説明

深絞り食缶外面用塗料組成物及び該組成物の塗膜層を有する深絞り食缶

【課題】 高輝性を呈する意匠性を有し、且つ、耐打ち抜き加工性、耐レトルト性、耐熱水浸漬蒸気処理性、密着性を有する塗膜を形成し得るスチール製又はアルミ製深絞り食缶用外面塗料組成物を提供する。
【解決手段】 表面に銀を鍍金したガラスフレーク顔料(A)、ビスフェノール型由来原料を含まない、固形分水酸基価が5〜15、固形分酸価が10未満、数平均分子量が13,000〜18,000であるポリエステル樹脂(a)を主剤とし、ビスフェノール型由来原料を含まない、メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂(b)及び、オキシム系ブロック剤でブロックされた脂環族ポリイソシアネート(c)を硬化剤とするバインダー樹脂(B)を含有する深絞り食缶外面用塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチール製又はアルミ製深絞り食缶用外面のベースコート層として用いられ、キラキラ感を有する鮮やかな金色の高輝性を呈する意匠性を与え、且つ、耐レトルト性・高加工性に優れた塗膜物性を保持する環境対応型の深絞り食缶外面用塗料組成物及びその乾燥塗膜層を缶壁に有するスチール製又はアルミ製の深絞り食缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧品用及び飲料用3P缶等で意匠性を重視した光輝性を有する塗膜を形成する塗料が採用されている。近年、スチール製又はアルミ製の深絞り食缶用外面のベースコート層にも高輝性の意匠性が求められるようになり、アルミペースト、アルミフレーク等の金属顔料が用いられている。スチール製又はアルミ製の深絞り食缶用外面のベースコート層の場合にも内容物の殺菌の為の加圧水蒸気処理が行われるため、塗膜にはこのような処理への耐性(耐レトルト性)も求められ、エポキシ−アミノ系樹脂、アクリル−アミノ系樹脂、ポリエステル−アミノ樹脂等の有機溶剤溶液を主成分とする溶剤型塗料が用いられている。
【0003】
しかしながら、この方法はエンドクリン問題の疑いが持たれているビスフェノールAを原料とするエポキシ樹脂が必須成分として使用されていた。既存の缶用塗料の多くが抱える大きな問題点の一つに上記エンドクリン問題がある。これは、「缶内面塗料にエンドクリン問題の疑いが持たれているビスフェノールAを原料とする成分が含まれている場合、硬化塗膜から当該化合物が内容物中に溶出し、これを摂取したヒトの内分泌に悪い影響を及ぼす」との学説によって社会問題化したものである。缶外面の塗膜は直接、内容物との接触はないが、オーブンでの焼付等の製缶工程の中で外面塗料の成分が内面に付着する可能性を否定することはできない。こうした背景から、製缶業界では缶用塗料の原料からビスフェノールAを排除しようとする方針が打ち出され、塗料メーカーではそのための技術的な検討が実施されている。
【0004】
従来、食品等を収容する缶の塗料には、塗膜に求められる加工性、密着性、耐レトルト性等を充足させるために最も有用な成分としてビスフェノールAを原料とするエポキシ樹脂が重用されてきた。このビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用せずに上記塗膜性能を充足させるのは非常に困難な課題であった。近年、3P溶接缶用外面塗料としてビスフェノールAを含有しない塗料が開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、これら文献に紹介された塗料は3P溶接缶用途であり、塗膜形成後の加工はネック加工程度である。しかしながら、塗膜形成後に板を深絞りで容器形状に加工するという加工の厳しいスチール製又はアルミ製の深絞り食缶に適用するには、その重要な条件としての、耐打ち抜き加工性等を充足させるものではなかった。
【0005】
また、高輝性の意匠性と、加工性及び耐レトルト性等の食缶に特有に求められる特性との両立を図ることも困難であった。ガラスフレークに金属薄膜をスパッタリング法でコーティングした高輝性顔料が自動車車体塗装、家電製品塗装等に用いられている例がある(例えば、特許文献3、4参照)が、高加工性、耐レトルト性を保持した、スチール製又はアルミ製の深絞り食缶用塗料は知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−146569号公報
【特許文献2】特開2003−246966号公報
【特許文献3】特開2004−314152号公報
