説明

混合イオン/非イオンで安定化された水希釈性ポリエステル樹脂組成物

本発明は、通常の一段階ランダム縮合重合において調製された、混合イオンおよび非イオンで安定化された、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを含む水可溶性または分散性ポリエステル組成物に関する。本発明はまた、混合イオンおよび非イオンで安定化されたポリエステル樹脂を含有する、自動車およびトラックの外装を仕上げるために有用な水性コーティング組成物に関する。前記コーティングは、すぐれた耐チップ性および外観を有する自動車およびトラックの外装のメタリック調ラテックスベースの仕上を形成するために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水希釈性(water reducible)ポリエステル組成物、特に、ランダム縮合重合によって調製された、混合イオン及び非イオンで安定化された水可溶性または分散性ポリエステル樹脂組成物に関する。本発明は、水性コーティング(特に、自動車、トラック、車、航空機、金属、プラスチック、革、木、および木製品のコーティング用)、接着剤、インクなどを調製するために有用である。
【背景技術】
【0002】
水性または水系コーティング組成物は、これらの組成物が概して厳しい環境規制を満たすので、自動車およびトラックをコートするために広く用いられている。このようなコーティングを開示する先行特許の典型は、共にBackhouseに対して発行された米国特許第4,403,003号明細書および米国特許第4,539,363号明細書である。典型的に、これらのコーティングは、主なフィルム形成成分としてのラテックス、架橋剤、添加剤、および顔料を含有する。他の非ラテックス樹脂もまた、コーティングの接着力および耐チップ性を改良するためにしばしば添加される。ポリエステル樹脂は、接着力およびチップ性質のために使用される時に特に役立つが、いろいろな欠点を有する場合がある。
【0003】
通常のアミン塩で安定化されたポリエステルは、水性溶液中での十分な安定性のために十分な酸価を必要とする。残念なことに、これは、高剪断粘度性質の増大をもたらし、それは、コーティングの適用性質に好ましくない影響を与える。許容範囲の適用を達成するために、有機溶剤による追加的な希釈が必要になり、それによって吹き付けの固形分を低下させ、組成物のVOC(揮発性有機化合物)含有量を増加させる。さらに、良好な適用性質を有する低酸価ポリエステル分散体が入手可能であるが、以下に記載するように、これらの材料はしばしば、コーティングの「メタリック調(metallic glamour)」を減じる。
【0004】
光反射金属顔料を含有するコーティング組成物を使用することはペイント工業において公知である。これらは、「メタリック調」仕上と称され、それによってコーティングの見掛けの色は異なった視角において変化し、従って魅力的かつ心地良い色彩効果を有する(これは、「二色性」または「フロップ」効果とも称される)。この効果は主に、ペイントフィルム中のアルミニウムまたはマイカフレークの配向に帰せられる。コーティング組成物に添加されるとき、通常の重合技術によって調製された市販の低酸価ポリエステル樹脂は、適切なフレーク配向のために必要とされるレオロジー性質を提供せず、従って、全体的な「二色性」効果を減じる。
【0005】
非イオン性ポリアルキレングリコールセグメントだけで安定化されたポリエステルもまた、試されている。しかしながら、同ポリエステルを含有するこのような水性コーティング組成物から形成された仕上げに非イオン性成分が存在すると、水の斑点発生および不十分な耐湿性などの欠点を生じさせる傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水性コーティングのこのような欠点を改良するために、VOCの低減、耐湿性、他のコーティング層への接着力、ならびに耐チップ性などの厳しい性能要求条件を同様に満たしつつ、より良い色のバランスおよび適用性質を有するコーティングを提供するポリエステル樹脂の開発に向けて継続的な取り組みがなされている。
【0007】
本発明の新規なポリエステルおよびコーティング組成物は、前述の望ましい特性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水希釈性ポリエステル樹脂組成物、特に通常の重合方法において調製された、混合イオン及び非イオンで安定化された水可溶性または分散性ポリエステル樹脂組成物に関するものであり、前記ポリエステル組成物は、1600より少ない数平均分子量を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル約1〜25重量%と、1つ以上のポリカルボン酸、またはそれらの無水物約40〜65重量%と、1つ以上の多価アルコール約35〜60重量%との反応生成物である。前記ポリエステル樹脂は、約2〜30の酸価、約1,000〜10,000の数平均分子量を有し、一段階重合方法において調製されてもよい。前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル成分を式:
