説明

混合廃プラスチックの処理方法及び処理装置

【目的】 混合廃プラスチックを分別することなく減容化・再資源化処理を行う。
【構成】 混合廃プラスチックは貯留槽1から溶解熱分解炉2に供給され、油貯留槽5から供給された溶媒と混合され、加熱されて低沸点の溶媒が蒸発し炉内が加圧されると同時に混合廃プラスチックの一部が溶解される。次いで、溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの熱分解ガス化により炉内が熱分解圧力まで加圧され、該圧力下で溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックとの熱分解ガス化が行われる。排出される熱分解ガスは触媒軽質化炉3に導入され、触媒との接触反応により軽質化される。軽質化ガスは冷却器3において、凝縮・液化され液化油質分が油貯留槽5に貯留される。
【効果】 熱分解ガス化のし難い熱硬化性樹脂の分解率を高めることができ、比較的低炭素数含有量の多い油が回収できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、廃棄物の処理方法に関し、特に廃棄されたプラスチックを再資源化・減容化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近のプラスチック生産量の増加に伴いその廃棄物は年々増加している。現在、廃棄プラスチックの大半が埋立てと焼却によって処分されている。しかし、埋立て用地の不足の問題や、また焼却処分の場合には焼却炉の短命化や排ガスなどによる環境汚染の問題がある。これらの問題を解決するために、廃棄プラスチックの再資源化やエネルギー回収の方法が研究されている。
【0003】可燃物、特にプラスチック類の高分子廃棄物の減容化・再資源化に関しては、例えば熱可塑性プラスチックを対象として溶融・熱分解によって油化・回収し、燃料化して利用する方法が特開昭49−17477号公報、特開昭59−174689号公報などに開示されている。さらに、プラスチック、ゴム、塗料、潤滑油、油脂、アスファルト、ピッチ、合成繊維、天然繊維有機合成固形物などの熱可塑性及び熱硬化性プラスチックなどの混合高分子廃棄物の処理に関しては、混合高分子廃棄物の一部を燃焼し、その熱により残りの高分子廃棄物を熱処理、すなわち、部分酸化燃焼・乾留熱分解方式で高分子廃棄物をガス化、又は油分を回収する方法と処理装置が特公平2−5796号公報に開示されている。
【0004】また、廃棄プラスチックを元の原料である石油系の油にリサイクルする方法がある。プラスチックは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別され、加熱により溶融・分解する性質を有する熱可塑性樹脂の廃棄物については、加熱処理を行ない燃料油などとして再資源化する方法が特開昭48−60777号公報などに開示されている。一方、熱硬化性樹脂については、通常融点を持たず、高い耐熱性を有する性質上、その廃棄物の加熱処理は困難であるとされている。
【0005】しかし、一般に廃棄プラスチックには、このように性質を異にする熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とが混在しており、この混合廃プラスチックを熱分解処理する方法として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との融点の違いを利用して別々に処理する方法が特開平3−212491号公報に開示されている。この方法は、廃棄プラスチックをその分解油に250〜280℃程度で溶融させ、その後熱硬化性樹脂を主成分とする未溶融分を600〜700℃の高温で分解する方法であるが、処理温度が高いため消費エネルギーが多い欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】廃棄プラスチックのうち特に熱硬化性樹脂は、熱処理により一部は分解するが、その他の部分は分解せずに網目構造を形成し、不可逆的に硬化し固体残渣となる性質を有する。この様な熱硬化性樹脂の熱分解特性は、熱処理条件によって変化する。すなわち、熱処理条件を工夫することで、樹脂の硬化を抑制し、分解率を向上させることができる。上記特開平3−212491号公報記載の処理方法は、実質的には熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを個別に処理するものであり、熱硬化性樹脂の分解率を向上させるためのさらなる工夫を要すると考えられる。また、熱硬化性樹脂の分解温度は熱可塑性樹脂に比べ、高温のものが多く、そのため分解処理時の消費エネルギーが増大するという問題がある。
