説明

混練装置

【課題】混練効果を高め、十分なセルフクリーニングを行うことが可能な混練装置を提供する。
【解決手段】混練部材としてのロッド3a、4aを立設した回転軸3、4を不等速で回転させる。ロッド3aは、回転軸3の長さ方向に所定ピッチずれるごとに周方向に所定角度ピッチ72度ずらせて立設され、ロッド4aは所定ピッチずれるごとに回転軸3、4の回転数比と同比の角度ピッチ120度ずらして立設される。回転軸3、4のロッド3a、4aが回転軸の回転に伴って互いに衝突することなく他方の回転軸の外周面に近接してセルフクリーニングが行われるように、両回転軸の軸芯間を離間して配置するとともに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として第1と第2の回転軸を(N−k)対Nの回転数比で回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練装置、特に、それぞれ外周面にロッド、パドルなどの混練部材あるいは連続するスクリュー羽根が設けられた平行な2本の回転軸を回転させ、粉体や粒体を薬液などと混合させて混練する混練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴミ焼却場から排出される飛灰、焼却ダスト、あるいは脱水汚泥、小麦粉などの粉体あるいは粒体と薬液とを混練し、粒状ないし塊状に固化させて排出する処理が行なわれている。その混練のための混練装置が、下記の特許文献1、2に記載されている。
【0003】
これらの混練装置の構成では、その筐体内に、2本の回転軸が筐体の長さ方向に沿って互いに平行に架設されており、一つの回転軸の外周面には、ロッドなどの混練部材がスクリュー線上に所定角度のピッチ間隔ずらせて立設され、他の回転軸の外周面には、同じ混練部材が逆スクリュー線上に所定の角度ピッチ間隔ずらせて立設されている。第1と第2の回転軸は、Nを整数として(N−1)対N(例えば、4対5)の不等速比で回転され、混練部材の角度ピッチを回転数比と同比に、また回転軸方向の螺旋ピッチを回転比と逆比とすることにより、投入口から投入された粉体や流体は混練部材により混練されながらスクリューと同様の作用の力によって排出口側に送られる。第1と第2の回転軸の混練部材を互いの回転軸の外周面に近接するように、各回転軸を配置することにより、回転軸あるいは混練部材に付着した粉体や粒体が各回転軸の回転に伴って自動的に除去されセルフクリーニングが行われている。
【0004】
下記特許文献3には、それぞれスクリュー羽根が軸方向に沿って連続した螺旋形に形成され互いに巻回方向が逆方向で互いの螺旋ピッチの比がNを3以上の整数として(N−1)対Nになるように設けられた2本の回転軸が平行に架設され、互いに前記スクリュー羽根の先端が相手の軸の表面にほぼ接触するように配置されており、該2本のスクリュー軸を互いにそれぞれ螺旋ピッチの比と逆数の回転数比で逆方向に回転させることにより、混練物を一方向に搬送する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−104477号公報
【特許文献2】特開2004−105840号公報
【特許文献3】特開2002−179235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1から3に記載された混練装置の構成では、高速回転する回転軸に対する低速回転する回転軸の回転数比が大きいので、混練が十分でなく、またセルフクリーニング効果も十分でない、という問題があった。
【0007】
本発明の課題は、上記のような問題を解決し、混練効果を高め、十分なセルフクリーニングを行うことが可能な混練装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
回転軸を回転させ物体を混練しながら回転軸の軸方向に搬送する混練装置であって、
混練部材を順次スクリュー線上に所定角度ずらせて外周面に立設した第1の回転軸と、
第1の回転軸と平行に延びて第1の回転軸とは異なる回転数で逆回転し、混練部材を順次逆スクリュー線上に前記所定角度と異なる角度ずらせて外周面に立設した第2の回転軸と、を有し、
前記第1と第2の回転軸においてずらされる角度の比が、第1と第2の回転軸の回転数比と同比になっており、
第1と第2の回転軸のそれぞれの混練部材が回転軸の回転に伴って互いに衝突することなく他方の回転軸の外周面に近接してセルフクリーニングが行われるように、第1と第2の回転軸の軸芯間を離間して配置するとともに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として第1と第2の回転軸を(N−k)対Nの回転数比で回転させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、
