説明

混合ポリテトラフルオロエチレン粉体及びポリテトラフルオロエチレン多孔成形体及びこれらの製造方法、ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体並びに高周波信号伝送用製品

比重が0.9〜2.0であり、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ポリテトラフルオロエチレン粉体及びポリテトラフルオロエチレン多孔成形体及びこれらの製造方法、ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体並びに高周波信号伝送用製品に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブル、LANケーブル、プリント配線基板等の高周波信号伝送用製品は、伝送速度を高め、誘電体損を低減させるために、誘電率(ε)ができるだけ低い絶縁材を用いることが求められる。絶縁材を構成する樹脂としては、誘電率が低く、また、誘電正接(tanδ)も低いことから誘電体損の低下にも寄与するほか、耐熱性等の他の特性にも優れるので、含フッ素樹脂を用いることが望ましい。
【0003】
絶縁材の誘電率を低下させるために、絶縁材を構成する樹脂よりも誘電率が低い物質を樹脂中に分散させると効果的であることが知られている。樹脂中に分散させる低誘電率の物質としては、空気が好適である。
【0004】
絶縁材を構成する含フッ素樹脂としては、成形性が良好である溶融加工性含フッ素樹脂の使用が試みられてきた。溶融加工性含フッ素樹脂中に空気を分散させたものとして、例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔FEP〕からなる発泡電線が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
近年の高周波信号伝送技術の進展により、伝送速度の高速化と誘電体損の低減が一層求められるようになってきた。このため、絶縁材として、溶融加工性含フッ素樹脂よりも誘電率及び誘電正接が低いポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いた成形体が検討されている。
【0006】
絶縁材にポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いたものとしては、発泡ポリテトラフルオロエチレン粉末に細孔形成剤、膨張剤及び潤滑剤を混合して押出しにより得た同軸ケーブルが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、発泡ポリテトラフルオロエチレンの製法等に関する一切の記載がなく、実際には成形体が得られず絶縁材表面がささくれだつものと考えられる。
【0007】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂多孔質体としては、樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン焼成粉末、又は、ポリテトラフルオロエチレン焼成粉末と1重量%のテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテル共重合体〔PFA〕粉末との混合物を用い、加圧形成した予備成形体を焼成したものが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
しかしながら、このポリテトラフルオロエチレン樹脂多孔質体は、予め焼成して硬化させたポリテトラフルオロエチレン粉末を用い、予備成形時の加圧を粉末粒子が完全に潰れない程度に行い、粉末粒子同士の接点を焼成して結着させることにより、多孔質体を得るものであり、後述する本発明とは発明思想が全く異なる。
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/00792号パンフレット
【特許文献2】特開昭60−93709号公報
【特許文献3】特開昭61−66730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、微細な気泡が均一に分布したポリテトラフルオロエチレン多孔成形体とポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体、及び、これらの成形体を得ることができる混合ポリテトラフルオロエチレン粉体、並びに、高周波信号伝送用製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、比重が0.9〜2.0であり、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体である。
【0012】
本発明は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が333〜347℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が324〜330℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とからなることを特徴とする混合ポリテトラフルオロエチレン粉体である。
【0013】
本発明は、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて得られるポリテトラフルオロエチレン多孔成形体であって、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、比重が0.9〜2.0であり、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体である。
【0014】
本発明は、混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて成形加工することよりなる上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の製造方法であって、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が333〜347℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が324〜330℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とからなるものであり、上記成形加工は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の融点以上の温度にて焼成する工程を含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の製造方法である。
【0015】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、350℃における溶融粘度が5000000Pa・s以下である熱可塑性樹脂(Q)とからなるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体であって、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、比重が0.8〜1.9であり、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体である。
【0016】
本発明は、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法であって、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、350℃における溶融粘度が5000000Pa・s以下である熱可塑性樹脂(Q)とを用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の融点以上の温度にて成形加工することよりなることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法である。
【0017】
本発明は、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体、又は、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体を用いてなることを特徴とする高周波信号伝送用製品である。
【0018】
本発明は、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体を用いてなることを特徴とするフィルターである。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、比重が0.9〜2.0であるものである。
本明細書において、上記「ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体」は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いて得られる成形体である。
上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、なかでも、樹脂成分として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のみを用いて得られる成形体であることが好ましい。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂としては、例えば、後に例示するもの等が挙げられるが、後述するテトラフルオロエチレン樹脂(A)及びテトラフルオロエチレン樹脂(B)が好ましく、なかでも、テトラフルオロエチレン樹脂(A)とテトラフルオロエチレン樹脂(B)とのみからなるものがより好ましい。
