説明

混成部材を製造するための方法ならびに製造する際に使用するためのカバー

【課題】 従来技術から出発して本発明の根底をなす課題は、プレス型の汚れが少なくともできる限り防止することができ、混成部材の基本成形体が特定の領域で樹脂がない状態で保持できる、原動機付き車両のための品質的に価値の高い混成部材を製造するための使用に関する技術的に改善された方法を提示することである。
【解決手段】強化要素(3)とプレス型(4)の間にカバー(8)が組入れられ、さらにカバー(8)が連続した状態で貯蔵所から引出され、かつ基本成形体(2)の上で基本成形体上に位置決めされた強化要素(3)と一緒に置かれ、その後にプレス工程が行われ、その際にカバー(8)が樹脂を吸収する吸収層(9)を備えており、それによりプレス工程において強化要素(3)から流出する樹脂が吸収層(9)により収容され、カバー(8)がプレス工程の後に混成部材(1)から取除かれ、好ましくは貯蔵ユニットに巻かれることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による原動機付き車両のための混成部材を製造するための方法、ならびに請求項6の上位概念の特徴による混成部材を製造するためのカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の原動機付き車両の部材における必要なプロフィールは、部材の重量が少ないことであり、同時に目標とされる定められる強度特性である。従って原動機付き車両の製造業者は部材をできる限り軽量に構成しようと努力しており、従って燃料の削減と二酸化炭素の削減は原動機付き車両の重量を少なくすることにより容易になされる。同時に例えば車両の部材の強度、剛性および寿命のような部材の特性への要求は減らしてはならない。
【0003】
革新的な発端は混成部材であり、この混成部材はガラス繊維強化材料から成る強化要素により一部が強化されている金属製の基本成形体を備えている。このような混成部材は例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献2からは金属部材がガラス繊維強化材料により強化される製造方法が明らかになっており、したがって特に高い強度の要求と剛性の要求を満たす軽量の原動機付き車両の構造部材が製造される。
【0005】
混成部材を製造するために、一つあるいは複数の強化要素がいわゆるプレプレッグの様式で基本成形体にあるいは基本成形体内に位置決めされ、両部材はプレス型内で互いに押圧される。その際に、プレプレッグのマトリックス樹脂自体はガラス繊維強化材料と基本成形体の間の結合あるいは付着の役割を果たし、従って基本的な接合処理はなくなる。
【0006】
ここではとりわけ、プレス工程においてプレプレッグから流出する樹脂が問題となる。この樹脂は工程に起因する温度にあっては約160℃からは極めて低粘度である。その結果において、流出するかあるいは過剰の樹脂は相対的に容易に分かれ、かつ小さい隙間の中に侵入する。このことは、プレス型も部材も樹脂により不都合にぬらされるという結果を伴う。これにより一方では部材は余分な洗浄工程を受けさせられ、プレス型もたびたび手入れがされる。
【0007】
所望していない汚れを防止するために、ゴムパッキンあるいは特別に封止するように形成された型を設ける複数の提案がある。しかしながらこれらは実際にはわずかだけ有利であるように思われる。ゴムパッキンは最適ではない。その理由は腐食性の樹脂により鋳造材料が腐食してしまい、ゴムパッキンを予定以前に老朽化させてしまうことにある。さらにこれらの部材は余分な作業工程において配置しなければならず、その後再度除去されねばならない。これにより相応して費用がかかる。特別な型設計は製造技術的に費用がかかり、樹脂の高い耐クリープ性により完全な封止も保証されない。
【0008】
特許文献3からは、混成部材を製造するための方法が知られており、その際に金属製の基本成形体はガラス繊維強化材料から成る強化要素を備えており、それに加えて基本成形体と強化要素は組合され、かつプレス型内でプレスされる。
【0009】
さらに特許文献4により、プレス型内でガラス繊維強化された結合体を成形するために、ガラス繊維強化された結合体とプレス型の間にカバーが組入れられた従来技術に関する方法が記載されている。このカバーは樹脂を吸収する吸収層を備えており、これによりプレス工程においてガラス繊維強化された結合体から流出する樹脂は吸収層により収容される。
【0010】
