説明

添加剤を含む有機エレクトロルミネセンスデバイス

【課題】有機ELデバイスの発光効率の改良。
【解決手段】カソードと、アノードと、それらの間に配置された発光層(LEL)とを含み、該発光層が、リン光性ゲスト物質と、正孔および電子を輸送するホスト物質と、ホスト物質のイオン化ポテンシャルよりも低いイオン化ポテンシャル、および、リン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも最大でも0.2eV低い三重項エネルギーレベルを有する効率向上物質とを含むエレクトロルミネセンスデバイスが開示される。そのようなデバイスは有用な発光特徴を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソードと、アノードと、それらの間に配置された発光層(LEL)とを含み、該発光層が、リン光性ゲスト物質と、正孔および電子を輸送するホスト物質と、ホスト物質のイオン化ポテンシャルよりも低いイオン化ポテンシャル、および、リン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも最大でも0.2eV低い三重項エネルギーレベルを有する効率向上物質とを含むエレクトロルミネセンスデバイスに関連する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス(EL)デバイスが20年以上前から知られているが、それらの性能上の制限は多くの望ましい適用に対する障害となっている。最も単純な形態において、有機ELデバイスは、正孔注入のためのアノードと、電子注入のためのカソードと、光の放射をもたらす電荷再結合を支援するための、これらの電極の間に挟まれた有機媒体とから構成される。これらのデバイスはまた、有機発光ダイオードまたはOLEDと一般には呼ばれている。より初期の有機ELデバイスの代表例が、Gurneeらの米国特許第3,172,862号(1965年3月9日発行);Gurneeの米国特許第3,173,050号(1965年3月9日発行);Dresner、「Double Injection Electroluminescence in Anthracene」、RCA Review、第30巻、322頁〜334頁、1969年;および、Dresnerの米国特許第3,710,167号(1973年1月9日発行)である。これらのデバイスにおける有機層は、通常の場合には多環芳香族炭化水素から構成されており、非常に厚かった(1μmをはるかに超えていた)。結果として、動作電圧が非常に高く、多くの場合には100Vを超えていた。
【0003】
より近年の有機ELデバイスは、極めて薄い層(例えば、1.0μm未満)からなる有機ELエレメントをアノードとカソートとの間に含む。本明細書中において、用語「有機ELエレメント」は、アノードとカソートとの間におけるこのような層を包含する。厚さを小さくすることは、有機層の抵抗を低下させ、かつ、はるかに低い電圧で作動するデバイスを可能にする。基本的な二層ELデバイス構造(これは米国特許第4,356,429号に最初に記載された)において、アノードに隣接するELエレメントの一方の有機層が、正孔を輸送するために特に選ばれており、従って、これは正孔輸送層と呼ばれ、もう一方の有機層は、電子を輸送するために特に選ばれており、電子輸送層と呼ばれる。有機ELエレメント内における注入された正孔および電子の再結合により、効率的なエレクトロルミネセンスがもたらされている。
【0004】
三層有機ELデバイスもまた提案されており、これは、Tangら(J.Applied Physics、Vol.65、3610〜3616(1989))によって開示される三層有機ELデバイスなどのように、有機発光層(LEL)を正孔輸送層と電子輸送層との間に含有する。発光層は、一般には、ドーパントとしてもまた知られているゲスト物質がドープされたホスト物質からなる。なおさらに、米国特許第4,769,292号では、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(LEL)および電子輸送/注入層(ETL)を含む4層ELエレメントが開示されている。これらの構造は、改善されたデバイス効率をもたらしている。
【0005】
OLEDデバイスにおいて有用であるとして記載されている多くの発光物質は、蛍光によってその励起された一重項状態から光を放射する。励起された一重項状態は、OLEDデバイスにおいて形成される励起子がそのエネルギーをドーパントの一重項励起状態に転移させたときに生じ得る。しかしながら、ELデバイスにおいて生じた励起子の25%のみが一重項の励起子であると一般には考えられている。残る励起子は三重項であり、三重項は、ドーパントの一重項励起状態を生じさせるためにそのエネルギーをドーパントに容易に転移させることができない。このことは、励起子の75%が発光過程において使用されないので、効率における大きな損失をもたらしている。
【0006】
三重項の励起子は、エネルギーにおいて十分に低い三重項励起状態をドーパントが有するならば、そのエネルギーをドーパントに転移させることができる。ドーパントの三重項状態が発光性であるならば、ドーパントは光をリン光によって生じさせることができる。多くの場合、一重項の励起子はまた、そのエネルギーを同じドーパントの最も低い一重項励起状態に転移させることができる。一重項励起状態は、多くの場合、項間交差プロセスによって、発光性の三重項励起状態に緩和することができる。従って、エネルギーをOLEDデバイスにおいて生じた一重項励起子および三重項励起子の両方から集め、かつ、非常に効率的なリン光放射を生じさせることが、ホストおよびドーパントを適正に選ぶことによって可能である。エレクトロホスホレセンスの用語が、発光機構がリン光であるエレクトルミネセンスを示すために使用されることがある。
【0007】
ドーパントの励起状態が生じ得る別のプロセスは、正孔がドーパントにより捕捉され、その後、電子と再結合するか、または、電子が捕捉され、その後、正孔と再結合し、これにより、いずれかの場合でも、ドーパントの励起状態を直接的に生じさせる逐次プロセスである。一重項状態および三重項状態、ならびに、蛍光、リン光および項間交差は、J.G.CalvertおよびJ.N.Pitts,Jr.、Photochemistry(Whiley、New York、1966)において議論され、さらには、S.R.Forrestおよび共同研究者による刊行物において、例えば、M.A.Baldo、D.F.O’Brien、M.E.ThompsonおよびS.R.Forrest、Phys.Rev.B、60、14422(1999)などにおいて議論される。単数形の用語「三重項状態」は、多くの場合、ほぼ同一の電子構造およびほぼ同一のエネルギーを有し、かつ、主として各状態の正味の磁気モーメントの配向が異なるスピン1の3つの電子的に励起された状態の1組を示すために使用される。分子は、典型的には、エネルギーが広範囲に異なる多くのそのような三重項状態を有する。本明細書中下記において使用されるように、分子の「三重項状態」の用語は、エネルギーが最も低い3つのスピン−1の励起状態の1組を特に示し、用語「三重項エネルギー」は、分子の基底状態のエネルギーに対してこれらの状態のエネルギーを示す。同様に、用語「一重項エネルギー」は、分子の基底状態のエネルギーに対して最も低い励起された一重項状態のエネルギーを示す。
【0008】
有用なリン光性物質の1つのクラスが、一重項基底状態および三重項励起状態を有する遷移金属錯体である。例えば、fac−トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(Ir(ppr)3)は、第1には、重原子の大きいスピン−軌道カップリングのために、また、第2には、基底状態へのラポルテ許容(軌道対称性により許容される)転移を有する最も低い励起状態(これは電荷移動状態である)のために、緑色光を三重項励起状態から強く放射する(K.A.King、P.J.SpellaneおよびR.J.Watts、J.Am.Chem.Soc.、107、1431(1985);M.G.Colombo、T.C.Brunold、T.Reidener、H.U.Guedel、M.FortschおよびH.−B.Buergi、Inorg.Chem.、33、545(1994))。高い効率を有する小分子の真空蒸着OLEDもまた、リン光性物質としてのIr(ppr)3およびホストとしての4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)を用いて明らかにされている(M.A.Baldo、S.Lamansky、P.E.Burrows、M.E.ThompsonおよびS.R.Forrest、Appl.Phys.Lett.、75、4(1999);T.Tsutsui、M.−J.Yang、M.Yashiro、K.Nakamura、T.Watanabe、T.Tsuji、Y.Fukuda、T.WakimotoおよびS.Miyaguchi、Jpn.J.Appl.Phys.、38、L1502(1999);T.Watanabe、K.Nakamura、S.Kawami、Y.Fukuda、T.Tsuji、T.Wakimoto、S.Miyaguchi、Proc.SPIE、4105、175〜182(2001))。LeClouxらは、国際特許出願公開WO03/040256A2において、また、Petrovらは、国際特許出願公開WO02/02714A2において、エレクトロルミネセンスデバイスのためのさらなるイリジウム錯体を教示する。
【0009】
