説明

深部体温センサを任意で備える連続腹腔内圧モニタ用尿道カテーテル

患者に関連付けられた1つまたは複数の変換器(203)により測定された1つまたは複数の生理学的状態変数の値を視覚的に表示するため、モニタ(201)への入力信号を生成するよう構成された機器を提供する。好ましい態様は、腹腔内圧P2を推測できるよう患者の膀胱(177)と流体連通状態に置かれた圧力変換器(195)を含む。態様はまた、深部体温を推測するため膀胱(177)の内部/付近の流体の温度を測定するよう構成された温度変換器を含んでいてもよい。本発明の特定の態様は、動脈血圧を測定するよう構成された第二の圧力変換器を含んでいてもよい。後者の場合において、2つの圧力変換器から受け取った信号を操作して、腹腔灌流圧に対応する第三の信号を生成してもよく、続いてこの信号を数値表示機器に表示させてもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は概して、バルブと、導管と、温度変換器と、圧力測定機器とを含んでいてもよい配管機器に関する。具体的には本発明は、患者の膀胱に関連する流体の温度および液圧を測定することによって患者の深部体温(core body temperature)および/または腹腔内圧を推測するよう適合したアセンブリとして構成された装置に関する。なお、本出願は、35 U.S.C. 119(e) のもと、2004年12月3日に提出された米国特許仮出願第60/633,004号「CONTINUOUS INTRA-ABDOMINAL PRESSURE MONITORING URINARY CATHETER WITH CORE TEMPERATURE SENSOR」の提出日の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
腹腔内圧(IAP)の上昇は、検出および処置されなければ、臓器損傷および患者の死亡を引き起こし得るような大きな変化を身体生理にもたらす。重篤になった患者は、毛細血管漏出現象を生じることがあり、これにより、患者の身体の組織は、毛細血管から漏れ出した余剰の流体で浮腫をきたす。このプロセスは流体の「サードスペーシング(3rd spacing)」と呼ばれる。これは、敗血症、熱傷、外傷、および手術後の患者に非常に多く見られる。サードスペーシングが特に多い身体領域の1つが腹腔である。重篤患者では、何リットルもの流体が腸壁、腸間膜、および腹腔(腸の周りを揺動する自由流体として)へと漏れることもある。
【0003】
腹腔への流体のサードスペーシングはIAPの上昇をもたらす。正常なIAPは0 mmHg〜大気圧以下(0未満)である。この圧力が12〜15 mmHgに達すると腹腔内圧上昇(IAH)が生じる。この時点で、腸への血流を増加させるための補液、心拍出量などを増加させるための筋変力補助など、腸灌流を改善するための方法を開始すべきである。圧力が20〜25 mmHgを超えて上昇すると腹部コンパートメント症候群(ACS)が生じ、その結果、主要な生理系および臓器系の機能不全が起こる。不可逆的な臓器損傷および死亡を防ぐため、減圧手術(例:腹部の正中線垂直切開)が必要となることが多い。腹部減圧を行うべき正確な圧力は、年齢、基礎にある併発疾患、およびACS発症の生理学的徴候など、ホストの複数の要因によって異なる。
【0004】
腹圧上昇の早期検出により、医師は、不可逆的な臓器損傷が生じる前に介入することができ、救命できる可能性がある。IAP上昇を早期検出するための信頼できる唯一の方法は、腹部の空間(腹膜腔、胃、膀胱、直腸)内にカテーテルを置いて圧力を測定することである。最も多く用いられている方法は、留置したフォーリーカテーテルで膀胱圧をモニタすることである。膀胱圧をモニタするため、一部の医師らは現在、多数の個別の材料で自身の機器を作製し、それをフォーリーカテーテル内に挿入している。
【0005】
臨床においては、体温のベースライン測定値を確認し、治療に対する患者の反応または治療の有効性を評価するため、体温の評価が不可欠である。このバイタルサインの測定は、術後の回復期において、または炎症、感染、もしくは敗血症の結果として、体温の安定性が脅かされる可能性がある集中治療下の患者では特に重要である。体温の不安定性は、その結果として、血行動態または呼吸系のクリーゼを誘発する可能性がある。
