説明

清掃具

【課題】液剤を被清掃面へ略均等に塗布する操作を容易にして、清掃作業の効率の向上や清掃の仕上がりの向上に寄与することのできる清掃具を提供する。
【解決手段】清掃ヘッド11と柄12とからなり、清掃ヘッド11に清掃シートを取着して用いる清掃具10であって、清掃ヘッド11は、液溜まり部14と、液溜まり部14に供給された液剤を上方からの静水圧の作用によって多数の微細流路を通過させつつ、清掃ヘッド11の清掃クッション17による清掃面17aに徐々に放出させる液徐放部15とからなる液徐放機構16を備えており、液徐放部15は、清掃ヘッド11の清掃面17aに臨むようにして、略矩形形状の清掃ヘッド11の短手方向から見た清掃ヘッド11の長手方向の幅の略全幅に亘って連続して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃シートを取着して用いる清掃ヘッドを備えた清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
清掃ヘッドの清掃クッション部に例えば液体洗浄剤やワックス等の液剤を供給して、当該清掃クッション部や清掃クッション部に取着した清掃シートを湿った状態とすることにより、床面等の被清掃面の清掃や仕上げを効率良く行えるようにした清掃具が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
ここで、特許文献1の清掃具は、清掃ヘッドに液剤を密封収容したボトルを設け、ボトルに圧力を加えることにより、吐出バルブを介して塗布用パッド(清掃クッション部)に液剤を供給して、液剤を床面等の被清掃面に塗布するものである。また、特許文献2の清掃具は、清掃ヘッドに清掃液貯留容器を設け、清掃液貯留容器に圧力を加えることにより、清掃液貯留容器から清掃ヘッドに取着した清掃シートに液剤を供給して、清掃シートを湿潤状態にするものである。さらに、特許文献3の清掃具は、箱体(清掃ヘッド)に洗浄液を収容したカートリッジが取り付けられており、柄に設けたポンプからの圧力によって、カートリッジに配設したノズルを介して清掃ヘッドの表面に洗浄液を供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−70205号公報
【特許文献2】特表2005−528941号公報
【特許文献3】特開2000−201877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、清掃クッション部や清掃シートを湿った状態として床面等の被清掃面の清掃や仕上げを行うようにした上記従来の清掃具では、いずれも、清掃ヘッドに設置したボトル、清掃液貯留容器、又はカートリッジに、人力によって直接圧力を負荷して、複数の小孔状のノズル部から液剤を吐出させるものである。このため、例えば圧力を負荷した直後は多量の液剤が小孔状のノズル部を介して被清掃面に塗布されるが、その後に再び圧力を負荷するまでの間に、徐々に塗布される液剤が少なくなること等により、塗布量にバラツキが生じやすくなって、液剤を安定した状態で略均等に被清掃面に塗布することが困難になる。また、小孔状のノズル部を介して液剤が吐出されることから、ノズル部の付近の清掃シートに液剤が偏在しやすく、結果として液剤が被清掃面において偏って存在することとなり、そのまま放置すると、液剤の塗りムラ等が生じて清掃の仕上がりが悪くなる場合があった。
【0006】
そこで、清掃作業者がこのような偏在を認識したときは、ヘッドを左右に繰り返し広範囲に動かして液剤を薄く広く延ばすなどして対応しており、清掃作業の効率が低下する原因となっていた。また、清掃作業者がこのような清掃シートに吐出された液剤の偏在に気がつかず清掃作業を終了してしまうと、結果として清掃の仕上がりが悪くなることがあった。
【0007】
