説明

混練機および混練機のパドル

【課題】高腐食環境下で使用可能な混練機のパドルについて、強度を維持しつつコストダウンを図る。
【解決手段】パドルを、耐食性金属から形成されるボス部11と、フッ素樹脂から形成されてボス部を取り巻く羽根部12と、耐食性金属から形成されてボス部11から径方向に延びて羽根部12の各翼12a内を挿通する補強ピン13と、から構成する。回転シャフトからトルクが伝達されて強度が必要なボス部11は耐食性金属により形成し、ボス部11ほどの強度を必要としない羽根部12は比較的安価なフッ素樹脂により形成しているため、パドル10全体を耐食性金属により形成する場合に比べて材料コストで低廉である。羽根部12についても補強ピン13が挿通していることで補強され、耐久性が確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、混練機および混練機に用いられるパドルに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体、粒体、および流体などの複数種の原材料を混練する機械として、特許文献1および2に記載されている混練機が知られている。
これらの混練機は、ハウジング内に一対の回転シャフトを平行に軸支し、両回転シャフトの外周に多数のパドル(攪拌羽根)およびスクリュを取り付けて構成されている。
【0003】
ハウジングはその長手方向の一端に投入口が他端に排出口がそれぞれ設けられており、投入口からハウジング内に投入された複数種の原材料は、両回転シャフトの回転に伴いパドルにより攪拌されスクリュにより排出口に向けて送られる。こうして、排出口から混練物が排出される。
【0004】
ここで、混練機に投入される原材料が強酸性材料、強アルカリ性材料などの劇物の場合には、これと接触するパドルを耐食性材料で形成する必要がある。
具体的な耐食性材料としてはハステロイ(登録商標)などの高ニッケル材料が例示できるが、これら耐食性材料は一般に高価であるため、混練機全体のコストが高騰してしまう問題がある。
【0005】
材料コストを下げるためにパドルを中空とする試みもなされているが、そのパドルを鋳造する際に必然的に形成される開口を、別体の蓋を溶接するなどして塞ぐ必要があるため、製造コスト全体で見れば大きなコストダウンにはつながらなかった。
【0006】
他方、高ニッケル材料よりも安価であり耐食性も良好なテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂によりパドルを形成することも考えられるが、このようにパドルを樹脂単体で形成した場合には金属材料よりも強度が劣るため、耐久性に問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−162618号公報
【特許文献2】特開2001−225322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明の解決すべき課題は、高腐食環境下で使用可能な混練機のパドルについて、強度を維持しつつコストダウンを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、発明にかかる混練機のパドルについて、耐食性金属から形成されて回転シャフトの外周にはめ込まれるボス部と、フッ素樹脂から形成されて前記ボス部を周方向に取り巻き径方向に延びる複数の翼を有する羽根部と、耐食性金属から形成されて前記ボス部から径方向に延び前記羽根部の各翼の内部を挿通する複数の補強ピンと、を備える構成を採用したのである。
【発明の効果】
【0010】
回転シャフトからトルクを伝達する部位でありもっとも強度を必要とする部位であるボス部を耐食性金属により形成し、ボス部ほどの強度を必要としない羽根部は比較的安価なフッ素樹脂により形成しているため、パドル全体を耐食性金属により形成する場合に比べて材料コストを低廉にすることができる。
また、フッ素樹脂からなる羽根部についても内部に金属製の補強ピンが挿通していることで補強され、耐久性およびトルクの伝達性が確保されている。
さらに、羽根部をフッ素樹脂から形成することによりパドル全体の軽量化が図られ、その結果、パドルを回転シャフトに取り付けた場合のシャフトの撓みを小さくできる。そのため、パドルとハウジングの接触を回避するためにパドルとハウジングの間に形成されるクリアランス(隙間)も小さくすることができ、混練機全体の小型化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】混練機の縦断面図
【図2】混練機の横断面図
