説明

混合ミキサー及び混合設備

【課題】簡単な構成により流体の流入圧力を高めることなく、大きな塊の状態から順次より微細な塊の状態にまで迅速に混合できる。
【解決手段】2の透孔11a等が開口する透孔プレート11等と、十文字を形成する2のスリット21a、21b等が貫通する溝プレート21等とを交互に積層する。混合液は、2の透孔11a等から、2のスリット21a、21b等の一方の両端に流入して、このスリットの中央部で衝突し、十文字に交差する他方のスリットの両端に向かい、それぞれ次の透孔プレート12等の2の透孔12a等に流入する。2のスリット21a、21b等の流路の断面積を、溝プレート21等の後段側に向かって順次小さくして流速を順次増加させる。これにより大きな塊の混合状態から迅速に微細な塊の混合状態にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気と液体とを混合するミキサー及び設備に関し、特に空気と液体とを相互に衝突させて混合する混合ミキサー及び混合設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から気体と液体との混合、あるいは互いに異なる液体同士を混合するために、各種の混合手段が提案されている。代表的な混合手段としては、容器内においてインペラ等を回転させて混合する攪拌器があるが、流路内にオリフィスや邪魔板等を設けて乱流や衝突流を発生させ、これにより気体と液体とを、あるいは液体と液体とを混合するスタテック・ミキサーがある。このスタテック・ミキサーは、可動部を有していないため、磨耗粉等の異物の混入を防止し、混合を連続的に行なうことができる。
【0003】
このスタテック・ミキサーの1タイプとして、気体と液体とを、あるいは相互に異なる液体を、より均一に混合するために、気体と液体との混合液や液体同士の混合液を、ポンプ等によって高圧に加圧し、2の小さな透孔に通して高速流を生じさせ、この2の高速流を相互に衝突させて混合する手段がある(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
すなわち特許文献1に記載の乳化装置は、2の透孔がそれぞれ軸方向に開口する2枚のライナーを重ね合わせたものであって、この2枚のライナーの重ね合わせ面には、この2の透孔を結ぶ溝が、それぞれ形成されている。なお2枚のライナーは、溝が互いに直交するように重ね合わせられる。
【0005】
前側のライナーの2の透孔に、液体と液体とを予混合した高圧の混合液を導入すると、この2の透孔から流出した混合液は、後側のライナーの重ね合わせ面に衝突し、前側のライナーに形成した溝に沿って直角に曲げられ、次いでこの溝の中央部で相互に衝突する。この衝突した混合液は、この溝の中央部において直交する後側のライナーに形成した溝に沿って直角に曲げられ、この溝の両端部に衝突し、さらにこの溝の両端部で直角に曲げられて、この溝の両端部に開口する透孔に流入する。
【0006】
すなわち液体と液体とを予混合した混合液は、重ね合わせた2枚のライナーを通過するときに、溝壁や相互に衝突することによって均一に混合され、微細に乳化した液が得られるとされている。
【0007】
なお引用文献1に記載の乳化装置では、その添付図1に示してあるように、2枚のライナーに導入する前に、2の流体を、それぞれ供給ノズル部材2、3から、これと直交する溝5a、6aに噴出させ、この2の溝内の流体を、互いに衝突させて予混合している。また予混合した流体は、1400Kg/cm(約1400MPa)という極めて高い圧力に加圧されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2788010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで引用文献1に記載の乳化装置では、より均一に、かつ微細に混合させるためには、ライナーに形成した透孔や溝における流速を大きくして、衝突力を増大することが有効となる。ここで透孔や溝における流速を大きくするためには、透孔の径や溝の流路面積を小さくするか、流体の流入圧力を高くして流量を増すかの、いずれかが必要となる。
【0010】
しかるに透孔や溝における流速を大きくするために、透孔の径や溝の流路面積を小さくする場合には、次の問題が生じる。すなわち気体及び液体、あるいは互いに異なる液体からなる2の流体を、連続的に混合する場合には、混合の最初の段階では、相互の流体が大きな塊の状態で混合し、混合が進むにしたがって、次第に小さな塊に分解されつつ、より均一に混合していく。したがって最初の段階から、透孔や溝の流路面積を小さくすると、2の流体のいずれかの一方の流体の大きな塊が、小面積の透孔や溝内を占めつつ通過して、より小さな塊に分解された混合状態のへの進行が困難になる場合が生じる。
