説明

添加剤の調製方法およびその使用

【課題】腐食低減、分散性または清浄性の少なくとも1つの特性を有する添加剤を調製する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、添加剤を調製する方法に関し、該方法は、以下の工程を包含する:(1)2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とアシル化剤とを反応させて、アシル化重合体を形成する工程;および(2)工程(1)のアシル化重合体を、実質的にイオウを含まない媒体にて、(a)アンモニアまたはアミンと反応させて、スクシンイミド生成物を形成する工程;または(b)水と反応させて、加水分解生成物を形成する工程であって、ここで、該アシル化剤と工程(1)の重合体とのモル比は、0.3:1〜1.6:1である。本発明は、さらに、この添加剤を含有する組成物およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、腐食低減、分散性または清浄性の少なくとも1つの特性を有する添加剤を調製する方法に関する。本発明は、さらに、液体燃料または潤滑粘性のあるオイルにおけるこの添加剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
市販のディーゼル燃料は、燃料の燃焼中にエンジン内で固形物および粘性物質の堆積を引き起こし得る不純物を含有する。ディーゼル燃料は、一般に、高濃度を高分子量物質を含有するので、このようなエンジン堆積物の問題は、ガソリン燃料よりもディーゼル燃料において、非常に重要である。このような物質が熱分解すると、エンジンにおいて、不溶性物質が形成され、これらは、操作効率を低下させ得、最終的には、エンジンの燃料噴射器および他の重要な作用要素の腐食または閉塞を引き起こし得る。これらの問題を克服するために、清浄剤/分散剤(例えば、ポリイソブチレンスクシンイミド)は、堆積物の形成を減らすために広く使用されているのに対して、加水分解されたポリイソブチレンコハク酸は、腐食を減らすために使用される。
【0003】
さらに、排気ガスの特定成分(NO(窒素酸化物)および微粒子物(例えば、すすおよびイオウ酸化物)を含み、これらは、自動車エンジンから発生する)の低下に向けた全世界的な法規制の結果として、燃焼時におけるイオウが非常に酸性の生成物を発生して内燃機関の排気ガス後処理装置の動作を妨害し得るので、燃料(例えば、ディーゼル燃料およびガソリン)のイオウ含量が低下されている。多くの国では、燃料のイオウ含量は、50ppm未満に低下されているか低下されつつあり、また、新しい燃料は、20ppm以下というそれよりさらに低いイオウ含量にされている。20ppm以下のイオウ含量を有する燃料は、しばしば、超低イオウ燃料と呼ばれている。
【0004】
さらに、排気の目標を満たす試みにおいて、自動車メーカーは、排気をさらに減らすために、排気ガス後処理装置を開発している。これらの排気ガス後処理装置は、燃料の燃焼中に発生したイオウ含有成分に由来のイオウの濃度がたとえ低くても、イオウによる毒作用の影響を受けやすいことが知られている。イオウの毒作用の結果として、排気ガス後処理装置は、効率が低下し得、それにより、エンジンの性能が低下し得、そしてエンジンの排気ガスから発生する規制されている成分(例えば、NOおよび微粒子物ならびに炭化水素および一酸化炭素)の量が増加し得る。スクシンイミド分散剤/清浄剤の調製は、芳香族溶媒または希釈剤(例えば、キシレンまたはトルエン)あるいは100ニュートラル鉱油を含む媒体の存在下にて、行うことができる。しかしながら、これらの媒体は、一般に、引火点が低く、このような媒体を使用する組成物および方法は、通常、低い処理温度に限定されており、そして引火の危険が高い。原則として、引火点が高い高分子量芳香族化合物が使用され得る。しかしながら、これらの芳香族化合物の多くは、毒性(例えば、発癌性)の問題がある。
【0005】
Duncanらは、特許文献1において、中間留出油(これは、ヒドロカルビル置換モノスクシンイミド分散剤と、40℃で100〜400センチストークスの粘度を有するオイルとを含有する)を改良するための添加剤組成物を開示している。
【0006】
特許文献2は、置換アシル化剤から形成された無灰分散剤の生成を開示している。この置換アシル化剤は、アシル化剤および重合体から誘導され、ここで、アシル化剤と重合体とのモル比は、少なくとも1:1である。このアシル化剤は、希釈剤である鉱物性基油の存在下にて、アミンまたはアルコールとさらに反応される。
【0007】
特許文献3は、少なくとも20個の炭素原子を有するポリオレフィン重合体と酸または無水物あるいはそれらのエステルあるいはそれらの組み合わせとの反応生成物(これは、3以下のGardner Colorスケールを有し、希釈剤の存在下にて、アミンまたはアルコールとさらに反応される)を調製する方法を開示している。この酸または無水物とポリオレフィンとは、1.3:1未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第02/06428号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,241,003号明細書
【特許文献3】国際公開第04/065430号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
腐食低減、分散性または清浄性の少なくとも1つの特性を有する添加剤を調製する方法があれば、有利である。本発明は、このような方法を提供する。
【0010】
また、燃費向上、均一な空気/燃料の混合、ノズルの清浄度、噴射器の清浄度、取り扱いの改善、実質的にイオウを含まない(すなわち、さらに濃縮されている)媒体中での高い活性含量、および液体燃料または潤滑粘性のあるオイルに入る低いイオウ含量を与えることができる添加剤があれば、有利である。本発明は、このような添加剤を提供する。
【0011】
また、製造中に、実質的にイオウを含まない媒体と混ぜ合わせたとき、燃費向上、均一な空気/燃料の混合、ノズルの清浄度、噴射器の清浄度、取り扱いの改善の少なくとも1つを生じる濃度のアシル化剤を有する化合物から誘導された添加剤があれば、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、添加剤を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とアシル化剤とを反応させて、アシル化重合体を形成する工程;および
