説明

混繊糸および織編物

【課題】ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有し、しかも染着差のない織編物を得ることができる混繊糸、および該混繊糸を含んでなる織編物を提供する。
【解決手段】その横断面に3個以上の凹部が存在し、かつ開口深度Sが30%以上となる凹部が、該開口深度Sが1%以上の全凹部に対し50%以上存在しているポリエステル異型フィラメントから構成されるポリエステル糸条と、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートである2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維から構成される複合繊維糸条とが、重量比(ポリエステル糸条:複合繊維糸条)80:20〜50:50の範囲内で混繊させた後、織編物を製編織する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有し、しかも染着差のない織編物を得ることができる混繊糸、および該混繊糸を含んでなる織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ストレッチ性に優れた織編物としては、例えば、2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維を含む混繊糸を用いて織編物を織編成した後、織編物に染色加工等の熱処理を施すことにより、複合繊維の潜在捲縮を発現させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、吸水速乾性に優れた織編物としては、例えば、フィラメントの横断面に凹部を有するポリエステルマルチフィラメントを用いて織編物を織編成することにより、毛細管現象により吸水速乾性を付与したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有する織編物はこれまであまり提案されておらず、その提案が望まれていた。同時に、染着差のない高品位のものが望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−55847号公報
【特許文献2】特開2002−201541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有し、しかも染着差のない織編物を得ることができる混繊糸、および該混繊糸を含んでなる織編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、フィラメントの横断面に凹部を有するポリエステル糸条と、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートである2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維からなる複合繊維糸条とを特定の重量比で用いて混繊糸を得た後、織編物を織編成し、該織編物に染色加工等の熱処理を施すと、ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有し、しかも染着差のない織編物が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば「その横断面に3個以上の凹部が存在するポリエステル異型フィラメントから構成されるポリエステル糸条と、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートである2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維から構成される複合繊維糸条とが、重量比(ポリエステル糸条:複合繊維糸条)80:20〜50:50の範囲内で混繊され、
かつ前記ポリエステル糸条を構成するフィラメントにおいて、下記方法により測定した開口深度Sが30%以上となる凹部が、該開口深度Sが1%以上の全凹部に対し50%以上存在していることを特徴とする混繊糸。」が提供される。
(開口深度Sの測定)
ポリエステル糸条を構成する各フィラメントにつき、その任意の横断面における凹部の開口部の長さL、凹部の最大深さHより下記式を用いて算出する。
S(%)=H/L×100
【0009】
その際、前記ポリエステル糸条が加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸であると、ソフト性が向上し好ましい。かかるポリエステル糸条としては、ポリエチレンテレフタレートからなることが好ましい。一方、前記複合繊維糸条が、ポリエチレンテレフタレート成分とポリトリメチレンテレフタレート成分とがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼りあわされてなる複合繊維から構成されると、優れたストレッチ性が得られ好ましい。
本発明の混繊糸は、100〜3000T/mの撚りが施されていると、ストレッチ性が向上し好ましい。
【0010】
