説明

混合燃料供給装置および混合燃料の供給方法

【課題】コンパクトな構造で、燃料を供給する際の温度や粘度に起因する管路抵抗の変化による供給量や混合比率の変動を抑止できる混合燃料供給装置を提供する。
【解決手段】混合する燃料の少なくとも一つの燃料が液体であり、混合後の燃料を液体として燃焼装置に供給する混合燃料供給装置1において、混合する燃料を夫々の供給路P1、P2より流入させる流入口2,3と、各流入口2,3から夫々の流路を介して流入した燃料を混合する混合域と、混合された燃料の流出口5とを有するミキサM1および流出口5に接続される吸入ポート21および燃焼装置に接続される吐出ポート22を有するミキシングポンプM2を備え、ミキシングポンプM2の吸入ポート21をミキシングポンプM2の回転により減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や燃焼装置に混合液体燃料を供給する装置および混合燃料の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球と共存できる社会を目指して、石油からバイオ燃料やメタンハイドレードへの移行に見られる枯渇資源からの分散、CO2の削減やNOxおよびSOx吐出量の削減などの環境負荷の低減が急務となっている。このための様々な取り組みが行われている。
【0003】
従来、高速内燃機関ではガソリンやアルコールなどの燃焼スピードの速い燃料を用いている。また、低速内燃機関では 従来C重油などの燃焼スピードの遅い燃料を用い高い効率とトルクを得、発電機や大型船舶の主機として普及している。ボイラ等に用いられる燃焼機器では、ガス、灯油、A重油、C重油などそれぞれの燃料の性状に合った特性を持つバーナを用いている。
【0004】
例えばエタノールは環境負荷に優しいと言われているが低速内燃機関に使用するとトルクが低下すると言う問題が生じる。このために、低速内燃機関のピストン・スピードに適した燃焼スピードを持つ燃料が望まれ、例えば分子量の大きい燃料(高級アルコール、等)のニーズが高まる。また、特性の異なる燃料を混合する事により目的の特性に改質し使用するニーズが高まる。一方では
新しい燃料に適した内燃機関や燃焼装置の開発が進むと予想されるが、既存設備(例えば大型船舶では20〜30年のライフサイクル)のためこれらの燃料あるいは混合手段のニーズが無くなる事はない。
【0005】
例えば、自動車等に使用される高速内燃機関ではガソリンにアルコールを混合した燃料を使用している国があるが、600min-1〜6500min-1の回転域の中でその状態に応じて混合比率を可変する事により、さらに高性能化を図り燃料消費量の削減と環境負荷の低減を進める事が考えられる。
【0006】
ディーゼル機関では、始動時や高負荷時にPMが多く発生する事から、始動時や高負荷時に分子中にO(酸素原子)を持つ例えば植物油やアルコール系燃料を主燃料に混合する事によりPMの発生量を低減する事が考えられる。
【0007】
また、液体燃料を使用するバーナやディーゼル機関では、主燃料に水を混合エマルジョン化した燃料を用いる事により、排ガス中のNOxの低減や燃料消費量の削減の試みが行われている。しかし、水と油のエマルジョン燃料では
粘度の上昇、燃焼スピードの低下が原因し効率が低下する場合が見られ、これを補うために、例えばアルコール水溶液と油の混合エマルジョン燃料が考えられる。この場合は、アルコールを水溶液とする事により貯蔵時の危険性を軽減できる効果もある。
【0008】
内燃機関や燃焼装置では 燃焼室内に分離して複数燃料を供給する事が考えられるが、これに対応していない既存設備では燃料を混合する手段が必要になる。このように、枯渇資源からの分散環境負荷の低減のニーズの高まりと共に、内燃機関や燃焼装置では混合燃料のニーズが増加し、そのための混合手段の普及が望まれる。
【0009】
ここで、たとえばエマルジョン燃料に関する従来技術としては、特許文献1および特許文献2が挙げられる。
【特許文献1】特開2007−111667号公報
【特許文献2】特開2007−032937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複数の燃料を混合供給する装置において、混合する燃料の少なくとも一方の燃料が液体で、混合後の混合燃料が液体で供給される混合燃料の供給装置に関する課題について、船用ボイラの燃焼装置のための混合燃料の供給装置(例えばヘビー・フエル・オイル(以下H.F.O.と記す、動粘度120〜700cSt at 50℃)と水を混合(エマルジョン燃料)した燃料)を例として説明する。
【0011】
従来、特許文献1に記載されているように、エマルジョン燃料を専用の設備で混合製造作し、タンクに貯め、必要量を使用するという方法があるが、長時間の保管中にエマルジョンを構成する油と水の分離が発生する事を防止するために、乳化剤が必要である。
加えて、エマルジョン燃料のための専用のタンクが必要となり、タンクからのエマルジョン燃料の供給装置およびタンク内エマルジョン燃料の温度維持のためのヒータや循環装置が必要となり、大型化が避けられなかった。
さらにH.F.C.中に微粒子(Fe、SiOなど)を含むため 微小な流路を用いた乳化装置はその流路の閉塞の問題から使用出来なかった。
【0012】
