説明

添加型弾性繊維用改質剤、弾性繊維の製造方法及び弾性繊維

【課題】紡糸液中で高級脂肪酸金属塩等の固体微粒子が分離や沈降等を起こさず、また紡糸の際の口金孔の詰まりや糸切れを生じることもなく、優れた解舒性、精練性、ホットメルト接着剤との接着性等を有する高品質の弾性繊維を製造できる添加型弾性繊維用改質剤、かかる改質剤を用いる弾性繊維の製造方法及びかかる製造方法によって得られる弾性繊維を提供する。
【解決手段】添加型弾性繊維用改質剤として、特定の平滑剤成分と特定の含窒素化合物を所定割合で含有する特定の分散媒に特定の固体微粒子を所定割合でコロイド状に分散させたものを用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は添加型弾性繊維用改質剤、弾性繊維の製造方法及び弾性繊維に関する。ポリウレタン等の弾性繊維を紡糸するに際し、その紡糸原液に改質剤を添加することが行われる。本発明はかかる添加型弾性繊維用改質剤の改良に関し、また改良された添加型弾性繊維用改質剤を用いる弾性繊維の製造方法及びこの製造方法によって得られる弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のような添加型弾性繊維用改質剤として、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩を含有させたものが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、弾性繊維中にステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩を含ませると、弾性繊維のパッケージからの解舒性や走行性、更には糸どうしの膠着等が改善されるものの、添加剤中で高級脂肪酸金属塩が分離や沈降等を生じ易く、結果として均一な特性を有する弾性繊維を製造するのが難しいという問題があり、また高級脂肪酸金属塩によって紡糸の際の口金孔が詰まり易く、糸切れも発生し易い等の問題があって、更にホットメルト接着剤を使用して加工を行う場合には弾性繊維とホットメルト接着剤との接着性不良が起き易いという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−217227号公報
【特許文献2】特開2001−214332号公報
【特許文献3】特開2003−129376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、パッケージからの良好な解舒性を有し、糸どうしの膠着を防止しながら、紡糸液中で高級脂肪酸金属塩等の固体微粒子が分離や沈降等を起こさず、また紡糸の際の口金孔の詰まりや糸切れを生じることもなく、優れた精練性、ホットメルト接着剤との接着性等を有する高品質の弾性繊維を製造できる添加型弾性繊維用改質剤、かかる改質剤を用いる弾性繊維の製造方法及びかかる製造方法によって得られる弾性繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の平滑剤成分と特定の含窒素化合物とを所定割合で含有する特定の分散媒に特定の固体微粒子を所定割合で分散させた添加型弾性繊維用改質剤を用いることが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、弾性繊維を製造するための紡糸原液に添加して用いる添加型弾性繊維用改質剤であって、下記のA成分、B成分及びC成分から成り、且つ該A成分/該B成分=100/0.01〜100/30(質量比)の割合で含有し、また該A成分及び該B成分の合計/該C成分=100/0.01〜100/100(質量比)の割合で含有していて、該C成分がコロイド状に分散しており、下記の平均粒子径の測定方法により測定される平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする添加型弾性繊維用改質剤に係る。また本発明は、かかる添加型弾性繊維用改質剤を添加した紡糸原液を紡糸する弾性繊維の製造方法及びかかる製造方法により得られる弾性繊維に係る。
【0007】
A成分:鉱物油を50〜100質量%、またシリコーンオイル及び/又はエステル油を0〜50質量%(合計100質量%)の割合で含有し、且つ25℃における粘度が2×10−6〜1000×10−6/sの液体。
【0008】
B成分:下記の化1で示される含窒素化合物、化2で示される含窒素化合物、化3で示される含窒素化合物及び化4で示される含窒素化合物から選ばれる一つ又は二つ以上。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
化1〜化4において、
〜R:数平均分子量200〜8000のポリオレフィンから末端の1個の水素原子を除いた残基
〜X:炭素数2〜6のアルキレン基
,Y:炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は水素原子(但し、p=0の場合やr=0の場合は水素原子を除く)
p〜s:0〜10の整数
【0014】
C成分:ケイ素酸化物、下記の金属原子の酸化物、下記の金属原子の炭酸化物及び炭素数12〜22の脂肪酸の下記の金属原子の塩から選ばれる一つ又は二つ以上の固体微粒子
金属元素:ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、チタン、アルミニウム
【0015】
平均粒子径の測定方法:添加型弾性繊維用改質剤を、25℃における粘度が共に10×10−6/sであるポリジメチルシロキサンと鉱物油との1/1(質量比)の混合液を用いて、該添加型弾性繊維用改質剤中のC成分の濃度が1000mg/Lとなるよう希釈し、その希釈液を液温25℃でレーザー回折式粒度分布測定装置に供して、体積基準の平均粒子径を測定する方法。
【0016】
先ず、本発明に係る添加型弾性繊維用改質剤(以下、本発明の改質剤という)について説明する。本発明の改質剤は前記したように特定のA成分、特定のB成分及び特定のC成分から成っている。A成分及びB成分は、C成分の単なる分散媒体としてのみでなく、弾性繊維を紡糸して製造するに際し、C成分による口金孔での詰まり等を防止するために必須の成分である。
【0017】
A成分の鉱物油としては、パラフィン成分、ナフテン成分、アロマ成分等より構成される一般的な石油留分が挙げられるが、25℃における粘度が2×10−6〜100×10−6/sであるものが好ましい。
