説明

深部静脈穿刺補助具

【課題】深部静脈カテーテル留置術において、細い試験穿刺はりが進行した経路に沿って本穿刺針を誘導すると共に、イントロデューサーの先端が静脈内に刺入したことを血液の逆流を視認することにより確認する。
【解決手段】a.2本の貫通する孔を設けたホルダーの一方の孔に案内管を装着した穿刺部を挿入固定し、他方の孔にスポイトを挿入固定する。b.イントロデューサーを穿刺部に装着してホルダー先端に連結して固定する。c.試験穿刺針を通じて静脈内に留置したガイドラインを穿刺部に貫通させ、ガイドラインに沿って穿刺部を移動させる。d.圧縮したスポイトの拡張によりイントロデューサーの静脈内刺入が検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、22G以下の試験穿刺針の針管内腔を通じて静脈内に導入したガイドラインを案内軸として、イントロデューサーを静脈内に安全に誘導する深部静脈穿刺補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深部静脈を穿刺する際は、先ず細い試験穿刺針で試験穿刺を行って静脈の方向や深さを確認した後に試験穿刺針を一旦抜去し、改めてイントロデューサーを取り付けた太い穿刺部で本穿刺を行い、イントロデューサーの内腔を通じてカテーテルを静脈内に誘導している。しかし、試験穿刺針で静脈の位置を確認して同じ距離方向に本穿刺を行っても、本穿刺針が静脈内に刺入されないことがある。その理由は、試験穿針は静脈を確認した試験穿刺はりは抜去され、試験穿刺針の通過した軌跡は保存されないために、本穿刺針が試験穿刺針と同一の経路を進行することができないためである。
静脈穿刺術における重大事故は、静脈を穿刺する際に太い本穿刺針で動脈を誤穿刺して生じる動脈出血と肺を誤穿刺して生じる血気胸が大部分であり、誤穿刺は本穿針が盲目的に刺入される為に発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、深部静脈穿刺術を行う際に、試験穿刺針が通過した経路を本穿刺針が進行し得ない点である。
【課題を解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、静脈穿刺術を行う際、細い試験穿刺針が進行した経路を辿って太い本穿刺針を誘導すると共に、本穿刺針の先端が静脈内に刺入したことを血液の逆流を視認して確認すること、を主要な目的とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の深部静脈穿刺補助具によれば、本穿刺針は試験穿刺針が通過した軌跡を辿って進行すると共に、イントロデューサーの静脈内到達は血液の逆流を視認することで確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
試験穿刺針が通過した経路で本穿刺針を安全に静脈内に刺入するという目的と、イントロデューサーが静脈内に刺入したことを確認するという目的を、簡単な構造で実現した。
【実施例1】
【0007】
深部静脈穿刺補助具は、ホルダーA,穿刺部B、案内管C、イントロデューサーDと、から構成される。
図1(a)はホルダーAの斜視図、図2(b)は縦断面斜視図、図2(c)は縦断面図である。ホルダーAは、ホルダー体A2に穿刺部腔A4と検知腔A7を貫通して設けたものである。穿刺部腔A4は穿刺部Bの尾部を挿入して固定するもので、尾端の内径を細く形成して段差A5を形成すると共に、段差A5から検知腔A7と反対側を開放してスリットA6を設ける。検知腔A7の尾端の検知腔尾端孔A8は、スポイト脚S1や注射器の筒先を嵌め合わせることができる。
【0008】
図2(a)〜(g)は穿刺部Bを示す。穿刺部Bは金属針で、図2(b)に示すように底面の全長に案内管溝B4を設ける。また、図2(a)に示すように、背面の前半部に検知溝B7を設ける。案内管溝B4は案内管Cを嵌める溝である。
【0009】