これを改良する技術があるが(特許文献2)、混合燃料の循環ラインが必要であるため、前例に比較しタンクが省略出来るが、装置の複雑さは解消されない。また、H.F.O.に水を混合し長期間放置するとスラッジが発生し、スラッジが配管を閉塞するという問題が生じる。
【0013】
また、従来技術では 燃料を混合し ミキシングポンプ(ホモジナイザーなど)に通す事により水の粒径を微細化・均一化するが、水粒子の粒度分布により動粘度が大きく変化する。
例えば、C重油(120[cSt])に30[w%」の水を混合しエマルジョン燃料(油中水滴)とした場合1000[cSt]を超える粘度が記録される場合がある。下表は粘度および温度を変化させた時の配管抵抗を動粘度120[cSt]の燃料を115℃に過熱した時の配管抵抗で割った値を示す。
【0014】

【0015】
表に見られるように、配管抵抗は 粘度と温度に敏感に影響を受け、この結果、このミキシングポンプから燃焼装置までエマルジョン燃料を送る配管の抵抗が大幅に変化するため、燃料の供給量が大きく変化するという問題がある。
【0016】
また、従来技術では、総量の増減による流速の変化が配管抵抗(ミキシング・ポンプから燃焼装置までエマルジョン燃料を送る配管の抵抗)の増減を招く事が原因した相互干渉の問題が生じる。
例えば、水の供給量が増えれば油の供給量が減る、油の供給量を増やせば水の供給量が減ると言う問題であり、供給量の制御や混合比率を制御する上で致命的な欠陥となる。
【0017】
例えば、船用ボイラの燃焼装置では 蒸気の消費量に応じて燃焼量の増減および燃焼・停止の制御を行うことが必要であり、例えば
(1)粘度の高いエマルジョン燃料は着火性が低下するため、燃焼停止前に水の混合を中止し、ミキシングポンプから燃焼装置までエマルジョン燃料を送る配管中のエマルジョン燃料を油に置き換える場合がある。
(2)燃焼停止時、ミキシングポンプから燃焼装置までエマルジョン燃料を送る配管の温度低下に伴いエマルジョン燃料の粘度が上昇し配管を閉塞するため、燃焼停止前に水の混合を中止し、ミキシングポンプから燃焼装置までエマルジョン燃料を送る配管中のエマルジョン燃料を油に置き換える場合がある。
(3)ボイラ効率(ボイラへの燃焼熱の伝播率)を高めるため、燃焼量の増減に応じて油と水の混合比率を変化させる場合がある。
【0018】
この様な場合において、効率の維持およびNOxの低減および発煙防止のために空気比を保つ必要があるが、従来技術では、粘度・温度・供給水率の増減により油の供給率は大きく影響を受けるため適切な空気比に維持する事が困難であった。
【0019】
すなわち、本発明における課題は:
a) 燃焼装置に混合燃料を供給する際の混合燃料供給装置を、大型もしくは複雑な構造の設備を必要とすることなく小型でコンパクトな構造とすること、燃料を供給する際の温度や粘度に起因する管路抵抗の変化による供給量や混合比率の変動を抑止すること、
b) 複数の燃料を混合して供給する際に、供給量や混合比率が変化してもそれらの間に相互干渉を生じることがなく、供給が常に安定して行われるようにすること、
c) 温度や粘度の変化による混合燃料の配管の管路抵抗の増減による供給流量の変動を容易に制御できるようにすること、および
d) 油および水の様に互いに溶解しない液体を混合する場合、特別な貯槽や乳化設備、および乳化剤等を必要とせずに、微細粒径および適切な粒度分布に維持された水/油エマルジョン燃料が得られ、微粒子やスラッジによる目詰まりや閉塞を生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、図1および図2を参照して、本発明は請求項1記載のように
混合する燃料の少なくとも一つの燃料が液体であり、混合後の燃料を液体として燃焼装置に供給する混合燃料供給装置1において、
混合する燃料を夫々の供給路P1、P2より流入させる流入口2、3と、各流入口2、3から夫々の流路(図2における円管部材8内の流路、流入管6内の流路)を介して流入した燃料を混合する混合域4と、混合された燃料の流出口5とを有するミキサM1と、
前記ミキサM1の流出口5に接続される吸入ポート21および前記燃焼装置に接続される吐出ポート22を有するミキシングポンプM2を備え、
前記ミキシングポンプM2の吸入ポート21を前記ミキシングポンプM2の回転により減圧するようにした。
【0021】
本発明の混合燃料供給装置1においては、図1に示すように、混合する燃料を独立した夫々の供給路P1、P2の流入口2、3からミキサM1に流入させてその混合域4(図2)で混合拡散させ、混合された燃料をミキサM1の流出口5に接続されたミキシングポンプM2の減圧状態にある吸入ポート21に流入させ、ミキシングポンプM2内でさらに均質に混合して混合燃料としこれを燃焼装置に供給する。
【0022】
本発明の装置は基本的にはミキサM1とこれに接続されたミキシングポンプM2からなり、構成要素の一つであるミキサM1は、たとえばケーシング7内部に形成した燃料の混合および拡散のための混合域4、それに対して形成される各燃料の流入口2、3(流路)および混合燃料の流出口5(流路)からなるスタティックミキサであり、その構造が小型でかつ極めて簡単であり、燃料中に夾雑物としての微粒子が含まれている場合においても、その沈着による閉塞等の障害は生じない。また、ミキシングポンプM2としては汎用ポンプを用いることができ、汎用ポンプは小型、高品質で信頼性が高く、低価格で容易に入手することができる。