【0011】
このため最初の段階から、透孔の径や溝の流路面積を小さくする場合には、その前に、予め2の流体を十分小さな塊に分解した状態にまで混合しておく予混合手段が、別途必要となり、混合装置全体のサイズが大きくなると共に、構成部品の種類も増加する。
【0012】
さらに予混合手段によって、十分小さな塊に分解した混合状態にするためには、予混合手段自体において、混合流体の流速を増加させる必要がある。しかるに予混合手段は、混合を最初に行なうものであるため、この予混合手段における流路面積を小さくすると、この2の流体のいずれかの一方の流体の大きな塊だけが、小面積の流路内を通過する場合が生じて、十分小さな塊への分解が困難になるという、上述したものと同様の問題が生じる。したがって予混合手段及び、その後流における混合手段において、混合流体の流速を増加するためには、流入圧力を高圧に加圧する必要がある。
【0013】
しかるに流入圧力を高圧に加圧して流速を増大するためには、高圧のポンプが必要になると共に、管路や継手部分等を高圧に耐える構造にする必要がある。このため製造コスト及び管理コストが嵩むだけでなく、高度の安全性の確保が必要となる。
【0014】
そこで本発明の目的は、簡単な構成により流体の圧力を過度に高めることなく、大きな塊の状態から順次、より微細な塊の状態にまで、迅速に混合できる混合ミキサー及び混合設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく、本発明による混合ミキサーは、2の透孔を有する透孔プレートと、十文字に開口するスリットを有する溝プレートとを、交互に複数段積層したものであって、このスリットにおける流路の断面積を、この積層した最初の段から最後の段に向けて、順次小さくしてあることを特徴とする。すなわちこの混合ミキサーは、透孔プレートと溝プレートとを交互に複数段積層した積層構造を有し、この透孔プレートには、軸方向に貫通する2の透孔が開口し、この溝プレートには、軸方向に貫通すると共に、相互に直交して十文字を形成する2のスリットが開口している。
【0016】
上記溝プレートを挟む前側の透孔プレートと後側の透孔プレートとは、それぞれの上記2の透孔を結ぶ直線が相互に直交するよう積層されており、この前側の透孔プレートの2の透孔は、それぞれこの溝プレートの2のスリットの一方の両端に連通している。この溝プレートの2のスリットの他方の両端は、それぞれこの後側の透孔プレートの2の透孔に連通している。上記積層構造の最初の段と最後の段とは、それぞれ上記透孔プレートで構成されており、上記溝プレートの2のスリットにおいて、これらのスリットを長手方向から見た断面の断面積は、上記積層構造の最初の段から最後の段に向けて、それぞれ順次小さくしてある。上記最初の段を構成する透孔プレートの2の透孔には、それぞれ異なる流体または異なる流体の混合液のいずれかが流入する。
【0017】
上記最後の段を構成する透孔プレートの後側面には、円筒状の内部空間を有する混合チャンバを連設することが望ましい。すなわちこの混合ミキサーは、上述した最後の段を構成する透孔プレートの後側面に、円筒状の内部空間を有する混合チャンバが連設してあり、この円筒状の内部空間は、前側端において開口すると共に、後側端には、外部に連通する貫通孔が形成してある。上記最後の段を構成する透孔プレートの2の透孔の軸方向は、この透孔プレートの前側面を、この前側面に直交する方向から見た状態において、この2の透孔が開口する開口中心を結ぶ直線に直交する方向であって、相互に逆方向に向かって傾斜している。そして上記最後の段を構成する透孔プレートの2の透孔から、上記混合チャンバの円筒状の内部空間に、混合液がスパイラル状に噴出する。上記混合チャンバに、液体と気体との混合流体を流入させる場合には、この混合チャンバの内部空間の圧力は、大気圧より高くすることが望ましい。
【0018】
上述した混合ミキサーによって、気体と液体とを混合する混合設備を構成することもできる。すなわちこの混合設備は、上記液体を圧送するポンプと、このポンプから圧送された液体に、この気体を合流させる合流装置と、この合流装置から流出する気液合流流体が流入する上記混合ミキサーと、この混合ミキサーから流出した気液混合液が流入する反応槽と、この反応槽に流入した気液混合液を上記ポンプに還流する還流経路とを備えている。そして上記合流装置から流出する気液合流流体は、上記混合ミキサーの最初の段を構成する透孔プレートの2の透孔に、それぞれ流入する。
【発明の効果】
【0019】