様々な添加剤が、三重項OLEDデバイスの効率を改善するために使用されている。米国特許出願公開2002/0071963A1では、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)が三重項の発光層に対する添加剤として使用された。しかしながら、DCJTBは、スペクトルの赤色領域に一重項放射を有するという難点を有しており、従って、三重項OLEDデバイスの放射の色に影響を及ぼし得る。具体的には、青色または緑色の放射を有するOLEDデバイスが所望される場合、DCJTBの放射からの赤色の寄与は望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの開発にもかかわらず、有用な光放出を提供するように、リン光性有機金属物質を含有するOLEDの機能を改善することが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カソードと、アノードと、それらの間に配置された発光層(LEL)とを含み、該発光層が、リン光性ゲスト物質と、正孔および電子を輸送するホスト物質と、ホスト物質のイオン化ポテンシャルよりも低いイオン化ポテンシャル、および、リン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも最大で0.2eV低い三重項エネルギーレベルを有する効率向上物質とを含むエレクトロルミネセンスデバイスを提供する。本発明はまた、そのようなデバイスを用いるディスプレーおよび面照明デバイス、ならびに、そのようなデバイスを使用する発光方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のデバイスは、改善された効率を有する有用な光放出を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が使用され得る典型的なOLEDデバイスの概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のエレクトロルミネセンスデバイスは上記に要約されている。本発明のエレクトロルミネセンスデバイスは、カソードと、アノードと、発光層とを含み、この場合、発光層は、リン光発光物質と、正孔および電子を輸送するホスト物質と、ホスト物質のイオン化ポテンシャルよりも低いイオン化ポテンシャル、および、リン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも最大で0.2eV低い三重項エネルギーレベルを有する効率向上物質とを含む。1つの望ましい実施形態において、効率向上物質の三重項エネルギーはリン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも大きい。本発明のデバイスはまた、様々な層を含むことができ、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、または、これらの必要に応じて使用される層の2つ以上を含むことができる。
【0015】
本発明によれば、ELデバイスの発光層109は、ホスト物質、光を放出するための1つまたは複数のゲスト物質、および、その性質が明らかになる効率向上物質を含む。ゲスト物質の少なくとも1つはリン光性の錯体であり、例えば、第5列目の遷移金属(例えば、白金またはイリジウム)を含む有機金属化合物を含むリン光性錯体である。光を放出するゲスト物質(1つまたは複数)は、典型的には、発光層の1質量%〜20質量%の量で存在し、好都合には、発光層の3質量%〜7質量%の量で存在する。便宜上、リン光性錯体のゲスト物質は、本明細書中ではリン光性物質として示される場合がある。リン光性物質は、典型的には、sp2炭素およびヘテロ原子を介して金属に配位することができる1つまたは複数の配位子(例えば、モノアニオン性配位子)を含む。好都合には、配位子はフェニルピリジン(ppy)またはフェニルイソキノリン(piq)あるいはそれらの誘導体またはアナログなどのN−複素環化合物であり得る。いくつかの有用なリン光性有機金属物質の例には、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)およびビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)白金(II)が含まれる。
【0016】
リン光性物質および関連する物質がまた、国際特許出願公開WO00/57676、同WO00/70655、同WO01/41512A1、同WO02/15645A1、米国特許出願公開2003/0017361A1、国際特許出願公開WO01/93642A1、同WO01/39234A2、米国特許第6,458,475号B1、国際特許出願公開WO02/071813A1、米国特許第6,573,651号、米国特許出願公開2002/0197511A1、国際特許出願公開WO02/074015A2、米国特許第6,451,455号B1、米国特許出願公開2003/0072964A1、米国特許出願公開2003/0068528A1、米国特許第6,413,656号B1、米国特許第6,515,298号B2、米国特許第6,451,415号B1、米国特許第6,097,147号、米国特許出願公開2003/0124381A1、米国特許出願公開2003/0059646A1、米国特許出願公開2003/0054198A1、欧州特許EP1239526A2、同EP1238981A2、同EP1244155A2、米国特許出願公開2002/0100906A1、米国特許出願公開2003/0068526A1、米国特許出願公開2003/0068535A1、特開2003073387A、特開2003073388A、米国特許出願公開2003/0141809A1、米国特許出願公開2003/0040627A1、特開2003059667A、特開2003073665Aおよび米国特許出願公開2002/0121638A1に記載される。
【0017】
IrL3型およびIrL2L’型のシクロ金属化Ir(III)錯体(例えば、緑色を放出するfac−トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)およびビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)など)の放出波長は、シクロ金属化する配位子Lにおける適切な位置での電子供与基または電子吸引基の置換によって、あるいは、シクロ金属化する配位子Lのための異なる複素環を選ぶことによって変化させることができる。放出波長はまた、補助的な配位子L’を選ぶことによって変化させることができる。赤色発光体の例には、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)およびトリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C,C2’)イリジウム(III)、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、ならびにトリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、ならびにトリス(3−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)がある。青色発光体には、ビス(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(ピコリナート)がある。
【0018】
赤色のエレクトロホスホレセンスが、ビス(2−(2’−ベンゾ[4,5−a]チエニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)[btp2Ir(acac)]をリン光性物質として使用したとき、報告されている(C.Adachi、S.Lamansky、M.A.Baldo、R.C.Kwong、M.E.ThompsonおよびS.R.Forrest、App.Phys.Lett.、78、1622〜1624(2001))。
【0019】
他の重要なリン光性物質には、シクロ金属化Pt(II)錯体が含まれ、例えば、cis−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C3’)白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)キノリナト−N,C5’)白金(II)または(2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)白金(II)(アセチルアセトナート)が含まれる。Pt(II)ポルフィリン錯体(例えば、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン白金(II)など)もまた有用なリン光性物質である。
【0020】
有用なリン光性物質のさらに他の例には、三価ランタニド(例えば、Tb3+およびEu3+など)の配位錯体が含まれる(J.Kidoら、Appl.Phys.Lett.、65、2124(1994))。
【0021】
好適なホスト物質は、好ましくは、三重項励起子の転移がホスト物質からリン光性ゲスト物質に効率よく生じることができるように、しかし、リン光性物質からホスト物質には効率よく生じることができないように選択しなければならない。従って、リン光性物質の三重項エネルギーがホストの三重項エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。一般的に言えば、大きい三重項エネルギーは大きい光学的バンドギャップを意味する。しかしながら、ホストのバンドギャップは、発光層内への電荷キャリアの注入に対する受け入れがたい障壁、および、OLEDの駆動電圧における受け入れがたい増大を引き起こすほど大きく選ぶべきではない。好適なホスト物質が、国際特許出願公開WO00/70655A2、同WO01/39234A2、同WO01/93642A1、同WO02/074015A2、同WO02/15645A1および米国特許出願公開20020117662に記載される。好適なホストは、ある種のアリールアミン系化合物、チアゾール系化合物、インドール系化合物およびカルバゾール系化合物を含む。望ましいホストの例には、それらの誘導体を含めて、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル(CDBP)、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン、およびポリ(N−ビニルカルバゾール)がある。
【0022】
望ましいホスト物質は、連続した薄膜を形成することができる。加えて、望ましいホスト物質は正孔輸送性および電子輸送性であり得る。すなわち、望ましいホスト物質は正孔および電子の両方の輸送を可能にし得る。様々なカルバゾール含有化合物(例えば、CBPなど)(C.Adachiら、Organic Electronics、2、37〜43(2001))が正孔移動物質および電子移動物質の両方として役立ち得る。好適なホスト物質には、下記の式(1)によって表されるカルバゾール誘導体などのカルバゾール誘導体が含まれる。
【化1】