さらに従来技術に関して、特許文献5が記載されている。この文献からは、段付された横断面肉厚を有する結合材料プレプレッグを連続的に形成するための方法が知られており、熱硬化性の樹脂をぬらすことにより炭素繊維材料上であるいはそのようなものの上で維持されている結合材料プレプレッグが、長手方向で断続的に供給され、次いで型ならびにアニール炉を通る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004003190号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008039869号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102006058602号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3009909号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1967354号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、従来技術から出発して本発明の根底をなす課題は、プレス型の汚れが少なくともできる限り防止することができ、混成部材の基本成形体が特定の領域で樹脂がない状態で保持できる、原動機付き車両のための品質的に価値の高い混成部材を製造するための使用に関する技術的に改善された方法を提示することである。
【0013】
さらに本発明の課題は、プレス型の汚れをできる限り防止し、かつ混成部材の品質を高めるのに貢献する、混成部材の製造の際に使用するための手段を準備(供給)することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題の方法的な部分は、請求項1の特徴を備えた方法により解決される。
【0015】
この方法の有利な実施形態と改良点は従属請求項2〜5に示す。
【0016】
プレス工程において、プレス型あるいは強化要素と基本成形体に作用するプレス型の部分の間に、プレス型と少なくとも強化要素の接触を防ぐカバーが挿入される。カバーは樹脂を吸収する吸収層を備えている。プレス工程で強化要素から流出する過剰の樹脂は、吸収層から吸収されるかあるいは収容される。これにより、基本成形体の隣接した面への樹脂の制御されない配分および拡散を防ぐことができる。プレス工程の後、カバーは取除かれる。
【0017】
本発明は樹脂による基本成形体あるいは混成部材の汚れが不都合になることを簡単な手段で防ぐ。プレスの際に強化要素とプレス型の雄型の間には基本的にカバーがある。多層のカバーを使用するのが好ましい。特にカバーの吸収層は繊維ウェブ(Vlies)、好ましくはガラス繊維ガラス繊維ウェブから成る。繊維ウェブは外側の平坦面においてその都度外殻(Ausenhaut)により区画されている。外殻はカバーあるいは吸収層が強化要素あるいはプレス型に張り付くのを防ぐ。
【0018】
外殻は非付着性の薄片により形成されるのが好ましい。カバーはプレス型を閉じる際に二つの課題をかなえる。プレス工程において、カバーの強化要素側の外殻は穿孔される。強化要素に当接する外殻には小さい孔と隙間(Ris)が生じる。これにより、低粘度の樹脂が吸収層に入り込み、かつ毛管力により吸収層内に吸収される。従って過剰の樹脂は効果的に除去される。
【0019】
さらにカバーは縁部領域、特に基本成形体の水平方向部分において、ここでは何の吸収作用も生じないように強く圧縮される。カバーの縁部領域はプレス工程において樹脂密に(harzdicht)塞がれる。これによりプレス型は相当する領域内で封止され、従って樹脂は形成された区画部にわたっては漏出せず、部材は汚れしない。
【0020】
それ以上に、カバーの使用により、基本成形体あるいは製造すべき混成部材とプレス型の間における公差の均一化が達せられる。
【0021】
カバーを完全に基本成形体にわたりそこに位置決めされた強化要素で覆い、次いでプレス型を閉じることも方法技術的に考えられる。この際カバーは連続した状態(Bandform)で貯蔵所から引出され、かつ基本成形体上でそこに位置決めされた強化要素と一緒に置かれる。その後プレス工程が行われる。プレス工程後、カバーはもう一方の側で巻き上げられ、すなわち混成部材から取除かれて、好ましくは貯蔵ユニットで巻き取られる。
【0022】
カバーがプレス工程において確実にその機能を満たし、過剰の流出する樹脂を収容し、好ましくは完全に収容するようにカバーは位置決めされ、従ってプレス型の汚れは、基本成形体と同じように可能な限り防ぐことができる。特に混成部材の基本成形体は特定の領域内では樹脂がない状態で保持できる。このことは例えば溶接工程のような、特に後続する処理にとっては有利である。
【0023】