回転軸を回転させ物体を混練しながら回転軸の軸方向に搬送する混練装置であって、
スクリュー羽根を所定の螺旋ピッチで螺旋状に連続して外周面に立設した第1の回転軸と、
第1の回転軸と平行に延びて第1の回転軸とは異なる回転数で逆回転し、スクリュー羽根を第1の回転軸の螺旋ピッチと異なる螺旋ピッチで逆螺旋状に連続して外周面に立設した第2の回転軸と、を有し、
前記第1と第2の回転軸の螺旋ピッチの比が、第1と第2の回転軸の回転数比と逆比になっており、
第1と第2の回転軸のそれぞれのスクリュー羽根が回転軸の回転に伴って互いに衝突することなく他方の回転軸の外周面に近接してセルフクリーニングが行われるように、第1と第2の回転軸の軸芯間を離間して配置するとともに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として第1と第2の回転軸を(N−k)対Nの回転数比で回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による混練装置の構成によれば、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として第1と第2の回転軸を(N−k)対Nの回転数比で回転させるようにしているので、一方の回転軸を他方の回転軸よりより高速に回転させることができ、各回転軸に立設された各混練部材あるいはスクリュー羽根により粉体あるいは粒体などの物質を十分に混練させることができるとともに、各回転軸の回転に伴って回転軸、混練部材、あるいはスクリュー羽根に付着した物質を自動的に掻き落とすセルフクリーニング効果を顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例による混練装置の筐体の上側の一部を取り払った状態で示す平面図である。
【図2】同混練装置の筐体内の一方の回転軸を図1でAの方向に見たときの側面図である。
【図3】図1中の矢印Bによる矢視断面図である。
【図4】2つの回転軸のロッドの並びを示した説明図である。
【図5】2つの回転軸を3対5の回転数比で回転させたときの回転軸の各回転角度位置におけるロッドの位置を示した説明図である。
【図6】2つの回転軸を2対5の回転数比で回転させたときの回転軸の各回転角度位置におけるロッドの位置を示した説明図である。
【図7】2つの回転軸を1対5の回転数比で回転させたときの回転軸の各回転角度位置におけるロッドの位置を示した説明図である。
【図8】本発明の他の実施例による混練装置の筐体の上側の一部を取り払った状態で示す平面図である。
【図9】同混練装置の筐体内の一方の回転軸を図8でAの方向に見たときの側面図である。
【図10】図8中の矢印Bによる矢視断面図である。
【図11】回転軸のロッドが衝突しないための条件を説明する説明図である。
【図12】2つの回転軸を3対5の回転数比で回転させたときの各スクリュー羽根の回転位置を示すとともに、左端部に端部から見た図を模式的に示した説明図である。
【図13】2つの回転軸を2対5の回転数比で回転させたときの各スクリュー羽根の回転位置を示すとともに、左端部に端部から見た図を模式的に示した説明図である。
【図14】2つの回転軸を1対5の回転数比で回転させたときの各スクリュー羽根の回転位置を示すとともに、左端部に端部から見た図を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。ここでは、ゴミ焼却所において排出される飛灰などの粉体あるいは粒体と液体の混練を行なう混練装置における実施例を示す。なお、本発明に係る混練装置の構成は、飛灰など以外の粉体あるいは粒体の混練、あるいはそれに液体を混合させての混練を行なう混練装置にも適用できることは勿論である。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3は、実施例の混練装置の構造を説明するもので、図1は混練装置の筐体の上側の一部を取り払った状態で示す平面図、図2は図1でA方向から見たときの混練装置の筐体内の回転軸に沿った側面図、図3は図1図中の矢印Bの矢視断面図である。
【0014】
図1〜図3において、混練装置のベースフレーム1上に筐体2が設けられる。筐体2は、ここでは細長い直方体形状に形成されており、その長さ方向を水平にして設置される。筐体の長さ方向の一端部(図1、2中で右端部)の上側には、不図示のホッパーから飛灰、ダイオキシン吸着用の活性炭の粉、及び硫酸中和用の消石灰、ないしは固化用セメントなどの粉体(あるいは粒体)を筐体2内に投入するための投入口2aが設けられる。他端部(左端部)の下側には、前記の粉体と、不図示のノズルから噴射される薬溶液と希釈用の水の混合液とを混練した飛灰混練物を筐体2から不図示のコンベア上へ排出するための排出口2bが設けられる。絞り板10は、粉体が投入される投入スペースと、粉体と混合液が飛灰混練物として混練される混練スペース間を隔てるためのものである。
