説明

清拭用シート包装体及びその製造方法

【課題】複数回の衛生的な拭き取りを可能とした湿潤状態の清拭用シートが個包装された包装体を提供する。
【解決手段】観音折り、二つ折り、巻き折り、又は蛇腹折りされた後に、その折り返し縁に直行する両端縁を、互い離間するように中央部に折り返した折り畳み構造の清拭用シート10の、その離間されている部分にミシン目線11を形成し、フィルムにより個包装し、清拭用シート包装体X1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おてふき、紙タオル、おしぼりなどの清拭用シートを包装した清拭用シート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店などにおいて、飲食物の提供に先立って、使い捨ておてふき、使い捨て紙タオル、使い捨ておしぼりなどと呼ばれる湿潤状態の清拭用シートをフィルムによって密封包装した清拭用シート包装体(以下、使い捨ておしぼり等ともいう)がよく配布される。
この使い捨ておしぼり等は、飲食前に手等を簡易かつ効果的に拭くことができる点で極めて利便性が高いものであり広く普及している。
【特許文献1】特開2005−21176
【特許文献2】特開2003−174979
【特許文献3】特開平9−285419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の使い捨ておしぼり等は、一度開封して使用してしまうと再度の使用に適するものではなかった。例えば、飲食中や飲食後に口周りを拭き取ろうとする際、あるいは飲食物が付着した手を拭こうとする際に、使用したいと思っても既に乾燥していて使用できなかったり、先に手を拭いたことによって非衛生的なものとなっていたりして、使用に適さなくなってしまっている。
そして、このような再度の拭き取りが必要になった場合、従来の使い捨ておしぼり等では、迅速に拭き取りたい場合であっても、飲食店の店員に改めて配布を要求したりするなどの面倒があった。
そこで、本発明の主たる課題は、複数回の衛生的な拭き取りを可能とした清拭用シート包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明及びその作用効果は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
折り畳まれた湿潤状態の清拭用シートがフィルムにより個包装された清拭用シート包装体であって、
前記清拭用シートに分断用のミシン目線が形成されていることを特徴とする清拭用シート包装体。
【0005】
<請求項2記載の発明>
前記清拭シートは、観音折り、二つ折り、巻き折り、又は蛇腹折りされた後に、その折り縁に直行する方向の両端縁が合うように二つ折りされて折り畳まれ、かつ、前記両端縁間に分断用ミシン線が形成されている、請求項1記載の清拭用シート包装体。
【0006】
<請求項3記載の発明>
折り畳まれた湿潤状態の清拭用シートがフィルムにより個包装された清拭用シート包装体であって、
前記清拭シートが;
観音折り、二つ折り、巻き折り、又は蛇腹折りされた後に、その折り縁に直行する方向の両端縁を、それら両端縁間の中央部に向かってかつそれら端縁が離間した状態に折り返されて折り畳まれ、その離間した端縁間には分断用ミシン目線が形成されていることを特徴とする清拭用シート包装体。
【0007】
<請求項4記載の発明>
前記分断ミシン目線における引張強度は、80〜600cN/50mmである請求項1〜3の何れか1項に記載の清拭用シート包装体。
【0008】
<請求項5記載の発明>
包装がピロー包装である請求項1〜4の何れか1項に記載の清拭用シート包装体。
【0009】
<請求項6記載の発明>
外装をなすフィルムの中央部に開封用の切り込み部を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の清拭用シート包装体。
【発明の効果】
【0010】
以上の本発明によれば、複数回の衛生的な拭き取りが可能な清拭用シート包装体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次いで、本発明の実施の形態を図1〜6を参照しながら以下に詳述する。
<第1の実施の形態>
本形態にかかる清拭用シート包装体は、図1に示すように、平板状又は平板状に折り畳んだ清拭用シート10がフィルム20によって個包装された清拭用シート包装体X1である。
この本形態の包装体X1は、特徴的に清拭用シート10の折り構造が、以下のようにしてなされている。まず、観音折り(図2に示す)、二つ折り(図3に示す)、巻き折り(図4に示す)、又は蛇腹折り(図5に示す)の群から選択される一次折り工程がなされ、図2に代表して示す観音折りの例に示されるように、その後にその一次折り工程の折り縁10Aに直行する方向の両端縁10Bを、それら両端縁間の中央部10Cに向かってかつそれら端縁10B,10Bが離間した状態に折り返す二次折り工程を経て折り畳まれた構造をなしている。