【0007】本発明の目的は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の混合廃プラスチックの処理において、特に熱硬化性樹脂の熱分解促進を図ると共にトータル的に低炭素数含有量の多い油を回収し得る処理方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の混合廃プラスチック処理方法は、密閉容器内で熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合廃プラスチックを溶媒と混合し、加熱によって溶媒をガス化して圧力を上昇させ、上昇した圧力下において前記混合廃プラスチックを溶解させると共に前記溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを熱分解ガス化することを特徴とする。
【0009】また、本発明の混合廃プラスチック処理方法は、第1の密閉容器内で熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合廃プラスチックを溶媒と混合し、加熱によって溶媒をガス化して第1の密閉容器内の圧力を上昇させ、所定の圧力に維持された第1の密閉容器内で前記混合廃プラスチックを溶解させ、その後第1の密閉容器内の溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを第2の密閉容器に移送し、第2の密閉容器内で溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを加熱し、溶媒のガス化と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの加熱分解ガス化によって第2の密閉容器内の圧力を上昇させ、所定の圧力に維持された第2の密閉容器内の溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを熱分解ガス化することを特徴とする。
【0010】溶媒としては混合廃プラスチックを溶解する全ての溶媒を使用することができ、例えば混合廃プラスチックを処理して生成された油やその他の石油系油を用いることができる。前記混合廃プラスチックの溶解及び熱分解ガス化はゲージ圧2気圧以上、好ましくはゲージ圧5気圧以上の圧力下で行うのが好適である。
【0011】本発明による混合廃プラスチックの処理方法は、混合廃プラスチックを貯留する貯留手段と、貯留手段に接続された混合廃プラスチックの溶解熱分解ガス化手段と、溶媒貯留手段と、溶媒貯留手段から溶媒を溶解熱分解ガス化手段に供給する手段と、溶解熱分解ガス化手段内部を所定温度に維持する手段と、溶解熱分解ガス化手段内の圧力をゲージ圧2気圧以上の所定圧力に維持する圧力維持手段と、溶解熱分解ガス化手段から排出されるガスを軽質化する軽質化手段と、軽質化手段で軽質化されたガスを冷却し液化する手段と、液化物を貯留する手段と、溶解熱分解ガス化手段内の未分解物を排出する手段とを具備する混合廃プラスチックの処理装置によって実施される。
【0012】また、本発明による混合廃プラスチックの処理方法は、混合廃プラスチックを貯留する貯留手段と、貯留手段に接続された混合廃プラスチックの溶解手段と、溶媒貯留手段と、溶媒貯留手段から溶媒を溶解手段に供給する手段と、溶解手段内部を第1の所定温度に維持する手段と、溶解手段内の圧力をゲージ圧2気圧以上の所定圧力に維持する第1の圧力維持手段と、溶解手段に接続された混合廃プラスチックの溶解熱分解ガス化手段と、溶解熱分解ガス化手段内部を第1の温度以上の第2の所定温度に維持する手段と、溶解熱分解ガス化手段内の圧力をゲージ圧2気圧以上の所定圧力に維持する第2の圧力維持手段と、溶解手段及び溶解熱分解ガス化手段から排出されるガスを軽質化する軽質化手段と、軽質化手段で軽質化されたガスを冷却し液化する手段と、液化物を貯留する手段と、溶解熱分解ガス化手段内の未分解物を排出する手段とを具備する混合廃プラスチックの処理装置によって実施される。前記圧力維持手段は、圧力検知手段と、弁手段と、圧力検知手段からの検知信号に基づいて弁手段の開閉を制御する制御手段から構成することができる。