【0023】
混合燃料を供給する配管では、周囲温度や粘度の変化により管路抵抗が増大して燃料の供給量に影響を生じるおそれがあるが、本発明では各燃料は前記ミキサM1の流入部迄は夫々の供給路P1、P2により互いに独立して供給され、混合燃料として供給される部分は実質的にはミキシングポンプM2と燃焼装置との間の配管部分(供給路P4)のみとなるのでこのような影響が極めて少なくなる。
【0024】
特に本発明では、前記ミキサM1に接続されたミキシングポンプM2の吸入ポート21をポンプの回転により減圧状態とするので、混合された燃料が導入される吸入ポート21がこの状態で安定し、たとえば燃料の供給量や供給比率の相対的な増減があった場合にも、広い範囲(雫から定格値)の供給量で安定な混合供給がなされる。すなわち、燃料間の相互干渉による供給量の変動や混合比の変化を抑止することができる。
【0025】
例えば一般的な流量制御方法として配管途中に流量調整弁を設けた場合、この流量調整弁には、一定の供給圧力から流量調整弁の下流側(出口側)の配管抵抗による圧力損失を差し引いた圧力がかかる。前記圧力損失が常に一定であれば流量調整弁にかかる圧力は一定となり、流量調整弁を通過する流量は安定する。しかし、例えば出口側の配管での温度低下による燃料の粘度の上昇によって前記圧力損失が増大すると、流量調整弁にかかる圧力は低下するので通過する流量が低下する。
【0026】
これに対し、本発明においては、前記流量調整弁と出口側との間に介在させたミキシングポンプM2の吸入ポート21を減圧状態とすることにより、吸入ポート21におけるサクション圧がその減圧値で安定するので、流量調整弁にかかる圧力は一定の供給圧力値から一定の減圧値を差し引いた一定の差圧となり、流量調整弁を通過する流量が安定する。つまり、吸入ポート21を減圧することにより、ミキシングポンプM2よりも下流側で発生する圧力損失の変動に何ら関係なく、燃料の流量を安定化させることができる。減圧はミキシングポンプM2の回転数により設定されるが、これは駆動モータの回転数によって容易に制御することができる。
【0027】
油に対して水を強制混合する場合、総量の増加により配管抵抗が増大し油の供給量が減少するいわゆる「相互干渉」の問題が生じる。ミシキングポンプM2の吸入ポート21を減圧せずに作動させた場合には、下流側で発生する圧力損失の影響がミキシングポンプM2の吸入ポート21に生じるが、吸入ポート21のサクション圧を減圧することにより圧力損失の影響をほとんど受けることなく圧力を安定化させることができる。
【0028】
また、本発明は請求項2記載のように、混合する複数の燃料の中で蒸気圧の最も高い燃料の蒸気圧に到達する能力を有するミキシングポンプM2の回転により吸入ポート21が減圧されるようにした。つまり、ミキシングポンプM2の吸入ポート21における減圧は使用されるポンプ能力により混合される燃料中の飽和蒸気圧の最も高いものの蒸気圧値に対応して設定される。
【0029】
設定したミキシングポンプM2の吸入能力(回転数)に比して混合燃料の供給量が十分に少ない場合には、吸入ポート21の圧力は蒸気圧の最も高い燃料の蒸気圧で安定する。例えば蒸気圧の最も高い燃料として水を加えた場合、その温度における蒸気圧までミキシングポンプM2の吸入ポート21の圧力が上昇したところで安定する。100℃の水を加えた場合でもその蒸気圧は0.1013MPa(大気圧)であるから影響は殆どない。
【0030】
また、本発明は請求項3記載のように、前記ミキシングポンプM2が吐出圧を有するようにした。
【0031】
ミキシングポンプM2の吐出ポート22から燃焼装置に到るまでの間の管路が本発明の混合燃料供給装置1において混合燃料として供給される実質的な配管路であるが、この部分においても温度低下や粘度上昇による管路抵抗の増大で流量が減少するおそれがある。この場合本発明においては、ミキシングポンプM2の吐出圧が増大することにより流量が一定となるように容易に制御することができる。
【0032】
また、図5を参照して、本発明は請求項4記載のように、前記ミキサM1の混合域4の直前において一方の燃料の流路に位置され、この流路の断面積を変化させて前記燃料の流量を制御する調量弁31を前記ミキサM1の内部に一体に組込んで備えるようにした。
【0033】
ミキサM1で混合される複数の燃料の中の一つのものの燃料の流量が減少した場合、その流速が低下して他の燃料に対する混合・分散が不充分になるが、調量弁31によってこの燃料の流路の断面積を変化させることによって流速を増加させ、燃料の混合効果を向上させることができる。この調量弁31はたとえばミキサM1内部の前記燃料の流路の内壁にテーパを形成して弁座(テーパ面35)とし、これに対応する形状の弁体38を流路中で進退させる構造とすることにより、小型のミキサM1の内部に一体化して容易に作りつけることができる。
【0034】