【0012】
なお、本発明においては、蛇腹折りには外三つ折りが、巻き折りには巻き三つ折りが包含される。また、図中において、頭文字が小文字fの符号で指される破線は山折り線を、頭文字が大文字Fの符号で指される一点鎖線は、谷折り線をそれぞれ示す。また、F及びfの符号の後の数字は折り畳みの順番を示している。
【0013】
本形態の清拭用シート10の折り畳み構造としては、上記の一次折り工程に示す折り方のなかでも、観音折りが、コンパクトにできる点、液保持性の点、折り畳み設備による折り畳みの自動化が容易である点など利点が多く、一次折り工程は観音折りとするのが最も好ましい。
【0014】
本形態にかかる清拭用シート10は、上記に示される折り畳み構造と採ることで、前記二次折り工程において折り返された端縁10B,10B間の中央部10Cの積層数が他の部分と比較して少なくなり、当該部分10Cが他の部分と比較して脆弱となるとともに、当該部位10Cで分断したときに、折り畳み前の一枚のシートがほぼ同形状、同面積の二枚のシートに分断される。
【0015】
そして、本形態の清拭用シートは、その離間した端縁10B,10B間に分断用ミシン目線11が形成されており、その分断を容易にしている。
これにより、使用者においては、例えば、飲食前において前記分断用ミシン目線11で、分断して一方を使用し、飲食中や飲食後に残りの他方を使用するという使用法が可能となる。そして、その残りの他方については、未使用の状態であるから、極めて衛生的な状態が保たれる。また、大判で使用したい場合には、ミシン目線で分断せずにそのまま使用することもできる。使用者の選択によりいずれの使用方法も可能である。
【0016】
本清拭用シート10においては、その分断用のミシン目線11において、効果的に分断できるようにすべく、ミシン目線11を跨いで測定される乾燥時の引張強度を、80〜600cN/50mm、より好ましくは、150〜400cN/50mmとするのがよい。なお、ここでいう引張強度は、折り状態ではなくシートを広げた状態で測定した値である。引張強度が、80cN/50mm未満であると、ミシン目線で分断せずに使用しようとしても、手を拭いた際に意図せずミシン目線で破れてしまうものとなるおそれがあり、また、600cN/50mmを超えると意図して分断しようとしても簡易に分断できないものとなるおそれがある。
ここでの引張強度は、ミシン目を中央にして幅50mm×長さ150mmで作成した試験片をロードセル引張試験機にセットし、つかみ間隔を100mmに設定して、速度100mm/minで測定する。
【0017】
他方、本発明にかかる清拭用シートは、好ましくは、湿潤状態であり、フィルム等によって密封包装されて清拭用シート包装体として提供される。
包装形態としては、この種の清拭用シート包装体において採用される既知の個包装態様が採用できる。例示するのであれば、図1及び図6に示されるピロー包装、ガゼット包装等が挙げられ、好適には、図示例のピロー包装である。
特に、図1や図6に示されるような、ピロー包装であって、清拭用シート10の二次折り工程で形成される各折り返し縁10D,10Dが、外装をなすフィルム20の両側接着封止部21,21にそれぞれ位置する方向で包装されているのがよい。
【0018】
このようにすると、図6(A)に示されるように、ピロー包装では一般的に使用者は、一方の接着封止部21から開封するため、図6(B)に示されるように、その開封された接着部封止部21aから、内部の折り畳まれた清拭用シート10を、ミシン目線11が露出される程度の略半分引き出し、分断用ミシン目線11で分断し、図6(C)に示されるように、その分断された一方10xを展開して使用し、フィルム20内に残った残りの他方10yについては、後に使用するという使用態様を採りやすくなる。
このような使用態様ができることで、例えば、清拭用シートの残りの一方の湿潤状態を効果的に保持でき、また、衛生性を維持することができるようになる。
【0019】
さらには、ピロー包装の場合には、図示はしないが、そのセンターシール22に開封用の切り込みを形成する形態とすることもできる。この場合、この切り込みを目印として、使用者が開封作業をすることで、簡易に分断用ミシン目線を挟んだ一方のみを外装から露出した状態に開封しやすくなる。
【0020】
他方、分断用のミシン目線については、折り畳み前の清拭用シートに対して形成するのではなく、各折り畳み工程の後に、中央部10Cの積層に対して一括でミシン目線11を形成するのが望ましい。当該中央部10Cにおける各層のミシン目線にずれがなく、分断作業が容易に行えるものが製造できる。
【0021】