また本発明によれば、前記の混繊糸を含む織編物が提供される。かかる織編物中に含まれる前記混繊糸が、ポリエステル糸条が鞘部に位置し、一方複合繊維糸条が芯部に位置する芯鞘構造を有することが好ましい。また、織編物に親水加工が施されていると、吸水性が向上し好ましい。さらには、染色加工が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有し、しかも染着差のない織編物を得ることができる混繊糸、および該混繊糸を含んでなる織編物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、混繊糸に含まれるポリエステル糸条は、その横断面に3個以上の凹部が存在するポリエステル異型フィラメントから構成される。フィラメントの横断面に存在する凹部が3個未満では、十分な吸水性が得られず好ましくない。フィラメントの横断面形状としては、凹部の個数が3個以上であれば特に限定されないが、容易に製造できる点で凹部が4個の十字断面が特に好ましい。
【0013】
なお、本発明でいう凹部とは、ポリエステル糸条を構成する各フィラメントにつき、その任意の横断面において、図1に示すように、凹部の開口部の長さをL、凹部の最大深さをHとし、下記式を用いて開口深度S(%)を算出したとき、該開口深度Sが1%以上の場合、凹部と定義する。
S(%)=H/L×100
【0014】
また、前記ポリエステル糸条を構成するフィラメントにおいて、かかる開口深度Sが30%以上となる凹部が、全凹部に対し50%以上(より好ましくは55〜80%)存在していることが肝要である。開口深度Sが30%以上となる凹部が、全凹部に対し50%未満の場合、十分な吸水性が得られず好ましくない。
【0015】
前記のポリエステル糸条を形成するポリエステルとしては通常のポリエステルでよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこれらに第3成分を共重合させた共重合ポリエステルが例示される。なかでも、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。また、ポリエステル中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艶消し剤、着色剤、その他各種改良剤等が必要に応じて配合されていてもよい。
【0016】
前記ポリエステル糸条は、通常に紡糸、延伸された延伸糸であってもよいが、加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸(中間配向糸)であると、ソフト性が向上し好ましい。このような加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸は、前記のポリエステルを常法により紡糸し、2000〜4300m/分の速度で未延伸糸として一旦巻き取った後、180〜200℃に加熱されたヒーターを用いて、弛緩状態(オーバーフィード1.5〜10%)で熱処理することにより得られる。
【0017】
前記ポリエステル糸条の繊維形態としては、フィラメント、ステープルのいずれでもよいが、ソフト性の点でマルチフィラメント(長繊維)が好ましい。また、ポリエステル糸条の総繊度と単糸繊度は特に限定されないが、総繊度33〜330デシテックス、単糸繊度1〜5デシテックスの範囲が適当である。
【0018】
本発明の混繊糸には、2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼りあわされてなる複合繊維から構成される複合繊維糸条も含まれる。かかる複合繊維の複合形態がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型でないと、糸条に熱が付与された際に、コイル状捲縮が発現せず、糸条にストレッチ性を付与することができず好ましくない。
【0019】
また、複合繊維を形成する2種のポリエステル成分のうち、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートである必要がある。ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、主たる繰り返し単位をトリメチレンテレフタレートとするものであり、テレフタル酸を主たる酸成分とし、トリメチレングリコールを主たるグリコール成分とする。
かかるポリトリメチレンテレフタレートには、必要に応じて少量(通常30モル%以下)の共重合成分を有していてもよい。
【0020】
その際使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のごとき芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のジオール化合物としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのごとき脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。かかるポリトリメチレンテレフタレート中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分枝剤、艶消し剤、着色剤、その他各種改良剤等が必要に応じて配合されていてもよい。
【0021】
このように、複合繊維を形成する2種ポリエステルのうち、少なくとも一方をポリトリメチレンテレフタレートとすることにより、ポリエチレンテレフタレート同士を貼り合せた複合繊維と比べて、良好なストレッチ性を得ることができる。
【0022】