【0023】
式1において、Wは独立して、水素または独立して選択される置換基(例えば、メチル基など)を表し、pは独立して0〜4であり、LAは連結基を表す。好適な連結基には、アリーレン基、例えば、フェニレン基またはビフェニレン基など、あるいは、脂肪族基または脂環基、例えば、1,3−プロピルまたは1,3−シクロブチルなどが含まれる。特に好適なものは、WおよびLAがさらなる縮合環(例えば、ナフタレン環など)を含有しない式Iの化合物である。例には、下記の化合物が含まれる。
【化2】

【化3】

【0024】
発光層は、デバイスの薄膜形態学、電気特性、発光効率および寿命を改善するために、2つ以上のホスト物質を含有することができる。発光層は、良好な正孔輸送特性を有する第1のホスト物質と、良好な電子輸送特性を有する第2のホスト物質とを含有することができ、これらは一緒になって、正孔および電子を輸送するホスト物質を形成することができる。
【0025】
LELにおいて使用される好適な効率向上層は、下記の2つの有用な性質を有するように選択される。ホスト物質のイオン化ポテンシャルよりも小さいイオン化ポテンシャル、および、約0.2eVを超える差でリン光性ゲスト物質の三重項エネルギーよりも低くない三重項エネルギー。好適な化合物の例を下記に示す。
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−メチルシクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン;
4,4’,4’’−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA);
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン;
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)エタン;
4−(4−ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;および
4,4’−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン。
【0026】
好ましい効率向上物質の一例が、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP)などのホスト物質およびfac−トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)などのリン光発光物質との組合せで使用される場合の4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)である。
【0027】
イオン化ポテンシャルの役割は完全には理解されていないが、効率向上物質は、正孔が効率向上物質によって捕捉され、その後、ホスト物質中で電子と再結合し、これにより、一方の物質または他方の物質の励起状態をもたらす逐次プロセスによって機能すると考えられている。この励起状態のエネルギーがリン光性ゲスト物質に転移し、リン光性ゲスト物質がそのエネルギーをリン光の光として放出するとさらには考えられている。イオン化ポテンシャルは、物質の最高占有分子軌道(HOMO)から電子を除くために要求されるエネルギーとして定義される。イオン化ポテンシャルは、例えば、光電子分光法によって測定することができる。例えば、C.Adachiら(Organic Electronics、2、37〜43(2001))は、CBP(6.3eV)およびMTDATA(5.1eV)をはじめとするいくつかの物質のイオン化ポテンシャルを報告している。これらの値によれば、MTDATAは、ホストとしてのCBPとともに効率向上物質として使用するための第1の基準を満たしている。あるいは、イオン化ポテンシャルの差のみが要求されるので、溶液中での電気化学的方法により得られる酸化電位を代わりに使用することができる。従って、上記で示される第1の性質と同等であることは、効率向上物質の酸化電位がホスト物質の酸化電位よりも小さくなければならないという性質である。同じ電気化学的方法、溶媒、および、参照電極または参照物質(例えば、フェロセン)が、効率向上物質およびホスト物質の酸化電位を評価するために使用されなければならないことを理解しなければならない。イオン化ポテンシャルおよび酸化電位を決定するために光電子分光法による方法および電気化学的方法の両方を使用する一例が、L.−B.Linら、Appl.Physics Lett.、72、864(1998)によって示される。
【0028】
効率向上物質のイオン化エネルギーはホスト物質のイオン化エネルギーよりも小さくなければならない。しかしながら、そのイオン化エネルギーが低すぎる場合、リン光性ゲスト物質へのそのエネルギーの転移を妨げる十分に低いエネルギーでの「エキシプレックス」状態が存在し得る。そのような「エキシプレックス」状態は、典型的には、意図された効率向上物質の分子からホスト物質の分子への電子の部分的または完全な転移に影響を与える。従って、絶対的には要求されないが、効率向上物質が良好すぎる電子供与体でないことが望ましい。この目的のために、効率向上物質とホスト物質との間でのイオン化エネルギーの差が約1eV未満であることがしばしば望ましく、約0.5eV未満であることがより望ましい。
【0029】
多くの化合物についての三重項エネルギーおよびイオン化ポテンシャルまたは酸化電位の値を、S.L.Murov、I.CarmichaelおよびG.L.Hug、Handbook of Photochemistry、第2版(Marcel Dekker、New York、1993)に見出すことができ、また、上記で引用されたAdachiらおよびLinらによる参考文献に見出すことができる。さらなる化合物についての値は、多くの場合、類似する化合物についての既知の値から推定することができる。
【0030】
三重項エネルギー値の役割もまた完全には理解されていないが、しかし、その役割はおよそ下記の通りであると考えられる。効率向上物質の三重項エネルギーが第2の基準を満たすならば、効率向上物質から直接的にリン光性ゲスト物質への三重項エネルギーの転移に対する障壁は、そのような障壁が存在したとしても、越えることができないほど大きくない。そのようなエネルギー転移を容易にするために、効率向上物質の三重項エネルギーはまた、0.2eVを超える差でホスト物質の三重項エネルギーよりも低くないことが望ましい。この要件はまた、下記の式(1)で述べられる。
E ≧ TH − 0.2eV (式1)
(式中、TEは効率向上物質の三重項エネルギーレベルを表し、THはホスト物質の三重項エネルギーレベルを表す)。効率向上物質がこの性質を有するならば、効率向上物質からホスト物質への三重項エネルギーの転移に対する何らかの障壁は、その後のリン光性ゲスト物質への転移とともに、越えることができないほど大きくない。1つの望ましい実施形態において、効率向上物質の三重項エネルギーはリン光性物質の三重項エネルギーよりも大きい。
【0031】
三重項エネルギーは、例えば、上記で引用されたMurovらによる書籍において議論されているように、いくつかの方法のいずれかによって都合良く測定される。1つの便利な方法は、当業者に周知の方法ではあるが、低温でのリン光スペクトルを記録することである。典型的には、そのスペクトルは、いくつかの部分的に分離したピークまたは肩を有する。特定の波長(λ0)において、リン光の強度が最短波長のピークまたは肩における強度の半分に達する。λ0に対応するエネルギーが三重項エネルギーであると考えられる。例えば、Adachiらは、Organic Electronics、2、37〜43(2001)において、MTDATAのスペクトルを彼らの図4(b)に示している。その説明文から、また、以前に発表されたデータ(Baldoら、Phys.Rev.B62、10958(2000))から、その図における点線がMTDATAのリン光スペクトルであることは明らかである。その図から求められたλ0の値は513nmであり、これは19,500cm-1の波数(1/λ0)に対応し、19.500/8066=2.42eVの三重項エネルギーに対応する。別の例については、Baldoらによる同じ論文における図3はIr(ppy)3のリン光スペクトルを示す。その図から求められたλ0の値は約490nmであり、2.53eVの三重項エネルギーに対応する。従って、MTDATAの三重項エネルギーは、0.2eV未満の差ではあるが、Ir(ppy)3の三重項エネルギーよりも小さく、MTDATAは、リン光性物質としてIr(ppy)3とともに使用される効率向上物質についての第2の基準を満たしている。赤色の放射を有するリン光性物質は2.1eV未満の三重項エネルギーを有すると考えられる。MTDATAの三重項エネルギーはそのようなリン光性物質の三重項エネルギーを超えていると考えられる。
【0032】
化合物の三重項状態はまた計算することができる。物質についての三重項状態のエネルギーが、分子の基底状態のエネルギー(E(gs))と、分子の最も低い三重項状態のエネルギー(E(ts))との差として得られる(両者はeV単位で示される)。これらのエネルギーは、Gaussian98(Gaussian,Inc.、Pittsburgh、PA)コンピュータープログラムで実施されるようなB3LYP法を使用して得られる。B3LYP法とともに使用される基底系が下記のように規定される。MIDI!が定義される全ての原子についてはMIDI!、MIDI!においてではなく、6−31G*において定義される全ての原子については6−31G*、ならびに、MIDI!または6−31G*において定義されない原子についてはLACV3PまたはLANL2DZのいずれかの基底系および擬似ポテンシャル(LACV3Pが好ましい方法である)。任意の残った原子については、任意の発表された基底系および擬似ポテンシャルを使用することができる。MIDI!、6−31G*およびLANL2DZは、Gaussian98コンピューターコードで実施されるように使用され、LACV3PはJaguar4.1(Schrodinger,Inc.、Portland、Oregon)コンピューターコードで実施されるように使用される。各状態のエネルギーがその状態についての最小エネルギー幾何構造でコンピューター処理される。2つの状態の間でのエネルギー差が、三重項状態のエネルギー(E(t))を与えるために、下記の式(2)によってさらに修正される。
E(t)=0.84×(E(ts)−E(gs))+0.35 (式2)
【0033】
ポリマー物質またはオリゴマー物質については、さらなるユニットが、コンピューター計算された三重項エネルギーを実質的に変化させないように、十分なサイズのモノマーまたはオリゴマーについて三重項エネルギーをコンピューター計算することが十分である。
【0034】
所与の化合物の三重項状態のエネルギーについての計算値は、典型的には、実験値からの多少のずれを示すことがある。従って、計算は、適切な物質の選択における大まかな指針としてのみ使用しなければならない。
【0035】
上記で記載された2つの性質(イオン化ポテンシャルおよび三重項エネルギーレベル)に加えて、効率向上物質は実質的に非発光性であることが多くの場合には望ましく、この場合、非発光性により、効率向上物質が、ホスト物質中でリン光性物質と一緒に使用されたとき、光を放射しないことを意味する。例えば、効率向上物質は、リン光性物質が存在するかどうかに関わりなく、効率向上物質がホスト物質に存在するとき、光を放射することができない場合がある。あるいは、効率向上物質は、効率向上物質がリン光性物質を伴うことなくホスト物質に存在するとき、光を放射する場合があり、しかし、発光する励起状態のエネルギーはリン光性物質の励起状態のエネルギーを超える場合があり、そのエネルギーは、効率向上物質によって放射される代わりに、リン光性物質に効率よく転移され得る。この場合の一例として、青色の放射を有する物質を、その励起エネルギーが、青色光として放射されるのではなく、リン光性物質に効率よく転移されるならば、緑色光を放射するリン光性物質と一緒に効率向上物質として使用することができる。どの物質も完全に非発光性でないことが理解される。この開示の目的のために、物質は、その物質がリン光性物質と一緒にホスト物質中に存在するとき、平均してその一重項エネルギーの最大でも約1/2、および、平均してその三重項エネルギーの最大でも約10%が光として放射されるならば、非発光性であると称される。効率向上物質としての使用のために意図される物質は、リン光性物質が十分に低い濃度で存在するとき、発光性である場合がある。しかし、効率向上物質は、リン光性物質が所望の濃度で存在するときには非発光性であることが多くの場合には望ましい。この非発光性の性質は、リン光性ドーパントの放射色が既に最適化されているときには、非発光性により、効率向上物質の放射色によるその色の混入が防止されるので、好都合である。
【0036】
多くの第三級芳香族アミン(これには、トリアリールアミン、ジアリールアルキルアミンおよびアリールジアルキルアミンが含まれる)は、CBPなどのホストと一緒に、かつ、そのリン光がスペクトルの可視領域に存在する(例えば、スペクトルの青色領域に存在するか、あるいは、より長い波長(例えば、緑色、黄色、オレンジ色または赤色など)で存在する)リン光性物質と一緒に使用されるとき、効率向上物質のための要件を満たす。多数のアミン基を有する第三級芳香族アミン(例えば、ビス[トリアリールアミン])の場合、アミン基は、アルキレン基により、または、場合によっては、アリーレン基により連結され得る。そのような物質の非限定的な例の一部を下記に示す。
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC);
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−メチルシクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン(TAPPP);
4,4’,4’’−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA);
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)エタン
;4−(4−ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;および
4,4’−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン。
【0037】
例えば、TAPCの三重項エネルギーは、構造的に関連する化合物のトリフェニルアミンの三重項エネルギー(すなわち、3.0eV)にほぼ等しく、これは、典型的なホスト物質のCBPおよび典型的なリン光性物質のIr(ppy)3の両方の三重項エネルギーを超えている。TAPCのイオン化ポテンシャルは約5.4eVであり、これはCBPのイオン化ポテンシャルよりも小さい(Murovらによる書籍およびLinらによる論文を参照のこと;これらはともに上記で引用されている)。従って、TAPCは、ホスト物質としてのCBPおよびリン光性物質としてのIr(ppy)3と一緒に効率向上物質として使用するために好適である。
【0038】
1つの好適な実施形態において、効率向上物質は、一緒に連結された2つ以上のトリアリールアミン、例えば、下記の式(2a)の物質などを含む。
【化4】

