説明

深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材、および深絞り包装体

【課題】透明性、光沢を損なうことなく、ヒートシール部が硬く、パック直後のカールが良好な深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材、および深絞り包装体を提供する。
【解決手段】非晶性ポリエステル系樹脂からなる最外層、融点が135〜170℃のポリプロピレン(PP)からなる中間層、および凝集破壊性を有するイージーピール層からなる最内層を有する、厚み40〜60μmの積層フィルムであり、当該フィルムの10%モジュラスが0.9MPa以上であることを特徴とする深絞り成形用フィルム、当該深絞り成形用フィルムにより形成される深絞り包装体用底材、および当該底材を使用してなる深絞り包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてスライスハム、スライスベーコン等の包装に好適に使用できる深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材および深絞り包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライスハム、スライスベーコン等の深絞り包装用フィルムとして、外層にポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)、中間層にナイロン(Ny)およびエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)を配し、かつシール層に凝集破壊タイプのイージーピール層を有する複合フィルムが広く一般に使用されている(例えば、特許文献1)。その理由は、この構成を有する深絞り包装体が良好なフィルムの腰を有し、光沢・透明性に優れ、かつ見栄えも非常に良好であるためである。
【0003】
しかし、近年においては、内容物の少量化が進むと同時に、使用されるフィルムも80μm以下にまで薄肉化が進んできた。スライスハム、スライスベーコン等の深絞り包装体はフィルムの透明性、光沢はもとより、ヒートシール部の硬さやカールが重要視されている。そのため、フィルムの厚みが薄くなると、ヒートシール部の硬さがなくなり、カールも悪くなる傾向にあり、店頭での見栄えや手触り感が失われる。また、近年は包装体を3個または4個ずつずらしながら重ねてラベルで接着して店頭販売するいわゆる3連パック、4連パックが主流となっている。しかし、ヒートシール部の硬さが不足したり、パック直後のカールが悪くなったりすると、ラベルを貼り付ける際に包装体を整列させにくくなって、ラベルが斜めになったり、ライン上で包装体が詰まったりして、ラインがストップするといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−281892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の上記問題点を解決しようとするものであり、本発明の解決課題は、透明性、光沢を損なうことなく、ヒートシール部が硬く、パック直後のカールが良好な深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材、および深絞り包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用すれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、非晶性ポリエステル系樹脂からなる最外層、融点が135〜170℃のポリプロピレン(PP)からなる中間層、および凝集破壊性を有するイージーピール層からなる最内層を有する、厚み40〜60μmの積層フィルムであり、当該フィルムの10%モジュラスが0.9MPa以上であることを特徴とする深絞り成形用フィルム、当該深絞り成形用フィルムにより形成される深絞り包装体用底材、および当該底材を使用してなる深絞り包装体に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の深絞り用フィルムによれば、透明性、光沢を損なうことなく、ヒートシール部が硬く、カールが良好な深絞り成形用フィルム、深絞り包装体用底材、および深絞り包装体を提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【0009】
また、本発明の深絞り包装体は本発明のフィルムからなるため、本発明であれば光沢性
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層フィルムは、最外層として非晶性ポリエステル系樹脂層、中間層として融点が135〜170℃のポリプロピレン(PP)層、および最内層として凝集破壊性を有するイージーピール層を少なくとも有するものである。
【0011】
本発明のフィルムの最外層を構成する非晶性ポリエステル樹脂とは、例えば、多価アルコール成分100モル%中に1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上含まれるポリエステル樹脂である。非晶化度を高める観点からは、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上、さらには12モル%以上、特に15モル%以上含むことが望ましい。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの衝撃強度が低下してしまうため、上限は50モル%とすることが好ましく、47モル%以下とすることがより好ましく、45モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0012】
本発明のフィルムでは、耐破れ性、衝撃強度、耐熱性などを考慮すれば、非晶性ポリエステル樹脂を構成するユニット100モル%中にエチレンテレフタレートユニットが通常50モル%以上、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上となるように選択する。したがって、多価カルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルから形成される成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中にエチレングリコール成分を50モル%以上、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上であって95モル%以下、好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは88モル%以下の範囲で含有させる。