H(OX)n−OR
によって表すことができ、式中、Xが、エチレニル、1,2−プロピレニル、1,3−プロピレニル、またはそれらのいずれかの混合物からなる群から選択され、nが7〜25の整数であり、Rが、1〜4個の炭素原子のアルキル基である。
【0009】
本発明はまた、少なくとも40%の水を含む水性キャリアとフィルム形成バインダーとを含有する水性コーティング組成物に関するものであり、前記バインダーが、混合イオン及び非イオンで安定化された前述の特徴の少なくとも1つの水可溶性または分散性ポリエステル樹脂を含有する。さらに、本発明は、本発明に基づく水性コーティング組成物を含有する乾燥および硬化された層でコートされた物品を権利請求する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において使用されるとき、以下の用語は、文脈が明らかに他の方法で指示しない限り、以下の定義を有する。「水希釈性」は、材料が中和後に水に可溶性または水に分散性であることを意味する。「GPC重量平均(Mw)またはGPC数平均(Mn)分子量」は、標準としてポリスチレンおよびキャリア溶剤としてテトラヒドロフランを利用するゲル透過クロマトグラフィーを用いて得られた樹脂のMwおよびMn分子量を意味する。「水混和性溶剤」は、水に完全にまたはほとんど可溶性である溶剤である。「低酸価」は、代表的な分析技術によって定量されるとき、約2〜30(mg KOH/g樹脂固形分)の範囲の酸価として定義される。「ラテックス」または「ラテックス樹脂」は、通常の重合技術によって、例えば、乳化重合によって調製されてもよい水不溶性樹脂の分散体を指す。「架橋可能な」および「架橋」は、存在するポリマー鎖の間の新しい化学結合の形成を指し、「硬化」は、支持体に適用後の架橋樹脂を指す。語句「通常の重合方法」は、主にランダム樹脂またはポリマーを生じる、一切の重合方法または反応を意味する。
【0011】
コーティングのために特に有用な、混合イオン/非イオンで安定化された低酸価水分散性ポリエステル樹脂組成物は、特に、自動車およびトラックの外装、ならびにそれらの部品の仕上のために有用な水性コーティング組成物が開示される。本発明のポリエステル樹脂は、良好な水の斑点発生、耐湿性、適用性質、および色彩特性を与える。
【0012】
本発明の他の実施態様は、水性キャリアと、混合イオン/非イオンで安定化された低酸価ポリエステル樹脂を含有するフィルム形成バインダーとを含む水性コーティング組成物に関する。
【0013】
本発明に基づくポリエステル樹脂を通常の重合方法によって良好に調製することができる。通常のアニオン安定化水分散性ポリエステルは一般に、所望の分子量の性質を達成するために複雑な二段階重合技術によって調製されなければならないので、1つの実施態様において、現在の技術よりも利点を提供する一段階重合方法が使用される。前記実施態様において本発明は、このような水分散性ポリエステル樹脂を調製するために著しくより効率的である。
【0014】
ジオール、トリオールおよび本技術分野に公知の、より高級多価アルコールを通常のポリカルボン酸またはそれらの無水物と共に様々な比率で用いて通常の縮合重合技術によってポリエステル樹脂を調製した。重合プロセスの間のいずれかの時点で、例えば初め、終わり、または中間で、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルもまた前述のモノマーと共に添加される。しかしながら、ポリエステル樹脂を製造する好ましい方法は、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを重合プロセスの初めに他のモノマーと共に同時に添加することを必要とし、従って一段階の通常の重合方法を可能にする。重合は、所望の酸価および分子量が達せられるまで続けられる。これは、ポリエステル樹脂が最初の工程で調製され、その後に、第2の反応工程を無水トリメリト酸などの連鎖延長モノマーを用いて実施して所望の分子量の性質を達成する、一般的な二段階の実施よりも簡単な方法である。
【0015】
適したポリカルボン酸の例には、芳香族、脂肪族、および脂環式カルボン酸、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸;テトラヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸(sebasic acid)、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、フマル酸、イタコン酸などがあるがそれらに限定されない。上記の酸の無水物もまた、存在するならば、使用可能であり、用語「ポリカルボン酸」によって包含される。
【0016】
ジオール、トリオール、およびより高級多価アルコールが一般に公知である。例には、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリン、およびペンタエリトリトール、および二価アルコールまたはジオール、例えばネオペンチルグリコール、ジメチロールヒダントイン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、Esterdiol 204(Union Carbideの商標)、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメチロールプロピオン酸などがある。