次に、本発明において用いられる燃料は少なくとも一つのものが液体であり、すでに述べたように燃焼装置の仕様・特性に応じて、特性が互いに異なる石油系燃料の組合せ、ガソリンとアルコールのような石油系燃料と植物油やアルコール燃料等のバイオ燃料の組合せ、石油系燃料と水等の組合せなど種々の液体燃料の組合せを用いることができ、さらにこれらに対して水蒸気等の気体の混合燃料成分を組合せたものも使用される。混合燃料における水、水蒸気はNOxの削減等の目的で用いられ、本来の燃料ではないが混合燃料の構成成分として用いる場合は以下これらも燃料として記載する。これらの中、たとえが重質油と水のように相互に溶解しないものを混合する場合には、これらは混合によりたとえば油中水滴型のエマルジョン燃料として生成されるが、このようなエマルジョン燃料については前記のようにその製造および供給過程において種々の問題が生じる。本発明はこのような混合燃料に適用する場合に特に効果的である。
【0035】
そこで、本発明は請求項5記載のように、前記混合する燃料が第1の液体の燃料および前記第1の液体の燃料よりも蒸気圧が高くかつこれと相溶しない第2の燃料を含み、
前記第2の燃料を前記ミキシングポンプM2の吸入ポート21での減圧下で一旦気化した後、吐出ポート22に到るポンプ内の移送過程で再度液化して前記第1の液体の燃料中に分散混合させエマルジョン化させるようにした。
【0036】
重質油と水から混合燃料を生成する場合には、これらをミキサM1中で合流・混合した後、ミキシングポンプM2によって油中における水が微細な粒径と良好な粒度分布を有するように均質に混合する。この場合ミキシングポンプM2の吸入ポート21の圧力は重質油よりも飽和蒸気圧の高い水の飽和蒸気圧に対応した減圧値に設定される。吸入ポート21のこの減圧下では水が蒸発、気化して重質油中に微細に分散し、次いでポンプの各隔室を経て吐出ポート22に移送される間に剪断力の作用を受けて重質油中に好ましい粒度分布で微細に分散され油中水滴型のエマルジョン燃料となる。
【0037】
重質油と水との混合によるエマルジョン燃料では従来複雑な構造の乳化装置が用いられ、またエマルジョン燃料を貯めておくための貯槽やその際の分解を防ぐため乳化剤が用いられていた。本発明においては油および水を夫々の供給部から必要量だけ互いに独立した供給路P1、P2から直接ミキサM1に送って合流、混合し、混合された油/水をミキシングポンプM2の減圧された吸入ポート21に送ってさらにエマルジョン化することにより、大型もしくは複雑な構造の装置や乳化剤を必要とせず均質なエマルジョン燃料が得られる。また重質油中に微細な粒子が含まれていてもこれによってミキサM1等が閉塞されることはなく、管路を目詰まりさせるスラッジを生じることもない。
【0038】
また、本発明は請求項6記載のように、混合する燃料の少なくとも一つの燃料が液体であり、混合後の燃料を液体として燃焼装置に供給する混合燃料供給方法において、前記混合する燃料を夫々の流路P1、P2によりミキサM1に流入させてその混合域4で合流混合し、混合された燃料をミキサM1の流出口5に接続されたミキシングポンプM2の吸入ポート21に送り、ポンプの回転により吸入ポート21の減圧状態でミキシングポンプM2を運転し、混合された燃料をさらに均質かつ微細に混合、分散し、得られたエマルジョン燃料を前記燃焼装置に送るようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下本発明を混合される燃料の複数の成分の中の一方の燃料がC重油(以下油と記載する)、他方が水である場合について説明するが、前記のように本発明はこれに限らず種々の混合される燃料の組合せに対して適用することができる。
【0040】
「第1実施例」
図1は第1実施例に係る混合燃料供給装置1の構成図であり、本図を参照して先ず混合燃料供給装置1の概略構成および概略動作を説明する。符号T1は、加圧された油を供給する第1燃料供給部を示し、符号T2は加圧された水を供給する第2燃料供給部を示す。第1燃料供給部T1に接続され油を供給する供給路P1には、上流側から順に第1流量計FM1、第1電磁弁V1、第1流量調整弁CV1が介設され、下流端はミキサM1に接続される。第2燃料供給部T2に接続され水を供給する供給路P2には、上流側から順に第2流量計FM2、第2電磁弁V2、第2流量調整弁CV2が介設され、下流端はミキサM1に接続される。
【0041】
ミキサM1の流出口5は供給路P3を介してミキシングポンプM2の吸入ポート21と連通する。ミキシングポンプM2の吐出ポート22に接続される供給路P4には第3電磁弁V3が介設され、その下流端は混合燃料供給部T3に接続される。供給路P4におけるミキシングポンプM2と第3電磁弁V3との間には供給路P5が分岐形成され、第4電磁弁V4を介して第1燃料リターン部T4に接続される。
【0042】
以上の構成において、混合燃料を生成する段階として、まず第1電磁弁V1および第4電磁弁V4を開くとともに第2電磁弁V2および第3電磁弁V3を閉め、ミキシングポンプM2を始動させ、油を第1燃料供給部T1から供給路P1、P3、P4、P5を通して第1燃料リターン部T4まで循環させることにより、供給路P1、P3、P4、P5の配管やミキサM1、ミキシングポンプM2等の構成部品を油の温度近くまで加温する。
【0043】
所定の温度まで加温されたら、第4電磁弁V4を閉めるとともに第3電磁弁V3を開いて、先ず油のみを混合燃料供給部T3まで流す。混合燃料供給部T3に接続された燃焼装置(図示せず)の燃焼が安定したら、第2電磁弁V2を開いて、油と水の混合燃料の供給を開始する。なお、混合燃料の供給を停止する場合には以上の操作と逆の順序で行う。
