説明

深礎杭の鉄筋構築施工法及びその鉄筋ユニット体

【課題】時間を要する鉄筋組立体の構築を、鉄筋ユニット体として地上で行なうことで安全に、且つ容易に組立でき、施工工期の短縮化を図る。
【解決手段】深礎立坑内に鉄筋組立体を構築する鉄筋構築施工法であって、帯筋を環状に連結すると共に該帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して鉄筋ブロック体を形成し、該鉄筋ブロック体を梯子筋により複数段支持させて鉄筋ユニット体1を形成し配置する行程と、該鉄筋ユニット体1をガイド体に沿って移送降下させ該ガイド体に結束又は溶着する行程と、前記移送により該鉄筋ユニット体1の各梯子筋に重装固定すると共に後追いで作業用足場を順次構設する行程と、深礎立坑内に鉄筋ユニット体1が構築された後、縦主筋を配置し、該縦主筋と鉄筋ユニット体1を結束又は溶着して鉄筋組立体を構築する施工法と、鉄筋ユニット体1と、吊り枠体3aに鉄筋を支持する支持金具を有する移送治具体を配設した吊支体3で移送。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁及び送電線鉄塔などの基礎用に使用する深礎杭の鉄筋組立体を鉄筋ユニット体で構成し、その鉄筋ユニット体を予め地上にて組立て、吊支体で深礎杭に吊支移送して鉄筋組立体を構築する、その深礎杭の鉄筋構築施工法及びその鉄筋ユニット体とその吊支体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁及び送電線鉄塔などを構築する場合の基礎として深礎杭基礎が構築され、該深礎杭基礎は、まず地盤に深礎立坑を掘削した後、土留め用コンクリート若しくはライナープレートなど防御壁を形成し、次に作業用足場を地上まで構設し、その状態で該深礎立坑内に筒状の鉄筋組立体を所定高さのブロック単位(4.8〜6.5m若しくは現場状況により他の高さも選ばれる。)で構築し、該構築された鉄筋組立体を各ブロック単位で埋設する形で前記立坑内にコンクリートを充填するようにして深礎杭基礎が構築され、地上までの所定高さまで施工される。
【0003】
その鉄筋組立体の構築は、上記作業用足場を構設後、該立坑壁面に沿って垂直方向に段取り筋を立設すると共に円周方向に帯筋と、径方向で格子状に剪断補強筋をそれぞれ配筋結束又は溶接し、その後縦主筋を配設して上述したように各ブロック単位で順次地上まで、鉄筋構築とコンクリート打設を繰り返し、該立坑内に各ブロック単位で深礎杭基礎が一般的に構築施工されている。
【0004】
また、先行技術として、「深礎杭用鉄筋ユニット及びそれを使用した深礎杭の構築方法」があり、そのユニット及び深礎杭の構築方法は、所定ピッチで水平配置された円弧状の横配力筋12を適当間隔で配置された複数の縦捨筋14で連結した外鉄筋ユニット10及び内鉄筋ユニット11を、複数の外縦主筋64及び内縦主筋70を固着すると共にトラス構造の外スペーサー22及び内スペーサー24を縦方向に複数取付けた深礎杭用鉄筋ユニットを使用して、防御壁40内で各工程に沿って連結する深礎杭の構築方法がある。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
さらに、本出願人が特許登録した「仮組鉄筋ユニットの載せ換え移載による鉄筋施工方法」があり、その鉄筋施工方法は、地上にて予め仮組治具体に仮組鉄筋ユニットを仮組みし、該仮組鉄筋ユニットを仮組治具体から移載治具体に載せ換え、建て込み位置に釣支移送して該建て込み位置の縦筋に、該仮組治具体の仮組鉄筋ユニットを結束又は溶着固定して施工する鉄筋施工方法がある。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−218551号公報
【特許文献2】特許第4150981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
在来の深礎杭基礎の鉄筋組立体は、作業用足場を構設してから縦方向の縦主筋を深礎立坑内の外周のがぶり厚も考慮して二重に立設して構築されるが、この縦主筋立設の前に、要所箇所に段取り筋を立設し、該段取り筋に円弧状の複数の帯筋を順次配筋して環状に形成し、この状態では段取り筋が支持されておらず不安定の状態で構築されると共に径方向に複数の剪断補強筋を格子状に配筋して鉄筋組立体を構築し、そのほとんどの作業が深礎立坑内で行なわれ、地上での作業は、深礎立坑内に資材を降ろす作業に止まり、その深礎立坑内の作業においては、後述するような様々な課題が有ることから、地上にての作業に振り返られる施工技術が求められていた。
【0008】
そして、上述施工される鉄筋組立体の環径は、非常に大きなものとなるため(後述する。)、所要長さの帯筋を円弧状に形成したものと直線の剪断補強筋を、深礎立坑内の狭い作業用足場で環状と格子状に構築するのは、後述するように高重量の鉄筋の結束又は溶着作業をするのに、非常に人員と手間が掛かり、鉄筋の結束又は溶着作業で効率化が求められ、また特に狭い作業用足場での安全性と身体的疲労の改善も求められていた。
【0009】
また、従来の深礎杭基礎の構築は、上述の鉄筋構築からコンクリート打設まで所定の高さ(過去例として、4.8mから6.8m)の各ブロック単位で積み上げ構築され、そのとき鉄筋構築に使用された作業用足場の撤去とコンクリート打設、そしてその後、新たに次段ブロック用の作業用足場の構設する方法または作業用足場をそのままコンクリートの打設で埋め込んでしまう施工法があり、その何れの施工法も、作業時間若しくは作業用足場が無駄になっており、改善が求められていた。
【0010】