【特許文献4】特開平9−188830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消して、スチール製又はアルミ製の深絞り食缶の条件として、高輝性を呈する意匠性を有し、且つ、耐打ち抜き加工性、耐レトルト性、耐熱水浸漬蒸気処理性の高性能を有し、各種缶形態に加工し得る密着性・加工性を有する、優れた塗膜を形成し得るスチール製又はアルミ製深絞り食缶用外面塗料組成物及び該塗料組成物の乾燥塗膜層を有するスチール製又はアルミ製の深絞り食缶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、エンドクリン問題の疑いのあるビスフェノール型由来原料を含有しない、特定のポリエステル系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂及び脂環族ポリイソシアネートと特定の表面処理を施した高輝性を呈するガラスフレーク顔料を用いることにより、スチール製又はアルミ製深絞り食缶外面用のベースコート層として、耐打ち抜き加工性、耐レトルト性、耐熱水浸漬蒸気処理性等の塗膜性能と高輝性を兼備した塗膜を形成し得る環境対応型スチール製又はアルミ製深絞り食缶外面用塗料組成物及びその乾燥塗膜層を有するスチール製又はアルミ製深絞り食缶を見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は第一に、表面に銀を鍍金したガラスフレーク顔料(A)、ビスフェノール型由来原料を含まない、固形分水酸基価が5〜15、固形分酸価が10未満、数平均分子量が13,000〜18,000であるポリエステル樹脂(a)を主剤とし、ビスフェノール型由来原料を含まない、メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂(b)及び、オキシム系ブロック剤でブロックされた脂環族ポリイソシアネート(c)を硬化剤とするバインダー樹脂(B)を含有することを特徴とする深絞り食缶外面用塗料組成物を提供する。
【0010】
本発明は第二に、食缶の側壁外面に、前記した深絞り食缶外面用塗料組成物の乾燥塗膜層を有することを特徴とする深絞り食缶を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、キラキラした金色光沢の高輝性を呈する意匠性を有し、且つ、ビスフェノール型由来原料を含有せずエンドクリン問題の懸念のない環境対応型の缶外面用塗料組成物であって、深絞りの過酷な加工に対しても、耐打ち抜き加工性、耐レトルト性、耐熱水浸漬蒸気処理性等の性能を有する缶外面用塗料組成物、及び、その優れた塗膜を有するスチール製又はアルミ製の深絞り食缶を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物は、表面に銀を鍍金したガラスフレーク顔料(A)、ビスフェノール型由来原料を含まない、固形分水酸基価が5〜15、固形分酸価が10未満、数平均分子量が13,000〜18,000であるポリエステル樹脂(a)を主剤とし、ビスフェノール型由来原料を含まない、メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂(b)及び、オキシム系ブロック剤でブロックされた脂環族ポリイソシアネート(c)を硬化剤とするバインダー樹脂(B)を含有するものであり、前記した顔料(A)の平均粒径R(μm)は、10〜50μmの範囲であることが好ましい。尚、平均粒径はメディアンD50で表すものとする。
【0013】
前記した顔料(A)の平均粒径R(μm)が、10〜25μmの場合、バインダー樹脂(B)固形分100質量部に対する顔料の含有量が10〜90質量部であることが好ましい。又、前記した顔料(A)の平均粒径R(μm)が25〜50μmの場合、バインダー樹脂(B)固形分100質量部に対する顔料の含有量が10〜60質量部であることが好ましい。
【0014】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物に用いる、表面に銀を鍍金したガラスフレーク顔料(A)は、厚さ1〜2μm程度、平均粒径10〜50μm程度のガラスフレークに銀を鍍金したガラスフレーク顔料が好ましく、銀表面は、更にシランカップリング剤等で表面被覆処理を施し、より耐水性を呈するガラスフレーク顔料としても良い。平均粒径が10μm未満では、十分な高輝性が得られず、50μmを超えると、高輝性は得られるものの、塗工条件の制約からゴムロールやスクレッパーの損傷を引き起こしやすくなる。
