説明

清掃シート及びその製造方法

【課題】使用感と清掃効果を共に満足し、かつ、コスト的にも合理的で、使い捨て用途に適したような不織布からなる清掃シートを提供すること。
【解決手段】易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布からなる清掃シート。易分割型複合繊維としては、ポリエステル成分とポリアミド成分からなり、両成分を交互に放射状に貼り合わせた断面形状を有する複合繊維が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細繊維(マイクロファイバー)を含む不織布を用いた、キッチン、トイレ、家具、室内の壁、床等の清掃用のシートと、その製造方法に関する。
【0002】
従来から、清掃用の不織布シートとして、繊度が0.5デニール以下に分割された極細繊維を含むものが知られている。例えば、特許文献1には、繊度10デニール以上の繊維20〜90重量%と、機械的に分割可能な繊維が分割した極細繊維10〜80重量%とからなる不織布ワイパーが開示されている。また、極細繊維を含む、あるいは、極細繊維100%のワイパー用不織布(特許文献2)や、極細繊維を含んでなる布帛で構成された自動車用ワイパー(特許文献3)等も知られている。
【0003】
しかしながら、極細繊維の量が多すぎると、使用時の滑りが悪くなる等の問題があり、また、極細繊維のタイプによっては、適切な不織布を得るのが困難であるという問題等もあった。従って、使用感と清掃効果を共に満足し、かつ、コスト的にも合理的で、使い捨て用途に適したような不織布の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−14860号公報
【特許文献2】特開2003−301359号公報
【特許文献3】特開2004−276948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、使用感と清掃効果を共に満足し、かつ、コスト的にも合理的で、使い捨て用途に適したような不織布からなる清掃シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために、極細繊維の種類、繊維の太さ、組合わせる通常の繊維の太さと割合等を詳細に検討することによって、前記全ての条件を満足する不織布からなる清掃用のシートを開発したものである。
【0007】
即ち、本発明は、易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布からなる清掃シートである。
【0008】
本発明の他の態様は、易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型の吸湿性の繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布に、除菌剤又は防腐剤を含む水が含浸せしめられてなるウェットタイプの清掃シートである。
【0009】
本発明のもう一つの態様は、易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型のポリエステル繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布に、集塵剤が含浸せしめられてなるドライタイプの清掃シートである。
【0010】
そして、本発明の更に他の態様は、不織布からなる清掃シートを製造する方法であって、分割されて繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維を生成する易分割型複合繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合し、スパンレース法、スパンボンド法又はニードルパンチ法で不織布を作製することからなる清掃シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、易分割型複合繊維を分割して得られた極細繊維(マイクロファイバー)と、非分割型繊維を混合して得られた不織布からなる清掃シートが得られる。本発明においては、マイクロファイバーの清浄機能を使うことによって、界面活性剤などの洗剤成分を特に用いなくても、汚れ落としができるウェットタイプの清掃シートが得られる。また、ドライタイプでも、マイクロファイバーの分割繊維構造により、ほこり等の汚れを、特に集塵剤(流動パラフィン等)を使用しなくても絡め取ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における不織布は、易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合して得られるものである。
【0013】
易分割型複合繊維とは、機械的な衝撃により分割しやすく、分割することにより繊度が0.01〜0.7dtex程度の極細繊維を与える繊維である。かかる易分割型複合繊維としては、ポリアミド成分とポリエステル成分、ポリアミド成分とポリオレフィン成分、ポリアミド成分とポリアクリロニトリル系ポリマー成分、ポリエステル成分とポリオレフィン成分等の組合せを例示できるが、これら2種類の樹脂成分からなる易分割型繊維に限定されるものではなく、3種類以上の樹脂成分からなる易分割型複合繊維であってもよい。本発明においては、ポリアミド成分とポリエステル成分の組み合わせが好ましい。
【0014】
易分割型複合繊維中の各成分はどのように配置されていても良く、例えば、断面が、両成分を交互に放射状に張り合わせた形状の繊維(中空繊維であってもよい)や、異なる成分を交互に層状に積層したバイメタル型繊維や、一つの成分が放射状に形成され、その間にくさび形の他の成分が配置されているような断面形状を有する繊維等がある。これらの易分割型複合繊維から得られる極細繊維は、鋭利な断面形状部分を有するため、断面がほぼ円形の極細繊維に比べて、油膜などの清浄性により優れている。
【0015】
本発明において、不織布は、易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtex、好ましくは0.05〜0.2dtexの極細繊維10〜90重量%、好ましくは40〜60重量%と、繊度1〜7dtex、好ましくは1〜2dtexの非分割型繊維90〜10重量%、好ましくは60〜40重量%とからなるものである。易分割型複合繊維の量が10重量%未満の場合は、極細繊維による油膜などの清浄性が低下し、逆に、90重量%を越えると、繊維のすべり特性が悪くなり、取扱い性に劣る。また、不織布の嵩高性も低くなり集塵性が悪くなる。非分割型繊維の量が10重量%未満の場合は、あるいは、90重量%を越える場合には、前記と逆の欠点が発生するので不適当である。