【0013】
【作用】本発明の混合廃プラスチック処理方法によると、混合廃プラスチックを溶媒と混合し高圧力下で熱分解するため、一部の混合廃プラスチックが溶解され、この溶解液が熱媒体あるいは反応媒体となり、特に単独熱分解ではガス化し難い熱硬化性プラスチックの有機質樹脂分の比較的低温下での熱分解ガス化が促進され、油回収率の向上が図られる。さらに、通常の熱分解では炭素数の含有量が多いガスが発生するが、高圧力下で熱分解するために、溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックとの熱分解反応促進が図られ、高分子有機物の低分子有機物への移行量が増大し、比較的低炭素数含有量の多い油が回収できる。
【0014】混合廃プラスチックの溶解及び熱分解ガス化をゲージ圧2気圧以上、好ましくはゲージ圧5気圧の高圧下で行うのは、混合廃プラスチックの溶媒への溶解速度の促進が図れ、かつ、分解生成水素ガスと他の分解生成ガスとの反応(水素添加)による軽質化の効果を図るためであり、溶解又は熱分解ガス化の処理圧力がゲージ圧2気圧未満では溶解速度の促進あるいは軽質化の効果が小さくなるからである。
【0015】また、本発明の混合廃プラスチック処理装置によると、混合廃プラスチックの溶解熱分解ガス化手段あるいは溶解熱分解ガス化手段の圧力をゲージ圧2気圧以上の所定圧力に維持しながら混合廃プラスチックの溶解あるいは熱分解ガス化処理を行い、発生したガスを連続的に軽質化して液化処理するため、混合廃プラスチックを安定して連続的に移送・処理でき、かつ、減容化・再資源化を効率よく行うことができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
〔実施例1〕図1は混合廃プラスチックを回分式で処理する装置の模式図であり、図2はその溶解熱分解炉2内の圧力変化を表す模式図である。
【0017】熱可塑性プラスチックと熱硬化性プラスチックを含む混合廃プラスチックは、予め破砕されて、入口部31から貯留槽1に所定量貯留される。本実施例では、熱硬化性樹脂であるガラス繊維強化プラスチック(FRP)を230g、不飽和ポリエステル樹脂(UP)を130g、エポキシ樹脂(EP)を230gに、熱可塑性樹脂であるポリスチレン(PS)を200g、ポリプロピレン(PP)を300gの割合で混合した混合廃プラスチックを10mm以下の大きさに破砕して貯留槽1に供給した。
【0018】制御機200によりボール弁10を開き、貯留槽1から所定量の混合廃プラスチックを溶解熱分解炉2に供給した後、ボール弁10を閉じる。この後、制御機200はストップ弁14、15を開くと同時に移送ポンプ6を起動し、溶媒を油貯留槽5から溶解熱分解炉2に所定量供給する。本実施例では、溶媒としてクレオソート油を用い、前記混合廃プラスチック1090gに対してクレオソート油200gの割合で供給した。
【0019】溶解熱分解炉2が熱分解温度まで加熱される過程において、初期加熱状態では低沸点の溶媒がガス化され、溶解熱分解炉2内が熱分解圧力まで加圧されるにしたがい混合廃プラスチックの一部が溶解される。さらに、溶解熱分解炉2が熱分解温度に加熱されると、溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの熱分解ガス化が促進される。本実施例では溶解熱分解炉2の熱分解温度を500℃に設定し、熱分解圧力をゲージ圧8気圧に設定した。
【0020】溶解加熱分解炉2内の圧力は圧力検知器101によって監視される。混合廃プラスチックの熱分解ガス化によって溶解熱分解炉2内の圧力が上昇し、8気圧を越えると、制御機200はストップ弁12を開き、熱分解ガスを触媒軽質化炉3に導入する。熱分解ガスが流出し、炉内の圧力がゲージ圧8気圧以下に低下すると、制御機200はストップ弁12を閉じる。このようにして加熱分解中、図2に示すように、溶解熱分解炉2内の圧力はほぼゲージ圧8気圧に維持され、溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの熱分解ガス化が促進される。