(2)工程(1)のアシル化重合体を、実質的にイオウを含まない媒体にて、
a.アンモニアまたはアミンと反応させて、スクシンイミド生成物を形成する工程;または
b.水と反応させて、加水分解生成物を形成する工程であって、
ここで、該アシル化剤と工程(1)の重合体とのモル比は、0.3:1〜1.6:1である、
方法。
【0013】
本発明は、さらに、以下を含有する組成物を提供する:
(a)実質的にイオウを含まない媒体;および
(b)アシル化基と2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とを含有する添加剤であって、
ここで、該添加剤は、0.3:1〜1.6:1のアシル化基と重合体とのモル比を有する。
【0014】
本発明は、さらに、液体燃料または潤滑組成物に、清浄性、分散性、腐食防止または腐食低減の少なくとも1つを与える方法であって、該方法は、以下を含有する組成物を包含する:
(a)実質的にイオウを含まない媒体;
(b)アシル化剤と2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とを含有する添加剤;および
(c)液体燃料または潤滑粘性のあるオイルであって、
ここで、該添加剤は、0.3:1〜1.6:1のアシル化剤と重合体とのモル比を有する。
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
添加剤を調製する方法であって、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とアシル化剤とを反応させて、アシル化重合体を形成する工程;および
(2)工程(1)のアシル化重合体を、実質的にイオウを含まない媒体にて、
a.アンモニアまたはアミンと反応させて、スクシンイミド生成物を形成する工程;または
b.水と反応させて、加水分解生成物を形成する工程であって、
ここで、該アシル化剤と工程(1)の重合体とのモル比は、0.3:1〜1.6:1である、
方法。
(項目2)
アシル化剤と重合体との前記モル比が、1:1〜1.4:1である、項目1に記載の方法。
(項目3)
工程(1)の前記アシル化重合体が、一置換アシル化重合体として、60重量%またはそれ以上を含有する、項目1に記載の方法。
(項目4)
工程(1)の前記重合体が、20モル%未満の未反応重合体を含有する、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記重合体が、450〜2500の数平均分子量を有する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記オレフィンが、3個〜6個の炭素原子を含有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記重合体が、重合体分子の60%以上で、ビニリデン基を含有する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記アシル化剤が、α,β−不飽和モノ−またはポリカルボン酸、それらの無水物、エステルまたは誘導体である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記アミンが、1個またはそれ以上の第一級または第二級アミノ基を含有する、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記媒体が、重量基準で、25ppm未満のイオウ含量を有する、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記媒体が、105℃またはそれより高い引火点を有する、項目1に記載の方法。
(項目12)
以下を含有する、組成物:
(a)実質的にイオウを含まない媒体;および
(b)アシル化基と2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とを含有する添加剤であって、
ここで、該添加剤は、0.3:1〜1.6:1のアシル化基と重合体とのモル比を有する、
組成物。
(項目13)
液体燃料または潤滑組成物に、清浄性、分散性、腐食防止または腐食低減の少なくとも1つを与える方法であって、該方法は、以下を含有する組成物で潤滑または燃料供給する工程を包含する:
(a)実質的にイオウを含まない媒体;
(b)アシル化剤と2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とを含有する添加剤;および
(c)液体燃料または潤滑粘性のあるオイルであって、
ここで、該添加剤は、0.3:1〜1.6:1のアシル化剤と重合体とのモル比を有する、
方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、添加剤を調製する方法を提供し、該方法は、以下の工程を包含する:
(1)2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とアシル化剤とを反応させて、アシル化重合体を形成する工程;および
(2)工程(1)のアシル化重合体を、実質的にイオウを含まない媒体にて、
(1)アンモニアまたはアミンと反応させて、スクシンイミド生成物を形成する工程;または
(2)水と反応させて、加水分解生成物を形成する工程であって、
ここで、該アシル化剤と工程(1)の重合体とのモル比は、0.3:1〜1.6:1である。
【0016】
1実施態様では、アシル化剤と、この方法の工程(1)の重合体とのモル比は、0.6:1〜1.5:1、別の実施態様では、0.8:1〜1.45:1、別の実施態様では、1:1〜1.4:1、別の実施態様では、1.1:1〜1.5:1、別の実施態様では、1:1〜1.3:1である。
【0017】
1実施態様では、工程(1)のプロセスは、一置換アシル化重合体として30重量%またはそれ以上、別の実施態様では、一置換アシル化重合体として40重量%またはそれ以上、別の実施態様では、一置換アシル化重合体として50重量%またはそれ以上、別の実施態様では、一置換アシル化重合体として60重量%またはそれ以上を有するアシル化重合体を生じる。
