説明

清掃具

【課題】柄とヘッドとが着脱可能な清掃具について、ヘッドに衝撃がかかっても柄から外れにくくし、また外れた場合にも再度柄に取り付けられるようにする。
【解決手段】清掃具1のヘッド20を、高融点繊維と低融点繊維とからなる異なる繊維配合の三種のウェブをニードルパンチ法で交絡させて三層構造の不織布を形成し、さらにこれを低融点繊維のみが溶融する温度下でトレー形に成型する。これによりヘッド20は、柄10の雄面ファスナー部12bに対して着脱可能な取り付け層と、清掃液を含浸可能な下層の払拭層と、取り付け層および払拭層よりも剛性の高い中層の保形層と、を有する構造になる。ヘッド20自体が柄10の雄面ファスナー部12bに対して直接着脱できるため、清掃作業中などにヘッド20に衝撃が加わっても柄10から外れにくく、耐衝撃性が高い。また外れても、容易に再度取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床の清掃に用いられる清掃具、清掃具用のヘッド、および清掃具用ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床の清掃に用いられる清掃具として、把持可能な柄と、この柄の先端に着脱自在に取り付けられるトレー型のヘッドと、からなる特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
より詳しくは、この種の清掃具においては、柄の先端には雄面ファスナーが貼り付けられ、ヘッドの上面には雌面ファスナーが貼り付けられることで、それぞれ面ファスナー部を構成しており、これら雌雄の面ファスナー部同士を係合、脱離させる方式で、前記のようにヘッドを柄に対して着脱自在にしている(特許文献1の請求項2参照)。
【0004】
さらに、ヘッドの下面には別体のふき取り用の布が貼り付けられており、この布にワックス、洗浄剤などの清掃液を含浸させたうえで、柄をつかんでヘッドを床面上で滑らすと、清掃がおこなわれることになる。
【0005】
かかる清掃作業により、ふき取り布が損耗するなどして使用できなくなると、柄とヘッドの面ファスナー部同士の係合を解除して、ヘッドごと布を柄から取り外して廃棄する。
これにより、布に直接触れることなく、したがって手をワックス等の清掃液で汚すことなく、布の取替えが可能となる。
【0006】
このような使い捨てタイプのヘッドとしては、布と一緒に焼却処分できること、またその焼却処分の際に有毒ガスが発生しないこと、などの利点を有することから、パルプモールドにより形成されたものがよく用いられている(特許文献1の請求項3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−17641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、パルプモールドにより形成されたヘッドは、その厚み方向にパルプ層が単に積層されただけの構造であるため、おのずと層間に剥離が生じやすくなっている。
【0009】
したがって、清掃作業中に部屋の角隅にぶつかるなどしてヘッドに衝撃が加わった場合には、面ファスナー部をふくむヘッドの上層部分が、ヘッド自体から剥離し、ヘッドが柄から外れやすい問題がある。
このようにヘッドから面ファスナー部が剥がれ落ちると、ヘッドを再度柄に取り付けることができなくなり無駄が多い。
【0010】
そこでこの発明の解決すべき課題は、柄とヘッドとが着脱可能な清掃具について、ヘッドに衝撃がかかっても柄から外れにくくし、かつ外れた場合にも、容易に再度柄に取り付けられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、この発明の清掃具においては、そのヘッドを、高融点繊維と低融点繊維とからなる繊維配合の異なる三種のウェブを積層一体化させて三層構造の不織布を形成し、さらにこれを前記低融点繊維のみが溶融する温度下で熱成型することで形成したのである。
このようにしてヘッドを、前記柄の雄面ファスナー部に対して着脱可能な上層の取り付け層と、清掃液を含浸可能な下層の払拭層と、前記取り付け層および払拭層よりも剛性の高い中層の保形層と、を有する構成としたのである。
【0012】
なお、前記低融点繊維には、前記成型温度において全体が溶融する全融タイプのもの、前記成型温度において芯鞘繊維のように、鞘部分(外周部)のみが溶融するタイプのものの双方が含まれる。
また、前記高融点繊維には、融点が高いもののみならず、セルロースなどの熱ではほとんど溶融しない繊維も含まれる。
なお、不織布の形成とヘッドの熱成型とは、時間をあけておこなってもよいし、ほぼ同時におこなってもよい。
【0013】
