説明

混合物、これを用いた熱安定剤及びハロゲン含有樹脂組成物

【課題】安定化助剤の改良により、鉛又はカドミウム系安定剤を使用しない配合でも、充分な熱安定性及び耐着色性を示すハロゲン含有樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物を加熱溶融して得られる混合物であって、混合物の総量に対して、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和が20〜80質量%であり、3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量が20〜80質量%である混合物(但し、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量の和は、100質量%となる。)を含有するハロゲン含有樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定剤として使用できる混合物、これを用いた熱安定剤、及びこの熱安定剤を含有するハロゲン含有樹脂組成物に関し、詳しくは耐熱性及び耐着色に優れたハロゲン含有樹脂組成物を提供するものである。
【0002】
ハロゲン含有樹脂において塩化ビニル系樹脂は、光や熱に対する安定性に難があり、加熱成形時や製品の使用時に、主として脱ハロゲン化水素に起因する分解を起こしやすいことが知られている。このため、有機酸の金属塩、有機錫化合物、有機ホスファイト化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの種々の安定剤を配合して塩化ビニル系樹脂の安定性を改善する試みがなされている。
【0003】
近年、毒性の問題から、鉛、カドミウム等の有害重金属の使用が敬遠されていることから、バリウム−亜鉛系の複合系の安定剤が使用される傾向がある。さらに最近では、より低毒性のカルシウム−亜鉛系、又はカルシウム−マグネシウム−亜鉛系の複合系への置き換えが望まれている。しかし、これらの系の安定剤だけでは、熱安定剤の性能が全く不十分である。
【0004】
また、塩化ビニル系樹脂は、可塑剤を使用することで容易に硬度を調整することができるため、農業用のシート、窓枠等の建材用途等、種々の用途に応じることができるものであるが、可塑剤を全く配合しない硬質塩化ビニル系樹脂組成物あるいは可塑剤を少量しか配合しない半硬質塩化ビニル系樹脂組成物においては、加工時に高温高圧にさらされ、成形品の熱安定性に関して高度な性能が要求されるため、より高性能の安定化助剤が求められている。
【0005】
そのため、これら各種安定剤の熱安定性を改善する目的で、安定化助剤としてペンタエリスリトール、並びにジペンタエリスリトール、又はトリペンタエリスリトール等のペンタエリスリトール縮合物(以下、これらの化合物を「ペンタエリスリトール化合物」と示す場合がある。)を安定剤と併用して塩化ビニル系樹脂に添加することが報告されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、上記のペンタエリスリトール化合物は耐熱性に優れるといった利点を有すものの、ペンタエリスリトール化合物の融点が塩化ビニル系樹脂の加工温度よりも高く、塩化ビニル系樹脂との相溶性も悪いため、ペンタエリスリトール化合物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物(ハロゲン含有樹脂組成物)を成形加工した製品は、ペンタエリスリトール化合物の分散不良に起因するプレートアウトが現れる場合がある。
【0006】
上記の分散不良を改善する方法として、微粉砕する方法が提案されており(特許文献3)、ペンタエリスリトール化合物を35μm以下の粒子径になるまで微粉砕することによって上記問題は改善され得るが、かかる微粉砕に要する粉砕エネルギーが大きくコスト高となる問題がある。
【0007】
その他の方法としては、ジトリメチロールプロパンとジペンタエリスリトールの混合物を溶融処理することによって、ジペンタエリスリトールの分散性を向上させる方法が開示されている(特許文献4)。しかし、ジトリメチロールプロパンは安定化助剤としての効果を有していないため、かかる混合物において、本来の有効成分であるジペンタエリスリトールが低減されており、所望の性能を出すためには多量に使用する必要がある。しかし、多量に使用すると成形加工して得られる成形品の物性値が低下したり、表面にプレートアウトが現れたりする問題がある。
【0008】
また、ペンタエリスリトールをステアリン酸及びアジピン酸等とのエステル化反応で得られる混合エステル、又は、ペンタエリスリトールと直鎖状飽和脂肪酸とのエステル化反応で得られる部分エステルを、ハロゲン含有樹脂に添加する方法がそれぞれ開示されているが(特許文献5、特許文献6)、上記と同様に本来の有効成分であるペンタエリスリトールが低減されるため、安定化助剤として満足できるものではなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平6−248142号公報
【特許文献2】特開平8−143704号公報
【特許文献3】特開平10−7859号公報
【特許文献4】特開平9−268286号公報
【特許文献5】特開平11−222545号公報
【特許文献6】特開平7−97495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、これまでに種々検討はなされているものの、可塑剤を少量しか配合しない場合又は全く配合しない場合において、鉛又はカドミウム系安定剤を使用しない配合で、熱安定性及び耐着色性に関し安定化助剤として、充分な効果を示すものが得られていなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、安定化助剤の改良により、鉛又はカドミウム系安定剤を使用しない配合でも、充分な熱安定性及び耐着色性を示すハロゲン含有樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の割合で構成された、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物を加熱溶融して得られた混合物を使用したハロゲン含有樹脂組成物は、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物を加熱溶融して得られる混合物であって、混合物の総量に対して、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和が20〜80質量%であり、3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量が20〜80質量%である混合物。(但し、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量の和は、100質量%となる。)を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0014】