【0018】
1実施態様では、工程(1)における未反応重合体の量は、重合体の30モル%未満、重合体の20モル%未満または重合体の10モル%未満である。
【0019】
本発明の1実施態様では、この方法の工程(1)は、高温(一般に、150℃〜250℃)で、促進剤(例えば、ハロゲン塩素)の存在下にて、または促進剤(例えば、塩素ガス)の非存在下にて、実行される。本発明の他の実施態様では、工程(1)は、バッチ操作または連続操作で、実行される。
【0020】
必要に応じて、この方法の工程(1)は、実質的にイオウを含まない媒体を含む。
【0021】
1実施態様では、この方法の工程(2)において、アシル化重合体とアンモニアまたはアミンとを反応させることは、一般に、100℃〜250℃の温度で、これらの反応物を加熱することを含む。
【0022】
1実施態様では、この方法の工程(2)において、このアシル化重合体と水とを反応させることは、一般に、45℃〜105℃または70℃〜99℃の温度で、これらの反応物を加熱することを含む。
【0023】
1実施態様では、工程(2)で調製された添加剤と媒体との重量比は、1:99〜99:1、別の実施態様では、5:95〜95:5、別の実施態様では、25:75〜90:10、別の実施態様では、45:55〜90:10であり得る。この添加剤と媒体との典型的な重量比の例には、50:50〜80:20、55:45〜75:25、60:40〜70:30、65:35〜85:15が挙げられる。
【0024】
1実施態様では、工程(1)および/または工程(2)のプロセスは、化学手段または物理手段により未反応アシル化剤を除去する最小限の処理を含む。別の実施態様では、工程(1)および/または工程(2)のプロセスは、化学手段または物理手段(例えば、真空ストリッピングおよび/または濾過)により未反応アシル化剤を除去することを含まない。
【0025】
1実施態様では、工程(2)の生成物は、3またはそれ以上、あるいは25またはそれ以上、50またはそれ以上、あるいは55またはそれ以上の全塩基価(TBN)を有する。一般に、このTBNは、100未満、90またはそれ未満、あるいは85またはそれ未満であり得る。
【0026】
(重合体)
この方法は、2個〜8個の炭素原子、別の実施態様では、3個〜6個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体を反応させる工程を包含する。適当なオレフィンの例には、プロピレン、イソブチレン、ペンテンまたはヘキサンが挙げられる。1実施態様では、この重合体は、イソブチレンから誘導され、ポリイソブチレンを形成する。
【0027】
1実施態様では、この重合体は、末端C=C二重結合基(すなわち、ビニリデン基)を有する。1実施態様では、このビニリデン基は、その重合体分子の40%またはそれ以上で存在しており、別の実施態様では、このビニリデン基は、その重合体分子の50%またはそれ以上で存在しており、別の実施態様では、このビニリデン基は、その重合体分子の60%またはそれ以上で存在しており、別の実施態様では、このビニリデン基は、その重合体分子の70%またはそれ以上(例えば、約75%、約80%または約85%)で存在している。
【0028】
この重合体は、1実施態様では、300〜5000、450〜2500、500〜1500または550〜1200の数平均分子量を有する。1実施態様では、この重合体は、約550、別の実施態様では、約750、別の実施態様では、約950〜1000の数平均分子量を有する。
【0029】
この重合体の多分散性は、1実施態様では、1〜4、別の実施態様では、1.2〜2.5である。
【0030】
この重合体は、Glissopal(登録商標)1000またはGlissopal(登録商標)2300(これらは、BASFから市販されている)、TPC(登録商標)555、TPC(登録商標)575またはTPC(登録商標)595(これらは、Texas Petroleum Chemicalsから市販されている)の商品名にて、商業的に得ることができる。
【0031】
この重合体は、1種のオレフィンまたはそれらの組み合わせから誘導され得る。
【0032】
1実施態様では、この方法は、さらに、工程(2)のスクシンイミド生成物とホウ素含有化合物または酸化亜鉛とを反応させて、ホウ酸塩分散剤または亜鉛含有分散剤を形成する。ホウ素含有および/または亜鉛含有分散剤を調製する方法は、当該技術分野で周知であり、そして米国特許第3,163,603号および第3,087,936号で記載されている手順を含む。
【0033】
(アシル化剤)
本発明のアシル化剤は、1種またはそれ以上の酸官能性基(例えば、カルボン酸またはその無水物)を有する化合物であり得る。アシル化剤の例には、α,β−不飽和モノ−またはポリカルボン酸、それらの無水物、エステルまたは誘導体が挙げられる。アシル化剤の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、マレイン酸またはその無水物、フマル酸、イタコン酸またはその無水物、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
(アミン)
このアミンは、一般に、当該技術分野で周知であり、一般に、少なくとも1個の反応性N−H結合(窒素結合または水素結合)を有する。このアミンは、必要に応じて、他の官能基(例えば、ヒドロキシル)でさらに置換されている。このアミンには、モノアミン、ポリアミン、またはそれらの混合物が挙げられる。1実施態様では、このアミンは、1個またはそれ以上の第一級または第二級アミノ基を含有する。
【0035】
モノアミンは、1実施態様では、1個〜22個の炭素原子を有する。モノアミンの例には、ブチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、1個またはそれ以上のヒドロキシ基を含有するアルカノールアミン(例えば、エタノールアミン)、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
