説明

清掃具

【課題】繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、塵埃等を容易に除去することが可能な清掃具を提供する。
【解決手段】繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、前記繊維束に、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃を容易に除去することが可能な清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピューター(キーボードやモニターなど)や各種電子機器に付着した塵埃を除去するため、繊維束からなる払掃部材を有する清掃具が使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、かかる清掃具において、塵埃等を除去する効果においてまだ充分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−141983号公報
【特許文献2】特開2008−55106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、塵埃等を容易に除去することが可能な清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aを含む繊維束を用いて清掃具を構成すると、塵埃等を容易に除去することができることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、前記繊維束に、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれることを特徴とする清掃具。」が提供される。
【0007】
その際、前記フィラメント糸Aがポリエステルからなることが好ましい。また、前記フィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。また、清掃具が、前記払掃部材と把持用の柄とで構成され、かつ前記払掃部材が着脱自在であることが好ましい。また、清掃具が、パーソナルコンピューターや携帯電話のなどの電子機器に付着した塵埃を払掃するために用いられる清掃具であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、塵埃等を容易に除去することが可能な清掃具が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の清掃具は、繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、前記繊維束に、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれる。
【0010】
ここで、前記フィラメント糸Aにおいて、その単繊維径(単繊維の直径)が10〜1000nm(好ましくは100〜800nm)の範囲内であることが肝要である。かかる単繊維径を単繊維繊度に換算すると、0.000001〜0.01dtexに相当する。該単繊維径が10nmよりも小さい場合は繊維強度が低下するため実用上好ましくない。逆に、該単繊維径が1000nmよりも大きい場合は、塵埃等を容易に除去することができないおそれがある。ここで、単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、外接円の直径を単繊維径とする。なお、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
【0011】
前記フィラメント糸Aを形成するポリマーの種類としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0012】
前記フィラメント糸Aとしては、後記のように、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条であることが好ましい。
かかる糸条は例えば以下の方法により製造することができる。まず、海成分とその径が10〜1000nmである島成分とで形成される海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維)を用意する。かかる海島型複合繊維としては、特開2007−2364号公報に開示された海島型複合繊維マルチフィラメント(島数100〜1500)が好ましく用いられる。
【0013】
すなわち、海成分ポリマーとしては、繊維形成性の良好なポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレンなどが好ましい。例えば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリエチレングルコール系化合物共重合ポリエステル、ポリエチレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホン酸イソフタル酸の共重合ポリエステルが好適である。なかでも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングルコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。
【0014】
一方、島成分ポリマーは、繊維形成性のポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステルが好ましい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、着色剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0015】
上記の海成分ポリマーと島成分ポリマーからなる海島型複合繊維は、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。また、島成分の径は、10〜1000nmの範囲とする必要がある。その際、島成分の形状が真円でない場合は外接円の直径を求める。前記の海島型複合繊維において、その海島複合重量比率(海:島)は、40:60〜5:95の範囲が好ましく、特に30:70〜10:90の範囲が好ましい。
【0016】
かかる海島型複合繊維は、例えば以下の方法により容易に製造することができる。すなわち、前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーとを用い溶融紡糸する。溶融紡糸に用いられる紡糸口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。吐出された海島型断面複合繊維は、冷却風によって固化され、好ましくは400〜6000m/分で溶融紡糸された後に巻き取られる。得られた未延伸糸は、別途延伸工程をとおして所望の強度・伸度・熱収縮特性を有する複合繊維とするか、あるいは、一旦巻き取ることなく一定速度でローラーに引き取り、引き続いて延伸工程をとおした後に巻き取る方法のいずれでも構わない。
【0017】
かくして得られた海島型複合繊維(マルチフィラメント糸)において、単糸繊維繊度、フィラメント数、総繊度としてはそれぞれ単糸繊維繊度0.5〜10.0dtex、フィラメント数5〜75本、総繊30〜170dtexの範囲内であることが好ましい。また、かかる海島型複合繊維の沸水収縮率としては5〜30%の範囲内であることが好ましい。