【0039】
式(2a)において、R1およびR2は水素または置換基を表し、ただし、R1およびR2は一緒になって、環を形成することができる。例えば、R1およびR2はメチル基が可能であり、または、一緒になって、シクロヘキシル環基を形成することができる。Ar1〜Ar4は、独立して選択された芳香族基を表し、例えば、フェニル基またはトリル基を表す。Raは水素または独立して選択された置換基(例えば、メチル基など)を表し、nは独立して、0〜4として選択される。1つの望ましい実施形態において、R1、R2、RaおよびAr1〜Ar4は縮合芳香族環を含有しない。
【0040】
式2aの物質の例を下記に示す。
【化5】

【化6】

【0041】
1つの望ましい実施形態において、効率向上物質は、下記の式(2b)により表される物質を含む。
【化7】

【0042】
式2bにおいて、Ar5〜Ar10は独立して芳香族基を表し、例えば、フェニル基およびトリル基を表す。Rbは独立して、水素または独立して選択された置換基(例えば、メチル基)を表し、mは独立して、0〜4として選択される。1つの望ましい実施形態において、RbおよびAr5〜Ar10は縮合芳香族環を含有しない。
【0043】
式2aの好適な物質の例を下記に示す。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0044】
効率向上物質は、好都合には、発光層の1質量%〜30質量%の濃度で存在し、好適には、3質量%〜10質量%の濃度で存在する。2つ以上の効率向上物質はまた、互いに組み合わせて使用することができる。
【0045】
発光層の厚さは2nm〜100nmの間が可能であり、好適には5nm〜50nmの間である。
【0046】
効率向上物質の添加により、改善された発光収率および出力効率を有するエレクトロルミネセンスデバイスが提供される。
【0047】
別途特に言及されない限り、用語「置換された」または用語「置換基」の使用は、水素以外の任意の基または原子を意味する。別途示されない限り、置換可能な水素を含有する基(化合物または錯体を含む)が示されるとき、そのような用語の使用は、その置換されていない形態を包含するだけでなく、置換基が有用性のために必要な性質を破壊しない限り、本明細書中で述べられるような任意の置換基(1つまたは複数)を有するさらに置換された誘導体を形成することもまた意図される。好適には、置換基はハロゲンであり得るか、あるいは、炭素原子、ケイ素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、イオウ原子、セレン原子またはホウ素原子によって分子の残り部分に結合することができる。置換基は下記が可能である。例えば、ハロゲン、例えば、クロロ、ブロモまたはフルオロなど;ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシル;または、さらに置換され得る基、例えば、アルキル(直鎖アルキルまたは分枝鎖アルキルまたは環状アルキルを含む)、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、t−ブチル、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)プロピルおよびテトラデシルなど;アルケニル、例えば、エチレン、2−ブテンなど;アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2−メトキシエトキシ、sec−ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシおよび2−ドデシルオキシエトキシなど;アリール、例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、ナフチルなど;アリールオキシ、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、α−ナフチルオキシまたはβ−ナフチルオキシ、および4−トリルオキシなど;カルボンアミド、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α−(3−ペンタデシルフェノキシ)ヘキサンアミド、α−(4−ヒドロキシ−3−ブチルフェノキシ)テトラデカンアミド、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−5−テトラデシルピロリン−1−イル、N−メチルテトラデカンアミド、N−スクシンイミド、N−フタルイミド、2,5−ジオキソ−1−オキサゾリジニル、3−ドデシル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリルおよびN−アセチル−N−ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5−(ジ−t−ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p−ドデシルフェニルカルボニルアミノ、p−トリルカルボニルアミノ、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−メチル−N−ドデシルウレイド、N−ヘキサデシルウレイド、N,N−ジオクタデシルウレイド、N,N−ジオクチル−N’−エチルウレイド、N−フェニルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド、N−フェニル−N−p−トリルウレイド、N−(m−ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N−(2,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−N’−エチルウレイド、およびt−ブチルカルボンアミドなど;スルホンアミド、例えば、メチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トリルスルホンアミド、p−ドデシルベンゼンスルホンアミド、N−メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノおよびヘキサデシルスルホンアミドなど;スルファモイル、例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−[3−(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N−メチル−N−テトラデシルスルファモイルおよびN−ドデシルスルファモイルなど;カルバモイル、例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N−メチル−N−テトラデシルカルバモイルおよびN,N−ジオクチルカルバモイルなど;アシル、例えば、アセチル、(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p−ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3−ペンタデシルオキシカルボニルおよびドデシルオキシカルボニルなど;スルホニル、例えば、メトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2−エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4−ノニルフェニルスルホニルおよびp−トリルスルホニルなど;スルホニルオキシ、例えば、ドデシルスルホニルオキシおよびヘキサデシルスルホニルオキシなど;スルフィニル、例えば、メチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4−ノニルフェニルスルフィニルおよびp−トリルスルフィニルなど;チオ、例えば、エチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオおよびp−トリルチオなど;アシルオキシ、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p−ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチルカルバモイルオキシおよびシクロヘキシルカルボニルオキシなど;アミン、例えば、フェニルアニリノ、2−クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミンなど;イミノ、例えば、1(N−フェニルイミトド)エチル、N−スクシンイミドまたは3−ベンジルヒダントイニルなど;ホスファート、例えば、ジメチルホスファートおよびエチルブチルホスファートなど;ホスフィト、例えば、ジエチルホスフィトおよびジヘキシルホスフィトなど;複素環基、複素環オキシ基または複素環チオ基(これらはそれぞれが置換され得るか、また、炭素原子と、酸素、窒素、イオウ、リンまたはホウ素からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とから構成される3員〜7員の複素環状環(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ベンゾイミダゾリルオキシまたは2−ベンゾチアゾリルなど)を含有する);第四級アンモニウム、例えば、トリエチルアンモニウムなど、第四級ホスホニウム、例えば、トリフェニルホスホニウムなど;ならびに、シリルオキシ、例えば、トリメチルシリルオキシなど。
【0048】
所望されるならば、置換基は、自体が、記載された置換基により1回または多数回さらに置換され得る。使用される特定の置換基を、具体的な適用のための所望される望ましい性質を得るために当業者によって選択することができ、そのような置換基には、例えば、電子吸引基、電子供与基および立体障害基が含まれ得る。分子が2つ以上の置換基を有し得るとき、別途示されない限り、置換基は一緒になって、縮合環などの環を形成することができる。一般に、上記の基およびその置換基には、48個までの炭素原子を有するもの、典型的には、1個〜36個の炭素原子を有するもの、通常的には、24個未満の炭素原子を有するものが含まれ得る。しかし、それよりも大きい数が、選択された具体的な置換基に依存して可能である。
【0049】
一般的なデバイス構造
本発明は、小分子物質、オリゴマー物質、ポリマー物質、または、それらの組合せを使用する多くのOLEDデバイス形態において用いることができる。これらは、1つだけのアノードおよびカソードを含む非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(例えば、画素を形成するために直交配列のアノードおよびカソードから構成される受動型マトリックスディスプレー、ならびに、各画素が、例えば、薄膜トランジスター(TFT)により独立して制御される能動型マトリックスディスプレーなど)に及ぶ。
