説明

混合顆粒剤の製造方法

【課題】 配合禁忌の薬物又は栄養成分を含む原顆粒剤を複数種含有するにもかかわらず、配合変化が生じないような混合顆粒剤を、効率的な方法により製造することができる方法及びその方法により得られる混合顆粒剤を提供する。
【解決手段】 互いに配合禁忌である薬物又は栄養成分を含有する顆粒剤を混合した混合顆粒剤を製造する方法において、(1)各薬物又は栄養成分ごとに、同一又は類似の造粒方法により、別個に2種以上の原顆粒剤を製造し、(2)前記各原顆粒剤を、水分が2%以下になるように乾燥し、(3)乾燥した各原顆粒剤を、添加剤を用いてコーティングし、(4)コーティングされた各原顆粒剤を混合し、(5)混合した原顆粒剤を水分透過性のない包装材料で密封包装することを特徴とする、混合顆粒剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合顆粒剤及びその製造方法に関する。さらに詳しく言うと、本発明は、互いに配合禁忌である薬物又は栄養成分を含有する混合顆粒剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物や栄養成分には、同一製剤中に配合すると、薬物又は栄養成分の分解が促進し、薬物の融点が降下したり、異臭が発生したり、製剤の着色変化が起こるなどの配合変化が生じる、いわゆる配合禁忌の薬物がある。
配合禁忌の薬物や栄養成分を含む顆粒剤を製造する方法として、配合変化を防止するために、配合禁忌の薬物を含む2種類以上の顆粒剤を別々に製造した後、混合する方法がある。さらに、顆粒剤同士の接触による配合変化を防止し、薬物自身の苦味を抑制するために、顆粒剤の表面に添加剤をコーティングする場合がある(以下、本明細書において、添加剤をコーティングする前の顆粒剤を「原顆粒剤」といい、2種以上の配合禁忌の薬物又は栄養成分を混合した顆粒剤を「混合顆粒剤」という場合がある)。添加剤をコーティングした混合顆粒剤を製造する場合、従来は、配合変化を防止するために、それぞれの原顆粒剤に添加剤をコーティングした後、そのコーティングされた各顆粒剤を混合していた。
【0003】
特許文献1には、イソプロピルアンチピリン(IPA)とIPAの配合禁忌薬物であるアセトアミノフェンとの混合顆粒剤を製造する方法が開示されている。特許文献1においては、IPAにマスキング剤を配合した原顆粒剤とアセトアミノフェンを配合した原顆粒剤を混合し、混合顆粒剤としている。
また、特許文献2には、原顆粒剤を一旦個別に調製したのち、混合流動槽中でコーティングする方法が開示されている。
すなわち、これらの特許文献に示されているように、従来は、原顆粒剤の表面を添加剤によってコーティングすれば、配合禁忌薬物の変性を抑制できると考えられてきた。しかしながら、それだけでは、配合変化の抑制という目的を達成できないことが、既に判明している。その最大の原因は、原顆粒剤を調整する際に使用される原料由来の水分、または、造粒工程に由来する水分にある。そのため、現在では、通常、原顆粒を混練造粒した後、装置内で乾燥させ、水分含量を5%程度に減少させてからコーティングすることが定法とされている。そして、コーティングによって薬物相互の接触を遮断することにより、薬物又は栄養成分相互の反応の抑制を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−19639号公報
【特許文献2】特開2005−60276号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術のように、配合禁忌の薬物や栄養成分の各原顆粒剤の水分を5%程度に減少させて、コーティングして混合顆粒剤を調製しても、顆粒同士が反応して、褐変化や凝固が発生することがしばしばあった。例えば、本明細書において、以下に例示するγアミノ酪酸(GABA)とビタミンCの組み合わせや、高麗ニンジンとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化したカプセル化剤の組み合わせ等においては、原顆粒剤を混合した直後から顆粒剤相互の凝固や褐変化が発生し、短時間で使用困難となることが発生している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような状況から、本発明者らは、配合禁忌の薬物や栄養成分の混合顆粒製剤における配合変化の原因について研究を行ったところ、原顆粒に存在する水分含量が、薬物又は栄養成分同士の相互反応に重要な役割を果たしていることを発見した。