【0006】
体温は種々の部位および機器を用いて測定できるが、深部体温の連続的な測定は、特に長期的に行う場合に問題となる。肺動脈に挿入されるものなど、先端にサーミスタを備えた留置カテーテルまたはプローブは、主として集中治療室(ICU)で用いられているが、対象は血行動態モニタリングを要する選択された患者に対してのみである。食道プローブは主として手術室で用いられているが、集中治療の場で食道温が測定されることはまれであり、プローブの配置も様々である。最後に、直腸プローブも、主として救急部門で低体温または高体温の患者の連続モニタリングに用いられている。膀胱は、特に尿ドレナージのため留置カテーテルも必要とする患者において、体温を連続モニタリングする部位としてより一般的になりかつ普及しつつある。
【0007】
現在の医学分野において、膀胱圧がIAPと密接に相関することは周知である。IAPは多数の医療従事者が知りたいと真に望む生理学的状態変数の1つであるが、実際のIPAによく近似する圧力読取値が得られる、単純でかつ比較的非侵襲的な方法であることから、膀胱圧の測定値が用いられている。尿道カテーテル内に配置された計器を用いて測定された膀胱の流体温度もまた、当分野において、深部体温に十分正確に近似するものとみなされている。
【0008】
患者の深部体温およびIAPを推測するように動作できる、単純で丈夫かつ費用対効果の高い装置を提供することは、当技術分野における改良点であると考えられる。さらなる進歩の1つは、そのようなデータを実質的に連続的に収集するように動作できる装置を提供することであると考えられる。よりさらなる進歩の1つは、圧力の差(例:腹腔灌流圧(APP))など、患者に存在する1つまたは複数の生理学的状態変数を特徴付けするのに有効な直接的な値を計算および表示できる装置を提供することであると思われる。計算された生理学的状態変数に加えて深部体温も表示するように動作できる装置を提供することも、さらなる進歩であると考えられる。
【発明の開示】
【0009】
本発明の開示
本発明は、患者の膀胱液圧および/または膀胱の流体温度の測定に用いることのできる装置を提供する。そのような圧力情報は、必要に応じて、実質的に連続的にまたは間欠的に収集してもよい。本発明の原理に基づいて構成された特定の好ましい態様は、1つまたは複数の直接測定値に基づく1つまたは複数の生理学的状態(IAPまたは温度など)に対応する数値またはグラフィックを表示するように構成されていてもよい。他の特定の好ましい態様は、複数の測定された入力パラメータに基づいて計算された1つまたは複数の生理学的状態(APPなど)に対応する数値またはグラフィックを表示するように構成されていてもよい。
【0010】
深部体温および腹腔内圧を推測するため本発明の特定の原理に基づいて構築された装置は、患者の膀胱に挿入するよう適合した遠位端を有する尿道カテーテルを含む。このカテーテルは少なくとも第一および第二の管腔を含むが、3つまたはそれ以上の管腔を有するカテーテルもまた使用可能である。第一の管腔は、カテーテルの近位端に連結したバルーン膨張構造と、カテーテルの遠位端に連結した膨張式バルーンとの間に流体連通を提供する。第二の管腔は、カテーテルの近位端に連結したドレーン接続構造と、バルーンより遠位に配置された少なくとも1つのドレーン用ポートとの間に流体連通を提供するように構成される。いくつかの動作可能なカテーテルは、カテーテルの近位端に連結した注入流体接続構造とバルーンより遠位に配置された少なくとも1つの注入用アパーチャとの間に流体連通を提供するように構成された第三の管腔を含んでいてもよい。
【0011】
いずれの場合も、カテーテルは、流体源から注入流体を受け取るよう適合した注入流体接続構造を含む。注入流体接続構造はカテーテルの構造に組み込まれていてもよく、または、1つもしくは複数の別個の構成部品を含んでいてもよい。動作可能なそのような接続構造の1つは分岐導管を含み、第一の分岐は、注入用アパーチャと注入流体源との間の連通を可能にする流体抵抗接続を形成するよう適合した構造を含み、第二の分岐は、変換器が第二の分岐に対して設置位置に配置されるとき、その変換器に連結した第二のシール構造と協調して流体抵抗シールを形成するよう適合した第一のシール構造を備える。特定の場合において、注入流体接続構造は、カテーテルのドレーン用ポートと注入流体源との間の流体連通を可能にするよう適合した第一の分岐を有する分岐導管を含んでいてもよく、この分岐導管の第二の分岐は、ドレーン用ポートと容器へのドレーン出口との間の流体の流動を可能にするよう適合している。