【0020】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体において、上記比重は、機械的強度の点で、好ましい下限が1.2である。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体において、上記範囲内のように比重が比較的低いのは、気泡が多数存在するためであり、この気泡により、低い比誘電率が可能となる。
本明細書において、上記比重は、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した値である。
【0021】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であるものである。
上記アスペクト比は、機械的強度の点で、好ましい上限が2である。
上記アスペクト比は、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の任意の断面において、空隙の最長径と最短径とを計測して求めることができる。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、上記アスペクト比が上記範囲内にあるものであるので、機械的強度が高い。
【0022】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、上記比重及び上記アスペクト比が、それぞれ上述の範囲内にあるものであるので、比誘電率が低く、形状安定性に優れているため、高周波信号伝送用製品の材料として好適に使用することができる。
【0023】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)とポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とからなるものである。
【0024】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度(以下、「最大吸熱ピーク温度」ということがある。)が333〜347℃であるものであり、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は、最大吸熱ピーク温度が324〜330℃であるものである。ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)とポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とは、このように最大吸熱ピーク温度が異なる点で異なるものであるが、構成するポリマーのモノマー組成、平均分子量等の他の性状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本明細書において、(A)又は(B)を付すことなく、単に「ポリテトラフルオロエチレン樹脂」というときは、上記(A)又は上記(B)の何れであるかを区別することなく、両者を含み得る概念である。
【0025】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、一般に、重合により得た湿潤粉末を乾燥して得られる粉末を初めて加熱する際の最大吸熱ピーク温度(以下、「一次最大吸熱ピーク温度」ということがある。)が333〜347℃であり、上記一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱した履歴があるものについて測定される最大吸熱ピーク温度(以下、「二次最大吸熱ピーク温度」ということがある。)が、324〜330℃である。
【0026】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)は、最大吸熱ピーク温度が333〜347℃、即ち、一次最大吸熱ピーク温度であるものであり、従って、上記一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱した履歴がないポリテトラフルオロエチレン樹脂である。
本明細書において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂について、上記一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱した履歴がないことを「未焼成」と言うことがある。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の最大吸熱ピーク温度のより好ましい下限は337℃であり、より好ましい上限は343℃である。
本明細書において、上記結晶融解曲線は、昇温速度10℃/分の条件で測定したものである。
【0027】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)を構成するフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン[TFE]単独重合体であってもよいし、TFEと、TFE以外の微量モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]という。)であってもよい。
【0028】
上記微量モノマーとしては、例えば、パーフルオロオレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、環式のフッ素化された単量体、パーフルオロアルキルエチレン等が挙げられる。
上記パーフルオロオレフィンとしては、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]等が挙げられ、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられ、環式のフッ素化された単量体としては、フルオロジオキソール等が挙げられ、パーフルオロアルキルエチレンとしては、パーフルオロメチルエチレン等が挙げられる。
【0029】
上記変性PTFEにおいて、上記微量モノマーに由来する微量モノマー単位の全モノマー単位に占める含有率は、通常0.001〜1モル%の範囲である。
本明細書において、上記「微量モノマー単位」は、フルオロポリマーの分子構造上の一部分であって、対応するモノマーに由来する部分を意味する。例えばTFE単位は、ポリマーの分子構造上の一部分であって、TFEに由来する部分であり、−(CF−CF)−で表される。
上記「全モノマー単位」は、ポリマーの分子構造上、モノマーに由来する部分の全てである。
本明細書において、「全モノマー単位に占める微量モノマー単位の含有率(モル%)」とは、上記「全モノマー単位」が由来するモノマー、即ち、ポリマーを構成することとなったモノマー全量に占める、上記微量モノマー単位が由来する微量モノマーのモル分率(モル%)を意味する。
【0030】
上記変性PTFEにおいて、上記全モノマー単位に占める微量モノマー単位の含有率は、高いほど成形性に優れるが、得られる多孔品の比誘電率と誘電正接が小さくなる点で、低い方が好ましい。上記含有率の好ましい上限は、0.1モル%である。
【0031】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)を構成するフルオロポリマーとしては、得られる成形体の比誘電率と誘電正接を低くさせる点で、TFE単独重合体が好ましい。
【0032】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)は、標準比重[SSG]が2.2以下であるものが好ましく、通常、2.12〜2.20であるものである。
得られる成形体の機械的強度や電気的特性の点で、上記SSGの好ましい下限は2.13、より好ましい下限は2.15、更に好ましい下限は2.17であり、成形性の点でより好ましい上限は2.19である。
本明細書において、SSG(Standard Specific Gravity)は、ASTM D−4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定した値である。
【0033】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる樹脂粒子の平均一次粒径は、セルの均一性及び発泡度の点で、0.1〜0.5μmであることが好ましい。上記平均一次粒径のより好ましい下限は0.2μmであり、更に好ましい上限は0.3μmである。
本明細書において、上記平均一次粒径は、重力沈降法に基づく測定により得られる値である。
【0034】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)は、乳化重合、懸濁重合等、公知の方法により製造することができるが、電線押出、チューブ押出等のペースト押出が容易になる点で、乳化重合から得られたものが好ましい。
【0035】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度(最大吸熱ピーク温度)が324〜330℃であるものである。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は、最大吸熱ピーク温度が上述のポリテトラフルオロエチレン樹脂の二次最大吸熱ピーク温度であるものであり、従って、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱した履歴があるポリテトラフルオロエチレン樹脂である。
上記最大吸熱ピーク温度の好ましい下限は、325℃、好ましい上限は、327℃である。