本発明者らは、配合禁忌の薬物又は栄養成分を含む原顆粒剤を添加剤で被覆する場合において、各原顆粒剤の水分を2%以下とした後に、添加剤により被覆すれば、配合変化が生じず、製造工程も効率化することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の混合顆粒剤及びその製造方法を提供するものである。
(A) 互いに配合禁忌である薬物又は栄養成分を含有する顆粒剤を混合した混合顆粒剤を製造する方法において、
(1)各薬物又は栄養成分ごとに、同一又は類似の造粒方法によって別個に2種以上の原顆粒剤を製造し、
(2)前記各原顆粒剤を、水分が2%以下になるように乾燥し、
(3)乾燥した各原顆粒剤を、添加剤を用いてコーティングし、
(4)コーティングされた各原顆粒剤を混合し、
(5)混合した原顆粒剤を水分透過性のない包装材料で密封包装する
ことを特徴とする、混合顆粒剤の製造方法。
(B) 前記工程(1)における造粒方法の1つが、三軸式混練装置による混練造粒法であることを特徴とする、前記(A)記載の混合顆粒剤の製造方法。
(C) 前記工程(3)における添加剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、前記(A)または(B)記載の製造方法。
(D) 前記工程(2)における乾燥が、真空乾燥法もしくは送風乾燥法、またはそれらの併用によるものであることを特徴とする、前記(A)〜(C)のいずれかに記載の製造方法。
(E) 前記工程(3)の後に、さらに、各原顆粒剤の水分を2%以下になるようにさらに乾燥する工程を設けることを特徴とする、前記(A)〜(D)のいずれかに記載の製造方法。
(F) 配合禁忌である薬物又は栄養成分を含む複数種の顆粒剤の混合物であって、前記複数種の顆粒剤の1種以上又は全ての顆粒剤の水分が2%以下であって、前記顆粒剤の表面がポリグリセリン脂肪酸エステルでコーティングされていることを特徴とする、混合顆粒剤。
(G) 配合禁忌である薬物又は栄養成分の組み合わせが、γアミノ酪酸とビタミンC、高麗ニンジンとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化剤、ビタミンCとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化剤、または金属塩とエイコサペンタエン酸を内包するシームレスカプセル化剤であることを特徴とする、前記(F)記載の混合顆粒剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配合禁忌の薬物又は栄養成分を含む2種以上の顆粒剤を任意の割合で含むにもかかわらず、褐変化等の配合変化が発生しない混合顆粒剤を製造することができる。さらに、本発明において、従来の薬剤で一般的に採用された造粒方法に変えて、三軸式混練装置による造粒法を用いて製造すると、製造工程を簡便化できるだけでなく、成分を均質に含有する顆粒剤を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、詳しく説明する。
本発明の混合顆粒剤の製造方法は、互いに配合禁忌である薬物又は栄養成分を含有する顆粒剤を混合した混合顆粒剤を製造する方法において、
(1)各薬物又は栄養成分ごとに、同一又は類似の造粒方法により、別個に2種以上の原顆粒剤を製造し、
(2)前記各原顆粒剤を、水分が2%以下になるように乾燥し、
(3)乾燥した各原顆粒剤を、添加剤を用いてコーティングし、
(4)コーティングされた各原顆粒剤を混合し、
(5)混合した原顆粒剤を水分透過性のない包装材料で密封包装する
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の混合顆粒剤に用いられる薬物又は栄養成分は、配合禁忌の二種以上の薬物又は栄養成分を含む。配合禁忌の薬物又は栄養成分の組み合わせは、限定されず、例えば、γアミノ酪酸とビタミンC、高麗ニンジンとエイコサペンタエン酸含有シームレスカプセル化剤、エイコサペンタエン酸含有シームレスカプセル化剤とビタミンC、高麗ニンジンとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化剤、ビタミンCとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化剤、または金属塩とエイコサペンタエン酸含有シームレスカプセル化剤等を挙げることができる。なお、本発明の混合顆粒剤は、配合禁忌の薬物又は栄養成分以外の薬物や栄養成分を含むこともでき、その種類は制限されない。