【0044】
「ミキサM1」
次に、ミキサM1を2つの構造例について説明する。図2はミキサM1の第1の構造例を示す側断面図である。ミキサM1は、各燃料の供給部T1、T2から供給路P1、P2を通して各燃料を夫々流入させる流入口、すなわち油を流入させる流入口2および水を流入させる流入口3と、各流入口2、3から流入した油および水を混合して混合燃料を生成する混合域4と、混合燃料の流出口5とを有する。
【0045】
たとえば円筒形状を有し周壁に流入管6が固設されたケーシング7には、その筒端部を貫通してケーシング7と同心状となるように円管部材8が取り付けられる。円管部材8の一端は油の流入口2を構成し、他端は混合燃料の流出口5を構成する。また、前記流入管6が水の流入口3を構成する。ケーシング7によって囲まれた円管部材8の周壁の軸方向中央周りには、軸方向および円周方向に間隔を空けて複数の小径の噴射孔9が穿設される。
【0046】
流入口2、3から夫々油と水が流入すると、流入口3から流入した水はケーシング7と円管部材8とによって形成される環状空間10全体に行き渡り、後述するミキシングポンプM2の吸引力により円管部材8内が減圧され、水の供給圧との差圧に相当する圧力により水が各噴射孔9から円管部材8内を流れる油に向けて噴射される。これにより、円管部材8内の混合域4において油と水が効率良く混合され、混合燃料が流出口5から流出する。
実験では、直径1.4mmの噴射孔9を5個設け、60リットル毎時の油と13リットル毎時の水を混合させたところ、最終的に生成されるエマルジョン燃料において所望の粒径分布を得ることができた。よって微粒子を含む燃料においても使用可能である。
【0047】
なお、前記構造例において、水の流路となる流入管6の容積は油の流路の容積よりも小さく設定することが望ましい。例えば、水の流入を長時間停止した状態で油のみを流入させると、水の流路に油が浸入する。この状態から水を流入させると、短時間ではあるが、浸入した分の油と流入口2から流れてくる油とが混合され、油の混合比率が大きくなる。燃焼機器の場合、油の供給量が増加すると最適空気比が崩れて場合によっては黒煙が発生する。これを防止するため、水の流路への油の浸入量を低減すべく、水の流路の容積は油の流路のそれよりも小さく設定することが望ましい。
【0048】
図3はこのような場合に好適なミキサM1の第2の構造例を示す側断面図である。円筒形状を有し、周壁に流入管11が固設されたケーシング12の一端の開口部には、ケーシング12と同心状の流路13が中央部に貫通形成された蓋部材14が固設される。ケーシング12の内部側では、ケーシング12と同心状に位置する円管部材15の一端が前記流路13と連通するようにして蓋部材14に固設されている。円管部材15の他端は閉塞され、円管部材15の周壁には、軸方向および円周方向に間隔を空けて複数の小径の噴射孔16が穿設される。以上において、流入管11が油の流入口2を構成し、流路13が水の流入口3を構成し、ケーシング12の他端の開口部が混合燃料の流出口5を構成する。
【0049】
流入口2、3から夫々油と水が流入すると、流入口2から流入した油はケーシング12と円管部材15とによって形成される環状空間17全体に行き渡り、ミキシングポンプM2の吸引力により環状空間17が減圧され、水の供給圧との差圧に相当する圧力により水が各噴射孔16から環状空間17内の油に向けて噴射される。これにより、環状空間17(混合域4)において油と水が効率良く混合され、混合燃料が流出口5から流出する。
【0050】
「ミキシングポンプM2」
本発明の実施例においては、ミキシングポンプM2の吸入ポート21の圧力(サクション圧)を減圧することにより、ミキサM1から送られてくる混合燃料の内で蒸気圧の高い燃料、すなわち本実施例では水が吸入ポート21において一旦気化され、この気化した水(気泡)がミキシングポンプM2内で剪断作用下に吐出ポートまで移送される過程で油中に微細に分散されエマルジョン化させる。
【0051】
ミキシングポンプM2としては、ベーンポンプ、外歯のギヤーを組み合わせたギヤーポンプ、内歯のギヤーの中に外歯のギヤーを組み込んだトロコイドポンプ、ピストンポンプ、過流ポンプなど公知構造のものを適用できる。これらのポンプを使用する場合、吸入ポートの圧力は、通常は吸入ポートに入ってくる流量に見合った圧力に設定される。
【0052】
これに対して、本発明で用いるミキシングポンプM2は、油および水の夫々の供給量の最大値の合計を十分に上回る吸入能力を有する仕様のものとし、ミキシングポンプM2のポンプの回転速度(回転力)の設定によって油と水の供給量、すなわちミキサM1から送られてくる混合燃料の供給量よりも、ミキシングポンプM2の吸入能力を高くした状態で使用する。これにより、吸入ポート21の圧力が減圧され、設定したミキシングポンプM2の吸入能力よりも混合燃料の供給量が十分に少ない場合には、吸入ポート21の圧力は水の飽和蒸気圧で安定する。
【0053】
また、水の飽和蒸気圧が非常に低い場合には、吸入ポート21の圧力は、ミキシングポンプM2の吸入能力で決定される圧力で安定する。このことは、第1、第2流量調整弁CV1、CV2の両端間に生じる圧力差を安定に維持することになり、その結果、供給される油および水の供給量が安定することを意味する。流量調整弁に代えて定量ポンプにより燃料の供給量を制御する場合においても、圧力差の安定化により供給量が安定することは同業者には容易に理解できる。