【0012】
膀胱内の流体の温度に対応する温度を測定するのに有効な位置に温度変換器が設置されていてもよい。望ましくは、温度変換器の長さ部分が第三の管腔内に設置される。そのような場合、長さ部分は、望ましくは、膀胱圧の実質的に連続的なモニタリングを可能にするための十分な流量で注入流体が注入用アパーチャを通って排出されるように、長さ部分の軸に沿った注入流体の流動を可能にするため、第三の管腔の断面と調和するように構成される。しかし、一方で温度変換器は、カテーテルが第三の管腔を含んでいる場合であっても、第二の管腔内に設置されていてもよい。さらに、必要に応じて、圧力測定は間欠的に行われてもよい。
【0013】
膀胱内の流体の圧力を測定し、対応する第一の出力信号を生成するため、第一の圧力変換器が膀胱と流体連通状態に置かれる。患者体内の血圧に対応する圧力を測定し、対応する第二の出力信号を生成するため、第二の圧力変換器が配置されていてもよい。特定の態様は、第一および第二の出力信号を操作用に受け取り、計算された生理学的状態変数に対応する、結果として生じる第三の出力信号を生成するよう適合した処理ユニットを含む。望ましくは、第三の出力信号に反応した視覚表示を生じるように表示機器が配置される。現在の好ましい態様において、第一の出力信号は患者の膀胱圧に相関し、第二の出力信号は患者の動脈圧に相関し、視覚表示は腹腔灌流圧に相関する。
【0014】
本発明は、複数の変換器入力に基づく患者の生理学的状態変数の計算値をモニタするよう適合した装置として具現化されてもよい。そのような装置は、患者の膀胱との流体連通を提供するよう構成および配置されたカテーテルを含む。そのような場合、第一の変換器は、膀胱内の第一の生理学的状態変数を測定し、その第一の状態変数に相関する第一の出力信号を生成するように、カテーテルと調和して配置される。第二の変換器は、第二の生理学的状態変数を測定し、第二の状態変数に相関する第二の出力信号を生成するように、患者と関連した別の位置に配置される。第一および第二の出力信号を操作して状態変数の計算値を生成し、この生理学的状態変数の計算値に対応する第三の出力を視覚表示機器への入力用として生成するための構造が提供される。
【0015】
1つの好ましい装置は、患者の膀胱圧に相関する第一の出力信号を生成するための第一の変換器を含む。そのような装置はまた、その患者の動脈血圧に相関する第二の出力信号を生成するための第二の変換器も含む。したがって、その結果得られる状態変数の計算値は腹腔灌流圧に相関する。本発明のいくつかの態様は、膀胱内の第四の生理学的状態変数を測定し、膀胱内の流体の温度に相関する対応した出力信号を生成するよう配置された第三の変換器をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明のこれらの特徴、利点、および代替の局面は、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を検討することによって当業者に明らかになると思われる。
【0017】
本発明を実施するための様式
以下、添付の図面を参照する。これら図面において、本発明の種々の要素には符番が付され、かつ当業者が本発明を作製および利用できるように本発明が説明される。以下の説明は本発明の原理を例示したものにすぎないことが理解されるべきであり、添付の特許請求の範囲を狭めるものとみなされるべきではない。
【0018】
図1において、本発明の特定の原理に基づいて構築された現在好ましいモニタリング機器が通常符番100で示されている。モニタリング機器100は典型的に、臨床従事者が患者の1つまたは複数の生理学的状態変数をモニタできるように構成されたアセンブリの一部として含まれる。モニタリングは、モニタリングアセンブリの構成に応じて、時間に関して不連続的にまたは連続的に遂行されてもよい。機器100は、深部体温および圧力、例えば腹圧などを非排他的に含む生理学的状態変数をモニタするよう適合した装置の一部として使用されてもよい。