【図3】第1実施形態のパドルの(a)は正面図、(b)は断面図、(c)は斜視図、(d)はボスとピンの分解斜視図、(e)はボスにピンを固定した状態を示す斜視図
【図4】第2実施形態のパドルの(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図、(d)はボスとピンを固定した状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1および図2に示す実施形態の混練機1は、高腐食環境下で複数種の原材料を混練して混練物を得るのに用いられる。
図示のように、混練機1は、ハウジング2と、回転シャフト3と、スクリュ4と、パドル10、20と、を備える。
【0014】
2連円筒形のハウジング2は、その外周面の一端上部に原材料の投入口2aを有し、外周面の他端下部に混練物の排出口2bを有する。この排出口2bには多孔のダイスが被せられている。
また、ハウジング2の両端面には、軸受が組み込まれた軸受箱2cが取り付けられている。
【0015】
一対の回転シャフト3は、2連円筒形をなすハウジング2の各円筒内にそれぞれ配置され、ほぼ平行をなしている。
各回転シャフト3は、ハウジング2両端面の軸受箱2cの軸受により回転可能に支持されており、図示省略の機構により駆動および停止されるようになっている。回転シャフト3は、その外周面に軸方向に延びるキー3aを有する。
【0016】
この回転シャフト3の外周には、複数のスクリュ4およびパドル10、20が回転シャフト3と一体に回転するように取り付けられている。
両回転シャフト3を互いに逆回転に駆動させた状態で、ハウジング2の投入口2aから原材料を投入すると、回転するパドル10、20により原材料は攪拌されて混練物となる。これが回転するスクリュ4によりハウジング2内を排出口2bに向けて送られ、最後は排出口2bから多孔ダイスを通じて均質な状態となって排出されることになる。
【0017】
図3に第1実施形態のパドル10を示す。図示のように、パドル10は、ボス部11と、羽根部12と、2つの補強ピン13と、からなる。
【0018】
略角筒形のボス部11は、回転シャフト3が挿通する軸孔11aを有し、その軸孔11aに沿って延びるキー溝11bを有する。回転シャフト3をこの軸孔11aに挿通させ、回転シャフト3のキー3aにキー溝11bを嵌合させることで、パドル10は回転シャフト3に対して、回り止めされた状態で取り付けられる(図2参照)。
またボス部11には、その径方向に貫通する2つのねじ孔11cが対向して設けられている。ここでボス部11は、高ニッケル材料などの耐食性の高い金属材料により形成されている。
【0019】
略楕円形の羽根部12は、その角筒形の取り付け穴にボス部11がはめ込まれて、ボス部11の周方向に取り巻くようにして固定されている。ここで羽根部12の軸方向の長さはボス部11の軸方向の長さとほぼ等しいため、パドル10の端面は段差のないほぼフラットな状態になっている。
また羽根部12は、径方向に逆向きに2つの翼12aが延びており、翼12aの先端部は面取りが施されている。羽根部12の翼12aの内部には、翼12aの延出方向に延びる円柱形の差込孔12bが設けられている。羽根部12をボス部11に固定した状態で、各翼12a内の差込孔12bとボス部11の各ねじ孔11cとは、位置が合致するようになっている。ここで羽根部12は、フッ素樹脂により一体成型されている。
【0020】
円柱形の補強ピン13は、それぞれ一端部にねじ軸13aが設けられており、このねじ軸13aがボス部11のねじ孔11cにねじ込まれることでボス部11に固定される。これとともに、補強ピン13のねじ軸13aの設けられていない他端側は羽根部12の差込孔12bへと差し込まれている。ここで補強ピン13は、高ニッケル材料などの耐食性の高い金属材料により形成されている。
【0021】
第1実施形態のパドル10の構成は以上のようであり、もっとも強度を必要とする部位であるボス部11が耐食性の高い金属により形成されており、ボス部11ほどの強度を必要としない羽根部12は比較的安価なフッ素樹脂により形成している。
そのため、パドル10全体を耐食性金属により形成する場合に比べて材料コストを低廉に抑えることができる。
また、比較的脆弱なフッ素樹脂からなる羽根部12についても、内部を挿通する金属製の補強ピン13により補強されているため、十分な耐久性が確保され、かつ回転トルクがスムーズに伝達されるようになっている。
【0022】
さらに、羽根部12が比較的軽量なフッ素樹脂からなるため、パドル10全体の軽量化が図られている。このため、パドル10の取り扱いが容易になる。それとともに、回転シャフト3に取り付けた場合のシャフト3の撓みも抑制され、パドル10とハウジング2の隙間を小さくして混練機1全体の小型化を図ることもできる。