【0017】
本発明に有用なポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、一般式:
H(OX)n−OR
のポリアルキレングリコールアルキルエーテルであり、式中、Xが、エチレニル、1,2−プロピレニル、1,3−プロピレニル、またはいずれかのそれらの混合物からなる群から選択され、nが7〜25の整数であり、Rが、1〜4個の炭素原子のアルキル基である。具体的なポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル構造には、以下:










【0018】
【化1】

【0019】
などがあるがそれらに限定されない。
【0020】
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、1600より小さい数平均分子量を有する。このような材料は、供給元のなかでもとりわけ、Aldrich Chemical,Milwaukee,Wisconsin、Dow Chemical Corp.,Midland,Michigan、BASF Corp.,Mount Olive,New Jerseyから市販されている。あるいは、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを当業者に公知の通常の技術を用いて調製することができる。
【0021】
1つの実施態様において、ポリエステル樹脂は、約300〜800の数平均分子量を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル成分、約1〜25重量%、酸官能性モノマー、または酸官能性モノマーの混合物、約40〜65重量%、およびヒドロキシ官能性モノマー、またはヒドロキシ官能性モノマーの混合物、約35〜60重量%を含有する。得られたポリエステル樹脂は、約1,000〜10,000の数平均分子量、約2〜30、好ましくは約3〜20(mg KOH/g樹脂固形分)の範囲の酸価、および約50〜200、好ましくは約65〜130のヒドロキシル価(mg KOH/g樹脂固形分)を特徴とし、それは、アミンまたは水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムなどの無機塩基で中和した後、水中に分散性である。
【0022】
特に有用な低酸価水分散性ポリエステル樹脂組成物は、1:1重量比のn−ブタノールとジプロピレングリコールメチルエーテル溶剤中の約80%の樹脂固形分まで低減された、29.9/10.5/8.7/10.0/10.0/30.9重量部のネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパン/メトキシポリエチレングリコール(Dow Chemical Corp.製のCarbowax(登録商標)メトキシPEG550)/イソフタル酸/無水フタル酸/アジピン酸のモノマー含有量を有する。
【0023】
上述のポリエステル樹脂は、当業者に公知のペイント調合技術によって他の適した成分とブレンドすることによって水性コーティングを製造するために有用である。改良された水性または水系コーティング系がこれらのポリエステルを他のバインダー成分、好ましくはラテックス樹脂および架橋樹脂と併用することによって得られることがわかった。
【0024】
ポリエステル樹脂を用いて水性コーティング組成物を形成するとき、例えば、酸官能基を完全または部分的に中和するために使用できる一般に入手可能なアミンには、AMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)、ジメチル−AMP、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパノール、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミンなどがある。好ましいアミンはAMPである。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂を含有する水性コーティング組成物は好ましくは、ソリッドカラー顔料またはメタリックまたはパールフレーク顔料またはそれらの混合物を含有する着色ベースコートであり、その上に様々なクリアコート、例えば水または有機溶剤系または粉末クリアコートを適用することができる。顔料の存在に応じてコーティング組成物はまた、プライマー、プライマーサーフェーサー、モノコート、および/またはクリアコートとして使用可能である。コーティング組成物を通常の吹き付け装置で適用することができ、周囲温度またはわずかに高温で乾燥させることができる。得られた仕上は、自動車の仕上のために望ましい性質である、他のコーティング層に対するすぐれた接着力および耐チップ性を有する。得られた仕上はまた、メタリック調などの外観および吹き付け固形分(低溶剤)に関して通常に使用される水性自動車仕上よりも著しい改善をもたらす。