また、本発明は、上記混合物を含有する熱安定剤を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0015】
また、本発明は、上記混合物を含有するハロゲン含有樹脂組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハロゲン含有樹脂組成物によれば、特に可塑剤を少量しか配合しない場合、又は配合しない場合においても、重金属安定剤を使用することなく、優れた熱安定性及び耐着色性を示すものである。従って、本発明のハロゲン含有樹脂組成物は、特に可塑剤を全く使用しない建材用途等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の混合物、これを用いた熱安定剤及びハロゲン含有樹脂組成物の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の混合物は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物を加熱溶融して得られるものである。
上記混合物は、該混合物の総量に対して、上記ペンタエリスリトールと上記ジペンタエリスリトールの含有量の和が20〜80質量%であり、上記3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量が20〜80質量%であり、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量の和は100質量%である。
【0018】
上記混合物の総量に対し、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和が20質量%より少ない場合又は80質量%より多い場合は、かかる混合物について加熱溶融処理を行っても、混合物の融点が高く、本発明の効果が得られなくなる。
【0019】
上記3量体以上のペンタエリスリトール縮合物とは、例えば、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ペンタペンタエリスリトール、ヘキサペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0020】
また、上記混合物の総量に対し、上記3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量が20質量%よりも少ない場合又は80質量%よりも多い場合は、かかる混合物について加熱溶融処理を行っても、混合物の融点が高く、本発明の効果が得られなくなる。
【0021】
本発明においては、混合物の総量に対し、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和、及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量がそれぞれ30質量%〜70質量%の範囲内である条件を満たす混合物が、特に好ましく使用される。
【0022】
本発明における加熱溶融処理は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の混合物を、230℃にて攪拌しながら透明になるまで加熱溶融し、冷却固化後、粉砕によって150メッシュパス(粒子径100μm以下)の混合物を得るものである。
本発明の混合物は、融点が200℃以下であるものが好ましく、融点が185℃以下であるものがより好ましい。
【0023】
本発明の熱安定剤は、上記混合物を含有するものである。
本発明の熱安定剤は、上記混合物の他に他の添加剤を含有してもよい。他の添加剤を含有させる場合、熱安定剤中、本発明の混合物の含有量は、1〜70質量%が好ましく、1〜
50質量%がより好ましい。本発明の熱安定剤に配合され得る他の添加剤としては、後述するハロゲン含有樹脂組成物に配合され得る添加剤が挙げられる。
【0024】
本発明のハロゲン含有樹脂組成物は、上記混合物を含有するものである。
本発明のハロゲン含有樹脂組成物は、ハロゲン含有樹脂100質量部に対して、上記混合物を0.01質量部〜20質量部含有することが好ましく、上記混合物を0.05質量部〜7質量部含有することが特に好ましい。
【0025】
さらに、本発明において、ハロゲン含有樹脂組成物に対してβ−ジケトン化合物、ハイドロタルサイト化合物、脂肪酸亜鉛の中から選ばれる少なくとも一種以上を好適に用いることができる。
【0026】
本発明に使用されるハロゲン含有樹脂としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体等の塩素含有樹脂、及びこれら相互のブレンド品あるいは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、前記ハロゲン含有樹脂と、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート等とのブレンド品、又はアロイであってもよい。
【0027】
本発明のハロゲン含有樹脂組成物においては、さらにβ−ジケトン化合物の少なくとも一種を添加することが、成形加工による製品の着色を抑制することができるため好ましい。
【0028】
上記β−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、トリアセチルメタン、2,4,6−ヘプタトリオン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセチルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4−オクチルベンゾイル)メタン、ベンゾイルジアセチルメタン、4−メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4−カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2−カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、アセト酢酸エチル、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,6−ジメチル−2,4−ジオキシシクロヘキサン−1カルボン酸メチル、2−アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2−ベンゾイルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物は金属塩であってもよい。また、上記β−ジケトン化合物の金属塩を提供し得る金属種としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等の第Ia族金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等の第IIa族金属;亜鉛、アルミニウム、錫、アルキル錫等が挙げられる。
