説明

混合容器

【課題】蓋を取り外す際に、ガス以外の内容物の漏出が抑制される混合容器の提供。
【解決手段】本発明の混合容器1は、外周面に容器側螺子部25を含む環状壁口部21と、環状壁口部21と接続する収容部201を有する容器2と、天井部331、及び天井部331の周縁より下方へ向けて延設され先側34の外径が開口部22よりは小さくかつ環状壁口部21の奥側の内径以上に設定され先側34から環状壁口部21内に嵌められるスカート壁部32、を含む中央蓋部31と、内周面に容器側螺子部25と螺合させる蓋側螺子部35を含み環状壁口部21の上端面及び外周面を覆う中央蓋部31の周縁より延設された外側スカート蓋部33と、を有する蓋3とを備える。蓋3が容器2に取り付けられると、スカート壁部32の先側が環状壁口部21の内周面と密着して、容器2の内側と中央蓋部31の内側との間に主空間4が形成され、かつ容器2の内側と中央蓋部31の外側との間に副空間5が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合容器に関し、特に発泡性毛髪処理剤等の発泡性組成物の混合に好適な混合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染色(染毛)又は脱色等に利用される毛髪処理剤として、使用される直前に原料を混ぜ合わせて調合されるものがある。この種の毛髪処理剤の調合には、
通常、原料を混合し易くかつ内容物を取り出し易い等の理由により、混合容器が使用される。この種の混合容器は、一般的に、原料等を収容する容器と、その容器を密封するために容器の口元に被せられる蓋からなる。
【0003】
前記混合容器を利用して、例えば、発泡性(泡沫状)毛髪処理剤を調合する場合、以下の工程が行われる。先ず、液状等の原料をそれぞれ口から容器内へ投入する。次いで、その原料を投入した容器に蓋を取り付けて固定し、容器の口を塞いで密封する。その後、蓋を容器に取り付けたままの状態で、混合容器を手などで振って揺らし、原料を混ぜ合わせる。混ぜ終えたら、蓋を容器から取り外し、内容物(混合物)を容器から取り出す。
【0004】
この種の混合容器には、混合時に内容物を漏出させないための密封性(密封構造)が要求されている。
【0005】
ところで、従来、発泡性組成物の保存容器として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。この容器では、容器の口(瓶口)の内側(内縁)と、その外側(外縁)とが、蓋に備えられた2つのリング状弾性部材(シールド手段)によって弾性締め付けされている。このような構造によって保存容器内の密封性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3058167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記混合容器で、発泡性毛髪処理剤等の発泡性組成物を混合した場合、内容物からガスが発生して混合容器内の圧力が高まり、蓋を容器から取り外した際(開封時)に、蓋と容器との隙間からガス及びその他の内容物が激しく吹き出して飛び散ることがある。また、その隙間から内容物が垂れ落ちることもある。そのため、この種の混合容器には、混合時の密封性と共に、開封時にガス以外の内容物の漏出、特に激しい内容物の飛び散りを抑制することが求められている。
【0008】
特許文献1に示される従来の保存容器等の構成(機構)を、混合容器に採用しても、保存時の密封性(気密性)を確保することはできても、開封時のガス以外の内容物の漏出を効果的に防止することはできず、問題であった。
【0009】
本発明の目的は、蓋を取り外す際に、ガス以外の内容物の漏出が抑制される混合容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る混合容器は、以下の通りである。
<1> 開口部に向かって内径が大きくなり外周面に容器側螺子部を含む環状壁口部と、該環状壁口部と接続し内容物を収容する収容部とを有する容器と、
天井部、及び該天井部の周縁より下方へ向けて延設され先側の外径が前記開口部よりは小さくかつ前記環状壁口部の奥側の内径以上に設定され前記先側から前記環状壁口部内に嵌められるスカート壁部、を含む中央蓋部と、内周面に前記容器側螺子部と螺合させる蓋側螺子部を含み前記環状壁口部の上端面及び外周面が覆われるように前記中央蓋部の周縁より延設された外側スカート蓋部と、を有する蓋と、を備え、