【0021】触媒軽質化炉3は、所定の温度に加熱されたゼオライト系触媒やマンガン系触媒との接触反応によって熱分解ガスを軽質化する。軽質化ガスは冷却器4において凝縮・液化され、液化油質分が油貯留槽5に貯留される。油貯留槽5に貯留された液化油質分は一部が溶媒として溶解熱分解炉2に供給される。熱分解ガス化終了時点においては炉内圧力が一定となり、圧力検知器101が炉内の圧力上昇を検知することに基づくストップ弁12の開閉動作が休止する。ストップ弁12の動作休止時間が設定時間、例えば5分間を越えるとストップ弁12を開き、炉内の圧力を下げる。そして、炉内圧力がゲージ圧6気圧まで低下した時点でストップ弁12を閉じ、その状態で5分間待機し、炉内圧力が上昇しないこと、すなわち熱分解が完全に終了したことを確認すると、再びストップ弁12を開いて、炉内圧力をゲージ圧0気圧すなわち大気圧まで降下させる。
【0022】溶解熱分解炉2内の圧力が大気圧力まで降下すると、図示しない手段により溶解熱分解炉2の底部より窒素ガスを所定量供給し、溶解熱分解炉2内の残留熱分解ガスを排出して触媒軽質化炉3に導入する。残留熱分解ガスの排出が終了したのちストップ弁12が閉じられ、次いでボール弁11が開かれて未分解の混合廃プラスチック(残渣)が系外に排出される。次に、再びボール弁10が開され、予め貯留槽1に貯留されている混合廃プラスチックが溶解熱分解炉2に供給されて前記作動を繰り返す。本実施例においては、混合廃プラスチック中の熱硬化性樹脂処理重量に対して残渣率24.0Wt%となり、分解ガス化率は76.0Wt%(この内訳は排ガス32.2Wt%、油回収率43.8Wt%)となった。
【0023】〔比較例1〕ガラス繊維強化プラスチック(FRP)を230g、不飽和ポリエステル樹脂(UP)を130g、エポキシ樹脂(EP)を230gの割合で混合した廃プラスチックを貯留槽1に供給した。こののち、上記実施例と同様に混合廃プラスチックを溶解熱分解炉2に供給し、熱硬化性樹脂単独で熱分解を実施した。熱分解は炉内温度を常温から500℃に昇温させて500℃に維持し、炉内圧力をゲージ圧8気圧に維持した状態で1時間行った。この結果、熱硬化性樹脂のみからなる混合廃プラスチック処理重量に対して残渣率53.1Wt%、分解ガス化率は46.9Wt%(この内訳は排ガス21.7Wt%、油回収率25.2Wt%)となった。
【0024】〔比較例2〕さらに、比較例1の試料中に有機質がどの程度含有されているかを調べるため、比較例1と同量の処理重量比となるように、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)0.023g、不飽和ポリエステル樹脂(UP)0.013g及びエポキシ樹脂(EP)0.023gを混合して混合廃プラスチック試料を調製した。この試料を、示差熱天秤を用いて窒素雰囲気中において常温から500℃に加熱し、500℃に維持して1時間経過後の重量減少率を測定した。
【0025】その結果、混合廃プラスチックの処理重量に対して重量減少率は79.3Wt%(ガス化率、有機質分ガス化量)、残渣率20.7Wt%(無機質分重量)となり、有機質の含有量は79.3Wt%であることが分かる。この条件で、熱分解ガスをさらに冷却・液化し油質分を回収した。比較例2の結果は、熱硬化性樹脂単種においては残渣率が20.7Wt%(無機質分重量)で、残りの有機質の含有量は79.3Wt%であり、理想的な場合には、この有機質量が全量ガス化できることを示している。これに対し、比較例1の熱硬化性樹脂単種での熱分解処理においては残渣率が53.1Wt%である。これは、比較例1における熱分解処理では比較例2に比べ熱硬化性樹脂中の有機質分が約2.57倍もガス化しないで残っており、ガス化率が低く少量の油しか回収できないことを示している。