【0050】
本発明が問題なく実行され得る有機層の無数の形態が存在する。OLEDの不可欠な要件は、アノード、カソード、および、アノードとカソードとの間に配置された有機発光層である。さらなる層を、下記においてより詳細に記載されるように用いることができる。
【0051】
本発明による典型的な構造で、小分子デバイスのために特に有用な構造が図1に示され、これは、基板101、アノード103、正孔注入層105、正孔輸送層107、発光層109、正孔阻止層110、電子輸送層111およびカソード113から構成される。これらの層は下記において詳しく記載される。基板101は、代替として、カソード113に隣接して設置され得るか、あるいは、基板101は、実際には、アノード103またはカソード113を構成し得ることに留意すること。アノード103とカソード113との間の有機層が、便宜上、有機ELエレメントとして示される。また、これら有機層の一緒になった全体の厚さは望ましくは500nm未満である。
【0052】
OLEDのアノード103およびカソード113は電気伝導体を介して電圧/電流源に接続される。OLEDは、アノード103がカソード113よりも正の電位であるようにアノード103とカソード113との間に電位を加えることによって作動する。正孔がアノード103から有機ELエレメント内に注入され、電子がカソード113から有機ELエレメント内に注入される。OLEDが、ACサイクルにおけるある期間にわたって、電位バイアスが逆になり、電流が流れないACモードで作動させられるとき、高まったデバイス安定性がときには達成され得る。AC駆動によるOLEDの一例が米国特許第5,552,678号に記載される。
【0053】
基板
本発明のOLEDデバイスは、典型的には、カソード113またはアノード103のいずれかが基板と接触して存在し得る支持基板101の上に提供される。基板101と接触している電極は、便宜上、下部電極として示される。従来、下部電極はアノード103であり、しかし、本発明はそのような形態に限定されない。基板101は、意図された発光方向に依存して、光透過性または不透明のいずれかであり得る。光透過性の性質が、基板101を通してEL放射を見るためには望ましい。透明なガラスまたはプラスチックがそのような場合において一般に用いられる。基板101は、多数の物質層を含む複雑な構造が可能である。これは、典型的には、TFTがOLED層の下側に提供される能動型マトリックス基板については当てはまる。基板101は、少なくとも発光性の画素化領域では、ガラスまたはポリマーなどの一般に透明な物質から構成されることがさらに必要である。EL放射が上部電極を通して見られる適用については、下部支持体の透過性特性は重要でなく、従って、基板は、光透過性、光吸収性または光反射性であることが可能である。この場合において使用される基板には、ガラス、プラスチック、半導体材料(例えば、シリコンなど)、セラミックス、および、回路ボード材料が含まれるが、これらに限定されない。再度ではあるが、基板101は、例えば、能動型マトリックスTFT設計において見出されるように、多数の物質層を含む複雑な構造が可能である。これらのデバイス形態では、光に対して透明な上部電極を備えることが必要である。
【0054】
アノード
所望されるエレクトロルミネセンス光放射(EL)がアノードを通して見られるとき、アノード103は、目的とする放射に対して透明または実質的に透明でなければならない。本発明において使用される一般的な透明なアノード物質は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)および酸化スズであり、しかし、他の金属酸化物も機能し得る、そのような他の金属酸化物には、アルミニウムまたはインジウムがドープされた酸化亜鉛、マグネシウムインジウム酸化物およびニッケルタングステン酸化物が含まれるが、これらに限定されない。これらの酸化物に加えて、金属窒化物(例えば、窒化ガリウムなど)および金属セレン化物(例えば、セレン化亜鉛など)および金属硫化物(例えば、硫化亜鉛など)をアノード103として使用することができる。EL放射がカソード113を通してのみ見られる適用については、アノード103の透過性の特性は重要でなく、任意の導電性材料を、透明、不透明または反射性であっても、使用することができる。この適用のための例示的な導電体には、金、イリジウム、モリブデン、パラジウムおよび白金が含まれるが、これらに限定されない。典型的なアノード物質は、透過性またはそうでない場合でも、4.1eV以上の仕事関数を有する。所望のアノード物質は、一般には、任意の好適な手段によって、例えば、エバポレーション、スパッタリング、化学気相蒸着または電気化学的手段によって設置される。アノードは、周知のフォトリソグラフィープロセスを使用してパターン化することができる。必要に応じて、アノードは、表面粗さを低下させ、その結果、短絡を最小限に抑えるようにするために、または、反射性を高めるようにするために、他の層を適用する前に研磨することができる。
【0055】
カソード
光放射がアノード103を通してだけ見られるとき、本発明において使用されるカソード113は、ほぼ任意の導電性物質から構成され得る。望ましい物質は、その下に存在する有機層との良好な接触を確保するために良好な薄膜形成性を有し、また、低い電圧での電子注入を促進させ、また、良好な安定性を有する。有用なカソード物質はまた、低い仕事関数の金属(4.0eV未満)または合金を含有する。1つの有用なカソード物質が、米国特許第4,885,221号に記載されるように、銀の割合が1%〜20%の範囲にあるMg:Ag合金から構成される。別の好適なクラスのカソード物質には、カソードおよび薄い電子注入層(EIL)を有機層(例えば、電子輸送層(ETL))と接触して含み、カソードが導電性金属のより厚い層により被覆される二層系が含まれる。この場合、EILは、好ましくは、低い仕事関数の金属、または、低い仕事関数の金属の塩を含み、そうである場合、より厚い被覆層は低い仕事関数を有する必要はない。1つのそのようなカソードが、米国特許第5,677,572号に記載されるように、LiFの薄い層、それに続くAlのより厚い層から構成される。アルカリ金属がドープされたETL物質(例えば、LiがドープされたAlq)は有用なEILの別の一例である。他の有用なカソード物質群には、米国特許第5,059,861号、同第5,059,862号および同第6,140,763号に開示されるカソード物質群が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
光放射がカソードを通して見られるとき、カソード113は透明またはほぼ透明でなければならない。そのような適用のために、材料は薄くなければならず、あるいは、透明な導電性の酸化物、または、これらの物質の組合せを使用しなければならない。場合により透明なカソードが、米国特許第4,885,211号、米国特許第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、米国特許第5,703,436号、米国特許第5,608,287号、米国特許第5,837,391号、米国特許第5,677,572号、米国特許第5,776,622号、米国特許第5,776,623号、米国特許第5,714,838号、米国特許第5,969,474号、米国特許第5,739,545号、米国特許第5,981,306号、米国特許第6,137,223号、米国特許第6,140,763号、米国特許第6,172,459号、欧州特許第1076368号、米国特許第6,278,236号および米国特許第6,284,3936号においてより詳しく記載される。カソード物質は、典型的には、任意の好適な手段によって、例えば、エバポレーション、スパッタリングまたは化学気相蒸着によって設置される。必要なときには、パターン化を、スルーマスク蒸着、米国特許第5,276,380号および欧州特許第0732868号に記載されるようなインテグラルシャドーマスキング、レーザーアブレーション、ならびに、選択的化学気相蒸着(これらに限定されない)をはじめとする多くの周知の方法によって達成することができる。
【0057】
正孔注入層(HIL)
正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107との間に備えることができる。正孔注入物質は、続く有機層の薄膜成形特性を改善するために、また、正孔輸送層107内への正孔の注入を容易にするために役立ち得る。正孔輸送層105において使用される好適な物質には、米国特許第4,720,432号に記載されるようなポルフィリン系化合物、米国特許第6,208,075号に記載されるようなプラズマ蒸着されたフルオロカーボンポリマー、および、ある種の芳香族アミン、例えば、MTDATA(4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン)が含まれるが、これらに限定されない。有機ELデバイスにおいて有用であるとして報告される代わりの正孔注入物質が欧州特許EP0891121A1および同EP1029909A1に記載される。正孔注入層は本発明において好都良く使用され、望ましくは、プラズマ蒸着されたフルオロカーボンポリマーである。プラズマ蒸着されたフルオロカーボンポリマーを含有する正孔注入層の厚さは0.2nm〜200nmの範囲が可能であり、好適には0.3nm〜1.5nmの範囲が可能である。
【0058】
正孔輸送層(HTL)
必ずしも常に必要ではないが、OLEDデバイスにおいて正孔輸送層を含むことは多くの場合において有用である。有機ELデバイスの正孔輸送層107は、少なくとも1つの正孔輸送化合物、例えば、芳香族第三級アミンなどを含有し、この場合、後者は、炭素原子(そのうちの少なくとも1つが芳香族環の構成原子である)にだけ結合する少なくとも1つの三価の窒素原子を含有する化合物であることが理解される。1つの形態において、芳香族第三級アミンはアリールアミンが可能であり、例えば、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミンまたはポリマー状アリールアミンなどが可能である。例示的なモノマー状トリアリールアミンがKlupfelらの米国特許第3,180,730号によって記載される。1つまたは複数のビニル基により置換され、かつ/または、少なくとも1つの活性水素含有基を含む他の好適なトリアリールアミンが、Brantleyらの米国特許第3,567,450号および米国特許第3,658,520号によって開示される。
【0059】
より好ましいクラスの芳香族第三級アミンは、米国特許第4,720,432号および米国特許第5,061,569号に記載されるように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン成分を含む芳香族第三級アミンである。そのような化合物には、下記の構造式(A)により表される化合物が含まれる。
【化12】