【0054】
また、ミキシングポンプM2を通過した混合燃料の粘度が上昇し、混合燃料の流出口5以降の配管抵抗が上昇した場合には、ミキシングポンプM2の吐出ポート22の圧力(デリバリ圧)の上昇により流量を安定化させる。
【0055】
次に、ミキシングポンプM2による混合過程(エマルジョン化)について説明する。ミキシングポンプM2内では おおよそ次の各過程を経て、油中に水が微細化して分散される。
(1)ミキシングポンプM2の駆動によりミキシングポンプM2のサクション圧が減圧される。
(2)減圧によりミキシングポンプM2の吸入ポート21において水が蒸発する。
(3)蒸発した水が油中に水蒸気として分散する。
(4)ミキシングポンプの吸い込み力により混合燃料がミキシングポンプM2内に吸い込まれる。
(5)ミキシングポンプの回転により圧縮工程に入る。
(6)圧縮によりミキシングポンプM2内で圧力が上昇する。
(7)圧力が上昇することにより、混合燃料中の水蒸気が液体(水)になる。
(8)液化した水が油中に分散する。
(9)吐出ポート22からエマルジョン化した混合燃料が吐出される。
【0056】
これらの全過程において、混合燃料には剪断力(減圧、速度の変化、移動方向の変化、圧縮など)が加えられ、混合燃料中の水が微細化される。
【0057】
例えば、図8に示すようにトロコイドポンプ23をミキシングポンプM2に使用した例では、7個の内歯を持つアウターロータ24内に6個の外歯を持つインナーロータ25が回転する事により吸引圧縮を行う。具体的には、アウターロータ24およびインナーロータ25が回転する過程でインナーロータ25とアウターロータ24が作る7つの隔室の容積が変化する事により、吸入ポート21から混合燃料が吸引され、隔室を順送りされる間前記剪断力の作用を受けて水が油中に均質かつ微細に分散した油中水滴型エマルジョンとして吐出ポート22から吐出される。吸入ポート21の減圧は、例えばミキシングポンプの回転速度(駆動電動機の周波数)を変化させることによって制御する。
【0058】
このような効果は、蒸気圧の異なる複数の燃料からなる混合燃料とする場合に得られる。
【0059】
以上のように、前記実施例によれば、各燃料を夫々流入させる流入口2,3と、各流入口2,3から流入した油と水を合流させて燃料を混合する混合域4と、混合燃料の流出口5とを有するミキサM1と、吸入ポート21がミキサM1の流出口5に接続されるミキシングポンプM2と、を備え、ミキシングポンプM2の吸入ポート21の圧力を減圧し、飽和蒸気圧の高い燃料(水)を吸入ポート21周りで一旦蒸発気化させてからミキシングポンプM2内で液体に戻すまでの過程で混合された燃料をエマルジョン化させる混合燃料供給装置とすれば、気化温度の低い燃料(水)が微細化されて気化温度の高い燃料(油)に分散されることになり、高品質なエマルジョン燃料を供給することができる。
【0060】
また、ミキシングポンプの吸引力が不足し、吸引ポート21の圧力が上昇する場合にはポンプの回転数を速くすれば良く、これにより、簡易な構造で経済的な混合燃料供給装置となる。
【0061】
「第2実施例」
第1実施例に示した2つの構造例のミキサM1(図2、図3)では、油の供給量が少ない場合には、混合域4を通過する油の流速が遅くなり、混合された燃料が良好に分散されないおそれがある。この問題に対して、以下に示す2つのミキサM1は、混合域4の直前の油の流路に、この流路の断面積を変化させて油の流量を制御する調量弁31を備えることを特徴とする。
【0062】
図5は調量弁31を備えたミキサM1の第1構造例の側断面図である。ミキサM1は、例えば側面視して矩形断面を有する中実のブロック体をケーシング32とし、第1側面32aにおいて、座ぐり加工等によりケーシング32の中央部寄りに小径の第1燃料(油)の流路室33が、第1側面32a寄りには大径の混合燃料の流路室34が同心状に穿設され、両室の径の段差にはテーパ面35が形成される。
【0063】
第1側面32aと直交する第2側面32bには、流路室33に連通する流路孔36が穿設されている。この流路孔36の下流端が油を流入させる流入口2を構成し、流路孔36と流路室33がミキサM1における油の流路を構成するものである。
【0064】
流路室33の底部には、第1側面32aと対向する第3側面32cまで貫通する弁体ガイド孔37が穿設されている。調量弁31の弁体38は、弁体ガイド孔37内を摺動する軸部39と、この軸部39の一端に形成され、前記テーパ面35に当接したときには流路室33と流路室34との連通を遮断可能な傾斜面40を有した弁部41とを備える。軸部39の他端は第3側面32cから外部に突出し、図示しない制御機構に連結される。
【0065】
弁体38の軸部39には軸心に沿って流路孔42が穿設されており、流路孔42の一端は弁部41において径方向に貫通穿設された小径の流路孔43に連通している。流路孔42の他端寄りは軸部39の径方向に穿設した流路孔44と連通する。そして、ケーシング32の第4側面32dには、流路孔44と常に連通する第2燃料(水)の流路孔45が穿設されている。
【0066】
