説明

混用品

【課題】セルロース系繊維は比重が大きく嵩高性と軽量感に欠け、洗濯を繰り返すと膠着して風合いが硬くなる問題がある。セルロース系繊維の風合も維持したまま極めて軽量感のある混用品を提供する。
【解決手段】沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維とポリトリメチレンテレフタレート系繊維が混用されていることを特徴とする混用品。該ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることが、好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系繊維の風合も維持したまま極めて軽量感のある混用品に関する。
【背景技術】
【0002】
綿やレーヨン繊維に代表されるセルロース系繊維は繊維比重が大きく嵩高性と軽量感に欠け、洗濯を繰り返すと糸が膠着し、風合いが硬くなるという問題点があった。
これを大きく改良するものとして、特許文献1に高捲縮セルロースフィラメントを用いた編織物が記載されており、軽量感や保温性、洗濯耐久性に優れた編織物が得られることか開示されているが、市場ではセルロース系繊維の風合も維持したままさらなる軽量感のある編織物が要求されている。
【特許文献1】特開2004−131890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決し、セルロース系繊維の風合も維持したまま極めて軽量感のある混用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維とポリトリメチレンテレフタレート系繊維が混用されていることを特徴とする混用品。
(2)ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする上記(1)に記載の混用品。
【発明の効果】
【0005】
本発明の混用品は、セルロース系繊維の風合も維持したまま極めて軽量感のある混用品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明は、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上好ましくは7%以上、特に好ましくは10%以上、50%以下のセルロース系繊維を用いることに最大の特徴があり、SBが4%以上であると軽量感や保温性、洗濯耐久性に優れた混用品が得られる。尚、SBが大きすぎると、嵩高性は大きいものの、編織物にした場合凹凸感のあるものとなり外観が損なわれ好ましくない。伸縮伸長率はJIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じた方法で測定した。
【0007】
本発明においてさらに好ましい要件としては、沸水処理前後の伸縮伸長率の比(SB/S0)が0.5以上特に好ましくは0.7以上、10以下であると、極めて大きな嵩高性が得られ、軽量感に優れたものが得られる。SB/S0が0.5未満では、精練や染色に基づく熱水処理で嵩高性が損なわれることがあり、10を超えると、嵩高性は大きいものの、編織物にした場合凹凸感のあるものとなり外観が損なわれることがある。SB/S0とは、沸水処理して乾燥した後の伸縮伸長率(SB)と、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比である。
【0008】
さらに本発明においては、X線回析による算出法(後記する)にて、セルロースIV型結晶成分が20%以上,好ましくは20〜60%混在するのが好ましい。この範囲であると、セルロースIV型の特徴である湿潤処理による形態保持性が充分に発揮される。
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維としては、綿、麻等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラアンモニウムレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維(テンセル、リヨセル)などの人造セルロース繊維があり、これらの一種又は二種以上を混用したものをいう。
【0009】
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
【0010】
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維は、例えば、特開2002−54044号公報、特開2002−327343号公報、特開2004−131890号公報に開示されている方法によって製造することが出来る。
好ましい製法例としては、本発明のセルロース系繊維を高圧水蒸気処理後に高圧熱水処理方法がある。この方法はセルロース系繊維が仮撚加工糸、1000T/m以上の有撚糸に適用するとより効果的であり、具体的な条件としては、絶対圧力0.41〜1.23MPa、温度160〜210℃、処理時間300〜1800秒が好ましい。高圧水蒸気処理は、従来公知の高圧釜装置を備えている装置で、チーズ状あるいはビーム状で処理できれば良く、例えば特開平9−31830号公報に記載されている高圧釜等である。
【0011】
高圧熱水処理の場合、従来公知の高圧釜装置を備えていて、チーズ染色あるいはビーム染色などができる装置であれば良い。熱水処理においては、縦型処理機が好ましく、予め、処理糸を装着し、その中に水を投入したのち、染色ビームの内側から、外側に向かって液循環させながら、所定の処理を行うものである。高圧水蒸気処理、高圧熱水処理する時の糸形態は、巻密度0.30〜0.45g/cmにしたチーズ形態で処理することが好ましい。
【0012】
又、他の好ましい製法例としては、セルロース系繊維のフィラメント糸を仮撚加工するに際し、仮撚加工前の供給糸に水分を付与し、加撚時にヒーター温度180℃以上の高温で処理をすることにより製造される。付与する水分は、水のみ、または、水に浸透剤等の界面活性剤、あるいは目的に応じて各種の機能を付与するための加工剤を添加してもよい。
【0013】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル系活性剤等の非イオン系活性剤やジアルキルサクシネート、ジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン系活性剤等を使用する。使用量としては、好ましくは0.1〜20g/リットル、より好ましくは0.5〜10g/リットルである。また、水と共にグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピリングリコール等のポリアルキレングリコールなどを付与することにより、仮撚加工糸の強度低下を防止することができる。付与する水分は、常温でも温湯でも良いが、15〜25℃が好ましい。
