説明

混合水栓

【課題】流量変更前と流量変更終了後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更する際、吐水温度が流量変更途中で一時的に大きく変化してしまうのを改善することのできる混合水栓を提供する。
【解決手段】給水路18上に設けられた水温センサ30,水流量計28及び水側流調弁26と、給湯路20上に設けられた湯温センサ42,湯流量計40及び湯側流調弁38とを有する混合水栓10において、吐水温度を変えずに吐水流量を変更するに際し、流量変更前の湯水の当初総流量から流量変更後の最終総流量までの流量変化を複数段階に分けて各段階ごとに目標総流量を設定して流量変更を逐次実行するようにし、各段階ごとの流量変更では目標総流量から目標水量,目標湯量を算出し、水流量計及び湯流量計による検出流量が算出した流量に到達した時点を目標流量到達時として、次の段階の流量変更に移行し、以後同様の流量変更を各段階ごとに行って最終総流量まで流量変化させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は混合水栓に関し、特に流量変更前と流量変更終了後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、混合水栓として、吐水部に向けて給水を行う給水路上に設けられて水流量を調節する水側流調弁と、給湯を行う給湯路上に設けられて湯流量を調節する湯側流調弁とを有し、制御部による制御の下でそれら水側流調弁及び湯側流調弁にて水流量及び湯流量を調節することで、吐水口からの吐水温度及び吐水流量を調節するようになした混合水栓が公知である。
例えば下記特許文献1,特許文献2にこの種の混合水栓が開示されている。
【0003】
この種の混合水栓において、流量変更前と変更後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更するには、例えば吐水流量を増大変更するには、流量変更後の湯水の最終総流量における水流量と湯流量との比率を、流量変更前の当初総流量における水流量と湯流量との比率と同じとするようにして、水流量及び湯流量をそれぞれ増大させる(但し途中で水,湯の温度変化が特に生じていない場合)。
その際、湯水の総水量を速やかに流量変更後の最終総流量に到達させるためには、水側流調弁及び湯側流調弁のそれぞれを全開状態として水流量,湯流量を増大変化させることが望ましいが、そのようにした場合、流量変更前の当初総流量と変更後の最終総流量とでは水流量と湯流量の比率が同じ比率となるものの、最終総流量に到る途中では水流量と湯流量の比率が当初総流量及び最終総流量における比率とは異なったものとなり、これに起因して混合水温度が、つまり吐水口からの吐水温度が流量変化の過程で一時的に大きく変化してしまうといったことが起り得る。
【0004】
図4はこれを具体的に示している。
この例は、流量変更前の湯水の当初総流量が2L(リットル),水流量が1.5L,湯流量が0.5L,混合水温度が40℃の下で、水側流調弁,湯側流調弁をそれぞれ全開状態として流量変更し、湯水の総流量(最終総流量)を8L,水流量を6L,湯流量を2Lまで増大したときの、経時的な湯水の総流量変化,水流量及び湯流量の変化,混合水温度の変化を示したものである。
【0005】
図4(B)中、Hはその際の湯流量の変化を、Cは水流量の変化を、Sは湯水総流量の変化を、Tは混合水温度の変化を示している。
尚図4(B)において横軸は時間を、左縦軸は温度を、右縦軸は流量をそれぞれ表している。
また図4(A)は経時的な湯流量の変化,水流量の変化,湯水総流量の変化,混合水温度の変化を時間の経過に対応して具体的な数値として示している。
尚ここでは給水路上に水温センサと水流量計を、また給湯路上に湯温センサと湯流量計とを設け、そして水流量計,湯流量計による水流量,湯流量の検出流量が目標とする最終総流量から算出される水流量,湯流量となったところで水側流調弁,湯側流調弁を閉弁させている。
【0006】
図4から分かるように、流量変更前と流量変更後においては、水流量と湯流量との比率は何れも3:1で同じであり、また混合水温度も40℃で同じであるが、流量変更前の当初総流量から変更後の最終総流量に到る途中の過程では、水流量と湯流量との比率は3:1から外れた様々な比率となっており、またこれに応じて混合水温度も40℃から外れて大きく変化している。
特に流量変化の前半での水流量と湯流量との比率の変化が大きく(水流量に対する湯流量の比率の増大変化が大きい)、これに応じて混合水温度も流量変化の前半で大きく高温側に変化している。