図3(a)〜(d)は穿刺部Bと案内管Cとの関係を示す図である。案内管CはガイドラインLを緩く貫通させられる金属あるいは硬質合成樹脂等の細管で、尾端に穿刺部Bと同程度の径の尾端筒C9を取り付ける。尾端筒C9は案内管Cと一体構造でもよい。図3(a)および図3(b)に示すように、案内管Cは案内管先端C1が穿刺部先端B1より突出した位置で穿刺部Bの案内管溝B4に嵌める。案内管Cは案内管溝B4に接着してもよい。
【0010】
図4(a)はイントロデューサーDの斜視図で、図4(b)は縦断面斜視図である。イントロデューサーDは、イントロデューサー管体D2の尾端にドーム状の連結キャップD3を設けた合成樹脂管で、連結キャップD3はホルダー先端A1に水密性に被せて着脱可能とする。イントロデューサーDは、従来のものと同様に柄D9を反対側に引いて分割線D4で分割できるものとする。イントロデューサー先端D1の内壁は穿刺部表面に密着させることは従来のものと同様である。
【0011】
図5で実施例1の全体の構成を説明する。図5(a)は斜視図,図5(b)は縦断面斜視図を示す。
▲1▼案内管Cを穿刺部Bの案内管溝B4に嵌め、穿刺部尾端B3をホルダーAの穿刺部腔A4に挿入固定する。
▲2▼穿刺部BをイントロデューサーDに挿入し、イントロデューサーDの連結キャップD3をホルダー先端A1に被せて固定する。
▲3▼スポイトSPのスポイト脚SP1を検知腔尾端孔A8に挿入し固定する。
▲4▼以上により、案内管先端C1は穿刺部先端B1の先端より突出して固定される。
▲5▼また、穿刺部先端B1に開口している検知腔B7は、イントロデューサーDの連結キャップD3、ホルダーAの検知腔A7を通じて、スポイトSPと交通する。
【0012】
図6(a)はアジャスターEの斜視図、図6(b)は縦断面図、図5(c)は使用説明図である。アジャスターEは、細いガイドラインLを22G以下の細い案内管先端C1に挿入するための補助具である。アジャスターEは図6(b)に示すように、広い漏斗E2と細い漏斗脚E4からなる漏斗である。漏斗脚E4の内腔は案内管先端C1を挿入可能とする。漏斗脚E4が漏斗E2に接する漏斗脚漏斗境界部E6の内径は、案内管Cの内径と同じにするとよい。アジャスターEの側壁にはスリットE5を設ける。アジャスターEの材質を可撓性のプラスチック等で作成すると、アジャスターEの管腔に通したガイドラインLは、スリットE5を通して外すことができる。図5(c)は使用説明図である。漏斗口E1から挿入したガイドラインLは、漏斗脚漏斗境界部E6を通過して案内管先端C1に円滑に挿入され、ホルダーAのスリットA6から突出する。
【0013】
図7(a)〜(d)は、使用説明図である。
実施例1の使用法を図により説明する。
▲1▼静脈内に刺入した試験穿刺針を通じてガイドラインLを静脈内に導入した後に試験穿刺針を抜去して、ガイドライン先端L1を静脈内に残す。試験穿刺針は外套針を使用するとよい。
▲2▼先ず、図7(a)の如く、案内管先端C1に装着したアジャスターEの漏斗E2からガイドライン尾端L3を挿入し、図7(b)のように案内管Cを貫通させてホルダーAのスリットA6から突出させた後にアジャスターEを取り外す。
▲2▼引き続き、図7(c)の如く、スポイトSPで吸引しながら、ガイドラインLに沿ってホルダーAを進める。イントロデューサー先端D1が静脈V内に刺入されると、スポイトSPに血液が吸引され、イントロデューサー先端D1が静脈V内に刺入したことが確認される。
▲4▼最後に、図7(d)の如く、ホルダーAと共に穿刺部Bを抜去すると、イントロデューサーCの静脈内留置が完了する。
【実施例2】
【0014】
図8(a)〜(d)は実施例2を示す。実施例2では図8(b)に示すように、中心に案内管Cbを挿入可能な細い内腔を有し、刃先は図示するように穿刺部の中心に向かって湾曲させた穿刺部Bbを使用する。穿刺部Bbの背面の前半に検知溝Bb7を設けることは、実施例1と同様である。実施例2では、案内管Cbの尾端には図8(c)に示すように穿刺部Bbと同程度の太さの尾端筒Cb9を設ける。図8(d)は穿刺部Bbに案内管Cbを挿入した断面図である。