一方、本願発明者らは、液剤を収用するタンク部を清掃ヘッドの上方に設けると共に、被圧流体を多数の微細流路を通過させつつ徐々に放出させる徐放機能を備える液徐放部を清掃ヘッドに設け、タンク部に収容された液剤の水頭差によって常時負荷される静水圧を利用して、人力による圧力を加えなくても、液徐放部から液剤を安定した状態で略均等に徐放させつつ被清掃面に塗布できるようにした清掃具を開発している。
【0008】
このような清掃具では、例えばタンク部から液徐放部への液剤の供給を停止して、清掃作業を一旦終了した後に再び清掃作業を行う場合や、清掃作業を長時間行った場合等、何等かの要因によって、液剤を略均等に塗布させることが困難になる場合がある。したがって、液剤を液徐放部の全体で略均等に徐放させる状態に容易に復元できるようにするための新たな技術の開発が望まれている。また、清掃作業によっては、液徐放部から一時的により多くの液剤を放出させたい場合もある。
【0009】
本発明は、液剤を被清掃面へ略均等に塗布する操作を容易にして、清掃作業の効率の向上や清掃の仕上がりの向上に寄与することのできる清掃具を提供することを課題とする。
また、本発明は、液徐放部の液剤放出に不均等(不均一さ、偏り)が生じても、液徐放部の全体で略均等に液剤を徐放させる状態に容易に復元できると共に、必要に応じて液徐放部から一時的に多くの液剤を放出させることのできる清掃具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、清掃ヘッドに清掃シートを取着して用いる清掃具であって、前記清掃ヘッドは、液溜まり部と、該液溜まり部に供給された液剤を圧力の作用によって多数の微細流路を通過させつつ前記清掃ヘッドの清掃面に徐々に放出させる液徐放部とからなる液徐放機構を備えており、前記液徐放部は、前記清掃ヘッドの清掃面に臨むようにして、少なくとも一方向から見た前記清掃ヘッドの幅の略全幅に亘って連続して設けられている清掃具を提供することで、上記課題を解決する。
【0011】
ここで、圧力とは、ポンプなどの加圧手段により、液剤に直接間接に圧力が加えられる場合のみならず、放出部より上方に液剤を設置することによって生じる、いわゆる静水圧も含む。
また、少なくとも一方向から見た清掃ヘッドの幅の略全幅に亘って液徐放部が設けられているとは、好ましくは清掃作業を行う際に清掃ヘッドが動かされる主たる方向と対向する方向から清掃ヘッドを見た際に、清掃ヘッドの両端を除いたこれの幅方向の略全幅に亘って液徐放部が連続していることを意味する。また液徐放部は、当該少なくとも一方向から見た際に幅方向に連続してれば良く、他の方向から見た際に断続した状態で設けられていても良い。さらに、液徐放部は、例えば当該少なくとも一方向と垂直な方向から見た際にも、清掃ヘッドの幅方向の略全幅に亘って液徐放部が連続して設けられていることが好ましい。例えば、清掃ヘッドの清掃面となる底面が略矩形形状を備えている場合に、短辺方向から見た際に長辺方向の略全幅に亘って液徐放部が連続していることに加えて、長辺方向から見た際にも短辺方向の略全幅に亘って液徐放部が連続していることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の清掃具によれば、液剤を被清掃面へ略均等に塗布する操作を容易にして、清掃作業の効率の向上や清掃の仕上がりの向上に寄与することができる。
また、清掃ヘッドに連結する柄に、液供給パイプを介して液溜まり部と連通するタンク部を設けておき、このタンク部には、収容された液剤の静水面に圧力を負荷する加圧手段を設けておけば、液徐放部の液剤放出に不均等(不均一さ、偏り)が生じても、液徐放部の全体で略均等に液剤を徐放させる状態に容易に復元できると共に、必要に応じて液徐放部から一時的に多くの液剤を放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る清掃具の斜視図である。
【図2】中空弾性体を備える蓋部材の、(a)はタンク部の上端開口を閉塞した状態の斜視図、(b)はタンク部の上端開口を開放した状態の斜視図である。
【図3】清掃ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図4】カートリッジタイプの液徐放機構の清掃ヘッドへの取り付け状況を説明する断面図である。