【0015】
筐体2内には、その長さ方向に沿って回転軸3(第1の回転軸)と回転軸4(第2の回転軸)が互いに水平方向に平行に架設される。回転軸3、4の左側小径部3b、4bがそれぞれ図1中で筐体2の左端部外側に固定された軸受5、6に回転可能に支持され、また右側小径部3c、4cがフレーム1上に設けられたギアケース9の外側に固定された2つの軸受7、8によって回転可能に支持される。回転軸3、4の対向し合う各部の径d(図3)は同じになっており、回転軸3、4は例えば3対5の回転数比で不等速に逆方向に互いに内側に向けて回転される。
【0016】
回転軸3、4の外周面には、混練部材としての複数の円柱形のロッド3a、4aがそれぞれ互いに回転軸3、4の軸方向(長さ方向)に沿って等距離p、周方向に円を等分割する所定角度ずらしてスクリュー線上に垂直に立設される。各ロッド3a、4aは同じ形状、同じ寸法であり、回転軸3の軸端(図1でみて左端)からn番目(n=1、2、.....)にあるロッド3aと、回転軸4の軸端から同じn番目にあるロッド4aは、それぞれ軸端からの軸方向の距離が一致している。回転軸3、4の軸芯間は、回転軸3、4が回転したとき、各ロッド3a、4aが互いに衝突しない距離で、また各ロッド3a、4aが対向する回転軸4、3の外周面に接触しない程度に近接する距離Dに設定される。
【0017】
回転軸3、4が回転したとき、各ロッド3aとロッド4aが互いに衝突しないようにするために、回転軸3、4の周方向におけるロッド3a、4aの角度ピッチ(角度間隔)の比は、回転軸3、4の回転数比と同比に設定される。例えば、回転軸3、4が3対5の比で回転される場合、回転軸3、4の各ロッド3a、4aにおける角度ピッチはそれぞれ72度、120度に設定される。
【0018】
回転軸3の各ロッド3aは、回転軸3の長さ方向に等距離p、回転軸の周方向に72度の角度それぞれ互いにずらして配置されるので、各ロッド3aはスクリュー線上に配置されることになる。このとき、回転軸の軸方向にみて5個目のロッド3aが最初のロッド3aと同じ角度位置となるので、螺旋ピッチはL(=5p)となる。
【0019】
一方、回転軸4の各ロッド4aは、回転軸の長さ方向に等距離p、ロッド3aとは逆周方向に、120度の角度それぞれ互いにずらせて配置されるので、各ロッド4aは回転軸3のスクリュー線とは逆スクリュー線上に配置されることになる。このとき、回転軸の軸方向にみて3個目のロッド4aが最初のロッド4aと同じ角度位置となる。従って、ロッド4aの螺旋ピッチは3pとなり、回転軸3の螺旋ピッチをL(=5p)とすると、回転軸4の螺旋ピッチは0.6L(=3p)となるので、回転軸3、4のロッド配置が描く螺旋のピッチの比は、回転数比3対5とは逆比となる。
【0020】
回転軸3、4の図1中の右端部でギアボックス9に挿通された部分にはギア11、12が固定されており、互いに噛合している。ギア11、12のギア比、すなわちそれぞれの歯数の比は、ロッド3a、4aの角度ピッチの比と逆比で、回転軸が3対5の比で回転される場合、5:3になっている。
【0021】
回転軸4の図1中で右端は、軸受8から外側に突出しており、その右端にスプロケット13が固定される。一方、フレーム1は、図1中で筐体2の右端で下側に突出しており、その突出部分上にはモータ14が配置される。モータ14の回転軸にはサイクロ減速機15が連結されており、その出力軸にはスプロケット16が固定される。このスプロケット16とスプロケット13間にチェーン17が張り渡される。
【0022】
モータ14の一方向への回転駆動力がサイクロ減速機15、スプロケット16、チェーン17及びスプロケット13を介して回転軸4に伝達されて回転軸4が一方向に回転し、さらに回転駆動力がギア12、11を介して回転軸3に伝達されて回転軸3が逆方向に回転する。回転軸3、4の回転方向を図1〜図3中に矢印で示してある。
【0023】
このような構成の混練装置において、混練時には、モータ14の駆動により、図1〜図3に矢印で示すように回転軸3、4が互いに逆方向に回転駆動され、その回転に伴ってそれぞれのロッド3a、4aが互いに逆方向に回転する。そして、投入口2aから粉体が筐体2内の投入スペースに投入される。
【0024】