前記蓋が前記容器に螺着され取り付けられると、前記スカート壁部の先側が前記環状壁口部の内周面と密着して、前記容器の内側と前記中央蓋部の内側との間に主空間が形成され、かつ前記容器の内側と前記中央蓋部の外側との間に副空間が形成される、ことを特徴とする混合容器。
【0011】
<2> 中央蓋部のスカート壁部の先側が、外側に湾曲し、拡径している前記<1>に記載の混合容器。
【0012】
<3> 中央蓋部のスカート壁部がその外周面に、蓋が容器に螺着され取り付けられた時に環状壁口部の内周面と密着して副空間を覆う根元側接触部を有する前記<1>又は<2>に記載の混合容器。
【0013】
<4> 環状壁口部が、内径がスカート壁部の先側の外径以下である小径区域部と、該小径区域部と隣接しスカート壁部の先側の外径よりも大きい大径区域部とを有し、小径区域部と大径区域部との間に段差が形成される前記<1>〜<3>の何れか1つに記載の混合容器。
【0014】
<5> 小径区域部が、蓋が容器に螺着され取り付けられた時に最も下降したスカート壁部の先側が環状壁口部の内周面と密着している個所、よりも上側に、蓋が容器から取り外される時に主空間と副空間とを連通させる溝を含む前記<4>に記載の混合容器。
【0015】
<6> 内容物が発泡性である前記<1>〜<5>の何れか1つに記載の混合容器。
【0016】
<7> 発泡性の内容物が、毛髪処理剤である前記<6>に記載の混合容器。
【0017】
<8> 大径区域部の内径が、略均一である前記<4>〜<7>の何れか1つに記載の混合容器。
【0018】
<9> 収容部が、底部と該底部の周縁より立設された筒状の収容壁部とからなり、環状壁口部が、該収容壁部より立設されてなる前記<1>〜<8>の何れか1つに記載の混合容器。
【0019】
<10> 容器及び蓋が、それぞれ可撓性を有するプラスチック材料からなる前記<1>〜<9>の何れか1つに記載の混合容器。
【0020】
<11> 容器側螺子部が、基端から先端にかけて周方向に対して傾斜した区間を含む螺子突条部からなり、蓋側螺子部が、螺子突起からなる前記<1>〜<10>の何れか1つに記載の混合容器。
【0021】
<12> 蓋が下側に配置され、かつ容器が上側に配置されて使用される前記<1>〜<11>の何れか1つに記載の混合容器。
【発明の効果】
【0022】
本発明の混合容器は、蓋を取り外す際に、ガス以外の内容物の漏出が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る混合容器の側面図である。
【図2】容器の側面図である。
【図3】内側から見た蓋の平面図である。
【図4】容器に取り付けられ最も下降した混合容器の蓋を回しながら容器に沿って上昇させた状態を模式的に表した説明図である。
【図5】図4に示される混合容器の蓋を更に回しながら容器に沿って上昇させた状態を模式的に表した説明図である。
【図6】容器に取り付けられ最も下降した他の実施形態に係る混合容器の蓋を回しながら容器に沿って上昇させた状態を模式的に表した説明図である。
【図7】他の実施形態に係る混合容器の構成を模式的に表した説明図である。
【図8】図7に示される混合容器を構成する容器の斜視図である。
【図9】他の実施形態に係る混合容器の構成を模式的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の混合容器の実施形態について説明する。なお本発明の混合容器は、本明細書に例示する実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は、一実施形態に係る混合容器の側面図である。図1に示されるように、混合容器1は、容器2と、この容器2に対して着脱(取り付け及び取り外し)可能な蓋3とからなる。
図1には、蓋3が容器2に螺着され取り付けられた状態の混合容器1が示されている。なお、図1の混合容器1は一部が切り欠かれ、その断面が示されている。図2は、容器2の側面図であり、図3は、内側から見た蓋3の平面図である。なお、図2に示される容器2は、一部が切り欠かれており、その部分の断面が示されている。
【0026】
容器2は、図1及び図2に示されるように、上側(開口部)へ向かうほど内径が大きくなるカップ状(コップ状)の器であり、その上側の縁である口元部分に、環状壁口部21を有する。環状壁口部21は、横方向の断面が略円形(環状)の壁であり、その上端部の内側には、原料の投入及び内容物の取り出しに利用される開口部22がある。
【0027】
環状壁口部21は、図2に示されるように、内径の違いによって、小径区域部23と、大径区域部24とに分かれる。小径区域部23は、環状壁口部21の下側(奥側)に配置し、大径区域部24は、小径区域部23に隣接し開口部22側に配置している。つまり、環状壁口部21の奥側(下側)の内径は、上端部の内径(開口部22の直径)よりも小さくなっている。