【0011】
原顆粒剤には、薬物又は栄養成分以外に、賦形剤、結合剤、崩壊剤など製剤学上許容される添加剤を含有することができる。
賦形剤としては、当該分野で公知のものを幅広く使用することが可能であり、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、D−マンニトール、粉末還元麦芽糖水あめ、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、D−ソルビトール、マルトース、デンプンおよびデンプン誘導体、アスパルテーム、グリチルリチン酸およびその塩、サッカリンおよびその塩、ステビアおよびその塩、スクラロース、アセスルファムカリウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられ、その中でも、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプンは好ましい。これらの賦形剤は、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
結合剤としては、当該分野で公知のものを幅広く使用することが可能であり、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、デキストリン、デンプンおよびデンプン誘導体、グァーガム、アラビアゴム、トラガント、アルギン酸およびその塩、プルラン、カラギーナン、ゼラチン、寒天、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム等が挙げられ、その中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びメチルセルロースは好ましい。これらの結合剤は、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0013】
崩壊剤としては、当該分野で公知のものを幅広く使用することが可能であり、例えば、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。これらの崩壊剤は、1種もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明において、互いに配合禁忌の薬物又は栄養成分と好ましくは上記の添加剤等を含む原顆粒剤は、それぞれ別々に製造される。この原顆粒剤の製造においては、各薬物又は栄養成分ごとに同一または類似の造粒方法により製造することができる。
原顆粒剤の製造方法は、特に限定されず、当該分野で公知の方法を幅広く使用することが可能であり、具体的には、押し出し造粒法、転動造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動流動造粒法、混練造粒法等が挙げられる。これらの中でも、混練造粒法は好ましい。
【0015】
混練造粒を行う造粒機としては、混練翼、解砕翼を備えた装置を使用する造粒機を用いることが好ましい。このような造粒機としては、例えば、品川工業所社が提供する三軸式混練造粒機を挙げることができる。この装置については、特表2008−529755公報に開示されており、本発明の製造方法は、この公報に記載の方法に基づいて実施することができる。本発明において、三軸式混練装置による造粒法を用いて製造すると、各顆粒を任意の割合により造粒できる他、製造工程を簡便化できるだけでなく、顆粒剤の各成分を均質に含有する顆粒剤を調製することができ、好ましい。
【0016】
なお、本発明において、薬物又は栄養成分ごとに、同一または類似の造粒方法によって2種以上の原顆粒剤を別個に製造する場合、互いに配合禁忌の薬物又は栄養成分が別個に造粒されるのであれば、各顆粒剤は配合禁忌でない他の薬物又は栄養成分を含んでいてもよい。
【0017】