回転軸3、4の回転数比が3対5で、回転軸3のロッド3aが回転軸の軸方向に等距離p、周方向に72度の角度それぞれずらして、また回転軸4のロッド4aが等距離p、120度の角度それぞれずらして配置したときの回転軸3、4の図が図4(a)に、また回転軸3が1回転したときの状態が36度の分解能で図5に図示されている。図5から明らかなように、回転軸3が36度回転するごとに、回転軸4は60度回転し、回転軸3が1回転(360度)すると、回転軸4は5/3回転(600度)する。
【0025】
図4(a)は、図1で回転軸3,4と各ロッド3a、4aのみを取り出した時の図に相当する。また、図5において網点で示したロッドはそれぞれ着目しているロッドで、一点鎖線で示したロッドは、着目しているロッドの背後にあってそれぞれ角度が72度、120度ずれたロッドであり、それぞれ螺旋ピッチ0.6L(3p)、L(5p)分(ロッド数にして5個と3個)が図示されている。
【0026】
回転軸3、4の周方向におけるロッド3a、4aの互いの角度ずれ72度、120度は、回転軸3、4の回転数比3対5と同比に設定されているので、回転軸3、4が不等速に回転しても、各ロッド3a、4aは位相がずれることなく、周期的に相手側の回転軸の外周面に近接する。図5の例では、回転軸3のロッド3aは回転軸3の36度の回転で回転軸4の外周面に近接し、以後その状態から回転軸3が360度回転するごとにその状態を繰り返す。一方、回転軸4のロッド4aは回転軸3の0度と216度の回転でそれぞれ回転軸3の外周面に近接し、以後その状態から回転軸3が360度回転するごとにその状態を繰り返す。
【0027】
網点を施したロッドの背後にある72度、120度の角度ずれた一点鎖線で示した回転軸3、4の各ロッドについても同様なことがいえる。
【0028】
回転軸3、4の軸芯間距離Dは、回転軸3、4が回転したとき、各ロッド3a、4aが互いに衝突しない距離で、また各ロッド3a、4aが対向する回転軸4、3の外周面に接触しない程度に近接する距離Dに設定されるので、各ロッド3a、4aが相手側の回転軸の外周面に近接するごとに、回転軸の外周面に付着した粉体が掻き落とされ、また各ロッド3a、4aが近接するごとに各ロッドに付着した粉体が掻き落とされ、それぞれ回転軸並びに各ロッドのセルフクリーニングが行われる。このように、回転軸3,4の回転により粉体は回転軸3,4の各ロッド3a、4aにより十分混練され、また同時に回転軸とロッドのセルフクリーニングが行われる。
【0029】
また、回転軸3のロッド3aの配置は螺旋ピッチL(=5p)の螺旋形となり、回転軸4のロッド4aの配置は螺旋ピッチ0.6L(=3p)の逆螺旋形となるので、粉体は回転軸3、4のロッド3a、4aの螺旋形配置によるスクリュー効果により回転軸3、4の回転(逆回転)に伴って回転軸の長さ方向に同一方向に搬送される。回転軸3、4のロッド3a、4aの螺旋ピッチは、それぞれ回転軸3、4の回転数比の逆比となっているので、回転軸3のロッド3aによる搬送速度と、回転軸4のロッド4aによる搬送速度は同じになり、粉体は各ロッド3a、4aにより混練されながら、図1,2において矢印で示した方向に搬送され、排出口2bから排出される。
【0030】
回転軸3、4の回転数比は、3対5に設定されているので、回転軸3,4のロッド3a、4aの先端の相対角速度は、例えば、従来のように4対5に設定された場合に比較して大きくなり、セルフクリーニング効果が大きくなる。
【0031】
回転数3のロッド3aを同じ角度ずれ(角度ピッチ)72度にし、回転軸3、4の回転数比を2対5に設定したときの例が、図4(b)、図6に、また、回転軸3、4の回転数比を1対5に設定したときの例が、図4(c)、図7に図示されている。回転数比が2対5、1対5に設定されると、回転軸4のロッド4aの角度ずれ(角度ピッチ)は、それぞれ180度、360度となる。
【0032】
回転数比を2対5にしたときは、図6から明らかなように、回転軸3が36度回転するごとに、回転軸4は90度回転し、回転軸3が1回転(360度)すると、回転軸4は5/2回転(900度)する。回転軸3のロッド3aは回転軸3の36度の回転で回転軸4の外周面に近接し、以後その状態から回転軸3が360度回転するごとにその状態を繰り返す。一方、回転軸4のロッド4aは回転軸3の0度、144度、288度の回転でそれぞれ回転軸3の外周面に近接し、以後その状態から回転軸3が360度回転するごとにその状態を繰り返す。
【0033】
回転数比を1対5にしたときは、図7から明らかなように、回転軸3が36度回転するごとに、回転軸4は180度回転し、回転軸3が1回転(360度)すると、回転軸4は5/1回転(1800度)する。回転軸3のロッド3aは回転軸3の36度の回転で回転軸4の外周面に近接し、以後その状態から回転軸3が360度回転するごとにその状態を繰り返す。一方、回転軸4のロッド4aは回転軸3の0度、72度、144度、216度、288度の回転でそれぞれ回転軸3の外周面に近接し、以後その状態から回転軸3が360度回転するごとにその状態を繰り返す。
