説明

混雑状況管理システム

【課題】 比較的少数のセンサを用いて混雑状況を確認することが可能な混雑状況管理システムを提供する。
【解決手段】 赤外線センサが検知した赤外線の変化量を変化有り、変化無しのいずれかとして出力し、一定時間単位で、変化があった場合の、全体に対する時間的割合に応じて変化割合を算出する。さらに、変化割合で混雑度判定テーブルを参照して混雑度を求め、混雑度をディスプレイに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、博物館、美術館、見本市、展示会等の所定の空間内における混雑状況を検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
博物館、美術館、見本市、展示会等においては、主催者側は、来場者に快適に見学してもらうため、会場内の混雑状況を把握したいという要望がある。このような要望に応えるため、ある空間を赤外線センサによって検知し、その中から人体存在領域を切り出し、全検知領域における面積比により混雑度を推定する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−161292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、面積比を求めるために検知領域を大きくとる必要があり、そのため、多くの赤外線センサを設置しなければならないという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、比較的少数のセンサを用いて混雑状況を確認することが可能な混雑状況管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明第1の態様では、所定の検出範囲内の赤外線を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサによる赤外線の変化量を一定時間間隔で検出し、当該一定時間間隔における変化の有無を検出して、変化有り、変化無しのいずれかの状態として出力する行動検出手段と、所定の時間単位において、前記変化有りの状態の、変化有りおよび変化無し全体に対する時間的割合である変化割合を算出する変化割合算出手段と、変化割合および混雑度を対応させた混雑度判定テーブルを有し、前記混雑度判定テーブルを参照して、前記変化割合算出手段が算出した前記変化割合に対応する混雑度を出力する混雑度出力手段を有する混雑状況管理システムを提供する。
【0006】
本発明第1の態様によれば、赤外線センサが検知した赤外線の変化量を変化有り、変化無しのいずれかとして出力し、変化があった場合の、全体に対する割合に応じて混雑度を求めるようにしたので、比較的少数のセンサを用いて混雑状況を確認することが可能となる。
【0007】
本発明第2の態様では、本発明第1の態様の混雑状況管理システムが、前記赤外線センサを複数有するとともに、前記行動検出手段が出力した各赤外線センサの変化状態の所定時間単位分の集合である変化情報に時刻を付与する時刻付与手段と、前記変化情報を、前記付与された時刻とともに各赤外線センサ単位で記録する変化情報記憶手段と、をさらに有し、前記変化割合算出手段は、所定の時刻から設定時間前までの変化情報を、前記付与された時刻情報に基づいて前記変化情報記憶手段から抽出し、各赤外線センサごとの変化割合を算出することを特徴とする。
【0008】
本発明第2の態様によれば、複数の赤外線センサから得られた変化情報にそれぞれ時刻情報を付して記憶しておき、この時刻情報を用いて、所定の時刻から設定時間前までの変化情報を抽出し、変化割合を算出するようにしたので、複数のセンサが存在する場合に、全てのセンサからの変化情報が得られた時刻のものに関して混雑度を求めることになり、一部のセンサについての混雑状況を作成できないという事態を防ぐことができる。
【0009】
本発明第3の態様では、本発明第2の態様の混雑状況管理システムが、前記赤外線センサ、行動検出手段を有する人感センサユニットと、前記時刻付与手段を有するリレーユニットと、前記変化情報記憶手段、変化割合算出手段、混雑度出力手段を有する混雑状況集計サーバにより構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明第3の態様によれば、赤外線センサ、行動検出手段を有する人感センサユニットと、時刻付与手段を有するリレーユニットとを分離し、時刻付与を人感センサユニットで行わないことにしたので、1番数多く必要な人感センサユニットのコストダウンが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較的少数のセンサを用いて混雑状況を確認することが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1.システム構成)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明に係る混雑状況管理システムの一実施形態における構成図である。図1において、10は人感センサユニット、20はリレーユニット、30は混雑状況集計サーバである。
【0013】
