説明

混合機

【課題】 短時間の運転でも二次粒子の凝集体が残らず、均質に混合がなされるような混合性能の高い混合機を提供する。
【解決手段】 本発明に係る混合機1は、粉体を収容する円筒状の容器2と、容器2内で回転する軸体31から棒状の衝撃部材32が突出してなる高速ローター3とを備え、衝撃部材32の端部32aの周速度が80m/s以上であって、容器2の中心軸が水平となるよう容器2が配置され、高速ローター3の回転軸が容器の中心軸と平行であり、容器2の中心軸を中心に回転する低速ローター4をさらに備え、低速ローター4の外周に、容器2の内壁2aに近接して粉体を攪拌する攪拌部材42が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種粉体の混合に用いられる混合機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の混合機として、水平に置かれた円筒状容器内に、この容器の中心軸と同心で回転して容器内の粉体を攪拌する攪拌部材を備えた籠形の低速ローターと、この低速ローターの内側に配設され、外周に複数個の衝撃部材が設けられた高速ローターとが備えられた混合機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この混合機の低速ローターおよび高速ローターは次のように作用する。すなわち、低速ローターは、容器内の粉体を攪拌し、粉体の塊を一旦上方に持ち上げた後、高速ローターに向けて下方に落とす。そして落下中の粉体の塊に高速ローターの衝撃部材が高速で衝突することにより、粉体の塊は破砕し容器の下に落下する。そして落下した粉体は再度低速ローターにより上方に持ち上げられる。この工程が繰り返されることにより、粉体は混合される。
【0004】
上述のように、従来の混合機は効率よく均質に混合がなされるよう構成されている。しかし、例えばカーボンブラックのような粒径の小さい粉体の場合、ストラクチャ構造のような二次粒子の凝集体が生成されやすく、均質な混合が困難であるということが知られている。従来の混合機を用いて混合する場合、長時間運転しても二次粒子の凝集体が残り、均質に混合されないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−551754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、短時間の運転でも二次粒子の凝集体が残らず、均質に混合がなされるような混合性能の高い混合機が求められていた。
【0007】
ところで、従来の混合機の高速ローターの回転速度は、例えば特許文献1に係る混合機では6500rpmであるが、本発明者の検討によれば、従来の混合機の回転速度では、ある程度混合が進んだ後は、それ以上均質に混合するのに非常に長い運転時間を要するということが明らかになった。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、短時間の運転でも二次粒子の凝集体が残らず、均質に混合がなされるような混合性能の高い混合機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、粉体を収容する円筒状の容器と、前記容器内で回転する軸体から棒状の衝撃部材が突出してなる高速ローターとを備え、前記衝撃部材の端部の周速度が80m/s以上であることを特徴とする混合機である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、二次粒子の凝集体を形成するような粒径の小さい粉体についても短時間で均質に混合できる、混合性能の高い混合機を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記容器の中心軸が水平となるよう前記容器が配置され、前記高速ローターの回転軸が前記容器の中心軸と平行であり、前記容器の中心軸を中心に回転する低速ローターをさらに備え、前記低速ローターの外周に、前記容器の内壁に近接して粉体を攪拌する攪拌部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の混合機である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、容器内で粉体が低速ローターにより攪拌されることにより、粉体が高速ローターの衝撃部材に衝突する回数が増加するため、短時間で均質に混合できる、混合性能の高い混合機を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次粒子に凝集体を形成するような粒径の小さい粉体についても短時間で均質に混合できる、混合性能の高い混合機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る混合機を示す正面図である。
