説明

深絞り成形用熱収縮性多層フィルムおよびその製造方法

優れた熱収縮性と強度を有するとともに、最大絞り深さ(D)と金型の短辺長さ(L)との間の短辺基準絞り比(D/L)が0.6を超えることで代表されるような高度の深絞り成形適性を有するポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルムを与える。その熱収縮性多層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、(A)該中間層(b)が、融点が180℃以上である脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸成分とする脂肪族ジアミンとの重縮合物からなる非晶質芳香族ポリアミドとからなり、非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%である混合物からなり、全層厚中の25%を超え50%以下の層厚を占め、(B)100℃での引張試験において伸度100%時の応力が、縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれか少なくとも一方向で3〜22N、且つMDおよびTDの平均値として3〜20Nであり、且つ(C)90℃熱水中収縮率がMDおよびTDでそれぞれ3〜20%であることを特徴とする。このフィルムを、二軸延伸倍率および熱処理緩和率を厳密に制御する方法により製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂層を主要な樹脂層として含み深絞り成形性に優れた熱収縮性多層フィルム、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱収縮性多層フィルムを製袋機でバッグやパウチに製袋した後に内容物を充填したり、製袋加工しながら内容物を直接あるいはトレイに載せた内容物を自動包装に供する技術が生肉、ハム、ソーセージ等の食品、その他の製品の包装加工技術として広く行われている。そして、このような包装用のフィルムに要求される特性は多様であり、熱収縮性、強度、耐熱性、高温耐クリープ性、成形性、各種包装適性、ガスバリア性、水蒸気バリア性、透明性等の諸特性のバランスに優れることが求められている。
【0003】
これら諸特性を満たし、特に強度を要求される包装材用途に適するものとして、ポリアミド系樹脂層を主要な樹脂層として含む熱収縮性多層フィルムが提案されている。例えば下記特許文献1は、「熱可塑性樹脂からなる外表面層(a)と、ポリアミド系樹脂からなる第一の中間層(b1)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる第二の中間層(b2)と、ポリオレフィン系樹脂からなる内表面層(c)とを備える熱収縮性多層フィルムであって、前記熱収縮性多層フィルムの温度90℃における縦方向及び横方向の熱水収縮率がそれぞれ3〜45%の範囲であり、且つ、前記ポリアミド系樹脂が、融点が210℃以上の脂肪族ポリアミド60〜90質量%と、酸成分としてイソフタル酸及びテレフタル酸を主成分とする芳香族ポリアミド10〜40質量%との混合物である、熱収縮性多層フィルム」を提案する。
【0004】
他方、バッグやパウチへの製袋工程の代りに、通常は平坦な蓋材との組合せにより自動包装をより容易に達成し得る底材をフィルムの深絞り成形により形成する方法も知られている。この深絞り成形用フィルムとして、一般に未延伸の多層フィルムは深絞り成形性が優れていることが知られているが、ポリアミド系樹脂系多層フィルムも含めて未延伸多層フィルムは、深絞り成形後のフィルムの強度が低く、フィルム破れが生じたり、フィルムの厚みを大幅に増加する必要がある、熱収縮性が不充分であり、成形後のしわが発生し易い、等の問題がある。
【0005】
上記特許文献1のポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルムは、優れた熱収縮性と強度を有し、特にバッグやパウチ等の製袋包装材料として優れた適性を示し、深絞り成形用多層フィルムとしても上述した未延伸多層フィルムの問題点を解決するものであるが、高度の深絞り成形、特に長辺と短辺とからなる矩形開口部を有する深絞り成形金型を用いて最大絞り深さ(D)/金型短辺長(L)で定まる短辺基準絞り比(D/L)が0.6を超えるような深絞り成形、および/または底部がスロープ状になっている金型を用いる深絞り成形に際しては、破れが発生しやすく実用性を有さないという問題があった。このような高度の深絞り成形は、例えばソーセージなどの縦/横比の大きな内容物や、くさび状の形状を有するチーズなどの包装や、また、カットしたサラミ、ハム、ソーセージなどのカット面にシール部が存在することで商品価値を落とさない包装体を形成するために要求される。
【0006】
また、下記特許文献2では、高度の延伸後に、大なる熱緩和を施す製造方法を採用することにより低温包装特性に加えて、深絞り成形適性をも考慮した「熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、−10℃における厚さ50μm換算における衝撃エネルギーが1.5ジュール以上である延伸配向多層フィルム」を提案する。しかし、この特許文献2のフィルムも、短辺基準絞り比(D/L)が0.6を超えるような高度の深絞り成形適性は満たしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2007/094144A1公報
【特許文献2】特表2003−535733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の事情に鑑み、本発明の主要な目的は、優れた熱収縮性と強度を有するとともに、金型の短辺基準絞り比(D/L)が0.6を超えることで代表されるような高度の深絞り成形適性を有するポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルム、ならびにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明等は、上述の目的で鋭意研究した結果、ポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルムにおいて、優れた熱収縮性および強度に加えて、高度の深絞り成形適性を発現するためには、深絞り成形条件に近似する温度条件下での引張特性、特に伸度100%時の応力を適切に制御することが極めて重要であること、またそのためには、これら特性を支配するポリアミド系樹脂中間層において極めて限定的な組成のポリアミド系樹脂を用い且つその全層に占める厚さを厳密に制御することが重要であることが見出された。また上述の目的の達成のためには、製造工程において二軸延伸倍率および熱処理緩和率を厳密に制御することが極めて好ましいことも見出された。
【0010】
本発明のポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルムは上述の知見に基づくものであり、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、(A)該中間層(b)が、融点が180℃以上である脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸成分とする脂肪族ジアミンとの重縮合物からなる非晶質芳香族ポリアミドとからなり、非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%である混合物からなり、全層厚中の25%を超え50%以下の層厚を占め、(B)100℃での引張試験において伸度100%時の応力が、縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれか少なくとも一方向で3〜22N、且つMDおよびTDの平均値として3〜20Nであり、且つ(C)90℃熱水中収縮率がMDおよびTDでそれぞれ3〜20%であること、を特徴とするものである。
【0011】