【0018】
A成分のシリコーンオイルとしては、1)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位から成るポリジメチルシロキサン類、2)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位と炭素数2〜4のアルキル基を有するジアルキルシロキサン単位とから成るポリジアルキルシロキサン類、3)繰り返し単位がジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とから成るポリシロキサン類等が挙げられるが、なかでもポリジメチルシロキサン類が好ましい。
【0019】
A成分のエステル油としては、1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソペンタコサニルイソステアラート等の、脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、2)1,6−ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレートモノラウラート、トリメチロールプロパントリラウラート、ひまし油等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル、3)アジピン酸ジラウリル、アゼライン酸ジオレイル等の、脂肪族1価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル等が挙げられるが、なかでもオクチルステアラートやイソトリデシルステアラート等の脂肪族1価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルであって総炭素数15〜40のエステル、トリメチロールプロパントリラウラートやひまし油等の脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルであって総炭素数15〜40のエステルが好ましい。
【0020】
A成分は、鉱物油を50〜100質量%、またシリコーンオイル及び/又はエステル油を0〜50質量%(合計100質量%)の割合で含有するものであるが、なかでも鉱物油を70〜100質量%、またシリコーンオイル及び/又はエステル油を0〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有するものが好ましく、鉱物油を70〜90質量%、またシリコーンオイル及び/又はエステル油を10〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有するものがより好ましい。シリコーンオイルとエステルとの合計比率が、A成分中に50質量%を超える場合、ホットメルト接着剤との接着性、精練性が著しく低下する。
【0021】
またA成分は、25℃における粘度が2×10−6〜1000×10−6/sのものであるが、2×10−6〜100×10−6/sのものが好ましい。粘度が2×10−6/s未満であると、改質剤中の固体微粒子の沈降や2次凝集が発生し易くなり、弾性繊維を紡糸する際に口金孔の詰まりが生じ易くなる。逆に、粘度が1000×10−6/sを超えると、改質剤の製造時に、改質剤中の固体微粒子の粒径を均一で小さいものにすることが困難となり、湿式粉砕中の発熱により改質剤自体が変質し易くなる。尚、本発明において粘度は、JIS−K2283(石油製品動粘度試験方法)に記載されたキャノンフェンスケ粘度計を用いた方法で測定される値である。
【0022】
本発明の改質剤に供するB成分は、いずれも前記の化1で示される含窒素化合物、化2で示される含窒素化合物、化3で示される含窒素化合物及び化4で示される含窒素化合物から選ばれる一つ又は二つ以上である。これらの含窒素化合物は、精練性の向上と、ホットメルト接着剤との接着性の向上に必須の成分である。B成分の希釈には、前記したA成分を用いることができる。
【0023】
化1〜化4中のX〜Xは、炭素数2〜6のアルキレン基である。かかるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンタメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2−メチルペンタメチレン基等が挙げられるが、なかでもエチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、2−メチルプロピレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。
【0024】
化1及び化3中のY及びYは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は水素原子であり、例えばメチル基、エチル基、エテニル基、プロピル基、プロペニル基、イソプロピル基、イソプロペニル基、ブチル基、ブテニル基、イソブチル基、イソブテニル基、ペンチル基、ペンテニル基、イソペンチル基、イソペンテニル基、ヘキシル基、オクチル基、2−メチルヘプルチル基、ノニル基、デシル基、2−メチルヘプチル基、ドデシル基、2−メチルウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシイソブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシイコシル基、水素原子等が挙げられるが、なかでも炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基又は水素原子が好ましい。但し、化1中のp=0の場合や化3中のr=0の場合は水素原子を除く。
【0025】
化1〜化4中のp〜sは0〜10の整数であるが、なかでも1〜6の整数が好ましい。
【0026】
化1〜化4中のR〜Rは、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等の重合物からなるポリオレフィンであって数平均分子量200〜8000のポリオレフィンから末端の1個の水素原子を除いた残基であるが、なかでも数平均分子量500〜5000のポリオレフィンから末端の1個の水素原子を除いた残基が好ましい。
【0027】