ポリアミンには、1実施態様では、アルキレンジアミンまたは置換アルキレンジアミン(例えば、エチレンジアミンおよびN−メチル−プロピレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン(例えば、テトラエチレンペンタミンおよびポリエチレンポリアミンボトムス)、1個またはそれ以上のヒドロキシ基を含有するアルカノールアミン(例えば、2−(2−アミノエチルアミン)エタノール)、アミノアルキル置換複素環化合物(例えば、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよび4−(3−アミノプロピル)モルホリン)、米国特許第5,653,152号、またはそれらの混合物で記載されているようなポリアミンとポリヒドロキシ化合物との縮合物(例えば、ポリエチレンポリアミンとトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとの縮合物)、またはそれらの混合物が挙げられる。1実施態様では、このアミンは、テトラエチレンペンタミンである。本発明の他の実施態様では、このアミンは、ポリエチレンポリアミン(例えば、テトラエチレンペンタミン)であり、これは、アシル化重合体(例えば、ポリイソブテニル無水コハク酸)であり、この場合、アミン窒素基とアシル化重合体カルボニル基との比は、1.3〜2.7:1、1.4〜2.6:1、または1.6〜2.4:1である。本発明のさらなる実施態様では、このポリアミンとアシル化重合体との反応生成物は、ほぼホウ素を含まないガソリンまたはディーゼル燃料添加剤である。
【0037】
(実質的にイオウを含まない媒体)
本発明の実質的にイオウを含まない媒体(本明細書中では、「媒体」と呼ぶ)はまた、溶媒または希釈剤として、記述され得る。この媒体は、脂肪族、芳香族、またはそれらの混合物であり得る。この媒体は、炭化水素、非炭化水素(例えば、アルコールまたはカルボン酸エステル)、またはそれらの混合物であり得る。この媒体は、単一の溶媒または希釈剤、あるいは2種またはそれ以上の溶媒または希釈剤の混合物であり得る。本発明の1実施態様では、この媒体は、芳香族炭化水素、他の実施態様では、脂肪族および芳香族炭化水素の混合物、脂肪族および芳香族炭化水素の混合物であって、その脂肪族炭化水素が50重量%またはそれ以上であるもの、および脂肪族炭化水素である。
【0038】
実質的にイオウを含まないとの用語は、この媒体がイオウを含有しないか痕跡量のイオウしか含有しないことを意味する。しばしば、この媒体のイオウ含量は、重量基準で、25ppm未満、別の実施態様では、18ppm未満、別の実施態様では、10ppm未満、別の実施態様では、8または4ppm未満である。1実施態様では、この実質的にイオウを含まない媒体は、2ppm(重量基準)のイオウ含量を有する。当業者は、この媒体が、媒体の全イオウ含量が所定範囲内であるという条件で、この上で示した範囲より高いイオウ含量を有する化合物を少量で含有し得ることを理解する。
【0039】
この媒体は、しばしば、その媒体の全量の少なくとも50重量%〜100重量%、別の実施態様では、60重量%〜100重量%、別の実施態様では、70重量%〜100重量%、別の実施態様では、80重量%〜100重量%、別の実施態様では、90重量%〜100重量%で存在している脂肪族炭化水素溶媒または希釈剤を含有する。1実施態様では、この媒体は、その媒体の全量の約7重量%で、脂肪族炭化水素溶媒または希釈剤を含有する。1実施態様では、この媒体は、その媒体の全量の約5重量%で存在している脂肪族炭化水素溶媒または希釈剤を含有する。1実施態様では、この媒体は、その媒体の全量の約0重量%で存在している脂肪族炭化水素溶媒または希釈剤を含有する。
【0040】
しばしば、この媒体は、150℃またはそれより高い沸点、別の実施態様では、175℃またはそれより高い沸点、別の実施態様では、200℃またはそれより高い沸点、別の実施態様では、225℃またはそれより高い沸点を有する1実施態様では、この沸点は、約250℃である。1実施態様では、この沸点は、約258℃Cである。当業者は、実質的にイオウを含まない媒体が、この媒体の沸点が所定範囲内にあるという条件で、上記所定範囲未満の沸点を有する少量の化合物を含有し得ることを理解する。
【0041】
しばしば、この実質的にイオウを含まない媒体は、90℃またはそれより高い引火点を有し、本発明の他の実施態様では、この媒体は、105℃またはそれより高い、120℃またはそれより高い、そして130℃またはそれより高い引火点を有する。本発明のさらなる実施態様では、この媒体は、145℃またはそれより高い、また、150℃またはそれより高い引火点を有する。当業者は、この媒体が、その媒体の引火点が所定範囲内にあるという条件で、上記所定範囲未満の引火点を有する少量の化合物を含有し得ることを理解する。この引火点は、ASTM(American Society For Testing And Materials)Test Method D93で記載されているPensky Closed Cup方法により、決定され得る。
【0042】
1実施態様では、この実質的にイオウを含まない媒体は、脂肪族溶媒または希釈剤であり、これは、潤滑粘性のあるオイル(例えば、API 第II族、第III族、第IV族または第V族基油)である。市販の脂肪族炭化水素溶媒または希釈剤の例には、潤滑粘性のあるオイルを含めて、Pilot(商標)140およびPilot(商標)299およびPilot(商標)900(これらは、Petrochem Carlessから市販されている)、Petro−Canada(商標)100N、Nexbase(商標)、Yubase(商標)、およびポリ(α−オレフィン)(例えば、PAO−5、PAO−6、PAO−7およびPAO−8)がある。
【0043】
1実施態様では、この実質的にイオウを含まない媒体は、脂肪族溶媒または希釈剤であり、これは、1cStまたはそれ未満の100℃動粘度を有する低粘度組成物である。低粘度組成物の例には、石油留出物(例えば、灯油)、アルカン、アルケン、アルコール、ケトン、カルボン酸のエステル、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