【図5】カートリッジタイプの液徐放機構の構成を説明する、(a)は部分破断側面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【図6】清掃ヘッドの構成を説明する、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図7】液徐放部の下端面を清掃ヘッドの底面から突出させることなく設けた状態を説明する略示断面図である。
【図8】(a)〜(f)は、液徐放部を清掃ヘッドの幅の略全幅に亘って設けた他の形態を例示する略示底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る清掃具10は、清掃ヘッド11に着脱交換可能に取着される使い捨て用の清掃シート(図示せず。)を液体洗浄剤やワックス等の液剤によって湿らせた状態で、例えば床面を被清掃面として清掃作業や仕上げ作業を行う際に用いられる。また、本実施形態の清掃具10は、清掃ヘッド11の上方に位置して、柄12の上部に液剤を収容するタンク部13が設けられている。このタンク部13から液供給パイプ21を介して清掃ヘッド11に設けられた液徐放機構16(図3、図4参照)に液剤を供給することにより、静水圧を利用して液徐放機構16から液剤を放出させて清掃作業や仕上げ作業を行うことができるようになっている。そして、本実施形態の清掃具10は、例えば液徐放機構16の液徐放部15に液剤放出の不均等(不均一さ、偏り)が生じた場合でも、液徐放部15の全体で略均等に液剤を徐放させる状態に容易に復元させることのできる機能を備えている。
【0015】
また、本実施形態では、図4及び図6(a),(b)に示すように、液徐放部15は、清掃ヘッド11の長手方向の略全幅に亘って連続して設けられていて、液剤を被清掃面へ略均等に塗布する操作を容易にする機能を備えている。
【0016】
すなわち、本実施形態の清掃具10は、清掃ヘッド11と柄12とからなり、清掃ヘッド11に清掃シート(図示せず。)を取着して用いる清掃具であって、図3〜図6にも示すように、清掃ヘッド11は、液溜まり部14と、液溜まり部14に供給された液剤を上方からの静水圧の作用によって多数の微細流路を通過させつつ、清掃ヘッド11の清掃クッション17による底面(清掃面)17aに徐々に放出させる液徐放部15とからなる液徐放機構16(図5参照)を備えており、液徐放部15は、清掃ヘッド11の清掃面となる底面17aに臨むようにして、少なくとも一方向(本実施形態では短手方向X)から見た清掃ヘッド11の幅の略全幅に亘って連続して設けられている。
【0017】
また、本実施形態では、柄12は、液供給パイプ21を介して液溜まり部14と連通するタンク部13を備えており、タンク部13には、収容された液剤の静水面に圧力を負荷する加圧手段22が設けられている。そして、タンク部13より液徐放部15を経て液剤が清掃面となる清掃ヘッド11の底面17aを覆う清掃シートへと供給されるようになっている。
【0018】
さらに、本実施形態では、加圧手段22は、タンク部13と連通する中空内部を備えると共に、外気からの空気の流入を許容し、外気への空気の流出を遮断する機能を有する逆止弁(図示せず。)と中空弾性体からなり(図2(a),(b)参照)、この中空弾性体22を圧縮変形させることにより、液剤の静水面に圧力を負荷するようになっている。
【0019】
本実施形態では、清掃ヘッド11と柄12は、公知のユニバーサルジョイント18を介して連結されている。これによって、柄12は、清掃ヘッド11に対してその向きを垂直面に沿った前後方向に変えるだけでなく、前後左右の4方向へ変えることができると共に、360°のいずれの方向に対しても回動でき、しかも清掃ヘッド11のヘッド角を調整できるようなっている。
【0020】