B成分は、前記した化1で示される含窒素化合物、化2で示される含窒素化合物、化3で示される含窒素化合物及び化4で示される含窒素化合物から選ばれる一つ又は二つ以上であるが、なかでも化1で示される含窒素化合物及び/又は化2で示される含窒素化合物が好ましい。
【0028】
本発明の改質剤に供するC成分は、前記したように、ケイ素酸化物、下記の金属原子の酸化物、下記の金属原子の炭酸化物及び炭素数12〜22の脂肪酸の下記の金属原子の塩から選ばれる一つ又は二つ以上の固体微粒子であるが、なかでも炭素数12〜22の脂肪酸のマグネシウム塩及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸のカルシウム塩である固体微粒子が好ましい。
金属元素:ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、チタン、アルミニウム
【0029】
C成分のケイ素酸化物としては、酸化ケイ素が挙げられ、また金属原子の酸化物としては、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0030】
更にC成分の金属原子の炭酸化物としては、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等が挙げられる。
【0031】
更にまたC成分の脂肪酸の金属原子の塩としては、ラウリン酸ナトリウム塩、ミリスチン酸ナトリウム塩、パルミチン酸ナトリウム塩、ステアリン酸ナトリウム塩、アラキン酸ナトリウム塩、ベヘン酸ナトリウム塩、ジラウリン酸マグネシウム塩、ジラウリン酸カルシウム塩、ジラウリン酸亜鉛塩、ジラウリン酸バリウム塩、ジミリスチン酸マグネシウム塩、ジミリスチン酸カルシウム塩、ジミリスチン酸亜鉛塩、ジミリスチン酸バリウム塩、ジパルミチン酸マグネシウム塩、ジパルミチン酸カルシウム塩、ジパルミチン酸亜鉛塩、ジパルミチン酸バリウム塩、ジステアリン酸マグネシウム塩、ジステアリン酸カルシウム塩、ジステアリン酸亜鉛塩、ジステアリン酸バリウム塩、ジアラキン酸マグネシウム塩、ジアラキン酸カルシウム塩、ジアラキン酸亜鉛塩、ジアラキン酸バリウム塩、ジベヘン酸マグネシウム塩、ジベヘン酸カルシウム塩、ジベヘン酸亜鉛塩、ジベヘン酸バリウム塩、ミリスチン酸パルミチン酸マグネシウム塩、ミリスチン酸パルミチン酸カルシウム塩、ミリスチン酸パルミチン酸亜鉛塩、ミリスチン酸パルミチン酸バリウム塩、ミリスチン酸ステアリン酸マグネシウム塩、ミリスチン酸ステアリン酸カルシウム塩、ミリスチン酸ステアリン酸亜鉛塩、ミリスチン酸ステアリン酸バリウム塩、パルミチン酸ステアリン酸マグネシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸カルシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸亜鉛塩、パルミチン酸ステアリン酸バリウム塩、トリステアリン酸アルミニウム塩等が挙げられる。なかでもジミリスチン酸マグネシウム塩、ジミリスチン酸カルシウム塩、ジパルミチン酸マグネシウム塩、ジパルミチン酸カルシウム塩、ジステアリン酸マグネシウム塩、ジステアリン酸カルシウム塩、ミリスチン酸パルミチン酸マグネシウム塩、ミリスチン酸パルミチン酸カルシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸マグネシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸カルシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸マグネシウム塩、パルミチン酸ステアリン酸カルシウム塩及びこれらの混合物等の、炭素数14〜18の脂肪酸のマグネシウム塩やカルシウム塩が好ましい。
【0032】
以上説明した本発明の改質剤に供するA成分、B成分及びC成分は、いずれも公知の方法によって容易に調製できる。
【0033】
本発明の改質剤は、以上説明したA成分、B成分及びC成分から成るものであるが、A成分/B成分=100/0.01〜100/30(質量比)の割合で含有するものであり、好ましくはA成分/B成分=100/0.1〜100/20(質量比)の割合で含有するものである。A成分に対するB成分の含有割合をこのようにすることで、本発明の改質剤のチクソトロピーを適度に抑制でき、紡糸原液との混練性を良好に保つことができる。
【0034】
また本発明の改質剤は、A成分及びB成分の合計/C成分=100/0.01〜100/100(質量比)の割合で含有するものであり、好ましくはA成分及びB成分の合計/C成分=100/0.01〜100/50(質量比)の割合で含有するものである。A成分及びB成分の合計に対するC成分の含有割合をこのようにすることで、本発明の改質剤中でC成分の固体微粒子が分離したり、沈降するのを防止してその安定性を良好に保ち、結果として紡糸時のC成分による口金孔の詰まりを防止できる。
【0035】
更に本発明の改質剤は、前記したようにC成分の固体微粒子がコロイド状に分散した液体である。本発明の改質剤は、A成分とB成分との混合物を分散媒体として、これにC成分の固体微粒子を前記の質量比でコロイド状に分散した分散液なのである。
【0036】
更にまた本発明の改質剤は、前記したように下記の平均粒子径の測定方法により測定される平均粒子径が0.01〜100μmのものであるが、なかでも平均粒子径が0.1〜30μmのものが好ましい。
【0037】
平均粒子径の測定方法:本発明の改質剤を、25℃における粘度が共に10×10−6/sであるポリジメチルシロキサンと鉱物油との1/1(質量比)の混合液を用いて、該改質剤中のC成分の濃度が1000mg/Lとなるよう希釈し、その希釈液を液温25℃でレーザー回折式粒度分布測定装置に供して、体積基準の平均粒子径を測定する方法。このときのレーザー回折式粒度分布測定装置としては、堀場製作所製のLA−920等を使用できる。
【0038】
本発明の改質剤の使用に際しては、必要に応じて他の成分を併用することもできる。かかる他の成分としては、1)アミノ変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、メルカプト変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン等の変性シリコーンオイルやシリコーンレジン、2)非イオン系界面活性剤や高級アルコール等のつなぎ剤、3)イオン系界面活性剤等の帯電防止剤、4)その他、濡れ性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、平滑剤、帯電防止剤、防腐剤等の、合成繊維処理剤として公知の成分が挙げられる。