【0026】これに対し、実施例1における熱分解処理では、残渣率及び熱分解ガス化率も比較例2の示差熱天秤での結果と同等となり、比較例1に比べ熱硬化性樹脂分からの、油回収率も約2倍増加していることが分かる。 一方、回収油組成の炭素数をガスクロマト質量分析(GC/MS)で調べた結果、比較例1及び2においては炭素数が20以上の成分が全体の約60Wt%を占めた。これに対し、実施例1では炭素数が20以上の成分が全体の約40Wt%で、比較例1及び2に比べ軽質化量が20Wt%増加されていることが分かった。
【0027】このように、溶媒と混合廃プラスチックとを混合し、高圧力下で熱分解し溶解することにより一部の混合廃プラスチックが溶解され、この溶解液が熱媒体あるいは反応媒体となり、特に単独熱分解ではガス化し難い熱硬化性プラスチックの有機質樹脂分の熱分解ガス化が促進され、油回収率の向上が図れる。さらに、通常の熱分解では高炭素数含有量が多いガスが発生するが、高圧力下で熱分解するために、溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックとの熱分解反応促進が図れ、高分子有機物の低分子有機物への移行量が増大するガス化反応が行われ、比較的低炭素数含有量の多い油が回収でき、かつ、油回収率が増加できる効果があることが分かる。
【0028】〔実施例2〕図3は、混合廃プラスチックを連続式で処理する装置の模式図である。図3において、図1の回分式の処理装置と異なる構成機器は溶解炉7、ボール弁16、ストップ弁17、圧力検知器103、制御機201である。混合廃プラスチックは入り口部31から貯留槽1に所定量貯留されている。本実施例においても前記実施例1と同様に、熱硬化性樹脂であるガラス繊維強化プラスチック(FRP)を230g、不飽和ポリエステル樹脂(UP)を130g、エポキシ樹脂(EP)を230g、と熱可塑性樹脂であるポリスチレン(PS)を200g、ポリプロピレン(PP)を300gの割合で混合した混合廃プラスチックを10mm以下の大きさに破砕して貯留槽1に供給した。
【0029】まず、ボール弁10が制御機201により開かれ、混合廃プラスチックが貯留槽1から溶解炉7に供給されたのちボール弁10が閉じられる。さらに、制御機200の信号を受けてストップ弁14、15が開かれ、移送ポンプ6が作動されて溶媒が所定量溶解炉7に供給される。溶媒にはクレオソート油を用い、その添加量は混合廃プラスチック1090gに対して溶媒200gの割合とした。
【0030】溶解炉7が溶解温度まで加熱される過程において、初期加熱状態では低沸点の溶媒が蒸発され溶解炉7内が溶解圧力まで加圧されると同時に混合廃プラスチックの一部が溶解される。本実施例では、溶解炉7の温度を300℃に設定し、圧力をゲージ圧8気圧に設定した。溶解炉7内の圧力は圧力検知器103によって監視され、溶解過程において、溶解炉7内の圧力がゲージ圧8気圧を越えたら制御機200によりストップ弁17を開き、炉内圧力が低下したら再びストップ弁を閉じることを繰り返すことにより、溶解炉7内の圧力をほぼゲージ圧8気圧に維持する。
【0031】ストップ弁17を通った溶媒及び熱分解ガスは触媒軽質化炉3に導入される。触媒軽質化炉3は、所定の温度に加熱されたゼオライト系触媒やマンガン系触媒との接触反応によって溶媒及び熱分解ガスを軽質化する。軽質化ガスは冷却器4において凝縮・液化され、液化油質分が油貯留槽5に貯留される。次いで、制御機201は予め設定しておいた時間経過後に圧力検知器103によって溶解炉7内の圧力がゲージ圧8気圧を越えていないことを確認するとボール弁16を開き、溶解炉7からガス化・排出しないで残留した溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを溶解熱分解炉2に移送・供給する。溶解熱分解炉2の温度は500℃に設定され、圧力はゲージ圧8気圧に設定されている。
【0032】溶解熱分解炉2では、前記実施例1と同様にして、移送・供給された溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの熱分解ガス化が行われる。溶解熱分解炉2が熱分解温度まで加熱される過程において、初期加熱状態では低沸点の溶媒が蒸発され、溶解熱分解炉2内が熱分解圧力まで加圧されるにしたがい混合廃プラスチックの一部が溶解される。