さらに、その各ブロック単位での構築は、コンクリートの打設後、凝固した後次のコンクリート打設の打ち継ぎの継ぎ目の密着度を増すためのレイタンス処理で、固まったそのコンクリート表面の不純物を取り除くために洗浄する必要があり、その洗浄後の洗浄水をポンプで汲み出し作業など時間と手間を要し、レイタンス処理などの期間は状況により5日程度を要し、ブロック単位の構築回数分がその期間の人員配置の無駄となり、改善が求められていた。
【0011】
加えて、該ブロック単位で深礎杭基礎の構築のさらなる課題は、地盤に深礎立坑を掘削して深礎立坑内の深礎抗底及び側壁に土留め用のコンクリート壁を形成するが、必ずしも該周壁が円形で底面も平坦に形成されず歪みが存在し、その状態で作業用足場と縦筋の段取り筋を配置し、その段取り筋に帯筋を深礎立坑内で環状に配筋、結束又は溶着して構築されるため、ブロック単位での鉄筋組立体が、環状で水平レベルを保っているかどうかは、数段の帯筋を構築するまで、その鉄筋組立体の水平レベルをトランシットなどの計測器で正確に計測しにくかった。
【0012】
そして、その水平レベルを調整も煩雑で、特に大径と高重量となるとそれが顕著であり、また上述した鉄筋構築の最初の段階では、段取り筋(本来構築する縦主筋より細い鉄筋が使われる。)で構築し、その後で縦主筋を配設して構築するが、その当初の段取り筋は特に支持されておらず不安定の状態で鉄筋組立体が構築され、現実、そのような水平レベルの不完全な構築状況で地上まで構築したとき、鉄筋組立体が崩壊する事故が発生し(雑誌、日経コンストラクション、2008年12月号、26頁から29頁に「事故の原因と再発防止策、29頁」が掲載されている。)、報告では、原因として決定づけられていないが、段取り筋の座屈が原因ではないか、その座屈の原因として段取り筋に偏心が生じていたことが指摘され、鉄筋組立体を構築するときの水平レベルを低い位置で正確に出せない在来工法の大きな課題となり、安全性にも課題を残し、低い位置で水平計測と容易に水平レベルが調整でき、且つ立設固定ができるものが求められていた。
【0013】
また、上述問題点は縦主筋(上述では段取り筋として使用している。)そのものの課題でもあり、つまりその縦主筋と円弧状の帯筋の構築において、並列する縦主筋に、帯筋両端のフックでそれぞれ掛け渡すように施工されるが、そのフックを掛けることが問題で、太い両縦主筋が垂直に立った状態で一方のフックは、縦主筋に容易に掛けられるが、その掛けた状態でもう一方のフックを掛けようとすると、そのフックの曲った部分が邪魔となり、両縦主筋を近づけるように撓ませてフックの先端を迂回するように掛けない限り該縦主筋に掛けられず、それは通常フックの曲げ部分から先端までの長さが一例で290ミリあり、このことはそのフックの先端が290ミリを迂回させなければ該縦主筋に掛ける事ができず、現実、縦筋は太く容易に歪ませることができず、また次々と掛止して環状になった最後の一箇所に掛けようとすると、その環状にすべて掛止された縦主筋は、もう撓むことは全くできないので、該フックが縦主筋を越せず、在来施工の縦主筋が配置された状態では、帯筋の両フックを該縦主筋の上部先端から挿入して所定の位置の下方に送り、帯筋両端の該両縦主筋にそのフックが掛かるように施工しており、非常に手間が掛かることから改善が求められていた。
【0014】
上述の帯筋の在来施工から分かるように、縦主筋若しくは段取り筋に帯筋を掛止しにくく、該縦主筋若しくは段取り筋を固定せず一時的に作業用足場に保持させたり、揺動可能な状態とすることで、帯筋を段取り筋に掛けやすく施工していることから円弧状の帯筋の施工は、制約が多く時間を要し、また配筋施工の最初の段階の手間と煩雑性と上述した水平レベル調整の煩雑性とその施工の安全性もあり、改善が求められていた。
【0015】
さらに、在来工法の立坑内での鉄筋構築作業は、帯筋及び剪断補強筋などの資材を絶えずクレーン等で降ろして貰い、特に帯筋は、両縦主筋の上部端からフック部を掛け渡すようにして挿入し一本一本降ろす必要があり非常に手間で、そしてそれらを段取り筋及び縦主筋に結束又は溶着する作業の繰り返しで、狭い作業用足場に立っての穴底から上を見上げるなど体のバランスを取りなからの作業が多く、注意力と体力を使い、心身共に非常に疲労を来たし、そして肩こりなど多くの人が経験し、それら疲労による安全性にも問題があり、さらにその作業者は、一日中深礎立坑内の空気環境の悪い場所での作業となる事が多く、それらの改善が求められていた。
【0016】
加えて、在来工法での上述した立坑内での作業は、通常でも危険が伴い、つまり上からの落下物、例えば、風などの影響によるホコリ、小石などの落下、またすべての資材が地上に貯蔵され、それらが絶えず降ろされてくることから、作業用足場等の関係もあり逃げ場が限られ待避できないこともあり、また地上側も含めて絶えず注意が必要で、通常の工事現場以上の注意力が要求され、さらに深い立坑内で長時間の作業であることから換気設備も必要とし、これらのことから作業員の疲労もはげしく、改善が求められていたことから、危険が伴う深礎立坑内での作業をできるだけ少なくし、地上での作業に極力振り替える事で、作業の効率化と危険作業の短縮を図り、作業の軽減と安全性を確保する事とし、加えて換気設備も必要としないなど上述した数々の課題の解決を図ることを目的としている。
【0017】
なお、上述施工される深礎杭の多くは、直径で8mから29mで、深さ19m程度(現場状況により他の寸法も選ばれる。)の規模であり、その施工で多く使用される鉄筋サイズにおいて、縦主筋はD51の規格サイズの重量は15.9kg/mであり、例えば、定尺12mの長さで約191kgの総重量で、また帯筋及び剪断補強筋でよく使用されるサイズのD29は5.04kg/mであり、定尺12mの長さで約60kgと相当の高重量で、このような重量物を、上述した在来工法ように、深礎立坑内で狭い作業用足場の上での手作業で鉄筋を結束又は溶着するのは、安全性と作業の効率化に課題を多く残すものであった。
