説明

混練機

【課題】二軸連続式の混練機について、メカニカルシールを用いることなく、ハウジング内の気密性を簡易な手段で確保する。
【解決手段】混練機1のシャフト3を含むハウジング2内の機構と、ハウジング2外に配置されたキャリア5との間に磁気カップリング機構を形成する。磁気カップリング機構は、シャフト3に設けられたギア部3cと、ハウジング2内で両シャフト3の軸端の外周に回転可能に支持されたリングギア4と、ハウジング2外でリングギア4と同心上に回転可能に支持されたキャリア5とからなる。キャリア5が駆動すると、マグネット部4b、5bの磁気作用でリングギア4が回転し、ギア部3c、4aのかみ合いでシャフト3が回転する。ハウジング内を密封できるため、気密性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体、粒体、および液体などの原材料を混練する機械として、特許文献1に記載されているような、いわゆる二軸連続式の混練機が知られている。
この種の混練機は、ハウジング内に一対のシャフトを平行に軸支し、両回転シャフトの外周に多数のパドル(攪拌羽根)およびスクリュを取り付けて構成されている。
【0003】
ハウジングは、その長手方向の一端に投入口が他端に排出口が、それぞれ設けられている。投入口を通じてハウジング内に投入された原材料は、両シャフトの回転に伴い、パドルにより攪拌されまたスクリュにより排出口に向けて送られて、最終的にその排出口から混練物が排出されることになる。
【0004】
ここで原材料として、樹脂溶液など漏洩しやすいものが選択される場合には、ハウジング内に高い気密性が要求されるため、シャフトに軸シールが用いられる。
二軸連続式の混練機の場合には、高真空用の軸シールとしてメカニカルシールを用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3744873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし通常は、メカニカルシールは構造が複雑であるためコストが嵩むし、混練機全体の大型化にもつながる。特にセルフクリーニング型の二軸混練機の場合、軸間距離が一定以内に制限されるため、シールの種類が限られるとともに高い機密性を保つためには特殊な設計が必要となり、一層コスト高となる。
またメカニカルシールの場合、その内部圧力を制御するシーラントの管理が必要となるため、シーラントの供給循環装置のメインテナンスにも手間とコストがかかる。
【0007】
そこで本発明の解決すべき課題は、二軸連続式の混練機について、メカニカルシールを用いることなく、ハウジング内の気密性を簡易な手段で確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、発明にかかる混練機では、シャフトを含むハウジング内の機構とハウジング外に配置された回転駆動するキャリアとの間に磁気カップリングを形成することで、シャフトをハウジングに密封された状態で回転可能としたのである。
【0009】
より具体的には、発明にかかる混練機を、長手方向の一端に投入口を有し他端に排出口を有するハウジングと、前記ハウジング内にハウジング長手方向に沿って平行にかつ回転可能に支持されかつ密封され、外周にその軸方向に並列する複数のパドルおよびスクリュを有する一対のシャフトと、前記両シャフトを回転させる磁気カップリング機構と、を備え、前記磁気カップリング機構は、両シャフトの軸端に互いに軸方向に間隔をあくように設けられたギア部と、前記ハウジング内に両シャフトの軸端の外周に被さるように回転可能に支持され、その内周に前記両シャフトのギア部にそれぞれかみ合うギア部を有し、その外周にマグネット部を有する円筒形のリングギアと、前記ハウジング外に前記リングギアと同心上に回転可能に支持され、その内周にマグネット部を有する円筒形のキャリアと、からなる構成を採用したのである。
【発明の効果】
【0010】
発明にかかる混練機を以上のように構成して、ハウジング外のキャリアを駆動させると、対向するマグネット部間の磁力の作用で、ハウジング内のリングギアが回転し、ついでギア部同士のかみ合いにより、シャフトが回転する。
ハウジングの内外で磁気カップリング機構を形成し、シャフトをハウジングに密封した状態で回転可能に構成したので、簡易な手段で機密性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は混練機の縦断面図、(b)は(a)の矢印断面図
【図2】動力伝達機構の側面図
【図3】混練機の要部拡大縦断面図
【図4】図3の矢印断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1に示す実施形態の混練機1は、溶媒中で重合される樹脂や脱モノマーが必要な樹脂溶液など、漏洩しやすく気密性が要求される原材料を混練する際に好適に用いられる。
図示のように、混練機1は、ハウジング2と、ハウジング2内に密封される一対のシャフト3と、を備える。
さらに混練機1は、シャフト3を回転させるための磁気カップリング機構を備える。
【0014】
図1のように、二連円筒形のハウジング2は、その外周面の一端上部に原材料の投入口2aを有し、外周面の他端下部に混練物の排出口2bを有する。
