説明

混練装置および排出機

【課題】混練装置に用いられる混練対象物の排出機について、混練対象物の排出経路上に軸受部を設ける必要をなくす。
【解決手段】排出機20を、混練装置のハウジング11の排出口に差し込み可能な円筒形の排出管21と、排出管21を外周から回転駆動可能に支持する軸受部22と、排出管21の内周に形成されて排出管21の回転駆動に伴い混練対象物を排出管21の内部を通じてハウジングの外へと送り出し可能な羽根23と、を備えるものとする。排出管21の内部が混練対象物の排出経路となり、軸受部22は排出経路から外れているため、軸受部22に混練対象物が侵入することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度の混練対象物を混練装置から強制的に排出するのに好適な排出機に関する。
また、本発明は前記排出機を備える混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な混練装置として、投入口および排出口を有するハウジングと、ハウジング内に回転可能に支持されてその外周にパドルやスクリュが形成された一または複数のシャフトと、を備えるものが知られている。
このような混練装置の投入口に混練対象物を投入すると、混練対象物はハウジング内でシャフトにより混練されかつ排出口に向けて送られることになる。
【0003】
ところで従来の混練装置では、処理後の混練対象物をハウジングの排出口から排出する機構として、下向きの排出口にダクトを設けるのみとするなど、その混練対象物の自重による落下に依存するような機構が採用されることがある。
しかし、混練対象物が高粘度である場合には、混練装置からの排出抵抗が大きいため、かかる自重に依存する簡易な機構では、排出能力が不充分となりやすい。
排出能力が不充分であると、混練装置内に混練対象物が滞留し、後続する混練対象物の処理に支障をきたしやすい。
【0004】
特にその混練装置が混練処理能力の高いいわゆる二軸噛み合い型である場合には、混練対象物が混練装置内に滞留すると、過剰に混練処理がおこなわれることになって、その混練対象物の劣化や異常発熱を招きやすい。
【0005】
そこで特許文献1に開示されているように、混練装置のダクト内に排出用スクリュを回転可能に支持して排出機を構成し、その排出用スクリュの回転により混練物を強制的に送り出す(排出する)提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6‐99429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の排出機の場合、必然的に混練対象物の排出経路上に排出用スクリュの軸受部を配置することになるため、混練対象物がその軸受部に侵入しやすい。軸受部に混練対象物が侵入して詰まると、故障の原因となる。
また特許文献1の排出機の場合、その排出用スクリュの回転軸をモータ等に接続するために、排出経路から外へと取り出すことを要する。そのためには、必然的に排出経路を中途で屈曲させることになり、その屈曲箇所に混練対象物が滞留しがちとなって、効率的な排出が妨げられる。
そのため、高粘度の混練対象物の混練装置には、特許文献1の機構の適用が実質上困難であった。
【0008】
そこで本発明の解決すべき課題は、混練装置に用いられる混練対象物の排出機について、混練対象物の排出経路の中途を屈曲させる必要をなくすとともに、その排出経路上に軸受部を設ける必要をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、混練装置に用いる本発明の排出機として、混練装置のハウジングの排出口に差し込み可能な円筒形の排出管と、排出管を外周から回転駆動可能に支持する軸受部と、排出管の内周に形成されて排出管の回転駆動に伴い前記混練対象物を排出管の内部を通じて前記ハウジングの外へと送り出し可能な羽根と、を備える構成を採用したのである。
【発明の効果】
【0010】
排出管の内部が混練対象物の排出経路となり、排出管を外周から支持する軸受部は排出経路から外れているため、軸受部に混練対象物が侵入することはない。そのため、混練対象物が軸受部に詰まって故障等が生じることを防止できる。
また回転する排出管自体が排出経路を構成するため、中途で屈曲させる必要がなく、混練対象物を効率的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の混練装置の縦断面図
【図2】実施形態の混練装置の排出機部分横断面図
【図3】実施形態の混練装置の排出機部分の拡大縦断面図
【図4】実施形態の排出機の一部切り欠き斜視図
【図5】他の実施形態の排出機の一部切り欠き斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1から図4に示す実施形態の二軸連続混練装置10は、高粘度の原材料(混練対象物)を混練する際に好適に用いられる。