造粒された原顆粒剤の嵩密度は、特に限定されないが、0.35〜0.75g/mLが好ましく、0.40 〜0.65g/mLがさらに好ましく、0.5〜0.63g/mLが特に好ましい。嵩密度が0.35g/mLより小さいと、嵩高くなり、分包量が増大する恐れがある。また、嵩密度が0.75g/mLを超えると、嵩が小さくなり、重質な顆粒が得られ、分包量も減少する。しかし、素原料として、比重の大きいミネラル原料以外の原料粉体物性を考慮すると、0.75g/mL以上の顆粒を調製することは比較的困難である。そのような状況下、嵩密度の大きい顆粒が添加されると、種々の顆粒間での嵩密度差が大きくなり、偏析を引き起こし、一剤化顆粒の混合均一性の担保が難しくなる恐れがある。
また、原顆粒剤の50%粒子径は、特に限定されないが、400〜700μmが好ましく、450〜650μmがさらに好ましく、500〜600μmが特に好ましい。50%粒子径が700μmより大きいと、飲用しにくくなり、400μmより小さいと、コーティング中に顆粒剤同士が凝集する恐れがある。
【0018】
なお、原顆粒剤に添加剤をコーティングする際には、配合する原顆粒剤の嵩密度差および50%粒子径の差が重要な要因となる。原顆粒剤の嵩密度の差としては、0〜30(w/w)%とすることが好ましく、0〜15(w/w)%とすることがさらに好ましく、0〜10(w/w)%とすることが特に好ましい。嵩密度差が30(w/w)%)より大きいと、混合均一性の確保が難しくなる。
また、50%粒子径の差は、0〜30%とすることが好ましく、0〜20%とすることがさらに好ましく、0〜15%とすることが特に好ましい。50%粒子径の差が、30%を超えると、混合均一性の確保が難しくなる。
したがって、原顆粒剤に添加剤をコーティングする前に、原顆粒剤の嵩密度差および50%粒子径差が上記の範囲となるように、原顆粒剤の造粒、整粒、分級等の造粒加工をすることが好ましい。
【0019】
次に、得られた原顆粒剤の水分の乾燥処理を行う。
乾燥処理は、原顆粒剤の水分が2%以下になるまで乾燥することが必要である。
乾燥の方法は特に限定されず、通常の顆粒乾燥に用いる乾燥方法であればどのような方法であっても採用できるが、真空乾燥法及び送風乾燥法は好ましい。真空乾燥法と送風乾燥法は、それぞれ単独で実施しても、併用によってもよい。しかしながら、真空乾燥法を用いると、可能な限り顆粒剤の水分を除去することができるため、特に好ましい。
なお、水分含量が2%を超えると、配合禁忌の薬物又は栄養成分の顆粒の分解促進、薬物の融点降下、製剤の着色変化、異臭の発生等の種々の配合変化が生じるという不都合がある。
【0020】
次に、乾燥した各原顆粒剤の表面を、添加剤によりコーティングする。コーティングのための添加剤は、限定されないが、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。なお、コーティングは、配合禁忌の薬物又は栄養成分の顆粒の配合変化を抑制するだけでなく、顆粒中に含まれる薬物の苦味を抑制する効果も併せ持つ。
コーティングのための添加剤の量は、原顆粒剤100質量部に対して、1〜1000質量部とすることが好ましく、10〜100質量部とすることがさらに好ましく、重量増加抑制とコーティング効果を考慮すると、約20質量部前後とすることが特に好ましい。
【0021】
原顆粒剤に、添加剤をコーティングする方法としては、上述した品川工業所製の三軸式混練造粒機を使用することが好ましい。この場合、原顆粒を調整した装置を引き続き、コーティングにおいても用いることができる。
すなわち、原顆粒を調製した装置に、コーティングのための添加剤、好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの所要量を加えて、被覆することができる。コーティングにあたっては、容器内温度を、コーティング剤の融点付近の温度とすることが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる場合は、その融点付近の温度、約55℃とすることが好ましい。
【0022】
添加剤でコーティングされた混合顆粒剤の嵩密度は、0.55〜0.75g/mLであることが好ましく、50%粒子径は450〜650μmであることが好ましい。また、当該混合顆粒剤中の薬物又は栄養成分含量の標準偏差は、好ましくは5%以内、さらに好ましくは4%以内、特に好ましくは3%以内である。
【0023】