【実施例3】
【0015】
実施例3では、穿刺部は図9に示すように背面の全長をスリット状に開放して検知溝Bc7とした穿刺針Bcと、図10に示すような内軸Fcとからなる。
図10は実施例3の穿刺部の説明図で、穿刺針Bcに挿入して案内管を支持するための内軸Fcである。内軸Fcは図10(a)、図10(c)〜(g)に示すように内軸Fcの下縁の全長に案内管溝Fc4を設ける共に、内軸Fcの尾端側背側に突起Fc7を突設した軸である。図10(g)に示すように、突起Fc7は穿刺部Bcのスリット状の検知溝Bc7に嵌り、検知溝Bc7に沿って移動可能である。内軸Fcを穿刺部Bcに挿入すると、検知溝Bc7の尾端側は突起Fc7で閉塞され、先端側は開放されて静脈穿刺の際に血液の通路となる。
【実施例4】
【0016】
図11は実施例4で穿刺針Bdに挿入して案内管を支持するための内軸Fdの説明図である。内軸Fdは図11(a)、図11(c)〜(g)に示すように内軸Fdの中心軸の全長に案内管腔Fd4を設ける共に、内軸Fdの尾端側に突起Fd7を突出して設けた軸である。図11(g)に示すように、突起Fd7は、穿刺針Bdのスリット状の検知溝Bd7に嵌り、検知溝Bd7に沿って移動可能であることは実施例3と同様である。
【0017】
全実施例において、静脈内に留置したガイドラインLに沿って穿刺操作を行う場合、ガイドライLは突出した案内管先端により本穿刺部先端から隔てられ接触しない。従って、穿刺操作中にガイドラインLが本穿刺部刃面に触れて損傷されることはない。
なお、ガイドラインは、先端部に適当な可撓性を保たせた硬質の合成樹脂製、あるいは先端部が軟質で手元の部分が硬質の合成樹脂性、もしくは金属製ガイドワイヤーを使用すると、案内管先端の進行方向の制御を確実にすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
深部静脈穿刺を行う際に22G注射針を使用すれば、針先が誤って動脈に刺入されても自然に止血されるので大出血に至ることはない。また、22G針の先端が肺に刺入されても空気の漏出は小量であり、刺入孔は自然に閉鎖される。一方、従来使用されているイントロデューサーは16G以上の太さであるので、動脈や肺を誤穿刺すると重大な偶発症を発生する危険が大きい。殊に、圧迫止血が不可能な鎖骨下動脈を誤穿刺した場合は、致死的な合併症に発展することもある。
本発明によれば、試験穿刺は細い試験穿刺部で行われ、本穿刺部は試験穿刺部の軌跡を辿って進行する。従って、太いイントロデューサーが誤った経路を進行する可能性はない。一方、静脈圧は動脈圧と違って低圧であり、穿刺部が静脈内に刺入されても静脈血は陰圧をかけなければ逆流しない。本発明では、スポイトなどの陰圧発生器で静脈血をスポイトバルンに逆流させて視認することにより、イントロデューサー先端が静脈内に刺入されたことを積極的に確認することができる。従って本発明では、試験穿刺が成功すればイントロデューサーの先端は確実に目的静脈内に刺入される。
本発明は、静脈の穿刺のみでなく、その他の管腔の穿刺にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(実施例1)(a)ホルダー斜視図。(b)ホルダーの縦断面斜視図。(c)ホルダーの縦断面図。
【図2】(実施例1)(a)穿刺部の平面図。(b)穿刺部の底面図。(c)穿刺部の正面図。(d)穿刺部の背面図。(e)穿刺部の左側面図。(f)穿刺部の右側面図。(g)穿刺部の縦断面図。
【図3】(実施例1)(a)案内管溝に案内管を嵌めた穿刺部の底面図。(b)案内管溝に案内管を嵌めた穿刺部の縦断面図。(c)案内管溝に案内管を嵌めた穿刺部の拡大右側面図。(d)案内管溝に案内管を嵌めた穿刺部の拡大左側面図。
【図4】(実施例1)(a)イントロデューサーの斜視図。(b)イントロデューサーの縦断面斜視図。
【図5】(実施例1)(a)本発明の斜視図。(b)本発明の縦断面図。
【図6】(実施例1」(a)アジャスターの斜視図。(b)アジャスターの縦断面図。(c)アジャスターの使用説明図。