(式中、Q1およびQ2は、独立して選択された芳香族第三級アミン成分であり、Gは連結基であり、例えば、炭素−炭素結合のアリーレン基、シクロアルキレン基またはアルキレン基などである)。1つの実施形態において、Q1またはQ2の少なくとも1つが多環縮合環構造(例えば、ナフタレン構造)を含有する。Gがアリール基であるとき、Gは、好都合には、フェニレン成分、ビフェニレン成分またはナフタレン成分である。
【0060】
構造式(A)を満たし、かつ、2つのトリアリールアミン成分を含有する有用なクラスのトリアリールアミンが下記の構造式(B)によって表される。
【化13】

(式中、
1およびR2は、それぞれが独立して、水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、あるいは、R1およびR2は一緒になって、シクロアルキル基を完成させる原子を表す;かつ
3およびR4は、それぞれが独立してアリール基を表し、これは、下記の構造式(C)によって示されるようなジアリール置換されたアミノ基:
【化14】

(式中、R5およびR6は、独立して選択されたアリール基である)
により置換される)。1つの実施形態において、R5またはR6の少なくとも1つが多環縮合環構造(例えば、ナフタレン構造)を含有する。
【0061】
別のクラスの芳香族第三級アミンはテトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、アリーレン基により連結されたな2つのジアリールアミノ基(例えば、構造式(C)によって示されるジアリールアミノ基など)を含む。有用なテトラアリールジアミンには、下記の式(D)により表されるテトラアリールジアミンが含まれる。
【化15】

(式中、
各Areは、独立して選択されたアリーレン基(例えば、フェニレン成分またはアントラセン成分など)であり、
nは1〜4の整数であり、かつ
Ar、R7、R8およびR9は、独立して選択されたアリール基である)。
【0062】
典型的な実施形態において、Ar、R7、R8およびR9の少なくとも1つが多環縮合環構造(例えば、ナフタレン構造)である。
【0063】
前記の構造式(A)、構造式(B)、構造式(C)、構造式(D)の様々なアルキル成分、アルキレン成分、アリール成分およびアリーレン成分はそれぞれがさらに置換され得る。典型的な置換基には、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基およびハロゲン(例えば、フルオリド、クロリドおよびブロミドなど)が含まれる。様々なアルキル成分およびアルキレン成分は、典型的には、約1個〜6個の炭素原子を含有する。シクロアルキル成分は3個〜約10個の炭素原子を含有することができ、しかし、典型的には、5個、6個または7個の環炭素原子を含有することができ、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルの環構造を含有することができる。アリール成分およびアリーレン成分は通常的にはフェニル成分およびフェニレン成分である。
【0064】
正孔輸送層は、1つだけの芳香族第三級アミン化合物から、または、そのような化合物の混合物から形成され得る。具体的には、トリアリールアミン(例えば、式(B)を満たすトリアリールアミンなど)を、テトラアリールジアミン(例えば、式(D)によって示されるテトラアリールジアミンなど)との組合せで用いることができる。有用な芳香族第三級アミンの例示には、下記の化合物がある。
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’’’−ジアミノ−1,1’:4’、1’’:4’’,1’’’−クアテルフェニル;
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;
1,4−ビス[2−4−[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB);
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル;
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル;
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル;
N−フェニルカルバゾール;
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB);
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB);
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル;
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン;
4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル;
4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル;
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン;
2,6−ビス[ジ(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン;
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフタセニル)アミノ]ナフタレン;
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’’−ジアミノ−p−テルフェニル;
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)フェニル]アミノ}ビフェニル;
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミノ]フルオレン;
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA);
4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0065】
別のクラスの有用な正孔輸送物質には、欧州特許第1009041号に記載されるような多環芳香族化合物が含まれる。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミンを使用することができ、そのようなアミンには、オリゴマー物質が含まれる。加えて、ポリマー状の正孔輸送物質を使用することができる(例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、および、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホナート)(これはまたPEDOT/PSSと呼ばれる)などの共重合体など)。
【0066】
正孔輸送層が、異なる組成の2つ以上の部分層を含むこともまた可能である。
【0067】
正孔輸送層の厚さは10nm〜約500nmの間が可能であり、好適には50nm〜300nmの間が可能である。
【0068】
発光層(LEL)
リン光発光物質と、ホスト物質と、効率向上物質とを含む本発明の発光層は以前に記載されている。
【0069】
蛍光発光物質および蛍光発光層(LEL)
本発明のリン光性物質に加えて、蛍光性物質を含む他の発光物質を同じ層または別個の層でOLEDデバイスにおいて使用することができる。用語「蛍光(性)」は、任意の発光物質を記載するために一般的に使用されるが、本発明では、光を一重項励起状態から放射する物質を示す。蛍光性物質を、リン光性物質と同じ層で、または、隣接する層で、または、隣接する画素で、または、任意の組合せで使用することができる。本発明のリン光性物質の性能に有害な影響を与える物質を選択しないように注意しなければならない。当業者は、リン光性物質と同じ層または隣接する層における物質の濃度および三重項エネルギーが、リン光の好ましくない消光を防止するように適切に設定されなければならないことを理解する。
【0070】
米国特許第4,769,292号および同第5,935,721号においてより詳しく記載されるように、有機ELエレメントの発光層(LEL)は、エレクトロルミネセンスが電子−正孔対の再結合の結果として生じる蛍光性またはリン光性の発光物質を含む。発光層は1つだけの物質から構成され得るが、より一般的には、光の放射が主にゲストの発光物質に由来し、かつ、任意の色が可能である、ゲストの発光物質(1つまたは複数)がドープされたホスト物質からなる。発光層におけるホスト物質は、下記で規定されるような電子輸送物質、上記で規定されるような正孔輸送層、あるいは、正孔−電子の再結合を支援する別の物質、または、正孔−電子の再結合を支援する物質の組合せが可能である。蛍光放射物質は典型的にはホスト物質の0.01質量%〜10質量%で含まれる。
【0071】
ホスト物質および発光物質は小さい非ポリマー分子またはポリマー物質(例えば、ポリフルオレンおよびポリビニルアリーレン(例えば、ポリ(p−フェニレンビニリレン)、PPV)など)が可能である。ポリマーの場合、小分子の発光物質を、ポリマー状ホストに分子的に分散させることができ、または、小分子の発光物質を、微量構成成分をホストポリマー内に共重合することによって加えることができる。ホスト物質を、薄膜形成、電気的特性、発光効率、作動寿命または製造性を改善するために一緒に混合することができる。ホストは、良好な正孔輸送特性を有する物質、および、良好な電子輸送特性を有する物質を含むことができる。
【0072】
蛍光性物質をゲストの発光物質として選ぶための重要な関係性は、ホスト物質および蛍光性物質の一重項エネルギーの比較である。蛍光性物質の一重項エネルギーがホスト物質の一重項エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。
【0073】
有用であることが知られているホスト物質および発光物質には、米国特許第4,768,292号、米国特許第5,141,671号、米国特許第5,150,006号、米国特許第5,151,629号、米国特許第5,405,709号、米国特許第5,484,922号、米国特許第5,593,788号、米国特許第5,645,948号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,755,999号、米国特許第5,928,802号、米国特許第5,935,720号、米国特許第5,935,721号および米国特許第6,020,078号に開示されるような物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
8−ヒドロキシキノリンおよび類似する誘導体の金属錯体(これはまた、金属キレート形成オキシノイド化合物(式E)として知られている)は、エレクトロルミネセンスを支援することができる有用なホスト化合物の1つのクラスを構成しており、500nmよりも長い波長の光放射(例えば、緑色、黄色、オレンジ色および赤色)のために特に好適である。
【0075】
【化16】

式中、
Mは金属を表す;
nは1〜4の整数である;かつ
Zは独立してそれぞれの存在において、少なくとも2つの縮合芳香族環を有する核を完成させる原子を表す)。
【0076】
前記から、金属が、一価、二価、三価または四価の金属であり得ることが明らかである。金属は、例えば、アルカリ金属、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなど;アルカリ土類金属、例えば、マグネシウムまたはカルシウムなど;三価金属、例えば、アルミニウムまたはガリウム、あるいは別の金属(亜鉛またはジルコニウムなど)などが可能である。一般に、有用なキレート形成金属であることが知られている任意の一価、二価、三価または四価の金属を用いることができる。
【0077】
Zは、少なくとも2つの縮合芳香族環(そのうちの少なくとも1つがアゾール環またはアジン環である)を含有する複素環核を完成させる。さらなる環(これには、脂肪族環および芳香族環の両方が含まれる)を、必要とされるならば、これら2つの要求される環と縮合させることができる。機能を向上させることなく分子的嵩張りを加えることを避けるために、環原子の数は、通常の場合、18個以下で維持される。
【0078】
有用な金属キレート形成オキシノイド化合物の例示には、下記の化合物がある。
CO−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]、
CO−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]、
CO−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト]亜鉛(II)、
CO−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、
CO−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム]、
CO−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]、
CO−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]、
CO−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]、
CO−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0079】
9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンの誘導体(式F)は、エレクトロルミネセンスを支援することができる有用なホスト物質の1つのクラスを構成しており、400nmよりも長い波長の光放射(例えば、青色、緑色、黄色、オレンジ色または赤色)のために特に好適である。
【化17】