清掃ヘッド11は、図3に示すように、略矩形平面形状を備えるように成形された合成樹脂製のヘッド本体19の下面側に、底面17aが平坦な略矩形平面形状の弾性面となった清掃クッション17を装着して形成される。ヘッド本体19の上面部の中央部分には、ユニバーサルジョイント18を介して柄12が連結しており、清掃時に柄12からの押圧力を受けて、清掃クッション17の底面17aは、清掃シートを介在させつつ被清掃面に適度に押し付けられた状態で接触する。
【0021】
また、ヘッド本体19の上面部には、ジグザグ状のスリット20aが形成された柔軟な弾性材料からなる公知のシート保持部20が、当該上面部の周縁部分に配置されて4箇所に設けられている。例えば下面側の清掃クッション部17を覆うようにして清掃シート(図示せず。)を清掃ヘッド11に巻き付けた後に、清掃シートの端縁部を、スリット20aを介してシート保持部20に押し込むことにより、清掃シートが清掃ヘッド11に着脱交換可能に容易に取着される。
【0022】
さらに、ヘッド本体19の上面部には、ユニバーサルジョイント18に隣接して、後述する装着用凹嵌部25の中央部と対応する位置に、パイプ挿通スリーブ26が上方に突出して設けられている。このパイプ挿通スリーブ26には、液供給パイプ21の下端部が挿通されて、後述する液徐放機構16のパイプ装着部24に装着される。
【0023】
そして、ヘッド本体19の内部には、図4に示すように、液溜まり部14と液徐放部15とからなる液徐放機構16が設けられている。本実施形態では、液徐放機構16は、着脱交換可能なカートリッジタイプの部材からなる。液徐放機構16は、図5(a),(b)に示すように、系着蓋14aによって両端が閉塞されると共に、下面開口の両側縁部に内側に折れ曲がった係止リブ14bが各々設けられた、略倒立U字形の断面形状を有する管状のタンク部分である合成樹脂製の液溜まり部14と、略T字形の断面形状を有する、例えば樹脂焼結体、フェルト、連泡スポンジ、パルプ、不織布、ゴム等の多孔質素材からなる液徐放部15とによって構成される。図5(a)から明らかなように、液溜まり部14は、ほぼ液徐放部15に対応する長さと幅をもって、液徐放部15と同様に、清掃ヘッド11の幅の略全域に亘って連続して設けられている。そして、液溜まり部14が液徐放部15の全長に亘ってその裏側(底面とは反対側)に存在し、後述するように、液溜まり部14に供給された液剤が液溜まり部14から液徐放部15の全体に効率よく供給される。
【0024】
ここで、液徐放機構16の液徐放部15は、タンク部13から液溜まり部14に供給された液剤を上方からの静水圧の作用によって通過させる際に、例えば多孔質素材による多数の微細流路による表面張力によって、液剤の通過速度を抑制し、液剤を滲み出させるようにして全体から略均等に吐出させる機能、すなわち液剤を徐放する機能を備えている。このような機能を効果的に発揮できるように、液剤の放出量は0.01〜0.5g/secが好ましく、0.02〜0.4g/secが更に好ましく、0.04〜0.3g/secが特に好ましい。液剤放出量は、多孔質素材との界面張力や粘度といった液剤の物性や、細孔径の大きさや空隙率といった多孔質素材の状態を適宜選択することで調整できる。液剤の多孔質素材における透液度を適宜選定したり、液剤の静水圧や液剤放出面積を適宜最適に設計する事でも濡れ掃除に要求される放出量を適宜調整する事が出来る。多孔質素材を空気の透し易さの指標となる透気度を目安として選択する場合は、0.5〜200μm/(Pa・sec)のものを用いるのが好ましく、1.0〜100のものが更に好ましく、1.0〜50のものが特に好ましい。
【0025】
液徐放部15は、略T字形の断面形状の天面部15aを、係止リブ14bに支持させて液収容部14の内部に配置すると共に、略T字形の断面形状の脚部15bを、両側の係止リブ14bの間のスリット状の開口から下方に突出させた状態で、液溜まり部14に一体として取り付けられる。これによって、カートリッジタイプの液徐放機構16は、側面から見た形状が帯板形状を有するように形成される。
【0026】