【図2】本発明に係る混合機の容器周辺の内部を示すための断面正面図である。
【図3】実施例および比較例で用いるカーボンブラックを5万倍に拡大した写真である。
【図4】本発明に係る混合機を1分間運転して炭酸カルシウムとカーボンブラックとを混合した場合を示す実施例であり、(a)は2万倍に拡大した写真であり、(b)は5万倍に拡大した写真である。
【図5】従来の混合機を1分間運転して炭酸カルシウムとカーボンブラックとを混合した場合を示す比較例であり、(a)は2万倍に拡大した写真であり、(b)は5万倍に拡大した写真である。
【図6】従来の混合機を5分間運転して炭酸カルシウムとカーボンブラックとを混合した場合を示す比較例であり、(a)は2万倍に拡大した写真であり、(b)は5万倍に拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0016】
図1は、本発明に係る混合機を示す正面図であり、図2は、本発明に係る混合機の容器周辺の内部を示すための断面正面図である。本発明に係る混合機1は、粉体を収容する円筒状の容器2、容器2内で回転する高速ローター3、および容器2内で回転する低速ローター4を、主たる構成要素として備える。これらの主たる構成要素の形状および配置については以下に説明するが、概ね特許文献1に記載の従来の混合機と同様である。
【0017】
円筒状の容器2は、その中心軸を水平にして配置されており、粉体を投入する投入口5および粉体を排出する排出口6がそれぞれ容器2の内部に連通している。
【0018】
容器2の内部には高速ローター3が備えられており、高速ローター3の回転軸は容器2の中心軸と一致している。高速ローター3は、回転軸に沿って延びる円柱状の軸体31と、軸体31の表面から放射状に突出する複数の棒状の衝撃部材32とを備えている。棒状の衝撃部材32の形状は任意であるが、断面が楔形のナイフエッジのように形成することも可能である。
【0019】
高速ローター3は、公知のベアリング等により回転自由に支持されており、図示しない駆動手段により軸体31が駆動されて、高速ローター3全体が回転し、それに伴い衝撃部材32の端部32aも高速で移動する。本発明に係る混合機1における衝撃部材32の端部32aの周速度は、80m/s以上となる。
【0020】
なお、図示する高速ローター3の回転軸は容器2の中心軸と一致しているが、中心軸から平行にオフセットした回転軸とすることも可能である。また、高速ローター3を複数設けることも可能である。
【0021】
容器2の内部には低速ローター4が備えられており、低速ローター4の回転軸は容器2の中心軸と一致している。低速ローター4は、容器2の円筒の径方向に放射状に延びるアーム41と、アーム41に連設され、容器2の内壁2aに近接しつつ中心軸と平行に延びる攪拌部材42とを備えている。
【0022】
低速ローター4は、公知のベアリング等により回転自由に支持されており、駆動手段7により駆動される。駆動手段7はモーター、減速機およびその他の公知な要素から適宜に構成される。駆動手段7により低速ローター4は回転駆動され、それに伴って攪拌部材42も容器2の内壁2aから所定の距離離間しつつ回転し、容器2内の粉体を攪拌する。
【0023】
なお、攪拌部材42は、上述のように容器2の中心軸と平行に延びる直線状の部材とすることも可能であるが、容器2の内壁2aに沿うように延びるスパイラル状の部材とすることも可能である。また、容器2の内壁2aに当接するスクレーパーを攪拌部材42に連設することも可能であって、これにより、容器2の内壁2aに密着した塊状の粉体を剥がすことが可能となる。
【0024】
次に、本発明に係る混合機1を用いた粉体の混合について説明する。
【0025】
混合される粉体は投入口5から投入され、容器2内に収容される。低速ローター4が回転することにより、攪拌部材42が容器2内の粉体を攪拌する。特に、内壁2a近傍の粉体は、内壁2aから所定の距離離間しつつ回転する攪拌部材42により一旦上方に持ち上げられた後、高速ローター3に向けて落下する。そして落下した粉体は高速ローター3の衝撃部材32に衝突する。このとき衝撃部材32の端部32aは周速度80m/s以上の高速で移動するため、二次粒子の凝集体も粉砕されて粉体の混合が進む。所定の時間経過後、低速ローター4および高速ローター3の回転を停止し、排出口6から粉体を排出する。運転時間は、粉体の種類、必要な混合度合いに応じて適宜調整される。