【0036】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)が、上記範囲内の最大吸熱ピーク温度を示すものであれば、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)を構成するフルオロポリマーとしては、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と同様に、TFE単独重合体であってもよいし、上述した変性PTFEであってもよいが、得られる成形体の比誘電率と誘電正接が低い点で、TFE単独重合体が好ましい。
【0037】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は、標準比重が2.2以下であるものが好ましく、通常、標準比重が2.12〜2.20であるものである。上記標準比重の好ましい下限は2.13、更に好ましい下限は2.14であり、より好ましい上限は2.18である。
本明細書において、標準比重は、ASTM D−4895 98に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定した値である。
【0038】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は、(1)重合によりポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粉体を調製する工程、(2)ポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度、通常333℃以上の温度において熱処理を行い、冷却する工程、及び、(3)機械的に粉砕する工程をこの順に行うことにより得ることができる。
【0039】
上記工程(1)において、上記重合は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の公知の重合方法を用いて行うことができるが、電線押出、チューブ押出等のペースト押出が容易になる点で、乳化重合から得られたものが好ましい。
上記工程(1)における粉体の調製は、用いた重合方法に応じて公知の方法により行うことができる。
上記工程(1)により得られるポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる粉体は、乳化重合を経て得られるファインパウダーであってもよいし、乳化重合以外の重合方法を経て得られるモールディングパウダーであってもよく、得られる混合ポリテトラフルオロエチレン粉体の用途によるが、後述のペースト押出を行う場合、ファインパウダーが好ましい。
【0040】
上記工程(2)において、上記熱処理を行う温度の好ましい下限は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂を充分に溶融させることができる点で、340℃であり、より好ましい下限は360℃であり、好ましい上限は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の分解温度未満の温度であればよいが、エネルギー効率の点で400℃、より好ましくは390℃である。
上記加熱時間は粉末量に応じて適宜設定すればよい。上記加熱は、トレイ上に載せて行ってもよいし、コンベア上に載せて行ってもよい。
【0041】
上記熱処理は、例えば、ステレンスパット等の耐熱性の容器に、上記ポリテトラフルオロエチレンを20mm程度の厚さに積載し、無荷重にて行うことが好ましい。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は、上記工程(2)における熱処理を経て得られるものであるので、上述の最大吸熱ピーク温度を有することとなる。
【0042】
上記工程(3)において、上記機械的粉砕の方法としては特に限定されず、ミキサー等、公知の粉砕装置を用いて粉砕することからなる方法が挙げられる。
上記工程(3)の機械的粉砕により得られるポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末は、平均粒径約500μm以下であることが好ましい。
上記平均粒径は、得られる多孔成形体の低密度化が容易となる点で、より好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は30μmであり、多孔成形体中の気泡を均質に分布させやすい点で、より好ましい上限は300μm、更に好ましい上限は100μm以下である。
【0043】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粒子が水性媒体に分散している水性分散液、又は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粉末と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末とを混合することより得ることができる。
【0044】
上記混合の方法としては、操作が簡便であり、低密度の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体が得られる点で、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粉末と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末とを混合する乾式混合法(i)が好ましく、気泡が均一で気泡の径が細かい多孔成形体が容易に得られる点で、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粒子が水性媒体に分散している水性分散液と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末とを共凝析する共凝析法(ii)が好ましい。
【0045】
上記乾式混合法(i)により本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を得る場合、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末と混合する前に、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粉末を予めヘンシェルミキサー等を用いた粉砕等により、ある程度繊維化させておくことが、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粉末と上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末との混合を充分に行うことができるので好ましい。
【0046】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体において、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)の含有率は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)との合計に対し、30〜80質量%であることが好ましい。
上記含有率が30質量%未満であると、混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて得られる多孔成形体中の気泡の量が少なくなり、比誘電率の添加が不充分となることがあり、上記含有率が80質量%を超えると、得られる多孔成形体の機械的強度が低下することがある。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)の含有率のより好ましい下限は、40質量%、更に好ましい下限は、50質量%であり、より好ましい上限は70質量%、更に好ましい上限は60質量%である。
【0047】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)及び上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)に加え、用途に応じ、成核剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有するものであってもよい。
【0048】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、特に限定されないが、成形材料として用いることができ、特に成形体中に気泡が多数分布している多孔成形体を得るための成形材料として好適に用いることができる。
【0049】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、好ましくはポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱して成形加工を行うことにより多孔成形体を得ることができるものである。
上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を構成する粉体粒子のうち、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末粒子は、上記工程(2)における熱処理を一旦行ったものであるので、得られる本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて成形する際、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の二次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱しても収縮しにくく、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末粒子1つ1つが占める体積は殆ど減少しない。