【0019】
図のモニタリング機器100は、少なくとも3つの管腔を有する細長い管状ボディ部材(通常符番105で示す)を含む尿道カテーテル103を含む。図2において、カテーテル103は、第一の管腔107、第二の管腔109、および第三の管腔111を含む。注意すべき点として、本発明の原理に基づいて構成された態様は、2つの管腔または3つより多い管腔を有するように構築されていてもよい。いずれの場合も、カテーテル103の遠位端115は、望ましくは、遠位端115の患者体内への留置を容易にするため先が鈍くなっている。本発明の特定の態様を構築するための1つの動作可能なカテーテルは、ジョージア州CovingtonのC.R. Bard, Inc.より品番73018Lで市販されているフォーリーカテーテルである。
【0020】
一般的に、尿道カテーテルまたはフォーリーカテーテル103の1つの管腔(例:図2の管腔107)は、カテーテル103の近位端121に連結した、通常符番119で示す膨張構造と、カテーテル103の遠位端115の付近に配置された膨張式バルーン125との間の連通を可能にするように適合する。バルーン125は、膨張時、患者体内に配置されたカテーテル103が不注意により外れることを防ぐための抑止として機能する。
【0021】
第二の管腔(例:管腔109)は、カテーテル103の近位端121に連結したドレーン接続構造129と、バルーン125の遠位側に配置された少なくとも1つのドレーン用ポート133との間に流体連通を提供する。使用中、尿および他の流体は、連続的または間欠的に、第二の管腔を通って患者の膀胱から流出することができる。
【0022】
第三の管腔(例:管腔111)が存在する場合、この管腔は、カテーテル103の近位端121に連結した、例えば通常符番139で示す流体接続構造と、バルーン125より遠位に配置された少なくとも1つの注入用アパーチャ143との間に流体連通を提供することができる。1つの好ましい機構において、注入流体は第三の管腔を通って患者の膀胱に注入されてもよい。
【0023】
図1に示すように、カテーテル103が患者体内に設置されているときに腹部領域内の温度を測定できるよう、本発明の特定の態様において、通常符番143で示す温度変換器が含まれていてもよい。使用可能な温度変換器の1つは、ニュージャージー州EdisonのG.E. Thermometricsより品番A329で市販されている。深部体温に相関する温度を記録するのに有効な患者体内の所望の位置に位置合わせするための動作可能かつ有効な場所に熱電対149または他の温度測定素子を置くため、分岐導管147の第一の分岐145を介して、温度変換器143の十分な長さを便利に設置することができる。望ましくは、熱電対149は第三の管腔内に置かれる。第三の管腔内に熱電対149を置くことは、尿ドレーン経路の閉塞を防ぐのに有効である。さらに、注入流体で第三の管腔を洗い流して管腔の清浄性の維持を助けることができる。注入流体は、第二の分岐151との流体連通にあってもよく、かつ第二の分岐151を通して流してもよい。
【0024】
分岐導管147の遠位端153は、ルーアー式接続または単純な摩擦嵌合継手構造を含む動作可能かつ周知の任意の方法により、尿道カテーテルの近位端部の構造に接合されてもよい。代替的な構築(図示せず)において、分岐導管と同等の構造が尿道カテーテル103の一部として形成されていてもよい。この提示された代替的な構築に実質的に従って構築されているカテーテルの1つは、Smiths Medicalより品番FC400-16で市販されている。しかし、FC400-16カテーテルは、内部に温度センサが設置されることが望ましい管腔を、そのようなカテーテルの遠位端に配置された注入用アパーチャとオープンな流体連通状態にするために、改変が必要である。
【0025】
第一の分岐145を通る流体の漏出を防ぐため、望ましくは、協調する第一のシール構造157と第二のシール構造159との間に、通常符番155で示す流体抵抗シール機構が設けられる。図に示すように、第一の分岐145は第一のシール構造157を備え、第一のシール構造157は、温度変換器143が分岐導管147の内部に設置されているときに温度変換器143に備えられる第二のシール構造159と係合するよう協調的に形状が決定されている。図の第二のシール構造159は第一のシール構造157の内部で差し込み式接続を形成する。