【0007】
これは流量変化の前半、特に流量変化開始後の初期において、湯流量の増大量と水流量の増大量とが同じであるために、結果として水流量に対する湯流量の比率が適正比率よりも大きくなり、そのため混合水温度が高温側に大きく変化したものである。
この場合、吐水口からの吐水流量が目標とする流量変更後の最終流量となるまでの途中で高温の混合水が吐水されてしまうこととなる。このようなことは望ましくない。
【0008】
以上は水側流調弁,湯側流調弁を全開として流量を増大側に変更した場合の例であるが、水側流調弁,湯側流調弁の弁開度を全開以外の開度として流量を増大変更した場合であっても、当初総流量から最終総流量に到る全過程で水流量と湯流量との比率が適正比率から外れていた場合においても同様の問題を生じ得る。
更にここでは流量を増大側に変更する場合について述べたが、流量を減少側に変更する場合においても、混合水温度が一時的に大きく低下してしまうなど同様の問題を生じ得る。
【0009】
尚、下記特許文献3には「湯水混合栓」についての発明が示され、そこにおいて温度誤差に対する混合弁の駆動速度の比率(速度ゲイン)を一定にしておくと、流量の大小により制御の安定性が異なることから、流量に応じて2つの速度ゲインを用意しておき、流量検出器による検出流量が所定値よりも大きいときには大きい速度ゲインを、また小さいときには小さい速度ゲインを選択した上で、温度誤差に基づく混合弁の駆動速度を決定するようになした点が開示されている。
但しこの特許文献3に開示のものは流量を変化させるための技術に関するものではなく、従ってそこには流量変化に伴う混合水温度の変化を改善する点についても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−33091号公報
【特許文献2】特開2008−144462号公報
【特許文献3】特開昭62−123513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような事情を背景とし、流量変更前と流量変更終了後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更する際、吐水温度が流量変更途中で一時的に大きく変化してしまうのを改善することのできる混合水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
而して請求項1のものは、吐水部に向けて給水を行う給水路上に設けられた水温センサ,水流量計及び水流量を調節する水側流調弁と、該吐水部に向けて給湯を行う給湯路上に設けられた湯温センサ,湯流量計及び湯流量を調節する湯側流調弁と、を有し、制御部による制御の下でそれら水側流調弁及び湯側流調弁により水流量及び湯流量を調節することで、吐水口からの吐水温度及び吐水流量を調節する混合水栓であって、流量変更前と流量変更終了後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更するに際し、該流量変更前の湯水の当初総流量から流量変更終了後の最終総流量までの流量変化を複数段階に分けて、各段階ごとに目標総流量を設定して流量変更を逐次実行するようにし、該各段階ごとの流量変更では、該各段階ごとに設定した前記目標総流量から、該目標総流量到達時における混合水温度を前記流量変更前の当初の混合水温度と同じとするのに必要な水流量と湯流量とを算出して該水流量,湯流量を変化せしめ、前記水流量計及び湯流量計による該水流量,湯流量のそれぞれの検出流量が該算出した流量に到達した時点を目標流量到達時として、次の段階の流量変更に移行し、以後同様の流量変更を各段階ごとに行って前記最終総流量まで流量変化させるようになしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項2のものは、請求項1において、前記各段階ごとの流量変更における前記水流量と湯流量との算出を、該水流量と湯流量との比率が前記流量変更前の当初総流量における比率と同じとなるように行うことを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0014】
以上のように本発明は、給水路上に水温センサ,水流量計及び水側流調弁が、また給湯路上に湯温センサ,湯流量計及び湯側流調弁が設けられた混合水栓において、流量変更前と流量変更終了後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更するに際し、流量制御を以下のように行うようになしたものである。