本実施形態では、液溜まり部14は、例えば0.5〜2cc程度の容量を有しており、これの中央部分から上方に突出して、パイプ装着部24が設けられている。このパイプ装着部24には、液供給パイプ21の下端部が液密な状態で着脱可能に装着される。液溜まり部14は、タンク部13から、液供給パイプ21及びパイプ装着部24を介して液徐放機構16に局所的に供給される液剤を、当該液溜まり部14による貯留領域の全体に拡げて貯留することにより、いわゆるバッファ機能を発揮して、液徐放部15の天面部15aの全体に亘って上方から均等な静水圧が負荷されるようにする。
【0027】
また、液溜まり部14の内部には、これの天端部の内側から下方に突出して、サポートリブ14cが、液溜まり部14の軸方向に間隔をおいて複数設けられている。サポートリブ14cは、その先端を液徐放部15の天面部15aの上面に当接させ、清掃時に清掃ヘッド11に負荷される押圧力によって、被清掃面からの反力で液徐放部15が上方に移動して液溜まり部14の内部に過度に押し込まれるのを防止する液徐放部位置保持手段として機能する。なお、サポートリブ14cに代えて液溜まり部14の軸方向に延在する段差を設けて液徐放部位置保持手段としても良い。
【0028】
そして、本実施形態では、液溜まり部14と液徐放部15とからなる液徐放機構16は、図4に示すように、ヘッド本体19の内部に着脱交換可能に取り付けられる。すなわち、本実施形態では、ヘッド本体19の内部には、例えばユニバーサルジョイント18と、ヘッド本体19の一方の長辺に沿った部分の一対のシート保持部20との間において、清掃ヘッド11の長手方向Yと略平行に配置されて、ヘッド本体19の下面側に向けて開口する装着用凹嵌部25が設けられている(図3参照)。例えばパイプ装着部24に液供給パイプ21の下端部を装着した状態で、装着用凹嵌部25の下方から、液溜まり部14を上方に配置しつつカートリッジタイプの液徐放機構16を嵌め込むようにして挿入し、例えば装着用凹嵌部25の両端部分に設けた系着凹部23に、液溜まり部14の両端の系着蓋14aの部分を各々嵌めた状態で、バネ等の付勢手段を介して進退可能な系着突起27を系着蓋14aの一端に係着することにより、液徐放機構16をヘッド本体19の内部に容易に取り付けることができる。
【0029】
図6(a),(b)に示すように、ヘッド本体19の下面を覆って清掃クッション17が装着されている。清掃クッション17には、ヘッド本体19の装着用凹嵌部25と対応する位置に、液徐放機構16と同程度の幅を有するスリット溝28が開口形成されている。液徐放機構16は、このスリット溝28に、例えば清掃ヘッド11の清掃クッション17による底面17aの側から差し込まれる。これによって、液徐放機構16の液徐放部15の脚部15bの下端面15cは、清掃ヘッド11の清掃面となる底面17aに臨むようにして、当該底面17aと面一又は略面一になるように配置されて帯状に設けられることになる。また、液徐放部15の脚部15bの下端面15cは、略矩形平面形状を備える清掃ヘッド11の長辺と平行になるように直線状に連続して配置されることになる。さらに、液徐放部15の脚部15bの下端面15cは、清掃時の清掃ヘッド11への押圧力によって、清掃クッション部17の底面17aと共に清掃シートを介して被清掃面に接触することになる。
【0030】
ここで、本実施形態では、清掃ヘッド11の清掃面17aに臨む液徐放部15の下端面15cの幅は、略矩形平面形状を備える清掃ヘッド11の短辺の長さの10分の一程度としたが、この幅は液剤の分配量や清掃作業時の清掃ヘッド11の設計移動速度等に応じて適宜定めることができる。液徐放部15の長さは、清掃ヘッド11の長辺の長さにできるだけ近い方が塗布作業の際にヘッドを左右に動かす必要が少なくなり好ましいが、本実施形態では、着脱機構の制約などから約30mm短くなっている。
【0031】