その一方、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粒子は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱した履歴がないものであるので、成形時等にポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱すると、加熱時間等によるが、その体積は通常約30%収縮する。
【0050】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粒子と上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粒子との間の加熱時の収縮の差を利用し、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度で成形加工することにより、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)は殆ど収縮しないが、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の収縮に起因する気泡を生じさせることにより多孔成形体を得ることができるものである。
【0051】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、最大吸熱ピーク温度が異なる以外、化学的性質が実質的に大きく異ならない上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とからなるものであるので、充分に混合することができ、得られる成形体を上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の均一な分布により、気泡が均一に分布している多孔成形体とすることができる。
【0052】
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなるものであるので、比誘電率と誘電正接とが低い成形体を得ることができ、更に上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の収縮による気泡を有することにより比誘電率が充分に低下した多孔成形体を得ることができる。
【0053】
上述の本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて得られる多孔成形体であって、比重が0.9〜2.0であり、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であるものであってもよい。
本明細書において、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体のうち、上述の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて得られる多孔成形体を、以下、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体(C)と称することがある。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体(C)は、通常、上述したポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の融点以上の温度で焼成して成形加工することにより得られる。
【0054】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体(C)は、未焼成のポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)がポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度で加熱すると収縮し、標準比重が約1.5から約2.15に増加するのに対し、上記一次最大吸熱ピーク温度以上の温度で加熱した履歴がある上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)が、再焼成しても標準比重変化はほとんどないことを利用して得たものであるので、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の収縮により生じた気泡が多数形成された多孔成形体である。
上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体(C)は、また、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなるものであるので、比誘電率と誘電正接とが低いものである。
【0055】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる多孔成形体であるので、比誘電率がかなり低い。
上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の比誘電率(εr)は、1.2〜1.8にすることができる。上記比誘電率のより好ましい下限は1.7、更に好ましい上限は1.6である。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、tanδで表される誘電正接が1.5×10−4以下であることが好ましい。上記誘電正接の好ましい上限は、0.8×10−4であり、より好ましい上限は、0.7×10−4である。
【0056】
本明細書において、上記誘電正接及び上記比誘電率は、それぞれネットワークアナライザーを用いて、共振周波数及び電界強度の変化を20〜25℃の温度下で測定し、12GHzにおける値を算出して得られるものである。
【0057】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、比誘電率及び誘導正接が低いものであるので、高い伝送速度と低い誘電体損とが求められる高周波信号伝送用製品に好適に用いることができる。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、比誘電率及び誘導正接が低いものであるので絶縁体として用いることが好ましく、高周波信号伝送用製品における絶縁体として用いることがより好ましい。
【0058】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、高周波信号伝送用製品における絶縁体として用いる場合、特に、高周波信号の伝送速度を高速化することができる。上記伝送速度は、光速を比誘電率(εr)の平方根で除した値として表され、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は比誘電率が充分に低いので、伝送速度の高速化を達成することができる。
【0059】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、例えば後述の高周波伝送ケーブル等における絶縁体として用いる場合、誘電体損が低く、低伝送損失を可能にすることができ、絶縁体、特に高周波伝送ケーブル等の各種高周波信号伝送用製品における絶縁体に好適である。
伝送損失は、一般に、導体損によるものと、誘電体損によるものとに分類される。上記誘電体損αは、下記一般式で表されるように比誘電率及び誘電正接の関数で表され、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、比誘電率と誘電正接とが低いので誘電体損が低い。
【0060】
【数1】

【0061】
上記各種高周波信号伝送用製品としては、高周波信号の伝送に用いる製品であれば特に限定されず、(I)高周波回路の絶縁板、電気部品の端子板、接続部品の絶縁物、プリント配線基板等の成形板、(II)高周波用真空管のベース、アンテナカバー等の成形品、及び、(III)高周波伝送ケーブル、同軸フィーダー等の絶縁電線等が挙げられる。
【0062】
上記(I)成形板としては、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の良好な電気特性及び耐熱性を活かす点で、プリント配線基板が好ましい。
上記プリント配線基板としては特に限定されないが、例えば、携帯電話、各種コンピューター、通信機器等の電子回路のプリント配線基板等が挙げられる。
上記(II)成形品としては、低伝送損失であり、優れた電気特性のみならず、耐侯性及び機械的強度を活かす点で、アンテナカバーが好ましい。
【0063】
上記(I)成形板及び(II)成形品に成形加工する方法としては特に限定されないが、例えば、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体と、所望により公知の加工助剤等とを混合した後、圧縮成形又は押出圧延成形等を行うことからなる方法等が挙げられる。
【0064】
上記(III)絶縁電線としては、良好な電気特性及び耐熱性を活かす点で、高周波伝送ケーブルが好ましく、上記高周波伝送ケーブルとしては、同軸ケーブル、LANケーブル等が好ましい。
上記同軸ケーブルは、一般に、内部導体、絶縁被覆層、外部導体層及び保護被覆層が、この順で芯部より外周部に積層することからなる構造を有する。上記構造における各層の厚さは特に限定されないが、通常、内部導体は、直径約0.1〜3mmであり、絶縁被覆層は、厚さ約0.3〜3mm、外部導体層は、厚さ約0.5〜10mm、保護被覆層は、厚さ約0.5〜2mmである。
【0065】
上記高周波伝送ケーブルは、例えば、特開2001−357729号公報に記載の方法、特開平9−55120号公報に記載の方法等、公知の方法により製造することができる。
上記高周波伝送ケーブルは、通常、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体を絶縁被覆層として有するものである。