本発明の別の実施態様では、この媒体は、芳香族溶媒または希釈剤を含有し、これらには、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンおよびアルキルベンゼン)が挙げられる。市販の芳香族炭化水素溶媒または希釈剤の追加例には、Shell Chemical Shellsolv AB(商標)およびExxon Chemical製のAromatic(商標)シリーズの溶媒(Aromatic(商標)100、Aromatic(商標)150およびAromatic(商標)200)、Solvesso(商標)シリーズの溶媒(Solvesso(商標)100、Solvesso(商標)150およびSolvesso(商標)200)、ならびにHAN(商標)857が挙げられる。もし存在するなら、この芳香族溶媒または希釈剤は、この媒体の50重量%未満、別の実施態様では、この媒体の25重量%未満、別の実施態様では、この媒体の5重量%未満で、存在し得る。
【0045】
本発明の実施態様では、この実質的にイオウを含まない媒体は、重量基準で50または60%あるいは70または80%あるいは90%または100%の脂肪族炭化水素含量を有する低粘度組成物である。例えば、この低粘度組成物は、90%の脂肪族含量および10%の芳香族含量を有する石油留出物であり得、あるいは80%脂肪族石油留出物および20%アルコールであり得る。
【0046】
(組成物)
本発明は、さらに、以下を含有する組成物を提供する:
(a)実質的にイオウを含まない媒体;および
(b)アシル化基と2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とを含有する添加剤であって、
ここで、該添加剤は、0.3:1〜1.6:1、0.8:1〜1.45:1、または1:1〜1.4:1のアシル化基と重合体とのモル比を有する。本発明の実施態様では、この組成物の添加剤は、本願全体にわたって記述されているように、アシル化重合体と、アンモニア、アミンまたは水との反応生成物であり得る。
【0047】
(液体燃料)
本発明の燃料組成物は、必要に応じて、液体燃料を含有し、そして内燃機関に燃料供給する際に有用である。この液体燃料は、通常、周囲条件で液体である。この液体燃料は、炭化水素燃料、非炭化水素燃料、またはそれらの混合物であり得る。この炭化水素燃料は、石油留出物であり得、これには、ASTM仕様D4814で規定されるガソリンまたはASTM仕様D975で規定されるディーゼル燃料が挙げられる。本発明の1実施態様では、この液体燃料は、ガソリンであり、他の実施態様では、この液体燃料は、有鉛ガソリンまたは無鉛ガソリンである。本発明の別の実施態様では、この液体燃料は、ディーゼル燃料である。この炭化水素燃料は、気液プロセスにより調製された炭化水素であり得、これらには、例えば、フィッシャー−トロプシュプロセスのようなプロセスにより調製された炭化水素が挙げられる。この非炭化水素燃料は、酸素含有炭化水素(これは、しばしば、含酸素物(oxygenate)と呼ばれている)であり得、これらには、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸のエステル、ニトロアルカン、またはそれらの混合物が挙げられる。この非炭化水素燃料には、例えば、メタノール、エタノール、メチルt−ブチルエーテル、メチルエチルケトン、植物および動物の由来のエステル交換油および/または脂肪(例えば、菜種メチルエステルおよび大豆メチルエステル)、ならびにニトロメタンが挙げられ得る。炭化水素燃料と燃料と混合物には、例えば、ガソリンとメタノールおよび/またはエタノール、ディーゼル燃料とエタノール、およびディーゼル燃料とエステル交換植物油(例えば、菜種メチルエステル)が挙げられ得る。本発明の1実施態様では、この液体燃料は、炭化水素燃料、非炭化水素燃料、またはそれらの混合物中の水の乳濁液である。本発明のいくつかの実施態様では、この液体燃料は、重量基準で、5000ppmまたはそれ未満、1000ppmまたはそれ未満、300ppmまたはそれ未満、200ppmまたはそれ未満、30ppmまたはそれ未満、または10ppmまたはそれ未満であるイオウ含量を有し得る。
【0048】
本発明の液体燃料は、燃料組成物中にて、一般に、50重量%より多い主要量で存在しており、他の実施態様では、90重量%より多い量、95重量%より多い量、99.5重量%より多い量、または99.8重量%より多い量で、存在している。
【0049】
(潤滑粘性のあるオイル)
この潤滑油組成物には、潤滑粘性のある天然油または合成油、水素化分解、水素化、ハイドロフィニッシングから誘導されたオイル、および未精製油、精製油および再精製油、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
天然油には、動物油および植物油、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。合成油には、炭化水素油、シリコンベース油、リン含有酸の液状エステルが挙げられる。合成油は、フィッシャー−トロプシュ気液合成手順だけでなく他の気液オイルにより、生成され得る。1実施態様では、本発明の重合体組成物は、気液オイルで使用するとき、有用である。しばしば、フィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスは、ヒドロ異性化(hydroisomerised)され得る。
【0051】
1実施態様では、この基油は、ポリアルファオレフィン(PAO−2、PAO−4、PAO−5、PAO−6、PAO−7またはPAO−8を含めて)である。このポリアルファオレフィンは、1実施態様では、ドデカンから調製され、別の実施態様では、デセンから調製される。
【0052】
潤滑粘性のあるオイルはまた、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeability Guidelinesで指定されたように、定義され得る。1実施態様では、この潤滑粘性のあるオイルは、API 第I族、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族またはそれらの混合物、別の実施態様では、API 第II族、第III族、第IV族またはそれらの混合物を含む。もし、この潤滑粘性のあるオイルがAPI 第II族、第III族、第IV族、第V族または第VI族オイルであるなら、その潤滑油の40重量%まで、別の実施態様では、最大で5重量%までのAPI 第I族オイルが存在し得る。