【0026】
注意すべき点として、第二のシール構造159は、温度変換器143の長さに沿った任意の望ましい位置に配置されていてよい。図に示すように、第二のシール構造159は電気コネクタ163から離れている。しかし、例えばモニタもしくは記録用機器への中間接続を容易にするためにコネクタ163を固定位置に保つのを助けるため、および/または、変換器のワイヤを曲げ損傷から保護するためなどの目的で、シール構造をコネクタ163と連結させることもまた本発明の企図の範囲内である。いずれの場合も、患者に不快感を生じさせる可能性が低い場所にコネクタ163を置くようなアセンブリを形成することが望ましい。
【0027】
図3に、本発明の特定の原理に従って構成された、通常符番171で示す第一のアセンブリを示す。患者の膀胱177からドレーン出口179を介して容器181へと尿および流体を連続的にドレーンするため、3ウェイ式フォーリーカテーテル173が患者175に留置および接続される。カテーテル173を患者175に留置した後、シリンジ182を用いて、公知の様式でバルーン125を膨張させてもよい。(例えばスパイクコネクタ185を用いて)生理食塩水バッグ183に穴を開けてもよく、流体導管189に沿って配置された低流量洗浄弁187を介してフォーリーカテーテル173の注入ライン191と流体連通させてもよい。次に、公知の構造において生理食塩水バッグ183を約300 mmHgまで加圧してもよく(P1で示す)、または、単純に吊り下げて注入流体193に重力を作用させてもよい。低流量洗浄弁187は、バッグ183内の注入流体193に加えられた圧力P1を圧力変換器から隔離するのに有効であることが望ましい。
【0028】
時として、アセンブリ171の組立を簡便にするため、低流量洗浄弁187に、通常符番195で示される圧力変換器が組み込まれる。そのような場合、圧力変換器195は流量制御素子187より下流に配置される。圧力変換器と膀胱との間の流体導管部199のインピーダンスは、好ましい流量制御機器187により許容される流量と比較して十分に低く、流量機器187より下流の圧力は実質的に膀胱177(および患者腹部)の圧力(P2で示す)によって支配される。したがって、流量制御機器187より下流の注入流体において測定される圧力は患者175の膀胱圧に相関する。
【0029】
動作可能な1つの洗浄弁としては、Edwards Lifesciencesより品番PX600Fで市販されている弁がある。そのような洗浄弁は典型的に、本明細書に記載の加圧された注入流体源183からの、流体の約3 ml/hrの流動を可能にし、かつ、活栓、および一体式アセンブリ内の圧力変換器195を含む。圧力変換器195からの電気信号をモニタ201に表示してもよい。したがって、図3に示す機構において、患者の膀胱内の圧力(患者の腹圧に相関する)を連続的にモニタすることができる。
【0030】
図3に示すようなオープンフローシステムにおいては直観に反するが、膀胱壁に連結する構造と注入用アパーチャとが協調して流量調整弁を形成するため、図3に示す機構は患者の腹圧に実質的に相関する圧力を連続的に測定するよう有効に適合できることが判明している。尿ドレーンチューブが流体を自由に排出できる(例えば、ドレーンチューブが、閉じたバルブによって閉塞されていない)かぎり、ドレーン用ポートは患者の膀胱から実質的にすべての尿および流体を除去する。したがって、膀胱は実質的に空の状態に保たれ、腹腔内圧の作用によってカテーテルの遠位端上で潰される。膀胱壁自体によって、または膀胱壁に付随する粘液様流体によって、注入ポートに閉塞がもたらされる。注入流体の連続的な流れは、(膀胱に関連する構造と腹腔内圧との相互作用によって)注入オリフィスの閉塞としてもたらされる圧力を凌駕しなければならず、したがって注入流体は常に、腹腔内圧に密接に相関する圧力に実質的に保たれる。
【0031】
流量調整弁は、以下の理由の組合せから有効であると考えられる:注入流体の流量が非常に少ない;腹腔内圧が極めて低い(約0〜50 mmHg);膀胱壁が弛緩し、膜状であり、かつ適合しやすい;および、腹腔内圧が3次元で膀胱にかかり、膀胱壁を押してカテーテルの遠位部分と係合し、注入用アパーチャを通る流体流動への抵抗に有効である。以上から、例えば、可能性として生じ得る、関係する各構造の位置ずれのため、または突然の流体排出時など、流量調整弁の形成は必ずしも保証されないことが認識される。