また本発明の熱収縮性多層フィルムの製造方法は、溶融された少なくとも3種の熱可塑性樹脂を管状に共押出し、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、シール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、且つ該中間層(b)が、融点が180℃以上である脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸成分とする脂肪族ジアミンとの重縮合物からなる非晶質芳香族ポリアミドとからなり、非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%である混合物からなり、全層厚中の25%を超え50%以下の層厚を占める管状体を形成し、次いで該管状体をその各層に占める主たる樹脂の融点以下に水冷却し、その後管状体の各層に占める主たる樹脂の融点以下の温度に再加熱し、管状体の内部に流体を入れながら管状体を垂直方向に引出しつつ垂直方向に2.1〜2.4倍および円周方向2.1〜2.6倍に延伸して二軸延伸管状フィルムを形成し、これを折り畳み、次いで内部に流体を入れて再び形成した管状体の表面層(a)側からスチームもしくは温水により垂直方向および円周方向にそれぞれ緩和率が20〜35%となるように緩和熱処理を行い、その後冷却することによる延伸配向多層フィルムを得ることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルムの製造方法を実施するに適した装置系の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなる。
【0014】
表面層(a)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)との積層状態において、適当な延伸性を有する熱可塑性樹脂が用いられる。好ましい熱可塑性樹脂の例としては、ポリオレフィン系樹脂(PO)、ポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂が挙げられる。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂(PO)の具体例としては、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(直鎖状超低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、(これらポリエチレンには、従来型触媒(チグラ−ナッタ触媒)により得られるポリエチレンに加えて、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)により重合されたものを含む)ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のポリオレフィン系樹脂(共重合体のオレフィン以外のコモノマー成分は比較的少量(50重量%未満)である)が挙げられる。
【0016】
表面層(a)を構成するポリエステル系樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂と、芳香族ポリエステル系樹脂のいずれも用いられる。
【0017】
ポリエステル系樹脂に用いるジカルボン酸成分としては、通常の製造方法でポリエステルが得られるものであれば良く、上述のテレフタル酸、イソフタル酸以外に、例えば、不飽和脂肪酸の二量体からなるダイマー酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などがあげられ、2種以上を使用してもよい。また、ポリエステル系樹脂に用いるジオール成分としては、通常の製造方法でポリエステルが得られるものであれば良いが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−アルキル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられ、2種以上を使用しても良い。
【0018】
これらの中で、好ましくは芳香族ジカルボン酸成分を含む芳香族ポリエステル系樹脂であり、特に好ましくは、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸と、炭素数が10以下のジオールとのポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが用いられ、テレフタル酸の一部、好ましくは30モル%まで、更に好ましくは15モル%まで、を他のジカルボン酸、例えばイソフタル酸で置き換えた共重合ポリエステルや、例えばエチレングリコールなどのジオール成分の一部を他のジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールで置き換えた共重合ポリエステル樹脂(例えばイーストマン・コダック社製「Kodapak PET#9921」)も好ましく用いられる。また、異種のポリエステル系樹脂を2種以上混合して用いても良い。
【0019】
ポリエステル系樹脂は、0.6〜1.2程度の極限粘度を持つものが好ましく用いられる。外表面層(a)には、例えば、熱可塑性ポリウレタンに代表される熱可塑性エラストマーや、マレイン酸等の酸あるいはそれらの無水物によって変性されたポリオレフィン系樹脂等のポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂を20重量%まで含ませることも出来る。
【0020】
表面層(a)を構成するポリアミド系樹脂としては、後述の低延伸倍率での製膜を阻害しない限り、一般的な脂肪族ポリアミドが使用できるが、好ましくは融点が180℃以上の脂肪族ポリアミド重合体または脂肪族ポリアミド共重合体が用いられる。具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6−66、ナイロン6−610、ナイロン66−610、ナイロン6−12などが挙げられる。脂肪族ポリアミドは、単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができ、且つ後述の中間層(b)と同様に非晶質芳香族ポリアミドとの混合物として用いることもできる。脂肪族ポリアミドと非晶質芳香族ポリアミドとの混合物として用いる場合、例えば表面層(a)を構成するポリアミド系樹脂中の非晶質芳香族ポリアミド含有率が10〜45重量%、特に15〜30重量%のものが好ましく用いられる。表面層(a)を構成するポリアミド系樹脂としては、なかでも、ナイロン6−66単独、ナイロン6と非晶質芳香族ポリアミドとの混合物あるいはナイロン6−66と非晶質芳香族ポリアミドとの混合物が、押出加工の容易性と後述の低延伸倍率での製膜を阻害しない点で、特に好ましく用いられる。
【0021】
熱可塑性樹脂からなる表面層(a)は、後述するポリアミド系樹脂からなる中間層(b)の優れた延伸性、機械特性を損わないために、中間層(b)の厚さよりは薄く、特に中間層(b)の6%以上、50%未満の厚さを有することが好ましい。
【0022】
中間層(b)を構成するポリアミド系樹脂としては、融点が180℃以上である脂肪族ポリアミドと、非晶質芳香族ポリアミドとの混合物であり非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%であるものが用いられる。
【0023】
脂肪族ポリアミドとして例えばナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−69などの融点が180℃未満のものを用いると、後述の製造方法に従い低延伸倍率で製膜することが不可能になり、深絞り成形性も改善されない。溶融成形に支障ない限り融点の上限は厳密ではないが、一般に270℃以下のものが好ましく用いられる。このような特性を有する脂肪族ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などの脂肪族ポリアミド重合体、ナイロン6−66、ナイロン6−610、ナイロン66−610、ナイロン6−12などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでもナイロン6(融点:約225℃)、ナイロン6−66(融点:約180〜200℃)が押出加工の容易性と比較的安価であるため、好ましく用いられる。
