説明

混合イオン交換樹脂の分離塔

【課題】混床式イオン交換樹脂塔に使用された陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を効率的に分離する分離塔を提供する。
【解決方法】陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂からなる混合イオン交換樹脂を逆洗により相互に成層分離する分離塔であり、塔内に成層分離後の陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層との算出分離界面を介して上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターが分離塔壁を貫通して設けられ、且つ上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターの間に樹脂抜き出しノズルが設置され、上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターは、それぞれ各樹脂コレクターに水平に形成された複数の樹脂抜き出し穴を有することを特徴とする混合イオン交換樹脂の分離塔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合状態で使用し機能の低下した陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を相互に分離し再生するための混合イオン交換樹脂の分離塔及び該分離塔を用いた混合イオン交換樹脂の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界圧ボイラー、原子力発電及び半導体製造には、極めて高純度な純水が要求されている。従来、高純度の純水を製造する装置として、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合状態で使用する混床式純水製造装置が広く採用されている。この装置では、使用によりイオン交換樹脂の能力が低下した場合、これらの樹脂を再生する必要があるが、再生に当たっては、まずこれらの樹脂を分離塔へ移送する。そこで分離塔では混合イオン交換樹脂層の下部より水を上向きにいわゆる逆洗水を流入し、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の比重差を利用して陽イオン交換樹脂層及び陰イオン交換樹脂層に成層分離する逆洗分離工程が行われる。
【0003】
次いで、逆洗に続く沈静工程の後、この成層分離した陽イオン交換樹脂層及び陰イオン交換樹脂層を必要に応じそれぞれを系外に取り出すなどして分離し、個別に再生剤で再生する再生工程を行う。再生・洗浄された両イオン交換樹脂はイオン交換装置に戻され混合工程を経て再び純水製造に供される。上記逆洗分離工程後の沈静工程では、殆どの陽イオン交換樹脂は下層部に、陰イオン交換樹脂は上層部に成層分離されるが、両イオン交換樹脂を完全に分離することは困難で両イオン交換樹脂層の境界面付近には陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が混在する混合樹脂層が必ず生ずる。
【0004】
そのため、従来の方法では各々のイオン交換樹脂層を分離し取り出す際に、この混合樹脂層の一部がそれぞれのイオン交換樹脂層に同伴されるので、再生工程、即ち、陰イオン交換樹脂の再生では付随した陽イオン交換樹脂は陰イオン交換樹脂の再生剤、例えば水酸化ナトリウム水溶液に接触してNa形に、一方陽イオン交換樹脂の再生では随伴した陰イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂の再生剤、例えば硫酸に接触してSO形になるいわゆる逆再生現象が生じることは避けられない。しかして、再生後の両樹脂を用いて高純度の純水を製造するためには陽イオン交換樹脂は全てH形に、陰イオン交換樹脂は全てOH形にしなければならず、分離の際の混合樹脂層の同伴は極めて不都合である。
【0005】
このような混合樹脂層の同伴による不都合を解消するために、成層分離後の両イオン交換樹脂層の境界面付近の上部及び下部に二本の樹脂抜き出しコレクターを設け、陰イオン交換樹脂層は上部樹脂コレクターで、また混合樹脂層は下部樹脂コレクターでそれぞれ系外に取り出すことにより陽イオン交換樹脂層、陰イオン交換樹脂層及び混合樹脂層に分離し、分離した陽・陰両イオン交換樹脂層のみを再生して脱塩処理に供する方法が提案されている(特開昭56−38l36)。この方法によれば、下部の樹脂コレクターにより混合樹脂層の殆どを取り出すことができるが、それでも混合樹脂層と接した陽イオン交換樹脂層の表層面には微量の陰イオン交換樹脂が安息角状に残留するので、この陽イオン交換樹脂を再生使用した場合高純度の純水が安定して得られない間題点があった。