上記絶縁被覆層として本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体を成形加工する方法としては特に限定されないが、例えば、押出被覆成形方式、ラッピングテープ方式、カレンダー圧延方式等が挙げられる。
上記成形加工の方法としては押出被覆成形方式が好ましく、上記押出被覆成形方式としてはペースト押出成形が好ましい。
【0066】
上記ペースト押出成形の方法としては、例えば、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体にペースト押出助剤を混合したのち、ペースト押出機に装填し、芯線を被覆させるように押出し、100〜250℃の温度下で加熱乾燥した後、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の融点以上で焼成することからなる方法等が挙げられる。
【0067】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、微細な気泡が成形体中に分布している多孔成形体であるので、フィルターに用いることができる。
上記フィルターは、低比誘電率等の電気特性が求められるものであってもよいが、求められないものであってもよく、例えば、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の空気を通すが水は通しにくい性質を活かしたものとして、用途に応じたフィルターにすることができる。上記フィルターとしては、例えば、電子部品の端子部防水キャップ等が挙げられる。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、延伸又は圧縮することにより、気泡のサイズを小さくし、用途に応じたフィルターにすることができる。
【0068】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の製造方法は、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて成形加工することよりなるものである。
上記成形加工は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の融点以上の温度にて焼成する工程(以下、「焼成工程」ということがある)を含むものである。
上記焼成工程は、通常、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて所定形状に成形する工程(以下、「形状付与工程」ということがある)したのち、行う。
【0069】
上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて成形加工する方法としては上記焼成工程を含むものであれば特に限定されず、目的とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の用途に応じ、例えば、圧縮成形、押出圧延成形、押出被覆成形方式、テープラッピング方式、カレンダー圧延方式等の公知の方法による形状付与工程をも含むものであってよい。
【0070】
上記成形加工は、上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体に加え、成形加工性の向上、得られる成形体の機械的強度等の物性の向上等を目的として、その他公知の加工助剤等を添加して行ってもよい。
【0071】
上記成形加工する方法としては、成形加工性がよい点で、ペースト押出成形が好ましい。
上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体をペースト押出成形する場合、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粒子は繊維化され、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)を巻き込んで所望の形状になるので、得られるポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の機械的強度が向上する。
【0072】
上記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体をペースト押出成形する場合、押出成形後、押出助剤を乾燥炉内で蒸発させる乾燥を行った後、焼成を行う。
上記乾燥の方法は特に限定されないが、例えば100〜200℃の乾燥炉内で乾燥する方法が挙げられる。
上記焼成は、350〜450℃にて熱処理することが好ましい。
【0073】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、熱可塑性樹脂(Q)とからなるものであって、比重が0.8〜1.9であり、成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下であるものである。
上記比重は、比誘電率の低下の点で、1.7以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、機械的強度の点で、0.9以上であることが好ましい。
上記アスペクト比の好ましい範囲は、上述の本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体に関して説明した範囲と同じである。
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、比重及びアスペクト比が、それぞれ上述の範囲内にあるものであるので、比誘電率が低く、形状安定性に優れているため、高周波信号伝送用製品の材料として好適に使用することができる。
【0074】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)としては、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度(以下、「最大吸熱ピーク温度」ともいう。)が320〜345℃であるものが好ましい。
成形加工時の成形性の点で、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の最大吸熱ピーク温度のより好ましい下限は337℃であり、より好ましい上限は343℃である。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の一次最大吸熱ピーク温度以上の温度に加熱した履歴がないものであってもよいし、上記履歴があるものであってもよいが、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の孔形成がよい点で、焼成されていないものが好ましい。
【0075】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)を構成するフルオロポリマーとしては、テトラフルオロエチレン[TFE]単独重合体であってもよいし、上述の変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]であってもよい。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)としては、上記成形材料から得られる成形体の比誘電率と誘電正接とを低くさせる点で、TFE単独重合体が好ましい。
【0076】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)は、標準比重〔SSG〕が2.2以下であるものが好ましい。
得られるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の機械的強度や電気的特性の点で、上記SSGの好ましい下限は2.12、より好ましい下限は2.13、更に好ましい下限は2.15であり、特に好ましい下限は2.17であり、成形性の点でより好ましい上限は2.19である。
【0077】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)からなる樹脂粒子の平均一次粒径は、通常、0.1〜0.5μmである。上記平均一次粒径の好ましい下限は0.2μmであり、好ましい上限は0.3μmである。
【0078】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)は、乳化重合、懸濁重合等、公知の方法により製造することができるが、電線押出、チューブ押出等のペースト押出が容易になる点で、乳化重合から得られたものが好ましい。
【0079】
上記熱可塑性樹脂(Q)は、350℃における溶融粘度が5000000Pa・s以下であるものである。
上記溶融粘度は、機械的強度の点で、好ましい上限は80000Pa・s、より好ましい上限は60000Pa・sであり、好ましい下限は40000Pa・s、より好ましい下限は50000Pa・sである。
本明細書において、上記溶融粘度は、動的粘弾性測定装置としてレオメトリクス社製粘弾性測定器RDS−2を使用し、350℃において測定した値である。
【0080】
上記熱可塑性樹脂(Q)の融点は、100℃以上、330℃未満であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂(Q)の融点は、使用時の機械的強度の点で、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、機械的強度と成形性の点で、320℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。
【0081】
上記熱可塑性樹脂(Q)の融点の測定法としては、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で吸熱ピークを測定することにより求めることができる。