【0024】
上記脂肪族ポリアミドとともに中間層(b)を構成する非晶質芳香族ポリアミドとしては、イソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸成分とする脂肪族ジアミンとの重縮合物が用いられる。酸成分としては、イソフタル酸成分40〜98モル%およびテレフタル酸成分2〜60モル%を含む混合物が好ましく用いられ、必要に応じて、イソフタル酸およびテレフタル酸成分の上記量範囲を維持する範囲内で、アジピン酸等の酸成分を含むこともできる。脂肪族ジアミンとしてはヘキサメチレンジアミンが単独で、あるいは少量成分としてのビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)との混合物として、好ましく用いられる。特に汎用性の観点から脂肪族ジアミンがヘキサメチレン単独からなり、ナイロン6I−6T(Ny6I−6T)と通称される非晶質ナイロン共重合体が好ましく用いられる。これら非晶質芳香族ポリアミドは一般にガラス転移点(Tg)が90〜135℃程度である。市販品の例としては、EMS社製「GRIVORY G21」(Tg=125℃)、DuPont社製「SELAR PA3426」(Tg=127℃)等がある。
【0025】
中間層(b)を構成するポリアミド系樹脂中の非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%である必要があり、好ましくは30〜40重量%である。非晶質芳香族ポリアミド含有率が25重量%未満では延伸製膜性が乏しく得られる多層フィルム厚みムラが過大となって、ロール巻き姿も悪くなって商品価値が乏しくなる。他方、45重量%を超えても延伸製膜製が悪く、延伸製膜中にフィルム破れが生ずるおそれがある。
【0026】
また、本発明の多層フィルムの全層厚に占める中間層(b)の層厚は25%を超え50%以下である必要があり、好ましくは28〜45%、更に好ましくは30〜40%である。25%以下であると、延伸時の厚みムラが大きくなり製品多層フィルムの商品価値が乏しくなるほか、本発明の目的とする高度の深絞り成形適性を得るのが困難となる。中間層(b)の層厚割合が過大であると延伸が困難になったり、フィルムの柔軟性が阻害されることがある。中間層(b)には、上記非晶質芳香族ポリアミドの含有量範囲を損わない範囲で、マレイン酸などの酸またはこれらの無水物によって変性されたオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリアミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂を20重量%程度まで含ませることもできる。
【0027】
表面層(c)を構成するシール性樹脂としては、シングルサイト触媒あるいはメタロセン触媒(以下「SSC」と略記することがある)を用いて重合されたポリオレフィン、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「SSC−LLDPE」と略記)、直鎖状超低密度ポリエチレン(以下「SSC−VLDPE」と略記);従来のエチレン−αオレフィン共重合体(一般に「LLDPE」、「VLDPE」などと称されるもの)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」と略記)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下「EMAA」と略記)、エチレン−メタクリル酸−不飽和脂肪族カルボン酸共重合体、低密度ポリエチレン、アイオノマー(以下「IO」と略記)樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(以下「EMA」と略記)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(以下「EEA」と略記)、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(以下「EBA」と略記)等の熱可塑性樹脂から選ばれたものが使用できる。これら好ましい種類のシール性樹脂は、エチレン共重合体、特にエチレンを主成分(すなわち、50重量%より大)とし、エチレンと共重合可能なビニル単量体を少量成分(すなわち、50重量%未満、好ましくは30重量%以下)として含む共重合体、と包括的に称することができる。好ましいビニル単量体の例としては、炭素数3〜8のα−オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび酢酸ビニル等の炭素数が8以下の不飽和カルボン酸またはそのエステルが挙げられる。これらエチレン共重合体を3重量%以下の不飽和カルボン酸で変性した酸変性エチレン共重合体も好ましく用いられる。なお、これ以外にも、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、脂肪族ナイロン等の熱可塑性樹脂を使用してもよい。シール性樹脂は、融点が150℃以下、特に135℃以下、であることが好ましい。フィルムの透明性を阻害しない範囲で、これらを少なくとも一種含むブレンド物であってもよい。
【0028】
これらの中で、SSC−LLDPE、SSC−VLDPE、LLDPE、VLDPE、EVA、EMAA、エチレン−メタクリル酸−不飽和脂肪族カルボン酸共重合体、IO樹脂などが、表面層(c)に好ましく用いられる。特に、SSC系ポリオレフィンの中で有効なものに、拘束幾何触媒(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)が開発したメタロセン触媒の一種)を用いて得られるものがある。拘束幾何触媒を用いて得られるエチレン−αオレフィン共重合体は、1000炭素数当たりの長鎖分岐(Long Chain Branching)の数が、約0.01〜約3、好ましくは約0.01〜約1、より好ましくは約0.05〜約1の実質的に線状のポリエチレン系樹脂である。該エチレン・αオレフィン共重合体は、分子構造中に約6炭素数以上の鎖状の長鎖分岐が選択的に導入されているため、ポリマーに優れた物性と良好な成形加工性が付与される。その一例は、ダウ・ケミカル社から「アフィニティー」、「エリート」という名称で販売され、αオレフィンは1−オクテンである。この他のメタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン系樹脂として、例えば、エクソン(EXXON)社の「エクザクト(EXACT)」、宇部興産社の「ユメリット」、三井化学社の「エボリュー」、日本ポリケム社製の「カーネル」、日本ポリオレフィン社の「ハ−モレックス」がある。メタロセン触媒ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(多分散度)が3未満が好ましく、より好ましくは1.9〜2.2である。
シール可能な樹脂からなる表面層(c)の耐熱性は、表面層(a)の耐熱性よりも小であることが、フィルムのシールや、深絞り加工などの際に好ましい。シール可能な樹脂からなる表面層(c)の耐熱性が、表面層(a)の耐熱性よりも大である場合は、シール時や深絞り加工時においてフィルムに熱をかけた際に、条件によっては、加熱板に表面層(a)が溶融し、シールや包装機械適性、深絞り加工性に問題が生ずることがあるからである。
【0029】
シール可能な樹脂からなる表面層(c)には、例えば深絞り包装に際して、易剥離性を付与することができる。これは、例えばEMAAとポリピロピレン樹脂との混合物、またはEVAとポリプロピレン樹脂との混合物を用いることにより達成される。
【0030】