下部樹脂コレクターから混合樹脂層を抜き出す際、混合樹脂層付近の陽イオン交換樹脂層の一部をより多量に除去することで陽イオン交換樹脂への陰イオン交換樹脂の付随問題を避けることもできるが、その後に分離・再生処理される樹脂量が増える等経済的に不利であり好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−38l36号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は上記問題を解消するため、混合イオン交換樹脂の成層分離における陰・陽イオン交換樹脂層の状態について鋭意検討を加えた結果、混合イオン交換樹脂の逆洗による成層分離後の混合樹脂層はその内部において、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂が不明瞭ながらも境界面を形成し、陽イオン交換樹脂に富む層と陰イオン交換樹脂に富む層の二層構造となっており、この混合樹脂層を下部コレクターで抜き出す場合、陽イオン交換樹脂に富む層、次いで陰イオン交換樹脂に富む層の順に抜き出されるため、この陰イオン交換樹脂に富む層の陰イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂層の表層面に安息角状に残留することを知見し本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、脱塩処理等に使用して機能の低下した混合イオン交換樹脂を逆洗により成層分離して再生処理に付するための混合イオン交換樹脂の効率的な分離塔及び該分離塔を用いた混合イオン交換樹脂の分離方法を提供するものである。即ち、本発明の第1の要旨は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂からなる混合イオン交換樹脂を逆洗により相互に成層分離する分離塔であり、該塔内に成層分離後の陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層との算出分離界面を介して上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターが分離塔壁を貫通して設けられ、且つ該上部樹脂コレクターと該下部樹脂コレクターの間に樹脂抜き出しノズルが設置され、該上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターは、それぞれ各樹脂コレクターに水平に形成された複数の樹脂抜き出し穴を有することを特徴とする混合イオン交換樹脂の分離塔に存する。
【0009】
本発明の第2の要旨は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂からなる混合イオン交換樹脂を逆洗により相互に成層分離する分離塔であり、該塔内に成層分離後の陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層との算出分離界面付近に、該算出分離界面を介して上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターが内設され、且つ該上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターの間に樹脂抜き出しノズルが設置されている混合イオン交換樹脂の分離塔を用いて混合イオン交換樹脂を分離する方法において、該塔に移送された分離すべき陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂に該塔底部に設けた下部集水管より逆洗水を導入して混合イオン交換樹脂を流動展開させた後、逆洗水の導入を停止して静置させ、陰イオン交換樹脂層、混合イオン交換樹脂層および陽イオン交換樹脂層に成層分離する第1工程、該塔の頂部に設けた上部集水管より移送水または加圧空気を導入して上部樹脂コレクターより該陰イオン交換樹脂層を抜き出す第2工程、上部樹脂コレクターを閉じ、下部樹脂コレクターより移送水を導入して該混合樹脂層を流動させながら上部集水管から移送水または加圧空気を導入して、上部下部両樹脂コレクターの間に設けた樹脂抜き出しノズルより該混合樹脂層の上層部分を抜き出す第3工程、下部樹脂コレクターからの移送水の導入を停止し、更に樹脂抜き出しノズルを閉じて上部集水管から移送水または加圧空気を導入しながら下部樹脂コレクターより該混合樹脂の下層部分を取り出す第4工程を順次行うことを特徴とする混合イオン交換樹脂の分離方法に存する。
【0010】
本発明の好適な態様として、該分離塔の樹脂抜き出しノズルは、ノズル内面の最下端位置が成層分離した陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層の算出分離界面あるいはやや下方に位置するように設置されていること、該上部樹脂コレクターは、成層分離した陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層の算出分離界面から約100〜500mm上位の陰イオン交換樹脂層内に設置され、また該下部樹脂コレクターは、成層分離した陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層の算出分離界面から約50〜300mm下位の陽イオン交換樹脂層内に設置されること、該上部樹脂コレクター及び該下部樹脂コレクターは、分離塔壁を貫通して設けられ、複数の樹脂抜き出し穴を有すること、及び該混合イオン交換樹脂が脱塩処理に使用したものであることよりなる上記混合イオン交換樹脂の分離塔を示すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分離塔を採用すれば、混合イオン交換樹脂から陰・陽イオン交換樹脂を相互分離するに当たり、陽イオン交換樹脂の表層面に陰イオン交換樹脂が残留することがないので、純粋な陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とに分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔の実施態様を説明するための縦断面概略図である。