【0016】
繊度1〜7dtexの非分割型繊維としては、特に制限はないが、レーヨンのような再生繊維、絹、羊毛のような動物繊維、アセテート繊維のような半合成繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維を例示できる。
【0017】
非分割型繊維として吸湿性の繊維を選択した場合には、得られた不織布に、除菌剤又は防腐剤を含む水を含浸せしめることによってウェットタイプの清掃シートとすることができる。吸湿性の繊維の中では特にレーヨンが好ましい。また、不織布に含浸させる水には、界面活性剤や香料やアルコール等を添加してもよい。
【0018】
本発明の不織布に、特に何も含浸させることなくそのまま用いると、ドライタイプの清掃シートとすることができる。この場合には、非分割型繊維としてポリエステル繊維を用いるのが好ましい。また、得られた不織布をそのままドライタイプの清掃シートとしてもよいが、不織布に流動パラフィン等の集塵剤を含浸せしめてドライタイプの清掃シートとしてもよい。
【0019】
本発明における不織布は、易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布である限り、その製法は何ら制限されるものではない。
【0020】
易分割型複合繊維は機械的な容易に分割が可能であるので、繊度1〜7dtexの非分割型繊維と混合し、例えば、カード法によりカード機を通すことで易分割型複合繊維を分割開繊し、非分割型繊維と絡合して繊維ウェブとすることができる。そして、その後、スパンレース法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、スプレー法、熱融着性繊維によるサーマルボンド法等の方法により、分割を十分なものとすると共に、繊維間の絡合又は結合を十分なものにすることによって製造することができる。極細繊維が太い非分割型繊維に点的に絡まるため、得られる繊維ウェブは剛性、強度に優れ、太い非分割型繊維による空隙を維持している。
【0021】
本発明においては、スパンレース法、スパンボンド法又はニードルパンチ法が好ましく用いられる。スパンレース法は、湿式法で繊維をウェブ化し、それに高圧柱状水流をあて、繊維を3次元交絡させる方法である。スパンボンド法は、長繊維をシート状にして熱と圧力を加えることにより不織布とするものである。スパンボンド法による不織布は、伸び縮みしないといった特性があるので、紙オムツなどの材料として適している。ニードルパンチ法は、かえしのある針により繊維を結合させてシートを形成する方法である。
【0022】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
ポリアミド成分をポリエステル成分の間に放射状に配した繊維断面をもち、16分割可能な菊花型の易分割型繊維(繊度2.2dtex、繊維長38mm)を50重量%と、非分割型繊維として繊度1.65dtex、繊維長51mmのレーヨン50重量%とを混綿し、カード機により開繊した後、スパンレーヨン法で絡合して不織布を作製した。得られた不織布の目付は45g/m、厚みは0.3mm、見掛け密度は0.15g/cmであった。
【0024】
かくして得られた不織布は、易分割型繊維を使用しているため、カード機により開繊する過程で易分割型繊維が十分に分割し極細繊維を形成し、油分や汚れの清浄性に優れている。また、非分割型繊維は太い繊維であるので、得られた不織布は空隙のために嵩高いものとなり、優れた吸塵性をも発揮する。従って、得られた不織布は適当なサイズに切断して、そのままドライタイプの清掃シートとして使用することができる。
【実施例2】
【0025】
実施例1で得られた不織布に、0.5%の市販の除菌剤と5%のエタノールを含む水を、不織布1m当たり100ml含浸せしめて、清浄性に優れたウェットタイプの清掃シートを得た。
【実施例3】
【0026】
非分割型繊維として繊度2.2dtex、繊維長38mmのポリエステル繊維50重量%を用いる以外は、実施例1と同様にして、目付、厚み、見掛け密度がそれぞれ45g/m、0.3mm、0.15g/cmの不織布を得た。得られた不織布は適当なサイズに切断して、そのまま清浄性と吸塵性に優れたドライタイプの清掃シートとすることができた。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布からなる清掃シート。
【請求項2】
易分割型複合繊維が、ポリエステル成分とポリアミド成分からなり、両成分を交互に放射状に貼り合わせた断面形状を有するものである請求項1記載の清掃シート。
【請求項3】
非分割型繊維が、吸湿性の繊維である請求項1又は2記載の清掃シート。
【請求項4】
吸湿性の繊維が、レーヨンである請求項3記載の清掃シート。
【請求項5】
非分割型繊維が、ポリエステル繊維である請求項1又は2記載の清掃シート。
【請求項6】
易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型の吸湿性の繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布に、除菌剤又は防腐剤を含む水が含浸せしめられてなるウェットタイプの清掃シート。
【請求項7】
易分割型複合繊維を分割して得られた繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型のポリエステル繊維90〜10重量%を混合して得られた不織布に、集塵剤が含浸せしめられてなるドライタイプの清掃シート。
【請求項8】
不織布からなる清掃シートを製造する方法であって、分割されて繊度0.01〜0.7dtexの極細繊維を生成する易分割型複合繊維10〜90重量%と、繊度1〜7dtexの非分割型繊維90〜10重量%を混合し、スパンレース法、スパンボンド法又はニードルパンチ法で不織布を作製することからなる清掃シートの製造方法。



【公開番号】特開2010−259633(P2010−259633A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113202(P2009−113202)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000115968)レック株式会社 (49)
【Fターム(参考)】