【0028】
環状壁口部21は、その外周面に容器側螺子部25としての複数本の螺子突条部25が設けられている。各螺子突条部25は、環状壁口部21の外周面上で細長く凸状に盛り上がっている。各螺子突条部25は、基端26から先端27にかけて周方向に対して傾斜している区間(部分)を含む。特に、本実施形態の螺子突条部25の先端27は、開口部22側へ向かい、環状壁口部21の上端まで達している。各螺子突条部25の傾斜方向は、同じになるように揃えられている。なお、本実施形態の螺子突条部25の基端26とは、蓋3が容器2に螺着され取り付けられた時に、後述する蓋側螺子部35(螺子突起35)と係合する位置である。
【0029】
なお、本実施形態の螺子突条部25は、基端26から更に、細長く延びた副突条部28を有し、螺子突条部25と副突条部28とが一続きになっている。この副突条部28も、環状壁口部21の外周面上で細長く凸状に盛り上がっており、周方向に対して螺子突状部25と同様に傾斜している。
螺子溝部125は、螺子突条部25及び副突条部28からなる一続きの突条部が、隣り合うことによって形成される。つまり、螺子溝部125は、隣り合う前記一続きの突条部によって形成される。この螺子溝部125も、容器側螺子部25に含まれるものである。
【0030】
螺子突条部25は、環状壁口部21を囲むように配置し、互いに所定の間隔を保って配置している。本実施形態では、4本の螺子突条部25が環状壁口部21の外周面に形成されている。なお螺子突条部25の本数は、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば2〜5本の螺子突条部25を使用してもよい。また螺子突条部25同士の間隔も、目的に応じて適宜選択すればよいが、螺子突条部25同士の間隔は等間隔が好ましい。本実施形態では、略円形の環状壁口部21の外周面上に、4本の螺子突条部25が等間隔で配置している。そして各螺子突条部25の基端26の位置は、周方向に対して一列に並ぶように設定されている。つまり、各螺子突条部25の基端26の位置は、環状壁口部21の下側から同じ高さの位置で揃えられている。
【0031】
他の実施形態においては、各螺子突条部25の基端26の位置、先端27の位置、傾斜方向、傾斜角度(勾配)、長さ、強度、形状(外径及び断面)等の螺子突条部25の諸条件は、目的に応じて適宜選択される。
【0032】
本実施形態の環状壁口部21は、その外周面に、更に、周条部29も形成されている。この周条部29は、螺子突条部25よりも下側に配置し、周方向に沿って細長く凸状に盛り上がっている。この周条部29によって、容器2の強度(剛性)、特に環状壁口部21の下側の強度(剛性)を向上させている。なお、副突条部28の一端(基端)は、この周条部29に接続している。
【0033】
螺子突条部25の基端26には、蓋3を容器2に固定する際に利用され、蓋3の動きを止める停止固定部200が備えられている。
【0034】
容器2は、図1及び図2に示されるように、環状壁口部21の下側に、環状壁口部21と接続する収容部201を備える。この収容部201は、底部202と該底部202の周縁から立設された筒状の収容壁部203とからなり、それらの内側で、混合前の原料及び混合物等の内容物を収容する。本実施形態の底部202の形状は、略円形である。また収容壁部203の形状は、底部202側から上側に向かって内径が大きくなる筒状である。なお収容部201の形状は、本発明の目的が達成できれば特に制限はなく目的に応じて適宜選択される。
【0035】
蓋3は、図1及び図3に示されるように、中央蓋部31と、外側スカート蓋部33とを備える。
【0036】
中央蓋部31は、天井部331と、スカート壁部32とを有する。
【0037】
天井部331は、外形が略半球状(所謂、ドーム状)であり、内面形状も同様に略半球状となっている。つまり、天井部331は、口側を下方に向けた略半球状の器のような形状である。なお、図1に示されるように、天井部331は、その頂部が平坦に加工されている。そのため、蓋3は内側を上方へ向けた状態で床面上等に静置させ易くなっている。
【0038】
スカート壁部32は、天井部331の周縁より下方へ向けて延設された筒状(スカート状)の壁である。つまり、天井部331とスカート壁部32とは、口側(先側)を下方に向けた1つの器である中央蓋部31を構成している。本明細書では、説明の便宜上、1つの器である中央蓋部31を、天井部331とスカート壁部32とに分けている。