【0053】
この潤滑粘性のあるオイルは、1実施態様では、この組成物の60重量%〜99.9重量%、別の実施態様では、この組成物の75重量%〜97重量%で、存在している。
【0054】
(追加性能添加剤)
本発明の方法は、必要に応じて、さらに、少なくとも1種の他の性能添加剤を含有する組成物を包含する。これらの他の性能添加剤には、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0055】
存在している追加性能添加剤を合わせた全量は、オイルを含まない基準で、この組成物の0重量%〜25重量%、または0.01重量%〜20重量%の範囲である。これらの他の性能添加剤の1種またはそれ以上が存在し得るものの、これらの他の性能添加剤は、互いに対して異なる量で存在していることが通例である。
【0056】
1実施態様では、この組成物は、濃縮物形成量である。もし、本発明が、濃縮物(これは、追加オイルと混ぜ合わされ得、全部または一部、完成潤滑剤および/または液体燃料を形成する)の形状であり、潤滑粘性のあるオイルおよび/または液体燃料中の本発明の添加剤および/または他の追加性能添加剤と希釈油との比は、80:20〜10:90(重量基準)の範囲である。
【0057】
酸化防止剤には、ジチオカルバミン酸モリブデン、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、ジフェニルアミンが挙げられる;清浄剤には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属と1種またはそれ以上のフェネート、硫化フェネート、スルホネート、カルボン酸、リン含有酸、モノ−および/またはジチオリン酸、サリゲニン、サリチル酸アルキル、サリキサレートとの中性またはオーバーベース化、ニュートン性または非ニュートン性塩基性塩が挙げられる。分散剤には、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミドだけでなく、それらの種々の後処理したバージョンが挙げられ、後処理分散剤には、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物およびリン化合物との反応によるものが挙げられる。
【0058】
耐摩耗剤には、チオリン酸金属、特に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛;リン酸エステルまたはそれらの塩;ホスファイト;およびリン含有カルボン酸エステル、エーテルおよびアミドのような化合物が挙げられる;耐スカッフィング剤には、有機スルフィドおよびポリスルフィド(例えば、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−第三級ブチルポリスルフィド、ジ−第三級ブチルスルフィド、硫化ディールス−アルダー付加物またはアルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカーバメート)が挙げられる;そして極圧(EP)剤には、塩素化ワックス、有機スルフィドおよびポリスルフィド(例えば、ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジテルペン、硫化テルペン、および硫化ディールス−アルダー付加物);リン硫化炭化水素、チオカルバミン酸金属(例えば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛)およびバリウムヘプチルフェノール二酸が挙げられる;これらもまた、本発明の組成物で使用され得る。
【0059】
さらに、本発明はまた、摩擦調整剤を含有し得、これらには、脂肪アミン、エステル(例えば、ホウ酸塩グリセロールエステル、グリセロールの部分エステル(例えば、グリセロールモノオレエート)、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ酸塩脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸塩アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物、アルキルリン酸のアミン塩が挙げられる;粘度調整剤には、スチレン−ブタジエンの水素化共重合体、エチレン−プロピレン重合体、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレン重合体、水素化イソプレン重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエン共重合体、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸アルキル、および無水マレイン酸−スチレン共重合体のエステルが挙げられる;分散剤−粘度調整剤(これは、しばしば、DVMと呼ばれる)には、官能化ポリオレフィン(例えば、無水マレイン酸とアミンとの反応生成物で官能化したエチレン−プロピレン共重合体、アミンで官能化したポリメタクリレート)、またはアミンと反応させたエステル化スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる;これらもまた、本発明の組成物で使用され得る。
【0060】
他の性能添加剤(例えば、腐食防止剤であって、これには、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸またはその無水物および脂肪酸(例えば、オレイン酸)とポリアミンとの縮合生成物が挙げられる;金属不活性化剤であって、これには、ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールまたは2−アルキルジチオベンゾトリアゾールの誘導体が挙げられる;消泡剤であって、これには、アクリル酸エチルとアクリル酸2−エチルヘキシルおよび必要に応じて酢酸ビニルとの共重合体が挙げられる;解乳化剤であって、これには、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)重合体が挙げられる;流動点降下剤であって、これには、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドが挙げられる;およびシール膨潤剤であって、これには、Exxon Necton−37(商標)(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN 3200)が挙げられる)もまた、本発明の組成物で使用され得る。