本発明の深絞り成形用熱収縮性多層フィルムは、上記した熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール性樹脂からなる表面層(c)を必須の構成層として含むものであるが、そのほかに製品熱収縮性多層フィルムの機能性あるいは加工性を改善する等の目的で、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)以外の中間層を必要に応じて含めることができる。このような中間層の例としては、以下のものがある。
【0031】
ガスバリア性中間層(d)を構成するガスバリア樹脂としては、特に酸素ガスバリア層として使用されるものとして、公知のEVOH;ポリメタキシリレンアジパミド(「ナイロンMXD6」)などの芳香族ジアミンを有する芳香族ポリアミドなどを例示することができる。
【0032】
別の中間層を構成する好ましい樹脂の他の例としては、上記した表面層(c)を構成するシール性樹脂と同様なものが挙げられる。
【0033】
一以上の接着性樹脂層を上記各層間の接着力が充分でない場合などに、必要に応じて中間層として設けることができ、前記別の中間層を構成する樹脂を選択して用いることもできる。より好ましくは、接着性樹脂として、EVA、EEA、EAA、酸変性ポリオレフィン(オレフィン類の単独または共重合体などとマレイン酸やフマル酸などの不飽和カルボン酸や酸無水物やエステルもしくは金属塩などとの反応物など、例えば、酸変性VLDPE、酸変性LLDPE、酸変性EVA)等が使用できる。好適なものとしては、マレイン酸などの酸、またはこれらの無水物などで変性されたオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0034】
上記の層構成において、いずれかの層に滑剤、帯電防止剤および/またはアンチブロッキング剤を添加することができる。
【0035】
用いる滑剤としては、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、エステル系滑剤、金属石鹸類などがあげられる。滑剤は、液状であってもよいし、固体状であってもよい。具体的に、炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロワックスなどがあげられる。脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸などがあげられる。脂肪酸アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、アラキジン酸アミド、オレイン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなどがあげられる。エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート、ステアリン酸モノグリセライドなどがあげられる。金属石鹸としては、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導されるものであり、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシュウムが代表的にあげられる。これらの滑剤の中では、脂肪酸アミド系滑剤、金属石鹸類がポリオレフィン樹脂との相溶性が優れるという点から好ましく用いられる。滑剤の好ましい例としては、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、等をマスターバッチの形で加える。滑剤を例えば20重量%含むマスターバッチを、所望の相中に滑剤濃度が0.5〜2.0重量%となるように加える。
【0036】
帯電防止剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。界面活性剤としては、アニオン活性剤、カチオン活性剤、非イオン活性剤、両性活性剤およびそれらの混合物を使用することができる。帯電防止剤は添加すべき層の樹脂に対して0.05〜2重量%、更には0.1〜1重量%添加することが好ましい。
【0037】
アンチブロッキング剤としては、フィルム同士の固着を抑制させる目的で樹脂中に添加される公知の無機系の充填剤、例えばタルク、珪藻土、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミノシリケートなどを用いることができる。充填剤の形状は球状であることが好ましい。また、添加する樹脂との屈折率の違いに留意することが好ましく、屈折率が大きく異なる場合には透明性が劣化する。例えばシリカ、アルミノシリケート、ゼオライトなどが屈折率や分散性の観点から好ましく用いられる。また、アンチブロッキング剤のコールターカウンター法測定による平均粒径は好ましくは0.5〜10μm、更に好ましくは1〜7μmである。前記平均粒径を有するアンチブロッキング剤について、粒径10μmを超える部分をカットしたものを用いることがより好ましい。平均粒径が過大であると、フィルムの透明性が劣化したり、強度が低下するおそれがある。平均粒径が過小であると、アンチブロッキング効果(すべり性向上効果)が不十分であったり、分散性に問題が生じたりする。アンチブロッキング剤の添加量は、0.05〜2重量%、特に0.1〜1重量%、が好ましい。
【0038】
本発明の熱収縮性多層フィルムの層構成の好ましい態様の例を次に記す。ただし、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらのみに限定されるものではない:(1)ポリエステル系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(2)ポリエステル系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(3)ポリエステル系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(4)ポリエステル系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(5)ポリエステル系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(6)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(7)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(8)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(9)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(10)ポリオレフィン系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(11)ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(12)ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(13)ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(14)ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂、(15)ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂。
【0039】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、上記各層を積層して、延伸および緩和することにより、最終的に厚さが40〜250μm、特に60〜200μmの範囲、の多層フィルムとして形成することが好ましい。
【0040】
より詳しくは、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)は、0.5〜25μm、特に1〜15μm;ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)は上記全層厚に対する割合を維持する範囲で10〜100μm、特に20〜80μm;シール性樹脂からなる表面層(c)は15〜150μm、特に20〜100μmの範囲の厚さとすることが好ましい。