【0039】
スカート壁部32の先側は、外側へ湾曲し、拡径している。この先側の部分を、特に先側環状接触部34と称する。先側環状接触部34は、その外径が、開口部22の直径よりは小さく設定されている。しかも、先側環状接触部34の外径は、環状壁口部21の奥側の内径以上に設定されている。この先側環状接触部34が、環状壁口部21の奥側の内周面(小径区域部23の内周面)と接触(密着)可能にされている。
なお、先側環状接触部34は、スカート壁部32と一体的に形成されるものでもよいし、スカート壁部32に後付けされるような別部品からなるものでもよい。また、先側環状接触部34は、スカート壁部32と同じ材料を用いて製造されてもよいし、他の材料を用いて製造されてもよい。例えば、スカート壁部32がポリプロピレンからなる場合、先側環状接触部34の材料としてシリコンゴム等の弾性部材を使用してもよい。
【0040】
図1に示されるように、スカート壁部32は、蓋3が容器2に取り付けられる際に、容器2の開口部22から環状壁口部21内に挿入され、収納された状態となる。その際、スカート壁部32の先側は、環状壁口部21内に嵌り、環状壁口部21の奥側の内周面(小径区域部23の内周面)と接触する。
【0041】
ここで、上述した環状壁口部21の小径区域部23及び大径区域部24について、更に説明する。小径区域部23は、図2に示されるように、環状壁口部21の内径が、スカート壁部32の先側環状接触部34の外径以下である個所である。これに対し、大径区域部24は、環状壁口部21の内径が、スカート壁部32の先側環状接触部34の外径よりも大きい個所である。なお、ここで言う「先側環状接触部34の外径」とは、先側環状接触部34の中で、最も大きな部分の外径(最大径)のことである。
【0042】
なお、スカート壁部32の先側環状接触部34としては、スカート壁部32の先端そのものであってもよいし、先端よりも根元側に位置する個所であってもよい。ただし、先端よりも根元側のスカート壁部32を、先側環状接触部34とする場合には、その先側環状接触部34よりも先側の外径は、先側環状接触部34の外径よりも小さくする必要がある。
【0043】
小径区域部23における内径は、上方(開口部22側)へ向かうにつれて、次第に大きくなるように設定されてもよいし、一定(均一)に設定されてもよい。また、隣接する大径区域部24に近付くにつれて、小径区域部23の内径を急激に変化させて、大径区域部24との間に、小径区域部23内における段差204を設けてもよい。
【0044】
大径区域部24における内径は、上方(開口部22側)へ向かうにつれて、次第に大きくなるように設定されてもよいし、一定(均一)に設定されてもよい。大径区域部24の内径を一定に設定して、大径区域部24における段差204を形成してもよい。なお段差204は、小径区域部23及び大径区域部24の双方にまたがるように形成されてもよい。
【0045】
本実施形態の中央蓋部31のスカート壁部32は、蓋3が容器2に螺着され取り付けられた時、その根元側が環状壁口部21の内周面と密着できるように、根元側環状接触部36を備える。この根元側環状接触部36は、スカート壁部32の外周面に形成される環状の凸部(突条部)等からなる。この根元側環状接触部36は、スカート壁部32と一体的に形成されてもよいし、スカート壁部32に後付けされるような別部品からなるものであってもよい。また、根元側環状接触部36は、スカート壁部32と同じ材料を用いて製造されてもよいし、他の材料を用いて製造されてもよい。例えば、スカート壁部32がポリプロピレンからなる場合、根元側環状接触部36の材料としてシリコンゴム等の弾性部材を使用してもよい。
【0046】
この根元側環状接触部36の位置及び外径は、本実施形態においては、環状壁口部21の上端部の内周面と密着するように設定されている。なお、ここでいう「根元側環状接触部36の外径」とは、根元側環状接触部36の中で、最も大きな部分の外径(最大径)のことである。
他の実施形態において、根元側環状接触部36の位置は、例えば、環状壁口部21の上端部(開口部22)よりも奥側であってもよい。
【0047】
外側スカート蓋部33は、環状壁口部21の上端面及び環状壁口部21の外周面が覆われるように中央蓋部31の周縁より延設されている。本実施形態においては、天井部331とスカート壁部32との接続個所の周縁から水平方向に張り出し、その後、下方へ向かうように湾曲して延設されている。
【0048】