【0039】
本発明の改質剤の調製方法は、特に限定されず、公知の方法を適用できる。例えば、A成分とB成分とC成分とを所定割合で混合して混合物とした後、該混合物を湿式粉砕に供し、分散液として本発明の改質剤を調製することができる。
【0040】
前記の湿式粉砕に用いる粉砕機としては、縦型ビーズミル、横型ビーズミル、サンドグラインダー、コロイドミル等の公知の湿式粉砕機が挙げられる。また各成分を混合する時の温度、湿式粉砕の際の温度としては、特に制限されないが、20〜35℃が好ましい。このようにして調製される本発明の改質剤の粘度は、E型粘度計を用いて、30℃の温度下、rotor E、20rpmの条件で計測したとき、50〜30000mPa・sの範囲内のものとするのが好ましい。
【0041】
本発明の改質剤は、弾性繊維を製造するための紡糸原液に添加して使用される。弾性繊維としては、ポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられるが、なかでもポリウレタン系弾性繊維の紡糸原液に添加する場合に効果の発現が高い。尚、弾性繊維の形態は特に限定されず、フィラメント系弾性繊維、スパン系弾性繊維のいずれにも使用できる。
【0042】
紡糸原液に対する、本発明の改質剤の添加量は、特に制限されないが、弾性繊維がポリウレタン系弾性繊維の場合は通常、紡糸原液中のポリウレタンの固形分100質量部に対して0.1〜20質量部の割合となるように添加する。
【0043】
また紡糸原液への本発明の改質剤の添加は、紡糸原液の製造工程中のいずれであっても構わない。本発明の改質剤は、重合工程から紡糸工程の間で紡糸原液に添加する必要があるが、なかでも紡糸工程の直前に添加することが好ましい。
【0044】
次に、本発明に係る弾性繊維の製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、弾性繊維の紡糸原液に本発明の改質剤を添加した紡糸液を紡糸する方法である。紡糸方法としては、乾式紡糸法、溶融紡糸法、湿式紡糸法等が挙げられるが、なかでも乾式紡糸法により紡糸する場合に効果の発現が高い。
【0045】
最後に、本発明に係る弾性繊維(以下、本発明の弾性繊維という)について説明する。本発明の弾性繊維は、本発明の製造方法により得られる弾性繊維である。弾性繊維の種類に限定はなく、ポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等、いずれでもよいが、なかでもポリウレタン系弾性繊維の場合に効果の発現が高い。
【発明の効果】
【0046】
以上説明した本発明によると、口金孔の詰まり、スカムの発生及び糸切れを生じることなく、優れた捲き形状、解舒性、精練性及びホットメルト接着剤との接着性を有する高品質の弾性繊維を製造できるという効果がある。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は質量部を示し、また%は質量%を示す。
【0048】
試験区分1(B成分の含窒素化合物の合成)
・化1で示される含窒素化合物(B−1)の合成
2リットルのガラス製反応容器に、トリエチレンテトラアミン100g及び鉱物油863gを加え、窒素気流下の150℃で、ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル無水コハク酸800gを徐々に滴下し、2時間反応させた。200℃に昇温し、未反応のトリエチレンテトラアミンと生成水を減圧除去した後、140℃に降温し、濾過することによりポリブテニルコハク酸イミドを合成した。これを含窒素化合物(B−1)とした。
【0049】
・含窒素化合物(B−2)、(B−5)〜(B−7)、(B−10)及び(b−2)の合成
含窒素化合物(B−1)と同様にして、含窒素化合物(B−2)、(B−5)〜(B−7)、(B−10)及び(b−2)を合成した。
【0050】
・化2で示される含窒素化合物(B−3)の合成
2リットルのガラス製反応容器に、トリプロピレンテトラアミン47g及び鉱物油814gを加え、窒素気流下の150℃で、ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル無水コハク酸799gを徐々に滴下し、2時間反応させた。200℃に昇温し、生成水を減圧除去した後、140℃に降温し、濾過することによりポリブテニルコハク酸イミドを合成した。これを含窒素化合物(B−3)とした。
【0051】
・含窒素化合物(B−4)、(B−8)及び(B−9)の合成
含窒素化合物(B−3)と同様にして、含窒素化合物(B−4)、(B−8)及び(B−9)を合成した。
【0052】
・化3で示される含窒素化合物(B−11)の合成
2リットルのガラス製反応器に、トリエチレンテトラアミン100g及び鉱物油722gを加え、窒素気流下の120℃で、ポリブテン部分の数平均分子量が1200であるポリブテニル無水コハク酸649gを徐々に滴下し、2時間反応させた後、濾過することによりポリブテニルコハク酸アミドを合成した。これを含窒素化合物(B−11)とした。
【0053】
・含窒素化合物(B−14)、(B−15)、(B−17)〜(B−20)、(b−1)及び(b−3)の合成
含窒素化合物(B−11)と同様にして、含窒素化合物(B−14)、(B−15)、(B−17)〜(B−20)、(b−1)及び(b−3)を合成した。
【0054】
・化4で示される含窒素化合物(B−12)の合成
2リットルのガラス製反応容器に、ポリブテン部分の数平均分子量が3000であるポリブテニル無水コハク酸775g、トリエチレンテトラアミン18g及び鉱物油793gを加え、窒素気流下の120℃で2時間反応させた後、濾過することによりポリブテニルコハク酸アミドを合成した。これを含窒素化合物(B−12)とした。
【0055】
・含窒素化合物(B−13)及び(B−16)の合成
含窒素化合物(B−12)と同様にして、含窒素化合物(B−13)及び(B−16)を合成した。
【0056】
以上のようにして合成したB成分の含窒素化合物の内容を表1にまとめて示した。
【0057】
【表1】