ここで、本発明においては、清拭用シート自体の構造は従来既知の構成を取ることができるが、好適には、本発明の清拭用シートは、繊維基剤に薬液を含浸させた湿潤状態のものである。
【0022】
本発明の清拭用シート10として、また薬液を含浸させるベースとして、用いうる繊維基材としては、薄様紙、クレープ紙等の紙素材、化繊混抄紙、不織布等又はこれらを積層したシートが好適である。特に好ましくは、表裏層にパルプからなる薄葉紙、中層に化繊混抄紙の積層構造のシート、またはコットン、不織布からなるシートである。
【0023】
他方、繊維基材のプライ数や層数は、1層または複数層とする。好ましくは、1〜4層である。不織布とするのであれば、1層のほか、SMS不織布等の適宜の層構造を採ることもできる。
【0024】
他方、繊維基材の坪量に関しては、坪量(JIS P 8124:1998)が、20〜100g/m2、好ましくは40〜70g/m2である。坪量が20g/m2未満であると強度が弱く、破れ易くなる。他方、坪量が100g/m2を超えるとコストが嵩むだけでなく、しなやかさがなくなり、使用感が低下する。
【0025】
繊維基材の厚さ(尾崎製作所製ハンドピーコックG型による測定)は、使い捨ておしぼり全体の厚みで、シートが乾燥した状態で800μm〜2800μm、シートの厚さが800μm未満であると坪量が上記範囲にあったとしても手で拭き取り操作時に手の熱が肌に伝わり易いため、十分な冷涼感が得られない。また、シートが2800μm以上であると手の熱は伝わりにくいもののシートの厚みにより肌触りが硬く感じられる。
【0026】
繊維基材の乾燥引張強度は、例えば、乾燥状態で3プライで縦方向1000cN/25mm以上、特に1500〜2000cN/25mm、横方向400cN/25mm以上、特に500〜700cN/25mmであるのが好ましく、1プライで縦方向800cN/25mm以上、特に900〜1500cN/25mm、横方向300cN/25mm以上、特に400〜600cN/25mmであるのが好ましい。基材の乾燥紙力が低過ぎると、製造時に破れや伸び等のトラブルが発生し易くなり、他方、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。乾燥引張り強度は、幅25mm×長さ150mmで作成した試験片をロードセル引張試験機にセットし、つかみ間隔を100mmに設定して、速度100mm/minで測定する。
【0027】
他方、本発明にかかる清拭用シートは、エンボス加工がなされているのが望ましい。エンボス加工の種類は限定されないが、好適にはそのエンボス加工は、ヒートスチールマッチエンボス加工である。ヒートスチールエンボス加工は、一方の金属ロールのエンボス付与凸部が、他方のロールのエンボス付与凹部に嵌るように構成されている一対の熱した金属ロール間にシートを通して当該繊維基材にエンボスを付与するする方法である。
なお、ヒートスチールエンボス加工を採用するのであれば、繊維基材として熱融着繊維を配合した化繊混抄紙又はこれが積層されている積層シートを用いるのがよい。エンボス加工時に熱融着繊維が溶融して、エンボス形状が効果的に維持される清拭用シートが得られる。
【0028】
他方、上述のとおり本発明の清拭用シートは、このましく湿潤状態とされて包装体とされるが、湿潤のための薬液については、本発明では限定されるものではない。既知の薬液が利用できる。例えば、塩化ベンザルコニウム、二酸化塩素等の消毒剤、メタノール、エタノール、グリセリン等のアルコール、水、メントール等の冷涼剤、香料などを適宜の配合割合で含む既知の薬液を用いることができる。
【0029】
他方、本発明の清拭用シート包装体の外装をなすフィルム20の素材は、既知のもの採用できる。具体例としては、HDPE(高密度ポリエチレン)フィルム、LDPE(低密度ポリエチレン)フィルム、LLDPE(リニア低密度ポリエチレン)フィルム等のポリエチレンフィルム、セロハンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等又はこれらの積層フィルムが挙げられる。安価であり適度な引裂き性を有し、しかも適度な強度を確保できることから、HDPEフィルム、LDPEフィルムが好適である。
【0030】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態を説明する。本形態は、第1の実施の形態と二次折り工程が相違しており、第1の実施の形態で説明した図2〜図5に示される一次折り工程については共通する。外装となるフィルムや包装態様など、その他の構成については第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0031】
本形態における二次折り工程は、図7に観音折りの例で示すように一次折り工程の後に、両端縁10Bが対応するように二つ折りにする。本形態でも第1の実施の形態と同様に、簡易な分断操作で二つの清拭用シートを得ることができる。
