前処理装置)
3a 第2の前処理装置(第2の前処理装置、前処理装置)
3b 第3の前処理装置(第1の前処理装置、前処理装置)
4 第2の低圧RO膜(第2のRO膜、RO膜)
4a 第3の低圧RO膜(第3のRO膜、RO膜)
4b 第4の低圧RO膜(第4のRO膜、RO膜)
5 UF膜
7 高圧RO膜(RO膜)
9 切り換え制御装置(切り換え手段)
S、2S、3S、S´、2S´、3S´ 淡水化システム
s1、s2、s2a、s2b 工業用水
s3 飲料水
s5a MBR透過水(透過水)
s5b UF膜透過海水(処理水)
s6a 下水濃縮水(第1の濃縮水、濃縮水)
s6b 被処理濃縮水(第2の濃縮水、濃縮水)
s6c 第2の被処理濃縮水(第3の濃縮水、濃縮水)
s6d 第3の被処理濃縮水(濃縮水)
s7a 被処理水(第1の被処理水)
s7b 第2の被処理水(第2の被処理水)
v1、v2、v3 バルブ(切り換え手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水や海水を淡水化する淡水化システムであって、
前記下水を透過させて浄化する浄化装置と、
前記浄化装置を透過した透過水を透過させ、その塩分が第1の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第1のRO膜と、
前記第1の濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる第1の前処理装置と、
前記第1の前処理装置で前処理が行われた第1の被処理水を透過させ、その塩分が第2の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第2のRO膜とを
具備することを特徴とする淡水化システム。
【請求項2】
前記第2の濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる第2の前処理装置と、
前記第2の前処理装置で前処理が行われた第2の被処理水を透過させ、その塩分が第3の濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する第3のRO膜とを
具備することを特徴とする請求項1に記載の淡水化システム。
【請求項3】
下水や海水を淡水化する淡水化システムであって、
前記下水を透過させて浄化する浄化装置と、
前記浄化装置を透過した透過水を透過させ、その塩分が濃縮水に含まれ除去されるとともに工業用水を生成する複数のRO膜と、
前記複数のRO膜の何れかで除去された濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる単数または複数の前処理装置とを
具備することを特徴とする淡水化システム。
【請求項4】
前記RO膜で除去される濃縮水側の下流で、当該濃縮水を排水するかまたは下流の前記前処理装置に流すか切り換える切り換え手段を
具備することを特徴とする請求項1から請求項3のうちの何れか一項に記載の淡水化システム。
【請求項5】
前記海水を透過させて当該海水中の粒子を除去するUF膜と、
前記UF膜を透過した処理水を透過させ、当該処理水の塩分が除去されるとともに飲料水を生成するRO膜とを
具備することを特徴とする請求項1から請求項4のうちの何れか一項に記載の淡水化システム。
【請求項6】
下水や海水を淡水化する淡水化方法であって、
前記下水を、浄化装置と第1のRO膜とを透過させて工業用水を生成し、
前記第1のRO膜で除去された第1の濃縮水を、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理を行った後、第2のRO膜を透過させて工業用水を生成する
ことを特徴とする淡水化方法。
【請求項7】
前記第2のRO膜で除去された第2の濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理を行った後、第3のRO膜を透過させて工業用水を生成する
ことを特徴とする請求項6に記載の淡水化方法。
【請求項8】
下水や海水を淡水化する淡水化方法であって、
前記下水を、浄化装置を透過させて浄化し、
前記浄化装置を透過した透過水をRO膜に透過させて工業用水を生成する過程と、前記RO膜で除去された濃縮水が、少なくとも濃縮ろ過およびNF膜のろ過のうちの何れかの前処理が行われる過程とを、繰り返して行う
ことを特徴とする淡水化方法。
【請求項9】
前記RO膜で除去される濃縮水側の下流で、当該濃縮水を、排水するかまたは下流で行われる前記前処理に流すかを切り換える
ことを特徴とする請求項6から請求項8のうちの何れか一項に記載の淡水化方法。
【請求項10】
前記海水を、UF膜とRO膜と透過させて飲料水を生成する
ことを特徴とする請求項6から請求項9のうちの何れか一項に記載の淡水化方法。





































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−43156(P2013−43156A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184668(P2011−184668)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】