これらのβ−ジケトン化合物の中でも、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、アセチルアセトン金属塩、又は、カルシウムアセチルアセトネートを使用すると着色の抑制された製品が得られるため好ましい。
【0029】
上記β−ジケトン化合物の使用量は、上記ハロゲン含有樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0030】
また、本発明のハロゲン含有樹脂組成物においては、ハイドロタルサイト化合物の少なくとも一種を添加することが、耐熱性の向上を図ることができるため好ましい。
【0031】
上記ハイドロタルサイト化合物としては、例えば、マグネシウムとアルミニウム、又は亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられ、また、上記ハイドロタルサイト化合物は結晶水を脱水したものであってもよい。
【0032】
上記ハイドロタルサイド化合物は、天然物であってもよく、また合成品であってもよく、ハイドロタルサイトの結晶構造、結晶粒子径等に制限されることがなく使用することが可能である。また、上記ハイドロタルサイト化合物は、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又はワックス等で被覆したものでもよい。
【0033】
上記ハイドロタルサイトは市販のものであってもよく、例えば、アルカマイザー1、アルカマイザー2、アルカマイザー4、アルカマイザー5、アルカマイザー7、DHT−4A(協和化学社製)等が挙げられる。これらの中でも、アルカマイザー1、DHT−4Aが好適に用いることが出来る。
【0034】
上記ハイドロタルサイト化合物は、上記ハロゲン含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、さらに好ましくは0.01〜5質量部使用される。上記ハイドロタルサイト化合物が0.001質量部未満では、その添加効果が殆どみられず、10質量部を超えると、効果は上がらず耐着色性を低下させる場合がある。
【0035】
本発明のハロゲン含有樹脂組成物においては、さらに有機酸亜鉛塩の少なくとも一種以上を配合することによって耐着色性に優れた製品が得られるため好ましい。
【0036】
上記有機酸亜鉛塩としては、例えば、カルボン酸、有機リン酸類又はフェノール類の亜鉛塩が挙げられる。ここで、上記カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、クロロステアリン酸、12−ケトステアリン酸、フェニルステアリン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ブラシジン酸及び類似酸並びに獣脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸及び綿実油脂肪酸等の天然に産出する上記の酸の混合物、安息香酸、p−第三ブチル安息香酸、エチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、サリチル酸、5−第三オクチルサリチル酸、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。また、上記有機リン酸類としては、モノ又はジオクチルリン酸、モノ又はジドデシルリン酸、モノ又はジオクタデシルリン酸、モノ又はジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。また、上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等が挙げられる。上記有機酸亜鉛塩は、正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性等のいずれであってもよい。
【0037】
上記有機酸亜鉛塩の使用量は、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0038】
また、本発明のハロゲン含有樹脂には、有機酸亜鉛塩以外の有機酸金属塩を使用することができる。該有機酸金属塩としては、例えば、カルボン酸、有機リン酸類又はフェノール類の金属(Li,Na,K,Ca,Mg,Ba,Sr,Cd,Al)塩等が挙げられる。ここで、上記カルボン酸、有機リン酸類及びフェノール類としては、上記有機酸亜鉛塩に用いられるものとして例示したものが挙げられる。これらの有機酸金属塩は、正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性等のいずれであってもよい。これらの有機酸金属塩の中でも、非重金属(Li,Na,K,Ca,Mg,Al)の有機酸塩を使用することが、低毒性の組成物が得られるため好ましく、特に、有機酸カルシウム塩及び前記有機酸亜鉛塩を併用することが、低毒性にもかかわらず、耐熱性、耐着色性等に一層優れた組成物が得られるため好ましい。
【0039】
上記有機酸金属塩の使用量は、上記塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0040】
また、本発明のハロゲン含有樹脂組成物には、さらに必要に応じて通常に使用される添加剤、例えば、可塑剤、有機ホスファイト化合物、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤、エポキシ化合物、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、発泡剤、充填剤、ポリオール化合物等を配合することもできる。
【0041】