【0018】
また、特許文献1の「深礎杭用鉄筋ユニット及びそれを使用した深礎杭の構築方法」は、深礎杭の防御壁40内で、その防御壁40にトラス構造の外スペーサー22を取り付け、次に外鉄筋ユニット10を外スペーサー22の波形ラチス筋28に引っかけ、外鉄筋ユニット10を結束し、次に内スペーサー24を取り付ける各工程で順次、組み上げることが開示されていますが、上述したように各鉄筋、単体の重量が非常に重く、それをユニット化したときの重量は過大で、その重量に耐える状態に補強、組み立てされているユニットでないので、その取り扱い、移動に於いては、クレー等で且つ移動させるための治具等が必要で、開示された内容のように、防御壁40に単純に降ろすという事が効率よくできなかった。
【0019】
つまり、開示された深礎杭用鉄筋ユニットは、鉄筋を円弧状の横配力筋12を適当間隔で配置された複数の縦捨筋14で連結した外鉄筋ユニット10及び内鉄筋ユニット11を溶接構造で筒状に各段、製造されるが、(特許文献1の[0012]に記載されている。)上述したように、深礎杭で使用される鉄筋の重量が過大で、上述のような立体構造のユニットでは形状が安定せず、また防御壁40内に降ろす段階でも形状が保てず、課題が多かった。
【0020】
さらに、特許文献2の「仮組鉄筋ユニットの載せ換え移載による鉄筋施工方法」は、仮組治具体に仮組鉄筋ユニットを仮組みし、該仮組鉄筋ユニットを仮組治具体から移載治具体に載せ換え、建て込み位置に釣支移送して該建て込み位置の縦筋に、該仮組治具体の仮組鉄筋ユニットを結束固定して施工することから、深礎杭用基礎の縦主筋は、固定立設された状態で施工されないので、特許文献2の仮組鉄筋ユニットをそのまま釣支移送しても、該ユニットを縦主筋に結束して鉄筋組立体の構築する施工ができず、また数多くの該縦主筋にそれぞれ結束するまで移載治具体から該仮組鉄筋ユニットを切り離すことができず、よってこの特許文献2の工法では、深礎立坑内の施工のスピード化及び安全性が得られず、このことから鉄筋のユニット化と該鉄筋ユニットの釣支移送の概念は類似でも、構築する対象物及びその条件が相違すると課題が多く全く対応できず、深礎杭用の施工法に適した鉄筋ユニット及び吊支体とその深礎杭鉄筋の施工法の改良が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、上記課題を有効に達成するために、第1の解決手段として、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を環状に連結形成すると共に該環状の帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して鉄筋ブロック体を形成し、該鉄筋ブロック体を梯子筋の各支持受け筋にそれぞれ結束又は溶着して鉄筋ユニット体とすると共に該梯子筋の配置は、環状の該帯筋及び剪断補強筋の所要部に複数配置し、且つ該梯子筋又は仮組治具又はその双方が、予め位置出しされて鉄筋ユニット体として地上で構築される第一の行程と、
該鉄筋ユニット体を吊支体で深礎立坑に吊支移送すると共に該深礎立坑内の壁面に沿ってガイド体を支持立設させ、該ガイド体に沿って深礎立坑内の所定位置まで移送降下させて、該ガイド体に鉄筋ユニット体を結束又は溶着する第二の行程と、
移送された該鉄筋ユニット体の各梯子筋同士に重装溶着すると共にその重装溶着後、後追いで作業用足場を鉄筋ユニット体構築と共に順次構設する第三の行程と、
深礎立坑内に鉄筋ユニット体が構築された後、縦主筋を該鉄筋ユニット体の各所要位置にそれぞれ配置すると共に結束又は溶着する第四の行程から鉄筋組立体を構築することで、
地上で鉄筋ユニットを組み立て、深礎立坑内に吊支体で移送し、該深礎立坑内にガイド体で位置決め移送配置して鉄筋ユニット体単位で構築すると共に作業用足場を後追いで構設し、縦主筋を立設後、鉄筋ユニット体に結束又は溶着して鉄筋組立体を円滑に構築する事としている。
【0022】
また、第2の解決手段として、該鉄筋ユニット体の高さを作業員の目線より若干低い程度の高さとすると共に前記梯子筋の各支持受け筋又は該仮組治具の各支持体又はその双方に鉄筋ブロック体を支持することで、
地上及び深礎立坑内で鉄筋ユニット体の構築及び重装構築作業を円滑にする事としている。
【0023】
また、第3の解決手段として、鉄筋ユニット体の吊支移送は、仮組治具に構築された鉄筋ユニット体を吊支体に設けられた移送治具体の支持金具に移載して吊支移送することで、
鉄筋ユニット体を移送治具体の支持金具に移載することで、該鉄筋ユニット体の構築と吊支移送を円滑にする事としている。
【0024】
また、第4の解決手段として、鉄筋ユニット体の各梯子筋同士を段重ねで重装固定した後、該鉄筋ユニット体より一段低い位置を作業用足場として後追いで地上近傍まで鉄筋ユニット体と共に構設することで、
鉄筋ユニット体の吊支移送と重装構築を円滑にする事としている。
【0025】
また、第5の解決手段として、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を内外二重の環状に所要数で連結形成すると共に該環状の帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して形成される一段の鉄筋ブロック体と、梯子筋に設けられた支持受け筋に上記鉄筋ブロック体をそれぞれ結束又は溶着すると共に該梯子筋を該環状の帯筋及び剪断補強筋に複数箇所配設して結束又は溶着することで、
鉄筋ブロック体で鉄筋ユニット体を構築すると共に深礎立坑内に移送し、該深礎立坑内で該鉄筋ユニット体を各重装して鉄筋組立体を構築すること事としている。
【0026】