【0015】
前記した顔料の好ましい平均粒径及び含有量は、粒径が25〜40μmの範囲であり、且つ、塗料組成物100質量部に対する顔料の含有量は5〜30質量%程度である。
【0016】
前記した、シランカップリング剤等で表面処理を施した顔料成分は、市販品としては、例えば、以下の製品が挙げられる(何れも、日本板硝子社製であり、「メタシャイン」は同社の登録商標である)。
【0017】
銀コート品としては、メタシャインMC5480PS−A1(平均粒径:480μm、尚、以下かっこ内はメディアンD50で示される平均粒径である。)、メタシャインMC5230PS−A1(230μm)、メタシャインMC5150PS−A1(150μm)、メタシャインMC5090PS−A1(90μm)、メタシャインMC5030PS−A1(30μm)、メタシャインMC2080PS−A1(80μm)、メタシャインME2040PS−A1(40μm)、メタシャインME2025PS−A1(25μm)等が挙げられる。
【0018】
ニッケルシルバーコート品としては、メタシャインMC5480NS−A1(480μm)、メタシャインMC5230NS−A1(230μm)、メタシャインMC5150NS−A1(150μm)、メタシャインMC5090NS−A1(90μm)、メタシャインMC5030NS−A1(30μm)等が挙げられる。
【0019】
ニッケルブラックコート品としては、メタシャインMC5480NB−A1(480μm)、メタシャインMC5230NB−A1(230μm)、メタシャインMC5150NB−A1(150μm)、メタシャインMC5090NB−A1(90μm)、メタシャインMC5030NB−A1(30μm)、メタシャインMC1040NB−A1(40μm)、メタシャインMC1020NB−A1(20μm)等が挙げられる。
【0020】
シルバー色品としては、メタシャインMC5030RS−A1(30μm)、メタシャインMC5090RS−A1(90μm)、メタシャインMCK500RS−A1(500μm)、メタシャインMC1080RS−A1(80μm)、メタシャインMC1040RS−A1(40μm)、メタシャインMC1020RS−A1(20μm)等が挙げられる。
【0021】
黄色品としては、メタシャインMC5090RY−A1(90μm)、メタシャインMC1080RY−A1(80μm)、メタシャインMC1040RY−A1(40μm)、メタシャインMC1020RY−A1(20μm)等が挙げられる。
【0022】
赤色品としては、メタシャインMC5090RR−A1(90μm)、メタシャインMC1080RR−A1(80μm)、メタシャインMC1040RR−A1(40μm)、メタシャインMC1020RR−A1(20μm)等が挙げられる。
【0023】
紫色品としては、メタシャインMC5090RV−A1(90μm)等が挙げられる。
【0024】
青色品としては、メタシャインMC5090RB−A1(90μm)、メタシャインMC1080RB−A1(80μm)、メタシャインMC1040RB−A1(40μm)、メタシャインMC1020RB−A1(20μm)等が挙げられる。
【0025】
緑色品としては、メタシャインMC5090RG−A1(90μm)、メタシャインMC1080RG−A1(80μm)、メタシャインMC1040RG−A1(40μm)、メタシャインMC1020RG−A1(20μm)等が挙げられる。
【0026】
これらの表面処理を施した顔料は全て使用可能である。好ましくは、例えば、メタシャインME2025PS−A1(メディアンD50:20μm)、メタシャインME2040PS−A1(メディアンD50:33μm)等である。これらは、ガラス厚約1μmで銀鍍金の厚さは約0.05μmである。
【0027】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物に用いるポリエステル樹脂は、固形分水酸基価が5〜15(mgKOH/g)、固形分酸価が10未満(mgKOH/g)であり、更に、数平均分子量が13,000〜18,000である、ビスフェノール型由来原料を含まないポリエステル樹脂である。
【0028】
ポリエステル樹脂として代表的なものを例示すると、例えばポリオールとポリカルボン酸(無水物)とを加熱溶融し、約160〜270℃程度の反応温度で、反応物の酸価が1〜40程度となるまで、必要により減圧下で脱水縮合せしめ、約500〜25,000程度の数平均分子量を有する脱水縮合物を得たのちに、各種の有機溶剤に溶解せしめることによって調製されるもの等が挙げられる。
【0029】