【0033】溶解加熱分解炉2内の圧力は圧力検知器101によって監視される。混合廃プラスチックの熱分解ガス化によって溶解熱分解炉2内の圧力が上昇し、ゲージ圧8気圧を越えると、制御機200はストップ弁12を開き、熱分解ガスを触媒軽質化炉3に導入する。熱分解ガスが流出し、炉内の圧力がゲージ圧8気圧以下に低下すると、制御機200はストップ弁12を閉じる。このようにして加熱分解中、図2に示すように、溶解熱分解炉2内の圧力はほぼゲージ圧8気圧に維持され、溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの熱分解ガス化が促進される。
【0034】熱分解ガス化終了時点においては、溶解熱分解炉2内の圧力が一定となり、圧力検知器101の検知圧力に基づくストップ弁12の開閉動作が休止する。制御機200は、ストップ弁12の動作休止時間が5分間を越えるとストップ弁12を開き、炉内の圧力をゲージ圧6気圧まで下げる。その状態で5分間待機し、炉内圧力が上昇しないこと、すなわち熱分解が完全に終了したことを確認すると、再びストップ弁12を開いて、炉内圧力を大気圧まで降下させる。
【0035】溶解熱分解炉2内が大気圧力まで降下した時点において、溶解熱分解炉2の底部より図示しない手段により窒素ガスを所定量供給し、溶解熱分解炉2内の残留熱分解ガスを排出して触媒軽質化炉3に導入する。残留熱分解ガスの排出が終了したのち、ストップ弁12を閉じ、次いでボール弁11を開いて未分解の混合廃プラスチック(残渣)を系外に排出する。この時点において予め貯留槽1に貯留されている混合廃プラスチックをボール弁10を開いて溶解炉7に供給し、前記作動を繰り返して連続的に混合廃プラスチックが熱分解処理される。
【0036】本実施例においても、混合廃プラスチック中の熱硬化性樹脂処理重量に対して分解ガス化率は76.0Wt%(この内訳は排ガス32.2Wt%、油回収率43.8Wt%)となり、残渣率は24.0Wt%となった。このように、連続式の処理方法においても溶媒と混合廃プラスチックとを混合し、高圧力下で熱分解し溶解することにより一部の混合廃プラスチックを溶解することにより、比較的低炭素数含有量の多い油が回収でき、かつ、油回収率の増加が図れる効果があることが分かる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、廃プラスチック中から熱硬化性樹脂廃棄物を除去することなく、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを混合したままの処理で比較的熱分解ガス化し難い熱硬化性樹脂の分解率を高めることができ、比較的低炭素数含有量の多い油を回収でき、かつ、油回収率の増加を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回分式による混合廃プラスチック処理装置の模式図。
【図2】溶解熱分解炉内の圧力を表す模式図。
【図3】連続式による混合廃プラスチック処理装置の模式図。
【符号の説明】
1…貯留槽、2…溶解熱分解炉、3…触媒軽質化炉、4…冷却器、5…油貯留槽、6…移送ポンプ、7…溶解炉、10,11,16…ボール弁、12,14,15,17…ストップ弁、101,103…圧力検知器、200,201…制御機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉容器内で熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合廃プラスチックを溶媒と混合し、加熱によって溶媒をガス化して圧力を上昇させ、上昇した圧力下において前記混合廃プラスチックを溶解させると共に前記溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを熱分解ガス化することを特徴とする混合廃プラスチックの処理方法。
【請求項2】 ゲージ圧2気圧以上の圧力下で前記混合廃プラスチックを溶解させると共に溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを熱分解ガス化することを特徴とする請求項1記載の混合廃プラスチックの処理方法。