【0082】
上記熱可塑性樹脂(Q)としては、含フッ素樹脂又はポリオレフィン樹脂が好ましい。
上記含フッ素樹脂としては、例えば、非溶融加工性含フッ素樹脂、溶融加工性含フッ素樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0083】
上記非溶融加工性含フッ素樹脂としては、例えば、低分子量ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]樹脂が挙げられる。
上記低分子量PTFE樹脂は、通常、数平均分子量が100万±50万のPTFE樹脂であり、上記PTFE樹脂を構成するフルオロポリマーとしては、上記TFE単独重合体であってもよいし、上述の変性PTFEであってもよいが、比誘電率と誘電正接とを低下させる点で、TFE単独重合体が好ましい。上記低分子PTFE樹脂としては、例えば、ルブロン(商品名、ダイキン工業社製)等が挙げられる。
本明細書において、数平均分子量は、ATSM D−4895 98に準拠して成形したサンプルを用い、ASTM D−792に準拠した水置換法により測定した標準比重〔SSG〕から算出した値である。
【0084】
上記溶融加工性含フッ素樹脂としては、例えば、構成するフルオロポリマーがテトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[TFE/PAVE]共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン[FEP]共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン[ETFE]共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン[EFEP]共重合体等である含フッ素樹脂が挙げられる。
上記TFE/PAVE共重合体[PFA]としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体[MFA]、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[TFE/PPVE]共重合体等が挙げられる。
【0085】
上記熱可塑性樹脂(Q)としての含フッ素樹脂は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の公知の方法で製造することができるが、後述の成形材料の調製に、上記熱可塑性樹脂(Q)として含フッ素樹脂の水性分散液を用いる場合、乳化重合法により重合されたものが好ましい。
上記熱可塑性樹脂(Q)としての含フッ素樹脂は、乳化重合法により重合されたものである場合、平均一次粒径は、通常約0.02〜0.5μmであるが、上記平均一次粒径の好ましい下限は0.1μmであり、好ましい上限は0.3μmである。
上記ポリオレフィン樹脂は、構成するオレフィンポリマーがオレフィン単独重合体であるものであってもよいし、主要単量体としてのオレフィンと、オレフィンと共重合可能なその他の単量体との共重合体であるものであってもよい。
上記オレフィンの共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンとがランダム又はブロック状に共重合したプロピレン/エチレン系共重合体等が挙げられる。
【0086】
上記熱可塑性樹脂(Q)としては、耐熱性に優れ、比較的高温下でも安定した使用が可能な発泡成形体が得られる点で、含フッ素樹脂が好ましい。
上記含フッ素樹脂としては、耐熱性の点で、溶融加工性含フッ素樹脂が好ましく、溶融加工性含フッ素樹脂としては、構成するフルオロポリマーがFEP、TFE/PAVE共重合体である樹脂が好ましい。上記TFE/PAVE共重合体としては、MFA、TFE/PPVE共重合体が好ましい。
【0087】
上記熱可塑性樹脂(Q)の数平均分子量は特に限定されないが、1000〜100万であることが好ましい。上記数平均分子量は、大きすぎると成形性が低下することがあり、小さ過ぎると、得られる成形体の機械的強度が低下することがある。
【0088】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体において、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と上記熱可塑性樹脂(Q)との合計の1〜95質量%であることが好ましい。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の含有率のより好ましい下限は、20質量%、更に好ましい下限は、30質量%であり、より好ましい上限は70質量%、更に好ましい上限は50質量%である。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の含有率は95質量%を超えると、成形材料から得られる成形体の発泡率が低下する場合があり、上記含有率が5%未満である場合、比誘電率及び誘電正接が有意に低下しないことがある。
【0089】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と上記熱可塑性樹脂(Q)とからなる成形材料を後述の方法を行うことにより得ることができる。
本明細書において、上記成形加工の材料を「成形材料」ということがある。
上記成形材料としては、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と上記熱可塑性樹脂(Q)とのみであってもよいが、後述の発泡剤その他の添加剤を添加したものであってもよい。
【0090】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、熱可塑性樹脂(Q)と、更に、発泡剤とからなる成形材料を用いて得られるものであってもよい。
上記発泡剤としては、成形加工時に気泡を生じ得るものであれば特に限定されないが、例えば、カルボニルヒドラジド、アゾ系化合物、無機化合物等の分解性化合物が挙げられる。
【0091】
上記カルボニルヒドラジドとしては、4,4−ビスオキシベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
上記アゾ系化合物としては、例えば、アゾジカルボン酸アミド、5−フェニルテトラゾールが挙げられる。
上記無機化合物としては、窒化ホウ素、タルク、セリサイト、珪藻土、窒化ケイ素、ファインシリカ、アルミナ、ジルコニア、石英粉、カオリン、ベンゾナイト酸化チタン等が挙げられる。
【0092】
上記発泡剤は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)及び上記熱可塑性樹脂(Q)の合計の0.1〜5質量%の量で添加することが好ましい。
上記発泡剤の添加量は、使用する発泡剤の種類により異なるが、発泡率の点で、0.5質量%以上がより好ましく、誘電正接の点で、1質量%以下がより好ましい。
【0093】
上記成形材料の調製方法としては、例えば、(i)上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)からなる粉末と上記熱可塑性樹脂(Q)からなる粉末とを混合する乾式混合法等が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂(Q)が、溶融加工性含フッ素樹脂以外である場合、即ち、例えば非溶融加工性含フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂等である場合、(ii)上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、上記溶融加工性含フッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂(Q)のうち、何れか一方の樹脂からなる水性分散液に、他方の樹脂からなる粉末を添加して凝析する共凝析法、(iii)上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)からなる水性分散液と、上記溶融加工性含フッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂(Q)からなる水性分散液とを混合して凝析する共凝析法等が挙げられる。
なかでも、充分に混合でき、均質で、機械的強度と電気特性に優れた発泡成形体が得られやすい点で、上記(ii)又は(iii)の共凝析法が好ましく、(iii)の共凝析法がより好ましい。
【0094】
上記(i)乾式混合法及び(ii)共凝析法は、上述の本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体について説明した方法と同様の方法により行うことができる。
上記(iii)の共凝析法としては特に限定されないが、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)からなる粒子の重合上がりの水性分散液と、上記溶融加工性含フッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂(Q)からなる粒子の重合上がりの水性分散液とを混合した後、無機酸又はその金属塩等の凝析剤を作用させて共凝析することよりなる方法が好ましい。
【0095】
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と上記熱可塑性樹脂(Q)とが充分に混合され、均質な混合物を得やすい点で、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)からなる粒子の平均粒径と上記熱可塑性樹脂(Q)からなる粒子の平均粒径とは、互いにほぼ同じであることがより好ましい。
