説明

混合LB膜を用いたカドミウムイオンセンサー

【課題】水質管理の分野において強く求められている、現場計測を可能とする新規な簡易高感度カドミウムイオンセンサーを提供する。
【解決手段】カドミウムイオン応答性を示す色素を含むラングミュア・ブロジェット(LB)膜と、高分子LB膜との混合LB膜を支持体上に単層あるいは多層に累積してなる、機械的安定性が高く、かつイオン応答性を示す、簡易で、高感度のカドミウムイオン検出が可能なカドミウムイオンセンサー。
【効果】カドミウムイオンを簡便、迅速で、低コスト及び高感度で検出定量することが可能な固体センサー材の色調変化を利用した新しいタイプのカドミウムイオンセンサーを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試料などに含有される有害なカドミウムイオンの分析に使用されるカドミウムイオン濃度センサーに関するものであり、更に詳しくは、本発明は、カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合ラングミュア・ブロジェット累積膜(混合LB膜)を感応部位とするカドミウムイオンセンサーに関するものである。本発明は、水質管理の分野において、強く求められている現場計測を可能とする簡易高感度カドミウムイオンセンサーを提供するものである。本発明は、固体センサー材の色調の変化を利用する新しい方式を採用することで、現行のカドミウムの排水基準値(0.1mg/L)、環境基準値(0.01mg/L)を簡便、迅速、高感度、かつ低コストで検出定量することを実現できる新しいタイプのカドミウムイオンセンサーに関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
環境水等の環境試料水中のカドミウムイオンは、微量であっても生態系に大きな影響を与え、特に、人体への健康被害は非常に深刻であることは、例えば、富山県で起きたいわゆるイタイイタイ病などの事例からもよく知られている。したがって、環境試料水中のカドミウムイオンの濃度を把握することは、環境保全上極めて重要な事項である。従来、これらの環境試料水中のカドミウムイオン濃度の測定には、煩雑で、操作に熟練と時間を要する吸光光度法、原子吸光光度法あるいは誘導結合プラズマ発光分析法などの機器分析法が採用されてきた(JIS)。
【0003】
したがって、カドミウムイオンによる環境水の汚染の把握を迅速に行うことは、困難であり、そのことが、汚染対策に手間取る原因の一つともなっている。一方、環境試料中の様々なイオンの濃度の計測に簡易な方法が提案されており、一部は製品化されているが、例えば、カドミウムイオンについては、このような簡易計測法が実用化されている例はほとんどなく、また、一般に利用されているイオン電極法は、その検出感度が十分ではないという欠点があった。
【0004】
また、ラングミュア・ブロジェット膜では、容易に有機薄膜を得ることができるため、これを利用する各種センサーに関する研究が盛んに行われている。先行技術として、例えば、特定の化学物質に対して活性を有する酵素、抗原あるいは抗体分子をトランスデューサー上に固定化した化学センサー(特許文献1)、光学的に検知可能な染料と一緒に、決定されるイオンのためのイオノホアを含む、親水性領域及び疎水性領域を含んでなる光化学センサー(特許文献2)、試料中の特定成分を測定するための、膜電位感受性色素を超薄膜のLB膜内に固定した光センサー(特許文献3)、等が提案されている。しかし、これらの薄膜は、一般に、機械的安定性に欠ける欠点を持つことから、その構造安定性の向上が実用上不可欠である。そのため、より安定な高分子LB膜を用いる手法(特許文献4)が提案されているが、この手法では、支持体から最も離れている単分子LB膜の最外面が親水性であることに限定されており、更に、単分子化合物と高分子化合物との混合膜については何も示されていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−207951号公報
【特許文献2】特開2000−28532号公報
【特許文献3】特開平5−332937号公報
【特許文献4】特開昭63−166263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、水中カドミウムイオンを高感度で簡便に検出できるカドミウムイオンセンサーを開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜を感応部位として支持体に構築することで目標とするカドミウムイオンセンサーが得られることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、環境水等の水中カドミウムイオンを高感度で簡便に検出できるカドミウムイオンセンサーを提供することを目的とするものである。更に、本発明は、カドミウムイオンセンサーにおいて、環境水等の水中カドミウムイオンと反応して色調を変化させる性質を有する色素と高分子化合物とを含む混合ラングミュア・ブロジェット膜を感応部位として支持体に構築することでカドミウムイオンセンサーとして機能する新規カドミウムイオンセンサーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)カドミウムイオンセンサーにおいて、感応部として、カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜を支持体に単層あるいは多層に累積してなる膜状の感応部位を有することを特徴とするカドミウムイオンセンサー。