溝プレートの十文字を形成するスリットの流路面積を、最初の段から最後の段に向けて順次小さくすることによって、構成を簡単にすると共に、より微細で均一な塊からなる混合液を、低圧力でかつ迅速に得ることができる。すなわち最初の段においては、大きな塊の状態の混合であるため、スリットの断面積を大きくすることにより、いずれかの1の流体だけの大きな塊が、スリットを占領して通過することを防止できる。また段を通過する毎に、順次小さな塊に分解されていくため、順次スリットの断面積も小さくすることができる。このため、その分スリットを通過する流速を大きくすることができるため、衝突力が順次増大し、より微細な塊の混合液の状態に、迅速に進めることができる。
【0020】
例えば混合比が大きく異なる場合には、最初の段付近においては、混合比の大きい一方の流体だけが、十文字のスリットを占領しつつ通過する傾向となり、その段における混合が十分達成できなくなる。そこで最初の段付近においては、スリットの断面積を十分大きくしておけば、一方の流体だけが、十文字のスリットを占領しつつ通過することを回避できるため、その段における混合を促進することができる。また後段に進むほど、スリットの断面積を小さくすることができるため、スリットを通過する流速を次第に大きくすることが可能となる。このため最初の段への流入圧力を、過度に増加させることなく、より微細で均一な塊からなる混合液を実現することが可能となる。
【0021】
各段において透孔の面積よりスリットの断面積を小さくすれば、各段における最大流速をスリットの断面積で決めることができる。この場合スリットは、溝プレートを貫通する細長い開口孔であるため、目標の断面積になるように、スリットを高精度かつ容易に形成することができる。
【0022】
また透孔プレートと溝プレートとを、交互に複数段積層するように構成することによって、混合する流体の粘度等の特性、混合比、あるいは目標とする微細な塊のサイズ等に応じて、透孔プレートと溝プレートとの最適な積層段数を、容易に設定することができる。また複数段積層したものをボルト等によって固定することも可能となるため、組み立てと分解とが容易となる。このため透孔プレートと溝プレートとの、点検、修理、及び交換が、極めて容易になる。
【0023】
最終段の透孔プレートの後端に混合チャンバを連接して、この透孔プレートから混合チャンバ内にスパイラル状に混合液を噴出させることによって、より均一で微細な塊の混合液を得ることができる。さらに気体と液体とを混合させる場合には、混合チャンバの内部空間の圧力を高くすることによって、液体への気体の許容溶解量が高い状態における滞留時間が長くなり、これによって、より多量の気体を液体に溶解させることができる。また混合チャンバ内にスパイラル状に気液混合流体を噴出させることによって、この混合チャンバの内部空間において、気体を液体に、より均一に溶解させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】混合ミキサーの横断面図である。
【図2】交互に積層する各透孔プレート及び各溝プレートの正面図である。
【図3】交互に積層する透孔プレート及び溝プレートの斜視図である。
【図4】交互に積層した透孔プレート及び溝プレートの拡大断面図である。
【図5】最終段の透孔プレートの拡大正面図及び側面図である。
【図6】混合設備の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図5を参照しつつ、本発明による混合ミキサーの構成を説明する。さて図1に示すように、本発明による混合ミキサーは、透孔プレート1と溝プレート2とを、交互に複数段積層した積層構造3を有し、この積層構造は、図1において左側から順に、第1の透孔プレート11、第1の溝プレート21、第2の透孔プレート12、第2の溝プレート22、第3の透孔プレート13、第3の溝プレート23、及び第4の透孔プレート14を備えている。また図1に示すように、積層構造3の最終段である第4の透孔プレート14の後側面には、円筒状の内部空間41を有する混合チャンバ4が連設してある。
【0026】
なお透孔プレート1、溝プレート2、及び混合チャンバ4は、2本の位置決めピン5、5によって位置決めされ、前後を前フランジ6と後フランジ7とで挟持されている。また前フランジ6と後フランジ7とは、4本の貫通ボルト8によって、透孔プレート1と溝プレート2と混合チャンバ4とを、軸方向に固定している。
【0027】