【0026】
次に、本発明に係る混合機を使用して粉体を混合した実施例と、従来の混合機を使用して粉体を混合した比較例とを比較する。混合する粉体は、炭酸カルシウム#1500(平均粒子径2.5μm)とカーボンブラック(一次粒子径0.03μm)であり、混合割合は質量比で、炭酸カルシウム:カーボンブラック=95:5である。図3に、実施例および比較例で用いるカーボンブラックの5万倍の拡大写真を示す。図3に示す通り、カーボンブラックは粒子径が小さいため、二次粒子の凝集体であるストラクチャ構造を形成していることがわかる。
【0027】
実施例に使用した本発明に係る混合機と、比較例に使用した従来の混合機とは、構成要素の形状および配置において共通しており、円筒状の容器の直径は100mm、中心軸方向の長さは65mmである。そして高速ローターの径は59mmであり、低速ローターの径は98mm、回転数は350rpmである。一方、実施例に使用した本発明に係る混合機と、比較例に使用した従来の混合機との相違点は、高速ローターの回転数である。
【0028】
(実施例)
実施例に使用した本発明に係る混合機の高速ローターの回転数は、27000rpmである。したがって、衝撃部材の端部の周速度は83.4m/sである。
【0029】
上記の実施例に係る混合機を1分間運転して混合した粉体の写真を、図4に示す。図4(a)は2万倍に拡大した写真であり、図4(b)は5万倍に拡大した写真である。これらの二つの写真から明らかな通り、カーボンブラックのストラクチャはほとんど解消されており、わずかに残存するストラクチャの二次粒子の径は、炭酸カルシウムの粒径に比べて極めて小さいことわかる。すなわち、均質な混合が実現されていることがわかる。
【0030】
(比較例)
比較例に使用した従来の混合機の高速ローターの回転数は、9700rpmである。したがって、衝撃部材の端部の周速度は30.0m/sである。
【0031】
上記の比較例に係る混合機を、実施例と同じ1分間運転して混合した粉体の写真を、図5に示す。図5(a)は2万倍に拡大した写真であり、図5(b)は5万倍に拡大した写真である。これらの二つの写真から明らかな通り、カーボンブラックのストラクチャは解消されておらず、炭酸カルシウムの粒径と同程度の二次凝集物の存在が認められる程であって、混合は進んでいないことがわかる。
【0032】
次に上記の比較例に係る混合機を5分間運転して混合した粉体の写真を、図6に示す。図6(a)は2万倍に拡大した写真であり、図6(b)は5万倍に拡大した写真である。図6と図5とを比較すると、5分間運転した方が1分間運転した場合より混合が進んではいるものの、未だストラクチャが解消されていないことがわかる。すなわち、比較例2では、実施例の約3分の1の回転数で、実施例の5倍の時間運転しているにもかかわらず、実施例ほどの均質な混合を実現できていないことがわかる。
【0033】
実施例および比較例の結果から、従来の混合機では長時間の運転を必要としていた均質な混合を、本発明に係る混合機により短時間で実現できることが明らかとなった。混合機の衝撃部材の端部の周速度は、80m/s以上であれば短時間で均質な混合を実現することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 混合機
2 容器
2a 内壁
3 高速ローター
32 衝撃部材
32a 端部
4 低速ローター
42 攪拌部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を収容する円筒状の容器と、
前記容器内で回転する軸体から棒状の衝撃部材が突出してなる高速ローターとを備え、
前記衝撃部材の端部の周速度が80m/s以上である
ことを特徴とする混合機。
【請求項2】
前記容器の中心軸が水平となるよう前記容器が配置され、
前記高速ローターの回転軸が前記容器の中心軸と平行であり、
前記容器の中心軸を中心に回転する低速ローターをさらに備え、
前記低速ローターの外周に、前記容器の内壁に近接して粉体を攪拌する攪拌部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の混合機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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