【0013】
上記多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上述した1,4−シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールの他に、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用できる。
【0014】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらのエステル形成誘導体などが利用できる。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価カルボン酸を必要に応じて併用してもよい。
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。
【0015】
例えば、ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメチルアルコールおよびエチレングリコールからなり、ジカルボン酸酸成分がテレフタル酸からなるポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)は、本発明の非晶性ポリエステル樹脂として好適に使用できる。
【0016】
非晶性ポリエステル樹脂層の厚みは特に限定されるものではないが、総厚みの通常10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上であり、かつ60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。厚みが10%以上あれば、包装体のフランジ部におけるカールの発生を抑えられ、良好な見栄えが得られ、また上限を60%とすることにより、良好な深絞り成形性を維持できる。
【0017】
本発明のフィルムは、フィルムに硬さを付与する目的で、非晶性ポリエステル樹脂層とイージーピール層との間に中間層としてPP層を配設する。中間層で使用するPPの種類は特に限定はされないが、融点が135℃以上、好ましくは140℃以上、さらに好ましくは143℃以上であり、かつ170℃以下、好ましくは165℃以下、さらに好ましくは160℃以下のものを用いる。PPの融点が135℃以上であれば、ヒートシール時にフィルムが柔軟化してフランジ部のカールが悪くなることを防止できる。また、PPの融点が170℃以下であれば、良好な深絞り成型性を付与することができる。
【0018】
PP層の厚みは、フィルムに硬さを付与し得る程度であれば特に制限はないが、フィルム全体の厚みに対し、通常15%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上であり、かつ通常60%以下、好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下である。PP層の厚み比が10%以上あれば、フランジ部のカールが悪くなることを防止でき、また上限を60%とすることにより良好な深絞り成形性が得られる
PP層には、透明性を付与する目的で、石油樹脂類を含有させることができる。石油樹脂類の含有量は、PP層を構成する樹脂全体の質量に対し、通常5質量%以上、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ通常30%質量%以下、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。石油樹脂類の含有量が5質量%以上であれば、良好な透明性が得られ、また石油樹脂類の含有量を30質量%以下に抑えることにより、良好な製膜性が得られる。
【0019】
上記石油樹脂類としては、例えば、シクロペンタジエンまたはその二量体等のような脂環式石油樹脂、C9成分のような芳香族石油樹脂、脂環式石油樹脂と芳香族石油樹との共重合系石油樹脂、β−ピネンからのテルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂などのようなテルペン樹脂、ガムロジン、ウッドロジン等のようなロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトロール等で変性したエステル化ロジン樹脂等が例示できる。上記石油樹脂類は色調や熱安定性、相溶性といった面から水素添加誘導体を用いることが好ましい。また、石油樹脂類は、主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、軟化温度が100℃から150℃まで、好ましくは110℃から140℃間での範囲にあるものが好適に使用される。
【0020】
石油樹脂類は、具体的には、三井化学(株)の商品名「ハイレッツ」、「ペトロジン」、荒川化学工業(株)の商品名「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)の商品名「クリアロン」、出光石油化学(株)の商品名「アイマーブ」、トーネックス(株)の商品名「エスコレッツ」等の市販品を用いることができる。
【0021】
また、PP層には、透明性を付与する目的で、ベンジリデンソルビトールやベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等のベンジリデンソルビトール誘導体を含有させることができる。ベンジリデンソルビトールまたはベンジリデンソルビトール誘導体の含有量は、PP層を構成する樹脂全体の質量に対し、通常1,000質量ppm以上、好ましくは2,000質量ppm以上、さらに好ましくは3,000質量ppm以上であり、かつ通常50,000質量ppm以下、好ましくは40,000質量ppm以下、さらに好ましくは30,000質量ppm以下である。ベンジリデンソルビトールまたはその誘導体の含有量を1,000質量ppm以上とすることにより、良好な透明性が得られ、また上限を50,000質量ppmとすることにより、良好な製膜性が得られる。
【0022】
また、PP層には透明性を付与する目的で、カルボン酸金属塩を含有させることができる。カルボン酸金属塩の含有量は、高密度ポリエチレン層を構成する樹脂全体の質量に対し、通常1,000質量ppm以上、好ましくは2,000質量ppm以上、さらに好ましくは3,000質量ppm以上であり、通常50,000質量ppm以下、好ましくは40,000質量mmp以下、さらに好ましくは30,000ppm以下である。カルボン酸金属塩の含有量を1,000質量ppm以上とすることにより良好な透明性が得られ、また、上限を50,000質量ppmとすることにより、良好な製膜性が得られる。