図2に、上述した積層構造3を分解して前側から順に並べた、第1の透孔プレート11〜第4の透孔プレート14、及び第1の溝プレート21〜第3の溝プレート23と、この積層構造の後端に連接する混合チャンバ4とを示す。第1の透孔プレート11〜第4の透孔プレート14には、それぞれ軸方向に貫通する2の透孔11a〜14aが開口し、第1の溝プレート21〜第3の溝プレート23には、それぞれ軸方向に貫通すると共に、相互に直交して十文字を形成する2のスリット21a〜23a、21b〜23bが開口している。また第1の透孔プレート11〜第4の透孔プレート14、第1の溝プレート21〜第3の溝プレート23、及び混合チャンバ4の前端には、2本の位置決めピン5、5が嵌合する位置決め穴11c〜14c、21c〜23c、42が設けてある。
【0028】
さて図3に示すように、第1の溝プレート21を前後から挟む、第1の透孔プレート11と第2の透孔プレート12とは、この第1の透孔プレートに設けた2の透孔11a、11aを結ぶ直線と、この第2の透孔プレートに設けた2の透孔12a、12aを結ぶ直線とが、相互に直交するよう積層されている。
【0029】
図4に、上述した第1の透孔プレート11、第1の溝プレート21、及び第2の透孔プレート12を積層したときの断面を示す。すなわち第1の透孔プレート11の2の透孔11a、11aは、それぞれ第1の溝プレート21の2のスリットのうち、一方のスリット21bの両端に連通し、この第1の溝プレートの他方のスリット21aの両端は、それぞれ第2の透孔プレート12の2の透孔12a、12aに連通している。なお第2の透孔プレート12、第2の溝プレート22、及び第3の透孔プレート13も、同様の配置に積層してある。また第3の透孔プレート13、第3の溝プレート23、及び第4の透孔プレート14も、同様の配置に積層してある。
【0030】
図5の上図に、積層構造3の最後の段を構成する第4の透孔プレート14を、この透孔プレートの前側面を、この前側面に直交する方向から見た形状を示す。第4の透孔プレート14に設けた2の透孔14a、14aの軸方向は、この2の透孔が開口する開口中心を結ぶ直線に直交する方向、すなわち図4の上図において矢印線で示すように、上下方向に、相互に逆方向に向かって傾斜している。なお図5の下図に、図5の上図において左側に位置する透孔14aの中心線を含む面で切断したときの断面A−Aを示す。この図5の下図からも明らかなように、第4の透孔プレート14に設けた2の透孔14a、14aの軸方向は、相互に逆方向に向かって傾斜している。
【0031】
さて図1に示すように、第4の透孔プレート14の後側面に連設した混合チャンバ4は、円筒状の内部空間41を有し、この円筒状の内部空間は、後側端に向かって内径が順次小さくなるように、例えば横断面が半楕円形状となっている。そして内部空間41の後側端には、外部に連通する貫通孔42が形成してある。また円筒状の内部空間41の前側端は、開口しており、その直径は、この開口が第4の透孔プレート14に設けた2の透孔14a、14aを塞がない寸法にしてある。
【0032】
積層構造3の前側端に当接する前フランジ6の中央部には、予混合した流体が流入する流入管62が連設してあり、この流入管から流入した流体は、この前フランジの後面に形成した溝61を経由して、この溝の両端部から、それぞれ第1の透孔プレート11の2の透孔11a、11aに流入する。また積層構造3の後側端に当接する後フランジ7の中央部には、流出口71が開口しており、この流出口には、微細な塊の混合状態になった流体が、混合チャンバ4の後側端に開口する貫通孔42を経由して流出する流出管72が連設してある。
【0033】
第1の溝プレート21〜第3の溝プレート23に形成した、相互に十文字に交差する2のスリット21a、21b〜23a、23bは、これらのスリットを長手方向から見た断面、例えば図4において矩形で示すスリット21aの断面の断面積は、この第1の溝プレート、第2の溝プレート、及び第3の溝プレートの順に、順次小さく形成されている。このため前後を透孔プレートで挟持されて、混合液の流路となる2のスリットの流路面積は、それぞれ第1の溝プレート21、第2の溝プレート22、及び第3の溝プレート23の順に順次小さくなり、流速が順次大きくなる。
【0034】
なお上述した構成部品は、全てステンレス製であるが、混合液が油等であって錆にくい場合には、鋼材や銅合金等を使用してもよい。また透孔プレート11等の透孔11a等は、ドリルによって容易に加工することができる。また溝プレート21等のスリット21a、21b等は、ドリル加工、ミーリング加工、レーザー加工、あるいは放電加工等によって、容易に正確な寸法形状に加工することができる。
【0035】
次に図1〜図5を参照しつつ、上述した混合ミキサーの作用を説明する。すなわち図1において、例えば液体である水に、エジェクタ等によって、気体である空気を混入した予混合液を、ポンプ等で加圧し、流入管62と前側フランジ6内に形成した溝61とを経由して、第1の透孔プレート11に設けた2の透孔11a、11aに、それぞれ流入させる。