【0034】
以上の例から明らかなように、回転軸3,4の回転数比が小さいほど、高速回転する回転軸4のロッド4aが低速回転する回転軸3の外周面に角度を変えて多数回にわたって近接し、回転軸3の外周面に付着した粉体のセルフクリーニング効果が顕著になる。低速回転する回転軸3のロッド3aが高速回転する回転軸4の外周面に近接する頻度は相対的に少なくなるが、ロッド3aと回転軸4の相対角速度は大きいので、回転軸4に付着した粉体のセルフクリーニング効果も大きくなる。また、回転数比が小さいほど、各ロッド3a、4aの先端の相手側回転軸に対する相対角速度が大きくなり、各ロッド3a、4aは、より激しく粉体と衝突するので、混練効果並びにセルフクリーニング効果は顕著に向上する。
【0035】
図7に示したように、高速回転する回転軸4のロッド4aの角度ずれが360度のときは、ロッド4aの回転軸4上での配置軌跡は、螺旋形状とはならないので、単に撹拌効果しか得られず、また角度ずれが180度のときは、ロッド4aによるスクリュー効果は少ない。しかしながら、いずれの角度180度あるいは360度でも、ロッド4aは回転軸3の外周面に角度を変えて多数回にわたって近接し、回転軸3の外周面に付着した粉体のセルフクリーニング効果が顕著になり、各ロッド3a、4aの先端の相手側回転軸に対する相対角速度が大きくなるので、混練効果並びにセルフクリーニング効果は顕著に向上する。
【0036】
上述した図1〜図3の実施例では、回転軸3,4の回転数比は3対5で、ロッド3a、4aの角度ピッチは、72度、120度であったが、図8〜図10に示したように、回転数3,4の回転数比は同じで分割角度を2倍細かくし、ロッド3aを回転軸3の軸方向に等距離p、周方向に36度の角度それぞれ互いにずらして配置し、ロッド4aを回転軸4の軸方向に等距離p、周方向に逆方向に60度の角度それぞれ互いにずらして配置するようにしてもよい。
【0037】
さらに、本発明では、上記実施例に限定されずに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として回転軸3、4を(N−k)対Nの回転数比で回転させることによっても、同様な効果を得ることができる。
【0038】
図1〜図3、図4(a)、図5並びに図8〜図10に示した実施例では、N=5、k=2に設定されており、図4(b)、図6に示した例ではN=5、k=3に、図4(c)、図7に示した例では、N=5、k=4に設定されている。
【0039】
このほかにも、例えば、N=6、k=2、3、4、あるいは5に設定すれば、回転軸3、4の回転数比は2対3、1対2、1対4、1対6となり、一方の回転軸を他方の回転軸よりも顕著に高速に回転させることができる。
【0040】
従来では、2つの回転軸の回転数比は、Nを2以上の整数として(N−1)対Nに設定されているので、高速回転する回転軸の低速回転する回転軸に対する回転数比は、本発明での回転数比よりも小さく、本発明より撹拌並びにセルフクリーニング効果は少ない。
【0041】
これに対して、本発明では、一方の回転軸を他方の回転軸よりもより高速に回転させることができるので、図6、図7に示したような2対5あるいは1対5のような一方の回転軸が他方の回転軸より顕著に高速回転する構成が得られ、混練効果並びにセルフクリーニング効果を顕著に向上させることができる。
【0042】
本実施例では、回転軸3、4の各ロッド3a、4aは、周方向にずれる角度の比が、回転軸3、4の回転数比と同比となっているので、回転軸3、4の軸端から長さ方向に同じ位置にあるロッド3a、4aが、図5〜図7に示したように互いに衝突することがなければ、長さ方向に見て他の同じ位置にあるいずれのロッド3a、4aも衝突することはない。
【0043】
さらに、図5〜図7に示したように、一方の回転軸は回転軸の回転にともなって互いに衝突することなく他方の回転軸の外周面に近接してセルフクリーニングが行われるように、回転軸3、4の軸芯間が離間して配置されている。しかし、回転軸3、4の軸芯間の距離を近づけ過ぎると、回転軸4の回転数に対する回転軸3の回転数が小さくなるに従って、回転軸3、4のロッド3a、4aが衝突する恐れが高くなる。
【0044】
図11は、回転軸3、4の回転数比を(N−k)対N、回転軸3、4の軸芯間距離をS、ロッド3a、4aの先端回転半径をr1、r2、ロッド幅(ロッドを円柱形とすれば円直径)をW1、W2としたときのロッドの干渉を検証する図である。回転軸4が基準位置から角度θaだけ回転したときのロッド4aの先端の点Pとロッド3aとの接近距離Hを求め、接近距離Hが0以下、あるいは接近角度θbが0以下になると、ロッド3a、4aが干渉(衝突)する。