また、第6の解決手段として、梯子筋を上下で連結できるように、該梯子筋の少なくとも上下どちらか一方に連結体を設けることで、
鉄筋ユニット体の重装の位置ずれと高さ調整をすると共に溶着連結する事としている。
【0027】
また、第7の解決手段として、梯子筋を有する該鉄筋ユニット体の平面形状に対応するように吊り枠体を形成し、該吊り枠体に移送治具体を垂下状に所要数配設したことで、
仮組治具に構築された鉄筋ユニット体を吊り枠体の移送治具体の支持金具に移載して深礎立坑内に吊支移送する事としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上述したそれぞれの手段によって有効な効果が得られるようにしたもので、特に、地盤に基礎用の深礎立坑を掘削して土留め施工された該深礎立坑内に鉄筋組立体を構築する鉄筋構築施工法において、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を内外二重の環状に所要数で連結形成すると共に該環状の帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して形成される鉄筋ブロック体を一段とし、上記鉄筋ブロック体を結束又は溶着支持する支持受け筋を梯子筋に所定間隔をもって所要段数設けると共に該支持受け筋に鉄筋ブロック体を結束又は溶着支持して鉄筋ユニット体とし、また該梯子筋の配置は、環状の該帯筋及び剪断補強筋の所要部にそれぞれ複数配置され、且つ該鉄筋ブロック体が正確に所定形状に形成されるように該梯子筋又は仮組治具又はその双方が、予め位置出しされて地上で鉄筋ユニット体を構築する第一の行程と、
該深礎立坑壁面の所要位置に、ガイド体を所要本数少なくとも壁面より立設支持させ、該鉄筋ユニット体を吊支体で深礎立坑に吊支移送すると共に該ガイド体に沿って深礎立坑内の所定位置まで移送降下させて、該鉄筋ユニット体をガイド体に結束又は溶着する第二の行程と、
移送された該鉄筋ユニット体の各梯子筋同士を重装溶着すると共にその重装溶着後、後追いで作業用足場を鉄筋ユニット体構築と共に順次構設する第三の行程と、
深礎立坑内に所定の鉄筋ユニット体が構築された後、縦主筋を該鉄筋ユニット体の各所要位置にそれぞれ配設すると共にその縦主筋と鉄筋ユニット体を結束又は溶着して鉄筋組立体として構築する第1の解決手段により、
上記第一の行程から、地上で、梯子筋に各鉄筋ブロック体単位で鉄筋ユニット体を構築しているので、最も時間を要する鉄筋ユニット体の構築が地上で行なえるので安全で、また従来のように、高重量で数多くの資材をクレーンでその都度降ろす必要が無く、すべて構築現場近くに置いておけることで、作業性が良く効率化できることから、鉄筋組立体の工期の大幅な短縮とコストの低減が図れる。
【0029】
また、第二の行程から、鉄筋ユニット体を深礎立坑に吊支移送して、ガイド体に沿って降下させるので、深礎立坑内で各鉄筋ユニット体を重装固定する位置出しが容易となると共に該ガイド体に鉄筋ユニット体を結束又は溶着することで、鉄筋組立体の崩れなどに繋がらず、また第一の行程で正確に所定形状の鉄筋ユニット体が構築できるのでガブリが、手間を要することなく正確に出せ、これは上述した在来の掘削と土留め施工により形成される深礎立坑が正確な円筒状に形成できないので、鉄筋組立体の水平レベルを正確に出すのに非常に手間が掛かり困難で時間を要し、施工期間の遅延となっていたことが解決でき、鉄筋ユニット体の重装により容易に短時間で鉄筋組立体が構築できる。
【0030】
さらに、第三の行程から、地上から深礎立坑内の所定重装位置へ移送するとき、作業用足場が邪魔で見えなくなることなく、目視で該降下作業ができるので、降下設置場所で作業員による誘導作業も必要ないので、鉄筋ユニット体を降下させるまでその場で待機する必要も無く、安全に鉄筋ユニット体を降下させることができ、よって鉄筋ユニット体の移送作業が安全に捗り、吊支移送の時間短縮となる。
【0031】
そして、第四の行程から、深礎立坑内に鉄筋ユニット体が構築された後、縦主筋と鉄筋ユニット体を結束又は溶着することから、従来のように縦主筋を歪ませて帯筋の両端フック部を掛けたり、縦主筋の上端から挿通したりする手間の掛かる作業が無く、鉄筋組立体の上部から縦主筋を挿通して該鉄筋組立体に結束又は溶着することで完成するので、施工が容易で、短時間に施工完了となる。
【0032】
これらのことから、上述した多くの課題を取り除き、鉄筋構築のほとんどの作業を地上に振り替えることで深礎立坑内での作業を最小限に止め、作業員の作業環境衛生と疲労が比較的少なく安全で、作業の一元化による効率化で施工が早く、これを実証するため、施工規模において立杭抗径が14m、深さ19m規模の鉄筋組立体を構築する実証施工に使用した時、在来工法の過去実績では、平均約13人/日の人員で、約40日程度の施工期間を要するが、本発明の深礎杭の鉄筋構築施工法では、平均約7人/日の人員で、11日間で完了することができ、改めて施工期間の早さが実証できた。
【0033】
また、鉄筋ブロック体を梯子筋に所要段数結束又は溶着して鉄筋ユニット体を形成する該鉄筋ユニット体の高さを、作業員の目線より若干低い程度の高さとすると共に前記梯子筋の各支持受け筋又は仮組治具の各支持体又はその双方に支持させる第2の解決手段により、
従来のように鉄筋の結束又は溶着作業が下から上向きまで様々な姿勢が要求されることなく、常に作業者に対して目線以下の位置で作業が行なえるので、腕及び肩に掛かる負担が軽減でき、また後述する深礎立坑内で鉄筋ユニット体の各梯子筋に重装固定する溶接作業などの作業性も、不安定な作業用足場の上でも、上述のように目線以下の位置で行なえ、作業姿勢のバランスが取りやすく、安全に効率よく作業ができる。
【0034】