【0096】
上記成形材料が、上記発泡剤を含むものである場合、上記発泡剤は、上記各調製方法において、いずれの時点で添加してもよく、例えば、上述の(ii)又は(iii)の共凝析法を用いる場合、水性分散液に添加し、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)及び上記溶融加工性含フッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂(Q)と一緒に共凝析させてもよい。
【0097】
上記成形材料は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)及び上記熱可塑性樹脂(Q)に加え、成形加工性の向上、得られるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の機械的強度等の物性の向上等を目的として、その他公知の押出助剤等の添加剤を添加したものであってもよい。
上記押出助剤は、特に後述のペースト押出を行う場合、用いることが好ましく、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と上記熱可塑性樹脂(Q)との合計に対し、10〜25質量%の量で添加することが好ましい。
【0098】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、tanδで表される誘電正接が1.5×10−4以下であることが好ましい。上記誘電正接の好ましい上限は、0.8×10−4であり、より好ましい上限は、0.6×10−4である。
【0099】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、比誘電率(ε)が通常1.2〜1.8であるものである。伝送速度の点で、上記比誘電率の好ましい上限は1.9である。
【0100】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法であって、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、上記熱可塑性樹脂(Q)とを用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の融点以上の温度にて成形加工することよりなるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記成形加工は、通常、上述した成形材料を用いて行うことができる。
【0101】
上記成形材料を用いて成形加工する方法としては特に限定されず、目的とするポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の用途によるが、例えば、圧縮成形、押出圧延成形、押出被覆成形方式、ラッピングテープ方式、カレンダー圧延方式等の公知の方法を用いることができる。
なかでも、成形加工の容易さの点で、ペースト押出成形が好ましい。
上記成形材料をペースト押出成形により成形加工する場合、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)は未焼成のまま上記成形加工に供することが好ましい。
【0102】
上記成形材料を用いた成形加工において熱処理を行う場合、上記熱処理を行う温度は、使用する上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)、上記熱可塑性樹脂(Q)及び/又は発泡剤の種類により異なるが、上記熱可塑性樹脂(Q)の融点以上の温度であればよいが、得られるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の機械的強度の点で、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の融点以上の温度が好ましい。
【0103】
上記熱処理を行う温度のより好ましい下限は355℃、更に好ましい下限は360℃であり、特に好ましい下限は370℃であり、好ましい上限は400℃、より好ましい上限は390℃である。
【0104】
上記成形加工は、上記熱可塑性樹脂(Q)の融点以上の温度での熱処理において、上記熱可塑性樹脂(Q)が部分的に分解することにより生じた気泡を、溶融した上記熱可塑性樹脂(Q)がバリアの働きをして外部に逃しにくくする結果、残存した上記気泡が分布した成形体を得ることを可能にするものである。
上記成形材料が発泡剤を含むものである場合、上記熱処理により、上記発泡剤が分解して生じる気泡は、同様に、溶融した上記熱可塑性樹脂(Q)のバリア的作用により、得られるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体中に封じ込めることができる。
得られたポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、少なくとも上記熱可塑性樹脂(Q)の部分的分解により生じた気泡が微細で均一に分布したものであるので、安定した線径等の形状安定性と、安定したインピーダンスとを有し、更に、表面に荒れがないものである。
従来、樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂のみを用い、発泡剤により多孔発泡成形体を得ようとしても、生じた気泡が成形体の外部に逃げてしまい、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる多孔発泡成形体は、実質的に得られないか、又は、得られたとしても、気泡量が極めて少なく成形体表面に荒れを起したり、線径が一定しない等、形状安定性に劣るものであったと考えられる。
【0105】
上述した本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体、又は、上述した本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、比誘電率が低く、形状安定性に優れるので、高周波信号伝送用製品として好適に使用することができる。
上述した本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体、又は、上述した本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体を用いてなることを特徴とする高周波信号伝送用製品もまた、本発明の1つである。
【0106】
本発明の高周波信号伝送用製品は、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体を、通常、絶縁体として含むものであってもよい。
このような高周波信号伝送用製品としては、高周波信号の伝送に用いる製品であれば特に限定されず、例えば、(I)高周波回路の絶縁板、電気部品の端子板、接続部品の絶縁物、プリント配線基板等の成形板、(II)高周波用真空管のベース、アンテナカバー等の成形品、及び、(III)高周波伝送ケーブル、同軸フィーダー等の絶縁電線等が挙げられる。
【0107】
上記(I)成形板としては、良好な耐熱性及び電気特性が得られる点で、プリント配線基板が好ましい。
上記プリント配線基板としては特に限定されないが、例えば、携帯電話、各種コンピューター、通信機器等の電子回路のプリント配線基板等が挙げられる。
【0108】
上記(II)成形品としては、優れた耐侯性及び機械的強度が得られる点で、アンテナカバーが好ましい。
【0109】
上記(I)成形板及び(II)成形品に成形加工するための方法としては特に限定されないが、例えば、上述した各種高周波信号伝送用製品に関する記載で挙げた方法等が挙げられる。
【0110】
上記(III)絶縁電線としては、良好な耐熱性及び電気特性が得られる点で、高周波伝送ケーブルが好ましく、上記高周波伝送ケーブルとしては、同軸ケーブル、LANケーブル等が好ましい。
上記同軸ケーブルの形状は、上述の各種高周波信号伝送用製品に関し説明したものと同様である。
【0111】
上記高周波伝送ケーブルの製造方法としては、例えば、上述の公知の方法が挙げられる。
本発明において、上記高周波伝送ケーブルは、本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体を絶縁被覆層として有するものであってもよい。
上記絶縁被覆層に成形加工する方法としては特に限定されないが、例えば、押出被覆成形方式、ラッピングテープ方式、カレンダー圧延方式等が挙げられる。上記成形加工の方法としては押出被覆成形方式が好ましく、上記押出被覆成形方式としてはペースト押出成形が好ましい。
【0112】
上記ペースト押出成形の方法としては、例えば、本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体に代えて上述の成形材料を用いること以外は、上述したものと同様にすることからなる方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0113】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体及び本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、上述の構成よりなることから、比誘電率及び誘電正接が低く、線径等の形状安定性と安定したインピーダンスとを示し得るものである。
本発明の高周波信号伝送用製品は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用い、伝送速度を高速化したものである。
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0114】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0115】
