説明

清拭シート

【課題】不織布シートに含有する洗浄剤の量を極力少なくすることにより、肌のデリケートな乳幼児や肌の弱いお年寄りでも使用することができる清拭シートを提供する
【解決手段】不織布シートに洗浄剤を含浸させた清拭シートにおいて、上記洗浄剤は、洗浄剤全体の割合を100重量%としたときに、精製水を99.80重量%以上、99.95重量%未満の割合で含有するとともに、殺菌防腐剤を0.05重量%超、0.20重量%以下の割合で含有し、上記殺菌防腐剤は、塩化ベンザルコニウムを0.025重量%超、0.10重量%以下の割合、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを0.0025重量%超、0.01重量%以下の割合、グリコール類を0.0225重量%超、0.09重量%以下の割合で配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布などの繊維シートに洗浄剤を含浸させた清拭シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚れた手や顔または排泄後の乳幼児のお尻を拭く清拭シートとして、洗浄薬剤を含浸させた湿式の清拭シートが利用されていた。この湿式の清拭シートに含浸される洗浄剤は、清拭しやすいように水分の含有量を多くしているものが多い。そのため、含有される水に発生する雑菌を防止するために、殺菌剤や抗菌剤などを含有させ、雑菌の発生を抑えていた。また、直接肌に使用するものであることから、その使用感を向上させるために、ヒアルロン酸などの保湿成分を含有させていた。
【0003】
しかし、手や顔または乳幼児のお尻などに直接使用する清拭シートは、肌に対する刺激を考えた場合に、上記洗浄薬剤に含有される殺菌剤や抗菌材の含有量を少なくし、肌に対する刺激を抑えたものが望まれる。特に、乳幼児のお尻や肌の弱いお年寄りが使用する場合には、刺激のある成分を極力少なくして、水のみを含浸させた清拭シートが望まれる。
【0004】
そこで、下記特許文献1においては、洗浄薬剤全体の割合に対して、水を90重量%以上、98.5重量%以下の割合で含有し、殺菌防腐剤を0.03重量%以上、1重量%以下の割合で含有し、アルコール系保湿剤を0.5重量%以上、5重量%以下の割合で含有し、水溶性保湿剤を0.05%以上、5重量%以下の割合で含有する洗浄薬剤を繊維シートに含浸させたものが提案されている。
【0005】
この従来の清拭シートは、繊維シートに含浸させる洗浄薬剤全体の割合に対して、水を90重量%以上、98.5重量%以下の割合で含有させることにより、殺菌防腐剤やアルコール系保湿剤または水溶性保湿剤の含有割合を低くしている。これにより、肌に対する刺激を少なくすることができるため、薬物に敏感な肌の人や乳幼児にも利用することができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−296240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、この従来の清拭シートは、洗浄薬剤に含有する水として蒸留水や精製水などを用いるため、雑菌などが発生しやすく、これを抑えるために、洗浄薬剤に水を98.5重量%の割合まで含有させ、残りに殺菌防腐剤を含有させる必要がある。これにより、肌に対する刺激を完全に抑えることが出来ないという問題がある。
【0008】
また清拭シートは、排泄後のお尻拭きとして乳幼児に頻繁に使用することが多く、洗浄薬剤に含有される殺菌防腐剤などの薬剤により、特にデリケートである乳幼児の肌がかぶれたり湿疹などを患う可能性があるため、使用に対しては細心の注意を払う必要があるという問題もある。
【0009】
一方、洗浄薬剤に含有させるアルコール系保湿剤や水溶性保湿剤などの保湿成分は、一般の人が通常使用する際に、肌のべとつきなどを抑えることができるため、使用感を向上させることができる。しかし、肌のデリケートな乳幼児や肌の弱いお年寄りなどが使用した場合には、肌のトラブルを引き起こす原因になるという問題もある。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、不織布シートに含有する洗浄剤の量を極力少なくすることにより、肌のデリケートな乳幼児や肌の弱いお年寄りでも使用することができる清拭シートを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、不織布シートに洗浄剤を含浸させた清拭シートにおいて、上記洗浄剤は、洗浄剤全体の割合を100重量%としたときに、精製水を99.80重量%以上、99.95重量%未満の割合で含有するとともに、殺菌防腐剤を0.05重量%超、0.20重量%以下の割合で含有し、上記殺菌防腐剤は、塩化ベンザルコニウムを0.025重量%超、0.10重量%以下の割合、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを0.0025重量%超、0.01重量%以下の割合、グリコール類を0.0225重量%超、0.09重量%以下の割合で配合することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清拭シートにおいて、上記グリコール類が、プロピレングリコールであることを特徴とするものである。