【0015】
即ち、流量変更前の湯水の当初総流量から流量変更終了後の最終総流量までの流量変化を複数段階に分けて、各段階ごとに目標総流量を設定して流量変更を逐次実行するようにし、そして各段階ごとの流量変更では、各段階ごとに設定した目標総流量から、目標総流量到達時における混合水温度を流量変更前の当初の混合水温度と同じとするのに必要な水流量と湯流量とを算出し、水流量計及び湯流量計による水流量,湯流量のそれぞれの検出流量がその算出した流量に到達するのを待って、次の段階の流量変更を実行し、以後同様の流量変更を各段階ごとに行って、最終総流量まで流量変化させるようになしたものである。
【0016】
かかる本発明は、湯水の総流量が流量変更後の最終総流量となったところで、そこで初めて水流量と湯流量との比率が流量変更前の比率と同じになるようにすると、そこに到る途中の全過程で水流量と湯流量との比率が適正比率から大きくかけ離れ、そのことによって混合水温度の一時的な大きな変化をもたらすことから、流量変更前の当初総流量から変更後の最終総流量に到るまでを複数段階に分けて、各段階ごとに流量変更を小幅で小刻みに実行し、最終的な目標流量即ち最終総流量に到達するようになしたものである。
かかる本発明によれば、各段階ごとに、その段階の目標総流量到達時点で、水流量と湯流量との比率が混合水温度を一定に保つために必要な適正比率に比率調整され、また段階内で目標総流量に到達するまでの間も水流量と湯流量との比率が適正に近い比率に保たれることとなるため、流量変更を終了するまでの途中の過程で混合水温度が一時的に大きく変化してしまう問題を改善することができ、水栓使用者が混合水栓を快適に使用できるようになる。
【0017】
本発明では、流量変更の途中の過程で給水路の水,給湯路の湯の各温度が特に変化を生じていない場合には、基本的に各段階ごとの流量変更では、各段階ごとに設定した目標総流量から水流量と湯流量とを、それら水流量と湯流量との比率が流量変更前の当初の比率と同じとなるように算出し、水流量計及び湯流量計による検出流量がその算出した流量に到達するのを待って、次の段階の流量変更に移行する(請求項2)。
【0018】
但し流量変更の途中の過程で水,湯の温度が無視できない程度に変化を生じている場合には、水温センサ,湯温センサにて検知される水,湯の温度を加味して、目標流量到達時における混合水温度を流量変更前の当初の混合水温度と同じとするのに必要な水流量,湯流量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である混合水栓を示した図である。
【図2】同実施形態における吐水流量を変化させる際の湯水の総流量変化,湯流量の変化,水流量の変化,混合水温度の変化を表わした図である。
【図3】同実施形態における流量制御を行う際の制御の内容を示したフローチャートである。
【図4】本発明の背景説明として吐水流量を変化させる際に生じる一時的な混合水温度の変化を示した比較例図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において10は混合水栓(以下単に水栓とする)で、12は水栓10における吐水部としての吐水管である。
吐水管12は、カウンタ上面等横設された取付面14から起立する形態で設けられている。
吐水管12は、全体として逆U字状のグースネック形状をなしており、その先端に吐水口16が備えられている。
【0021】
18は吐水管12に向けて給水を行う給水路,20は同じく吐水管に向けて給湯を行う給湯路で、これら給水路18,給湯路20を通じて送られた水と湯とは合流部22で合流し、混合水路24を通じて吐水管12へと送られる。
【0022】
給水路18上には、水流量を調節する水側流調弁26,水流量を検出する水流量計28及び給水の温度を検出するサーミスタから成る水温センサ30が設けられている。
ここで水側流調弁26は、弁部32とその駆動部としてのステッピングモータ34とを有している。
この水側流調弁26では、ステッピングモータ34にパルス供給するとステッピングモータ34がステップ動作して、弁部32の弁開度をステップ動作分だけ変化させる。
水側流調弁26は、弁部32の弁開度を変化させることで、給水路18を通じて送られる給水の流量を調節する。
【0023】
36は制御部で、この制御部36に対して給水路18上に設けられた水側流調弁26のステッピングモータ34,水流量計28,水温センサ30のそれぞれが電気的に接続されている。