外側スカート蓋部33は、環状壁口部21の外周面を覆う部分の内周面に螺子突条部25(容器側螺子部)と係合させ、螺合させるための、蓋側螺子部35としての4個の螺子突起35が設けられている。螺子突起35は、外側スカート蓋部33の前記内周面上に、凸状に盛り上がるように周方向に沿って細長く形成されている。各螺子突起35は、図3に示されるように、それぞれの螺子突条部25と係合させ、螺合させるために、螺子突条部25の位置に対応させて、等間隔で配置されている。
【0049】
蓋3は、容器2の環状壁口部21に取り付けられ、固定される(螺着される)。蓋3を容器2に取り付ける際、先ず、開口部22から中央蓋部31のスカート壁部32が嵌り、かつ環状壁口部21に外側スカート蓋部33が被せられるように、蓋3を容器2に対して配置する。次いで、蓋3を一方の向き(時計回り)に動かすと、外側スカート蓋部33が環状壁口部21の外側を回り、各螺子突起35が、螺子突条部25の下側(下面側)に沿って、つまり螺子突条部25によって形成される容器側螺子部25としての螺子溝部125に沿って移動し、下降し始める。この際、中央蓋部31は、環状壁口部21の内周面に向かって近付くように下降する。その後、螺子突起35は、傾斜した螺子突条部25の形状に導かれて、螺子突条部25の基端26に到達する。基端26には、上述したように、停止固定部200が設けられている。この停止固定部200は、螺子突条部25の下側に沿って移動する螺子突起35を、更に下方へ押圧するような勾配面を下面に有する。停止固定部200は、この勾配面で、螺子突起35を上側(上面側)から押さえ付け、蓋3を容器2に固定する。
【0050】
螺子突起35が螺子突条部25の基端26(停止固定部200)に到達した時、蓋3の位置は容器2に対して最も下がる。つまりこの時、スカート壁部32の先側環状接触部34が、容器2に対して最も下がり、環状壁口部21の小径区域部23の内周面に隙間無く押し付けられ、密着する。スカート壁部32の長さ(先側環状接触部34の位置)は、蓋3が容器2に対して最も下がった時に、先側環状接触部34が環状壁口部21の小径区域部23の内周面と密着できるように設定される。
【0051】
なお、本実施形態における容器2のうち、開口部22の個所から、蓋3が容器2に螺着され取り付けられ、スカート壁部32が最も下降した時に、スカート壁部32の先側(先側環状接触部34)が容器2の内周面と接触している個所までの部分が、環状壁口部21となる。それよりも下側の部分が収容部201となる。
【0052】
このように、蓋3が容器2に取り付けられ最も下降すると、中央蓋部31が容器2の内側に載るように配置し、中央蓋部31と容器2との間に、密封された空間4が形成される。本明細書では、この空間4のことを、特に主空間4と称する。この主空間4内に、原料等の内容物が収容される。
【0053】
更に、本実施形態においては、蓋3が最も下降した時、スカート壁部32の根元側(根元側環状接触部36)が環状壁口部21の大径区域部24の内周面と、隙間無く密着する。つまり、根元側環状接触部36の位置及び外径は、蓋3が最も下降した時に、根元側環状接触部36が、環状壁口部21の大径区域部24の内周面と密着できるように設定される。そのため、本実施形態においては、図1に示されるように、スカート壁部32の外周面と、環状壁口部21の内周面との間にも、隙間(空間)5が形成される。本明細書では、この空間5のことを、特に副空間5と称する。この副空間5は、容器2の内側(環状壁口部21の内側)に形成されるものである。蓋3が最も下降している時、この副空間5は、密封されている。この時、副空間5の上方が、環状壁口部21の大径区域部24の内周面と密着する根元側環状接触部36によって外部の空間と区切られている。
【0054】
また、蓋3が容器2に取り付けられ容器2に対して最も下降している時、主空間4と副空間5とは、環状壁口部21の小径区域部23の内周面と密着する先側環状接触部34によって区切られ、分断されている。
【0055】
先側環状接触部34及び根元側環状接触部36以外のスカート壁部32の外径は、目的とする副空間5の大きさ(容積)等に応じて、適宜、設定される。本実施形態におけるこの部分の外径は、先側環状接触部34及び根元側環状接触部36の外径よりも、小さくなるように設定されている。
【0056】
なお、根元側環状接触部36が、環状壁口部21(大径区域部24)の上端の内周面と密着し易くなるように、大径区域部24の内径を均一にする等して、環状壁口部21とスカート壁部32との距離を近付けてもよい。
【0057】