【0023】
PP層で使用可能なカルボン酸金属塩としては、例えば、安息香酸、シュウ酸、リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、等が挙げられる。
【0024】
本発明のフィルムは、耐ピンホール性と深絞り成形性とを付与する目的で、中間層に少なくとも1層のPA層を配設することができる。PA層で用いられるPAは、特に限定されないが、耐ピンホール性の観点からはナイロン系樹脂(Ny)を用いることが好ましい。Nyとしては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の縮合単位の重合体またはこれら2種以上との共重合体、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。これらの中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。
【0025】
中間層としてPA層を配設する場合、PA層の厚みは通常2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、かつ通常25μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。PA層の厚みの下限値を2μmとすることにより、良好な耐ピンホール性が得られ、また上限値を25μmとすることにより深絞り包装機での良好なカット性が得られる。
【0026】
中間層には酸素バリアー性を付与する目的で、EVOH層を配設することができる。EVOH層で用いられるEVOHのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から32〜47モル%の範囲であることが好ましく、38〜44モル%の範囲であることがさらに好ましい。また、EVOHのケン化度は通常90%以上であり、95モル%以上のものが望ましい。EVOHのエチレン含有率およびケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。
【0027】
EVOH層を配設する場合、EVOH層の厚みは通常3μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは8μm以上であり、かつ通常20μm以下、好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。EVOH層の厚みの下限値を3μmとすることにより十分な酸素バリアー性が得られ、また上限値を20μmとすることによりフィルムの共押出性を悪化することもなく、かつ良好なフィルム強度を保持できる。
【0028】
また、中間層には柔軟性を付与する目的でエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)層や第2のポリエチレン(PE)層を配設することもできる。EVAのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から1.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、3〜15モル%の範囲であることがさらに好ましい。
【0029】
中間層にPE層を配設する場合、第2のPE層で使用されるPEは特に限定はない。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはそれらをブレンドしたものを使用することができる。
【0030】
本発明のフィルムのイージーピール層(EP層)を構成する樹脂は、凝集破壊性を有する樹脂であれば特に限定されない。そのような樹脂として、例えば、LLDPEとポリブテンのブレンド、EVAとPPのブレンド、PPとLDPEのブレンド、PPとアイオノマーのブレンド、PPとEAAのブレンド、PPとEMMAのブレンド等が挙げられる。中でもLLDPEとポリブテンのブレンドや、PPとLDPEのブレンドを好適に用いることができる。
【0031】
EP層の厚みは、製膜性および剥離外観性の観点から、通常2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上であり、かつ通常15μm以下、好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下とする。EP層の厚みを2μm以上とすることにより、安定した製膜性が得られ、またEP層の厚みを15μm以下にすることにより剥離時に毛羽立ちや膜残りが発生し難くすることができ、良好な剥離外観が得られる。
【0032】
EP層のイージーピール強度は、剥離したときに剥離面で凝集破壊が起こり、かつ剥離面が毛羽立たない程度の強度であればよく、例えば、25℃で通常0.8N/15mm幅以上、好ましくは1.0N/15mm幅以上、さらに1.2N/15mm幅以上であり、通常5.0N/15mm幅以下、好ましくは4.5N/15mm幅以下、さらに好ましくは4.0N/15mm幅以下である。
【0033】
本発明のフィルムは、最外層(非晶性ポリエステル樹脂層)と中間層との間、または最内層(EP層)と中間層との間に少なくとも1層を配設することができる。また、層間接着強度をより高める観点からは中間層のEVOH層とPP層の間、またはPA層とPP層との間、非晶性ポリエステル樹脂層とPP層の間、非晶性ポリエステル樹脂層とEVOH層との間、非晶性ポリエステル樹脂層とPA層との間に配設させることが好ましい。
【0034】
接着樹脂層で使用される接着樹脂は、非晶性ポリエステル層、EP層、および中間層を構成する各種の樹脂層(PP層、EVOH層、PA層、PE層)を必要な強度で接着できれば特に限定されない。好ましくは不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂である。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また接着樹脂として、前記不飽和カルボン酸のエステルや無水物も用いることができ、さらに誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を用いることができる。
【0035】