【0013】
そして、請求項3に記載の本発明は、請求項1に記載の清拭シートにおいて、上記グリコール類が、1,3−ブチレングリコールであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3に記載の本発明によれば、洗浄剤全体の割合を100重量%としたときに、精製水を99.80重量%以上、99.95重量%未満の割合で含有するとともに、殺菌防腐剤を0.05重量%超、0.20重量%以下の割合で含有しているため、肌に対し刺激となる殺菌防腐剤を極力少なくすることにより、肌のデリケートな乳幼児やお年寄りに対しても、肌トラブルを気にすることなく、安心して使用することができる。
【0015】
また、上記殺菌防腐剤の配合は、塩化ベンザルコニウムが0.025重量%超、0.10重量%以下の割合、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルが0.0025重量%超、0.01重量%以下の割合、プロピレングリコールまたは1,3ブチレングリコールが0.0225重量%超、0.09重量%以下の割合で配合することにより、少ない量の殺菌防腐剤であっても、細菌の発育やカビの発生を抑えることができる。この結果、清拭シートが密閉された包装体を長期に亘り保管することができるとともに、使用時に包装体や清拭シートに手および空気が触れたとしても、細菌やカビの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を適用した清拭シートについて詳細を説明する。
【0017】
本発明の実施の形態を適用した清拭シートは、不織布シートに洗浄剤を含浸させている。この洗浄剤は、洗浄剤全体の割合を100重量%としたときに、精製水が99.80重量%以上、99.95重量%未満の割合で含有されているとともに、殺菌防腐剤が0.05重量%超、0.20重量%以下の割合で含有されている。
なお、上記精製水は、イオン交換樹脂により精製し、さらに紫外線殺菌装置にて殺菌処理したものを使用している。また、不純物濃度の目安となる電気伝導度が、1μS/cm以下となっている。
【0018】
また、上記殺菌防腐剤は、塩化ベンザルコニウムを0.025重量%超、0.10重量%以下の割合、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを0.0025重量%超、0.01重量%以下の割合、プロピレングリコールまたは1,3−ブチレングリコールが0.0225重量%超、0.09重量%以下の割合で配合する。
【0019】
<実験例>
ここで、発明者らによって行った実験から、本願発明の清拭シートに含浸されている洗浄剤に含まれる精製水、および上記殺菌防腐剤に配合されている塩化ベンザルコニウム、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、プロピレングリコールまたは1,3−ブチレングリコールの量の割合による抗菌性能および抗カビ性能性の違いについて、表1および表2を参照しつつ説明する。
【0020】
なお、表1の1〜5は不織布に含浸されている洗浄剤の配合毎の割合を示し、表2は表1の1〜5の配合毎の抗菌性能および抗カビ性能の結果を示す。
また、今回の事件は以下の条件によって行われた。
・抗菌性能 :JIS L−1902:2008繊維製品の抗菌性試験方法
・抗カビ性能:JIS Z−2911:2010カビ抵抗性試験方法
・使用細菌 :細菌A Escherichia coli NBRC 3301(大腸菌)
細菌B Staphylococcuc aureus NBRC 12732(黄色ブドウ球菌)
・使用カビ :カビA Aspergillus niger NBRC 6341
カビB Penicillium citrinum NBRC 6352
Chaetomium globosum NBRC 6347
Myrothecium verrucaria NBRC 6113
【0021】
なお、表1の1〜5の配合の内、1が比較例として、出願人が既に販売している清拭シートの配合を示し、2〜5は本願発明の清拭シートに含浸されている精製水および殺菌防腐剤の配合を示している。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

・抗菌性判定 (−):ハローの幅が0mmより大きい
(+):ハローの幅が0mm
・抗カビ性判定 0 :試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない
(右側の数値は、発育阻止幅のmm数)
1 :試験片の接種した部分に認められた菌糸の面積が全面積
の1/3を超えない
2 :試験片の接種した部分に認められた菌糸の面積が全面積
の1/3を超える
【0024】
以上の実験データより、抗菌性に関しては、1〜5の全ての配合において、問題がないことが判明した。
一方、1の既存商品である精製水95.70重量%、メチルパラベン0.15重量%、エチルパラベン0.05重量%、プロピルパラベン0.05重量%、塩化ベンザルコニウム0.05重量%、プロピレングリコール4.0重量%の配合(比較例)の場合には、カビAの発育が全面積の1/3を超えることが認められた。また、2の精製水99.95重量%、塩化ベンザルコニウム0.025重量%、ブチルカルバミン酸ヨウ化ブロピニル0.0025重量%、プロピレングリコール0.0225重量%の配合の場合には、カビBの発育が全面積の1/3を超えることが認められた。