【0058】
試験区分2(添加型弾性繊維用改質剤の調製)
・実施例1{添加型弾性繊維用改質剤(T−1)の調製}
A成分として25℃における粘度が10×10−6/sの鉱物油(m−1)90部及び25℃における粘度が10×10−6/sのポリジメチルシロキサン(p−1)10部の混合物(25℃における粘度が10×10−6/sの混合物)と、該A成分100部に対しB成分として表1に記載した含窒素化合物(B−1)5部とを混合し、更にその混合物100部に対しC成分としてジステアリン酸マグネシウム塩(C−1)30部を加え、20〜35℃の温度で均一になるまで混合した後、横型ビーズミルを用いて湿式粉砕処理し、ジステアリン酸マグネシウム塩(C−1)をコロイド状に分散させた添加型弾性繊維用改質剤(T−1)を調製した。
【0059】
・実施例2〜49及び比較例1〜11{添加型弾性繊維用改質剤(T−2)〜(T−49)及び(t−1)〜(t−11)の調製}
実施例1の添加型弾性繊維用改質剤(T−1)の調製と同様にして、実施例2〜49及び比較例1〜11の添加型弾性繊維用改質剤(T−2)〜(T−49)及び(t−1)〜(t−11)を調製した。但し、比較例3の添加型弾性繊維用改質剤(t−3)の調製では、湿式粉砕処理時の粘度上昇が激しく、酸化チタン(C−3)をコロイド状に分散させることができなかった。
【0060】
以上のようにして調製した各例の添加型弾性繊維用改質剤(T−1)〜(T−49)及び(t−1)〜(t−11)の内容を表2〜表5にまとめて示した。






