図5のミキサM1は以上の構成からなり、油は流路孔36、流路室33を経て、水は流路孔45、流路孔44、流路孔42、流路孔43を経て流れ、小径の流路孔43の噴射口付近が混合域4となって両燃料の混合が行われる。そして、軸部39の移動調節により、テーパ面35と傾斜面40との間隔が変化し、つまり油の流路の断面積が変化して、油の流量が調整される。混合域4において油の流速を速くする場合には、軸部39を図5における左方向に移動させ、テーパ面35と傾斜面40との間隔を狭くする。
【0067】
このように、混合域4の直前部において、油についての流路の断面積を変化させて該燃料の流量を制御する調量弁31を備える構成とすれば、第1燃料供給部T1からの油の供給量が少ない場合であっても、混合域4において油の流速を速くすることができ、水を効率良く油に分散させることができる。
【0068】
図6は調量弁31を備えたミキサM1の第2構造例の側断面図である。この例では、油および水に加えて、アルコールを混合する場合を示している。ミキサM1は、例えば側面視して矩形断面を有するブロック体をケーシング51とし、第1側面51aにおいて、ケーシング51の中央部寄りに大径の油の流路室52が、第1側面51a寄りには小径の混合燃料の流路室53が同心状に穿設され、両室の径の段差にはテーパ面54が形成される。なお、ケーシング51は具体的には2つのブロック体からなる。
【0069】
第1側面51aと直交する第2側面51bには、流路室52に連通する流路孔55が穿設されている。この流路孔55の下流端が油を流入させる流入口2を構成し、流路孔55と流路室52がミキサM1における油の流路を構成する。
【0070】
流路室52の底部には、第1側面51aと対向する第3側面51cまで貫通する弁体ガイド孔56が穿設されている。調量弁31の弁体57は、弁体ガイド孔56内を摺動する軸部58と、この軸部58の一端に形成され、前記テーパ面54に対向する傾斜面59を有した弁部60とを備える。軸部58の他端は第3側面51cから外部に突出し、図示しない制御機構に連結される。
【0071】
第2側面51b、第4側面51dには、夫々水の流路孔61、アルコールの流路孔62が穿設され、両者は流路室63で合流したうえで、流路室53の径方向に沿って延設された小径の流路孔64に連なる。流路孔64の下流端は流路室53の上流側に臨んで、水とアルコールの混合液を流路室53に噴射する噴射口を形成する。
【0072】
調量弁31を備えた第2構造例のミキサM1は以上からなり、油は流路孔55、流路室52を経て流れ、水とアルコールは流路室63で合流されたうえで流路孔64から噴射され、小径の流路孔64の噴射口付近が混合域4となって3つの燃料の混合が行われる。そして、軸部58の移動調節により、テーパ面54と傾斜面59との間隔が変化し、つまり油の流路の断面積が変化して、油の流量が調整される。混合域4において油の流速を速くする場合には、軸部58を図6における右方向に移動させ、テーパ面54と傾斜面59との間隔を狭くする。
【0073】
図5に示した調量弁31では、下流の混合域4に向けて先端が広がる逆テーパ形状となっているため、混合域4の周長が長くなり、油が通過する調量弁31の間隔が狭くなる。よって、周長が長いために混合燃料の分散性には優れるが、調量弁31の間隔が狭いために微粒子を多く含有する燃料では目詰まりの可能性が高くなる。一方、図6に示した調量弁31では下流の混合域4に向けて先端が細くなるテーパ形状となっているため、混合域4の周長が短く、油が通過する調量弁31の間隔が広くなる。よって、周長が短いために混合燃料の分散性には劣るが、調量弁31の間隔が広いために微粒子を多く含有する燃料では目詰まりの可能性が低くなる。
【0074】
以上のように、調量弁31を備えたミキサM1とした場合には、油のための流量調整弁CV1を省略することができる。図4は、流量調整弁CV1を省いた場合の混合燃料供給装置1の構成図を示している。
【0075】
次に、図7は、油および水の温度および圧力を制御・維持するための構成図を示しており、油を例に説明する。第1サービスタンク71に入れられた油は、循環ポンプ72により吸引・加圧・圧送され加熱器73に送られる。
【0076】
加熱器73は、蒸気や電気ヒータ等の熱源で加熱されるが、その温度はPID制御等(図示せず)により一定に維持される。加熱された油は燃料流出部74に導かれ、前記混合燃料供給装置1の第1燃料供給部T1(図1、図4)に送られる。循環ポンプ72の能力(最大流量)は、前記混合燃料供給装置1で使用される油の量より多いものが要求され、よって余剰分(循環ポンプ72の最大流量から前記混合燃料供給装置1で使用される油量を差し引いた量)が供給圧力調節弁75を流れ、戻りライン76から第1サービスタンク71側に戻され循環する。
【0077】
供給圧力調節弁75に余剰分の油が流れる事により、燃料流出部74における油の供給圧は一定に維持される。供給圧力調節弁75は、バネ力によるものや比例弁とその開度を制御するコントローラ(PID制御などにより)を組み合わせたもの等が使用され、圧力を一定に保つ。供給圧力調節弁75から第1サービスタンク71への戻りラインには、混合燃料供給装置1の第1燃料リターン部T4に接続される。
【0078】
水の場合も、油と同様に制御されるため、説明は省略する。
【0079】