また、ハウジング2の長手方向の端部には、軸受が組み込まれた軸受箱2cが取り付けられている。
【0015】
一対の回転シャフト3は、2連円筒形をなすハウジング2の各円筒内にハウジング2の長手方向に沿ってそれぞれ配置され、平行をなしている。
各回転シャフト3は、ハウジング2両端面の軸受箱2c内の軸受2dにより回転可能に支持されており、その外周には軸方向に並列する複数のパドル3aおよびスクリュ3bが取り付けられている。軸受箱2cとシャフト3の間は、オイルシール2eがなされている。
【0016】
図2から図4のように、ハウジング2の軸受箱2cに収納された両シャフト3の軸端には、それぞれギア部3cが設けられている。両ギア部3cはシャフト3の軸方向に間隔をあけて設けられており、互いに干渉しないようになっている。
【0017】
また、ハウジング2の軸受箱2c内には、両シャフト3の軸端に被さるように、円筒形のリングギア4が回転可能に支持されている。軸受箱2cとリングギア4の間は、オイルシール2fがなされている。
リングギア4は、その内周にギア部4aを有し、両シャフト3のギア部3cのそれぞれとかみ合っている。また、その外周には永久磁石が固定されて、円筒状のマグネット部4bが形成されている。
【0018】
さらに、軸受箱2cの外には、リングギア4と同心上に円筒形のキャリア5が回転可能に支持されている。
キャリア5は、その外周にギア部5aを有し、その内周に永久磁石が固定されて、円筒状のマグネット部5bが形成されている。軸受箱2cとキャリア5の間は、オイルシール2gがなされている。
【0019】
図2のように、キャリア5と電動機6に、タイミングベルト6aが掛け渡され、電動機6からキャリア5に回転が伝達されるようになっている。
なお、軸受箱2c内には、グリスの供給排出口2hおよび冷却水の流路が適宜設けられているものとする。
【0020】
実施形態の混練機の構成は以上のようであり、ハウジング2の外にあるキャリア5が回転すると、ハウジング2の内にあるリングギア4は、マグネット部5bとマグネット部4b間の磁力の作用により、キャリア5とともに回転を開始する。
【0021】
リングギア4が回転すると、ギア部4aとギア部3cとのかみ合いにより、両シャフト3は同方向に回転を開始する。
このようにして磁気カップリング機構は、軸受箱2cの内部にあるシャフト3のギア部3cおよびリングギア4、ならびに壁を隔てて軸受箱2cの外部にあるキャリア5、から構成されている。
【0022】
ここでハウジング2の投入口2aから原材料を投入すると、シャフト3と一体に回転するパドル3aにより原材料は攪拌されて混練物となる。これがシャフト3と一体に回転するスクリュ3bによりハウジング2内を排出口2bに向けて送られ、最後は排出口2bから混練物が排出されることになる。
【0023】
シャフト3はハウジング2内に密封され、磁気カップリング機構を用いて壁を隔てて動力伝達をおこなうため、簡易な構成で気密性が確保される。
簡易な構成であるため、気密性確保のためメカニカルシール等を用いる場合に比べて、製造コストを抑えられ、また混練機1全体の小型化が図られる。
小型化が図られるため、セルフクリーニング型の二軸混練機のような、軸間距離が一定以内に制限される場合にも、メカニカルシールと異なり、特殊な設計を必要としない。
メカニカルシールのようなシーラントの管理が不要であるため、メインテナンスの手間と費用も抑えることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 実施形態の混練機
2 ハウジング
2a 投入口
2b 排出口
2c 軸受箱
2d 軸受
2e、2f、2g オイルシール
2g グリス供給排出口
3 シャフト
3a パドル
3b スクリュ
3c ギア部
4 リングギア
4a ギア部
4b マグネット部
5 キャリア
5a ギア部
5b マグネット部
6 電動機
6a タイミングベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端に投入口2aを有し他端に排出口2bを有するハウジング2と、
前記ハウジング2内にハウジング長手方向に沿って平行にかつ回転可能に支持されかつ密封され、外周にその軸方向に並列する複数のパドル3aおよびスクリュ3bを有する一対のシャフト3と、
前記両シャフト3を回転させる磁気カップリング機構と、を備え、
前記磁気カップリング機構は、
前記両シャフト3の軸端に互いに軸方向に間隔をあくように設けられたギア部3cと、
前記ハウジング2内に両シャフト3の軸端の外周に被さるように回転可能に支持され、その内周に前記両シャフト3のギア部3cにそれぞれかみ合うギア部4aを有し、その外周にマグネット部4bを有する円筒形のリングギア4と、
前記ハウジング2外に前記リングギア4と同心上に回転可能に支持され、その内周にマグネット部5bを有する円筒形のキャリア5と、からなる混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−162017(P2012−162017A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24810(P2011−24810)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】