【0061】
【表2】







【0062】
【表3】




【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
表2〜表5において、
改質剤の種類:添加型弾性繊維用改質剤の種類
*1:A成分100質量部に対するB成分の質量部
*2:A成分及びB成分の合計100質量部に対するC成分の質量部
m−1:25℃における粘度が10×10−6/sの鉱物油
m−2:25℃における粘度が20×10−6/sの鉱物油
m−3:25℃における粘度が5×10−6/sの鉱物油
m−4:25℃における粘度が220×10−6/sの鉱物油
m−5:25℃における粘度が220×10−6/sの鉱物油
p−1:25℃における粘度が10×10−6/sのポリジメチルシロキサン
p−2:25℃における粘度が20×10−6/sのポリジメチルシロキサン
p−3:25℃における粘度が5×10−6/sのポリジメチルシロキサン
p−4:25℃における粘度が10000×10−6/sのポリジメチルシロキサン
es−1:2−エチルヘキシルステアラート
es−2:イソトリデシルステアラート
B−1〜B−20,b−1〜b−3:表1に記載したB成分
C−1:ジステアリン酸マグネシウム
C−2:ジステアリン酸カルシウム
C−3:酸化チタン
C−4:酸化亜鉛
C−5:酸化ケイ素
C−6:酸化マグネシウム
【0066】
・試験区分3(乾式紡糸によるポリウレタン系弾性繊維の製造)
・実施例50〜98及び比較例12〜24
先ず、分子量2900のテトラメチレンエーテルグリコール、ビス−(p−イソシアネートフェニル)−メタン及びエチレンジアミンからなるポリウレタン原料のN、N’−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)溶液(濃度35%)を重合し、ポリマ溶液(A)とした。
【0067】
次に、t−ブチルジエタノールアミン及びメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネート)を反応させたポリウレタン(デュポン社製の商品名(登録商標)メタクロール2462)と、p−クレゾール及びジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製の商品名(登録商標)メタクロール2390)との2対1(質量比)の混合物のDMAc溶液(濃度35%)を調製し、添加剤溶液(B)とした。
【0068】
そして前記のポリマ溶液(A)を96部及び前記の添加剤溶液(B)を4部の割合で均一に混合し、混合溶液(C)とした。更に、この混合溶液(C)に、混合溶液(C)中のポリウレタンの固形分100質量部に対し、表6及び表7に記載した改質剤の添加質量部となるよう、添加型弾性繊維用改質剤をスタティックミキサーを用いたインジェクション法により均一に混合し、紡糸液とした。
【0069】
以上のようにして調製した紡糸液を用いて、公知のスパンデックスで用いられる乾式紡糸方法により、単糸数56本からなる560dtexのポリウレタン系弾性繊維を紡糸し、巻き取り前のオイリングローラーから下記の処理剤をそのままニートの状態でローラー給油した。かくしてローラー給油したものを、巻き取り速度500m/分で、長さ115mmの円筒状紙管に、巻き幅104mmを与えるトラバースガイドを介して、サーフェイスドライブの巻取機を用いて巻き取り、乾式紡糸によるポリウレタン系弾性繊維のパッケージ(1kg巻き及び3kg巻き)を得た。尚、処理剤の付着量の調節は、オイリングローラーの回転数を調整することで行なった。
【0070】
処理剤:実施例50〜98及び比較例12〜23では、25℃で10×10−6/sの鉱物油を用い、また比較例24では、平均分子量400のポリプロピレングリコール系ポリオールを用いた。
【0071】
上記のポリウレタン系弾性繊維の製造において使用した添加型弾性繊維用改質剤及びその使用量を表6及び表7にまとめて示した。





【0072】
【表6】









【0073】
【表7】

【0074】
表6及び表7において、
改質剤の種類:添加型弾性繊維用改質剤の種類
改質剤の添加質量部:前記の混合溶液(C)中のポリウレタンの固形分100質量部に対する添加型弾性繊維用改質剤の添加質量部
比較例12及び24:添加型弾性繊維用改質剤を添加しなかった例
比較例15:粘度が高すぎるため、添加型弾性繊維用改質剤(t−3)を均一に混合できず、ポリウレタン系弾性繊維の製造を行なわなかった。
T−1〜T−49,t−1〜t−11:表2〜表5に記載の添加型弾性繊維用改質剤
【0075】
試験区分4(製造したポリウレタン系弾性繊維の評価)
試験区分3で得た乾式紡糸によるポリウレタン系弾性繊維のパッケージを下記の測定及び評価に供し、結果を表8及び表9にまとめて示した。
【0076】
・紡糸原液との混合性の評価
試験区分3で調製した紡糸液中における添加型弾性繊維用改質剤の分散状態を、下記の基準で評価した。
◎:紡糸液中に添加型弾性繊維用改質剤が均一に分散しており、不均一な部分が無い
○:紡糸液中に添加型弾性繊維用改質剤がほぼ均一に分散しているが、一部不均一な部分が見られる
△:紡糸液中に添加型弾性繊維用改質剤が不均一に分散している
×:紡糸液中に添加型弾性繊維用改質剤がほとんど分散していない
【0077】
・紡糸性の評価
試験区分3の紡糸及び巻き取りにおける糸切れ頻度を測定し、糸切れ1回当たりの巻き取り距離を算出して、紡糸性を下記の基準で評価した。
◎:糸切れ1回当たりの巻き取り距離が5000km以上
○:糸切れ1回当たりの巻き取り距離が4500km以上5000km未満
△:糸切れ1回当たりの巻き取り距離が4000km以上4500km未満
×:糸切れ1回当たりの巻き取り距離が4000km未満
【0078】
・巻き形状の評価
前記のパッケージ(1kg巻き)について、巻き幅の最大値(Wmax)と最小幅(Wmin)を計測し、双方の差(Wmax−Wmin)からバルジを求め、下記の基準で評価した。
◎:バルジが4mm未満
○:バルジが4〜6mm
△:バルジが6〜7mm
×:バルジが7mm超
【0079】
・解舒性の評価
片側に第1駆動ローラーとこれに常時接する第1遊離ローラーとで送り出し部を構成し、また反対側に第2駆動ローラーとこれに常時接する第2遊離ローラーとで巻き取り部を構成して、該送り出し部に対し該巻き取り部を水平方向で20cm離して設置した。第1駆動ローラーに前記と同様のパッケージ(3kg巻き)を装着し、糸巻の厚さが2mmになるまで解舒して、第2駆動ローラーに巻き取った。第1駆動ローラーからのポリウレタン系弾性繊維の送り出し速度を50m/分で固定する一方、第2駆動ローラーへのポリウレタン系弾性繊維の巻き取り速度を50m/分より徐々に上げて、ポリウレタン系弾性繊維をパッケージから強制解舒した。この強制解舒時において、送り出し部分と巻き取り部分との間でポリウレタン系弾性繊維の踊りがなくなる時点での巻き取り速度V(m/分)を測定し、下記の数1から解舒性(%)を求め、次の基準で評価した。
◎:解舒性が120%未満(全く問題なく、安定に解舒できる)
○:解舒性が120%以上160%未満(糸の引き出しにやや抵抗があるものの、糸切れの発生は無く、安定に解舒できる)
△:解舒性が160%以上200%未満(糸の引き出しに抵抗があり、若干の糸切れもあって、操業にやや問題がある)
×:解舒性が200%以上(糸の引き出しに抵抗が大きく、糸切れが多発して、操業に大きな問題がある)
また、25℃で6か月放置したパッケージについても、同様に解舒性を評価した。
【0080】
【数1】