【0014】
水分の付与は、仮撚加工する前、即ち、クリール仕掛けをする前に別工程で付与しても良く、又、仮撚加工工程での第1ヒーター前でも良い。また、セルロース系繊維のフィラメント原糸製造工程における乾燥工程に仮撚機構を組み入れ、一次乾燥時に仮撚工程を組み入れて製造しても良い。水分を付与する方法は、供給糸を水中に走行させる浸漬法、水をノズルから噴出させて付与するノズル法、水で濡れたローラー表面に糸を接触させる単純ローラー法、また、ローラーの前で糸を水に浸漬させるデイップローラー法、走行中の糸に水をシャワーする噴霧法等、何れの方法でも良い。付与する水分量は、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率を20〜130%にするのが好ましく、更に好ましくは30〜100%である。尚、絶乾水分率は(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。
【0015】
仮撚加工温度は、例えば、加工速度60〜100m/分、接触式ヒーターゾーンの通過時間が0.69〜1.15秒の場合、第1ヒーター温度は180〜260℃が好ましく、更に好ましくは220〜260℃である。
尚、第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率は0〜15%、特に5〜12%が更に好ましい。又、第2ヒーターを使用した2ヒーター仮撚加工糸にしても良い。
仮撚加工は、ピン、ニップベルト、ディスク等によって撚をかける仮撚方式により加工することが好ましく、なかでも均一な捲縮を得るためにはピン仮撚方式が好ましい。
他の好ましい仮撚加工条件は、
仮撚数=(24000/D1/2+590)×(0.6〜1.1)
式中、Dは供給糸の繊度(dtex)を表す。
【0016】
第1フィード率は−3〜10%、テイクアップ(TU)フィード率は1〜8%、加撚張力は0.05〜0.29cN/dtex、解撚張力は、(加撚張力)×(3.0〜8.0)倍である。
仮撚加工に供給するセルロース系繊維のフィラメント糸は、無撚糸でも甘撚糸でもインターレース交絡した糸でも良い。
【0017】
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維の総繊度は33〜167dtex程度のものが好ましく用いられる。
一方、本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル系繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0018】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。初期引張抵抗度は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0019】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンド(ブレンドする際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上である)したり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい。
【0020】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0021】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート系繊維の紡糸については、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
【0022】
又、繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
トータル繊度は20〜550dtexが好ましく、より好ましくは30〜220dtexであり、また、単糸繊度は0.1〜12dtexが好ましく、特に1.5〜6dtexが柔軟な風合いが得られるので好ましい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸等の紡績糸、単糸デニールが0.1〜5デニール程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸、仮撚糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸等がある。
【0023】
本発明においては、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であると優れたストレッチ性、ストレッチバック性を発揮するので好ましい。
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的には、複合紡糸によってサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)され、その少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は限定されない。
【0024】
このような、潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。
この繊維は、二種のポリエステルポリマーが、サイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比は、好ましくは1.00〜2.00であり、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0025】
具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。他のポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されたものが好ましい。
【0026】
上記特開2001−40537号公報以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0027】