上記可塑剤としては、例えば、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタレート系可塑剤、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤、トリクレジルホスフェート等のホスフェート系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、トリメリテート系可塑剤、ピロメリテート系可塑剤、ビフェニルテトラカルボキシレート系可塑剤等が挙げられる。
【0042】
上記有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4'−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C1215混合アルキル)−4,4−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4'−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4'−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0043】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン−ビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−ブチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0044】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。
【0045】
上記エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油等のエポキシ化動植物油、エポキシ化ステアリン酸メチル、−ブチル、−2−エチルヘキシル、−ステアリルエステル、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ油脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロヘキセンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。尚、エポキシ化大豆油の如く可塑剤としても使用されるエポキシ化合物を使用する場合、剛性の低下を防止するためには、可塑剤と併せて25質量部を超えて使用しないようにする。
【0046】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類等が挙げられる。
【0047】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラエチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0048】
上記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート、アゾビス(ヘキサヒドロベンゾニトリル)等のアゾ系発泡剤、N,N'−ジニトロペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロテレフタルアミン等のニトロソ系発泡剤、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、3,3'−ジスルホンヒドラジドフェニルスルホン、トルエンジスルホニルヒドラゾン、チオビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンエスルホニルアジド、トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p'−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル等のヒドラジド系発泡剤、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、4,4'−オキシビズ(スルホニルセミカルバジド)等のカルバジド系発泡剤、トリヒドラジノトリアジン、1,3−ビス(o−ビフェニルトリアジン)等のトリアジン系発泡剤等が挙げられる。
【0049】
上記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナケイ酸ナトリウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン等が挙げられる。
【0050】
上記ポリオール化合物はペンタエリスリトール化合物を含むが、その他のポリオール化合物も使用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ジグリセリン、デキストロース、ソルビトール、シュークロースなどの低分子量ポリオール化合物;前記低分子量ポリオール化合物にアルキレンオキシドを付加させたポリオール化合物等が挙げられる。
【0051】
また、本発明のハロゲン含有樹脂組成物には、他の安定化助剤を添加することができる。かかる安定化助剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p−第三ブチル安息香酸、ゼオライト、過塩素酸塩等が挙げられる。
【0052】
その他、本発明のハロゲン含有樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤等を配合することができる。
上記の各種添加剤の使用量は、本発明のハロゲン含有樹脂組成物の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは上記ハロゲン含有樹脂100質量部に対して合計で100質量部以下とする。
【0053】
また、本発明のハロゲン含有樹脂組成物においては、加工方法に制限されることなく使用することが可能であり、例えば、カレンダー加工、ロール加工、押出成型加工、射出成型加工法、溶融流延法、加圧成型加工、粉体成型等に好適に使用することができる。
【0054】
本発明のハロゲン含有樹脂組成物においては、壁材、床材、窓枠、壁紙等の建材;自動車用内装材;電線用被覆材;農業用資材;食品包装材;塗料;ホース、パイプ、シート、玩具等の雑貨として好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0056】
〔実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−2〕