【図2】本発明の樹脂抜き出しノズルの実施形態の一例を示す縦断面概略図である。
【図3】本発明の樹脂抜き出しノズルの実施形態の一例を示す縦断面概略図である。
【図4】本発明の上部、下部樹脂コレクターの実施形態の一例を示す縦断面概略図(図4A)、及び平面概略図(図4B)である。
【図5】本発明の上部、下部樹脂コレクターの実施形態の一例を示す縦断面概略図(図5A)、及び平面概略図(図5B)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔は、超臨界ボイラーや原子力発電の復水脱塩処理、或いは超純水の製造などに採用されている混床式純水製造装置において使用され、機能低下した混合イオン交換樹脂を再生する際の混合樹脂の相互分離に利用される。本発明の分離塔に適用される混合イオン交換樹脂の陽イオン交換樹脂は、具体的には強酸性陽イオン交換樹脂であり、例えばダイヤイオンPK228、PK216、SK1B、SK110、SK112(商品名:三菱化学(株)製)等の市販品が挙げられ、また陰イオン交換樹脂は、強塩基性陰イオン交換樹脂であり、ダイヤイオンPA312、PA316、SA10A、SA11A、SA12A(商品名:三菱化学(株)製)等の市販品が挙げられる。[尚、ダイヤイオンは三菱化学(株)の登録商標である。]
【0014】
次に本発明の混合イオン交換樹脂の分離塔及び分離塔を用いて混合イオン交換樹脂を分離する方法を図1に従って説明する。図1は、本発明の分離塔で混合イオン交換樹脂を逆洗により成層分離した後の状態を模式的に示す縦断面略図の一例である。図中、1は分離塔,2は混合イオン交換樹脂の導入管,3は陰イオン交換樹脂層,4は陽イオン交換樹脂層,5は混合樹脂層,6は陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層との分離境界面,7は上部樹脂コレクター,8は下部樹脂コレクター,9は混合樹脂抜き出しノズル,10は陽イオン交換樹脂抜き出し管,11は上部集水管,12は下部集水管である。
【0015】
本発明の分離塔において、上部樹脂コレクター7は陰イオン交換樹脂の抜き出し管であり、その設置位置は成層分離後の陰イオン交換樹脂層3の内部でかつ陰イオン交換樹脂の有効利用の面からはできるだけ該樹脂層の下層部が望ましい。しかし、陽イオン交換樹脂の混入を防止するためには、分離塔に導入される陰・陽両イオン交換樹脂量から算出される計算上の陽イオン交換樹脂層および陰イオン交換樹脂層の分離界面から上方約100〜500mmの位置に設けるのが好ましい。
【0016】
また、下部樹脂コレクター8は、混合樹脂層の一部抜き出し管であると同時に混合樹脂層の上層部分の抜き出しの際の移送水の供給管でもある。それ故、混合樹脂層の抜き出しでは、その設置位置は陽イオン交換樹脂層4の内部でかつ陽イオン交換樹脂の層の上部にできるだけ近い位置が望ましいが、混合樹脂層を流動化し、混合樹脂抜き出しノズル9から効率良く抜き出すための移送水を導入するので、算出した分離界面から下方約50〜300mmの位置に設けるのが好ましい。各樹脂コレクターの形状は特に制限されないが、複数の樹脂抜き出し穴を有するものが好ましく、例えば一本の抜き出し管に適宜の間隔で複数の樹脂抜き出し穴をあけたもの、あるいは一本の抜き出し集合管に複数本の枝管を設け各枝管には適宣の間隔で複数の樹脂抜き出し穴を設けたもの等があげられる。これらの樹脂コレクターは塔壁から貫通して取り付ける。図4A、図4B及び図5A、図5Bに、上部、下部樹脂コレクターの概略図を示す。
【0017】
さらに、本発明の分離塔に於いては上記の上部及び下部各樹脂コレクターの間に混合樹脂を取り出す為の樹脂抜き出しノズル9を設けることが必須である。樹脂抜き出しノズル9の設置位置は、算出分離境界面付近で、好ましくは該分離境界面或いは該分離界面よりやや下方の位置に設置すると良い。図2及び図3に樹脂抜き出しノズル9の取り付け例の断面略図を示すが、図2のように塔壁に開口設置しても良く、図3のようにコレクターとして塔内に抜き出し管状に設けても良い。その場合ノズルの内面の最下端及びコレクターの穴の最下端が両樹脂層の算出分離界面に相当する位置になるようにするのが良い。
【0018】
次に、本発明の分離塔を用いて混合イオン交換樹脂を分離する方法を図1に従って説明する。先ず、分離塔1には混床式純水製造装置で使用された混合イオン交換樹脂及び別途中間樹脂貯槽に貯槽されていた混合樹脂が移送水と共に導入管2を通じて導入される。次に下部集水管12より逆洗水を流入させ上部集水管11より排出しながら混合イオン交換樹脂を流動展開させる。しばらくの間展開させた後、逆洗水の流入を停止し静置させる第1工程を行う。流動していたイオン交換樹脂は比重差により沈降しながら上部に陰イオン交換樹脂層3、下部に陽イオン交換樹脂層4、両イオン交換樹脂層の分離境界面6付近には両イオン交換樹脂の混合樹脂層5が形成される。図1は、この時点に於ける状態を示すものである。