【0026】
本発明の水性コーティングは、1つ以上の通常のフィルム形成バインダーを含有してもよい。バインダーが自己架橋または自己乾燥性でない場合、それらはまた、場合により架橋剤を含有してもよい。場合により存在していてもよいバインダー成分または架橋成分のどちらも、どんな種類の制限も受けていない。フィルム形成バインダーとして、例えば、通常のラテックス、例えばアクリル系ポリマーまたは通常の硬化性アクリル系誘導体、アクリロウレタン、ポリエステル、ポリエステルウレタン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂と相溶性であるポリエーテルおよびポリエーテルウレタンのラテックスが使用されてもよい。場合により存在してもよい架橋樹脂の選択は、バインダーの機能性、硬化条件、および所望の性質に依存している。所望の性質を達成するための架橋剤の選択は、当業者に公知である。付加された架橋剤を含有するコーティング系は、単一成分または多成分のどちらであってもよい。
【0027】
1つの実施態様において、本発明のポリエステル樹脂が用いられる水性コーティングは、アクリルミクロゲル分散体として他にも知られている、アクリル系樹脂のラテックスを含有する(1983年9月6日に発行されたBackhouseの米国特許第4,403,003号明細書、および1985年9月3日に発行されたBackhouseの米国特許第4,539,363号明細書(共に本願明細書に参照によって組み入れるものとする)に記載されている)。当業者に公知であるように、アクリルラティス(acrylic lattices)は、Avecia、Rohm&Haasなどから市販されており、例えばNeocryl(登録商標)ラテックス(Neoresins Division of Avecia,Wilmington,MA,Wilmington,DE)である。これらのラティスは、典型的に、平均粒度径10nm〜1ミクロン、好ましくは20〜400nmを有する分散されたラテックス樹脂として、水中で安定な分散体である。コーティング組成物は、バインダー約10〜70%、より典型的に15〜40重量%と、水性キャリア約30〜90%、より典型的に60〜85重量%とを含有する。キャリアは、少なくとも50%の水であり、1つの実施態様において、約75〜95%の水である。
【0028】
約5〜60分間約60〜180℃の高焼き付け温度で架橋する、硬化性コーティング組成物を形成するために、アルキル基がアルキル化基上1〜4個の炭素原子を含有する、水可溶性または水分散性アルキル化メラミンホルムアルデヒド架橋樹脂をバインダーの重量に基づいて約10〜40%、好ましくは15〜30重量%で使用する。モノマーまたはポリマーのアルキル化メラミンホルムアルデヒド架橋樹脂を使用してもよい。特に有用なメラミンホルムアルデヒド架橋樹脂は、Cytec Industriesから入手できるモノマーメチル化メラミンであるCYMEL(登録商標)303である。
【0029】
十分な焼き付け硬化を可能にするために、アルキル化メラミンホルムアルデヒド架橋樹脂を含有するコーティング組成物は好ましくは、バインダーの重量に基づいて、強酸触媒、またはそのアミン塩を約0.1〜2.0%で含有する。有機スルホン酸、またはそのアミン塩が好ましい触媒である。特に有用な触媒は、King IndustriesからNACURE(登録商標)5225として入手可能なアミノ−メチルプロパノールブロックトドデシルベンジルスルホン酸である。リン酸、その塩もまた、有効な触媒である。
【0030】
本発明の水性コーティングは、色彩付与および/または効果付与顔料および、場合により、充填剤を含有してもよい。色彩付与無機または有機顔料および充填剤の例は、二酸化チタン、超微粉砕二酸化チタン、酸化鉄顔料、カーボンブラック、−アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ピロロピロール顔料、ペリレン顔料である。プライマーのために特に有用な充填剤顔料の例は、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、超微粉砕マイカ、タルカム、カオリン、チョーク、層状ケイ酸塩などである。
【0031】
効果付与顔料の例は、金属顔料、例えばアルミニウム、銅または他の金属のフレーク、干渉顔料、例えば、金属酸化物のコートされた金属顔料、例えば二酸化チタンのコートされたアルミニウム、コートされたマイカまたはパールフレーク、例えば、二酸化チタンのコートされたマイカ、黒鉛効果顔料、プレート状酸化鉄、プレート状銅フタロシアニン顔料である。
【0032】
効果顔料を一般に、商用水性または非水性ペーストの形で使用し、有機溶剤および添加剤、好ましくは水希釈可能な有機溶剤および添加剤を場合によりそれに添加し、次いで全部を剪断によって水性バインダーと混合する。最初に、粉末効果顔料を好ましくは水希釈可能な有機溶剤および添加剤と一緒に処理してペーストを形成してもよい。
【0033】
色彩付与顔料および/または充填剤を例えば、水性バインダーの一部の中でミル粉砕してもよい。また、ミル粉砕は好ましくは、水希釈可能な特殊ペースト樹脂中で行なわれてもよい。ミル粉砕は、当業者に公知の通常の装置内で行なわれてもよい。次に、水性バインダーまたは水性ペースト樹脂の残りを添加して完成着色顔料ミルベースを製造する。