【0061】
本発明は、さらに、液体燃料または潤滑組成物に、清浄性、分散性、腐食防止または腐食低減の少なくとも1つを与える方法を提供し、該方法は、以下を含有する組成物で潤滑または燃料供給する工程を包含する:
(d)実質的にイオウを含まない媒体;
(e)アシル化剤と2個〜8個の炭素原子を含有するオレフィンから誘導された重合体とを含有する添加剤;および
(f)液体燃料または潤滑粘性のあるオイルであって、
ここで、該添加剤は、0.3:1〜1.6:1、0.8:1〜1.45:1、または1:1〜1.4:1のアシル化剤と重合体とのモル比を有する。本発明の1実施態様では、この組成物の添加剤は、本明細書全体で記述されているように、アシル化重合体と、アンモニア、アミンまたは水との反応生成物であり得る。
【0062】
1実施態様では、この添加剤は、加水分解生成物であり、それは、腐食防止または腐食低減特性を有する。
【0063】
1実施態様では、この添加剤は、スクシンイミド生成物であり、それは、清浄剤、分散剤特性を有する。
【0064】
(工業用途)
1実施態様では、本発明は、液体燃料または内燃機関に有用である。別の実施態様では、本発明は、内燃機関を潤滑させるための潤滑粘性のあるオイルに有用である。
【0065】
この内燃機関には、ガソリン、ディーゼル、天然ガスまたは混合ガソリン/アルコールで燃料供給される2−ストロークまたは4−ストロークエンジンが挙げられる。このディーゼルエンジンには、ライトデューティーおよびヘビーデューティーの両方のディーゼルエンジンが挙げられる。このガソリンエンジンには、直接噴射ガソリンエンジンが挙げられる。
【0066】
1実施態様では、本発明は、燃料組成物に、燃費向上、均一な空気/燃料の混合、ノズルの清浄度、噴射器の清浄度、取り扱いの改善、および実質的にイオウを含まない(すなわち、さらに濃縮されている)媒体中での高い活性含量を有する最終生成物を与えるのに有用である。本発明の組成物は、本願全体にわたって記述されているように、媒体(これは、実質的にイオウを含み得ない)および添加剤(これは、オレフィンおよびアシル化剤の反応生成物から誘導される)を含有し、一般に、アシル化剤と重合体との比が高い(すなわち、重合体1当量あたり、より多くの当量のアシル化剤が反応される)反応生成物から誘導された添加剤を含有する組成物と比較して、同じ活性レベルで低い粘度を有するか、または同じ粘度で高い濃度の活性物質を有する。本発明の組成物は、濃縮物を取り扱う/移動する性能を維持しつつ、取り扱い/移動を改善するために添加剤濃縮物の粘度を手退化させる方法、または添加剤濃縮物中での活性物質のレベルを高める方法を提供する。
【0067】
以下の実施例は、本発明を例示する。これらの実施例は、全てを網羅するものではなく、本発明の範囲を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0068】
(調製実施例1:1.3:1の無水マレイン酸とポリイソブチレンとの比)
Glissopal 1000(数平均分子量 約1000および>70%のビニリデン含量、1当量)18.18Kgを、100℃で、密封容器に充填し、そして撹拌する。この容器を167℃まで加熱し、そして真空を適用する。次いで、この容器を、175℃まで加熱しつつ、窒素雰囲気(1barg)で加圧する。一旦、175℃で安定化すると、ジャケット付き注射器ポンプ(ISCOポンプ)を経由して、追跡したラインと共に(with traced lines)、無水マレイン酸を加える。次いで、この容器を、無水マレイン酸添加の初期充填から4時間にわたって、220℃まで加熱する。追加無水マレイン酸65mlを加え、続いて、50分間にわたって、22ml/分の速度で、無水マレイン酸の連続給送を行う。さらに3時間10分後、この容器を添加の最後まで225℃まで加熱しつつ、37分間にわたって、追加無水マレイン酸818mlを充填する。次いで、その反応物を、225℃で、さらに10時間保持する。この反応の全体にわたって加えられたMAAの全量は、2.32kg、1.3当量である。最終生成物は、100℃で570cSt(mm/s)の動粘度、および127mgKOH/gのTANを有する。
【0069】
(調製実施例2:1.2:1の無水マレイン酸とポリイソブチレンとの比)
この方法は、生成物に1.2:1の無水マレイン酸とポリイソブチレンとの比を与えるように無水マレイン酸の量を減らすこと以外は、調製実施例1と同じである。
【0070】
(調製実施例3〜4:1.3:1の無水マレイン酸とポリイソブチレンとの比)
Glisopal(登録商標)1000に代えて、ポリイソブチレンTPC(登録商標)555およびTPC(登録商標)575を使用すること以外は、調製実施例1と同じである。TPC(登録商標)555は、550の数平均分子量を有し、そしてTPC(登録商標)575は、750の数平均分子量を有する。
【0071】
(調製比較例1)
密封容器に、100℃で、消泡剤1リットルと共に、Glissopal(登録商標)1000(37,000Kg)を充填する。この容器を、真空下にて、167℃まで加熱し、次いで、窒素で100kPaまで加圧した後、175℃まで加熱する。この容器を4時間にわたって220℃まで加熱しつつ、70分間にわたって、無水マレイン酸1883Kgを加える。この容器に無水マレイン酸6240Kgを充填し、そして4時間反応させる。真空ストリッピングにより、未反応無水マレイン酸を除去する。最終生成物は、152の全酸価、および2.24:1の無水マレイン酸とGlissopal(登録商標)1000との比を有する。
【0072】
(実施例1(EX 1))
容器にて、調製実施例1の生成物1366gをPilot(登録商標)900(134g)に撹拌して、混合物を形成する。次いで、この混合物を、真空下にて、セライトパッドで濾過する。次いで、この混合物を110℃まで加熱し、そして窒素下にて、300rpmで撹拌する。30分間にわたって、テトラエチレンペンタミン(TEPA)36.1gを滴下した後、この容器を175℃まで加熱し、そして4時間保持する。次いで、この容器を冷却して、100℃で482mm/s(cSt)の動粘度;72のTBNおよび3.66重量%の窒素含量を有する生成物が得られた。最終生成物は、73重量%のポリイソブチレンスクシンイミドおよび27重量%のPilot(登録商標)900、ならびに1.8:1の窒素とカルボニルとの比を有する。