図4のミキサM1に実施例2で示した図5の調量弁を組込み、ミキシングポンプとしてトロコイドポンプ(T02−220:日本オイルポンプ工業製)を用いて実際のコンテナ船のボイラ用の燃焼装置において、C重油(100℃)/水(8℃)を約5:1の割合でC重油を100L/hr、200L/hr、300L/hrの供給量で用いたところ、最小燃焼量(100L/hr)の場合にも良好な粒径分布のエマルジョン燃料が得られた。
【0080】
尚ポンプ回転数を駆動モータにより変化させた場合の得られた水/C重油エマルジョン燃料の水の粒径および粒度分布を図9に示す。モータ周波数(同期回転数)が高いほど粒径が微細になり、粒度分布が良好になる(C重油100L/水20L/hr)。モータ周波数75Hz(ポンプ回転数:2250m−1)の場合にもっとも良い効果が得られるが、実施例では使用したモータの定格を考慮して60Hz(ポンプ回転数:1800m−1)で実験を行った。
【0081】
燃焼装置の動作中、黒煙の発生や失火等は認められなかった。またミキシングポンプをサクションポートの減圧下に運転することはポンプとしては一般的な使用法ではないが、船舶の通常の定期ドック(2.5年:7200時間)に対して少なくとも約10000時間以上の使用でポンプにギヤ鳴りや摩耗、損傷などの異常は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施例に係る混合燃料供給装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施例におけるミキサの第1構造例を示す側断面図である。
【図3】本発明の第1実施例におけるミキサの第2構造例を示す側断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る混合燃料供給装置の構成図である。
【図5】本発明の第2実施例における調量弁を有するミキサの第1構造例を示す側断面図である。
【図6】本発明の第2実施例における調量弁を有するミキサの第2構造例を示す側断面図である。
【図7】各燃料の温度および圧力の制御例を示す構成図である。
【図8】トロコイドポンプの構造図である。
【図9】本発明の第2実施例を用いて得られらエマルジョン燃料におけるC重油と水の粒径および粒度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 混合燃料供給装置
21 吸入ポート
22 吐出ポート
31 流量弁
M1 ミキサ
M2 ミキシングポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合する燃料の少なくとも一つの燃料が液体であり、混合後の燃料を液体として燃焼装置に供給する混合燃料供給装置において、
混合する燃料を夫々の供給路より流入させる流入口と、各流入口から夫々の流路を介して流入した燃料を混合する混合域と、混合された燃料の流出口とを有するミキサおよび、
前記ミキサの流出口に接続される吸入ポートおよび前記燃焼装置に接続される吐出ポートを有するミキシングポンプを備え、
前記ミキシングポンプの吸入ポートを前記ミキシングポンプの回転により減圧するようにしたことを特徴とする混合燃料供給装置。
【請求項2】
混合する複数の燃料の中で蒸気圧の最も高い燃料の蒸気圧に到達する能力を有するミキシングポンプの回転により吸入ポートが減圧されることを特徴とする請求項1に記載の混合燃料供給装置。
【請求項3】
前記ミキシングポンプが吐出圧を有することを特徴とする請求項1記載の混合燃料供給装置。
【請求項4】
前記ミキサの混合域の直前において一方の燃料の流路に位置され、この流路の断面積を変化させて前記燃料の流量を制御する調量弁を前記ミキサの内部に一体に組込んで備えたことを特徴とする請求項1記載の混合燃料供給装置。
【請求項5】
前記混合する燃料が第1の液体の燃料および前記第1の液体の燃料よりも蒸気圧が高くかつこれと相溶しない第2の燃料を含み、
前記第2の燃料を前記ミキシングポンプの吸入ポートでの減圧下で一旦気化した後、吐出ポートに到るポンプ内の移送過程で再度液化して前記第1の液体の燃料中に分散混合させエマルジョン化させることを特徴とする請求項1記載の混合燃料供給装置。
【請求項6】
混合する燃料の少なくとも一つの燃料が液体であり、混合後の燃料を液体として燃焼装置に供給する混合燃料供給方法において、
前記混合する燃料を夫々の流路によりミキサに流入させてその混合域で合流混合し、
混合された燃料をミキサの流出口に接続されたミキシングポンプの吸入ポートに送り、
ポンプの回転により吸入ポートの減圧状態でミキシングポンプを運転し、混合された燃料をさらに均質かつ微細に混合、分散し、
得られたエマルジョン燃料を前記燃焼装置に送ることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−180418(P2009−180418A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19222(P2008−19222)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000232818)日本郵船株式会社 (61)
【出願人】(304035975)株式会社MTI (46)
【出願人】(500102653)株式会社サンフレム (2)
【Fターム(参考)】