【0041】
必要に応じて設けられるガスバリア樹脂層(d)の厚さは、例えば1〜30μmの範囲、好ましくは2〜15μmの範囲である。ガスバリア性樹脂層の厚さが1μm未満では酸素ガスバリア性改善効果が乏しく、また、30μmを越えると該層の押出加工、ならびに多層フィルムの延伸加工が難しくなる。
【0042】
接着性樹脂層は複数設けることができるが、その厚さは各0.5〜5μmの範囲が好適である。
【0043】
本発明の深絞り成形用熱収縮性多層フィルムは、複数の押出機を使用し、まず未延伸フィルムを共押出し、テンター法等の公知の方法で縦方向に2.0〜2.4倍、横方向に2.0〜2.6倍2軸延伸した後、縦/横各方向に20〜35%の緩和熱処理を行うことにより製膜することもできる。
【0044】
熱収縮性多層フィルムは、より好ましくは、本発明の方法に従い、インフレーション法により製造される。図1(単独図)を参照して、その好ましい一態様について説明する。
【0045】
多層フィルムを構成する積層樹脂種数に応じた台数(1台のみ図示)の押出機1より環状ダイ2を経て熱可塑性樹脂からなる外表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール性樹脂からなる内表面層(c)の少なくとも3層を有する管状体(パリソン)3を共押出しし、水浴4により各層に占める主たる樹脂の融点以下、好ましくは40℃以下、に冷却しつつピンチローラ5で引き取る。次いで、引き取った管状体フィルム3aに、必要に応じ大豆油などに代表される開封剤を内封しつつ、各層に占める主たる樹脂の融点以下の、例えば80〜95℃の温水浴6中に導入して、加熱された管状体フィルム3bを上方に引き出し、一対のピンチローラ7および8間に導入した流体空気によりバブル状の管状体3cを形成し、10〜30℃のエアリング9で冷却しながら、垂直方向(MD)および円周方向(TD)に、比較的低く且つ限定された延伸倍率、すなわちMDに2.1〜2.4倍、好ましくは2.2〜2.4倍、TDに2.1〜2.6倍、好ましくは2.2〜2.6倍、更に好ましくは2.4〜2.6倍の延伸倍率で同時二軸延伸する。次いで延伸後の管状体フィルム3dを下方に引き出し、一対のピンチローラ10および11間に導入した流体空気により再度バブル状の管状体3eを形成し、熱処理筒12中に保持する。そして、この熱処理筒12の吹出し口13よりスチームを吹き付け(あるいは温水を噴霧して)、二軸延伸後の管状体フィルム3eを70〜98℃、好ましくは75℃〜95℃において、1〜20秒、好ましくは1.5〜10秒程度熱処理して、管状体フィルム3eを縦方向(MD)および横方向(TD)に各20〜35%、好ましくは各方向に20〜30%、更に好ましくは20〜25%緩和(収縮)させる。熱処理後の管状体フィルム3fは、本発明の熱収縮性多層フィルムに相当するものであり、巻き取りロール14に巻き取られる。
【0046】
優れた熱収縮性および強度を維持しつつ高度の深絞り成形性を与えるために、上記所定の延伸倍率で二軸延伸した後、上記所定の緩和(収縮)率を達成するように熱容量の大きいスチームあるいは温水によって70℃乃至98℃、好ましくは75℃乃至95℃、最も好ましくは80℃乃至95℃の低温で、熱処理をすることが極めて好ましい。より低い延伸倍率では、熱処理後に必要なフィルムの強度および熱収縮性が得られず、またフィルムの偏肉も大きくなり、包装適性が得られにくい。他方、より高い延伸倍率では本発明の目的とする高度の深絞り成形適性を得ることは困難である。また加熱空気などの熱容量の小さい媒体や、70℃未満のより低い熱処理温度を採用した場合には、緩和率を大きくすることが困難となり、その結果として高度の深絞り成形適性を得難くなる。一方、100℃を超える高温で熱処理した場合は、シール層であるポリオレフィン樹脂が溶融し易くなり、その結果としてポリオレフィン層の配向が損なわれ、優れた強度が得られにくくなる。熱処理時の緩和率が20%未満である場合は、高度の深絞り成形適性を得難く、熱処理時の緩和率が35%を超える場合は、必要な熱収縮率を得難くなる。
【0047】
上述した本発明の熱収縮性多層フィルムの製造方法における延伸前あるいは後において、公知の方法により放射線照射することもできる。放射線照射により延伸性や耐熱性、機械的強度などが未照射のものに比べ改善される。放射線照射は、その適度な架橋効果により、延伸製膜性、耐熱性を優れた物にする効果がある。本発明では、α線、β線、電子線、γ線、X線など公知の放射線を使用することができる。照射前後での架橋効果の観点から、電子線やγ線が好ましく、中でも電子線が成形物を製造する上での取扱性や処理能力の高さなどの点で好都合である。
【0048】
前述の放射線の照射条件は、目的とする用途に応じて、適宜設定すればよく、一例をあげるならば、電子線の場合は、加速電圧が150〜500キロボルトの範囲、照射線量が10〜200キログレイ(kGy)の範囲が好ましく、また、γ線の場合は、線量率が0.05〜3kGy/時間の範囲として、10〜200kGyの照射線量を与えることが好ましい。
【0049】
上述した本発明の熱収縮性多層フィルムの内表面あるいは外表面もしくは両表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、炎処理をおこなってもよい。
【0050】
上記のようにして製造された本発明の深絞り成形用熱収縮性多層フィルムは、100℃での引張試験において伸度100%時の応力が縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれか少なくとも一方向で3〜22N、好ましくは5〜20N、さらに好ましくは5〜18N、且つMDおよびTDの平均値として3〜20N、好ましくは5〜18Nであり、且つ90℃の熱水中収縮率がMDおよびTDでそれぞれ3〜20%、好ましくは5〜15%であることが特徴的である。上記したMDおよびTDにおける応力が過大であると、深絞り成形適性が悪化し、過小であると深絞り成形後のフィルム強度が不充分になりやすい。
【0051】
本発明の熱収縮性多層フィルムの高度の深絞り成形適性は、金型開口形状が155mm(長辺)×125mm(短辺)の矩形であり、深さが異なる金型を用いて試験した際に、絞り成形可能な(成形時のフィルム破れ発生率が5%を超えない)金型の開口面から底部までの深さとして定まる最大絞り深さ(D)が60mm以上、好ましくは80mm以上、更に好ましくは90mm以上であり、且つ最大絞り深さ(D)/金型短辺長(L)で定まる短辺基準絞り比(D/L)が0.70以上、好ましくは0.75以上、更に好ましくは0.80以上であること、更には、絞り成形の可能な成形金型の内表面積/開口面積で定まる(面積基準)最大絞り比が2.8以上、好ましくは3.0以上、更に好ましくは3.2以上であること、で代表される。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本願明細書に記載した物性の測定法は、以下の通りである。
【0053】
1.熱水収縮率
フィルムの機械方向(縦方向、MD)および機械方向に垂直な方向(横方向、TD)に10cmの距離で印を付けたフィルム試料を、90℃に調整した熱水に10秒間浸漬した後取り出し、直ちに常温の水で冷却した。その後、印をつけた距離を測定し、10cmからの減少値の原長10cmに対する割合を縦および横方向についてそれぞれ百分率で表示した。1試料について5回試験(n=5)を行ない、縦方向(MD)および横方向(TD)のそれぞれについて平均値で熱水収縮率を表示した。
【0054】
2.深絞り成形性
得られた管状フィルムを425mm幅にスリットし、Multivac社製深絞り真空包装機R250を用いて、深絞り成形性を評価した。155mm(長辺)×125mm(短辺)の長方形開口部を有する成形金型を使用し、成形底部コーナーが半径30mmの半円状になるようにインサートを用いて、成形温度110℃、加熱温度1.5秒、成形時間2.0秒、圧空時間0.4秒の条件で深絞り成形を行った。絞り成形金型の深さを60mmから5mm刻みで増大して、成形時のフィルム破れ発生率が5%(n=20)を超えない絞り深さを「最大絞り深さ」とした。
【0055】