(2)カドミウムイオン応答性色素が、水中カドミウムイオンと反応して色調を変化させる性質を有する色素である、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(3)上記色素が、アゾ色素、トリフェニルメタン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、又はシッフ塩基系色素である、前記(2)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(4)高分子化合物が、ポリペプチド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリスルフィド、又はポリスルホンからなる縮合系高分子化合物を含む、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(5)高分子化合物が、カルボキシル基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミノ基、アミド基、イミド基、尿素基、水酸基、又はスルホン酸基からなる親水性基を有する付加重合化合物系高分子化合物を含む、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(6)支持体が、ガラス板、合成樹脂板、又は石英板である、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(7)カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜において、それぞれの成分が同一膜内で混合されている、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(8)カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜において、それぞれの成分の単独膜が別々に積層して構築されている、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(9)支持体から最も離れた膜が高分子化合物を含むLB膜である、前記(1)に記載のカドミウムイオンセンサー。
(10)上記高分子化合物を含むLB膜が、多層に累積されている、前記(9)に記載のカドミウムイオンセンサー。
【0009】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、カドミウムイオンセンサーにおいて、感応部として、カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜を支持体に単層あるいは多層に累積してなる膜状の感応部位を有することを特徴とするものである。また、本発明は、上記カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜において、それぞれの成分が同一膜内で混合されていること、また、上記カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜において、それぞれの成分の単独膜が別々に積層して構築されていること、を特徴とするものである。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者は、カドミウムイオンセンサー材料の開発につき鋭意検討を重ねた結果、環境水等の水中カドミウムイオンと反応してその色調を変化させる色素を公知の手法であるラングミュア・ブロジェット法により支持体上に薄膜化することにより、水中カドミウムイオンに応答して色調を変化させる性質を有し、かつ高い構造安定性を持つカドミウムイオンセンサーを創製できることを見出した。
【0011】
本発明で用いられる、水中カドミウムイオンと反応してその色調を変化させる色素としては、特定のカドミウムイオンに応答してその色調を変化させる性質を持ったもので、LB膜を形成できるものであれば、どのような色素でも利用できるが、好ましくは、水に溶け難い色素が利用され、好適には、例えば、化1で表されるようなアゾ色素をあげることができる。また、その他の例として、トリフェニルメタン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、シッフ塩基系色素等が例示される。このように、本発明では、カドミウムイオンと反応してその色調を変化させ、かつ、本発明による作製方法でLB膜を形成する色素であれば、どのような色素でも利用可能である。
【0012】
【化1】

【0013】
本発明では、色素分子は、単独であるいは高分子化合物と混合して支持体上に成膜される。いずれの場合も、色素分子あるいは色素分子と高分子化合物との混合物を、揮発性の溶媒に溶解し、これを水面上に展開して膜化して支持体に単層あるいは多層に累積して移し取ることにより、単分子膜あるいは多層膜として成膜される。支持体に膜を移し取る方法には、主として、垂直浸漬法と水平付着法とが利用可能であるが、本発明では、膜を移し取る方法に制限はなく、どのような方法も用いられる。
【0014】
また、色素と高分子化合物の混合比率には、特に制限はなく、水中カドミウムイオンと反応して起こる色調の変化を読み取れる範囲の色素量から適切に決定される。更に、膜を安定させて色素の損失を少なくするために、色素を含む膜の最外膜の上に、色素を含まない高分子化合物の膜を形成させることが好適である。この場合、本発明では、色素を含む膜の最外膜が親水性であるか、疎水性であるかを問わない。また、最外膜の上に積層する高分子化合物のLB膜の積層数にも、特に制限はなく、膜の安定性を考慮して任意に決定することができる。
【0015】
本発明において、LB膜を累積する支持体は、水面から累積膜を移し取ることができる支持体であればどのようなものでも良いが、例えば、ガラス板や合成樹脂板、石英板などが好ましく用いられる。上記合成樹脂板としては、好適には、アクリル板、ポリ塩化ビニル板、ポリエチレン板、ポリプロピレン板、テフロン(登録商標)板等が例示される。しかし、これらに制限されるものではない。また、これらは、例えば、10mm×50mm、厚さ1mmの形状で使用されるが、その材料及び形態は特に制限されるものではなく、実際の使用に合わせて適宜その材料及び形態を任意に選択することができる。
【0016】
本発明で用いられる高分子化合物としては、分子量が1000以上、好ましくは10000以上のものが望ましい。こうした高分子化合物は、ラングミュア・ブロジェット膜として成膜できるものであればどのようなものでも用いることができるが、本発明において、望ましい高分子化合物として、例えば、以下のものが挙げられる。