【0019】
次に、上部集水管11より移送水または加圧空気を導入して上部樹脂コレクター7より陰イオン交換樹脂層3を抜き出す第2工程を行い、該陰イオン交換樹脂層3は陰イオン交換樹脂再生塔へ移送し再生される。
次いで、上部樹脂コレクター7を閉じ、下部樹脂コレクター8より移送水を導入して混合樹脂層5を流動させながら上部集水管11からも移送水または加圧空気を導入して、上部下部両樹脂コレクターの間に設けた混合樹脂抜き出しノズル9より混合樹脂層5の上層部分を抜き出す第3工程を行う。本発明では、下部樹脂コレクター8から移送水を供給することによって、混合樹脂層の上層部分が混合樹脂抜き出しノズル9からより効率的に除去することができる。次いで、下部樹脂コレクター8からの移送水の流入を停止し、更に混合樹脂抜き出しノズル9を閉じて上部集水管11から移送水または加圧空気を導入しながら下部樹脂コレクター8より混合樹脂層5の下層部分を取り出す第4工程を行う。
【0020】
本発明では、この様に操作することにより、陰イオン交換樹脂に富んだ部分である混合樹脂層5の上層部分が、ノズル9により取り除かれた後で、下部樹脂コレクター8により混合樹脂層の下層部分を取り出すので、陽イオン交換樹脂に富む下層部分と接する陽イオン交換樹脂層への陰イオン交換樹脂の残留が避けられるのである。第3工程で取り出された混合樹脂層5の上層部分である陰イオン交換樹脂に富んだ部分と、第4工程で取り出された混合樹脂層5の下層部分の陽イオン交換樹脂に富んだ部分は、中間樹脂貯槽に移送され貯槽される。混合樹脂層が取り出された分離塔内には、純粋な陽イオン交換樹脂層が残留する。この陽イオン交換樹脂層は、必要に応じ陽イオン交換樹脂抜き出し管10により取り出し、陽イオン交換樹脂再生塔に移送し再生してもよいし、そのまま分離塔内で再生処理することもできる。
【0021】
上記の方法により混合イオン交換樹脂を分離した場合、通常、陰イオン交換樹脂再生塔には純粋な陰イオン交換樹脂が、又この分離塔1には純粋な陽イオン交換樹脂が分離貯槽される。この分離された各イオン交換樹脂は酸またはアルカリの再生剤を用いて各々再生され、再生後の両樹脂を混合状態にした後、純水製造装置に供される。一方、混合樹脂抜き出しノズル9及び下部樹脂コレクター8により分離して中間樹脂貯槽に移送し貯槽された混合樹脂は、純水製造装置における次回の混合イオン交換樹脂の分離の際まで待機し、その分離の際に分離塔に移送供給して一緒に分離操作に付する。このような操作により混合イオン交換樹脂は、純粋な陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂に分離でき、しかも樹脂の損失量も低減できる。
【0022】
以上のように、本発明の分離塔を用いれば、純水の製造に使用されて機能の低下した混合イオン交換樹脂を分離し再生するに際し、陰イオン交換樹脂はもちろん、陽イオン交換樹脂層も表層部に陰イオン交換樹脂を残留させることなく純粋な状態で分離される。従って、この様にして得た陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂はそれぞれ純度が高く、各々の樹脂は再生時の再生剤によるNa形の陽イオン交換樹脂及びSO形の陰イオン交換樹脂の発生を随伴することもないので、再生後の両樹脂を用いて高純度の純水を安定して製造することが出来る。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
[実施例]
図1に示す内径2100mm、直胴部高さ5800mmの分離塔に、下部の樹脂支持板より上方1480mmの位置に下部樹脂コレクター、その上方500mmに上部樹脂コレクターを水平に内設し、さらに下部樹脂コレクターより上方150mmの位置の側壁に樹脂抜き出しノズルを開口した。各樹脂コレクター及びノズルの内径は100mmであり、設置位置は管の中心からの距離である。また、上部、下部樹脂コレクターは、一本の抜き出し集合管に5本の枝管を設け、各枝管には内径7mmの複数の樹脂抜き出し孔を等間隔にあけたものを用いた。
【0025】
この分離塔に復水脱塩処理のアンモニア形運転により機能の低下した強酸性陽イオン交換樹脂ダイヤイオン(登録商標)PK228,5350リツトル(H形での体積)と強塩基性陰イオン交換樹脂ダイヤイオンPA312,3150リットル(OH形での体積)との混合樹脂を移送した後、続いて中間樹脂貯槽に貯槽していた混合樹脂[ダイヤイオン(登録商標)PK228,550リットル(H形での体積)、ダイヤイオンPA312,1200リットル(OH形での体積)]を移送した。次いでこの分離塔の下部集水管より逆洗水をLV8m/hで流入しイオン交換樹脂を逆洗分離後沈静させ、陽イオン交換樹脂層、混合樹脂層、陰イオン交換樹脂層に成層分離した。
【0026】