前記の複合繊維において、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートである限り、相手方のポリエステル成分は特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート成分とポリトリメチレンテレフタレート成分との組合せや、固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレート成分同士の組合せでもよい。特に、ポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレートの組合せが特に好ましく、かかる組合せを採用することにより、優れたストレッチ性を付与することができ好ましい。
前記の複合繊維を形成する両構成成分の重量比率としては、70:30〜30:70の範囲内であることが好ましい。
【0023】
複合繊維糸条の形態としては、フィラメント、ステープルのいずれでもよいが、ソフト性の点でマルチフィラメント(長繊維)が好ましい。また、複合繊維糸条の総繊度と単糸繊度は特に限定されないが、総繊度33〜330デシテックス、単糸繊度1〜5デシテックスの範囲が適当である。さらに、該複合繊維の単糸繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平など公知の断面形状が選択でき、中空部を有するものであってもよい。
【0024】
本発明の混繊糸において、前記のポリエステル糸条と複合繊維糸条との重量比が、ポリエステル糸条:複合繊維糸条で80:20〜50:50の範囲内であることが肝要である。複合繊維の重量比が該範囲よりも小さいと、十分なストレッチ性が得られず好ましくない。逆に、複合繊維の重量比が該範囲よりも大きいと、最終的に得られる染色された織編物において、深色性を有するポリトリメチレンテレフタレート成分を含む複合繊維がポリエステル繊維間から露出しやすくなり、染着差が目立ち、布帛の品位が低下するおそれがある。なお、前記ポリエステル糸条および/または複合繊維糸条が、複数本の糸条である場合には、複数本の糸条の重量を合計して、重量比を算出するものとする。
なお、本発明の混繊糸には、混繊糸全体の30重量%以下であれば、他の繊維が含まれていてもさしつかえない。
【0025】
本発明の混繊糸を製造する方法は特に限定されず、複合繊維糸条の周りに前記ポリエステル糸条を巻き付けるカバリング方法、空気交絡ノズルを用いた空気混繊方法、さらには複合仮撚加工などが例示される。
【0026】
なかでも、複合仮撚加工が好ましい。かかる複合加工を用いることによりソフト感が向上し、さらには前記ポリエステル繊維のフィラメント横断面形状がランダムに変形され、ナチュラル外観が得られる。かかる複合仮撚加工による混繊糸は、前記ポリエステル糸条と複合繊維糸条とを0.5〜5%のオーバーフィード率で供給し、9.8×10〜9.8×10Pa(1〜10kgf/cm)の圧空により空気交絡した後、延伸倍率1.05〜1.2%で延伸しながら熱板温度160℃〜220℃で熱固定し、通常の仮撚を実施することで得られる。
【0027】
また、前記ポリエステル繊維の配向が低く、複合仮撚加工により開口深度Sが30%以上の凹部50%以上を維持できない場合は、空気混繊方法が好ましい。かかる空気混繊方法を用いることにより、断面変形が少なく清涼風合いが向上する。その際、前記ポリエステル糸条をオーバーフィードさせ熱処理を施しながら混繊加工するのが好ましい。かかる空気混繊法による混繊糸は、前記ポリエステル糸条を1〜10%のオーバーフィード率で供給しながら、熱板温度160℃〜220℃で弛緩熱処理し、次いで前記複合糸と同時に1〜5%のオーバーフィード率で供給し、9.8×10〜9.8×10Pa(1〜10kgf/cm)の圧空により空気交絡させることにより得られる。
【0028】
かかる混繊加工の後、熱処理を施すと、複合繊維がコイル状の捲縮を発現するため、複合繊維が芯部に位置し、ポリエステル繊維が鞘部に位置する芯鞘構造となり、ストレッチ性が得られる。
【0029】
次に、本発明の織編物は、前記の混繊糸を含む織編物である。その際、混繊糸は無撚であってもよいが、150〜3000T/m(好ましくは300〜2000T/m)の撚りが施されていると、熱処理により混繊糸がスプリング形状となり、ストレッチ性がさらに向上し好ましい。
【0030】
かかる織編物の組織は特に限定されず、通常の方法で製編織されたものでよい。例えば、織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、よこ編物であってもよいしたて編物であってもよい。よこ編組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示され、たて編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。
【0031】
該織編物には、前記の混繊糸が、織編物の総重量に対して30%以上(より好ましくは40%以上)含まれていることが好ましい。
かかる織編物に親水加工を施すことにより、吸水性能が向上するだけでなく、凹部に親水加工剤が残り易く、洗濯実施後も吸水性能を保持し易いため、親水加工を実施することが好ましい。
【0032】
次いで、該織編物に染色加工を施すと、染色加工の際の熱により混繊糸に含まれる複合繊維糸条がコイル状捲縮を発現し混繊糸の芯部に位置するため、優れたストレッチ性が得られる。また、混繊糸に含まれる前記ポリエステル糸条と複合繊維糸条とが前記の範囲内であるので、ポリエステル繊維が鞘、複合繊維が芯となり、複合繊維が織編物表面に露出せず、染着差もない。
【0033】
なお、かかる織編物には、常法の撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【実施例】