表1に記載のペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の混合物を、230℃にて撹拌しながら透明になるまで加熱溶融し、冷却固化後、粉砕によって150メッシュパス(粒子径100μm以下)の混合物を得た。これを用いて下記の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0057】
(融点の測定)
表1に記載の混合物の融点について、示差走査熱量測定機(サーモプラスTG8120;(株)リガク製)にて、窒素雰囲気下(20ml/min)、300℃まで10℃/minの条件で加熱し、融解ピークが始まる温度を求めた。
【0058】
【表1】

【0059】
〔実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−6〕
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1000)100質量部、ハイドロタルサイト(アルカマイザー1;協和化学工業(株)製)0.5質量部、ステアリン酸カルシウム0.5質量部、ステアリン酸亜鉛1質量部を基準配合とし、かかる基準配合にさらに表2に記載の混合物を0.8質量部配合してハロゲン含有樹脂組成物を得た。
尚、実施例及び比較例2−1〜2−3に記載の混合物は前記実施例1−1と同様な方法で加熱溶融を実施したものであるのに対し、比較例2−4〜2−6の混合物は、加熱溶融を実施していない混合物である。また、比較例2−5の混合物は微粉砕を行い、200メッシュパス(粒子径約75μm以下)したものを評価に用いたが、その他の混合物は100メッシュパス(粒子径約150μm以下)したものを評価に用いた。
これらのハロゲン含有樹脂組成物について、下記に示す評価を実施しその結果を表2に示す。
【0060】
(動的熱安定性)
上記ハロゲン含有樹脂組成物を、ラボプラストミル(30C150型;東洋精機(株)製、190℃、50rpm、65g/60cc)に投入し、かかるハロゲン含有樹脂組成物の混練によって、樹脂が分解し混練トルクが上昇するまでの分解時間を測定した。
【0061】
(耐プレートアウト性)
上記ハロゲン含有樹脂組成物について、二軸押出機に投入し、押出温度180℃、スクリュー回転速度20rpmにて混練した樹脂をただちにロール加工機で、幅20mm、厚み2mmのシート状に成形し、かかるシートの表面を目視により観察してプレートアウトの大小を評価した(評価基準;○:付着物なし、△:わずかに付着物あり、×:付着物大)。
【0062】
(静的熱安定性)
上記ハロゲン含有樹脂組成物を、190℃に加熱したロール加工機に投入し、3分間のロール混練を実施して厚み0.5mmのシートを作成し、かかるシートを裁断して縦20mm、横10mmの短冊状試験片を製作した。
そして、かかる短冊状試験片を190℃のオーブンに入れ、15分ごとに取り出しながら、短冊状試験片が部分的に黒化する時間を確認した。
【0063】
【表2】

【0064】
表1より、混合物の総量に対し、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和、又はペンタエリスリトール縮合物の含有量が20質量%乃至80質量%の範囲外の混合物である場合、溶融処理を実施しても、混合物の融点は高く(比較例1−1及び比較例1−2)、表2より、かかる混合物を含有するハロゲン含有樹脂組成物(比較例2−2及び比較例2−3)は、動的熱安定性や静的熱安定性が低く、かつ表面にプレートアウトが現れる問題がある。
また、比較例2−5より、ペンタエリスリトール化合物を微粉砕することによって、プレートアウトの問題については改善されるものの、動的熱安定性や静的熱安定性に対する効果は小さいことが明らかである。
そして、混合物の総量に対し、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和及びペンタエリスリトール縮合物の含有量がともに20質量%乃至80質量%の範囲内であっても、溶融処理を実施した混合物で無ければ、かかる混合物を含有するハロゲン含有樹脂組成物は、満足できる性能は得られない(比較例2−6)。
【0065】
それに対して、本願発明のペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和及びペンタエリスリトール縮合物の含有量がともに20質量%乃至80質量%の溶融処理した混合物を含有するハロゲン含有樹脂組成物(実施例2−1〜2−3)は、動的熱安定性、耐プレートアウト性及び静的熱安定性について、優れた効果を示すことが明らかである。
【0066】
以上より、本発明は、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和及びペンタエリスリトール縮合物の含有量がともに20質量%乃至80質量%の範囲内である溶融処理した混合物をハロゲン含有樹脂組成物に含有させることによって、動的熱安定性、耐プレートアウト性及び静的熱安定性について優れた効果を奏すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物を加熱溶融して得られる混合物であって、混合物の総量に対して、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの含有量の和が20〜80質量%であり、3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量が20〜80質量%である混合物。(但し、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及び3量体以上のペンタエリスリトール縮合物の含有量の和は、100質量%となる。)
【請求項2】
請求項1記載の混合物を含有する熱安定剤。
【請求項3】
請求項1記載の混合物を含有するハロゲン含有樹脂組成物。
【請求項4】
ハロゲン含有樹脂100質量部に対して、上記混合物を0.05質量部〜10質量部含有する請求項3記載のハロゲン含有樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、β−ジケトン化合物、ハイドロタルサイト化合物及び脂肪酸亜鉛の中から選ばれる少なくとも一種以上を含有する請求項3又は4記載のハロゲン含有樹脂組成物。


【公開番号】特開2007−302833(P2007−302833A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134534(P2006−134534)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】