人感センサユニット10は、一定間隔でセンサ検出範囲内の赤外線の変化量から人の行動の有無を判定するセンサユニットであり、赤外線発光素子および赤外線受光素子を有する赤外線センサと、赤外線センサの出力に基づき行動検出を行う行動検出手段と、時間の計算を行う時間計算手段、行動検出手段により検出した変化情報をリレーユニット20に送信する送信手段を有している。また、人感センサユニット10はメモリを内蔵し、メモリ内にセンサIDが保持されている。上記時間計算手段は、内部時計であり、公知の内部時計を用いることができる。前記行動検出手段は、所定のアルゴリズムに従って処理を行うものであり、CPUにプログラムを実行させることにより実現することも可能であるが、本実施形態では、上記アルゴリズムが回路化されている。
【0014】
リレーユニット20は、複数の人感センサユニット10からの変化情報をまとめて混雑状況集計サーバ30に渡す役割をもつユニットであり、人感センサユニット10から変化情報を受信する受信手段と、受信した変化情報に時刻を付与する時刻付与手段と、付与された時刻情報とともに変化情報を混雑状況集計サーバ30に送信する送信手段を有している。
【0015】
混雑状況集計サーバ30は、リレーユニット20を介して受信したセンサユニット10からの変化情報を解析して混雑状況を求めるものであり、変化情報記憶手段(記憶装置)、変化割合算出手段(行動検出時間算出手段、混雑度判定手段)、混雑度出力手段(ディスプレイ)として機能する。現実には、通信機能を有するサーバコンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現される。
【0016】
(2.センサ設置空間の様子)
次に、展示会場等のセンサを設置した空間について説明する。図2は、センサ設置空間を天井から見た平面図である。図2において、楕円形状はセンサを示しており、センサにより一部隠された細長い矩形は展示物、黒丸は来場者、センサを頂点とした略三角形状のものがセンサの検知範囲を示している。図2の例では、展示会場内に4つの展示物が展示されているとともに、各展示物にセンサが設置され、各展示物を鑑賞することができる所定の範囲内をセンサで検知可能となっている。また、展示会場内には、液晶等のディスプレイが設置されており、センサが検知した情報を基に混雑状況集計サーバ30が解析した混雑状況が所定の態様で表示される。
【0017】
(3.処理動作)
続いて、図2のようなセンサ設置状況における図1に示したシステムの処理動作について説明する。図2に示すような状況において、設置されたセンサは常に検知を行っている。そして、人感センサユニット10内の行動検出手段は、センサの検知信号を基に、一定間隔(例えば0.1秒間隔)で赤外線の変化量から人の動きの有無を判定する。具体的には、行動検出手段は、一定間隔における赤外線の変化量が所定の閾値より大きい場合に、変化があったことを示すビット“1”を出力し、変化量が所定の閾値より小さい場合に変化がなかったことを示すビット“0”を出力する。行動検出手段が出力したビットは、人感センサユニット10が内蔵するメモリに蓄積される。
【0018】
人感センサユニット10内の時間計算手段は、検知開始からの時間を計算し、一定時間(例えば1分間)が経過したら、送信手段に対して時間経過信号を送信する。送信手段は、時間経過信号を受信すると、メモリに蓄積されているビット列を抽出するとともに、別途メモリに記録されているセンサIDを付与して、リレーユニット20に送信する。人感センサユニット10は、このような処理を繰り返し行っていく。すなわち、一定時間単位で、一定間隔で取得した変化の有無をまとめて、リレーユニット20に送信する。
【0019】
リレーユニット20では、人感センサユニット10から変化情報を受信すると、時刻付与手段が、その変化情報に時刻を付与して混雑状況集計サーバ30に送信する。リレーユニット20には、複数の人感センサユニット10が接続されており、各人感センサユニット10から受信した変化情報を順に処理する。
【0020】
混雑状況集計サーバ30では、リレーユニット20から変化情報、時刻情報を受信すると、これを内蔵する記憶装置内に保存する。混雑状況集計サーバ30では、行動検出時間算出手段が、管理している全てのセンサIDの変化情報が揃っている時刻情報を記憶装置内から探し出し、その時刻から一定時間(例えば3分)前までの変化情報を取得し、各センサIDごとに、行動検出時間を算出する。
【0021】
例えば、図3に示すように、センサIDが“001”であるセンサ001の変化情報ビット列が“00000111110000011111”であったとする。この場合、ビット値“1”が10個であるので、行動検出時間算出手段は、行動検出時間=0.1秒×10=1秒と算出する。
【0022】
続いて、混雑度判定手段が、判定結果情報時間に対する行動検出時間の割合(%)を検出割合として算出する。例えば、図3の例では、判定結果情報時間=0.1秒×20=2秒であるので、検出割合=行動検出時間(1秒)/判定結果情報時間(2秒)=50%となる。行動検出時間算出手段、混雑度判定手段の2つは、変化割合算出手段を構成しており、上記のような処理を実行することにより、各センサIDの直近の検出割合を算出する。
【0023】
続いて、混雑度判定手段は、算出した検出割合で記憶装置内の混雑度判定テーブルを参照し、混雑度を求める。図4に混雑度判定テーブルの一例を示す。例えば、図3の変化情報の場合、検出割合が50%であるので、図4の混雑度判定テーブルを参照し、混雑度“やや混雑”が得られる。
【0024】
次に、混雑状況集計サーバ30は、記憶装置内から会場の見取図を抽出し、この会場の見取図に混雑度を示す混雑度マークを配置した混雑度マップを作成する。具体的には、センサIDごとに求めた混雑度に対応する混雑度マークを記憶装置から抽出し、センサIDに対応付けられた座標値に、抽出した混雑度マークを配置する。この処理を全てのセンサに対して行う。
【0025】