【0034】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
<固有粘度>
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
<開口深度>
ポリエステルマルチフィラメントを構成する各フィラメントにつき、その任意の断面において、図1に示すように、凹部の開口部の長さをL、凹部の最大深さをHとし、下記式を用いて算出した。なお、n数は5とした。
開口深度S(%)=H/L×100
<ストレッチ性>
JIS−L−1096−8.14.1B法(定荷重法)に準じて行った。
<吸水性>
JIS−L−1907−5.1.1(滴下法)に準じてウィッキングの値(秒)を測定を行った。L0は親水加工を施した後のウィッキングの値(秒)、また、L30は、JIS−L−0844−A−2法により30回洗濯処理を行った後のウィッキングの値(秒)を表す。
<風合評価>
織編物の清涼風合について熟練者5人により官能判定し、1級(極めて不良)〜5級(極めて良好)の5段階で評価した。
<表面品位>
織編物の表面品位を熟練者5人により官能判定し、1級(極めて不良)〜5級(極めて良好)の5段階で評価した。
【0035】
[実施例1]
固有粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートを常法により紡糸し、2000〜4300m/分の速度で巻き取り、開口深度Sが30%以上となる凹部が全凹部に対し50%以上存在する145dtex/24の十字断面ポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸、ポリエステル糸条)を得た。
【0036】
一方、固有粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と固有粘度が0.52のポリエチレンテレフタレート(PET)をそれぞれ別に溶融し、紡糸温度260℃で複合紡糸口金よりPET/PTTの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1450m/分で紡糸した未延伸糸を、87℃で2.9倍に延伸して、84dtex/36フィラメントの複合繊維糸条(延伸糸)を得た。
【0037】
次いで、前記ポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)と複合繊維糸条(延伸糸)を用い、複合仮撚により混繊糸を製造した。すなわち、ポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)と複合繊維糸条(延伸糸)とを同時に引き揃え、2%のオーバーフィード率で供給し、7.8×10Pa(8kgf/cm)の圧空により空気交絡した後、延伸倍率1.2%で延伸しながら熱板温度170℃で熱固定し、通常のピン仮撚を実施した。
【0038】
得られた混繊糸に、S方向に800T/Mの撚りを付与し、経密度108本/2.54cm、緯密度82本/2.54cm、目付216g/mの2/2の綾組織織物を織成した。この織物を沸水で精練とリラックスを行った後、190℃乾熱でピンテンターを用いてセット、次いで、分散染料を用い130℃で高圧染色を実施し、取り出し後、乾燥し次いで、190℃乾熱でピンテンターを用いて熱固定した後、通常の親水加工を実施し製品とした。得られた織物は、ストレッチ性、清涼風合、吸汗性に優れ、織物品位も良好であった。評価結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
実施例1のポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)の凹部を3個(Y字断面)とし、その開口深度30%以上の凹部比率を35%とした以外は実施例1と同様に実施した。得られた織物のストレッチ性、清涼風合とも良好であったが、洗濯30回実施後の吸水性にやや劣るものであった。評価結果を表1に示す。
【0040】
[比較例2]
実施例1のポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)を丸断面とした以外は実施例1と同様に実施した。ストレッチ性は良好なものの、その清涼風合、吸水性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
【0041】
[比較例3]
実施例1の十字断面ポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)を90dtex/24filに変更した以外は実施例1と同様に実施した。得られた織物のストレッチ性は良好なものの芯成分の重量比が大きいため、芯糸と鞘糸の染着差が目立ち品位が不良であった。評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例4]
実施例1の複合繊維(延伸糸)を,固有粘度が0.67のポリエチレンテレフタレート(PET)と固有粘度が0.38のポリエチレンテレフタレート(PET)とした以外は、実施例1と同様に実施した。得られた織物は、清涼風合、吸水性は良好なものの、ストレッチ性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様のポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)と複合繊維糸条(延伸糸)を用い、空気混繊により混繊糸を製造した。すなわち、ポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)を1%のオーバーフィード率で供給しながら、熱板温度210℃で弛緩熱処理し、次いで前記複合糸(延伸糸)と同時に2%のオーバーフィード率で供給し、2.9×10Pa(3kgf/cm)の圧空により空気交絡させた。