式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は、各環における1つまたは複数の置換基を表し、この場合、各置換基は下記の群から個々に選択される。
群1:水素、または、炭素原子が1個〜24個のアルキル;
群2:炭素原子が5個〜20個のアリールまたは置換されたアリール;
群3:アントラセニル;ピレニルまたはペリレニルの縮合芳香族環を完成させるために必要な4個〜24個の炭素原子;
群4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルまたは他の複素環系の縮合ヘテロ芳香族環を完成させるための、必要に応じた炭素原子が5個〜24個のヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
群5:炭素原子が1個〜24個のアルコキシアミノ、アルキルアミノまたはアリールアミノ;および
群6:フッ素、塩素、臭素またはシアノ。
【0080】
例示的な例には、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンおよび2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンが含まれる。9,10−ビス[(4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンの誘導体をはじめとする他のアントラセン誘導体がLELにおけるホストとして有用であり得る。
【0081】
ベンゾアゾール誘導体(式G)は、エレクトロルミネセンスを支援することができる有用なホスト物質の別のクラスを構成しており、400nmよりも長い波長の光放射(例えば、青色、緑色、黄色、オレンジ色または赤色)のために特に好適である。
【化18】

式中、
nは3〜8の整数である;
Zは、O、NRまたはSである;かつ
RおよびR’は個々に、水素;炭素原子が1個〜24個のアルキル、例えば、プロピル、t−ブチル、ヘプチルなど;炭素原子が5個〜20個のアリールまたはヘテロ原子置換されたアリール、例えば、フェニルおよびナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、ならびに他の複素環系など;または、ハロ、例えば、クロロ、フルオロなど;あるいは、縮合芳香族環を完成させるために必要な原子である;かつ
Lは、多数のベンゾアゾールを一緒につなぐアルキル、アリール、置換アルキルまたは置換アリールからなる連結ユニットである。Lは多数のベンゾアゾールと共役することができ、または、ベンゾアゾールと共役していなくてもよい。有用なベンゾアゾールの一例が2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール]である。
【0082】
米国特許第5,121,029号および日本国特許第08333569号に記載されるようなスチリルアリーレン誘導体もまた、青色放射のための有用なホストである。例えば、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンおよび4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)は青色放射のための有用なホストである。
【0083】
有用な蛍光発光物質には、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミンおよびキナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物およびチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、ならびに、カルボスチリル化合物が含まれるが、これらに限定されない。有用な物質の例示的な例には、下記の化合物が含まれるが、これらに限定されない:
【0084】
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0085】
正孔阻止層(HBL)
好適なホストに加えて、リン光性物質を用いるOLEDデバイスは、多くの場合、励起子または再結合事象を、ホスト物質およびリン光性物質を含む発光層に制限するために、電子輸送層111と発光層109との間に設置された少なくとも1つの正孔阻止層110を必要とする。この場合、ホストから正孔阻止層内への正孔移動についてのエネルギー障壁が存在しなければならず、一方で、電子が正孔阻止層から、ホスト物質およびリン光性物質を含む発光層の中に容易に通過しなければならない。最初の要件は、正孔阻止層110のイオン化ポテンシャルが発光層109のイオン化ポテンシャルよりも大きいこと(好ましくは0.2eV以上大きいこと)を必要とする。第2の要件は、正孔阻止層110の電子親和性が発光層109の電子親和性を大きく超えないこと(好ましくは、発光層の電子親和性よりも小さいこと、あるいは、約0.2eVを超える差で発光層の電子親和性を超えないこと)を必要とする。
【0086】
正孔阻止物質の三重項エネルギーがリン光性物質の三重項エネルギーよりも大きいことが、絶対的には要求されないが、さらに望ましく、また、正孔阻止物質の三重項エネルギーがホスト物質の三重項エネルギーよりも大きいことがさらに一層望ましい。好適な正孔阻止物質が国際特許出願公開WO00/70655A2および同WO01/93642A1に記載される。有用な正孔阻止物質の2つの例がバソクプロイン(BCP)およびビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAIq)である。BAlq以外の金属錯体もまた、米国特許出願公開20030068528に記載されるように、正孔および励起子を阻止することが知られている。加えて、米国特許出願公開20030175553A1は、fac−トリス(1−フェニルピラゾラト−N,C2’)イリジウム(III)(Irppz)をこの目的のために使用することを記載する。
【0087】
正孔阻止層が使用されるとき、その厚さは2nm〜100nmの間が可能であり、好ましくは5nm〜10nmの間が可能である。
【0088】
電子輸送層(ETL)
本発明の有機ELデバイスの電子輸送層111を構築する際に使用される好ましい薄膜形成物質は、オキシン自体(これは一般には8−キノリノールまたは8−ヒドロキシキノリンとも呼ばれている)のキレートを含めて、金属キレート形成オキシノイド化合物である。そのような化合物は、電子を注入し、かつ、電子を輸送することを助け、これにより高レベルの性能を示し、また、薄い薄膜の形態で容易に製造される。意図されるオキシノイド化合物の例示には、以前に記載された構造式(E)を満たす化合物がある。
【0089】
電子輸送層111における使用のために好適な他の電子輸送物質には、米国特許第4,356,429号に開示されるような様々なブタジエン誘導体、および、米国特許第4,539,507号に記載されるような様々な複素環蛍光増白剤が含まれる。構造式(G)を満たすベンゾアゾール系化合物もまた、有用な電子輸送物質である。トリアジン系化合物もまた、電子輸送物質として有用であることが知られている。
【0090】
正孔阻止層110および電子輸送層111の両方が使用されるならば、電子は電子輸送層111から正孔阻止層110内に容易に通過するに違いない。従って、電子輸送層111の電子親和性は正孔阻止層110の電子親和性を大きく超えてはならない。好ましくは、電子輸送層の電子親和性は正孔阻止層の電子親和性よりも小さくなければならず、または、約0.2eVを超える差で正孔阻止層の電子親和性を超えてはならない。
【0091】
電子輸送層が使用されるならば、その厚さは2nm〜100nmの間が可能であり、好ましくは5nm〜20nmの間が可能である。
【0092】
他の有用な有機層およびデバイス構造
リン光性物質を用いるOLEDデバイスは、電子−正孔の再結合事象および生じる励起子を、ホスト物質およびリン光性物質を含む発光層109に制限することを助けるために、発光層109に隣接してアノード側に設置される励起子阻止層を含むことができる。励起子阻止層は、本出願の最初の段落において特定される同時継続中の特許出願(その内容は本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、少なくとも1×10-3cm2-1-1の正孔移動度と、LELの光放射物質の三重項エネルギーを超える三重項エネルギーとを有する化合物を含有することができる。
【0093】
場合により、層109〜層111は、必要に応じて、発光および電子輸送の両方を支援する機能を果たす1つの層に折り畳むことができる。層110および層111もまた、正孔または励起子を阻止し、かつ、電子輸送を支援するように機能する1つの層に折り畳むことができる。発光物質が正孔輸送層107に含められ得ることもまた当分野では知られている。その場合、正孔輸送物質はホストとして役立ち得る。多数の物質を、例えば、青色発光物質および黄色発光物質を組み合わせることによって、または、シアン色発光物質および赤色発光物質を組み合わせることによって、または、赤色発光物質、緑色発光物質および青色発光物質を組み合わせることによって白色発光OLEDを作製するために、1つまたは複数の層に加えることができる。白色発光デバイスが、例えば、欧州特許第1187235号、米国特許出願公開20020025419、欧州特許第1182244号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,503,910号、米国特許第5,405,709号および米国特許第5,283,182号に記載され、また、ある色の放射をもたらすために、好適なフィルター配置を備えることができる。
【0094】
本発明は、例えば、米国特許第5,703,436号および米国特許第6,337,492号に教示されるように、いわゆる積み重ねデバイス構造において使用することができる。
【0095】
有機層の設置
上記で述べられた有機物質は、有機物質の形態について好適な任意の手段によって好適に設置される。小分子の場合、小分子は、好都合には、昇華またはエバポレーションによって設置され、しかし、他の手段によって設置することができ、例えば、薄膜形成を改善するための必要に応じて使用される結合剤と一緒に溶媒からのコーティングなどによって設置することができる。物質がポリマーであるならば、溶媒からのコーティングが通常の場合には好ましい。昇華によって設置される物質は、例えば、米国特許第6,237,529号に記載されるように、タンタル材から多くの場合には構成される昇華装置「ボート」から気化させることができ、または、最初に供与体シートにコーティングし、次いで、基板のより近い近傍で昇華させることができる。物質の混合物を有する層では、別個の昇華装置ボートを利用することができ、あるいは、物質を予備混合し、1つのボートまたは供与体シートからコーティングすることができる。パターン化された設置を、シャドーマスク、インテグラルシャドーマスク(米国特許第5,294,870号)、供与体シートからの空間的に規定された感熱色素転写(米国特許第5,688,551号、米国特許第5,851,709号および米国特許第6,066,357号)、またはインクジェット法(米国特許第6,066,357号)を使用して達成することができる。
【0096】
封入
ほとんどのOLEDデバイスは水分または酸素または両者に対して敏感であり、従って、一般には、乾燥剤(例えば、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、または、ハロゲン化金属および過塩素酸金属など)と一緒に、不活性な雰囲気(例えば、窒素またはアルゴンなど)において封止される。封入および乾燥のための方法には、米国特許第6,226,890号に記載される様々な方法が含まれるが、これらに限定されない。加えて、バリア層(例えば、SiOx、テフロン(登録商標)、交互に存在する無機/ポリマー層など)が、封入のために当分野では知られている。封止または封入および乾燥のこれらの方法はどれも、本発明に従って構築されるELデバイスとともに使用することができる。
【0097】
光学的最適化
本発明のOLEDデバイスは、所望されならば、その発光特性を高めるために、様々な周知の光学的効果を用いることができる。層の厚さを最適化して、最大限の光透過を得ること、誘電性ミラー構造を提供すること、反射性電極を光吸収電極で置き換えること、グレア防止コーティングまたは反射防止コーティングをディスプレー上に提供すること、偏光性媒体をディスプレー上に提供すること、あるいは、有色フィルター、減光フィルターまたは色変換フィルターをディスプレー上に提供することが含まれる。フィルター、偏光板、および、グレア防止コーティングまたは反射防止コーティングを、ELデバイス上に、またはELデバイスの一部として特に備えることができる。
【0098】
本発明の様々な実施形態は様々な好都合な特徴(例えば、より大きい発光収率および出力効率など)を提供することができる。本発明において有用な有機金属化合物の様々な実施形態は、(多色ディスプレーを提供するために直接的に、または、フィルターを介して)白色光の放射において有用な色相を含む広範囲の色相を提供することができる。本発明の実施形態はまた、面照明デバイスを提供することができる。
【0099】
本発明およびその利点を下記の実施例によって一層十分に理解することができる。
【実施例】
【0100】
デバイス例1
本発明の要件を満たすELデバイス(デバイス1)を下記の様式で構築した:
1.アノードとしてインジウムスズ酸化物(ITO)の約85nmの層がコーティングされたガラス基板を、順次、市販の界面活性剤において超音波処理し、脱イオン水で洗浄し、トルエン蒸気中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間さらした。
2.ITO上に、1nmのフルオロカーボン(CFx)の正孔注入層(HIL)をCHF3のプラズマ支援蒸着によって設置した。
3.その後、厚さが75nmであるN,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル(NPB)の正孔輸送層(HTL)を抵抗加熱によるタンタルボートからエバポレーションした。
4.その後、ホストとしての4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)と、リン光性ゲスト物質としての6wt%でのfac−トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)[すなわち、Ir(ppy)3]と、効率向上物質としての1wt%の4,4’,4’’−トリス[N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)とからなる35nmの発光層(LEL)を正孔輸送層の上に設置した。これらの物質はタンタルボートから同時にエバポレーションされた。
5.その後、厚さが10nmであるビス(2−メチルキノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)の正孔阻止層(HBL)を別のタンタルボートからエバポレーションした。
6.その後、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)の40nmの電子輸送層(ETL)を発光層上に設置した。この物質もまた、タンタルボートからエバポレーションした。
7.Alq層の上に、10:1(体積比)のMgおよびAgから形成される220nmのカソードを設置した。
【0101】
上記シーケンスにより、ELデバイスの設置を完了した。その後、デバイスを、乾燥剤と一緒に、周囲環境から保護するために、乾燥グローブボックスにおいて気密包装した。
【0102】
デバイス例2〜5
本発明の要件を満たすデバイス例2〜4を、LELにおけるMTDATAの濃度(これは発光層の質量百分率として表される)が下記において表1に示される通りであったことを除いて、デバイス1と同一の様式で製造した。本発明の要件を満たさない比較用デバイス5を、MTDATAがLELに含まれなかったことを除いて、デバイス1と同一の様式で製造した。
【0103】
このようにして形成されたデバイスを6mA/cm2の動作電流密度で効率および色について調べた。1931 CIE(国際照明委員会)座標(CIExおよびCIEy)を含めて、その結果を表1に報告する。感知された放射色は緑色であった。
【0104】
【表1】