【図7】(実施例1)(a)アジャスターを利用してガイドラインを案内管に挿入する説明図。(b)ガイドラインが誘導子を貫通した説明図。(c)ガイドラインに沿ってイントロデューサーを静脈に刺入した説明図。(d)イントロデューサーを静脈内に留置した完了図。
【図8】(実施例2)(a)穿刺部の見取図。(実施例2)(b)穿刺部の縦断面見取図。(実施例2)(c)案内管の見取り図。(実施例2)(d)案内管を装着した穿刺部の縦断面図。(実施例2)
【図9】(実施例3)(a)穿刺部の平面図。(b)穿刺部の底面図。(c)穿刺部の正面図。(d)穿刺部の背面図。(e)穿刺部の左側面図。(f)穿刺部の右側面図。(g)穿刺部の縦断面図。
【図10】(実施例3)(a)内軸の平面図。(b)内軸の底面図。(c)内軸の正面図。(d)内軸の左側面図。(e)内軸の右側面図。(f)内軸の縦断面図。(g)内軸を装着した穿刺部の断面図。
【図11】(実施例4)(a)内軸の平面図。(b)内軸の底面図。(c)内軸の正面図。(d)内軸の左側面図。(e)内軸の右側面図。(f)内軸の縦断面図。(g)内軸を装着した穿刺部の断面図。
【符号の説明】
【0020】
A ホルダー
A1 ホルダー先端
A2 ホルダー体
A3 ホルダー尾端
A4 穿刺部腔
A5 段差
A6 スリット
A7 検知腔
A8 検知腔尾端孔
B、Bb 穿刺部
B1、Bb1 穿刺部先端
B2、Bb2 穿刺部針管
B3、Bb3 穿刺部尾端
B4、Bb4、Fc4 案内管溝
B7、Bb7、Bc7、Bd7 検知溝
Bc,Bd 穿刺針
Bc1、Bd1 穿刺針先端
Bc2,Bd2 穿刺針針管
Bc3,Bd3 穿刺針尾端
C、Cb 案内管
C1、Cb1 案内管先端
C2、Cb2 案内管体
C3、Cb3 案内管尾端
C9、Cb9 尾端筒
D イントロデューサー
D1 イントロデューサー先端
D2 イントロデューサー管体
D3 連結キャップ
D4 分割線
D9 柄
E アジャスター
E1 漏斗口
E2 漏斗
E4 漏斗脚
E5 スリット
E6 漏斗脚漏斗境界部
Fc、Fd 内軸
Fc1、Fd1 内軸先端
Fc2、Fd2 内軸体
Fc3、Fd3 内軸尾端
Fd4 案内管腔
Fc7、Fd7 突起
L ガイドライン
L1 ガイドライン先端
L3 ガイドライン尾端
S スポイト
S1 スポイト脚
V 静脈

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ホルダー体に穿刺部腔と検知腔を貫通して設け、b.前記穿刺部腔の尾端の内径を細くして設けた段差から検知腔と反対方向に側方を開放してスリットとし、c.底面の全長に案内管溝を設けると共に、背面の前半に検知溝を設けた前記穿刺部の案内管溝に案内管を装着した前記穿刺部を前記ホルダーAの穿刺部腔に挿入固定し、d.前記穿刺部を挿入したイントロデューサーの連結キャップを前記ホルダー体のホルダー先端に被せて固定することを特徴とする深部静脈穿刺補助具。
【請求項2】
穿刺部が、背面の全長を開放してスリットを設けた穿刺針と.下縁の全長に案内管溝を設けると共に上縁の尾側に前記スリットに嵌る広さの突起を突設した内軸と、からなることを特徴とする請求項1記載の深部静脈穿刺補助具。
【請求項3】
穿刺部が、背面の全長を開放してスリットを設けた穿刺針と.軸中心の全長に案内管腔を設けると共に上縁の尾側に前記スリットに嵌る広さの突起を突設した内軸とからなることを特徴とする請求項1記載の深部静脈穿刺補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−212608(P2008−212608A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94413(P2007−94413)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000180494)
【出願人】(000180508)
【出願人】(501229791)
【出願人】(301045403)
【Fターム(参考)】