【0073】
(実施例2(EX 2))
調製実施例2の生成物の容器に、さらに、Pilot(登録商標)900(122.4g)(これは、Petrochem Carlessから市販されている)を充填する。この容器に、パドル攪拌機、ドッグレッグアダプタおよび機械攪拌機ょを備え付け、次いで、入口を不活性ガス(窒素)で密封する。この容器の内容物を110℃まで温め、そして500rpmで撹拌する。次いで、この容器に、78分間にわたって、テトラエチレンペンタミン(TEPA)114.9gを滴下する。滴下漏斗に、Pilot(登録商標)900(10g)を充填し、この反応物に加えて、残留しているいずれかのTEPAを洗う。この容器にガラスウールを被覆し、そして温度を175℃まで上げる。一旦、175℃になると、この反応物を4時間保持する。生成物を分析すると、1.79:1の窒素とカルボニルとの比が明らかとなる。最終生成物は、15重量%のPilot(登録商標)900および85重量%のポリイソブチレンスクシンイミドを有する。
【0074】
(実施例3(EX 3))
調製実施例1から得たポリイソブチレン無水コハク酸340g、およびPilot(登録商標)900(60g)を容器に充填し、そして1時間ブレンドする。この容器の内容物を400rpmで撹拌し、そして90℃まで加熱する。次いで、この容器に窒素を充填して、不活性雰囲気にした後、10分間にわたって水5.9gを充填し、そして2時間撹拌する。形成された生成物は、163mg/KOHの全酸価および100℃で500mm/s(cSt)の動粘度を有する。形成された生成物は、85重量%の加水分解生成物および15重量%のPilot(登録商標)900を含有する。カルボニルと水との比は、0.5:1である。
【0075】
(参考例1(REF 1))
Pilot(登録商標)900をSN330基油で置き換えたこと以外は、実施例1と類似のプロセスで、参考例1を調製する。スクシンイミド最終生成物は、60重量%で存在しており、SN330は、40重量%で存在している。
【0076】
(参考例2(REF 2))
調製比較例1の生成物35560Kgを使用し、SN330基油を加え、さらに、容器に入れて窒素でパージして、参考例2を調製する。この容器を110℃まで加熱し、この添加の始めから終わりまで、温度を110℃から120℃まで変えつつ、3時間にわたって、テトラエチレンペンタミン(TEPA)3777Kgを加える。次いで、この容器を、4時間にわたって、150℃まで加熱し、さらに、窒素で1時間パージする。次いで、この容器を175℃まで加熱し、そして4時間保持する。冷却した後、最終生成物は、2.24:1の窒素とカルボニルとの比、100℃で495mm/s(cSt)の動粘度および79のTBNを有する。存在しているSN330基油の量は、60重量%のスクシンイミドおよび40重量%のSN330を有する最終生成物を提供するのに十分である。
【0077】
(参考例3(REF 3))
参考例3は、SN330をPilot(登録商標)900で置き換えたこと以外は、参考例2と同じである。
【0078】
(試験1:XUD9汚れ試験)
CEC試験方法CEC F−23−A−01および国際標準方法ISO 4010に従って、XUD9試験を実行する。一般に、低い流れ閉塞値および高い残留流れ値を有する試料について、良好な結果が得られる。各試料についてこの試験で使用された添加剤の量もまた、表1で示す。得られた結果は、以下であった:
(表1)
【0079】
【表1】

これらの結果は、実質的にイオウを含まない媒体と組み合わせて、本発明で記述したスクシンイミド添加剤の組み合わせると、参考例と比較して、汚れが少なくなることを示している。さらに、少ない汚れは、参考例よりも10ppm少ない用量で、起こる。
【0080】
各最終生成物のスクシンイミドの重量%および100℃での動粘度を比較することにより、これらの結果は、本発明が参考例と比べてさらに濃縮された生成物を生じることができることを示している。さらに、本発明の最終生成物の各々の動粘度は、参考例と類似しているかそれより低い。結果的に、本発明の最終生成物は、高いスクシンイミド含量を有し、その結果、取り扱いが改善される。
【0081】
(試験2:水の存在下での腐食)
ASTM Method D665−03、Procedure A(蒸留水)およびProcedure B(Synthetic Sea Water)に従って、実施例3の60ppmの処理速度を使用して、この腐食試験を実行する。実施例3について、Procedure AおよびProcedure Bで得られた結果は、腐食が起こらなかったことを示している。
【0082】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販等級の物質に通例存在し得る溶媒または希釈油を除いて、提示されている。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と併用され得る。本明細書中で使用するように、属(またはリスト)のいずれかの要素は、請求項から除外される場合がある。
【0083】
本発明が説明されているものの、それらの種々の改良は、本明細書を読むと、当業者に明らかとなることが理解できるはずである。従って、本明細書中で開示された発明は、添付の請求の範囲に入るこのような改良を含むと解釈されることが理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2012−229446(P2012−229446A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−181034(P2012−181034)
【出願日】平成24年8月17日(2012.8.17)
【分割の表示】特願2007−545635(P2007−545635)の分割
【原出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】