【0034】
本発明の水性コーティングは、添加剤を本技術分野において通常に使用される量において、例えばバインダーの重量に基づいて0.1〜5wt.%においてさらに含有してもよい。このような追加の添加剤の例は、中和剤、消泡剤、湿潤剤、接着力促進物質、触媒、流れ剤、例えばヒュームドシリカまたはシート状シリケート粒子、点蝕防止剤(anti−pitting agents)、紫外線安定剤および増粘剤、例えば、イオン性でありおよび/または会合作用を有する基を有する合成樹脂、例えばポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、疎水性改質エトキシ化ポリウレタンまたはポリアクリレート、架橋されたまたは架橋されていないポリマーマイクロ粒子、アルカリ膨潤性エマルション(例えばRohm & Haas Co.製のAcrysol(登録商標)ASE−60など)、および粘土材料(例えばElementis Specialties製のBentone(登録商標)材料など)である。
【0035】
本発明の水性コーティングはまた、典型的に、噴霧および吹き付け適用、ならびに適用されたペイント粒子のコアレッセンスを容易にするために水性キャリア中に有機溶剤を含有する。適した溶剤の例は、少なくとも部分的に水溶性である溶剤であり、例えば、一価または多価アルコール(例えばイソ−プロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ヘキサノールなど)グリコールエーテル(例えば、それぞれ、1〜6個の炭素原子を含むアルキル残基を有するジエチレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテルの他、エトキシプロパノール、ブチルグリコールなど)、N−アルキルピロリドン(例えばN−メチルピロリドンなど)、プロピレングリコールエーテルまたはエステル(例えばプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−またはジ−C1−C6−アルキルエーテル、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノール、ブトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテートなど)、エチレングリコールまたはプロピレングリコール(およびそれらのダイマーまたはトライマー)、ケトン(例えばシクロヘキサノンなど)、およびミネラルスピリットなどがあるがそれらに限定されない。
【0036】
本発明の組成物を用いて適した支持体、例えば木および再生木製品、コンクリート、アスファルト、繊維セメント、石、大理石、粘土、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエチレンターフタレート(terphthalate)、ポリブチレンターフタレート(terphthalate)、ポリプロピレン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、PVC、NORYL(登録商標)、およびポリスルホン)、紙、厚紙、および金属(第一鉄ならびに非第一鉄)上にコーティングを提供することができる。好ましくは、本発明の組成物を用いて、自動車およびトラックの金属およびプラスチック支持体のための水性コーティングを提供する。
【0037】
コーティング適用のほかに、本発明の組成物を単独でまたは他の成分と併用して、例えば、接着剤、インク、サイズ剤、複合材、含浸剤、キャスチング、コーキング材、および不織バインダーを提供することができる。
【0038】
本発明に基づくコーティング組成物は、単独で、または他のコーティング材料と併用するかのどちらかで、様々な金属または非金属支持体の上に適用された時にすぐれた性質を有する。好ましくは、コーティング組成物は、プライマー処理支持体の上に適用される。他の支持体には、予めトップコートされた支持体、冷間圧延鋼、リン酸塩処理鋼、および電着によって通常のプライマーでコートされた鋼などがあるがそれらに限定されない。コーティング組成物は、着色モノコートを、クリアコートとして、クリアコート/ベースコートの着色ベースコートとしてまたはクリアコートとベースコートとの両方として用いてもよい。本発明のコーティング組成物は、メタリック調仕上を形成するのに特に有用である。
【0039】
本発明に基づくコーティング組成物は、回転ベル適用、空気圧吹付け、静電吹付け、ディッピング、ブラッシング、フローコーティングなどの通常の技術によって適用されてもよい。好ましい技術は、1つ以上の操作においての吹付けおよび静電吹付けである。自動車のコーティング適用において、ベースコート組成物を適用して厚さ約0.1〜3.0ミルのコーティングを形成し、次いで不粘着状態に乾燥させ、好ましくは、クリアコートをその上に適用する前に短時間、フラッシュ乾燥させる。OEM仕上において、次にベースコート/クリアコート仕上を典型的に、15〜30分間60〜150℃において焼き付けた。本発明はまた、当業者によってすぐに明らかであるように、非焼き付け、または低焼き付け、再仕上システムに適用可能である。