このようにして得られた原顆粒剤を混合して目的の複合顆粒を調整してもよいが、上記のようにコーティングされた後の原顆粒剤の水分含量が2%以上となってしまうことがあり、そうすると、配合禁忌の薬物や栄養成分を混合した原顆粒剤が速やかに相互反応し、褐変化や凝固が進行する。このため、コーティング後に、原顆粒剤について、再度、乾燥処理を行うことが好ましい。顆粒の乾燥は特に限定されないが、真空乾燥によることが好ましい。真空乾燥装置を用いた場合、2〜8時間の乾燥処理を行うことにより、水分含量を2%以下とすることが好ましい。
【0024】
次に、原顆粒剤を混合し、水分透過性のない包装材料で密閉包装し、本発明の混合顆粒剤を製造することができる。
混合は、通常使用される混合装置であれば、特に制限されず、いずれのものも使用することができるが、V型回転式混合装置を使用すると、効率よく均一な顆粒製剤を調整することができ、好ましい。
【0025】
本発明の混合顆粒剤は、経時保存しても、配合変化が起こらず、外観もほとんど変化せず、異臭が発生することもない。具体的には、2ヶ月以上、好ましくは4ヶ月以上、より好ましくは6ヶ月以上、40℃、相対湿度75%以上で経時保存しても、配合変化が起こらず、外観の変化も見られない。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明を制限するものではない。
【0027】
A.原顆粒剤の製造
1)高麗ニンジンエキス原顆粒剤
高麗ニンジンカンソウエキス0.8Kgにエタノール0.07Kgを加え、三軸混練造粒装置(トリプルマスターTMGV−5:品川工業所社製)を用いて混合造粒した。
次いで、あらかじめ調整しておいた、結晶セルロース(セオラスUF−F702:旭化成ケミカルズ社製)0.1499Kgに精製水0.012Kgを加え、同じく三軸混練造粒装置(トリプルマスターTMGV−5:品川工業所社製)を用いて混合したものを0.081Kg加え、さらに造粒し、50℃で一次乾燥を行った。次いで、粒子の解砕処理を行った後、前記装置から取り出し、送風乾燥装置を用いて50℃で12時間乾燥させ、顆粒の水分を2%以下にした。この乾燥顆粒をJIS16メッシュの篩で整粒し、粒度をそろえ、原顆粒剤1Kgを得た。
【0028】
2)γアミノ酪酸(GABA)原顆粒剤
GABAエキス(オリザ油化社製)0.8Kg及び結晶セルロース(セオラスFD−F20:旭化成ケミカルズ社製)0.2Kgに、エタノール0.1kgを加え、上記トリプルマスターTMGV−5を用いて一次造粒を行った。次いで、50%エタノール100gを加え、二次造粒を行い、さらに水0.05Kgを添加して三次造粒を行った後、1次乾燥を行った。その後、原顆粒剤を装置から取り出し、送風低温乾燥機を用いて、50℃で12時間乾燥させ、顆粒の水分含量を2%以下にした。乾燥終了後、上記と同様に16メッシュの篩で、篩い分けし、整粒し、原顆粒剤1Kgを得た。
【0029】
3)ビタミンC顆粒剤
ビタミンC(BASF社製)0.7639Kg及び水溶性セルロース粉末(メトローズSE−60:信越化学社製)0.0316Kgを、前記トリプルマスターTMGV−5を用いて混合した後、造粒液として、精製水0.0405Kgに上記水溶性セルロース0.0045Kgを溶解した液を用いて、混練造粒を行った。造粒後、原顆粒剤を、送風乾燥機を用いて50℃で12時間乾燥させ、水分を2%以下とした、原顆粒剤0.8kgを得た。
【0030】
4)エイコサペンタエン酸(EPA)を内包するシームレスカプセル化剤
WO2009/004999号公報の記載に従って、同公報の実施例1の組成を有するエイコサペンタエン酸を内包するゼラチンシームレスカプセル化剤10kgを得た。
【0031】
B.原顆粒剤のコーティング
1)コーティング法
上記1)〜3)で調製した原顆粒剤8質量部に対して、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポエムTR−FB:理研ビタミン社製)2質量部を加え、原顆粒剤を調製した際に用いたトリプルマスターTMGV−5を使用して、コーティングを行った。コーティングにあたっては、容器内温度をポリグリセリン脂肪酸エステルの軟化点付近の温度設定(55℃)とした。冷却後、16メッシュの篩を用いて篩い分けし、整粒した。
2)原顆粒剤の特性
こうして得られた原顆粒剤は、水分含量が2%以下で、コーティングも施されており、他の粒子との反応性が抑制されたものとなった。
【0032】
C.混合・包装
GABA顆粒剤とビタミンC顆粒剤(実施例1)、高麗ニンジン顆粒剤とエイコサペンタエン酸(EPA)含有シームレスカプセル化剤(実施例2)、EPA含有シームレスカプセル化剤とビタミンC顆粒剤(実施例3)の組み合わせで、それぞれを等量用い、V型混合機により混合して、各1gを高バリア性フィルムであるGXフィルム(トッパン社製)で包装し、混合顆粒剤とした。