全てのセンサについて、混雑度マークの配置が終わったら、作成された混雑度マップをディスプレイに出力する。この結果、展示場の内外に設置されたディスプレイには、混雑度マップが表示される。来場者は、この混雑度マップを見ることにより、どのエリアが混んでいるかを把握することができる。
【0026】
(4.混雑度判定の変形例)
次に、本発明に係る混雑状況管理システムの変形例について説明する。上記実施形態では、1つのセンサで1つのエリアの混雑度を求めたが、2つのセンサで1エリアの混雑度を求めるようにしても良い。例えば、図5(a)のように2つのセンサにより、ほぼ平行四辺形状の1つのエリアの混雑度を求める。この場合、検出割合を求めるに際し、行動検出時間として、2つのセンサの行動検出時間の和を用い、判定結果情報時間として、2つのセンサの判定結果情報時間の和を用いる。
【0027】
また、複数のエリアそれぞれに設置されたセンサの情報を用いて、その複数のエリアを含む全体の混雑度を求めるようにしても良い。例えば、図5(b)のように4つのセンサにより、1つの会場の混雑度を求める。この場合、各センサの混雑度を求め、4エリア中、混雑度が“やや混雑”以上のものが2つ以上あれば、会場全体として“混雑”と判定する。例えば、図5(b)の上の例では、“混雑”と判定されず、図5(b)の下の例では、“混雑”と判定される。
【0028】
(5.入場案内について)
本発明に係る混雑状況管理システムでは、上記のように、作成された混雑度マップをディスプレイに出力するだけでなく、入場案内をディスプレイに出力するようにしても良い。例えば、図6(a)(b)に示すように矩形で示す会場内に4つのエリアがあり、会場の外と中にそれぞれディスプレイが設置されている場合を考えてみる。図6(a)(b)では、会場の入り口が左端となっており、会場外のディスプレイは会場入り口の壁に設置されており、入り口から最も近い(一番左の)エリアに対応した情報を表示するものとする。
【0029】
図6(a)に示した状態の場合、右側の3つのエリアには全く人がいないが、入り口に近い1番左のエリアだけ混んでいる。このような状態では、入り口のドアを開けても混雑で中へ進めない。このような場合、入り口外のディスプレイには、1番左のエリアの混雑情報が表示されるため、外にいる人には、“混雑”等の混雑している旨の情報が表示され、入場を抑止することができる。
【0030】
会場内の状態が変化して、図6(b)に示した状態となった場合、会場内の総人数は、図6(a)に示した状態よりも増えているが、入り口に近い1番左のエリアには1人しかおらず、空いている。このように、入場し易い状態である場合、入り口外のディスプレイには、1番左のエリアの混雑情報が表示されるため、外にいる人には、“快適”等の空いている旨の情報が表示され、入場を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る混雑状況管理システムの一実施形態における構成図である。
【図2】センサ設置空間を天井から見た平面図である。
【図3】センサが出力する変化情報の一例を示す図である。
【図4】本発明で用いる混雑度判定テーブルの一例を示す図である。
【図5】混雑度判定の変形例を示す図である。
【図6】特定のセンサについての混雑情報を表示出力する例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・人感センサユニット
20・・・リレーユニット
30・・・混雑状況集計サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出範囲内の赤外線を検知する赤外線センサと、
前記赤外線センサによる赤外線の変化量を一定時間間隔で検出し、当該一定時間間隔における変化の有無を検出して、変化有り、変化無しのいずれかの状態として出力する行動検出手段と、
所定の時間単位において、前記変化有りの状態の、変化有りおよび変化無し全体に対する時間的割合である変化割合を算出する変化割合算出手段と、
変化割合および混雑度を対応させた混雑度判定テーブルを有し、
前記混雑度判定テーブルを参照して、前記変化割合算出手段が算出した前記変化割合に対応する混雑度を出力する混雑度出力手段と、
を有することを特徴とする混雑状況管理システム。
【請求項2】
前記赤外線センサを複数有するとともに、
前記行動検出手段が出力した各赤外線センサの変化状態の所定時間単位分の集合である変化情報に時刻を付与する時刻付与手段と、
前記変化情報を、前記付与された時刻とともに各赤外線センサ単位で記録する変化情報記憶手段と、をさらに有し、
前記変化割合算出手段は、所定の時刻から設定時間前までの変化情報を、前記付与された時刻情報に基づいて前記変化情報記憶手段から抽出し、各赤外線センサごとの変化割合を算出することを特徴とする請求項1に記載の混雑状況管理システム。
【請求項3】
前記赤外線センサ、行動検出手段を有する人感センサユニットと、
前記時刻付与手段を有するリレーユニットと、
前記変化情報記憶手段、変化割合算出手段、混雑度出力手段を有する混雑状況集計サーバにより構成されることを特徴とする請求項2に記載の混雑状況管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−86224(P2010−86224A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253734(P2008−253734)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】