尚この制御部36には、図示を省略する温調(温度調節)操作部,流調(流量調節)操作部が電気的に接続され、温調操作部による操作信号及び流調操作部による操作信号がそれぞれ制御部36に入力される。
【0024】
給湯路20上にもまた、湯流量を調節する湯側流調弁38と、湯流量を検出する湯流量計40及び湯温の検出するサーミスタから成る湯温センサ42とが設けられている。
湯側流調弁38もまた、弁部32とその駆動部としてのステッピングモータ34とを有しており、ステッピングモータ34にパルス供給するとステッピングモータ34がステップ動作し、弁部32の弁開度をステップ動作分だけ変化させる。
湯側流調弁38は、その弁部32の弁開度を変化させることで、給湯路20を通じて吐水管12に送られる湯の流量を調節する。
【0025】
この実施形態の水栓10では、給水路18の水及び給湯路20の湯がそれぞれ吐水口16へと送られて、水と湯との混合水が吐水口16から吐水される。
このとき給水路18,給湯路20を通じて吐水口16に送られる水と湯との流量は、水側流調弁26,湯側流調弁38によって調節され、それら水側流調弁26,湯側流調弁38による水,湯の流量調節によって、吐水口16からの吐水流量及び吐水温度がともに調節される。
【0026】
ここで水側流調弁26及び湯側流調弁38は、それぞれ制御部36により動作制御され、図示を省略する温調操作部,流調操作部からの操作信号に応じて水側流調弁26,湯側流調弁38の弁部32の開度が変化せしめられる。
【0027】
図2は、本実施形態の水栓10における流量制御方法に従って吐水流量を増大側に変更した場合の、湯水の総流量の変化,湯流量の変化,水流量の変化,混合水温度の変化を示している。
図2(B)中、Sは湯水の総流量の変化を、Hは湯流量の変化を、Cは水流量の変化を、Tは混合水温度の変化をそれぞれ示している。
また図2(A)は、経時的な湯水の総流量の変化,湯流量の変化,水流量の変化,混合水温度の変化を時間の経過に対応して具体的な数値として示している。
【0028】
図2は、流量変更前の湯水の当初総流量が2L,水流量が1.5L,湯流量が0.5L,混合水温度が40℃の下で水側流調弁26,湯側流調弁38をそれぞれ全開状態として流量変更し、湯水の総流量(最終総流量)を8L,水流量を6L,湯流量を2Lまで増大したときの湯水の総流量,水流量,湯流量及び混合水温度の変化を示している。
ここでは当初総流量から目的とする変更後の最終総流量までの流量変化を段階1〜段階6までの6段階に分け、各段階ごとに目標総流量を設定して流量変更を小幅で小刻みに行い、最終総流量まで流量変化させている。
【0029】
先ず第1段階目の流量変更では、目標総流量を3Lに設定し、そして目標総流量3Lから目標流量到達時における水流量と湯流量とを算出している。
ここでは目標流量到達時における混合水温度が、流量変更前の当初の混合水温度40℃と同じ温度となるように、つまり水流量と湯流量との比率が3:1となるように水流量を2.25L,湯流量を0.75Lと算出し、水側流調弁26,湯側流調弁38を全開状態として水流量,湯流量を増大させている。
そして水流量計,湯流量計により水流量,湯流量を検出し、検出流量が算出した流量に到達するのを待って、即ち検出流量が算出した流量に到達した時点を目標流量到達時として次の段階の流量変更に移行するようにしている。
【0030】
この第1段階目の流量変更では、湯流量が算出流量0.75Lに到達するのが速く、水流量が算出流量2.25Lに到達するのが遅いため、湯流量が算出流量0.75Lに到達した時点で湯流量の増大が停止され、以後は湯流量が一定の0.75Lに維持される。
そして水流量が算出流量2.25Lに到達するのを待って、次の第2段階目の流量変更が実行される。
尚湯流量が0.75Lに達したとき、湯流量計40からの検出信号に基づいて、制御部36により湯側流調弁38が湯流量を0.75Lに維持するように弁開度が制御される。
【0031】
この第1段階目の流量変更において、水流量と湯流量との比率が適正な比率である3:1となるのは、第1段階目の流量変更終了時、つまり湯水の総流量が設定された目標総流量に到達したときであり、それまでは水流量に対する湯流量の比率が3:1よりも大きくなる。
その結果、図2(B)に示しているように混合水温度は、第1段階目の目標総流量に到達するまでの間で、当初の40℃よりも高温側に若干変化する。
但しその温度変化は図4(B)に示す場合の温度変化に比べて小さい。
【0032】