【0017】
すなわち、本発明では、高分子化合物として、好適には、例えば、ポリペプチド、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド等の縮合系高分子化合物、及び、エステル基、アミド基、ケトン基、カルボキシル基、イミド基、尿素基。炭酸エステル基、アミノ基、水酸基、エーテル基等の親水性基を有する付加重合化合物系高分子化合物、あるいはこれらと同等ないし類似の性質を持つ化合物が用いられる。
【0018】
本発明において、前記化1で表される色素と、支持体であるガラスプレートとを用いて作製されたカドミウムイオンセンサーは、図1に示すような可視紫外吸収スペクトルを示し、オレンジ色を呈する。これは、水中カドミウムイオンと反応して、その濃度に応じて紫色に変色し、したがって、その吸収スペクトルも図1のように変化する。本発明において、カドミウムイオン濃度は、この支持体の色調の変化を目視で判定する方法、及び、波長600nmの吸光度を可視紫外吸光光度計などの機器を用いて計測する方法、を用いることで測定することができる。
【0019】
従来、カドミウムイオン濃度の測定の方法及び装置では、吸光光度法、原子吸光光度法、誘導結合プラズマ発光分析法等の機器分析法が採用されているが、これらの方法及び装置は、煩雑で操作に熟練と時間を要することから、その使用の範囲が大きく制限されるという問題点があった。これに対して、本発明では、カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物からなる混合LB膜を感応部位として用いた、固体センサー材の色調の変化を利用する新しい方式を採用することで、現行のカドミウムの排水基準値及び環境基準値を簡便、迅速、高感度、かつ低コストで検出定量できる、現場計測が可能な新しいタイプのカドミウムイオンセンサーを構築し、提供することを実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、簡便な操作、高感度、及び低コストで、水中カドミウムイオンを検出定量できるカドミウムイオンセンサーを提供することが可能である。
(2)本発明によれば、例えば、前記化1で表される色素と支持体であるガラスプレートとを用いて作製されたカドミウムイオンセンサーを用いて、10−7M(M=mol/l)の水中カドミウム濃度を、熟練した操作を必要とせずに、15分以内に検出することが可能である。
(3)同濃度のカドミウムイオンを、従来技術で測定しようとした場合、大型の装置を用いて、熟練した分析者による、通常1時間以上の操作が必要であるが、本発明では、その操作性を大幅に改善することができる。
(4)本発明では、選定された特定の性質を有する色素を本発明の上記構成に基づいてセンサー化したことにより、色素だけでは得られないカドミウムイオンセンサーとしての格別の効果が得られる。
(5)本発明では、カドミウムイオンに応答する特定の色素を選択し、本発明の技術を適用することで同様の効果を有するカドミウムイオンセンサーを構築できる。
(6)本発明では、色素をLB膜として累積することができる支持体を選択し、本発明の技術を適用することで同様の効果を有するカドミウムイオンセンサーを構築できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、製造例及び実施例によって本発明を具体的に説明するが、以下の製造例及び実施例は、本発明の範囲を限定あるいは制限するものではない。
【0022】
製造例1
まず、本発明で好ましく利用される前記化1で表される色素を、ベンゼンに溶解し(10−3mol dm−3)、その200μLを水槽内の水面上に展開したのち、水相表面を適当な方法で圧縮し、水面上に色素膜を形成させた。次いで、あらかじめ水槽内に設置しておいたガラスプレートを適当な速度で垂直に引き上げ、水面上の色素膜をガラスプレート上に移し取った。このガラスプレートを再度垂直に水槽内に押し戻して、次の色素膜を積層させた。
【0023】
このようにして、所定の積層数に達した時点で、水面上の色素を吸い取るなどして取り除き、本発明で好ましく利用される高分子のベンゼン溶液(10−3mol dm−3)200μLを水面上に展開した。展開後、表面を再び圧縮し、水面上に高分子LB膜を作製したところで、前述の色素を積層したガラスプレートを上下させることで、最外面に高分子LB膜を形成させた。
【0024】
製造例2
また、前記化1で表される色素と高分子LB膜との混合ベンゼン溶液(10−3mol dm−3)をあらかじめ作製し、その200μLを水槽内の水面上に展開したのち、水相表面を適当な方法で圧縮し、水面上に色素−高分子混合LB膜を形成させた。次いで、あらかじめ水槽内に設置しておいたガラスプレートを適当な速度で垂直に引き上げ、水面上の色素−高分子混合LB膜をガラスプレート上に移し取った。このガラスプレートを再度垂直に水槽内に押し戻して、次の色素−高分子混合LB膜を積層させた。
【0025】
このようにして、所定の積層数に達した時点で、水面上の色素等を吸い取るなどして取り除き、本発明で好ましく利用される高分子のベンゼン溶液(10−3mol dm−3)200μLを水面上に展開した。展開後、表面を再び圧縮し、水面上に高分子LB膜を作製したところで、前述の色素−高分子混合LB膜を積層したガラスプレートを上下させることで、最外面に高分子LB膜を形成させた。
【実施例1】
【0026】
pHを7.5とした1×10−4mol dm−3のカドミウムイオン水溶液20mLを、50mLふた付きサンプルビンに取り、これに、製造例1あるいは製造例2で作製したカドミウムイオンセンサーを入れて、温浴中40℃で放置した。放置時間を変えて、試料ビンからセンサーを取り出し、その吸収スペクトルを測定した。その結果を図1及び2に示す。このことから、15分間以上でカドミウムイオンに応答したセンサーの吸収スペクトル変化がほぼ一定になることがわかった。
【実施例2】
【0027】