さらに、深礎立坑内で鉄筋ユニット体の各梯子筋に重装固定する溶接などの作業性は、地上の溶接作業と違って、深礎立坑内の作業用足場と言う狭く危険を伴う作業場所での作業から特に重要で、上述のように目線以下の位置で作業が行なえると言うことは、作業姿勢のバランスが取りやすく作業員の安全性と疲労が少なく、作業環境衛生と安全で効率よく作業ができる。
【0035】
また、吊支体による鉄筋ユニット体の吊支移送は、仮組治具に構築された鉄筋ユニット体を吊支体に設けられた移送治具体の支持金具に移載して吊支移送する第3の解決手段により、
仮組治具により正確に完成された状態の鉄筋ユニット体を地上で構築することができ、該鉄筋ユニット体をその完成された状態で、素早く深礎立坑内に移送できることで、鉄筋組立体の構築施工が早くでき、施工工期の短縮となる。
【0036】
また、作業用足場の構設を、鉄筋ユニット体の各梯子筋同士を段重ねで重装固定した後、該鉄筋ユニット体より一段低い位置を作業用足場として後追いで構設する第4の解決手段により、
鉄筋ユニット体を地上からクレーなどで深礎立坑内に吊支移送するとき、作業用足場が邪魔になってその移送する鉄筋ユニット体が見え辛くなることもなく、確認しながら移送と作業員が深礎立坑内で補助することなく位置合わせができるので、移送作業が捗り、且つ安全に位置合わせができることで、施工時間の短縮にも繋がる。
【0037】
また、深礎立坑内に鉄筋組立体を構築する鉄筋ユニット体において、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を内外二重の環状に所要数で連結形成すると共に該環状の帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して形成される鉄筋ブロック体を一段とし、
また梯子筋の支持受け筋を所定間隔で所要段数設け、該支持受け筋に上記鉄筋ブロック体を結束又は溶着支持すると共に該梯子筋の配設を鉄筋ブロック体の該帯筋及び剪断補強筋の所要位置にそれぞれ複数配設して結束又は溶着した第5の解決手段により、
帯筋及び剪断補強筋が梯子筋により正確な配置で鉄筋ユニット体を形成できることで、正確に鉄筋組立体が構築でき、そのことで深礎立坑内の壁面と鉄筋組立体とのガブリも正確に設定でき、また鉄筋ユニット体が歪み無く正確に段重ねで重装でき、そのことで鉄筋組立体の座屈を防ぐことができるので、該鉄筋組立体が崩れるようなこともなく、安全に早く施工ができ、コスト削減にもなる。
【0038】
また、梯子筋を、上下で連結できるように、該梯子筋の少なくとも上下どちらか一方に板状の連結体を設けた第6の解決手段により、
梯子筋の連結体で、該梯子筋を重装して鉄筋組立体を構築するとき、該梯子筋を重装したときの傾きを連結体の厚さ若しくは間にプレートを挟み入れる等によって傾き調節ができ、また深礎立坑内に最初の段階の鉄筋構築で、その水平レベル調整を深礎立坑内の底面と該連結体で上記のように調整できるので、水平レベルを保ち鉄筋組立体が崩れるようなこともなく、正確に安定した鉄筋組立体が安全に早く施工ができ、さらに梯子筋の連結体を溶着して重装することで、鉄筋ユニット体が素早く重装構築できるので重装施工が容易となり、施工工期も短縮できる。
【0039】
また、深礎立坑内に鉄筋ユニット体を吊支移送する吊支体において、梯子筋を有する該鉄筋ユニット体の平面形状に対応するように吊り枠体を形成し、該吊り枠体に移送治具体を垂下状に所要数配設した第7の解決手段により、
鉄筋ユニット体を型くずれすることなく安全に素早く吊支移送が可能となり、このことは地上で該鉄筋ユニット体の構築が可能となることに他ならないから、鉄筋構築の時間を要する作業がほとんど地上で可能となり、また上述した危険要素が多く存在する深礎立坑内の作業が大幅に減らすことができ、最良の安全対策となる。
【0040】
また、梯子筋を使用した鉄筋ユニット体により深礎立坑内に移送して、設置された梯子筋に重装移載と該鉄筋ユニット体のレベル出しから重装固定までが素早くでき、工期の短縮が図れる。
よって、本発明は、実用上著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】 本発明の実施例の全体イメージを示す正面部分断面図である。
【図2】 鉄筋ユニット体の平面図である。
【図3】 両受け梯子筋の中間を略した斜視図である。
【図4】 片受け梯子筋の中間を略した斜視図である。
【図5】 鉄筋ユニット体の両受け梯子筋を重装した要部の正面図である。
【図6】 鉄筋ユニット体の片受け梯子筋を重装した要部の正面図である。
【図7】 鉄筋ユニット体に吊枠体を配置、取付状態を示す全体の平面図である。
【図8】 仮組治具の中間を略した斜視図である。
【図9】 吊枠体で鉄筋ユニット体を吊支する状態を示す要部の正面図である。
【図10】 吊枠体の移送治具体の支持金具に鉄筋を支持した状態を示す要部の側面図である。
【図11】 鉄筋ユニット体を吊支移送して重装する状態を示す要部の正面部分断面図である。
【図12】 鉄筋組立体に縦主筋を配置、取付状態を示す要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
深礎立坑内に鉄筋組立体を構築する鉄筋構築施工法であって、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を環状に連結すると共に該帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して鉄筋ブロック体を形成し、該鉄筋ブロック体を梯子筋の複数の各支持受け筋にそれぞれ結束又は溶着すると共に該帯筋及び剪断補強筋の所要位置に複数配置し、且つ該梯子筋は、予め位置出しされて配置される第一の行程と、
該鉄筋ユニット体を吊支体で吊支移送すると共に該深礎立坑内の壁面のガイド体に沿って移送降下させ、該ガイド体と鉄筋ユニット体を結束又は溶着する第二の行程と、