次に第2段階目の流量変更では、目標総流量を第1段階目の目標総流量の3Lよりも1L多い4Lとし、そして目標総水量到達時における混合水温度を40℃とするように、第1段階目と同様に水流量と湯流量との比率を3:1として水流量,湯流量を算出する。
この第2段階目の流量変更では、目標総流量到達時における水流量が3L,湯流量が1Lと算出される。
そしてこの第2段階目の流量変更においても、第1段階目の流量変更と同様に水側流調弁26,湯側流調弁38を全開状態として水流量,湯流量を増大させる。
【0033】
この第2段階目の流量変更の際にも、湯流量が水流量に比べていち早く算出流量1Lに到達する。
そのためこの第2段階目の流量変更においても、湯流量が算出流量である1Lに到達したところで、制御部36による湯側流調弁38の動作制御によって湯流量が1Lに固定され、維持される。
その間水流量は2.5L→2.75L→3Lと上昇し、算出流量に一致する。
そして水流量がこの算出流量3Lに到達するのを待って、次の第3段階目の流量変更が実行される。
【0034】
この第2段階目の流量変更においても、目標総流量に到達するまでの間、水流量に対する湯流量の比率が適正な比率である3:1よりも大きくなるため、図2(B)に示しているように第1段階目の目標総流量到達時から第2段階目の目標総流量に到達する途中の過程で、混合水温度は適正温度である40℃よりも僅かに高く変化する。
但しその変化の程度は、図2(B)に示しているように第1段階目の温度変化に比べて小さい。
【0035】
本実施形態の流量制御方法では、以下同様にして第3段階目の流量変更,第4段階目の流量変更,第5段階目の流量変更及び最終の第6段階目の流量変更を小幅な流量変化で小刻みに且つ順次に実行して行き、そして最終の第6段階目の流量変更で、湯水の総流量が最終の目標としている変更後の最終総流量となる。
またこのとき水流量が6L,湯流量が2Lでその比率が3:1となり、流量変更後の混合水温度が変更前の混合水温度と同じ温度となる。
【0036】
この混合水温度は、上記のように各段階の流量変更の間に高温側に僅かに変化するが、その変化の度合は、第1段階目の流量変更のときよりも第2段階目の流量変更のときの方が小さく、また第2段階目の流量変更のときよりも第3段階目の流量変更のときの方が、更に第3段階目の流量変更のときよりも第4段階目の流量変更のときの方が温度変化が小さくなって行く。即ち段階数が増すに連れて温度変化は漸次小さくなって行き、そして最終の第6段階目の流量変更の際の温度変化が最も小さくなる。
【0037】
図3は、上記の例を含む本実施形態の流量制御を行うに際しての制御部36の制御の内容をフローチャートで示している。
ここでは水栓使用者による流量変更の操作が行われると、変更後の最終総流量から変更前の当初総流量を差し引いた総変化流量が求められ(ステップS10,S12)、そして総変化流量を段階数で除した段階変化総流量(1段で変化する湯水の総流量)が求められる(ステップS14)。
【0038】
その後段階カウント数をクリアした後、段階カウント数を1として(ステップS16,S18)、その後第1段階目の目標総流量(一時目標総流量)が、ステップS14で求められた段階変化総流量に基づいて設定される。
具体的には、段階変化総流量に段階カウント数1を掛け合せたものを、変更前の当初総流量に加えた流量が求められ、一時目標総流量として設定される(ステップS20)。
【0039】
そしてその第1段階目の一時目標総流量から、第1段階目の一時目標水量,一時目標湯量がそれぞれ算出される。即ち一時目標総流量到達時における混合水温度を、流量変更前の当初の混合水温度と同じとするように水と湯の流量が算出される(ステップS22)。そしてそれら算出された水と湯の流量が設定される(ステップS24)。
そして水流量計28,湯流量計40による水,湯の検出流量が設定流量となったところで(ステップS26)、次のステップS28において段階数が最終段階数に達したか否か判定される。
【0040】
第1段階目の流量変更を終了した時点では、当然最終の段階数に達していないので、その後ステップS10に戻って、更にその後ステップS12〜ステップS28までが繰返し実行される。図2の例では、第2段階目の流量変更から第6段階目の流量変更が繰返し実行される。
そして最終段階(図2の例では第6段階)の流量変更が終了した時点で、ステップS28において流量変更の段階数が最終の段階数に達したと判断されて、そこで流量変更のための動作が終了する。
尚、図3の例では一段階ごとの流量変更を終了した後に、次の段階の一時的な目標総流量を設定しているが、場合によって予め各段階の一時的な目標総流量を設定しておくといったことも可能である。