【0044】
得られた混繊糸を用い、実施例1と同様に製品とした。得られた織物は、実施例1と同様にストレッチ性、清涼風合、吸汗性に優れ、織物品位も良好であった。評価結果を表1に示す。
【0045】
[比較例5]
実施例2のポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)の凹部を3個(Y字断面)とし、その開口深度30%以上の凹部比率を30%とした以外は実施例2と同様に実施した。得られた織物のストレッチ性、清涼風合とも良好であったが、洗濯30回実施後の吸水性にやや劣るものであった。評価結果を表1に示す。
【0046】
[比較例6]
実施例2のポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)を丸断面とした以外は実施例2と同様に実施した。ストレッチ性は良好なものの、その清涼風合、吸水性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例7]
実施例2の十字断面ポリエチレンテレフタレート未延伸糸(中間配向糸)を90dtex/24filに変更した以外は実施例2と同様に実施した。得られた織物のストレッチ性は良好なものの芯成分の重量比が大きいため、芯糸と鞘糸の染着差が目立ち品位が不良であった。評価結果を表1に示す。
【0048】
[比較例8]
実施例2の複合繊維(延伸糸)を,固有粘度が0.67のポリエチレンテレフタレート(PET)と固有粘度が0.38のポリエチレンテレフタレート(PET)とした以外は、実施例2と同様に実施した。得られた織物は、清涼風合、吸水性は良好なものの、ストレッチ性に劣るものであった。評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、ストレッチ性と吸水速乾性に優れ、かつ清涼な風合いを有し、しかも染着差のない織編物を得ることができる混繊糸、および該混繊糸を含んでなる織編物が得られる。かかる織編物は、スポーツ衣料、紳士・婦人のファッション用途全般、中東諸国の民族衣装などの用途に使用でき、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】開口深度Sの測定方法を説明するための単繊維(フィラメント)の横断面図である。
【符号の説明】
【0052】
L 凹部の開口部の長さ
H 凹部の最大深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その横断面に3個以上の凹部が存在するポリエステル異型フィラメントから構成されるポリエステル糸条と、少なくとも一方成分がポリトリメチレンテレフタレートである2種のポリエステル成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維から構成される複合繊維糸条とが、重量比(ポリエステル糸条:複合繊維糸条)80:20〜50:50の範囲内で混繊され、
かつ前記ポリエステル糸条を構成するフィラメントにおいて、下記方法により測定した開口深度Sが30%以上となる凹部が、該開口深度Sが1%以上の全凹部に対し50%以上存在していることを特徴とする混繊糸。
(開口深度Sの測定)
ポリエステル糸条を構成する各フィラメントにつき、その任意の横断面における凹部の開口部の長さL、凹部の最大深さHより下記式を用いて算出する。
S(%)=H/L×100
【請求項2】
前記ポリエステル糸条が加熱下で自己伸長性を有する未延伸糸である、請求項1に記載の混繊糸。
【請求項3】
前記ポリエステル糸条がポリエチレンテレフタレートからなる、請求項1または請求項2に記載の混繊糸。
【請求項4】
前記複合繊維糸条が、ポリエチレンテレフタレート成分とポリトリメチレンテレフタレート成分とがサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼りあわされてなる複合繊維から構成される、請求項1〜3のいずれかに記載の混繊糸。
【請求項5】
100〜3000T/mの撚りが施されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の混繊糸。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の混繊糸を含む織編物。
【請求項7】
織編物中に含まれる前記混繊糸が、ポリエステル糸条が鞘部に位置し、一方複合繊維糸条が芯部に位置する芯鞘構造を有する、請求項6に記載の織編物。
【請求項8】
親水加工が施されてなる、請求項6または請求項7に記載の織編物。
【請求項9】
染色加工が施されてなる、請求項6〜8のいずれかに記載の織編物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−200054(P2006−200054A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10656(P2005−10656)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】