【0032】
引き続き図3において、1つまたは複数の変換器203から取得された出力の表示を任意で含めておくことが望ましい場合がある。1つの非限定的な例として、IAPに加えて深部体温もモニタするため、膀胱177の内部または付近の流体の温度を測定するよう配置された温度変換器を含めることが望ましい場合がある。別の非限定的な例として、複数の圧力変換器から取得されたデータを操作して、APPなど、容易には直接測定できない生理学的状態変数を示唆する値を生成してもよい。
【0033】
図3に示すように、任意の温度変換器から出た温度変換器リード線205がモニタ201に接続される。特定の場合において、モニタ201は、圧力および温度を含む複数の測定値および/または計算値を表示するように構成されていてもよい。他の場合において、所望の視覚表示を提供するため、複数のモニタ表示機器が組み込まれていてもよい。例えば心拍数、または時間に関して連続的に測定される特定の変数など、いくつかの生理学的状態変数は、ラインプロットなどのグラフィック形式で表示するのが最良である可能性がある。APPなど他の生理学的状態変数は、不連続な数字形式で表示するほうがよい可能性がある。したがって、1つまたは複数の表示機器を組み合わせて、図のモニタ201と同等の構造を形成してもよい。
【0034】
図3では、図1と異なり注入ポートではなく、分岐導管147がカテーテル173を介してドレーン導管と流体連通していることに注意されたい。これらの図は、本発明の精神および本質的な特徴から逸脱することなく、種々の構成部品の配管に対して種々の変更が行われ得ることを示している。注意すべき点として、図3に示す機構は、カテーテル173のドレーン導管(例えば図2の符番109)内部に配置された長さ部分を有する温度変換器が、注入流体により洗浄されるのではなく、患者の膀胱177から出た排出流に浸されるため、それほど好ましくはない。しかし、図3に示す機構も使用可能であり、かつ、断面サイズが大きい市販のカテーテルの内径内に変換器を配置できるという利点を提供する。
【0035】
IAPは、時間間隔を空けた間欠的な時点で測定してもよく、または連続的に測定してもよい。間欠的なIAP測定は、図4において通常符番209で示すような代替の配管であって、順路中の尿ドレーン閉塞弁213を尿ドレーン導管215に接続することを含む配管において便利に行うことができる。間欠的なIAPデータを収集するため、規定量の注入流体193が尿道カテーテル217を介して患者の膀胱に導入されている間に、ドレーン閉塞弁213をドレーン閉塞構成にしてもよい。膀胱内の流体圧が測定され、続いて次の測定時まで、尿ドレーンが非閉塞状態または流体ドレーン構成に戻される。必然的に、間欠的な手順は、典型的に時間および人員による注意を必要とし、かつ、IAPの有意な変化から測定時までの間に遅延が生じる可能性があることから、それほど望ましくはない。一般的に、モニタ構造201は2つ以上の変換器203からの入力を受け取るように適合している。
【0036】
図4は、2ウェイ式尿道カテーテル217および本発明の範囲内である別の代替的な配管の使用を示していることに注意されたい。任意の温度変換器が含まれている場合は、リード線205によってモニタ201に接続されていてもよい。図1および3について説明した機構と同様、この温度変換器は分岐導管219を介してカテーテル217に導入されてもよい。さらに、バルブ構造と一体化された圧力変換器を含む流量制御弁機構221の組合せが図示されていることにも注意されたい。無論、分岐導管219、一体式機器221、または流体コネクタ223を含む構成部品と水力学的に同等な構造が提供されていてもよく、かつ、本発明の精神および本質的な特徴から逸脱することなく、関係する各構成部品の位置を入れ替えまたは再編成することが可能である。
【0037】