それぞれpHの異なる1×10−4mol dm−3のカドミウムイオン水溶液20mLを、50mLふた付きサンプルビンに取り、これに、製造例1あるいは2で作製したカドミウムイオンセンサーを入れて、温浴中40℃で15分間放置した。次いで、試料ビンからセンサーを取り出し、その吸光度を測定した。その結果を図3に示す。このことから、最も最適なpHはおよそ7.5であることが判明した。
【実施例3】
【0028】
10mLの試料水溶液を、50mLふた付きサンプルビンに取り、これにpH7.5の緩衝液10mLを加え、全量を20mLとした。これに、製造例1あるいは製造例2で作製したカドミウムイオンセンサーを入れて、温浴中40℃で15分間放置した。次いで、試料ビンからセンサーを取り出し、その変色の有無を目視により判定して、カドミウムの存在を判定した。この操作により判定可能な検体濃度は、少なくとも1×10−7M(約6ppb)であった。
【実施例4】
【0029】
同様に、既知量のカドミウムイオンを含む標準試料溶液10mLを、50mLのふた付きサンプルビンに取り、pH7.5の緩衝液10mLを加え、全量を20mLとした。これに、製造例1あるいは製造例2で作製したカドミウムイオンセンサーを入れて、温浴中40℃で15分間放置した。次いで、試料ビンからセンサーを取り出し、その600nmにおける吸光度を測定した。バックグラウンド補正後の吸光度とカドミウムイオン濃度との関係(検量線)を図4示す。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上詳述したように、本発明は、混合LB膜を用いたカドミウムイオンセンサーに係るものであり、本発明により、機械的に安定で、高感度なカドミウムイオンセンサーを作製し、提供することが可能となる。本発明により、固体センサー材の色調変化を利用した新しいカドミウムイオンの検出定量法を提供できる。本発明により、現行のカドミウムの排出基準値、環境基準値を簡便、迅速で、かつ低コストで検出定量できるカドミウムイオンセンサーを提供できる。本発明のカドミウムイオンセンサーを用いることで、高額な装置による多大な労力とコストをかけた従来法による測定に代えて、簡素な器具セットを用いて、測定現場において、排水基準値(0.1mg/L)あるいは環境基準値(0.01mg/L)のカドミウムイオンの検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明により製造したカドミウムイオンセンサーのカドミウムイオンによる吸収スペクトル変化に及ぼす反応時間の影響を示す。
【図2】本発明により製造したカドミウムイオンセンサーのカドミウムイオンによる吸光度変化に及ぼす反応時間の影響を示す。
【図3】本発明により製造したカドミウムイオンセンサーのカドミウムイオン応答に及ぼすpHの影響を示す。
【図4】本発明により製造したカドミウムイオンセンサーのカドミウムイオン検量線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カドミウムイオンセンサーにおいて、感応部として、カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜を支持体に単層あるいは多層に累積してなる膜状の感応部位を有することを特徴とするカドミウムイオンセンサー。
【請求項2】
カドミウムイオン応答性色素が、水中カドミウムイオンと反応して色調を変化させる性質を有する色素である、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項3】
上記色素が、アゾ色素、トリフェニルメタン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、又はシッフ塩基系色素である、請求項2に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項4】
高分子化合物が、ポリペプチド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリスルフィド、又はポリスルホンからなる縮合系高分子化合物を含む、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項5】
高分子化合物が、カルボキシル基、ケトン基、エステル基、エーテル基、アミノ基、アミド基、イミド基、尿素基、水酸基、又はスルホン酸基からなる親水性基を有する付加重合化合物系高分子化合物を含む、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項6】
支持体が、ガラス板、合成樹脂板、又は石英板である、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項7】
カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜において、それぞれの成分が同一膜内で混合されている、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項8】
カドミウムイオン応答性色素と高分子化合物とからなる混合LB膜において、それぞれの成分の単独膜が別々に積層して構築されている、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項9】
支持体から最も離れた膜が高分子化合物を含むLB膜である、請求項1に記載のカドミウムイオンセンサー。
【請求項10】
上記高分子化合物を含むLB膜が、多層に累積されている、請求項9に記載のカドミウムイオンセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−155366(P2007−155366A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347300(P2005−347300)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】