ヘッドを以上のように構成すると、上面が雌面ファスナーと同様の機能を有するヘッド自体を、柄の雄面ファスナー部に対して直接着脱できるようになる。
したがって、ヘッドをパルプモールドで形成し、上面に雌面ファスナーを貼り付けた場合と異なって、柄の雄面ファスナー部との係合部分が、ヘッド自体から剥離する心配がない。
したがって、清掃作業中などにヘッドに衝撃が加わっても柄から外れにくく耐衝撃性が高く、また外れても、容易に再度取り付けることが可能である。
【0014】
また、ヘッド自体に直接清掃液を含浸可能であるため、別体のふき取り布を貼り付ける必要がなく、構造が簡略化され低コストで製造できる。
【0015】
さらに、清掃作業中にヘッドに衝撃が加わっても、ワックス等を含浸した下面部分がヘッド自体から剥離する心配もなく、また剛性の高い中層保形層がヘッド全体に強度を与えるため、いっそう耐衝撃性が向上している。
【発明の効果】
【0016】
清掃具用ヘッドを以上のように構成すると、ヘッドに衝撃がかかって柄から外れた場合にも、容易に再度取り付けられるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の清掃具の(a)は柄とヘッドが分離した状態の斜視図、(b)は柄にヘッドを取り付けた状態の斜視図、(c)は(b)のA−A断面図
【図2】実施形態のヘッドの(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B断面図
【図3】実施形態のヘッドの製造工程の(a)はニードルパンチ工程の概略図、(b)および(c)はプレス工程の概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1および図2に示す実施形態の清掃具1は、柄10と、この柄10に着脱可能なヘッド20と、からなり、柄10を握ってヘッド20を床面上を滑るように操作することで、清掃作業をおこなえるようになっている。
【0020】
このヘッド20には、ワックス等の清掃液を直接含浸可能になっており、また柄10はヘッド20に対して取り付け具等を介さずに直接着脱可能となっている。
そしてヘッド20が損耗したりワックスが硬化したりして使用できなくなると、柄10から取り外して使い捨てし、新しいヘッド20に取り替えるようになっている。
【0021】
くわしくは図示のように、柄10は、手で直接握られる長尺の柄本体11と、ヘッド20に着脱されるプレート形の台座12と、からなる。
台座12の上面には、対向して突出する軸受部12aが形成され、ここに柄本体11の先端部が軸受されている。
これにより、柄本体11は、台座12に対する取り付け角度を自由に回転調整可能となっている。
【0022】
また台座12は、その下面のほぼ全面に雄面ファスナーが貼り付けられて雄面ファスナー部12bが形成されている。
そして、この雄面ファスナー部12bが、ヘッド20の上面(後述する取り付け層20a)と係合および脱離できるようになっている。
【0023】
図示のように、ヘッド20は、ほぼフラットな方形の底板21と、底板21の全周から立ち上がる立ち上がり部22とを有して全体がトレー形をなしている。
また、底板21には、補強のためのリブ23が複数形成されている。
【0024】
ヘッドは図2(b)のように、その厚み方向に上中下の三層構造20a、20b、20cになっており、不織布Fを所定温度下(たとえば180℃)で図3のような雄型M1と雌型M2で挟み込んで、適宜スペーサを介してプレス加工することで熱成型されている。
【0025】
この不織布Fは、プレス加工による成型性が良好なように、その縦横各方向の50%伸長時の抗張力が30N/5cm〜300N/5cmであることが好ましい。
抗張力が30N/5cmを下回ると成型時に不織布Fに乱れが生じ、300N/5cmを上回ると不織布Fが成型用の型M1,M2の曲面にうまく追随せず、ヘッド20の立ち上がり部22などがきれいに形成されないからである。
【0026】
ここでヘッド20の上層は、前記柄10の台座12の雄面ファスナー部12bが係脱可能な取り付け層20aになっている。
また、その下層は、ワックス等の清掃液を含浸可能な払拭層20cになっている。
さらに、その中層は、取り付け層20aおよび払拭層20cよりも剛性が高く、ヘッド20全体に耐強度を与える保形層20bになっている。
【0027】
図3のように、このヘッド20を構成する前記不織布Fは、繊維配合が互いに異なる3種のウェブを積層し、昇降動するニードルNをウェブに挿抜させて、その繊維同士を交絡させ、これによりウェブを一体化させて形成されている。
【0028】
ここで前記各ウェブは、融点が前記プレス加工時における成型温度よりも低い低融点繊維と、融点が前記プレス加工時における成型温度よりも高い高融点繊維とを、それぞれ異なる所定の配合で混合することで形成されている。