【0040】
「ウェット・オン・ウェット」適用によってベースコートの上にクリアコートを適用するために通常の技術を使用し、そこにおいてクリアコートは、ベースコートを硬化せずにベースコートに適用される。次に、コートされた支持体を予め決められた時間加熱してベースコートおよびクリアコートを同時硬化することができる。水系ベースコートの上の適用は通常、クリアコートを適用する前に周囲空気または加熱された空気に暴露することによってベースコートを或る程度脱水するのが好ましい。本発明による脱水は、完成2層コーティングが技術的性質、例えば、接着力および石の耐衝撃性、および光学性質、例えば、色合い、特殊効果の開発、および外観の両方からの要求を満たすために重要である。クリアコートを適用した後、典型的に支持体を再びフラッシュし、最後に、フィルムが硬化されるか、または少なくとも部分的に硬化されるまで約15〜30分間、100〜150℃において焼き付けて、コートされた物品を製造する。ベースコートおよびクリアコートは好ましくは、それぞれ、約0.1〜2.5ミルおよび1.0〜3.0ミルの厚さを有するように堆積される。
【0041】
以下の実施例は、本発明に基づくポリエステル樹脂およびコーティングの調製および特性を説明するために示される。すべての部およびパーセンテージは、特に指示しない限り、重量基準である。本明細書に開示されたすべての分子量は、標準ポリスチレンを用いてGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によって定量される。これらの実施例は、本発明のさらに別の様々な態様を説明するために示されるが、いかなる点でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0042】
実施例1
水性アクリルラテックス樹脂を、以下の実施例において説明するように調製する。成分を撹拌機、熱源、温度計、還流冷却機および窒素入口を備えた重合容器に入れて、窒素雰囲気下で重合させた。


























【0043】

【0044】
部分1の成分を重合容器に入れ、約182°Fに加熱し、温度に保持した。部分2の成分を十分に予混合し、約182°Fの温度に維持したまま、90分にわたって部分1にゆっくりと添加した。次に、得られた溶液を20分間、温度に保持した。次に、部分3の成分を予混合し、容器に添加した。次に、部分4の成分を45分間予混合し、60分にわたって約182°Fの温度において重合容器中に供給し、次いで60分間、温度に保持した。部分5の成分を十分に予混合し、60分にわたって約182°Fの温度において重合容器に添加し、次いで60分間、温度に保持した。部分6の成分を予混合し、pHを約8.3〜8.7に調節するために容器に添加した。
【0045】
得られた水性アクリルラテックス樹脂は、測定された固形分の重量パーセントが約35%、pHが約8.5であった。
【0046】
実施例2
混合イオン/非イオンで安定化されたポリエステル樹脂を以下の実施例において説明するように調製した。
【0047】
混合イオン/非イオンで安定化されたポリエステル樹脂を一段階重合方法で調製するために、以下の成分を冷却器および水分離器、撹拌機、および温度計を備えた4首フラスコに入れた。バッチを、除去する間約230℃に加熱し、酸価が約6〜8に達するまでその温度に保持した。
【0048】

【0049】
得られたポリエステル樹脂は、ガードナー・ホウルト(Gardner Holdt)スケールにおいての粘度がZ2、および測定された固形分の重量パーセントが80%であった。
【0050】
実施例3
顔料分散体を製造するために使用されるブロックコポリマーを以下の実施例において説明するように調製した。撹拌器、冷却器、加熱用マントル、窒素入口、熱電対および付加孔を備えた5リットルフラスコに1600.0gのテトラヒドロフラン、3.8gのp−キシレンを添加した。アセトニトリル中のテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの触媒の1.0M溶液0.6mlを添加した。1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−2−メチルプロペンの開始剤の0.140M溶液32.5gをフラスコに注入した。アセトニトリル中のテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの1.0M溶液0.6mlの供給Iを開始し、200分にわたって添加した。供給II(トリメチルシリルメタクリレート、265.0g(1.67M)、ブチルメタクリレート、298.0g(2.10M)、メチルメタクリレート、140.0g(1.40M)、およびトリメチルシロキシエチルメタクリレート、141.0g(0.70M)を0.0分において開始し、45分にわたって添加した。供給IIが終了した100分後(モノマーの99%超が反応していた)、供給III(ベンジルメタクリレート、616.0g(3.46M)、およびジメチルアミノエチルメタクリレート、154.0g(0.980M)を開始し、30分にわたって添加した。400分において、150gのメタノールを得られた反応混合物に添加して反応物を急冷してヒドロキシを脱ブロックし、酸モノマーおよび溶剤蒸留を開始した。蒸留の最初の段階の間、400.0gの溶剤を除去した。100.0gのメタノールを添加し、付加的な200.0gの溶剤を蒸留して除去した。