【0081】
・平滑性の評価
摩擦測定メーター(エイコー測器社製の商品名SAMPLE FRICTION UNIT MODEL TB−1)を用い、二つのフリーローラー間に直径1cmで表面粗度2Sのクロムメッキ梨地ピンを配置し、このクロムメッキ梨地ピンに対し、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出したポリウレタン系弾性繊維の接触角度が90度となるようにした。25℃で60%RHの条件下、入側で初期張力(T)5gをかけ、100m/分の速度で走行させたときの出側の2次張力(T)を測定した。下記の数2から摩擦係数を求め、次の基準で評価した。
◎:摩擦係数が0.150以上0.220未満
○:摩擦係数が0.220以上0.260未満
△:摩擦係数が0.260以上0.300未満
×:摩擦係数が0.300以上




【0082】
【数2】

【0083】
・スカム防止性の評価
前記のパッケージ(1kg巻き)を整経機を模したミニチュア整経機に10本仕立て、25℃×65%RHの雰囲気下で糸速度100m/分で500km巻き取った。このとき、ミニチュア整経機のクシガイドでのスカムの脱落及び蓄積状態を肉眼観察し、次の基準で評価した。
◎:スカムの付着がほとんどなかった。
○:スカムがやや付着しているが、糸の安定走行に問題はなかった。
△:スカムの付着及び蓄積が多く糸の安定走行にやや問題があった。
×:スカムの付着及び蓄積が著しく多く、糸の安定走行に大きな問題があった。
【0084】
・接着性の評価
ポリプロピレン製スパンボンド不織布上に、145℃で加熱溶融したスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体を主成分とするゴム系ホットメルト接着剤を均一にローラーで塗布し、切断して、40mm×20mmの大きさの切断物を2枚作製した。2枚の切断物の接着剤塗布面の間に、前記のパッケージ(1kg巻き)から引き出した40mmの長さのポリウレタン系弾性繊維の先端部10mmをはさみ、160℃の処理温度、荷重9g/cmで30秒間、圧着し、試料とした。この試料のポリプロピレン製スパンボンド不織布部分を、引張試験機(島津製作所社製の商品名、オートグラフAGS)の上部試料把持部に固定し、下部試料把持部にポリウレタン系弾性繊維を固定して、100mm/分の速度で引っ張り、ポリプロピレン製スパンボンド不織布からポリウレタン系弾性繊維を引き抜くのに要する強力を測定し、次の基準で評価した。
◎:強力が35g以上(ホットメルト接着が強く、安定した操業が可能)
○:強力が30g以上35g未満(実用的なホットメルト接着であり、操業で問題は発生しない)
△:強力が25g以上30g未満(ホットメルト接着にやや問題があり、操業で問題が発生することがある)
×:強力が25g未満(ホットメルト接着が弱く、操業に大きな問題がある)
【0085】
・精練性の評価
前記のポリウレタン系弾性繊維のパッケージ(1kg巻き)とナイロン糸から、経て編み加工により織物を製造した。この織物から5cm四方を2枚切り取り、そのうち1枚について添加型弾性繊維用改質剤及び前記の処理剤の付着量OPU(質量%)を測定した。残りの1枚は日華化学社製の商品名ピッチランを精練剤として用い、浴比1/20にて精練し、乾燥した後、添加型弾性繊維用改質剤及び前記の処理剤の付着量OPU(質量%)を同様に測定した。尚、付着量(OPU及びOPU)の測定は、JIS−L1073(合成繊維フィラメント糸試験方法)に準拠した方法で、抽出溶剤としてノルマルヘキサンを用いて測定した。下記の数3から油剤残存率を求め、次の基準で評価した。
◎:油剤残存率が30%未満
○:油剤残存率が30%以上40%未満
△:油剤残存率が40%以上50%未満
×:油剤残存率が50%以上