次に、分離塔の上部集水管よりLV9m/hで移送水を流入して、上部樹脂コレクターより陰イオン交換樹脂を抜き出し陰イオン交換樹脂再生塔に移送した。次いで、上部樹脂コレクターを閉じ、上部集水管より移送水(LV9m/h)を流入すると共に下部樹脂コレクターからもLV2m/hで移送水を流入して混合樹脂層の上層部を樹脂抜き出しノズルより抜き出した。その後ノズルを閉じ、且つ下部樹脂コレクターからの移送水の流入を停止し、上部集水管より移送水を流入しながら下部樹脂コレクターから混合樹脂層の下層部を抜き出し、ノズル及び下部樹脂コレクターから抜き出した混合樹脂層は中間樹脂貯槽に移送し貯槽した。
【0027】
上記の操作により分離塔に残留した陽イオン交換樹脂を十分に混合した後、この陽イオン交換樹脂を約8リットル採取し、これを内径100mm、高さ2000mmのアクリル製カラムに充填した。カラムの底から逆洗水をLV10m/hで30分間流入して逆洗し、沈静後の陽イオン交換樹脂層の表層に積層した陰イオン交換樹脂を採取してその体積を測定した。次にカラムに残った陽イオン交換樹脂の層高からその体積を算出し、陽イオン交換樹脂に対する陰イオン交換樹脂の混入率を求めた。結果を表1に示す。
【0028】
[比較例]
実施例の分離塔においてノズルを設け無かった以外は同じ仕様の分離塔を用いて従来の方法による混合イオン交換樹脂の分離を行った。イオン交換樹脂の仕様条件及び逆洗による混合イオン交換樹脂の成層分離条件は、実施例と同一条件とした。陰イオン交換樹脂の抜き出しは実施例と同様の操作により上部樹脂コレクターにより行った。次いで、上部集水管より移送水をLV9m/hで流入しながら下部樹脂コレクターより混合樹脂層を抜き出した。上記の操作後分離塔に残留する陽イオン交換樹脂を十分に混合した後、この陽イオン交換樹脂を約8リットル採取し、実施例と同様な操作手順により陽イオン交換樹脂に対する陰イオン交換樹脂の混入率求めた。結果を表1に示す。
【0029】
[表1]
陰イオン交換樹脂体積 陽イオン交換樹脂体積 混入率
実施例 5ミリリットル 7760ミリリットル 0.06%
比較例 68ミリリットル 7690ミリリットル 0.88%
【符号の説明】
【0030】
1…分離塔、2…混合イオン交換樹脂導入管、3…陰イオン交換樹脂層、4…陽イオン交換樹脂層、5…混合樹脂層、6…分離境界面、7…上部樹脂コレクター、8…下部樹脂コレクター、9…混合樹脂抜き出しノズル、10…陽イオン交換樹脂抜き出し管、11…上部集水管、12…下部集水管、13…樹脂支持板、14…樹脂抜き出し孔、15…枝管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂からなる混合イオン交換樹脂を逆洗により相互に成層分離する分離塔であり、該塔内に成層分離後の陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層との算出分離界面を介して上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターが分離塔壁を貫通して設けられ、且つ該上部樹脂コレクターと該下部樹脂コレクターの間に樹脂抜き出しノズルが設置され、該上部樹脂コレクターと下部樹脂コレクターは、それぞれ各樹脂コレクターに水平に形成された複数の樹脂抜き出し穴を有することを特徴とする混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項2】
該分離塔の樹脂抜き出しノズルは、ノズル内面の最下端位置が成層分離した陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層の算出分離界面或いは下方に位置するように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項3】
該分離塔の上部樹脂コレクターは、成層分離した陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層の算出分離界面から100mm〜500mm上位の陰イオン交換樹脂層内に設置されることを特徴とする請求項1または2に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項4】
該分離塔の下部樹脂コレクターは、成層分離した陰イオン交換樹脂層と陽イオン交換樹脂層の算出分離界面から50mm〜300mm下位の陽イオン交換樹脂層内に設置されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。
【請求項5】
該分離塔の混合イオン交換樹脂が脱塩処理に使用したものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の混合イオン交換樹脂の分離塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179606(P2012−179606A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141458(P2012−141458)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2009−113154(P2009−113154)の分割
【原出願日】平成12年6月8日(2000.6.8)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】