【0041】
また、図2の例では総流量変更途中で水,湯の温度が変化を生じていないものとして、各段階の目標水量,目標湯量の比率、具体的には目標総流量到達時における水流量と湯流量との比率を3:1に固定して、各段階の流量変更を実行しているが、途中の時点で水,湯の温度変化が生じている場合には、その温度変化を見込んで各段階の目標総流量到達時における水流量と湯流量を算出するようになすことができる。
但しこの場合においても、目標総流量到達時における混合水温度が、流量変更前の混合水温度と同じ温度となるように水流量,湯流量を算出することとなる。
【0042】
以上のような本実施形態によれば、流量変更を終了するまでの途中の過程で混合水温度が一時的に大きく変化してしまう問題を改善することができ、水栓使用者が混合水栓を快適に使用できるようになる。
【0043】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は、変更前の流量よりも変更後の流量を減少させる方向に流量変更する場合や、湯の流量が水の流量よりも多い場合においても適用可能である。
また上記実施形態では、変更前の当初総流量から変更後の最終総流量までの流量変化を6段階に分割しているが、その分割数をこれよりも大きく或いは小さくすることも可能である。
また湯水の総流量の変化量が大きくなっても、また小さくなっても同じ分割数で総流量変化を分割し、各段階の流量変更を実行して行くといったことも可能であるが、流量変更前の当初総流量から変更後の最終総流量までの流量変化を等分割するのではなく、例えば1段階ごとに目標総流量を予め定めた一定の流量で、例えば0.5Lごと変化させるようになすことも可能である。
【0044】
更に、図2に示しているように各段階ごとの流量変更に際しての混合水の温度変化は、流量変更の前半、特に流量変更開始初期において大きくなるため、流量変更の前半或いは初期の段階においては、一時的な流量変更をより小幅でより小刻みに行うといったことも可能である。
また本発明は、図1に示した混合水栓以外の他の様々な形態の混合水栓に適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 混合水栓
16 吐水口
18 給水路
20 給湯路
26 水側流調弁
28 水流量計
30 水温センサ
36 制御部
38 湯側流調弁
40 湯流量計
42 湯温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部に向けて給水を行う給水路上に設けられた水温センサ,水流量計及び水流量を調節する水側流調弁と、該吐水部に向けて給湯を行う給湯路上に設けられた湯温センサ,湯流量計及び湯流量を調節する湯側流調弁と、を有し、制御部による制御の下でそれら水側流調弁及び湯側流調弁により水流量及び湯流量を調節することで、吐水口からの吐水温度及び吐水流量を調節する混合水栓であって、
流量変更前と流量変更終了後とで吐水温度を変えずに吐水流量を変更するに際し、該流量変更前の湯水の当初総流量から流量変更終了後の最終総流量までの流量変化を複数段階に分けて、各段階ごとに目標総流量を設定して流量変更を逐次実行するようにし、
該各段階ごとの流量変更では、該各段階ごとに設定した前記目標総流量から、該目標総流量到達時における混合水温度を前記流量変更前の当初の混合水温度と同じとするのに必要な水流量と湯流量とを算出して該水流量,湯流量を変化せしめ、
前記水流量計及び湯流量計による該水流量,湯流量のそれぞれの検出流量が該算出した流量に到達した時点を目標流量到達時として、次の段階の流量変更に移行し、以後同様の流量変更を各段階ごとに行って前記最終総流量まで流量変化させるようになしてあることを特徴とする混合水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記各段階ごとの流量変更における前記水流量と湯流量との算出を、該水流量と湯流量との比率が前記流量変更前の当初総流量における比率と同じとなるように行うことを特徴とする混合水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76486(P2013−76486A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215437(P2011−215437)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】