【0045】
回転軸3、4の回転数比(N−k)対Nが小さくなるほど、つまり回転軸4がより高速に回転する程、ロッド3a、4aが干渉する恐れが大きくなる。
【0046】
従って、(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の軸芯間距離を変化させ、(N−k)対Nの値が小さくなるほど、つまり一方の回転軸の回転数が他方の回転数に比較して高速に回転するほど、2つの回転軸の軸芯間距離Sを大きくしてロッド3a、4aが衝突するのを防止するようにする。
【0047】
回転軸の軸芯間距離Sを大きくする代わりに、あるいは大きくするとともに、ロッド幅W1及び/又はW2を小さくするようにしてもよい。
また、第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の径の比を変化させるようにしてもよい。例えば、(N−k)対Nの値が小さくなるほど、つまり一方の回転軸の回転数が他方の回転数に比較して高速に回転するほど、高速回転する回転軸の径を小さくする。
また、第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の混練部材の外周面からの高さの比を変化させるようにしてもよい。例えば、一方の回転軸の回転数が他方の回転数に比較して高速に回転するほど、高速回転する回転軸の混練部材の外周面からの高さを小さくする。
【0048】
以上説明した実施例の混練装置において、回転軸3、4は、図1〜図3あるいは図8〜図10に示したように、互いに内側に向けて回転させるのではなく、外側に向けて回転させるようにしてもよい、この場合には、回転軸3、4のロッド3a、4aの並びをそれぞれ図示したものと逆螺旋形にして搬送方向が同じ方向になるようにする。
【0049】
また、各実施例の混練装置において、ロッド3a、4aの代わりに略平板状のパドルを回転軸3、4の外周面にロッド3a、4aと同様の配置で螺旋形に並ぶように立設してもよい。パドルの配置をロッド3a、4aと同様とすることで、パドルがロッド3a、4aと同様に作用し、セルフクリーニングも同様に行うことができる。
【実施例2】
【0050】
図12から図14には、実施例1のように不連続な混練部材ではなく、連続したスクリュー羽根を第1と第2の回転軸に設けて混練を行う実施例が図示されている。
【0051】
図12において、混練装置のベースフレーム50上に筐体52が設けられ、右端部の上側には、粉体(あるいは粒体)を筐体52内に投入するための投入口52aが設けられる。他端部(左端部)の下側には、混練物を不図示のコンベア上へ排出するための排出口52bが設けられる。
【0052】
筐体52内には、その長さ方向(軸方向)に沿って回転軸30(第1の回転軸)と回転軸40(第2の回転軸)が垂直方向に分離して互いに平行に架設される。回転軸30は軸受31、32により回転可能に支持され、また回転軸40は軸受41、42によって回転可能に支持される。回転軸30の径は回転軸40の径より大きくなっており、回転軸30、40は例えば3対5の回転数比で不等速に矢印で示した方向に逆方向に回転される。
【0053】
回転軸30の外周面には、所定の螺旋ピッチのスクリュー羽根30aが螺旋状に連続して立設され、回転軸40の外周面には、スクリュー羽根30aの螺旋ピッチとは異なる螺旋ピッチのスクリュー羽根40aが逆螺旋状に連続して立設される。スクリュー羽根30aと40aの螺旋ピッチの比は、回転軸30、40の回転数の比と逆比になっており、スクリュー羽根30aの螺旋ピッチをPとすると、スクリュー羽根40aの螺旋ピッチは3/5=0.6Pとなる。
【0054】
回転軸30、40の軸芯間距離は、回転軸30、40が回転したとき、各スクリュー羽根30a、40aが対向する回転軸40、30の外周面に接触しない程度に近接する距離に設定される。
【0055】
回転軸30、40は、図12の右端部でギアボックス53内で不図示のギアと噛合しており、このギアの噛み合いにより回転軸30、40は、3対5の回転数比で回転される。
【0056】
回転軸30の図12中で右端は、軸受32から外側に突出しており、モータ54の回転数を減速させる減速機55に結合される。
【0057】
このような構成において、モータ54の駆動により、図12に矢印で示すように回転軸30、40が互いに逆方向に回転駆動され、その回転に伴ってそれぞれのスクリュー羽根30a、40aが互いに逆方向に回転する。そして、投入口52aから粉体が筐体52内に投入される。
【0058】