【0105】
上記で議論されたように、MTDATAは、効率向上物質が本発明に従ってリン光性物質としてのIr(ppy)3およびホスト物質としてのCBPとともに使用されるための基準を満たしている。従って、MTDATAをLELにおいて効率向上物質として含むデバイス1〜4は本発明に従って構築されている。表1から理解され得るように、デバイス1〜4は、デバイス5(これは効率向上物質を有さず、従って、本発明に従って構成されていない)に対して優れた発光収率および出力効率を示している。その上、効率が、効率向上物質を3質量%〜10質量%の好適な範囲で含有するデバイス3については最大であった。
【0106】
本明細書において示される特許および他の刊行物の内容全体は参考として本明細書中に組み込まれる。本発明は、その特定の好ましい実施形態を特に参照することにより詳細に記載されており、しかし、様々な変化および改変が本発明の精神および範囲において行われ得ることが理解される。
【符号の説明】
【0107】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
110 正孔阻止層(HBL)
111 電子輸送層(ETL)
113 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、それらの間に配置された発光層(LEL)とを含み、前記発光層が、リン光性ゲスト物質と、正孔および電子を輸送するホスト物質と、ホスト物質のイオン化ポテンシャルよりも低いイオン化ポテンシャル、および、リン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも最大で0.2eV低い三重項エネルギーレベルを有する効率向上物質とを含むエレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項2】
効率向上物質がリン光性ゲスト物質の三重項エネルギーレベルよりも高い三重項エネルギーレベルを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
効率向上物質が発光性でない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
リン光性ゲスト物質が緑色光を放出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
リン光性ゲスト物質が赤色光を放出する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
リン光性ゲスト物質が、第5列目の遷移金属を含む有機金属化合物である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
金属がイリジウムまたは白金である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
有機金属化合物が、sp2炭素およびヘテロ原子を介して金属に配位することができる配位子を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
配位子がフェニルピリジン基である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
有機金属化合物が、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)白金(II)、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)およびトリス(3−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)の群から選ばれる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
効率向上物質が発光層の1質量%〜30質量%の濃度で存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
効率向上物質が発光層の3質量%〜10質量%の濃度で存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
リン光性ゲスト物質が発光層の1質量%〜20質量%の濃度で存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
リン光性ゲスト物質が発光層の3質量%〜10質量%の濃度で存在する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
効率向上物質が第三級芳香族アミンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
効率向上物質が、連結基により連結された2つ以上のトリアリールアミン基を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
効率向上物質が、下記の式(2a)により表される化合物:
【化1】

(式中、
1およびR2は水素または置換基を表し、ただし、R1およびR2は一緒になって、環を形成することができる;
Ar1〜Ar4は、独立して選択された芳香族基を表す;
各Raは独立して、水素または独立して選択された置換基を表す;かつ
各nは独立して、0〜4として選択される)
である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
効率向上物質が、下記の式(2b)により表される化合物:
【化2】

(式中、
Ar5〜Ar10は独立して芳香族基を表す;
各Rbは独立して、独立して選択された置換基を表す;かつ
各mは独立して、0〜4として選択される)
である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
効率向上物質が、
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−メチルシクロヘキサン;
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−3−フェニルプロパン;
4,4’,4’’−トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン;
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン;
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン;
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)エタン;
4−(4−ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン;および
4,4’−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン
から選ばれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
ホスト物質が、アリールアミン基含有化合物、トリアゾール基含有化合物、インドール基含有化合物およびカルバゾール基含有化合物から選択される化合物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
ホスト物質が、下記の式Iにより表されるカルバゾール化合物:
【化3】

(式中、Wは独立して、水素または独立して選択される置換基を表し、pは独立して0〜4であり、LAは連結基を表す)
を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
ホスト物質が、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル基含有化合物、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−2,2’−ジメチルビフェニル基含有化合物、1,3−ビス(N,N’−ジカルバゾール)ベンゼン基含有化合物およびポリ(N−ビニルカルバゾール)基含有化合物から選択されるいずれかを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
2種以上のホスト物質を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
白色光を放出するための手段を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
補色を放出することができる2種以上の化合物を含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
白色光を放出することができる化合物を含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
フィルター処理手段を含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
請求項1のエレクトロルミネセンスデバイスを含むディスプレー。
【請求項29】
請求項1のエレクトロルミネセンスデバイスを含む面照明デバイス。
【請求項30】
請求項1のデバイスに電位を加えることを含む発光方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−216893(P2011−216893A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114798(P2011−114798)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【分割の表示】特願2006−542641(P2006−542641)の分割
【原出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】