【0018】
次いで、前記海島型複合繊維(フィラメント糸A用繊維)にアルカリ水溶液処理を施し、前記海島型複合繊維の海成分をアルカリ水溶液で溶解除去することにより、海島型複合繊維を単繊維径が10〜1000nmのフィラメントAとする。その際、アルカリ水溶液処理の条件としては、濃度3〜4%のNaOH水溶液を使用し55〜65℃の温度で処理するとよい。
【0019】
また、該アルカリ水溶液による溶解除去の前および/または後に繊維に染色加工を施してもよい。さらに、常法の、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0020】
本発明の清掃具において、払掃部材を構成する繊維束は前記フィラメント糸Aで構成される。その際、繊維束において、総繊度は10000〜1000000dtexの範囲内であることが好ましい。また、繊維長としては5〜30cmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の清掃具において、特開2008−55106号公報に記載されているように、清掃具が、前記払掃部材と把持用の柄とで構成され、かつ前記払掃部材が着脱自在であることが好ましい。
本発明の清掃具において、払掃部材を構成する繊維束に、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれているので、塵埃等を容易に払掃することができる。
【0022】
本発明の清掃具は、パーソナルコンピューターや携帯電話のなどの電子機器に付着した塵埃を払掃するために好適に用いられるが、美容用や自動車内装の塵埃除去用など他の用途で用いても何らさしつかえない。
【実施例】
【0023】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0024】
<溶融粘度>
乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見る。
【0025】
<溶解速度>
海・島成分の各々0.3φ−0.6L×24Hの口金にて1000〜2000m/分の紡糸速度で糸を巻き取り、さらに残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、84dtex/24filのマルチフィラメントを作製する。これを各溶剤にて溶解しようとする温度で浴比100にて溶解時間と溶解量から、減量速度を算出した。
【0026】
<ダスト拭取性>
評価用ダストとしてJIS試験用ダスト7種(関東ローム、細粒)1.5gを試験用フローリングの上に散布した後、払掃部材を把持具に取り付けて拭き取り、下記の4段階の評価基準に基づいて評価を行なった。
◎:非常に優れた拭取性を示した。
○:優れた拭取性を示した。
△:拭き取れる量は少ないが、使用可能である。
×:ほとんど拭き取れず、実用性に欠ける。
【0027】
<パン屑拭取性>
評価用パン屑として、市販の固形パン粉(1〜2mm)0.5gを試験用フローリングの上に散布した後、払掃部材を把持具に取り付けて拭き取り、上記のダスト拭取性の4段階の評価基準を用いて評価を行なった。
【0028】
<髪の毛拭取性>
評価用髪の毛として、試験用人毛髪(15〜20cm)10本を試験用フローリングの上に散布した後、払掃部材を把持具に取り付けて拭き取り、上記のダスト拭取性の4段階の評価基準を用いて評価を行なった。
【0029】
<ゴミ保持性>
拭取試験法で示した3種の試験用ゴミを拭き取った後のシートを軽く振ってゴミを振り落とし、落ちたゴミ及びシートに残ったゴミの状態を観察し、下記の3段階で評価基準を用いて評価を行なった。
○:ほとんどシートに残っており、優れた保持性を示した。
△:多少落ちるゴミはあるが、使用可能である。
×:かなりの量が振り落とされ、実用性に欠ける。
【0030】
[実施例1]
島成分としてポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1200ポイズ、艶消し剤の含有量:0重量%)、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%と数平均分子量4000のポリエチレングリコール6重量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(280℃における溶融粘度が1750ポイズ)を用い(溶解速度比(海/島)=230)、海:島=30:70、島数=836の海島型複合未延伸繊維を、紡糸温度280℃、紡糸速度1500m/分で溶融紡糸して一旦巻き取った。
得られた未延伸糸を、延伸温度80℃、延伸倍率2.5倍でローラー延伸し、次いで150℃で熱セットして巻き取った。得られた海島型複合延伸糸(ポリエステルフィラメントA用繊維)は56dtex/10filであり、透過型電子顕微鏡TEMによる繊維横断面を観察したところ、島の形状は丸形状でかつ島の径は710nmであった。
【0031】
次いで、海島型複合延伸糸の海成分を除去するために延伸糸を3.5%NaOH水溶液で、70℃にて30%アルカリ減量した。
次いで、かかる繊維(単繊維径710nm)を束ねて総繊度100000dtex、長さ10cmのトウ繊維束とし、該繊維束を払掃部材として、特開2008−55106号公報と同様に、払掃部材と把持用の柄とで構成され、かつ前記払掃部材が着脱自在である清掃具を得た。
かかる清掃具のふき取り物性を評価した結果、ダスト拭取性◎、パン屑拭取性◎、髪の毛拭取性◎、ゴミ保持性◎、であり、高い拭き取り性能を有していた。
また、かかる清掃具を用いてパーソナルコンピューターのキーボードおよびモニターの塵埃を除去したところ容易に除去できた。
【0032】
[比較例1]
繊維径が10〜20マイクロメートルのポリエステル繊維を用いる以外は、実施例と同様のものを作成し、拭き取り性を評価した。その結果、その結果、ダスト拭取性△、パン屑拭取性△、髪の毛拭取性△、ゴミ保持性△、であり、拭き取り性能は使用可能ではあるが、不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、塵埃等を容易に除去することが可能な清掃具が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束からなる払掃部材を有する清掃具であって、前記繊維束に、単繊維径が10〜1000nmのフィラメント糸Aが含まれることを特徴とする清掃具。
【請求項2】
前記フィラメント糸Aがポリエステルからなる、請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
前記フィラメント糸Aが、海成分と島成分とからなる海島型複合繊維の海成分を溶解除去して得られた糸条である、請求項1または請求項2に記載の清掃具。
【請求項4】
清掃具が、前記払掃部材と把持用の柄とで構成され、かつ前記払掃部材が着脱自在である、請求項1〜3のいずれかに記載の清掃具。
【請求項5】
清掃具が、パーソナルコンピューターや携帯電話のなどの電子機器に付着した塵埃を払掃するために用いられる清掃具である、請求項1〜4のいずれかに記載の清掃具。

【公開番号】特開2010−253102(P2010−253102A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107771(P2009−107771)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】