【0029】
低融点繊維としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、低融点ポリエステルが挙げられ、高融点繊維としては、たとえばポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、レーヨンが挙げられる。
プレス加工の際には、不織布F各層の低融点繊維がそれぞれ溶融し、また高融点繊維がそのまま繊維の形に残ることで、ヘッド20が成型されることになる。
【0030】
くわしくは、ヘッド20の取り付け層20aを構成する不織布Fの上層は、高融点繊維が全体の50重量%〜95重量%を占め、残部が低融点繊維となっている。
したがって、プレス加工時には、不織布F上層全体の大きな割合を占める高融点繊維が溶融せずに網目様に残る。
このようにして、取り付け層20aは、雄面ファスナーと係合可能な雌面ファスナーと同様の機能を有することになる。
【0031】
ここで用いる高融点繊維として、その繊度が6デシテックス〜20デシテックスのものを選択すると、雄面ファスナーのフックが引っかかりやすくなり、取り付け層20aの雄面ファスナー部12bに対する係合および脱離がスムーズになる。
この上層の目付は特に限定されないが、たとえば50g/m〜300g/mである。
【0032】
また、ヘッド20の保形層20bを構成する不織布Fの中層は、低融点繊維が70重量%〜100重量%を占め、残部が高融点繊維となっている。
したがって、プレス加工時には、不織布Fの中層全体の大きな割合を占める低融点繊維が溶融し、保形層20bは空隙の少ないプレート様になって、ヘッド20に大きな剛性を与えることになる。
【0033】
ここで不織布Fの中層の目付は、300g/m〜600g/mであり、これによりプレス加工後の保形層20bは補強するために十分な厚みを有していることになる。
なお、中層に用いられる低融点繊維は、コストの面、強度の面などから低融点ポリエステルが好ましい。
【0034】
さらに、ヘッド20の払拭層20cを構成する不織布Fの下層は、高融点繊維が30重量%〜95重量%を占め、残部が低融点繊維となっている。
したがって、プレス加工時には、不織布Fの下層全体の大きな割合を占める高融点繊維が溶融せずに残り、払拭層20cは繊維が多く残った空隙の多い構造となって、ワックス等の清掃液が浸み込みやすくなっている。
【0035】
ここで用いる高融点繊維としては、その繊度が1.5デシテックス〜10デシテックスのものを選択するのが好ましい。
繊度が1.5デシテックスを下回ると払拭層のクッション性に劣り、10デシテックスを上回ると目が粗くなって拭きムラが生じるからである。
この下層の目付は、特に限定されないが、たとえば50g/m〜300g/mである。
また、清掃液として水性ワックス等を用いる場合には、高融点繊維としてセルロース繊維を選択すると、水になじみやすいため好ましい。
【0036】
清掃具1のヘッド20を以上のように構成したので、次のような従来にない効果が得られる。
すなわち、ヘッド20自体が柄の雄面ファスナー部12bに対して取り付け具等を介さず直接に着脱可能であるため、清掃作業中などにヘッドに衝撃が加わっても柄10から外れにくくて耐衝撃性が良好である。
また、ヘッド20が柄10から外れても、容易に再度取り付けることができる。
【0037】
また、ヘッド20自体に直接清掃液を含浸可能であるため、別体のふき取り布を貼り付ける必要がなく、構造が簡略化され低コストで製造できる。
さらに、清掃作業中にヘッド20に衝撃が加わっても、ワックス等の含浸部分が剥離等することはなく、また保形層20bがヘッド20に強度を与えるため、耐衝撃性が一層向上している。
【0038】
なお、清掃具1のヘッド20の形状については、上記実施形態に限定されない。
たとえば立ち上がり部22は底板21の全周に設けなくともよく、部分的に設けてもよい。
また、形状を簡略化するために、リブ23は省略してもよい。
同様に清掃具1の柄10の構造についても、実施形態に限定されず、先端に雄面ファスナー部12bを有する限り周知のものを用いることができる。
【0039】
また、上記実施形態では、プレス成型によりヘッド20を形成したが、真空成型、圧空成型などの他の成型方法により形成してもよい。
さらに、実施形態ではニードルパンチ法により不織布Fを形成したが、スパンボンド法、スパンレース法など他の方法により形成してもよい。
【実施例】
【0040】
つぎに実施例を挙げて、この発明の内容を一層明確にする。
【0041】
まず、以下のような三種のウェブを準備し、上中下の三層に積層した。