市販の接着樹脂としては、例えば、三井化学(株)製、商品名アドマーが挙げられ、これらを好適に使用することができる。中でもPP層、PE層、EVOH層および非晶性ポリエステル層を接着させる場合には、特殊ポリオレフィンベースのものが有用であり、さらにEVOH層、PP層およびPE層を接着させる場合には、LLDPEタイプまたはPPタイプのものを好適に使用することができる。
【0036】
本発明のフィルムは、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、成形加工性、生産性等の諸性質を改良・調整する目的で、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加できる。
【0037】
本発明のフィルムは、140℃、チャック間距離が300mm、試験片幅が10mm、試験速度が10m/分におけるモジュラスが0.9MPa以上、好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは1.1MPa以上である。モジュラスが0.9MPa以上であれば、ヒートシール部が硬く、パック直後のカールが良好になり、見栄えがよくなる。
【0038】
本発明のフィルムにおいて、上記モジュラス試験値は、例えば、中間層のPP層の厚みを6μm以上とし、かつフィルム全体の厚みを40μm以上に調整することにより0.9MPa以上にすることができる。
【0039】
本発明のフィルムの層構成は、最外層として非晶性ポリエステル樹脂層、最内層としてEP層、中間層にPP層を配すれば、その他の層の層構成は特に制限されない。例えば、非晶性ポリエステル樹脂層(A)、PA層(B)、EVOH層(C)、PP層(D)、第PE層(E)、EP層(F)、および接着樹脂層(G)で表した場合、以下の層構成を形成することができる。
【0040】
(1)A/G/B/C/G/D/F
(2)A/G/C/B/G/D/F
(3)A/G/B/C/B/G/D/F
(4)A/G/B/C/G/D/E/F
(5)A/G/C/B/G/D/E/F
(6)A/G/B/C/B/G/D/E/F
(7)A/G/B/C/G/E/D/F
(8)A/G/C/B/G/E/D/F
(9)A/G/B/C/B/G/E/D/F
(10)A/G/B/G/D/F
(11)A/G/C/G/D/F
(12)A/G/D/F
【0041】
上記のうち、好ましい層構成は(1)、(2)、(7)または(8)であり、さらに好ましくは(1)または(2)である。
【0042】
本発明のフィルムは、非晶性ポリエステル樹脂層と、EP層と、その中間に形成される中間層(PP層、PA層、EVOH層、EVA層、PE層、接着層等)とを同時または逐次的に積層して作製することができる。すなわち、本発明のフィルムは、Tダイ法、チューブラ法など既存の方法により、ダイを備えた押出機を用いて共押出しすることによって非晶性ポリエステル樹脂層、EP層および中間層を同時に積層する方法である。また、本発明のフィルムは、各層を構成する樹脂を別々にシート化した後にプレス法やロールニップ法などを用いて積層して逐次的に作製することもできる。
【0043】
本発明のフィルムは、成形することにより深絞り包装体に用いることができる。特に本発明のフィルムを深絞り包装体の底材として用いる場合、良好な深絞り包装体を得ることができる。本発明の深絞り包装体の蓋材は、本発明の複合フィルムのイージーピール性が得られれば特に制限はない。例えば、延伸ポリプロピレン樹脂層と透明蒸着ポリエチレンテレフタレート系樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)層をラミネートした蓋材や延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂と共押出フィルム(EVOH,Nyを含み,LLDPEをシール層としたフィルム)をラミネートした蓋材を挙げることができる。
本発明のフィルムを深絞り包装体用底材として用いる場合、例えば、本発明のフィルムを深絞り成形型で所望の形状および大きさに成形した後(フィルム供給工程およびフィルム成形工程)、その中にスライスハム等の内容物を充填し(内容物充填工程)、さらにその上から蓋材フィルムでシールして(蓋材フィルム供給工程およびシール工程)、真空包装し(真空包装工程)、冷却し(冷却工程)、カットすることにより(切断工程)、深絞り包装体を作製することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
実施例1:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例1とした。
PETG(20μm)/接着樹脂(5μm)/Ny1(5μm)/EVOH1(10μm)/接着樹脂(5μm)/PP1(20μm)/EP1(5μm)
PETG:イーストマン・ケミカル社製PETG
接着樹脂:三井化学製アドマー
Ny1:ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチック製ノバミッド66Ny比率15%の6−66共重合Ny
EVOH1:クラレ製エバール38molタイプ
PP:日本ポリプロ製ノバテックPP(ランダムコポリマー,融点144℃)にリン酸エステルを1000ppm添加
EP1:LLDPE(60%)とポリブテン(40%)のブレンド
LLDPE:日本ポリエチレン製ノバテックLL
ポリブテン:三井化学製タフマー
【0046】
実施例2:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例2とした。
PETG(20μm)/接着樹脂(5μm)/EVOH2(10μm)/Ny2(5μm)/接着樹脂(5μm)/PP2(20μm)/EP2(5μm)
Ny2:ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチック製ノバミッド6Ny
EVOH2:クラレ製エバール44molタイプ
PP2:日本ポリプロ製ウインテック(ランダムコポリマー,融点135℃)
EP2:LDPE(60%)とランダムコポリマーPP(40%)のブレンド
LDPE:日本ポリエチレン製ノバテックLD
ランダムコポリマーPP:日本ポリプロ製ノバテックPP
【0047】
実施例3:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例3とした。
PETG(15μm)/接着樹脂(5μm)/Ny2(5μm)/EVOH1(10μm)/Ny2(5μm)/接着樹脂(5μm)/PP3(20μm)/EP2(5μm)
PP3:日本ポリプロ製ノバテックPP(ランダムコポリマー,融点145℃)
【0048】