【0036】
第1の透孔プレート11の2の透孔11a、11aに、それぞれ流入した予混合液は、図3及び図4に示すように、第1の溝プレート21に形成したスリット21b内に、その両端からそれぞれ流入し、第2の透孔プレート12の前側面に衝突して直角に曲がり、このスリットの中央部に向かう。なお第1の溝プレート21に形成したスリット21a、21bの流路の断面積は、第1の透孔プレート11の2の透孔11aの面積より小さくしてある。このため混合液の流速は、スリット21bを通過するときに増大する。
【0037】
スリット21b内に流入した予混合液は、その両端から中央部に向かい、このスリットの中央部で相互に衝突して、この中央部で十文字に交差するスリット21a内に、方向を直角に変えつつ流入する。そしてスリット21aに流入した混合液は、その両端から、第2の透孔プレート12の2の透孔12a、12aに、それぞれ方向を直角に変えつつ流入する。このように混合液は、第1の溝プレート21のスリット21a、21bを通過するときに、流速を増加しつつ、方向を直角に変え、かつ相互に衝突することによって、混入した空気の塊が分解され、より微細な空気の塊が、より均一に混合した状態になる。
【0038】
第2の透孔プレート12の2の透孔12a、12aに流入した混合液は、順次同様な過程によって、第2の溝プレート22のスリット22a、22b、第3の透孔プレート13の透孔13a、13a、第3の溝プレート23のスリット23b、23a、及び第4の透孔プレート14の透孔14a、14aを通過する。上述したように、第2の溝プレート22のスリット22a、22b、及び第3の溝プレート23のスリット23a、23bは、第1の溝プレート21のスリット21a、21bより、順次流路の断面積が小さくしてあるため、これらのスリットを通過する混合液の流速が順次増大し、空気の塊がより微細になり、より均一に混合した状態になる。
【0039】
さて第4の透孔プレート14の透孔14a、14aの軸方向は、図5において説明したように、互いに逆方向に向かって傾斜しているため、混合液は、混合チャンバ4の円筒状の内部空間41内に、スパイラル状に流出する。したがって混合液は、円筒状の内部空間41内において、渦巻き状に攪拌され、微細な空気の塊が、より均一に混合した状態となると共に、この内部空間内において、空気の液体への溶解が促進される。そして円筒状の内部空間41内に流入した混合液は、この内部空間の後側端に開口する貫通孔42、後側フランジ7に設けた流出口71、及び流出管72を経由して外部に流出する。
【0040】
ところで流出管72から流出する気液混合流体の圧力は、通常大気圧に開放される。しかるに貫通孔42の直径を、小さく形成すれば、内部空間41内の圧力は、この貫通孔の外側に連通する流出管72内の圧力、すなわち大気圧より高く保持できる。ここで内部空間41内の圧力を高くすれば、液体に対する空気の許容溶解量は、大気圧のときより増大する。
【0041】
なお第1の透孔プレート11の2の透孔11a、11a等、第1の溝プレート21の2のスリット21a、21b等の断面積は、混合する流体の特性や混合比、あるいは目標とする混合液の最終特性等に応じて、それぞれ適正な値に設定する。
【0042】
図6に、上述した気体を液体に混合して溶解させる混合ミキサーを備えた、混合設備の1例を示す。すなわちこの混合設備は、有害物質であるチオ硫酸アンモニウムと亜硫酸アンモニウムとを含む汚水に、空気を混合して溶解させ、このチオ硫酸アンモニウムと亜硫酸アンモニウムとを、無毒の硫酸アンモニウムに化学変化させる設備であって、より多量の空気を汚水に溶解させることによって、無毒化までの時間を短縮するものである。
【0043】
すなわちこの混合設備は、有害物質を含む水または混合液を圧送する電動ポンプAと、この電動ポンプから圧送された水または混合液に、この空気を合流させるエジェクタBと、このエジェクタから流出する気液合流流体が流入する混合ミキサーCと、この混合ミキサーから流出した気液混合液が流入する反応槽Dと、この反応槽に流入した気液混合液を電動ポンプAに還流する還流経路Eとを備えている。なお電動ポンプAとエジェクタBとの間の経路には、順に水または混合液の流量を調整する流量調整バルブF、及び水または混合液の流量を計測する流量計G、及びこのエジェクタの流入圧力を計測する圧力計Hが設けてある。またエジェクタBに空気を圧入する経路には、順に空気圧縮機I、減圧バルブJ、空気の流量を計測する流量計K、及び空気の流量を調整する流量調整バルブLが設けてある。