プレス工程はプレス型で実施されるのが好ましく、その際にプレス型は加熱される。プレス型の加熱により、一方ではマトリックス樹脂は容易に流動化するように影響を受け、他方では繊維強化材料を加熱作用により硬化させることができる。これにより特に製造される混成部材の強度が高められる。同時に製造工程のサイクルタイムは加速される硬化反応により短縮される。
【0024】
課題の具象的部分は請求項6の特徴によるカバーにより解決される。
【0025】
本発明によるカバーの合理的な構成は、従属請求項7〜11において特徴づけられている。
【0026】
本発明によるカバーは、樹脂を吸収する吸収層を備えている。吸収層は繊維ウェブ、好ましくはガラス繊維ウェブから成る。吸収層は樹脂を毛管力により吸い取ることができる微孔材料から成るのが好ましい。吸収層の目のある構造により、樹脂を吸収するこの繊細な毛細管が形成される。このようにして強化要素を基本成形体と継合せる際に生じる樹脂は吸収層により収容される。
【0027】
カバーは多層であり、かつ少なくとも一つの吸収層を備えているのが特に好ましく、その際に吸収層は二つの外殻の間に内装されている。少なくとも一つの外殻は非付着性の薄片から成るのが好ましい。これにより強化要素とプレス型の雄型の間の離型剤の使用をなくすことができる。
【0028】
基本成形体は金属材料、特に鋼材料、好ましくは高強度の鋼材料から成るのが特に好ましい。
【0029】
強化要素として、特にプレプレッグ材料、特に異なる配向性のプレプレッグの層から成る艶出し仕上げされた積層板を使用してもよい。この場合、プレプレッグの層は平たい元の状態を有していてもよく、かつプレス工程により金属製の基本成形体内に押込められるかあるいは押付けられる。
【0030】
カバーは少なくとも被膜を付けるべき強化要素上に強く押付けられている。この場合、カバーは強化要素の外側の輪郭を隠す。基本的にプレス型の雄型が作用する基本成形体の面全体が基本成形体上にある強化要素と一緒にカバーで覆い隠すことができる。
【0031】
本発明を以下に概略的な図で示した実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】原動機付き車両のためのBピラーの形状の、本発明により製造された混成部材を示す図である。
【図2】五つの工程の図でもって、プレス型内で混成部材を製造することを示す図である。
【図3】五つの工程の図でもって、プレス型内で混成部材を製造することを示す図である。
【図4】五つの工程の図でもって、プレス型内で混成部材を製造することを示す図である。
【図5】五つの工程の図でもって、プレス型内で混成部材を製造することを示す図である。
【図6】五つの工程の図でもって、プレス型内で混成部材を製造することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0033】
図1には原動機付き車両のためのBピラーの形状の、本発明により製造された混成部材1が示してある。
【0034】
混成部材1はその長さの基本部分にわたり貝殻形状に形成された薄鋼板から成る基本成形体2を備えている。基本成形体2は繊維強化材料から成る強化要素3により部分的に強化されている。強化要素3は基本成形体2の貝殻形状に形状的に合っており、かつ画面においては基本成形体2のほぼ中央から上に向かって基本成形体2の頭部領域の中まで延びている。
【0035】
強化要素3は予備含浸された繊維から成るプリプレグの層によって形成されている。この場合は連続繊維と未硬化の(ungehaertet)熱硬化性ポリマーマトリックスから成る中間材料である。
【0036】
基本成形体2と強化要素3は互いに高温で押圧されている。このことは加熱されたプレス型の中で行われる。
【0037】
図2には基本的に雌型5と上側の雄型6を備えた開放したプレス型4が概略的に示してある。
【0038】
混成部材1を製造するためには、薄鋼板から成る基本成形体2が用意され、かつ雌型5の型収容部(Formaufnahme)7内に挿入される。これは図3において見て取れる。引続いて強化要素3が基本成形体2内に挿入されかつ位置決めされる(図4)。
【0039】
強化要素3とプレス型4の間には図5に見て取れるようにカバー8が組み入れられる。カバー8は多層であり、かつ樹脂を吸収する吸収層9を備えており、この吸入管は上側および下側で外殻部10,11により覆われている。
【0040】
吸収層9は樹脂を吸収する材料、特に樹脂を毛管力により吸収できる微孔材料から成る。このような微孔の吸収層9は繊維ウェブ、特に樹脂を吸収する性質を備えたガラス繊維入りの繊維ウェブから成る。
【0041】
外殻部10あるいは11は特に薄片、好ましくは非付着性の薄片である。
【0042】
図6はプレス工程を示す。この目的で雄型6を沈下させ、雌型5の型収容部7内に挿入することによりプレス型4は閉じられる。圧力の作用と温度の作用により、基本成形体2と強化要素3は一緒に接合される。