前記移送により該鉄筋ユニット体の各梯子筋に重装固定すると共にその鉄筋ユニット体移送後、その後追いで作業用足場を順次、構設する第三の行程と、
深礎立坑内に鉄筋ユニット体が構築された後、縦主筋を配置すると共にその縦主筋と鉄筋ユニット体を結束又は溶着して鉄筋組立体を構築する施工法と、
連結体を設けた梯子筋を有する鉄筋ユニット体と、
仮組治具に構築された該鉄筋ユニット体を吊り枠体の移送治具体の支持金具に移載して深礎立坑内に吊支体で吊支移送することより、
時間を要する鉄筋組立体の構築を、鉄筋ユニット体として地上で行なうことで安全に、且つ容易に組立でき、施工工期の短縮を実現させた。
【実施例】
【0043】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1において、1は鉄筋ユニット体で、該鉄筋ユニット体1は、深礎立坑2内に吊支体3で吊支移送され、該深礎立坑2内のガイド筋4に沿って移送降下して深礎立坑2内の底面から積み上げ構築される。
【0044】
そこで、上記深礎立坑2は、橋梁及び送電線鉄塔などを構築する場合の基礎として構築され、該深礎杭基礎は、図1に示すように、まず地盤を掘削して深礎立坑2を形成し、該深礎立坑2周面を土留め用コンクリート若しくはライナープレートなど防御壁5を構築すると共に該防御壁5の周壁に、鉄筋ユニット体1の移送下降を容易にするため上部端が外側に若干曲げられて形成されたガイド筋4,4,…を立設し、該ガイド筋4,4,…を支持するガイド筋用刺し筋6,6,…を防御壁5の周壁より突設させると共に地上から底面まで所定間隔で設けている。
【0045】
また、鉄筋ユニット体1は、図2に示すように、深礎立坑径に対応した円弧状で両端フック形状を形成した帯筋7,7,…を環状に所定のラップ長で連結すると共に内外二重の環状に連結形成し、該環状の帯筋7,7,…に剪断補強筋8,8,…を上述同様所定のラップ長で連結すると共に径方向に格子状に配筋して鉄筋ブロック体9として形成すると共に後述する該鉄筋ブロック体9を両受け梯子筋10と片受け梯子筋11により複数段支持することで形成される。
【0046】
そこで、両受け梯子筋10は、図3に示すように断面略コの字状の支持本体10aとその下端に板状の連結体12を設けると共に棒状の支持受け筋13,13,…を該支持本体10aの左右側に突出するようにその下部から所定間隔で六箇所設けている。なお、上述断面略コの字状は、角パイプ状などでも良く、特に形状には拘らない。
【0047】
また、片受け梯子筋11は、図4に示すように、断面略L字状の支持本体11aと下端に板状の連結体12aを設けると共に棒状で一方側に突出する支持受け筋14,14,…をその下部から所定間隔で六箇所設けている。なお、上述断面略L字状は、角パイプ状などでも良く、特に形状には拘らない。
【0048】
そして、該両受け梯子筋10は、図2に示すように、環状に構築された帯筋7,7,…の内外二重のその間であって、また図5に示すように帯筋7,7,…を支持受け筋13,13,…で支持受けすると共に剪断補強筋8,8,…の先端のフック部15,15,…で該帯筋7,7,…を掛止して、さらにクロスして重ねるように該剪断補強筋8,8,…を掛止支持受けし、結束又は溶着して構築される。
なお、図2に示す該両受け梯子筋10の配置は、八箇所それぞれ配設されているが特に配置数は限定されることなく鉄筋ユニット体1の環状径に対応して決められる。
【0049】
また、該片受け梯子筋11は、図2に示すように、剪断補強筋8,8,…が格子状にクロスした近傍の所定位置、図示では十二箇所配置し、また図6に示すように剪断補強筋8,8,…を支持受け筋14,14,…で支持受けすると共にその上にクロスして重ねるように剪断補強筋8,8,…を支持受けすると共に結束又は溶着して構築される。
なお、該片受け梯子筋11の配置位置と配置数は鉄筋ユニット体1の環状径に対応して決められる。
【0050】
そして、上述両受け梯子筋10と片受け梯子筋11の一段の支持受け筋13と支持受け筋14により、それぞれ支持受けされたその一段の帯筋7,7,…と剪断補強筋8,8,…を鉄筋ブロック体9として形成する。
【0051】
なお、上述のように円弧状の帯筋7,7,…と直線状の剪断補強筋8,8,…には、それぞれ先端側にフック部15,15が形成され、該フック部15,15の部分で所定のラップ長で連結されて、それぞれ所定の環径又は長さに連結形成される。
【0052】
しかして、鉄筋ユニット体1として構築する手順において、図7に示すように、該鉄筋ユニット体1が所定形状となるように、予め仮組治具16,16,…を所定位置に配置固定すると共に両受け梯子筋10,10,…及び片受け梯子筋11,11,…もそれぞれ所定位置に移送可能に配置する。
【0053】
そこで、仮組治具16は、図8に示すように、横断面略T字状の支柱本体17とその下部に支柱保持ベース18を形成し、該支柱保持ベース18で立設支持された支柱本体17の前面側に、回動支持体19,19,…を上述支持受け筋13,14と同様の間隔と配置数を持って回動可能に枢着突設され、また該回動支持体19,19,…は、その突出部分の上部側に凹状の支持受け部20を形成すると共に水平から後方へ反転可能に支持され、なお図中21は、各回動支持体19,19,…の回動止めのストッパー21である。
【0054】
そして、上述仮組治具16,16,…を鉄筋ユニット体1として構築されるその外径より外側の所定位置に、予め固定して配設し、また両受け梯子筋10,10,…をその二重の環状の中間位置で移動可能に配置し、そして片受け梯子筋11,11,…は環状の内側の所定位置にそれぞれ移動可能に配置すると共にその配置状態で該仮組治具16,16,…の回動支持体19,19,…と両受け梯子筋10,10,…の支持受け筋13,13,…に、円弧状の帯筋7を支持させると共に所定のラップ長で連結して環状に形成し、また環状の内側に位置する該支持受け筋13,13,…に同様に帯筋7を支持させて内外二重の環状に支持させ、結束または溶着する。