さらに加えて、この本形態は、二次折り工程の折部分が一カ所となるため、第1の実施の形態と比較すると製造が簡易となる利点がある。
【0032】
本形態においては、分断用のミシン目線は、一次折り工程における両端10B,10Bの間、好ましくは中間に形成する。また、本形態では、分断用ミシン目線は一次折り工程の後に形成する。
なお、本形態の折り畳み構造とするのであれば、折り返し縁に分断用ミシン目線が位置しているのがよい。見栄え、利便性の点で好ましい。
【0033】
<その他>
上記実施の形態では、一次折り工程及び二次折り工程を経て形成される折り畳み構造の清拭用シートを採用した例につき説明したが、本発明においては、必ずしも折り工程を必要としない。図8に示すように分断用ミシン目線が形成された非折り畳みの湿潤状態の清拭用シートが個別包装されたものも本発明である。さらに、図9に示すように、一次折り工程の後に分断用ミシン目線を形成し、二次折り工程を経ないで包装した形態もまた本発明である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この本発明は、平板状又は平板状に折り畳んだ清拭用シートを包装した包装体に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の清拭用シート包装体を示す斜視図である。
【図2】観音折りを採用した本発明にかかる清拭用シートの折り畳み構造を説明するための図である。
【図3】二つ折りを採用した本発明にかかる清拭用シートの折り畳み構造を説明するための図である。
【図4】巻き折りを採用した本発明にかかる清拭用シートの折り畳み構造を説明するための図である。
【図5】蛇腹折りを採用した本発明にかかる清拭用シートの折り畳み構造を説明するための図である。
【図6】本発明の清拭用シート包装体の使用方法の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の清拭用シートの折り畳み構造の説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の清拭用シートの折り畳み構造の説明図である。
【図9】本発明の別の実施の形態の清拭用シートの折り畳み構造の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10…清拭用シート、10x,10y…分断された清拭用シート、10A…折り縁、10B…清拭用シートの端縁、10C…中央部、10D…二次折り工程での折り返し端縁、20…外層フィルム、11…折り返し端縁、21…接着封止部、21a…開封された接着封止部、22…センターシール、F1〜F4…谷折り線、f1…山折り線、X1…清拭用シート包装体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた湿潤状態の清拭用シートがフィルムにより個包装された清拭用シート包装体であって、
前記清拭用シートに分断用のミシン目線が形成されていることを特徴とする清拭用シート包装体。
【請求項2】
前記清拭シートは、観音折り、二つ折り、巻き折り、又は蛇腹折りされた後に、その折り縁に直行する方向の両端縁が合うように二つ折りされて折り畳まれ、かつ、前記両端縁間に分断用ミシン線が形成されている、請求項1記載の清拭用シート包装体。
【請求項3】
折り畳まれた湿潤状態の清拭用シートがフィルムにより個包装された清拭用シート包装体であって、
前記清拭シートが;
観音折り、二つ折り、巻き折り、又は蛇腹折りされた後に、その折り縁に直行する方向の両端縁を、それら両端縁間の中央部に向かってかつそれら端縁が離間した状態に折り返されて折り畳まれ、その離間した端縁間には分断用ミシン目線が形成されていることを特徴とする清拭用シート包装体。
【請求項4】
前記分断ミシン目線における引張強度は、80〜600cN/50mmである請求項1〜3の何れか1項に記載の清拭用シート包装体。
【請求項5】
包装がピロー包装である請求項1〜4の何れか1項に記載の清拭用シート包装体。
【請求項6】
外装をなすフィルムの中央部に開封用の切り込み部を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の清拭用シート包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−207567(P2009−207567A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51296(P2008−51296)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】