図示のように、二軸連続混練装置10は、ハウジング11と、ハウジング11内に配置される一対のシャフト12と、ハウジング11の内外にかけて配置される実施形態の排出機20を備える。
【0014】
図1および図2のように、横倒した長円筒形のハウジング11は、その外周面の長手方向の一端上部に開口する投入口を有し、外周面の長手方向の他端下部に開口する排出口を有する。その投入口にはホッパ11aが設けられ、その排出口には円筒形のダクト11bが設けられている。
また、ハウジング11の長手方向の両端面は、軸受箱11cが取り付けられることで閉塞されている。
【0015】
図1および図2のように、一対のシャフト12は、長円筒形のハウジング11の長軸方向に近接して並列し、かつ互いに平行をなしている。
また各シャフト12は、その両端部が軸受箱11cに組み込まれた軸受により回転可能に支持されており、かつ一方の軸受箱11cに組み付けられたモータにより回転駆動されるようになっている。
各シャフト12の外周には、スクリュ12aが取り付けられており、近接する両シャフト12のスクリュ12aの回転軌跡が互いにオーバーラップして(噛み合って)いる。
スクリュ12aのらせんの向きは、ハウジング11のダクト11bの前後で逆向きになっており、混練対象物をダクト11bに方向付けできるようになっている。
【0016】
図3および図4のように、実施形態の排出機20は、排出管21と、軸受部22と、羽根23と、案内棒24を備え、これらがケーシング25に組み付けられている。
【0017】
ほぼストレートな円筒形の排出管21は、その上端部がハウジング11のダクト11bに差し込まれて両シャフト12の下方に臨んでいる。
ダクト11bと排出管21の間は、シール機構11dによりシールされ、混練対象物が隙間から漏れ出ないようになっている。
また排出管21は、その外周の中程を軸受部22により回転可能に支持されている。
排出管21の下端部外周には、プーリ21aが固定され、ベルト26を介して同じくケーシング25に組み付けられた図示省略のモータにより、回転駆動力が伝達されるようになっている。
このプーリ21aは、排出管21の下端部にねじ止めされたナット21bと、ケーシング25の上板25aの裏面にねじ止めされたカラー25bにより、排出管21の軸方向に位置決めされている。
【0018】
軸受部22は、ケーシング25の上板25aを貫通する円孔内に組み込まれている。
排出管21は、その中程にフランジ21cを有し、このフランジ21cより下方の部分がケーシング25の円孔を挿通することで上述のように軸受部22に回転可能に支持されている。
排出管21は、そのフランジ21cがケーシング25の上板25aとハウジング11のシール機構11dに挟まれることで軸方向に位置決めされている。
【0019】
排出管21の内周には、羽根23が一体に取り付けられている。ここで羽根23の排出管21への取り付けの態様は特に限定されないが、溶接が例示できる。
図4のように、平たい羽根23は、排出管21の内周を周回しながら軸方向に沿って延び、全体としてらせん形をなしている。
【0020】
案内棒24は、放射方向に延びる取付部24aにより、ケーシング25の内部に回転不能に固定されている。
案内棒24の径は、排出管21内の羽根23のらせんの内径よりも小さく設定され、このため案内棒24は排出管21を挿通している。
案内棒24の上端部(先端部)24bは円錐形となっており、この上端部がハウジング11内に至り、両シャフト12のスクリュ12aがオーバーラップする箇所の直下に近接している。
【0021】
実施形態の二軸連続混練装置10の構成は以上のようであり、いまハウジング11のホッパ11aから混練対象物を投入すると、その混練対象物は回転駆動する両シャフト12のスクリュ12aにより混練処理され、かつダクト11bへ向けて送られることになる。
【0022】
つぎに、ダクト11bに向けて送られた混練対象物は、排出機20の回転駆動する排出管21の上端開口に臨み、排出管21と一体に回転する羽根23によって排出管21内へと引き込まれる。
こうして排出管21内に引き込まれた混練対象物は、そのまま羽根23によって下方へと順次送り出され、排出管21の下端開口からケーシング25内へと排出される。
【0023】
このような一連の排出作業の際に、ダクト11b上の両シャフト12のスクリュ12aの回転軌跡がオーバーラップする箇所がデッドスペースとなって、混練対象物はここに滞留しやすい。
しかし、このオーバーラップ箇所に案内棒24の円錐形の先端部24bが近接して配置されているため、デッドスペース内の混練対象物がこの案内棒24を伝って排出管21内へと案内されることになり、混練対象物の滞留が抑制されている。
【0024】