本発明では、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維が、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex、好ましくは20〜30cN/dtex、より好ましくは20〜27cN/dtexである。初期引張抵抗度が30cN/dtexを越えると、ソフトな風合を損なうことがあり、10cN/dtex未満のものは製造が困難である。又、顕在捲縮の伸縮伸長率は、10〜100%、好ましくは10〜80%、より好ましくは10〜60%である。顕在捲縮の伸縮伸長率が10%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、100%を越える繊維の製造は困難である。さらに、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%、好ましくは85〜100%、より好ましくは85〜97%である。顕在捲縮の伸縮弾性率が80%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、100%を越える繊維の製造は困難である。
【0028】
さらに好ましい特性としては、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、最も好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、0.5cN/dtexを越える繊維の製造は困難である。
【0029】
又、熱水処理後の伸縮伸長率は、好ましくは100〜250%、より好ましくは150〜250%、最も好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮伸長率が100%未満では、ストレッチバック性が不充分となることがあり、250%を越える繊維の製造は困難である。熱水処理後の伸縮弾性率は、好ましくは90〜100%、より好ましくは95〜100%である。熱水処理後の伸縮弾性率が90%未満では、ストレッチバック性が不充分となる場合がある。
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維があげられる。
【0030】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.50(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.45(dl/g)、最も好ましくは0.15〜0.45(dl/g)である。例えば、高粘度側の固有粘度を0.70〜1.30(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.50〜1.10(dl/g)から選択するのが好ましい。
低粘度側の固有粘度は0.50(dl/g)以上が好ましく、より好ましくは0.60〜1.00(dl/g)、最も好ましくは0.65〜1.00(dl/g)である。
この複合繊維自体の固有粘度、すなわち、平均固有粘度は0.70〜1.20(dl/g)が好ましく、0.80〜1.20(dl/g)がより好ましい。0.85〜1.15(dl/g)がさらに好ましく、0.90〜1.10(dl/g)が最も好ましい。
【0031】
本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0032】
潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維は、仮撚加工糸であるとさらに優れたストレッチ性、ストレッチバック性を発揮するので好ましい。仮撚加工糸はいわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、ストレッチ性、ストレッチバック性から好ましい。さらに仮撚加工糸は、好ましくは2000m/分以上、より好ましくは2500〜4000m/分の巻取り速度で引取って得られる部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸が好ましい。
【0033】
仮撚加工糸は、無撚でもよいが、必要に応じて仮撚方向と同方向又は異方向に追撚したり、仮撚加工糸を双糸又は三子以上で合撚されたものやS仮撚加工糸とZ仮撚加工糸を合撚してもよい。特に追撚したり、合撚する場合、仮撚加工糸には、前述した部分配向未延伸糸(POY)を延伸仮撚した仮撚加工糸を用いると好ましい。
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸や潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維の原糸及び仮撚加工糸は、熱リラックス等の手段により潜在捲縮を顕在化させて用いることが、ストレッチバック性を高めるためには好ましく、例えば、先染め糸(チーズ染め、かせ染め、プレバルキー後にチーズ染め、かせ染め等)として用いる方法がある。
【0034】
本発明の混用品においては、上述のセルロース系繊維(A)とポリトリメチレンテレフタレート系繊維(B)の好ましい混率(A/B)は、10〜90/90〜10好ましくは15〜85/85〜15さらに好ましくは20〜80/80〜20特に好ましくは30〜70/30〜70である。
セルロース系繊維(A)の混率が10%未満では、セルロース系繊維の嵩高性、軽量感、吸湿性が十分ではなく、90%を超える場合には軽量感が不足する傾向にある。
本発明の混用品の混用形態としては、糸段階では、混紡、精紡交撚糸(サイロスパンやサイロフィル、コアヤーン、ホロースピンドル等)、引き揃え、合撚糸、混繊糸、カバリング糸(シングル、ダブル)、諸撚糸、意匠撚糸などがあり、特に芯成分がポリトリメチレンテレフタレート系繊維(B)、鞘成分がセルロース系繊維(A)で構成された鞘芯構造糸(精紡交撚糸、カバリング糸等)や諸撚糸が本発明の目的達成上好ましい。又、セルロース系繊維(A)を水付与後の仮撚加工によって製造する場合にテイクアップ前にポリトリメチレンテレフタレート系繊維と引き揃え又は混繊して混用してもよい。
【0035】
布帛段階では、交編例えばセルロース系繊維(A)とポリトリメチレンテレフタレート系繊維(B)を引き揃えて編成する以外に、特にリバーシブル編成して一面をセルロース系繊維(A)で構成し、他面はポリトリメチレンテレフタレート系繊維(B)で構成する、さらには表裏面をセルロース系繊維(A)で構成し、中間をポリトリメチレンテレフタレート系繊維(B)で構成する編成方法が本発明の目的達成上好ましい。