本実施形態の環状壁口部21の外周面には、上述したように、副突条部28も形成されている。この副突条部28によって、蓋3が容器2に取り付けられる際、螺子突起35がその上側(上面側)を沿って移動する。そのため螺子突起35が、その副突条部28の基端側に隣接配置する螺子突条部25へ導かれ易くなっている。
【0058】
また、本実施形態の環状壁口部21の外周面には、螺子突条部25の基端26の下側に、当接部205が凸設されている。この当接部205に螺子突起35が当たり、衝突することによって、螺子突起35が螺子突条部25の基端26にある停止固定部200を通り過ぎないようにしている。
【0059】
なお、螺子突条部25の基端26の位置は、当接部205の位置を変えることによって調整できる。つまり、当接部205の位置を、螺子突条部25と副突条部28とが一続きになって形成される1本の突条部に対して、下側(副突条部28側)又は上側(螺子突条部25側)にずらすことによって調整できる(図2参照)。
【0060】
混合容器1を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン等の公知のプラスチック材料等が挙げられ、特に、可撓性及び耐久性に優れる材料が好ましい。その他、本発明の目的を達成できるのであれば、金属、ガラス等の他の材料を混合容器1の材料として使用してもよい。混合容器1は、公知の加工技術を利用して製造できる。容器2と蓋3とは、同一材料で製造しても、それぞれ異なる材料で製造してもよい。
【0061】
混合容器1は、例えば、化粧料、脱色剤、染毛剤等の毛髪処理剤等の調合に利用される。特に、この混合容器1は、発泡性毛髪処理剤(泡沫状毛髪処理剤)等の発泡性組成物の調合(混合)に好適である。毛髪処理剤以外の内容物としては、薬剤、塗料、食品等が挙げられる。これらの内容物は、混合容器1の密封された空間内、つまり容器2と中央蓋部31とによって形成される主空間4内で、混合され、保存される。
【0062】
例えば、前記混合容器1を利用して、粉末状の1剤及び液状の2剤から発泡性毛髪処理剤を調合する場合、先ず各原料(1剤及び2剤)を開口部22より容器2内へ投入し、収容部201内に収容する。その後、容器2に蓋3を固定して混合容器1内を密封する。次いで、密封された状態の混合容器1を、手で振る等して、原料を混ぜ合わせる。なお、混合容器1の容器2と蓋3とは互いに螺着され固定されているため、手で振る等して混合容器1に震動が加えられても、蓋3が容器2から外れることはない。混合後、蓋3を他の方向(反時計回り)に回し、容器2から取り外して、容器2内から内容物(混合物)を取り出す。
【0063】
本実施形態の混合容器1は、容器2から蓋3が取り外される際、ガス以外の内容物が、容器2と蓋3との間(隙間)を通り抜けて、外部へ漏出することが抑制される。以下、蓋3が容器2から取り外される際に、混合容器1内からガス以外の内容物の漏出が抑制される原理を、図4及び図5を参照しつつ、説明する。
【0064】
図4は、容器に取り付けられ最も下降した混合容器の蓋を回しながら容器に沿って上昇させた状態を模式的に表した説明図である。図4に示されるように、蓋3を反時計回りに移動させると、螺子突起35が螺子突条部25に沿って導かれ、蓋3が上方へ移動する。すると先ず、スカート壁部32の根元側環状接触部36が、環状壁口部21の大径区域部24の内周面から遠ざかり、これらの密着が解消される。そのため、副空間5の密封も解消される。
これに対し、内側スカート壁部32の先側環状接触部34は、環状壁口部21の小径区域部23の内周面を摺接しながら上方へ移動する。この際、先側環状接触部34と小径区域部23の内周面とは密着したままであり、主空間4は密封されたままである。
【0065】
図5は、図4に示される混合容器の蓋3を更に回しながら容器2に沿って上昇させた状態を模式的に表した説明図である。図5に示されるように、蓋3を更に反時計回りに移動させると、螺子突起35が螺子突条部25に沿って導かれ、蓋3が更に上方へ移動する。なお、図5の混合容器1は、説明の便宜上、図4に示されるものと比べて、容器2の方が回転したように示されている。
この移動の際に、スカート壁部32の先側環状接触部34が、小径区域部23を摺接して通過する間は、主空間4の密封が保たれる。しかしながら、先側環状接触部34が大径区域部24に入ると、先側環状接触部34が環状壁口部21の内周面から離れるため、これらの間に略円形状の隙間が形成され、主空間4と副空間5とがその隙間を介して繋がる。そうすると、主空間4内のガスは、前記隙間を通って副空間5内に入り、そして副空間5を通過し、更に外側スカート蓋部33と環状壁口部21との間を通過して、外部へ排出される。環状壁口部21の螺子溝部125は、ガス排出通路としても利用される。なお、先側環状接触部34は、大径区域部24の内周面に近接した状態で、大径区域部24を通過する。更に、蓋3を回すと容器2から蓋3が分離する。