【0033】
D.比較品の調製
(比較例1)
上記「A.1)〜3)」で得た原顆粒剤を用い、コーティングを行わずに、上記Cと同様に混合して混合顆粒剤を得た。
(比較例2)
また上記「A」における水分2%以下とする乾燥前の原顆粒剤を用いて、高水分(5%以上)のまま、上記「B.1)」と同様にコーティングし、上記Cと同様に混合して混合製剤を得た。
【0034】
E.保存試験と評価
上記C、Dで調製した実施例1〜3、比較例1及び比較例2の製品を40℃、湿度75%の環境下に2週間置いて、配合変化、外観の変化、異臭の発生等を観察した。観察結果を下記、表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示される結果から明らかなように、実施例においては、2週間経過しても、配合変化、外観の変化、異臭の発生等が生じなかったが、コーティングを行わなかった比較例1や、水分を2%に減少させるための乾燥を行わなかった比較例2においては、早い段階から配合変化や外観の変化が起こり、異臭さえ発生した。
これらのことから、造粒後に、水分を2%以下に減少させた後コーティングを行うことが、配合変化の防止のために必須であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、配合禁忌の薬物又は栄養成分を2種以上配合するにもかかわらず、凝固や褐変化の発生しない混合顆粒剤を製造することができる。これにより、投与及び摂取が必要な薬剤やサプリメントの数を減らすことができ、患者やサプリメント利用者の負担減にも貢献することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに配合禁忌である薬物又は栄養成分を含有する顆粒剤を混合した混合顆粒剤を製造する方法において、
(1)各薬物又は栄養成分ごとに、同一又は類似の造粒方法により、別個に2種以上の原顆粒剤を製造し、
(2)前記各原顆粒剤を、水分が2%以下になるように乾燥し、
(3)乾燥した各原顆粒剤を、添加剤を用いてコーティングし、
(4)コーティングされた各原顆粒剤を混合し、
(5)混合した原顆粒剤を水分透過性のない包装材料で密封包装する
ことを特徴とする、混合顆粒剤の製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)における造粒方法の1つが、三軸式混練装置による混練造粒法であることを特徴とする、請求項1記載の混合顆粒剤の製造方法。
【請求項3】
前記工程(3)における添加剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(2)における乾燥が、真空乾燥法もしくは送風乾燥法、またはそれらの併用によるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(3)の後に、さらに、各原顆粒剤の水分を2%以下にするための乾燥工程を設けることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
配合禁忌である薬物又は栄養成分を含む複数種の顆粒剤の混合物であって、前記複数種の顆粒剤の1種以上又は全ての顆粒剤の水分が2%以下であって、前記顆粒剤の表面がポリグリセリン脂肪酸エステルでコーティングされていることを特徴とする、混合顆粒剤。
【請求項7】
配合禁忌である薬物又は栄養成分の組み合わせが、γアミノ酪酸とビタミンC、高麗ニンジンとエイコサペンタエン酸含有シームレスカプセル化剤、エイコサペンタエン酸含有シームレスカプセル化剤とビタミンC、高麗ニンジンとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化剤、ビタミンCとゼラチン皮膜を有するシームレスカプセル化剤、または金属塩とエイコサペンタエン酸含有シームレスカプセル化剤であることを特徴とする、請求項6記載の混合顆粒剤。

【公開番号】特開2012−51831(P2012−51831A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194750(P2010−194750)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】