ポリエステル樹脂を調製する際に使用されるポリオールとして代表的なものを例示すると、エチレングリコール、プロピレングリコール、1.3−ブチレングリコール、1.4−ブチレングリコール、1.6−ヘキサンジオールまたはジエチレングリコール、あるいはジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコールのような、各種の2価アルコール類;及び、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはジグリセリンのような、各種の3価以上のアルコール類が挙げられるが、
2メチル1,3プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0030】
ポリエステル樹脂を調製する際に使用されるポリカルボン酸(無水物)として代表的なものを例示すると、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸もしくはトリメリット酸のような、各種の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸、(無水)トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸(無水物)または(無水)ピロメリット酸等が挙げられる。さらに必要に応じて安息香酸や、tert−ブチル安息香酸などの種々の一塩基酸をかかる酸成分として併用することもできるが、
テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0031】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物に硬化剤として用いられるベンゾグアナミン樹脂は、ビスフェノール型由来原料を含まないメチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂である。
【0032】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物に硬化剤として用いられるブロック型脂環族ポリイソシアネートは、ブロックドNCO含有量は約8重量%、遊離NCO含有量は0.1重量%未満であり、解離温度は130℃である、オキシム系ブロック剤でブロックされた、脂環族ポリイソシアネート樹脂である。
【0033】
塗膜の硬化性と、加工性のバランスを考慮すると、特に、ポリエステル樹脂成分100質量部に対し、メチル・ブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂が5〜15質量部であり、ブロック型脂環族ポリイソシアネート樹脂は、5〜15質量部であることが好ましい。
【0034】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物は、塗料構成成分を水不溶性溶媒に溶解した溶剤型塗料として使用することが好ましい。周知の有機溶剤ならば全て使用可能であるが、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ブチルセロソルブアセテート等が望ましい、それらは、単独使用でも2種以上の併用でも良い。
【0035】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物には必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフテレンジスルホン酸、又はリン酸等の種々の酸触媒、あるいはこれらの各種アミン塩等を、硬化触媒として添加してもよい。硬化触媒の配合量は、通常は樹脂固形分100質量部に対して0.1〜1.0質量部程度である。
【0036】
さらには本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物には、通常塗料に使用されるレベリング剤、消泡剤、滑剤等の種々の添加剤を配合することもできる。
【0037】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物は、定法により、例えばターボミル、分散攪拌機等の混合装置を使用して製造することができる。
【0038】
前記したポリエステル樹脂は、一部を、予め、沈降性硫酸バリウムとともに、ブチルセロソルブ等の溶剤を用いて、ロールミル等で練肉した沈降性硫酸バリウムベースを調製しておくことが好ましい。
【0039】