【0066】
上記のように、蓋3を上昇させてガスを排出させると、ガスと共にガス以外の内容物(液状、泡状成分等)も、一部、副空間5内に入ることがある。しかしながら、他の内容物は、先側環状接触部34を含むスカート壁部32の外周面、環状壁口部21の内周面、根元側環状接触部36、環状壁口部21の上端面を覆うスカート蓋部33等が障害物となってはね返され、更に、副空間5内では自重によって主空間4へ戻されるため、副空間5内で留められる。このようにして、ガス以外の内容物が混合容器1(容器2)の外部へ漏出することが抑制される。
【0067】
次いで、他の実施形態の混合容器1Aにおけるガス排出機構を、図6を参照しつつ、説明する。図6は、容器に取り付けられ最も下降した、他の実施形態に係る混合容器の蓋を回しながら容器に沿って上昇させた状態を模式的に表した説明図である。図6に示される混合容器1Aの基本的な構成は、図4等に示される混合容器1の構成と同様である。そのため、混合容器1Aの各構成について、混合容器1と同様のものについては、図6において同符号を付し、それらの詳細説明は省略する。
【0068】
混合容器1Aは、蓋3が容器2に取り付けられ容器2に対して最も下降した時、混合容器1と同様に、密封された主空間4及び副空間5が形成される。この混合容器1Aの蓋3を回して上昇させると、図6に示されるように、先側環状接触部34Aの方が、根元側環状接触部36Aよりも先に、環状壁口部21Aの内周面から離れる。根元側環状接触部36Aは、環状壁口部21Aの内周面(大径区域部24Aの内周面)と密着したまま、上方へ移動する。つまり、混合容器1Aは、図4等に示される混合容器1とは異なるスカート壁部32Aを有する。このスカート壁部32Aの長さは、混合容器1のスカート壁部32の長さと比べて短く、かつ根元側環状接触部36Aの長さ(幅)が、混合容器1のものと比べて長く設定されている。更に、環状壁口部21Aの大径区域部24Aの内径が略一定に設定され、大径区域部24の内壁面が略垂直になっている。
【0069】
このような構成を有する混合容器1Aも、ガス以外の内容物の外部への漏出を効果的に抑制できる。何故ならば、主空間4中の内容物(例えば、泡沫状毛髪処理剤)からガスが発生し、主空間4における圧力が高くなっても、主空間4と副空間5とが繋がり一体となることによって、内容物を収容する全体の容積が拡張され、混合容器1内をある程度減圧できるからである。なお、根元側環状接触部36Aの材料として、シリコンゴム等の弾性材料を利用し、根元側環状接触部36Aを環状壁口部21Aの内周面に密着させ易くしてもよい。
【0070】
更に、図7及び図8を参照しつつ、他の実施形態に係る混合容器1Bを説明する。図7は、他の実施形態に係る混合容器の構成を模式的に表した説明図である。図8は、図7に示される混合容器を構成する容器の斜視図である。この混合容器1Bは、図1等に示される混合容器1の小径区域部23に、更に溝206を設けたものである。この溝206は、図8に示されるように、容器2の環状壁口部21の小径区域部23に、その内周面を凹部状に彫り込むように複数個設けられている。
この溝206は、蓋3が容器2に取り付けられ最も下降した時に、主空間4の密封が確保されるように、先側環状接触部34が接触(密着)している小径区域部23の個所よりも、少なくとも上側(開口部22側)の個所に設けられることが好ましい。つまり、この個所は、蓋3が取り外される際に、先側環状接触部34が摺接しながら通過する個所である。
このような溝206を備えた混合容器1Bにおいて、蓋3が容器2から取り外され、先側環状接触部34が溝206を含む小径区域部23を通過すると、先側環状接触部34が大径区域部24内に入る前に、その溝206を介して、主空間4と副空間5とが繋がる。すると、主空間4から副空間5へ徐々にガス等の内容物が移動し始める。このような溝206を、容器2に適宜、設けておくことによって、主空間4から副空間5へ移動する内容物(ガス及びその他のもの)の量を、調整できる。
【0071】
各実施形態の混合容器1等は、蓋3を手などで、時計回り又は反時計回りに回すことによって、容易に中央蓋部31と容器2との距離を調節できる。そのため、ガス排出量の調節、内容物の漏出防止効果を、蓋3の回転によって適宜、調節できる。
【0072】