回転軸30、40の回転数比が3対5で、スクリュー羽根30a、40aの螺旋ピッチの比が該回転数比の逆比の5:3であるので、実施例1のロッド3a、4aが互いに衝突することがないように、スクリュー羽根30a、40aも、互いに衝突することなく、周期的に相手側の回転軸の外周面に近接する。回転軸30、40の回転に伴って、相手の回転軸40、30の外周面に近接するスクリュー羽根30a、40aの先端の部分は、回転軸30、40の軸方向に沿って移動する。これにより回転軸30、40の外周面に付着した混練物が掻き落とされ、セルフクリーニングが行われる。
【0059】
また、スクリュー羽根30a、40aの螺旋ピッチが異なることにより、スクリュー羽根30aと40aの側面がごく近くまで接近する箇所Qが複数発生するので、その部分でスクリュー羽根の側面に付着した混練物が掻き落される。このスクリュー羽根どうしが近接する部分は、回転軸30、40の回転に伴って移動するので、スクリュー羽根30a、40aの全体に渡って互いの摺動による混練物の掻き落としが行われる。
【0060】
スクリュー羽根30a、40aの螺旋ピッチの比は、それぞれ回転軸30、40の回転数比の逆比となっているので、スクリュー羽根30aによる混練物の搬送速度と、スクリュー羽根40aによる搬送速度は同じになり、粉体は各スクリュー羽根30a、40aにより混練されながら、図12において矢印で示した方向に搬送され、排出口52bから排出される。
【0061】
回転軸30、40の回転数比は、3対5に設定されているので、スクリュー羽根30a、40aの先端の相対角速度は、例えば、従来のように4対5に設定された場合に比較して大きくなり、セルフクリーニング効果が大きくなる。
【0062】
図13、図14には、回転軸30のスクリュー羽根30aの径並びに螺旋ピッチは、図12の場合と同じにして回転軸30、40を2対5、1対5の回転数比で回転させる実施例が記載されている。
【0063】
回転数比を2対5にしたときは、図13から明らかなように、回転軸40の径は、3対5の回転数比の場合の径より小さくされ、またスクリュー羽根40aの螺旋ピッチは、スクリュー羽根30aの螺旋ピッチPに対して回転数比の逆比の0.4Pに設定される。また、スクリュー羽根40aの回転軸40の外周面からの高さは、3対5の回転数比の場合よりも低くされる。
【0064】
回転数比を1対5にしたときは、図14から明らかなように、回転軸40の径は、2対5の回転数比の場合の径より小さくされ、またスクリュー羽根40aの螺旋ピッチは、スクリュー羽根30aの螺旋ピッチPに対して回転数比の逆比の0.2Pに設定される。また、スクリュー羽根40aの回転軸40の外周面からの高さは、2対5の回転数比の場合よりも低くされる。
【0065】
回転軸30、40の回転数比が小さいほど、高速回転する螺旋ピッチの小さなスクリュー羽根40aが低速回転するスクリュー羽根30aの羽根間に多数入り込んで回転するので、回転軸30の外周面に付着した粉体のセルフクリーニング効果が顕著になる。また、回転数比が小さいほど、各スクリュー羽根30a、40aの先端の相手側回転軸に対する相対角速度が大きくなり、各スクリュー羽根30a、40aは、より激しく粉体と衝突するので、混練効果並びにセルフクリーニング効果は顕著に向上する。
【0066】
さらに、本発明では、上記実施例に限定されずに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として回転軸30、40を(N−k)対Nの回転数比で回転させることによっても、同様な効果を得ることができる。
【0067】
図12はN=5、k=2に設定された場合の実施例を示し、図13はN=5、k=3に、図14はN=5、k=4に設定された場合の実施例を示している。
【0068】
このほかにも、例えば、N=6、k=2、3、4、あるいは5に設定すれば、回転軸30、40の回転数比は2対3、1対2、1対4、1対6となり、一方の回転軸を他方の回転軸よりも顕著に高速に回転させることでき、実施例1の場合と同様に、セルフクリーニング効果を顕著に向上させることができる。
【0069】
なお、回転軸40をより高速に回転させるほど、回転軸40のスクリュー羽根40の螺旋ピッチは細かくなり、低速回転する回転軸30のスクリュー羽根30aと干渉(衝突)する恐れがあるので、(N−k)対Nの値に応じて高速回転する回転軸の径を小さくし、スクリュー羽根の回転軸外周面からの高さを低くする。例えば、図12〜図14に示すように、回転軸40が回転軸30に対して高速に回転するほど、回転軸40の径を小さくし、スクリュー羽根40aの高さを低くする。
【0070】
また、実施例1と同様に、第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の軸芯間距離を変化させるようにしてもよい。
【0071】