また、液徐放部15の下端面15cは、無荷重の状態でのクッション部17の清掃面17aからの突出高さsが例えば0mmよりも大きく、且つ2mmよりも小さい僅かな突出高で、クッション部17の底面17aから下方に出してある。液徐放部15の下端15cが僅かな突出高さでクッション部17の清掃面17aから下方に出ていることにより、清掃ヘッド11への押圧力によって液徐放部15から徐放される液剤の量を調整することが可能になる。一方、清掃ヘッド11への押圧力が負荷されても、液徐放部15の下端15cの周囲には清掃クッション部17が存在するので、液徐放部15が潰れすぎることなく、適度な量の液剤の徐放が可能になる。
【0032】
さらに、液徐放部15の下端面15cは、図7に示すように、無荷重の状態でクッション部17の清掃面17aから突出させることなく、例えば2mmを超えない深さs’でクッション部17の清掃面17aから凹んだ状態で設けることもできる。液徐放部15の下端面15cがクッション部17の清掃面17aから突出していない場合でも、液剤は、液徐放部15から放出されて滴下する前に表面張力等によって清掃ヘッド11の底面を覆う清掃シートに移行して、当該清掃シートに広がることになる。また、清掃ヘッド11への押圧力によってクッション部17が押圧変形することにより、液徐放部15の下端面15cは清掃シートを介して被清掃面と接触することになる。
清掃ヘッド11を弾性を備える部材で構成し、液徐放部15を焼結金属などの弾性を実質的に有しないか、清掃ヘッド11より弾性変形しにくい部材で構成する場合は、液徐放部15の下端面15cを清掃面17aから凹んだ状態で設けることが好ましい。
【0033】
ユニバーサルジョイント18を介して清掃ヘッド11に連結される柄12は、図1に示すように、例えば合成樹脂製のパイプ部材からなり、清掃具10を用いて立った状態で清掃作業を行うのに適した、例えば50〜120cm程度の長さを有している。また柄12の上部には、把持部の一部を構成するようにして、円筒形状のタンク部13が設けられている。さらに、柄12の中空内部には、タンク部13と、清掃ヘッド11に設けられた上述の液徐放機構16の液溜まり部14とを連通する液供給パイプ21が配設されている。なお、シールを施すことで、柄12自体を液の供給管として用いることも可能である。
【0034】
タンク部13は、好ましくは透明な合成樹脂を用いて円筒形状に形成されており、柄12の上部に当該柄12と一体として取り付けられる。タンク部13は、例えば20〜100cc程度の内容量を有しており、図2(a),(b)に示すように、これの上端開口を開閉可能に覆って取り付けられた、加圧手段としての中空弾性体22を一体として備える蓋部材29を開閉することにより、液体洗浄剤やワックス等の液剤を適宜補充することができるようになっている。
【0035】
蓋部材29は、弾性を有するゴム材料からなり、固定スリーブ部30と、固定スリーブ部30に対して回動可能にヒンジ連結される蓋本体部31とによって構成される。固定スリーブ部30は、タンク部13の外径と同じか僅かに小さな内径を有するスカート状の部分であって、弾性変形させつつタンク部13の上端部分の外周面に沿って装着することにより、当該上端部分に気密な状態で固定される。
【0036】
蓋本体部31は、ヒンジ部32を支点として固定スリーブ部30に対して回動することにより、基盤部35に形成した嵌合凸部33を固定スリーブ部30の上面開口に気密に嵌め込んで閉塞した状態(図2(a)参照)と、基盤部35を開いて固定スリーブ部30の上面開口を開放した状態(図2(b)参照)とを、容易に切り替えることができるようになっている。また、蓋本体部31には、係止爪34が設けられている。この係止爪34を弾性変形させつつ固定スリーブ部30の係止突起38に係止固定することにより、蓋本体部31によってタンク部13の上端開口(固定スリーブ部30の上面開口)を気密に閉塞した状態を強固に保持することができる。さらに、係止爪34の開放操作部34aを押圧することにより係止突起38への係止状態を解除して、タンク部13の上端開口を容易に開放できるようになっている。
【0037】