実施例において、以下の方法を用いて得られた成形品を評価した。
(1)外径:得られたケーブルを外周方向に垂直に切断した切断面を測定した。
(2)溶融粘度:動的粘弾性測定装置(商品名:PDS−II、レオメトリクス社製)を用いて、測定対象樹脂の融点よりも30℃高い温度における値を測定した。
(3)融点温度:示差走査熱量計(RDC220;セイコー電子社製)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で吸熱ピークを測定することにより求めた。
(4)比誘電率:空洞共振器法により、ネットワークアナライザー(HP8510C;ヒューレットパッカード社製)を用いて、共振周波数及びQu値(電界強度)の変化を20〜25℃の温度にて測定し、12GHzにおける値を算出した。
(5)比重:ASTM D−792に準拠した水置換法により測定した。
【実施例1】
【0116】
PTFE樹脂モールディングパウダー(TFE単独重合体、SSG2.155、一次最大吸熱ピーク温度340℃)1kgをステンレス製トレーに厚さ20mmに広げて、380℃にて、5時間、電気炉を用いて焼成し、PTFE樹脂のかたまりを得た。
得られたPTFE樹脂のかたまりを、粉砕機を使って平均粒径50μmまで粉砕して、粉砕粉(以後、ゲル化粉と称する。)を得た。
得られたゲル化粉(二次最大吸熱ピーク温度327℃)を160g、PTFE樹脂ファインパウダー(SSG2.160、一次最大吸熱ピーク温度339℃、)640g、及び、押出助剤(商品名:アイソパーG、エクソンシェル社製)136gを5Lのポリエチレンビンに入れて、10分間回転させることにより混合する。ポリエチレンビンに入れたまま、25℃にて12時間熟成を行い、PTFE樹脂ファインパウダー及びゲル化粉からなる混合粉体(PTFE樹脂ファインパウダー:ゲル化粉=77:23、質量比)800gを得た。
【0117】
得られた混合粉体を予備成形機にて、3MPaの圧力下で15分間予備成形したのち、ペースト押出機(シリンダ径38mm、マンドレル径16mm、ジェニングス社製)を用い、芯線としてSPCW(銀メッキ銅被覆鋼線)のAWG19(直径0.91mm)、円筒金型として直径3.18mmのものを使用して、巻取り速度3m/分にて被覆を行い、押出し直後の外径が3.31mmである絶縁被覆材を成形した。
続いて、130℃及び190℃に設定した乾燥炉を用いて約1分間、得られた絶縁被覆材の乾燥を行ったのち、420℃の温度にて、1分間、恒温槽にて焼成を行い、同軸ケーブル用被覆線を得た。
【0118】
得られた同軸ケーブル用被覆線の評価を行ったところ、外径2.95mm、比重1.662、比誘電率1.6であった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体及び本発明のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、上述の構成よりなることから、比誘電率及び誘電正接が低く、線径等の形状安定性と安定したインピーダンスとを示し得るものである。
本発明の高周波信号伝送用製品は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用い、伝送速度を高速化したものである。
本発明の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、上記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の材料として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が0.9〜2.0であり、
成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体。
【請求項2】
示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が333〜347℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が324〜330℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とからなる
ことを特徴とする混合ポリテトラフルオロエチレン粉体。
【請求項3】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)からなる粒子が水性媒体に分散している水性分散液と、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)からなる粉末とを共凝析することにより得られたものである請求項2記載の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体。
【請求項4】
請求項2又は3記載の混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて得られるポリテトラフルオロエチレン多孔成形体であって、
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔成形体は、比重が0.9〜2.0であり、
成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体。
【請求項5】
混合ポリテトラフルオロエチレン粉体を用いて成形加工することよりなる請求項1又は4記載のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の製造方法であって、
前記混合ポリテトラフルオロエチレン粉体は、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が333〜347℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)と、示差走査熱量計による結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度が324〜330℃、標準比重が2.12〜2.20であるポリテトラフルオロエチレン樹脂(B)とからなるものであり、
前記成形加工は、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂(A)の融点以上の温度にて焼成する工程を含む
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔成形体の製造方法。
【請求項6】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、350℃における溶融粘度が5000000Pa・s以下である熱可塑性樹脂(Q)とからなるポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体であって、
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体は、比重が0.8〜1.9であり、
成形体内部に形成されている空隙のアスペクト比が1以上、3以下である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体。
【請求項7】
熱可塑性樹脂(Q)は、含フッ素樹脂又はポリオレフィン樹脂である
請求項6記載のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体。
【請求項8】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、熱可塑性樹脂(Q)と、更に、発泡剤とからなる成形材料を用いて得られる請求項6又は7記載のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体。
【請求項9】
請求項6、7又は8記載のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法であって、
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)と、350℃における溶融粘度が5000000Pa・s以下である熱可塑性樹脂(Q)とを用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂(P)の融点以上の温度にて成形加工することよりなる
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体の製造方法。
【請求項10】
請求項1若しくは4記載のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体、又は、請求項6、7若しくは8記載のポリテトラフルオロエチレン多孔発泡成形体を用いてなる
ことを特徴とする高周波信号伝送用製品。
【請求項11】
高周波伝送ケーブルである請求項10記載の高周波信号伝送用製品。
【請求項12】
プリント配線基板である請求項10記載の高周波信号伝送用製品。
【請求項13】
アンテナカバーである請求項10記載の高周波信号伝送用製品。
【請求項14】
請求項1、4又は5記載のポリテトラフルオロエチレン多孔成形体を用いてなる
ことを特徴とするフィルター。

【国際公開番号】WO2005/019320
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513353(P2005−513353)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012212
【国際出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】