【0055】
また、剪断補強筋8,8,…は、図6及び図7に示すように、環径に合わせて所定のラップ長で連結した直線で、その両端のフック部15,15を上記環状に形成された外側の帯筋7に掛止させて、所定の格子状に配設して構築すると共に片受け梯子筋11,11,…の支持受け筋14,14,…で所定の六段分支持受させて結束または溶着し、上記環状の帯筋7と剪断補強筋8,8,…にて鉄筋ブロック体9として構築し、該鉄筋ブロック体9をそれぞれ仮組治具16,16,…に支持させると共に両受け梯子筋10,10,…及び片受け梯子筋11,11,…に支持させて溶着又は結束して鉄筋ユニット体1を構築している。
【0056】
しかして、図1に示すように、地上に構築された鉄筋ユニット体1をクレーン22などを介して吊支体3で該鉄筋ユニット体1を吊支移送し、そして深礎立坑2に降下させて、深礎立坑2の底面より該鉄筋ユニット体1を積み上げ構築して鉄筋組立体23として構築する。
【0057】
そこでその移送に於いて、図7に示すように、吊支体3は、角パイプなどで平面八角形状に形成される吊り枠体3aと直線状の直線吊支枠3bを有し、該吊支体3をクレーン22等で吊支移送するが、該吊支体3は、図7及び図9に示すように、移送治具体24を所定位置に垂下状に設けている。
【0058】
該移送治具体24は、図9及び図10に示すように、縦長の支持本体25に帯筋7,7,…と同位置に支持金具26,26,…を回動可能にそれぞれ六ヶ所枢着配置し、該支持金具26は、図10に示すように、支持本体25の前面側より回動可能に突設させ、且つその突出部分の上部側に凹状の支持受け部27を形成すると共に水平から後方へ反転可能に枢着され、また該支持金具26に帯筋7を保持する押さえ保持金具28を回動可能に枢着している。
【0059】
なお、直線状の直線吊支枠3bに垂下支持されている移送治具体24は、上述と同様のもので、且つ同様に作用することから特に図示は図7に配置位置を示し、説明は省略した。また、図中29,30は、支持金具26及び押さえ保持金具28の回動止めのストッパー29,30である。
【0060】
そして、上述したように地上で構築された鉄筋ユニット体1を、吊支体3にて移送するとき、まず、図9に示すように、吊支体3に設けられた移送治具体24を帯筋7,7,…の環状の内側の上部から降下させ、その時、支持金具26,26,…及び押さえ保持金具28,28,…が帯筋7,7,…に当接すると共に後方に反転状に揺動しながら、帯筋7,7,…をやり過ごし、図中矢視で示したように下まで下降させる。
【0061】
その下まで降下させた時、図10に示すように支持金具26が回動状に後方に揺動して、元の水平位置で静止したとき若干、吊支体3を持ち上げることで、図示のように帯筋7を支持受けし、そして押さえ保持金具28で該帯筋7を押さえ保持し、回動止めのストッパー29,30で止め、該帯筋7が保持されることで、鉄筋ユニット体1が移送治具体24に保持され、吊支体3にて移送可能となる。
【0062】
上述した、支持金具26,26,…及び押さえ保持金具28,28,…で帯筋7,7,…を押さえ保持した状態で該鉄筋ユニット体1を吊支移送するが、仮組治具16,16,…は、該鉄筋ユニット体1を移送治具体24に移載された後そのままの状態で立設している。
【0063】
また、該仮組治具16,16,…から移送治具体24,24,…に移載される状況は、鉄筋ユニット体1を吊支移送する時、吊支体3で鉄筋ユニット体1を吊り上げると、該鉄筋ユニット体1の帯筋7,7,…が、上述仮組治具16,16,…の回動支持体19,19,…の下側から上述支持金具26,26,…と反対の作用で当接押し上げられ、水平から後方へ反転することで移送治具体24,24,…に移載吊支される。
【0064】
そして、図1に示すように、吊支体3で鉄筋ユニット体1を深礎立坑2内に移送し、該鉄筋ユニット体1の帯筋7,7,…がガイド筋4,4,…に沿うように降下させる。
なお、最初の一段目は、該深礎立坑2内の底面に載置すると共に鉄筋ユニット体1の水平レベルを設定するため、トランシットなどの計測器で正確に計測して、該鉄筋ユニット体1の両受け梯子筋10,10,…及び片受け梯子筋11,11,…の連結体12,12aで、底面との高さ調節を底上げ用の板状のものを介し又は連結体12,12aの厚さを代えて調節する。
【0065】
そして、図11に示すように、鉄筋ユニット体1の両受け梯子筋10,10,…及び片受け梯子筋11,11,…の連結体12,12aを二段重装して各溶着固定すると共にガイド筋4,4,…と帯筋7,7,…も溶着固定した後、一段目の作業用足場31を構設し、そしてさらに次の鉄筋ユニット体1を重装構築するとき、作業員はその鉄筋ユニット体1を地上で構築し、そしてそれを降下させた後に、その一段目の作業用足場31まで降りてきて、該鉄筋ユニット体1の両受け梯子筋10,10,…及び片受け梯子筋11,11,…の上部と、該連結体12,12aを重装させると共に位置出しと水平レベル出しを行なった後、溶着固定する。
【0066】
以上のように、鉄筋ユニット体1を構築、移送、重装固定を繰り返し、地上まで該鉄筋ユニット体1を積み上げ構築した後、図12に示すように、最後に深礎立坑2内の所定の帯筋7,7,…に縦主筋32,32,…を挿入して底面から立設させると共に帯筋7,7,…に溶着又は結束して鉄筋組立体23を構築する。
その構築完了後、深礎立坑2内にコンクリートを打設して、深礎杭基礎が完成する。
【0067】