又、交織としては、経糸又は緯糸の一方にセルロース系繊維(A)を他方にポリトリメチレンテレフタレート系繊維(B)を用いる方法以外に経糸及び/又は緯糸において両者を1〜3本交互に用いる方法がある。
【0036】
尚、本発明の目的を損なわない範囲内で通常30質量%以下の範囲内で他の繊維を糸段階及び/又は布帛段階で混用してもよく、混用する繊維としては例えば、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%未満である一般的なセルロース系繊維例えば綿、麻、竹繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース繊維の他、羊毛(アンゴラ、カシミヤ、メリノ等を含む)、絹、和紙等の天然繊維、アセテート、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、アクリレート系繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)がある。混用形態としては上記に例示した混紡、カバリング、交編織以外にこれらの一種又は二種以上を、例えば沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は、例えば沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0037】
本発明の混用品の染色仕上げについては、常法に従って実施すればよく、例えば、かせ染め、チーズ染め、マフ染め、ニットデニット染め(ニットして染色してからデニット)等の方法により先染めして用いても良く、製編織後に染色する後染めでもよい。
染色は、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維を分散染料にて染色後、還元洗浄、次いで、直接又は反応染料によりセルロース系繊維を染色すればよい。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)伸縮伸長率
沸水処理前の伸縮伸長率(S0)は、試料を20℃、65%RHの恒温恒湿の室内に約1週間放置した後、検尺機にて2cN/糸以下の張力で解舒して綛を作り、1昼夜リラックスさせた状態で調湿し、JIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値で算出した。
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)は、沸水処理前と同様に検尺機にて作った綛を1昼夜リラックスさせた後、綛の状態でガーゼに包み、JIS−L−1013フィラメント収縮率(B法)に準じて、沸騰水中に30分間浸漬させた後、綛を取り出して手で挟んで軽く水を切り、ガーゼを外した後、吊り干しの状態で20℃、65%RHの標準状態の室内にて乾燥及び調湿した後にJIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値で算出した。
【0039】
(2)セルロースIV型結晶成分の混在比率
X線回析装置(Rigaku−RINT2000広角ゴニオメーター)を使用して、X線源CuK−ALPHAI/40kv/200mA、発散スリット1deg、散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、スキャンスピード2°/min、スキャンステップ0.02°、走査軸2θ/θ、走査範囲5°〜45°の条件にて強度分布を作成し、分布図よりセルロースIV型結晶成分の混在比率を算出した。
セルロースIV型の混在比率(%)={(16°ピークの面積)/〔(16°ピークの面積)+(12°ピークの面積)〕}×100
【0040】
(3)絶乾水分率
(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(FD−240)を用いて測定した。絶乾水分率は、設定温度90℃で、水分率変化が1分間当たり0.1%以内となる時間を恒量時とし、この時の質量を絶乾質量値とし、下記の式にて求めた。
絶乾水分率(%)={(湿潤質量−絶乾質量)/絶乾質量}×100
【0041】
(4)セルロース系繊維の風合と軽量感
下記製造例のセルロース系繊維100%で構成した一口編地と比較して、風合と軽量感を官能評価した。本発明の用いる評価法は以下の通りである。
【0042】
(5)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒に溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0043】
(6)初期引張抵抗度
JIS L 1013化学繊維フィラメント糸試験方法初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.0882cN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出する。試料10点を採取して測定し、その平均値を求める。
【0044】
(7)伸縮伸長率及び伸縮弾性率
JIS L 1090合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験方法A法に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)及び伸縮弾性率(%)を算出する。試料10点を採取して測定しその平均値を求める。
顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は、巻き取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、相対湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行う。熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥した試料を用いる。
【0045】
(8)熱収縮応力
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作り測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取る。
【0046】
[製造例]
<沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維の製法>
(製造例1)