本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物をベースコート層として、スチール製又はアルミ製深絞り食缶に適用することができる。スチール製又はアルミ製シートの外面に、下地層、印刷層等を設けた後に、例えば9インチコーター等によりローラー等を使用して、本発明の深絞り食缶外面用塗料組成物をベースコート層として塗布し、約180℃程度の温度で、約10分間といった加熱条件で焼付を行うことによって、目的とする硬化塗膜を形成することができる。
【0040】
こうして得られた塗膜は優れた金色光沢を保持した高輝性、加工性、密着性等を備え、スチール製又はアルミ製深絞り食缶用ベースコートとして好適なものである。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。特に指定のない限り、実施例中の、部、%は質量部、質量%を表す。
【0042】
(沈降性硫酸バリウムベースの調製)
ビスフェノールAを含有しないポリエステル樹脂バイロンGK36CS(東洋紡績株式会社製:固形分水酸基価8、固形分酸価5、数平均分子量15,000)を60.0部、沈降性硫酸バリウム30.0部、ブチルセロソルブ10.0部を配合、ロールミル等で練肉し、沈降性硫酸バリウムベースを得た。
【0043】
(実施例塗料の調製−塗料ベース1)
ビスフェノールAを含有しないポリエステル樹脂として、バイロンGK36CS(東洋紡績株式会社製)を47.0部、ビスフェノールAを含有しないメチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂として、マイコート101(日本サイテックインダストリー株式会社製)を3.0部、ブロック型脂環族ポリイソシアネート樹脂はVESTANAT B1370(ヒュルスジャパン株式会社製)を3.5部、スポット塗装適性・消泡性を付与するシリコーン助剤0.01部、更には前述した沈降性硫酸バリウムベースを20.0部、レベリング剤を0.08部、PGM−ACを4.0部、ソルベッソ150を4.0部、ソルベッソ100を2.0部バットタンクに精秤し、ターボミキサーにて分散攪拌をしながら60℃±5℃迄昇温させた。40℃程度まで自然放冷させた後、分散攪拌機付バットタンクで混合攪拌しながら、酸触媒を1.0部添加し、塗料ベース(1)を得た。次いで、メタシャイン ME2040PS−A1(日本板硝子株式会社製)を下記の表1に記載された量を添加し、ソルベッソ100を適性粘度になるよう調整しながら加え、各塗料組成物を得た。
【0044】
(実施例塗料の調製−塗料ベース2)
ビスフェノールAを含有しないポリエステル樹脂として、バイロンGK36CS(東洋紡績株式会社製)を59.0部、ビスフェノールAを含有しないメチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂として、マイコート101(日本サイテックインダストリー株式会社製)を3.0部、ブロック型脂環族ポリイソシアネート樹脂はVESTANAT B1370(ヒュルスジャパン株式会社製)を3.5部、スポット塗装適性・消泡性を付与するシリコーン助剤0.01部、PGM−ACを4.0部、ソルベッソ150を4.0部、ソルベッソ100を2.0部バットタンクに精秤し、ターボミキサーにて分散攪拌をしながら60℃±5℃迄昇温させた。40℃程度まで自然放冷させた後、分散攪拌機付バットタンクで混合攪拌しながら、酸触媒を1.0部添加し、塗料ベース(2)を得た。次いで、メタシャイン ME2040PS−A1(日本板硝子株式会社製)を下記の表1に記載された量を添加し、ソルベッソ100を適性粘度になるよう調整しながら加え、各塗料組成物を得た。
【0045】
(比較例塗料の調製−塗料ベース3)
ビスフェノールAを含有しないポリエステル樹脂として、バイロンGK36CS(東洋紡績株式会社製)を41.0部、ビスフェノールAを含有しないメチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂として、マイコート101(日本サイテックインダストリー株式会社製)を12.5部、スポット塗装適性・消泡性を付与するシリコーン助剤0.01部、更には前述した沈降性硫酸バリウムベースを20.0部、レベリング剤を0.08部、PGM−ACを4.0部、ソルベッソ150を4.0部、ソルベッソ100を2.0部バットタンクに精秤し、ターボミキサーにて分散攪拌をしながら60℃±5℃迄昇温させた。40℃程度まで自然放冷させ塗料ベース(3)を得た。次いで、メタシャイン ME2040PS−A1(日本板硝子株式会社製)を下記の表1に記載された量を添加し、ソルベッソ100を適性粘度になるよう調整しながら加え、各塗料組成物を得た。