また、実施例2では、2つの回転軸を垂直方向に並置したが、実施例1のように水平方向に並置することもできる。同様に、実施例1の2つの回転軸3、4を実施例2のように垂直方向に並置させることもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 フレーム
2 筐体
2a 投入口
2b 排出口
3、4 回転軸
3a、4a ロッド
5〜8 軸受
11、12 ギア
14 モータ
50 フレーム
52 筐体
52a 投入口
52b 排出口
30、40 回転軸
30a、40a スクリュー羽根
54 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を回転させ物体を混練しながら回転軸の軸方向に搬送する混練装置であって、
混練部材を順次スクリュー線上に所定角度ずらせて外周面に立設した第1の回転軸と、
第1の回転軸と平行に延びて第1の回転軸とは異なる回転数で逆回転し、混練部材を順次逆スクリュー線上に前記所定角度と異なる角度ずらせて外周面に立設した第2の回転軸と、を有し、
前記第1と第2の回転軸においてずらされる角度の比が、第1と第2の回転軸の回転数比と同比になっており、
第1と第2の回転軸のそれぞれの混練部材が回転軸の回転に伴って互いに衝突することなく他方の回転軸の外周面に近接してセルフクリーニングが行われるように、第1と第2の回転軸の軸芯間を離間して配置するとともに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として第1と第2の回転軸を(N−k)対Nの回転数比で回転させることを特徴とする混練装置。
【請求項2】
回転軸を回転させ物体を混練しながら回転軸の軸方向に搬送する混練装置であって、
スクリュー羽根を所定の螺旋ピッチで螺旋状に連続して外周面に立設した第1の回転軸と、
第1の回転軸と平行に延びて第1の回転軸とは異なる回転数で逆回転し、スクリュー羽根を第1の回転軸の螺旋ピッチと異なる螺旋ピッチで逆螺旋状に連続して外周面に立設した第2の回転軸と、を有し、
前記第1と第2の回転軸の螺旋ピッチの比が、第1と第2の回転軸の回転数比と逆比になっており、
第1と第2の回転軸のそれぞれのスクリュー羽根が回転軸の回転に伴って互いに衝突することなく他方の回転軸の外周面に近接してセルフクリーニングが行われるように、第1と第2の回転軸の軸芯間を離間して配置するとともに、kを2以上の整数、Nをkより大きな整数として第1と第2の回転軸を(N−k)対Nの回転数比で回転させることを特徴とする混練装置。
【請求項3】
第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の軸芯間距離を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の混練装置。
【請求項4】
第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の径の比を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の混練装置。
【請求項5】
第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸の混練部材の外周面からの高さの比を変化させることを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
【請求項6】
第1と第2の回転軸の回転数比(N−k)対Nの値に応じて第1と第2の回転軸のスクリュー羽根の外周面からの高さの比を変化させることを特徴とする請求項2に記載の混練装置。
【請求項7】
第2の回転軸における角度間隔が180度あるいは360度となるようにN、kの値が選ばれることを特徴とする請求項1、3、4又は5に記載の混練装置。
【請求項8】
第1と第2の回転軸が水平方向に並置されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の混練装置。
【請求項9】
第1と第2の回転軸が垂直方向に並置されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の混練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−10083(P2013−10083A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145094(P2011−145094)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロ
【出願人】(594148520)株式会社新日南 (11)
【Fターム(参考)】