110dtex/60fキュプラアンモニウムレーヨン糸(旭化成せんい社製:商標ベンベルグ:引張強さ23.2cN/tex、引張り伸度8.9%、沸水収縮率4.3%)を用い、ピン仮撚機を用いて、仮撚温度200℃、フィード率1%、仮撚数1500T/mで仮撚加工を行った。続いて、該仮撚糸を染色ボビンに巻き密度0.30g/cmで巻き上げ、スペーサーで固定し、縦型高圧釜にセットした。
続いて、0.097−0.1MPaにした後、圧力0.97MPaで180℃で5分間高圧スチーム処理した。次に水を投入し、加圧により脱泡した後、染色ボビンの内側から外側に向けて、液循環させながら、圧力0.97MPaで180℃で10分間高圧熱水処理し、加圧脱水後、80℃で60分間乾燥した。得られた仮撚加工糸は、SB=11.5%、(SB/S0)=1.10、セルロースIV型の混在比率24%であった。
【0047】
(製造例2)
84dtex/45fキュプラアンモニウムレーヨンフィラメント(旭化成せんい社製:商標ベンベルグ:引張強さ23.0cN/tex、引張り伸度9.1%、沸水収縮率4.5%)を用い、仮撚加工機(石川製作所製:IVF−338、加撚機構はピン方式、接触式ヒーター、ヒーター長115cm)の条件を、加工速度100m/分、加熱時間0.69秒、スピンドル回転数230000rpm,仮撚数2300T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
クリールから供給された糸に2.9cN/糸の張力を掛け、第1ヒーター前にて水中を走行させる浸漬法で水分を付与した後、鋭角のセラミック板に接触させ、更に、エアーサクションを用いて付着水を除去して絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度250℃で仮撚加工した。
得られた仮撚加工糸は、SB=21.0%、(SB/S0)=2.53、セルロースIV型の混在比率58.8%であった。
【0048】
(製造例3;比較)
製造例1において、高圧熱水処理しない以外は製造例1同様に処理した。
得られた仮撚加工糸は、SB=2.9%、(SB/S0)=0.42、セルロースIV型の混在比率0%であった。
【0049】
(製造例4;比較)
製造例2において、水分を付与しない以外は製造例2同様に仮撚加工した。
得られた仮撚加工糸は、SB=2.5%、(SB/S0)=0.48、セルロースIV型の混在比率0%であった。
【0050】
[実施例1]
固有粘度[η]0.9のポリトリメチレンテレフタレートを用い、3000m/minの紡糸速度で紡糸して破断伸度105%のPOYを得た。次いで、仮撚加工機;村田機械製作所(株)製の33H仮撚機を用いて、仮撚加工糸の破断伸度が35%となるように延伸倍率を設定し、仮撚ヒーター出口の糸条温度160℃、仮撚数3200T/mで延伸仮撚加工を行い、110dtex/48fの1ヒーターの延伸仮撚糸を得た。
製造例1で得られた仮撚加工糸とこの仮撚糸を引き揃えてS方向に700t/m合撚して一口編地を作製した。
得られた編地の風合、軽量感は、製造例1で得られた仮撚加工糸100%の編地に比べ風合は変わらず、軽量感に優れたものであった。
【0051】
[実施例2]
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。
次いで、得られた未延伸糸を、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/36fのサイドバイサイド型の複合繊維を得た。
得られた複合繊維の固有粘度は、高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。又、初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率及び伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力は、各々23cN/dtex、25%及び89%、204%及び99%、0.21cN/dtexであった。
引き続き、この延伸糸を石川製作所製IVF−338にて第1ヒーター温度160℃、仮撚数3200T/mで仮撚加工を行い仮撚加工糸を得た。
製造例2で得られた仮撚加工糸とこの仮撚加工糸を用いて実施例1同様にして編地を作成した。得られた編地の風合、軽量感は、製造例2で得られた仮撚加工糸100%の編地に比べ風合は変わらず、軽量感に優れ、かつストレッチ性にも優れたものであった。
【0052】
[比較例1]
実施例1において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の代わりに110dtex/48fポリエチレンテレフタレート系繊維の1ヒーターの延伸仮撚糸を用いた以外は実施例1同様にして編地を作成した。得られた編地の風合、軽量感は、製造例1で得られた仮撚加工糸100%の編地に比べセルロース系繊維の風合が損なわれたものであり、又、軽量感も実施例1対比劣ったものであった。
【0053】
[比較例2]
実施例1において、製造例1で得られた仮撚加工糸の変わりに製造例3で得られた仮撚加工糸を用いた以外は実施例1同様にして編地を作成した。得られた編地の風合、軽量感は、製造例1で得られた仮撚加工糸100%の編地に比べセルロース系繊維の風合は変化無いものの嵩高性、軽量感ともに実施例1対比劣ったものであった。
【0054】
[比較例3]
実施例2において、製造例2で得られた仮撚加工糸の変わりに製造例4で得られた仮撚加工糸を用いた以外は実施例2同様にして編地を作成した。得られた編地の風合、軽量感は、製造例2で得られた仮撚加工糸100%の編地に比べセルロース系繊維の風合は変化無いものの嵩高性、軽量感ともに実施例2対比劣ったものであった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の混用品は、セルロース系繊維の風合を維持したまま極めて軽量感のある混用品であり、肌着等のインナーや婦人服等アウター、スポーツ衣料等の衣料用途に限らず、タオルケットやベッドシーツ、タオル、サポーター等の非衣料用途にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維とポリトリメチレンテレフタレート系繊維が混用されていることを特徴とする混用品。
【請求項2】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が、その一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維であることを特徴とする請求項1に記載の混用品。