【0051】
得られたポリマー溶液は50%の固形分を有し、このポリマーは、以下の組成、ベンジルメタクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレート//ブチルメタクリレート/メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸を25/15//15/10//5/12の重量比で有し、10,300の数平均分子量を有した。
【0052】
実施例4
カーボンブラック顔料分散体を調製するために、通常の高速メディアミルを用いてAMP−95で中和される上に調製されたブロックコポリマー中に上述のカーボンブラック顔料を分散させた。得られたカーボンブラック顔料分散体は以下の組成を有し、20.5%の固形分を有した:
【0053】

【0054】
実施例5
白色顔料分散体を以下の実施例において調製した。8,000の重量平均分子量、4,000の数平均分子量および2の多分散度を有する、54.9/33.6/9.8/1.7の比のメチルメタクリレート(MMA)、ブチルアクリレート(BA)、アクリル酸(AA)およびメルカプトエタノール(2−MERE)のランダムアクリル樹脂を、通常のミル粉砕方法を用いて白色顔料分散体中に配合し、そこにおいて60重量部の白色二酸化チタン顔料(DuPont TI−高純度R−960)、10重量部の上記のランダムアクリル樹脂、4重量部のブチルセロソルブ、0.05重量部のAMP−95(2−アミノメチルプロパノール)、および25.09重量部の水をミル粉砕して顔料をアクリル樹脂中に均一に分散させた。
【0055】
実施例6
水性アルミニウムフレークスラリーを以下の実施例において調製した。スラリーを調製するために、6.4重量部のミネラルスピリット(Exxon−Mobil Co.製のISOPARH溶剤)、14.6重量部のブチルセロソルブ、15.8重量部のアルミニウムペースト(Silberline Mfg.Co.Inc.製のSSP−572)、3.6重量部の公知の受動態化剤(Lubrizol Corp.製のLubrizol(登録商標)2062)、および0.6重量部のAMP−95(2−アミノメチルプロパノール)を十分に予混合した。次いで38.3重量部の実施例1の水性アクリルラテックス樹脂および20.6重量部の脱イオン水を添加してアルミニウムフレークスラリーを完成した。
【0056】
コーティングの実施例1〜3
本発明の混合イオン/非イオンで安定化されたポリエステル樹脂に基づいた以下のコーティングの実施例を調製するために以下の成分を混合し、下記の湿潤ペイント性質をもたらした。









【0057】




【0058】
水性ベースコートの実施例を、予めプライマー処理済みの市販のe−コートされた試験パネルの上に通常のフィルム厚(0.6〜1.0ミル)において適用した。ベースコートされたパネルを予備焼き付けで脱水し、次いで市販の溶剤系一成分耐腐蝕性クリアコート(DuPont Generation(登録商標)IVESW)1.8〜2.2ミルをクリアコートした。次に、複合ベースコート/クリアコートコーティングを30分間265°Fにおいて焼付けた。得られた硬化されたベースコート/クリアコートされたパネルを、試験方法SAEJ400によるグラベロメーター(gravelometer)耐チップ性、湿潤暴露の前および後の20°の光沢、湿潤暴露の前および後のHunter Dorigon DOI計器で測定した時のDOI、および湿潤暴露の前および後の接着力などのフィルム性質について試験した。湿潤暴露条件は、100°Fおよび100%の相対湿度において96時間であった。クロスハッチ試験方法を用いて乾燥初期接着力(乾燥ハッチ)および湿潤後の湿潤接着力の両方を、0(接着力なし)から10(完全な接着力)までの等級システムに基づいて評価した。結果を以下の通りに記載する。
【0059】

【0060】
本発明の組成物の成分の様々な改良、変更、付加、代用を、本発明の範囲および精神から逸脱することなく実施できることは、当業者には明白であろう。本発明は、ここに示された具体的な実施態様に限定されるものではなく、以下のクレームによって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1600より少ない数平均分子量を有するポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル約1〜25重量%と、
(b)1つ以上のポリカルボン酸またはそれらの無水物、約40〜65重量%と、
(c)1つ以上の多価アルコール約35〜60重量%と
の反応生成物を含み、約2〜30(mg KOH/g樹脂固形分)の酸価を有する、水希釈性ポリエステル樹脂。
【請求項2】