実施例4:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例4とした。
PETG(15μm)/接着樹脂(5μm)/Ny1(5μm)/EVOH1(10μm)/接着樹脂(5μm)/PP4(15μm)/EP2(5μm)
PP4:日本ポリプロ製ノバテックPP(ホモポリマー,融点163℃)
【0049】
実施例5:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例5とした。
PETG(20μm)/接着樹脂(5μm)/Ny1(5μm)/EVOH1(10μm)/接着樹脂(5μm)/PP5(20μm)/EP1(5μm)
PP5:日本ポリプロ製ノバテックPP(ランダムコポリマー,融点145℃)にジベンジリデンソルビトールを5,000質量ppm添加
【0050】
比較例1:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例5とした。
PETG(20μm)/接着樹脂(5μm)/EVOH1(10μm)/Ny1(5μm)/接着樹脂(5μm)/EVA1(20μm)/EP2(5μm)
EVA1:日本ポリエチレン製ノバテックEVA
【0051】
比較例2:
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、比較例2とした。
PETG(20μm)/接着樹脂(5μm)/Ny1(5μm)/EVOH1(10μm)/接着樹脂(5μm)/HDPE(20μm)/EP1(5μm)
HDPE:日本ポリエチレン製ノバテックHD
【0052】
比較例3:
最外層をNyに変更した以外は、実施例1と同様の方法で下記層構成のフィルムを得た。
Ny(15μm)/接着樹脂(5μm)/Ny1(5μm)/EVOH1(10μm)/接着樹脂(5μm)/PP1(20μm)/EP2(5μm)
【0053】
[パックサンプルの作製]
深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)によって、直径95mmのスライスハム(40g)を真空包装した。パック品の大きさは縦100mm、横80mmである。使用した蓋材の構成は下記のとおりである。なお、「//」はドライラミネート法による接着を表す。
OPP(30μm)//透明蒸着PET(12μm)//LLDPE(40μm)
OPP:OPU−1(トーセロ社製二軸延伸品)
透明蒸着PET:VM−PET(東洋メタライジング製蒸着PET)
LLDPE:L−6102(東洋紡)
【0054】
[評価方法]
<ヒートシール部カール>
パックサンプル作成後、5分以内に、ヒートシール部がフラットのものを○,5mm以上カールしているものを×とした。
【0055】
<モジュラス測定方法>
チャック間距離:300mm;試験片幅:10mm;試験速度:10mm/分で測定した10%モジュラスが0.9MPaのものを○、0.9MPa未満のものを×とした。
【0056】
【表1】

【0057】
表1より、実施例1から5は、包装体のヒートシール部のカールがほとんどなく、モジュラス値も0.9MPaを超えており、ヒートシール部が硬いため、手触り感が良く、ラベルを貼り付ける際にパック品が整列させやすかった。これに対し、比較例1および2はモジュラス値が0.9MPaを下回っており、軟らかいため、包装ラインのラベラーで包装体がうまく整列せず、ラベルが貼りにくい問題があった。また比較例3はPETGが無いため、ヒートシール部のカールが悪く見栄えが悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のフィルムは、薄くても硬く良好な仕上がり性を有するフィルムであるため、深絞り包装体用のフィルムとして、特に深絞り包装体の底材として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ポリエステル系樹脂からなる最外層、融点が135〜170℃のポリプロピレン(PP)からなる中間層、および凝集破壊性を有するイージーピール層からなる最内層を有する、厚み40〜60μmの積層フィルムであり、当該フィルムの10%モジュラスが0.9MPa以上であることを特徴とする深絞り成形用フィルム。
【請求項2】
非晶性ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートグリコール樹脂(PETG)である請求項1に記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項3】
高密度ポリプロピレン(PP)層の厚みが、積層フィルム全体の厚みの15〜60%の範囲である請求項1または2に記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項4】
少なくとも1層のポリアミド樹脂(PA)からなる層を含む請求項1〜3のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項5】
少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)からなる層を含む請求項1〜4のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項6】
少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)なる層またはポリエチレン(PE)からなる層を含む請求項1〜5のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項7】
少なくとも1層の接着樹からなる層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項8】
イージーピール層のイージーピール強度が25℃で0.8〜5.0N/15mm幅の範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の深絞り成形用フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の深絞り成形用フィルムにより形成されることを特徴とする深絞り包装体用底材。
【請求項10】
請求項9に記載の底材を使用してなることを特徴とする深絞り包装体。

【公開番号】特開2012−250485(P2012−250485A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125888(P2011−125888)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】