【0023】
図3に第2実施形態のパドル20を示す。図示のように、パドル20は、ボス部21と、羽根部22と、3つの補強ピン23と、からなる。第1実施形態と同様の構造については詳細な説明を省略する。
【0024】
この実施形態では、羽根部22は径方向に等間隔をおいて延びる3つの翼22aを有し、全体が丸みを帯びた正三角形状となっている。その取り付け孔は外形と逆向きの正三角形状となっており、ここに相似形のボス部21がはめ込まれている。
正三角形状のボス部21は、その三辺に貫通するねじ孔21cを有しており、ここには補強ピン23のねじ軸23aがねじ込まれている。同時に各補強ピン23は、羽根部22の各翼22a内に設けられた差込孔22bへとそれぞれ差し込まれている。
なお、ボス部21の軸孔21a、キー溝21bについては、第1実施形態と同様であり、第2実施形態のパドル20の作用効果については、第1実施形態と同様である。
【0025】
ここでパドル10、20の翼12a、22aの数は、上記実施形態に限定されない。また、上記実施形態ではフラットパドルについて説明したが、パドルの構造はこれに限定されず、たとえば混練物の送りも可能なヘリカルパドルについても適用可能である。混練機1のパドル10、20の数は、実施形態に限定されることはない。
【0026】
パドル10、20のボス部11、21の形状は、実施形態の多角筒形に限定されず、円筒形などでもよい。またボス部11、21と補強ピン13、23との結合は実施形態のねじ結合に限定されず、溶接などによってもよいし、ボス部11、21と補強ピン13、23とを一体成型してもよい。
パドル10、20の羽根部12、22はフッ素樹脂単体でなくてもよく、たとえばガラス繊維を含ませて硬度を向上させてもよい。
パドル10、20の補強ピン13、23の形状は、実施形態の円柱形に限定されず、角柱形などでもよい。補強ピン13、23として、全体がねじ軸13a、23aとなっている態様、すなわち規格ボルトなどを用いてもよい。パドル10、20の羽根部12、22とボス部11、21との固定の態様は、特に限定されない。
【0027】
なお、ハウジング2、回転シャフト3、スクリュ4の構造や数は上記実施形態に限られず、公知のものが適用可能である。
本実施形態はあくまでも例示であって、これにより本発明の範囲が限定されることはない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められ、特許請求の範囲に示された内容を限度として、実施形態についてのあらゆる変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 実施形態の混練機
2 ハウジング
2a 投入口
2b 排出口
2c 軸受箱
3 回転シャフト
3a キー
4 スクリュ
10 第1実施形態のパドル(2翼)
11 ボス部
11a 軸孔
11b キー溝
11c ねじ孔
12 羽根部
12a 翼
12b 差込孔
13 補強ピン
13a ねじ軸
20 第2実施形態のパドル(3翼)
21 ボス部
21a 軸孔
21b キー溝
21c ねじ孔
22 羽根部
22a 翼
22b 差込孔
23 補強ピン
23a ねじ軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練機のハウジング内に軸支された回転シャフトに取り付けられハウジング内に投入された原材料を攪拌するパドルであって、
耐食性金属から形成されて前記回転シャフトの外周にはめ込まれるボス部と、
フッ素樹脂から形成されて前記ボス部を周方向に取り巻き径方向に延びる複数の翼を有する羽根部と、
耐食性金属から形成されて前記ボス部から径方向に延び前記羽根部の各翼の内部を挿通する複数の補強ピンと、を備える混練機のパドル。
【請求項2】
前記ボス部は外周に複数のねじ孔を有し、
前記各補強ピンはねじ軸を有して前記ボス部の各ねじ孔にねじ込まれる請求項1に記載の混練機のパドル。
【請求項3】
ハウジングと、
前記ハウジング内に平行に軸支された複数の回転シャフトと、
前記各回転シャフトに取り付けられた請求項1または2に記載のパドルと、を備える混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251462(P2011−251462A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126654(P2010−126654)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】