他の実施形態に係る混合容器としては、上記実施形態の混合容器1の容器2の構成を蓋として採用し、かつ蓋3の構成を容器として採用したものであってもよい。つまり、この実施形態の混合容器は、上記実施形態の混合容器1における容器2の機能と、蓋3の機能とが入れ替わった構成である。このような構成の混合容器であっても、蓋を取り外す際に、ガス以外の内容物の漏出が抑制される。何故ならば、蓋3の構成を有する容器において外側スカート蓋部33に相当する部分が受け皿として機能するため、その受け皿が前記容器内から外部へ溢れ出したガス以外の内容物を留めるからである。この混合容器は、以下のように表現できる。
【0073】
図9は、更に他の実施形態に係る混合容器1Cの構成を模式的に表した説明図である。この混合容器1Cは、図9に示されるように、環状壁口部21Cの内周面に、凸状に盛り上がった小径区域部23Cを有する。この混合容器1Cのように、環状壁口部21Cの小径区域部23Cよりも、収容部201Cの内径が大きくなるような容器2Cを用いてもよい。環状壁口部21Cの大径区域部24Cの内径は、均一になっている。スカート壁部32は、先側が円筒状であり、先端よりも根元側が先側環状接触部34Cとなっている。
【0074】
他の実施形態においては、混合容器1等と異なり、容器側螺子部が、容器の環状壁口部の外周面を螺旋状に周回するように形成された突条部からなり、かつ蓋側螺子部が、前記突条部と係合し、螺合するものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1,1A,1B,1C 混合容器
2 容器
21 環状壁口部
22 開口部
23 小径区域部
24 大径区域部
25 螺子突条部(容器側螺子部)
125 螺子溝部(容器側螺子部)
26 螺子突条部の基端
27 螺子突条部の先端
28 副突条部
29 周条部
201 収容部
202 底部
203 収容壁部
204 段差
205 当接部
206 溝
3 蓋
31 中央蓋部
331 天井部
32 スカート壁部
33 外側スカート蓋部
34 先側環状接触部
35 螺子突起(蓋側螺子部)
36 根元側環状接触部
4 主空間
5 副空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部に向かって内径が大きくなり外周面に容器側螺子部を含む環状壁口部と、該環状壁口部と接続し内容物を収容する収容部とを有する容器と、
天井部、及び該天井部の周縁より下方へ向けて延設され先側の外径が前記開口部よりは小さくかつ前記環状壁口部の奥側の内径以上に設定され前記先側から前記環状壁口部内に嵌められるスカート壁部、を含む中央蓋部と、内周面に前記容器側螺子部と螺合させる蓋側螺子部を含み前記環状壁口部の上端面及び外周面が覆われるように前記中央蓋部の周縁より延設された外側スカート蓋部と、を有する蓋と、を備え、
前記蓋が前記容器に螺着され取り付けられると、前記スカート壁部の先側が前記環状壁口部の内周面と密着して、前記容器の内側と前記中央蓋部の内側との間に主空間が形成され、かつ前記容器の内側と前記中央蓋部の外側との間に副空間が形成される、ことを特徴とする混合容器。
【請求項2】
中央蓋部のスカート壁部の先側が、外側に湾曲し、拡径している請求項1に記載の混合容器。
【請求項3】
中央蓋部のスカート壁部がその外周面に、蓋が容器に螺着され取り付けられた時に環状壁口部の内周面と密着して副空間を覆う根元側接触部を有する請求項1又は2に記載の混合容器。
【請求項4】
環状壁口部が、内径がスカート壁部の先側の外径以下である小径区域部と、該小径区域部と隣接しスカート壁部の先側の外径よりも大きい大径区域部とを有し、小径区域部と大径区域部との間に段差が形成される請求項1〜3の何れか1項に記載の混合容器。
【請求項5】
小径区域部が、蓋が容器に螺着され取り付けられた時に最も下降したスカート壁部の先側が環状壁口部の内周面と密着している個所よりも上側に、蓋が容器から取り外される時に主空間と副空間とを連通させる溝、を含む請求項4に記載の混合容器。
【請求項6】
内容物が発泡性である請求項1〜5の何れか1項に記載の混合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−93541(P2011−93541A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247096(P2009−247096)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【出願人】(398072322)日硝実業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】