【0086】
【数3】

【0087】
【表8】


【0088】
【表9】

【0089】
表9において、
比較例15:試験区分3と同じ
【0090】
表8及び表9の結果からも明らかなように、本発明の改質剤は、紡糸原液に対し良好な混合性を有しており、製造工程に堆積するスカムも極めて少なく、良好な紡糸性の下に、優れた捲き形状、解舒性、平滑性、ホットメルト接着性及び精錬性を有する高品質の弾性繊維を製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性繊維を製造するための紡糸原液に添加して用いる添加型弾性繊維用改質剤であって、下記のA成分、B成分及びC成分から成り、且つ該A成分/該B成分=100/0.01〜100/30(質量比)の割合で含有し、また該A成分及び該B成分の合計/該C成分=100/0.01〜100/100(質量比)の割合で含有していて、該C成分がコロイド状に分散しており、下記の平均粒子径の測定方法により測定される平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする添加型弾性繊維用改質剤。
A成分:鉱物油を50〜100質量%、またシリコーンオイル及び/又はエステル油を0〜50質量%(合計100質量%)の割合で含有し、且つ25℃における粘度が2×10−6〜1000×10−6/sの液体。
B成分:下記の化1で示される含窒素化合物、化2で示される含窒素化合物、化3で示される含窒素化合物及び化4で示される含窒素化合物から選ばれる一つ又は二つ以上。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

{化1〜化4において、
〜R:数平均分子量200〜8000のポリオレフィンから末端の1個の水素原子を除いた残基
〜X:炭素数2〜6のアルキレン基
,Y:炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基又は水素原子(但し、p=0の場合やr=0の場合は水素原子を除く)
p〜s:0〜10の整数}
C成分:ケイ素酸化物、下記の金属原子の酸化物、下記の金属原子の炭酸化物及び炭素数12〜22の脂肪酸の下記の金属原子の塩から選ばれる一つ又は二つ以上の固体微粒子
金属原子:ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、チタン、アルミニウム
平均粒子径の測定方法:添加型弾性繊維用改質剤を、25℃における粘度が共に10×10−6/sであるポリジメチルシロキサンと鉱物油との1/1(質量比)の混合液を用いて、該添加型弾性繊維用改質剤中のC成分の濃度が1000mg/Lとなるよう希釈し、その希釈液を液温25℃でレーザー回折式粒度分布測定装置に供して、体積基準の平均粒子径を測定する方法。
【請求項2】
A成分/B成分=100/0.01〜100/20(質量比)の割合で含有する請求項1記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項3】
A成分及びB成分の合計/C成分=100/0.01〜100/50(質量比)の割合で含有する請求項1又は2記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項4】
A成分が、鉱物油を70〜100質量%、またシリコーンオイル及び/又はエステル油を0〜30質量%(合計100質量%)の割合で含有するものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の添加型繊維用改質剤。
【請求項5】
A成分が、25℃における粘度が2×10−6〜100×10−6/sのものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項6】
B成分が、化1〜化4中のX〜Xが炭素数2〜4のアルキレン基である場合のものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項7】
B成分が、化1及び化3中のY及びYが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基又は水素原子である場合のものである請求項1〜6のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項8】
B成分が、化1〜化4中のp〜sが1〜6の整数である場合のものである請求項1〜7のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項9】
B成分が、化1〜化4中のR〜Rが数平均分子量500〜5000のポリオレフィンから末端の1個の水素原子を除いた残基である場合のものである請求項1〜8のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項10】
B成分が、化1で示される含窒素化合物及び/又は化2で示される含窒素化合物である請求項1〜9のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項11】
C成分が、炭素数12〜22の脂肪酸のマグネシウム塩及び/又は炭素数12〜22の脂肪酸のカルシウム塩である請求項1〜10のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項12】
平均粒子径が0.1〜30μmである請求項1〜11のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤。
【請求項13】
弾性繊維の紡糸原液に請求項1〜12のいずれか一つの項記載の添加型弾性繊維用改質剤を添加した紡糸液を紡糸することを特徴とする弾性繊維の製造方法。
【請求項14】
紡糸液を乾式紡糸する請求項13記載の弾性繊維の製造方法。
【請求項15】
請求項13又は14記載の弾性繊維の製造方法により得られることを特徴とする弾性繊維。
【請求項16】
弾性繊維がポリウレタン系弾性繊維である請求項15記載の弾性繊維。

【公開番号】特開2012−241291(P2012−241291A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110300(P2011−110300)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000210654)竹本油脂株式会社 (138)
【Fターム(参考)】