つぎに積層されたウェブを、ニードルパンチ法を用いて、厚みが8mm、50%伸長時の抗張力が縦130N/5cm、横150N/5cm(JISL1085−1998に準拠、つかみ間隔100mm、引っ張り速度300mm/分)の三層構造の不織布に形成した。
【0042】
(上層)
高融点繊維として、繊度が17デシテックスのポリエステル繊維を90重量%、低融点繊維として、繊度が4.4デシテックスの芯鞘タイプ低融点ポリエステル繊維(たとえばユニチカ株式会社製のメルティ4080:メルティはユニチカ株式会社の登録商標)を10重量%、全体として目付が100g/mのウェブ。
【0043】
(中層)
高融点繊維として、繊度が6.6デシテックスのポリエステル繊維を10重量%、低融点繊維として、繊度が4.4デシテックスの芯鞘タイプ低融点ポリエステル繊維(たとえばユニチカ株式会社のメルティ4080)を90重量%、全体として目付が300g/mのウェブ。
【0044】
(下層)
高融点繊維として、繊度が3.3デシテックスのレーヨン繊維を50重量%、低融点繊維として、繊度が6.6デシテックスの芯鞘タイプオレフィン繊維(たとえばチッソ株式会社製のES繊維:チッソポリプロESはチッソ株式会社の登録商標)を50重量%、全体として目付が100g/mのウェブ。
【0045】
さらに、前記した三層構造の不織布を、プレス成型機で180℃の温度下60秒間加熱し、次に6mmのスペーサを設置して100Kg/cmの圧力でコールドプレスをおこない、厚み4mmのヘッドを得た。
この加熱と加圧により、全体として熱成型がおこなわれ、不織布の上層はヘッドの取り付け層へと、不織布の中層はヘッドの保形層へと、不織布の下層はヘッドの払拭層へと、それぞれ形成された。
【0046】
このヘッドを柄に取り付け、ワックス掛け作業をおこなったところ、ヘッドに衝撃がかかっても柄との接続部分が剥離等することはなく、良好な耐衝撃性が得られることが確認された。
また、柄からヘッドが外れた場合にも、容易に取り付けなおすことができることが確認された。
【符号の説明】
【0047】
1 清掃具
10 柄
11 柄本体
12 台座
12a 軸受部
12b 雄面ファスナー部
20 ヘッド
21 底板
22 立ち上がり部
23 リブ
20a 取り付け層
20b 保形層
20c 払拭層
F 不織布
N ニードル
M1 雄型
M2 雌型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持可能な柄10の先端に設けられた雄面ファスナー部12bに取り付けられる清掃具用ヘッド20であって、
高融点繊維と低融点繊維とからなる異なる繊維配合の三種のウェブを積層一体化させて三層構造の不織布を形成し、さらにこれを前記低融点繊維のみが溶融する温度下で熱成型することで形成され、
前記柄10の雄面ファスナー部12bに対して着脱可能な上層の取り付け層20aと、清掃液を含浸可能な下層の払拭層20cと、前記取り付け層20aおよび払拭層20cよりも剛性の高い中層の保形層20bと、を有する清掃具用ヘッド。
【請求項2】
前記不織布の上層は、前記高融点繊維が50重量%〜95重量%を占める請求項1に記載の清掃具用ヘッド。
【請求項3】
前記不織布上層の高融点繊維の繊度は、6デシテックス〜20デシテックスである請求項2に記載の清掃具用ヘッド。
【請求項4】
前記不織布の中層は、前記低融点繊維が70重量%〜100重量%を占める請求項1から3のいずれかに記載の清掃具用ヘッド。
【請求項5】
前記不織布中層の目付は、300g/m〜600g/mである請求項4に記載の清掃具用ヘッド。
【請求項6】
前記不織布の下層は、前記高融点繊維が30重量%〜95重量%を占める請求項1から5のいずれかに記載の清掃具用ヘッド。
【請求項7】
前記不織布下層の高融点繊維の繊度は、1.5デシテックス〜10デシテックスである請求項6に記載の清掃具用ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の清掃具用ヘッド20と、
先端に前記ヘッド20の取り付け層20aに着脱可能な雄面ファスナー部12bを有する把持可能な柄10と、からなる清掃具。
【請求項9】
低融点繊維と高融点繊維とからなる異なる繊維配合の三種のウェブを積層一体化させて三層構造の不織布を形成する工程と、
この不織布を前記低融点繊維のみが溶融する温度下で熱成型し、雄面ファスナーに対して着脱可能な上層の取り付け層20aと、清掃液を含浸可能な下層の払拭層20cと、前記取り付け層および払拭層よりも剛性の高い中層の保形層20bと、からなるヘッド20を形成する工程と、を含む清掃具用ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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