【0044】
この混合設備において、反応槽D内に収納された有害物質を含む水または気液混合液は、電動ポンプAによって、エジェクタBに圧送される。また空気圧縮機Iによって、外気がエジェクタBに圧送され、このエジェクタにおいて、水または気液混合液に空気が合流する。エジェクタBから流出した気液合流液は、上述した混合ミキサーCに流入し、空気が微細な塊に分解されると共に、大気圧より高い混合チャンバの内部空間を、減速しつつ、ある程度時間を掛けて通過する。したがって反応槽Dから汲み揚げられた汚水は、混合チャンバの内部空間において、より多量の空気が溶解した状態の下で、ある程度時間を掛けて通過する間に、ほぼ無毒化されて、反応槽D内に還流する。このため反応槽D内の汚水を、短時間に無毒化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
簡単な構成により流体の圧力を高めることなく、大きな塊の状態から順次、より微細な塊の状態にまで迅速に混合できるため、気体と液体、または異なる液体同士の混合に関する産業に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 透孔プレート
11〜14 第1の透孔プレート〜第4の透孔プレート
11a〜14a 透孔
11c〜14c 位置決め穴
2 溝プレート
21〜23 第1の溝プレート〜第3の溝プレート
21a〜23a スリット
21b〜23b スリット
21c〜23c 位置決め穴
3 積層構造
4 混合チャンバ
41 円筒状の内部空間
42 貫通孔
5 位置決めピン
6 前フランジ
7 後フランジ
A 電動ポンプ(ポンプ)
B エジェク
C 混合ミキサー
D 反応槽
E 還流経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透孔プレートと溝プレートとを交互に複数段積層した積層構造を有し、
上記透孔プレートには、軸方向に貫通する2の透孔が開口し、
上記溝プレートには、軸方向に貫通すると共に、相互に直交して十文字を
形成する2のスリットが開口し、
上記溝プレートを挟む前側の透孔プレートと後側の透孔プレートとは、それぞれの上記2の透孔を結ぶ直線が相互に直交するよう積層されており、
上記前側の透孔プレートの2の透孔は、それぞれ上記溝プレートの2のスリットの一方の両端に連通し、
上記溝プレートの2のスリットの他方の両端は、それぞれ上記後側の透孔プレートの2の透孔に連通しており、
上記積層構造の最初の段と最後の段とは、それぞれ上記透孔プレートで構成され、
上記溝プレートの2のスリットにおいて、これらのスリットを長手方向から見た断面の断面積は、上記積層構造の最初の段から最後の段に向けて、それぞれ順次小さくしてあり、
上記最初の段を構成する透孔プレートの2の透孔には、それぞれ異なる流体または異なる流体の混合液のいずれかが流入する
ことを特徴とする混合ミキサー。
【請求項2】
請求項1において、上記最後の段を構成する透孔プレートの後側面には、円筒状の内部空間を有する混合チャンバが連設してあり、
上記円筒状の内部空間は、前側端において開口すると共に、後側端には、外部に連通する貫通孔が形成してあり、
上記最後の段を構成する透孔プレートの2の透孔の軸方向は、この透孔プレートの前側面を、この前側面に直交する方向から見た状態において、この2の透孔が開口する開口中心を結ぶ直線に直交する方向であって、相互に逆方向に向かって傾斜しており、
上記最後の段を構成する透孔プレートの2の透孔から、上記混合チャンバの円筒状の内部空間に、混合液がスパイラル状に噴出する
ことを特徴とする混合ミキサー。
【請求項3】
請求項2において、上記混合チャンバには、液体と気体との混合流体が流入し、
上記混合チャンバの内部空間の圧力は、大気圧より高くしてある
ことを特徴とする混合ミキサー。
【請求項4】
請求項3に記載した混合ミキサーによって、気体と液体とを混合する混合設備であって、
上記液体を圧送するポンプと、このポンプから圧送された液体に、この気体を合流させる合流装置と、この合流装置から流出する気液合流流体が流入する上記混合ミキサーと、この混合ミキサーから流出した気液混合液が流入する反応槽と、この反応槽に流入した気液混合液を上記ポンプに還流する還流経路とを備え、
上記合流装置から流出する気液合流流体は、上記混合ミキサーの最初の段を構成する透孔プレートの2の透孔に、それぞれ流入する
ことを特徴とする混合設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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