このように、1および2の配合の場合には、抗菌性に問題がないものの、抗カビ性に問題があることが判明した。
【0025】
他方、3の精製水99.90重量%、塩化ベンザルコニウム0.05重量%、ブチルカルバミン酸ヨウ化ブロピニル0.005重量%、プロピレングリコール0.045重量%の配合の場合には、カビAの発育面積が全面積の1/3を超えないことが認められた。また、4の精製水99.80重量%、塩化ベンザルコニウム0.1重量%、ブチルカルバミン酸ヨウ化ブロピニル0.01重量%、プロピレングリコール0.09重量%の配合の場合には、カビAおよびカビBの発育が認められず、かつ5〜6mmの発育阻止幅も認められた。そして、5の精製水99.90重量%、塩化ベンザルコニウム0.05重量%、ブチルカルバミン酸ヨウ化ブロピニル0.005重量%、1,3ブチレングリコール0.045重量%の配合の場合には、カビAの発育面積が全面積の1/3を超えないことが認められ、カビBにおいては3mmの発育阻止幅も認められた。
このように、3〜5の配合の場合には、抗菌性および抗カビ性に問題がないことが判明した。
【0026】
上述の実施形態による清拭シートによれば、洗浄剤全体の割合を100重量%としたときに、塩化ベンザルコニウムとブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、およびプロピレングリコールまたは1,3ブチレングリコールを殺菌防腐剤として、0.05重量%超0.20重量%以下の割合で配合することにより、少ない殺菌防腐剤の量であっても、抗菌性能および抗カビ性能を得ることができるため、精製水を99.80重量%以上、99.95重量%未満の範囲の割合で含有することができる。これにより、肌に対して刺激となる殺菌防腐剤を極力少なくすることができ、肌がデリケートな乳幼児やお年寄りに対しても、肌トラブルを気にすることなく、安心して使用することができる。
【0027】
また、上記殺菌防腐剤に配合されている塩化ベンザルコニウムが0.025重量%超、0.10重量%以下の割合、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルが0.0025重量%超、0.01重量%以下の割合、プロピレングリコールまたは1,3ブチレングリコールが0.0225重量%超、0.09重量%以下の割合であるため、洗浄剤全体の割合に対し少量であっても、上記実験例に示すように、大腸菌や黄色ブドウ球菌およびカビの発生を抑えることができる。この結果、清拭シートが密閉された包装体を長期に亘り保管することができるとともに、使用時に包装体や清拭シートに手や空気が触れたとしても、細菌の発育やカビの発生を抑えることができる。
【0028】
なお、上記実施の形態において、不織布に精製水および殺菌防腐剤を含浸させる場合のみ説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、当該不織布を精製水および殺菌防腐剤を含浸させる前に、紫外線などにより殺菌処理し、その後精製水および殺菌防腐剤を含浸させても対応可能である。この場合、上記不織布は、原反の状態で殺菌処理され、細断後に精製水および殺菌防腐剤を含浸させる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
汚れた手や顔の拭き取り、または乳幼児のお尻拭きとして利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シートに洗浄剤を含浸させた清拭シートにおいて、
上記洗浄剤は、洗浄剤全体の割合を100重量%としたときに、精製水を99.80重量%以上、99.95重量%未満の割合で含有するとともに、殺菌防腐剤を0.05重量%超0.20重量%以下の割合で含有し、
上記殺菌防腐剤は、塩化ベンザルコニウムを0.025重量%超、0.10重量%以下の割合、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを0.0025重量%超、0.01重量%以下の割合、グリコール類を0.0225重量%超、0.09重量%以下の割合で配合することを特徴とする清拭シート。
【請求項2】
上記グリコール類が、プロピレングリコールであることを特徴とする請求1に記載の清拭シート。
【請求項3】
上記グリコール類が、1,3−ブチレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載の清拭シート。

【公開番号】特開2012−24520(P2012−24520A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168988(P2010−168988)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000115968)レック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】