成形性を表す他の指標として、「最大絞り比」および「短辺基準絞り比(D/L)」を用いる。「最大絞り比」および「短辺基準絞り比(D/L)」は、値が大きいほど絞り成形性に優れることを意味する。
【0056】
また、深絞り成形後のフィルム観察により、次の基準で深絞り成形性を評価した:
A:深絞り成形後フィルムが金型に追従しており、良好な透明性を有している、
B:深絞り成形後フィルムが金型に追従しているが、成形後コーナーに若干の白化が見られる、
C:試験した最小絞り深さ60mmで、成形時にフィルム破れが発生する。
【0057】
3.高温引張特性
得られた多層フィルムから、その縦方向(MD)および横方向(TD)に沿って、各10mm幅の試料フィルム帯を作成し、オリエンテック社製万能型引張試験機テンシロンRTM−100に掴み具間50mmでセットする。次いで100℃に加熱した加熱ブロックを試料フィルムに接触し2秒間加熱し、加熱ブロックを開放した後、速やかにクロスヘッド速度500mm/minで引張試験を開始した。伸度100%時の引張応力を測定し、高温引張特性を評価した。23℃、50%RHの雰囲気で、一試料につき、5回試験(n=5)を行い、縦方向および横方向のそれぞれについて平均値で伸度100%時の応力を表示した。
【0058】
4.深絞り成形後の熱収縮性
最大絞り深さで成形した深絞り成形後フィルムの熱収縮性を以下の方法で評価した。
Multivac社製深絞り真空包装機R250を用いて、155mm×125mmの長方形型の成形金型と成形底部コーナーが半径30mmの半円状になるようにインサートを用いて、成形温度110℃、加熱温度1.5秒、成形時間2.0秒、圧空時間0.4秒の条件で深絞り成形を行って底材フィルムを得た。後述の比較例2のフィルムを蓋材とし、真空成形およびシールし、深絞り包装体を得た。
深絞り成形した底材フィルムの熱収縮性を、以下の基準に従い評価した。
A:深絞り底部の90℃における熱水収縮率が、縦方向、横方向ともに25%以上であり、実用上十分な熱収縮性を有する。
【0059】
5.延伸製膜性
実施例および比較例の延伸製膜性を、以下の基準に従って評価した。なお、厚み斑(%)は、計算式:[(フィルムの最大厚み−フィルムの最小厚み)/(フィルムの平均厚み)]×100、で算出した:
A:巻取り後フィルムの厚み斑が35%以下であり、良好な製造性を有する、
B:巻取り後フィルムの厚み斑が40%以上と大きく、深絞り性などの性能のバラツキが大きく、またフィルムの機械適正が不十分であり、実用性を有さない、
C:延伸製膜不可能。
【0060】
<フィルム製造例>
次に実施例、比較例による熱収縮性多層フィルムの製造例について記載する。以下の製造例において使用した樹脂を、その略号ならびに性状、商品名およびメーカーとともに以下にまとめて記す。
【0061】
・Ny−1:ナイロン6、BASF社製「ULTRAMID B40L」、d(密度)=1.13g/cm、融点=220℃、相対粘度(96%硫酸中)=4.0、
・Ny−2:ナイロン6I−6T共重合体、EMS社製「GRIVORY G21」、Tg(ガラス転移点)=125℃、MI=25cc/10分(275℃、5kg)、d=1.18g/cm
・Ny−3:ナイロン6−66共重合体、宇部興産(株)製「UBE Nylon 5034B」、d=1.14g/cm、融点=195℃、相対粘度(96%硫酸中)=4.5、
・PET:エチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体(コポリエステル中の酸成分中のイソフタル酸量:12モル%、テレフタル酸量88モル%)、ベルポリエステル(株)製「ベルペット IFG−8L」、
・EVOH:エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン含量48モル%)、クラレ(株)製「エバール EPG156B」、メルトフロー値(MFR)=6.5g/10分(190℃、2.16kg)、
・VLDPE:エチレン・ヘキセン−1共重合体(d=0.904g/cm)、MFR=2.0g/10分(190℃、2.16kg)、ダウケミカル社製「 Attane 4404G」
・LLDPE:エチレン・オクテン共重合体(d=0.916g/cm)、出光石油化学(株)製「モアテック 0238CN」、MFR=2.1g/10分(190℃、2.16kg)、
・mod−VL:接着性ポリエチレン(不飽和カルボン酸変性超低密度ポリエチレン)、三井化学(株)製「アドマー SF730」、d=0.902g/cm、MFR=2.0g/10分(190℃、2.16kg)。
【0062】
(実施例1)
図1に概略構成を示す装置を用い、層構成が、外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比で、PET(3)/mod−VL(3)/Ny−1+Ny−2=60+40重量%混合物(30)/EVOH(7)/mod−VL(3)/VLDPE(44)となるように、各樹脂を複数の押出機1(1台のみ図示)でそれぞれ押出し、溶融された樹脂を環状ダイ2に導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出した。ダイ2出口から流出した溶融管状体3を水浴4中で、約25℃に急冷し、偏平管状体3aとした。次いで、該偏平管状体3aを86℃の温水浴6中を通過させた後、バブル形状の管状体フィルム3cとし20〜25℃のエアリング9で冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に2.2倍、横方向(TD)に2.4倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで該二軸延伸フィルム3dを、3mの筒長を有する熱処理筒11中に導き、バブル形状の管状体フィルム3eとし、吹き出し口13より吹き出させたスチームにより85℃に加熱し、縦方向に25%緩和、横方向に25%緩和させながら約7秒間熱処理し、二軸延伸フィルム(熱収縮性多層フィルム)3fを製造した。得られた二軸延伸フィルムの折り幅(偏平幅)は450mmで厚さは90μmであった。
【0063】
得られた二軸延伸フィルムの層構成および製膜(延伸−緩和)条件の概略ならびに物性および深絞り成形適性評価結果を、他の実施例および比較例のそれとともにまとめて後記表1および表2に示す。
【0064】
(実施例2)
実施例1のNy−1+Ny−2混合物の混合比率を変え、Ny−1+Ny−2=65+35重量%混合物に変更する以外は実施例1と全く同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
(実施例3)
【0065】
実施例1のNy−1+Ny−2の混合物をNy−1+Ny−2=70+30重量%混合物に、縦方向の延伸倍率を2.4倍に変更する以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0066】
(実施例4)
実施例1の層構成を、外側から内側へ順に且つかつこ内に示す厚み比で、PET(6)/mod−VL(3)/Ny−1+Ny−2=60+40重量%混合物(39)/EVOH(7)/mod−VL(3)/VLDPE(72)とし、延伸温度を88℃に変更する以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは130μmであった。
【0067】
(実施例5)
実施例4の層構成を、外側から内側へ順に且つかつこ内に示す厚み比で、PET(7)/mod−VL(4)/Ny−1+Ny−2=60+40重量%混合物(48)/EVOH(9)/mod−VL(4)/VLDPE(88)に変更する以外は実施例4と同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは160μmであった。
【0068】
(実施例6)
実施例5のVLDPEをLLDPEに変更し、延伸温度を90℃とする以外は実施例5と同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは160μmであった。
【0069】
(実施例7)