図5に、患者の腹腔灌流圧(APP)を表示するよう動作できる、通常符番229で示す構成部品の機構を示す。APPは患者の平均動脈圧から患者の平均腹腔内圧を減算することによって得られる。このような計算値は、患者が腹部コンパートメント症候群を生じるリスクの実際の状態を示すのに、より有効である。動脈圧が高い第一の患者は、腹腔内圧の上昇に耐えられる可能性がある。動脈圧が低い第二の患者は、そのような腹腔内圧の上昇によって大きなリスクが生じる可能性がある。そのような場合、第一の患者に関するAPPの計算値は、第二の患者と比較して高い(安全な)数値になると考えられる。
【0038】
図5に示す機構229は、複数の変換器203から受け取ったデータに対応する情報を表示するように動作できるモニタ構造221を含む。モニタ221はグラフィックディスプレイ231および数値ディスプレイ233を含む。グラフィックディスプレイ231は集中治療室に現在一般的に存在する表示機器の代表的なものであり、患者の生理学的状態変数、特に心拍数、動脈血圧、CVP、特異的酸素摂取量、および深部体温のうち1つまたは複数を表示してもよい。数値ディスプレイ233は、間欠的に取得され得る生理学的状態変数に対応する値など、不連続な数値の表示に用いてもよい。
【0039】
図5に示すように、数値ディスプレイ233は、2つ以上の変換器からの入力を受け取るように適合する。そのような各変換器は、生理学的状態変数に対応する信号を生成するように適合する。1つの非限定的な例として、図5は、一般に普及している動脈ライン圧力変換器235および腹腔内圧変換器237の両方から入力を受け取る数値ディスプレイ233を示している。動脈ライン圧力変換器から受け取られた第一の信号および腹腔内圧変換器から受け取られた第二の信号は、ディスプレイ233に連結した処理構造によって操作され、第三の生理学的状態変数、すなわちAPPに対応する第三の信号を生成する。
【0040】
使用可能な腹腔内圧変換器237は、図3に示した一体式の機器187、または個別の構成部品など、種々の形態で具現化され得る。数値モニタ233は典型的に、上述の計算を行うのに有効な配線回路および/またはプロセッサを含み、かつ典型的に、所望のAPP値を不連続な数値として表示するように構成される。APP値が、例えば59 mmHgなどの特定の閾値を下回った場合、外科医は、患者に即刻外科手術を行う必要があることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面の簡単な説明
図面は、本発明を実施するうえで現在最良と考えられる様式を示している。
【0042】
【図1】本発明の原理に従って構築されたモニタリング機器のアセンブリ平面図である。
【図2】図1の断面2-2から矢印の方向に見た断面図である。
【図3】本発明を実施するための1つの使用可能な配管を示した図である。
【図4】本発明を実施するための第二の使用可能な配管を示した図である。
【図5】本発明の特定の原理に従って構築されたアセンブリに接続された患者を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の膀胱に挿入するよう適合した遠位端を有する尿道カテーテルと、
該カテーテルの近位端に連結したバルーン膨張構造と該カテーテルの遠位端に連結した膨張式バルーンとの間に流体連通を提供するため該カテーテルに連結した第一の管腔と、
該カテーテルの近位端に連結したドレーン接続構造と該バルーンより遠位に配置された少なくとも1つのドレーン用ポートとの間に流体連通を提供するために該カテーテルに連結した第二の管腔と、
膀胱内の流体の温度に対応する温度を測定するのに有効な位置に、該カテーテルに対して配置できるよう適合した温度変換器と、
膀胱内の流体の圧力に対応する圧力の測定、および対応する第一の出力信号の生成に有効な状態で、膀胱との流体連通状態に配置された第一の圧力変換器とを含み、
深部体温(core body temperature)および腹腔内圧を推測するため該患者の膀胱内に含まれる流体の状態に対応する温度および圧力をモニタするよう適合した装置。
【請求項2】
カテーテルの近位端に連結した注入流体接続構造とバルーンより遠位に配置された少なくとも1つの注入用アパーチャとの間に流体連通を提供するために該カテーテルに連結した第三の管腔をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