実施形態の混練装置10では、排出機20の排出管21の内部が混練対象物の排出経路となる一方、その排出管21はその外周から軸受部22に支持されている。
したがって、混練対象物の排出経路上に軸受部は存在せず、混練対象物が軸受部22に侵入して詰まりが生じることが防止されている。
また、排出経路をなす排出管21は、ほぼストレートであって屈曲箇所を有しないため、中途に混練対象物が滞留することが防止されており、混練対象物の効率的な排出が実現されている。
【0025】
以上の実施形態では、排出機20として案内棒24を備える態様を例示したが、混練対象物の排出抵抗が比較的小さい場合には、図5のように案内棒24を省略してもよい。
この図のように案内棒24を省略すると、排出機20全体の構造が簡略化され、その製造コストを低廉に抑えることができる。
【0026】
また実施形態では、両シャフト12のスクリュ12aの回転軌跡がオーバーラップするいわゆる二軸噛み合い型の混練装置10を例示したが、本発明の排出機20は、二軸噛み合い型以外の混練装置に適用可能である。
具体的には、排出機20は、二軸であってもかみ合い型でないもの、一軸型、三軸型の混練装置に適用可能である。
【0027】
また実施形態では、排出機20を混練装置10に対して垂直に配置したが、排出機20の配置の方向はこれに限定されず、たとえば混練装置10に対して斜めに配置したり、横向きに配置したりしてもよい。
【0028】
さらに実施形態では、排出機20の羽根23をらせん形に連続するものとしたが、混練対象物を送り出す機能を有する限りにおいて、形状は限定されない。
たとえば、排出管21の内周のらせん軌跡上に断続的に羽根を設けてもよいし、排出管21の内周に放射形に複数の羽根を設けてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 実施形態の二軸連続混練装置
11 ハウジング
11a ホッパ
11b ダクト
11c 軸受箱
11d シール機構
12 シャフト
12a スクリュ
20 実施形態の排出機
21 排出管
21a プーリ
21b ナット
21c フランジ
22 軸受部
23 羽根
24 案内棒
24a 取付部
25 ケーシング
25a 上板
25b カラー
26 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練対象物の投入口および排出口を有するハウジング11と、
前記ハウジング11内に回転可能に支持されてその外周にハウジング11内の混練対象物を処理するパドルまたはスクリュ12aが少なくとも形成された一または複数のシャフト12と、
前記ハウジング11の排出口に臨む混練対象物の排出機20と、を備え、
前記排出機20は、
一端部が前記ハウジング11の排出口に差し込まれた円筒形の排出管21と、
前記排出管21を外周より回転駆動可能に支持する軸受部22と、
前記排出管21の内周に形成されて排出管21の回転駆動に伴い前記混練対象物を排出管21の内部を通じて前記ハウジング11の外へと送り出す羽根23と、を有する混練装置。
【請求項2】
前記排出機の羽根23は、前記排出管21の内周に沿ってらせん形をなしている請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
一対の前記シャフト12が前記ハウジング11内で平行にかつ回転可能に支持され、両シャフト12の前記パドルまたはスクリュ12aの回転軌跡がオーバーラップしている請求項1または2に記載の混練装置。
【請求項4】
前記排出機20は、
前記排出管21を挿通してその先端部がハウジング内に至る回転不能の案内棒24をさらに有し、
前記案内棒24の先端部は、前記一対のシャフト12のパドルまたはスクリュ12aの回転軌跡がオーバーラップする箇所に近接し、そのオーバーラップする箇所に滞留する前記混練対象物を前記排出管21内へと案内する請求項3に記載の混練装置。
【請求項5】
混練装置10のハウジング11の排出口から、ハウジング11内部の混練対象物を外部へと強制的に排出させるための排出機20であって、
前記ハウジング11の排出口に差し込み可能な円筒形の排出管21と、
前記排出管21を外周から回転駆動可能に支持可能な軸受部22と、
前記排出管21の内周に形成されて排出管21の回転駆動に伴い前記混練対象物を排出管21の内部を通じて前記ハウジング11の外へと送り出し可能な羽根23と、を備える排出機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200677(P2012−200677A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67911(P2011−67911)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】