実施例1の管状体3aの扁平幅を231mmとし、縦方向の延伸倍率を2.4、横方向の延伸倍率を2.6とした以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0070】
(実施例8)
実施例1のNy−1をNy−3に変更する(すなわち、Ny−1+Ny−2混合物を、Ny−3+Ny−2混合物に変更する)以外は実施例1と全く同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0071】
(実施例9)
実施例1のPETをLLDPEに変更する以外は実施例1と全く同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0072】
(実施例10)
実施例1のPETをNy−3に変更する以外は実施例1と全く同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0073】
(比較例1)
実施例1と同じ装置を用い、層構成が、外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比で、PET(3)/mod−VL(3)/Ny−1+Ny−2=70+30重量%混合物(26)/EVOH(7)/mod−VL(3)/VLDPE(48)となるように、各樹脂を複数の押出機1でそれぞれ押出しし、溶融された樹脂を環状ダイ2に導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出した。ダイ2出口から流出した溶融管状体3を水浴4中で、約25℃に急冷し、偏平幅207mmの管状体3aとした。次いで、該偏平管状体3aを88℃の温水浴6中を通過させた後、バブル形状の管状体フィルム3cとし20〜25℃のエアリング9で冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に2.6倍、横方向(TD)に2.9倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで該二軸延伸フィルム3dを、3mの筒長を有する熱処理筒11中に導き、バブル形状の管状体フィルム3eとし、吹き出し口12より吹き出させたスチームにより85℃に加熱し、縦方向に25%緩和、横方向に25%緩和させながら約7秒間熱処理し、二軸延伸フィルム3fを製造した。得られた二軸延伸フィルムの偏平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0074】
(比較例2)
実施例1と同じ装置を用い、層構成が、外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比で、PET(2)/mod−VL(1.5)/Ny−1+Ny−2=70+30重量%混合物(14)/EVOH(4)/mod−VL(1.5)/VLDPE(17)となるように、各樹脂を複数の押出機1でそれぞれ押出しし、溶融された樹脂を環状ダイ2に導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出した。ダイ2出口から流出した溶融管状体3を水浴4中で、約25℃に急冷し、偏平幅167mmの管状体3aとした。次いで、該偏平管状体3aを88℃の温水浴6中を通過させた後、バブル形状の管状体フィルム3cとし20〜25℃のエアリング9で冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に2.7倍、横方向(TD)に3.0倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで該二軸延伸フィルム3dを、3mの筒長を有する熱処理筒12中に導き、バブル形状の管状体フィルム3eとし、吹き出し口13より吹き出させたスチームにより70℃に加熱し、縦方向に10%緩和、横方向に10%緩和させながら約4.5秒間熱処理し、二軸延伸フィルム3fを製造した。得られた二軸延伸フィルムの偏平幅は450mmで厚さは40μmであった。
【0075】
(比較例3)
比較例2の層構成を、外側から内側へ順に且つかつこ内に示す厚み比で、PET(3)/mod−VL(3)/Ny−1+Ny−2=70+30重量%混合物(30)/EVOH(7)/mod−VL(3)/VLDPE(44)とした以外は、比較例2と同じにして、二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであった。
【0076】
(比較例4)
比較例2の層構成を、外側から内側へ順に且つかつこ内に示す厚み比で、PET(1.5)/mod−VL(1.5)/Ny−3(8)/EVOH(5)/mod−VL(1.5)/LLDPE(21)とし、延伸倍率を縦方向2.9倍、横方向3.0倍と変更する以外は比較例2と同じにして、二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは38.5μmであった。
【0077】
(比較例5)
実施例1のNy−1+Ny−2の混合比率をNy−1+Ny−2=50+50重量%混合物に変更したところ、延伸製膜中にフィルムに破れが発生し、巻き取りが不可能になった。
【0078】
(比較例6)
実施例1のNy−1+Ny−2の混合比率をNy−1+Ny−2=80+20重量%混合物に変更する以外は、実施例1と同じにして、二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであったが、厚み斑が40%以上と大きく、巻き姿が悪く、性能のバラツキも大きい商品価値の無いフィルムであった。
【0079】
(比較例7)
実施例1のNy−1+Ny−2の混合比率をNy−1+Ny−2=70+30重量%混合物とし、層構成を外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比で、PET(3)/mod−VL(3)/Ny−1+Ny−2=70+30重量%混合物(22)/EVOH(7)/mod−VL(3)/VLDPE(52)に変更する以外は、実施例1と同じにして、二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであったが、厚み斑が40%以上と大きく、巻き姿が悪く、性能のバラツキも大きい商品価値の無いフィルムであった。
【0080】
(比較例8)
特許文献1の実施例中で本発明の方法に最も近いと考えられる実施例10の方法により熱収縮性多層フィルムを製造した。すなわち図1に概略構成を示す装置を用い、積層態様が外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比率で、PET(3)/mod−VL(3)/Ny−1+Ny−2=70+30重量%混合物(23)/EVOH(4)/mod−VL(3)/VLDPE(54)となるように、各樹脂を複数の押出機1でそれぞれ押出しし、溶融された樹脂を環状ダイ2に導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出した。環状ダイ2出口から流出した溶融した管状体3aを水浴4中で、約16℃に急冷しつつピンチローラ5で引き取りフィルム状にした。次に、フィルム状の管状体3bを87℃の温水浴6中を通過させた後、バブル形状のインフレーション中の管状体フィルム3cとし15〜20℃のエアリング9で冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に2.7倍、横方向(TD)に3.0倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで延伸後の菅状体フィルム3dを、2mの筒長を有する熱処理筒12中に導き、バブル形状の熱処理中の管状体フィルム3eとし、吹き出し口13より吹き出させたスチームにより87℃に加熱し、縦方向に20%緩和、横方向に20%緩和させながら7秒間熱処理し、熱処理後の管状体フィルム3f(熱収縮性多層フィルム)を製造した。得られた熱収縮性多層フィルムの扁平幅は490mmで、厚みは90μmであった。
【0081】
(比較例9)