温度変換器が、第三の管腔内に配置された長さ部分を含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
膀胱圧の実質的に連続的なモニタリングを可能にするために十分な流量で注入流体を注入用アパーチャを通して排出するために、前記長さ部分の軸に沿った注入流体の流動を可能にするよう前記長さ部分が第三の管腔の断面と調和するように構成されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
注入流体接続構造が分岐導管を含み、該分岐導管の第一の分岐が、注入用アパーチャと注入流体源との間の連通を可能にする流体抵抗接続を形成するよう適合した構造を含み、かつ、温度変換器が第二の分岐に対して設置位置に配置されている場合、該導管の第二の分岐が、該温度変換器に連結した第二のシール構造と協調して流体抵抗シールを形成するよう適合した第一のシール構造を備えている、請求項3記載の装置。
【請求項6】
温度変換器が、第二の管腔内に配置された長さ部分を含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
温度変換器が、第二の管腔内に配置された長さ部分を含む、請求項2記載の装置。
【請求項8】
注入流体接続構造が分岐導管を含み、該分岐導管の第一の分岐が、ドレーン用ポートと注入流体源との間の流体連通を可能にするよう適合した構造を含み、該分岐導管の第二の分岐が、該ドレーン用ポートとドレーン出口との間の流体の流動を可能にするよう適合している、請求項6記載の装置。
【請求項9】
患者体内の血圧に対応する圧力を測定し、対応する第二の出力信号を生成するために配置された第二の圧力変換器と、
第一の出力信号および第二の出力信号を操作用に受け取り、その結果である第三の出力信号を生成するよう適合した処理ユニットと、
第三の出力信号に応答した視覚表示を生じるように動作できる表示機器とをさらに含み、
第一の出力信号が患者の膀胱圧に相関し、
第二の出力信号が患者の動脈圧に相関し、
視覚表示が腹腔灌流圧に相関する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
患者の膀胱に流体連通を提供するよう構成されかつ配置されたカテーテルと、
膀胱内の第二の生理学的状態変数の測定に有効となるように該カテーテルと調和して配置され、かつ第二の変数と相関する第一の出力信号を生成する第一の変換器と、
第三の生理学的状態変数の測定に有効となるように患者に関連した別の場所に配置され、かつ第三の変数と相関する第二の出力信号を生成する第二の変換器と、
第一の生理学的状態変数に対応する視覚表示の出力に有効な、第一の変換器および第二の変換器に連結した表示機器とを含み、
第一の変数の視覚表示を生じさせるように生成される表示信号が、第一の出力信号および第二の出力信号を操作することによって取得される、患者の少なくとも第一の生理学的状態変数をモニタするよう適合した装置。
【請求項11】
第一の出力信号が患者の膀胱圧に相関し、
第二の出力信号が患者の動脈圧に相関し、
第一の変数が腹腔灌流圧に相関する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
膀胱内の第四の生理学的状態変数を測定するのに有効となるようにカテーテルと調和して配置された第三の変換器であって、膀胱内の流体の温度と相関する第三の出力信号を生成する第三の変換器をさらに含む、請求項10記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−523463(P2009−523463A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544396(P2007−544396)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/042406
【国際公開番号】WO2006/060248
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507183918)ウォルフ トーリー メディカル インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】