【請求項3】 第1の密閉容器内で熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合廃プラスチックを溶媒と混合し、加熱によって溶媒をガス化して第1の密閉容器内の圧力を上昇させ、所定の圧力に維持された第1の密閉容器内で前記混合廃プラスチックを溶解させ、その後第1の密閉容器内の溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを第2の密閉容器に移送し、第2の密閉容器内で溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを加熱し、溶媒のガス化と溶解及び不溶解混合廃プラスチックの加熱分解ガス化によって第2の密閉容器内の圧力を上昇させ、所定の圧力に維持された第2の密閉容器内の溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを熱分解ガス化することを特徴とする混合廃プラスチックの処理方法。
【請求項4】 第1の密閉容器内の圧力をゲージ圧2気圧以上に維持し、該圧力下で混合廃プラスチックを溶解させ、第2の密閉容器内の圧力をゲージ圧2気圧以上に維持し、該圧力下で溶媒と溶解及び不溶解混合廃プラスチックを熱分解ガス化することを特徴とする請求項3記載の混合廃プラスチックの処理方法。
【請求項5】 熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合廃プラスチックを貯留する貯留手段と、該貯留手段に接続された混合廃プラスチックの溶解熱分解ガス化手段と、溶媒貯留手段と、該溶媒貯留手段から溶媒を前記溶解熱分解ガス化手段に供給する手段と、前記溶解熱分解ガス化手段内部を所定温度に維持する手段と、前記溶解熱分解ガス化手段内の圧力をゲージ圧2気圧以上の所定圧力に維持する圧力維持手段と、前記溶解熱分解ガス化手段から排出されるガスを軽質化する軽質化手段と、該軽質化手段で軽質化されたガスを冷却し液化する手段と、該液化物を貯留する手段と、前記溶解熱分解ガス化手段内の未分解物を排出する手段とを具備することを特徴とする混合廃プラスチックの処理装置。
【請求項6】 前記圧力維持手段は前記溶解熱分解ガス化手段内の圧力を検知する圧力検知手段と、前記溶解熱分解ガス化手段と前記軽質化手段の間に設けられた弁手段と、前記圧力検知手段からの検知信号に基づいて前記弁手段の開閉を制御する制御手段からなることを特徴とする請求項5記載の混合廃プラスチックの処理装置。
【請求項7】 熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合廃プラスチックを貯留する貯留手段と、該貯留手段に接続された混合廃プラスチックの溶解手段と、溶媒貯留手段と、該溶媒貯留手段から溶媒を前記溶解手段に供給する手段と、前記溶解手段内部を第1の所定温度に維持する手段と、前記溶解手段内の圧力を2気圧以上の所定圧力に維持する第1の圧力維持手段と、前記溶解手段に接続された混合廃プラスチックの溶解熱分解ガス化手段と、前記溶解熱分解ガス化手段内部を前記第1の温度以上の第2の所定温度に維持する手段と、前記溶解熱分解ガス化手段内の圧力をゲージ圧2気圧以上の所定圧力に維持する第2の圧力維持手段と、前記溶解手段及び溶解熱分解ガス化手段から排出されるガスを軽質化する軽質化手段と、該軽質化手段で軽質化されたガスを冷却し液化する手段と、該液化物を貯留する手段と、前記溶解熱分解ガス化手段内の未分解物を排出する手段とを具備することを特徴とする混合廃プラスチックの処理装置。
【請求項8】 前記第1の圧力維持手段は前記溶解手段内の圧力を検知する第1の圧力検知手段と、前記溶解手段と前記軽質化手段の間に設けられた弁手段と、前記第1の圧力検知手段からの検知信号に基づいて前記弁手段の開閉を制御する制御手段からなり、前記第2の圧力維持手段は前記溶解手段内の圧力を検知する第2の圧力検知手段と、前記溶解手段と前記軽質化手段の間に設けられた弁手段と、前記第2の圧力検知手段からの検知信号に基づいて前記弁手段の開閉を制御する制御手段からなることを特徴とする請求項7記載の混合廃プラスチックの処理装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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