イオン性酸基が、アミンまたは他の中和剤で少なくとも部分的に中和され、水性キャリア中に分散される、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの前記数平均分子量が約300〜800である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが、式:
H(OCH2CH22−OR
のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルであり、式中、nが7〜25の整数であり、Rが、1〜4個の炭素原子のアルキル基であり、前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの前記数平均分子量が1200より小さい、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの前記数平均分子量が約300〜800である、請求項4に記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルがポリエチレングリコールモノメチルエーテルである、請求項5に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記酸価が約3〜20(mg KOH/g樹脂固形分)である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項8】
ヒドロキシ価が約50〜200(mg KOH/g樹脂固形分)である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項9】
ヒドロキシ価が約65〜130(mg KOH/g樹脂固形分)である、請求項8に記載のポリエステル樹脂。
【請求項10】
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを約3〜15重量%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項11】
請求項1に記載のポリエステル樹脂を含む、水性コーティング組成物。
【請求項12】
前記コーティングが水系カラーコーティングである、請求項11に記載の水性コーティング組成物。
【請求項13】
前記コーティングが水系プライマーコーティングである、請求項11に記載の水性コーティング組成物。
【請求項14】
少なくとも40%の水を含む水性キャリアとフィルム形成バインダーとを含む、支持体をコーティングするために有用な水性コーティング組成物であって、前記バインダーが、
(a)1200より小さい数平均分子量を有するポリエチレングリコールモノアルキルエーテル約1〜25重量%と、
(b)1つ以上のポリカルボン酸、約40〜65重量%と、
(c)1つ以上の多価アルコール約35〜60重量%と
を含む混合イオンおよび非イオンで安定化された少なくとも1つの水希釈性ポリエステル樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂が、約2〜30(mg KOH/g樹脂固形分)の酸価を有する、水性コーティング組成物。
【請求項15】
前記ポリエステル樹脂の前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが、約300〜800の数平均分子量を有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルである、請求項14に記載の水性コーティング組成物。
【請求項16】
前記フィルム形成バインダーが、アクリル系ラテックス樹脂およびアルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂をさらに含む、請求項14に記載の水性コーティング組成物。
【請求項17】
前記アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂がモノマーメチル化アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂である、請求項16に記載の水性コーティング組成物。
【請求項18】
有機酸触媒をさらに含む、請求項14に記載の水性コーティング組成物。
【請求項19】
前記酸触媒が有機スルホン酸またはそのアミン塩である、請求項18に記載の水性コーティング組成物。
【請求項20】
前記酸触媒がドデシルベンジルスルホン酸のアミン塩である、請求項19に記載の水性コーティング組成物。
【請求項21】
請求項11に記載の組成物の乾燥および硬化された層でコートされた物品。
【請求項22】
請求項21に記載のコートされた物品から製造された完成品。

【公表番号】特表2007−538118(P2007−538118A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513344(P2007−513344)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/016587
【国際公開番号】WO2005/116109
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】