【0043】
プレス工程において、強化要素側の外殻部10は穿孔される。強化要素3に当接するが外殻部10には孔と隙間が生じる。これにより低粘度の樹脂は吸収層9内に侵入でき、毛管力により吸収層9内に吸収される。このようにしてプレス工程の際に強化要素3から出る不用な樹脂は収容することができ、かつ基本成形体2からもプレス型4からも、特に雄型6の接触領域あるいは圧力面からも遠ざけられうる。
【0044】
従って樹脂による不都合な汚れはなくすことができる。プレス工程の後、カバーは除かれる。
【0045】
プレス工程において、雄型6の上側の水平部分におけるカバーはここでは吸収作用が全く生じない程度に強く圧縮される。これによりプレス工程でのカバー8の対応する縁部領域12,13は樹脂密に塞がれる。これにより封止部が生じるので、樹脂は漏れ出ず、プレス型4あるいは基本成形体2は汚れするおそれがある。
【0046】
カバー8をベルトの形で供給する方法技術が考えられる。カバー8は貯蔵所から巻き取って、基本成形体2の上で基本成形体上に位置決めされた強化要素3と一緒に置くことができる。プレス工程後、カバー8は別の面では再度貯蔵所に巻かれるかあるいは巻きつけられる。
【符号の説明】
【0047】
1 混成部材
2 基本成形体
3 強化要素
4 プレス型
5 雌型
6 雄型
7 型収容部
8 カバー
9 吸収層
10 外殻
11 外殻
12 縁部領域v.8
13 縁部領域v.8

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混成部材(1)、特に原動機付き車両の混成部材を製造するための方法であって、
好ましくは金属製の基本成形体(2)が繊維強化材料から成る強化要素(3)を備えており、さらに基本成形体(2)と強化要素(3)が一緒にされ、かつプレス型(4)内で互いにプレスされる方法において、
強化要素(3)とプレス型(4)の間にカバー(8)が組入れられ、さらにカバー(8)が連続した状態で貯蔵所から引出され、かつ基本成形体(2)の上で基本成形体上に位置決めされた強化要素(3)と一緒に置かれ、その後にプレス工程が行われ、その際にカバー(8)が樹脂を吸収する吸収層(9)を備えており、それによりプレス工程において強化要素(3)から流出する樹脂が吸収層(9)により収容され、カバー(8)が
プレス工程の後に混成部材(1)から取除かれ、好ましくは貯蔵ユニットに巻かれることを特徴とする方法。
【請求項2】
多層のカバー(8)が使用されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
カバー(8)の強化要素側の外殻(10)がプレス工程において穿孔されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
カバー(8)の縁部領域(12,13)がプレス工程において樹脂密に塞がれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
プレスが加熱されたプレス型(4)内で実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
混成部材(1)を製造する際に使用するためのカバーであって、
カバーがプレス工程においてプレス型(4)と少なくとも強化要素(3)の間に位置決めされるカバーにおいて、
カバー(8)が樹脂を吸収する吸収層(9)を備えており、吸収層(9)が繊維ウェブ、好ましくはガラス繊維ウェブから成ることを特徴とするカバー。
【請求項7】
カバー(8)が多層であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
吸収層(9)が二つの外殻(10,11)の間に組入れられていることを特徴とする請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも一つの外殻(10,11)が薄片、特に非付着性の薄片である
ことを特徴とする請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−245784(P2012−245784A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122259(P2012−122259)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【出願人】(512140304)ベンテラー・エスゲーエル・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】