特許文献2の実施例中で本発明の方法に最も近いと考えられる実施例14の方法により熱収縮性多層フィルムを製造した。すなわち図1に概略構成を示す装置を用い、層構成が、外側から内側へ順に且つかっこ内に示す厚み比で、PET(3)/mod−VL(2)/Ny−3(16)/EVOH(8)/mod−VL(2)/LLDPE(40)となるように、各樹脂を複数の押出機1(1台のみ図示)でそれぞれ押出し、溶融された樹脂を環状ダイ2に導入し、ここで上記層構成となるように溶融接合し、共押出した。ダイ2出口から流出した溶融管状体3を水浴4中で、10〜18℃に急冷し、偏平管状体3aとした。次いで、該偏平管状体3aを92℃の温水浴6中を通過させた後、バブル形状の管状体フィルム3cとし15〜20℃のエアリング9で冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に3.2倍、横方向(TD)に3.2倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで該二軸延伸フィルム3dを、2mの筒長を有する熱処理筒12中に導き、バブル形状の管状体フィルム3eとし、吹き出し口13より吹き出させたスチームにより90℃に加熱し、縦方向に30%緩和、横方向に32%緩和させながら7秒間熱処理し、二軸延伸フィルム(熱収縮性多層フィルム)3fを製造した。得られた二軸延伸フィルムの折り幅(偏平幅)は490mmで厚さは71μmであった。
【0082】
(比較例10)
実施例1の延伸倍率を縦方向2.0倍、横方向2.0倍と変更する以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを製造した。得られた二軸延伸フィルムの扁平幅は450mmで厚さは90μmであったが、厚み斑が40%以上と大きく、巻き姿が悪くなり、性能のバラツキも大きい商品価値のないフィルムであった。
【0083】
上記実施例および比較例で得られた二軸延伸フィルムの層構成および製膜(延伸−緩和)条件の概略ならびに物性および深絞り成形適性評価結果を、まとめて次表1および表2に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0086】
上記表1および表2に示す結果を見れば明らかなように、本発明の方法によれば、極めて限定的な組成のポリアミド系樹脂組成物からなる中間層を有する管状積層体(パリソン)を、極めて限定的な延伸倍率および緩和率でインフレーション法により二軸延伸形成を行うことにより、従来製品と比べて、最大絞り深さ、面積基準最大絞り比および短辺基準絞り比の著しい向上で代表される高度の深絞り成形適性を有する深絞り成形用ポリアミド系樹脂系熱収縮性多層フィルムが得られていることが分る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、
(A)該中間層(b)が、融点が180℃以上である脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸成分とする脂肪族ジアミンとの重縮合物からなる非晶質芳香族ポリアミドとからなり、非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%である混合物からなり、全層厚中の25%を超え50%以下の層厚を占め、
(B)100℃での引張試験において伸度100%時の応力が、縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれか少なくとも一方向で3〜22N、且つMDおよびTDの平均値として3〜20Nであり、且つ
(C)90℃熱水中収縮率がMDおよびTDでそれぞれ3〜20%であること、
を特徴とする深絞り成形用熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
最大絞り深さ(D)が60mm以上であり、且つ最大絞り深さ(D)/金型短辺長さ(L)で定まる短辺基準絞り比(D/L)が0.70以上である請求項1に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
深絞り成形可能な金型の内側表面積/金型の開口面積で定まる面積基準最大絞り比が2.8以上である請求項1または2に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
中間層(b)を構成する非晶質芳香族ポリアミドがイソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸性分とするヘキサメチレンジアミンとの重縮合物である請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
中間層(b)を構成する脂肪族ポリアミドがナイロン6またはナイロン6−66共重合体からなる請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
表面層(a)を構成する熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリオレフィンまたはポリアミドからなる請求項1〜5のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項7】
表面層(c)を構成するシール可能な樹脂がポリオレフィンからなる請求項1〜6のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項8】
中間層(b)と表面層(a)および/または(c)との間に、ガスバリア樹脂層および接着性樹脂層のいずれか少なくとも一を付加中間層として含む請求項1〜7のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項9】
溶融された少なくとも3種の熱可塑性樹脂を管状に共押出し、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、シール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、且つ該中間層(b)が、融点が180℃以上である脂肪族ポリアミドと、イソフタル酸およびテレフタル酸を主たる酸成分とする脂肪族ジアミンとの重縮合物からなる非晶質芳香族ポリアミドとからなり、非晶質芳香族ポリアミド含有率が25〜45重量%である混合物からなり、全層厚中の25%を超え50%以下の層厚を占める管状体を形成し、次いで該管状体をその各層に占める主たる樹脂の融点以下に水冷却し、その後管状体の各層に占める主たる樹脂の融点以下の温度に再加熱し、管状体の内部に流体を入れながら管状体を垂直方向に引出しつつ垂直方向に2.1〜2.4倍および円周方向2.1〜2.6倍に延伸して二軸延伸管状フィルムを形成し、これを折り畳み、次いで内部に流体を入れて再び形成した管状体の表面層(a)側からスチームもしくは温水により垂直方向および円周方向にそれぞれ緩和率が20〜35%となるように緩和熱処理を行い、その後冷却することによる延伸配向多層フィルムを得ることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の熱収縮性多層フィルムの製造方法。
【請求項10】
管状体を垂直方向に引出しつつ垂直方向に2.2〜2.4倍および円周方向に2.2〜2.6倍に延伸後、各方向に20〜30%緩和熱処理して二軸延伸管状フィルムを形成する請求項9に記載の熱収縮性多層フィルムの製造方法。
【請求項11】
75〜95℃のスチームもしくは温水により緩和熱処理する請求項9または10に記載の熱収縮性多層フィルムの製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−516338(P2013−516338A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531130(P2012−531130)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/JP2010/073472
【国際公開番号】WO2011/083707
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】