なお、第三の行程で一気に地上まで組み上げ、鉄筋組立体23を構築後、最後にまとめてコンクリート打設する実施例を示しているが、鉄筋施工の途中でコンクリート打設の実施をする事については、深礎杭の規模と近隣の生コン業者の製造能力に応じて適宜変更、実施される。
【0068】
また、吊支体3の移送治具体24で移送しているが、吊支体3の吊り枠体3aで直接、両受け梯子筋10,10,…及び片受け梯子筋11,11,…を吊支して移送しても良いが、特に図示は省略した。
【0069】
さらに、深礎杭基礎が構築される場所の自然環境及び施工仕様によって、本発明で使用される各部材は、大きく左右されるので、各部材の形状、使用数などは、適宜設計変更される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、橋梁及び送電線鉄塔などを構築する場合の深礎杭基礎用に使用する、鉄筋組立体の構築施工及び鉄筋組立体を構成する鉄筋ユニット体とその移送に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 鉄筋ユニット体
2 深礎立坑
3 吊支体
4 ガイド筋
7 帯筋
8 剪断補強筋
9 鉄筋ブロック体
10 両受け梯子筋
11 片受け梯子筋
12,12a 連結体
13,14 支持受け筋
15 フック部
16 仮組治具
19 回動支持体
23 鉄筋組立体
24 移送治具体
26 支持金具
31 作業用足場
32 縦主筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に基礎用の深礎立坑を掘削して土留め施工された該深礎立坑内に鉄筋組立体を構築する鉄筋構築施工法において、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を内外二重の環状に所要数で連結形成すると共に該環状の帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して形成される鉄筋ブロック体を一段とし、上記鉄筋ブロック体を結束又は溶着支持する支持受け筋を梯子筋に所定間隔をもって所要段数設けると共に該支持受け筋に鉄筋ブロック体を結束又は溶着支持して鉄筋ユニット体とし、また該梯子筋の配置は、環状の該帯筋及び剪断補強筋の所要部にそれぞれ複数配置され、且つ該鉄筋ブロック体が正確に所定形状に形成されるように該梯子筋又は仮組治具又はその双方が、予め位置出しされて地上で鉄筋ユニット体を構築する第一の行程と、
該深礎立坑壁面の所要位置に、ガイド体を所要本数少なくとも壁面より立設支持させ、該鉄筋ユニット体を吊支体で深礎立坑に吊支移送すると共に該ガイド体に沿って深礎立坑内の所定位置まで移送降下させて、該鉄筋ユニット体をガイド体に結束又は溶着する第二の行程と、
移送された該鉄筋ユニット体の各梯子筋同士を重装溶着すると共にその重装溶着後、後追いで作業用足場を鉄筋ユニット体構築と共に順次構設する第三の行程と、
深礎立坑内に所定の鉄筋ユニット体が構築された後、縦主筋を該鉄筋ユニット体の各所要位置にそれぞれ配設すると共にその縦主筋と鉄筋ユニット体を結束又は溶着して鉄筋組立体として構築することを特徴とした深礎杭の鉄筋構築施工法。
【請求項2】
前記第一の行程の鉄筋ブロック体を梯子筋に所要段数結束又は溶着して鉄筋ユニット体を形成する該鉄筋ユニット体の高さを、作業員の目線より若干低い程度の高さとすると共に前記梯子筋の各支持受け筋又は仮組治具の各支持体又はその双方に支持させることを特徴とした請求項1の深礎杭の鉄筋構築施工法。
【請求項3】
前記第二の行程の吊支体による鉄筋ユニット体の吊支移送は、仮組治具に構築された鉄筋ユニット体を吊支体に設けられた移送治具体の支持金具に移載して吊支移送することを特徴とした請求項1又は請求項2の深礎杭の鉄筋構築施工法。
【請求項4】
前記第三の行程の作業用足場の構設を、鉄筋ユニット体の各梯子筋同士を段重ねで重装固定した後、該鉄筋ユニット体より一段低い位置を作業用足場として後追いで構設することを特徴とした請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した深礎杭の鉄筋構築施工法。
【請求項5】
深礎立坑内に鉄筋組立体を構築する鉄筋ユニット体において、円弧状で両端フック形状を有する帯筋を内外二重の環状に所要数で連結形成すると共に該環状の帯筋に剪断補強筋を径方向に格子状に配筋して形成される鉄筋ブロック体を一段とし、
また梯子筋の支持受け筋を所定間隔で所要段数設け、該支持受け筋に上記鉄筋ブロック体を結束又は溶着支持すると共に該梯子筋の配設を鉄筋ブロック体の該帯筋及び剪断補強筋の所要位置にそれぞれ複数配設して結束又は溶着したことを特徴とする鉄筋ユニット体。
【請求項6】
前記梯子筋を、上下で連結できるように、該梯子筋の少なくとも上下どちらか一方に板状の連結体を設けたことを特徴とする請求項5記載の鉄筋ユニット体。
【請求項7】
深礎立坑内に鉄筋ユニット体を吊支移送する吊支体において、梯子筋を有する該鉄筋ユニット体の平面形状に対応するように吊り枠体を形成し、該吊り枠体に移送治具体を垂下状に所要数配設したことを特徴とする鉄筋ユニット体の吊支体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−168879(P2010−168879A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34505(P2009−34505)
【出願日】平成21年1月24日(2009.1.24)
【特許番号】特許第4385236号(P4385236)
【特許公報発行日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(596133083)
【Fターム(参考)】