【0046】
上記で得られた実施例、比較例の塗料組成物について、9インチテストコーターを使用して、製缶用のTFS素地板(ティンフリースチール板、厚さ0.19mm)の外面に、乾燥塗膜量が75mg/dmとなるように塗布した後、180℃で10分間、熱風循環式ガスオーブンで加熱して硬化させた。得られた塗膜の厚さは約6μであった。このパネルをテストピースとしたものを次の試験に供した。
【0047】
(高輝度性):目視評価による。
【0048】
(ミスチング性):9インチテストコーターを試験機とし、コンポジションロールの前後に黒色の紙を配置する。塗料を塗装する要領でコーターを80rpmで回転させる。ミストを1分間黒い紙に採取し目視で評価した。
【0049】
(フロー性):9インチテストコーターでTFS板に塗装し、(セット時間0分)熱風循環型オーブンで、塗装板を焼付ける。硬化塗膜表面のフロー性を目視で判定する。
【0050】
(スクレッパー傷付き性):砥石で研磨し平滑にしたスクレッパーを9インチコーターにセットし、塗料を塗装する要領でコーターを運転する。インプレッションロールにスクレッパーを軽く接触させて塗料を掻き取る。スタート直後、5分後、10分後にTFS板に塗料を塗装する。スクレッパーの傷付きに応じて塗装板の裏面汚れ(ダーティーバック)及びスクレッパーの刃の傷付き具合を視覚判定
【0051】
(キャップ加工性試験):12tonプレスにてキャップ加工試験を行った。
【0052】
(キャップ加工ロトマット試験):12tonプレスにてキャップ加工後、加圧容器中でキャップを130℃の湯中に30分加圧浸漬した後、塗膜の状態を評価した。
【0053】
(折り曲性試験):デュポン衝撃試験機を用い、1/10傾斜台で1kg−50cmの条件で加工後の塗膜の亀裂状態を評価した。
【0054】
(耐衝撃性試験):1kg−10cm、20cm、30cmの条件で、デュポン衝撃試験後の塗膜の状態を評価した。
【0055】
加工性に関する上記評価項目について、評価基準は以下の通りである。
○:良好、△:やや不良、×:不良
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の塗料組成物はスチールやアルミ板に金色光沢の高輝性を付与し、且つ深絞り加工に耐える強靭なベースコート塗膜を形成することが可能であり、ツナ缶等の形態の食缶用途に広範に展開が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に銀を鍍金したガラスフレーク顔料(A)、ビスフェノール型由来原料を含まない、固形分水酸基価が5〜15、固形分酸価が10未満、数平均分子量が13,000〜18,000であるポリエステル樹脂(a)を主剤とし、ビスフェノール型由来原料を含まない、メチルブチル混合エーテル化ベンゾグアナミン−メラミン共縮合樹脂(b)及び、オキシム系ブロック剤でブロックされた脂環族ポリイソシアネート(c)を硬化剤とするバインダー樹脂(B)を含有することを特徴とする深絞り食缶外面用塗料組成物。
【請求項2】
前記した顔料(A)の平均粒径R(μm)が、10〜25μmであり、バインダー樹脂(B)固形分100質量部に対する顔料の含有量が10〜90質量部である請求項1に記載の深絞り食缶外面用塗料組成物。
【請求項3】
前記した顔料(A)の平均粒径R(μm)が25〜50μmであり、バインダー樹脂(B)固形分100質量部に対する顔料の含有量が10〜60質量部である請求項1に記載の深絞り食缶外面用塗料組成物。
【請求項4】
前記したポリエステル樹脂、沈降性硫酸バリウム及び溶剤を含有する沈降性硫酸バリウムベースを含有する請求項1〜3の何れかに記載の深絞り食缶外面用塗料組成物。
【請求項5】
食缶の側壁外面に、請求項1〜4に記載された深絞り食缶外面用塗料組成物の乾燥塗膜層を有することを特徴とする深絞り食缶。
【請求項6】
前記した深絞り食缶外面塗料組成物の乾燥塗膜量が40〜180mg/dmである請求項5に記載の深絞り食缶。
【請求項7】
深絞り食缶の底面及び側壁外面に、所望の印刷層を有する請求項5又は6に記載の深絞り食缶。


【公開番号】特開2007−211133(P2007−211133A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32455(P2006−32455)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】