本実施形態では、蓋本体部31は、加圧手段としての中空弾性体22を構成する部分である。蓋本体部31は、円盤形状の基盤部35と、基盤部35の上面側に球状に膨出して一体として形成された球体部36とからなる。基盤部35は、ヒンジ部32を介して固定スリーブ部30と回動可能に連結されると共に、下面側から下方に突出して上述の嵌合凸部33が設けられている。基盤部35には、外気から中空弾性体22の内部に空気が流入するのを許容すると共に、中空弾性体22の内部から外気へ空気が流出するのを遮断する機能を有する公知の逆止弁(図示せず。)が設けられている。また、基盤部35の中央を貫通して、中空弾性体22の中空内部とタンク部13とを連通する通気流路37が設けられていると共に、通気流路37に、公知の逆止弁(図示せず。)が設けられ、中空弾性体22よりタンク部13への空気の流通を許容し、タンク部13より中空弾性体22への空気や液の戻りを遮断している。
【0038】
これらによって、蓋本体部31による中空弾性体22は、例えば球体部36を挟み込むように押圧して圧縮変形させ、内部の空気を通気流路37を介してタンク部13に向けて押し出すことにより、タンク部13に収容された液剤の静水面に圧力を負荷する機能を備える。また、球体部36の押圧を解除すれば、球体部36はその弾性によって、逆止弁を介して内部に空気を取り込みながら元の形状に復帰する。
【0039】
タンク部13と清掃ヘッド11の液徐放機構16とを連通する液供給パイプ21は、例えば可撓性を有する合成樹脂製のチューブ材料からなる。液供給パイプ21は、その上端が柄12の内部においてタンク部13に連結されると共に、柄12の内部に配設されて下方に延設した後、柄12の下端部に開口形成された導出穴39を介して柄12の外側に導出される(図1参照)。また、柄12の外側に導出された液供給パイプ21の下端部は、ヘッド本体19の上面部に設けたパイプ挿通スリーブ26を介して、ヘッド本体19の内部に挿入され、公知の各種の取付け治具を用いて液徐放機構16のパイプ装着部24に液密な状態で装着される。
【0040】
さらに、液供給パイプ21には、タンク部13から液徐放機構16の液溜まり部14への液剤の供給を行い又は停止する開閉バルブ(図示せず。)が、柄12の内部に配置されて設けられている。開閉バルブは、例えば柄12の外側に設けられた開閉レバー40(図1参照)からの操作によって容易に開閉させることができる。開閉バルブの開閉操作によって、例えば清掃具10の使用時における、タンク部13と液溜まり部14とを連通させて液溜まり部14に静水圧を負荷しつつ液剤を供給可能な状態と、例えば清掃具10の非使用時における、タンク部13と液溜まり部14との連通を遮断して液溜まり部14に静水圧が負荷されないようにすると共に、液剤の供給をストップした状態とを、容易に切り替えることができるようになっている。
【0041】
上述の構成を備える本実施形態の清掃具10では、清掃作業や仕上げ作業を行う際には、清掃クッション部17の底面17aを覆うようにして清掃シートを清掃ヘッド11に取り付け、開閉バルブを開放して、液徐放機構16の液溜まり部14に静水圧を負荷すると共に、タンク部13から液溜まり部14に液剤が常時供給可能な状態とする。これによって、清掃シートには、液徐放機構16の液徐放部15の全体から、液剤が略均等に徐々に供給されることになり、清掃シートは適度な湿潤状態を保持して、床面等の被清掃面に液剤を略均等に塗布しつつ清掃作業や仕上げ作業を安定した状態で効率良く行うことが可能になる。
【0042】
一方、本実施形態の清掃具10では、例えばタンク部13から液徐放機構16への液剤の供給を停止して、清掃作業を一旦終了した後に再び清掃作業を行う場合や、清掃作業を長時間行った場合等に、液剤の乾燥や埃の付着等の何等かの要因によって、例えば多孔質素材からなる液徐放部15の一部又は全体に目詰りが生じ、あるいは液溜り部14に大気の滞留が生じて、液剤を略均等に塗布させることが困難になるおそれがある。また、清掃作業によっては、液徐放機構16から一時的により多くの液剤を放出させたい場合もある。これに対して、本実施形態の清掃具10では、タンク部13に収容された液剤の静水面に圧力を負荷する加圧手段として、中空弾性体22が設けられているので、液徐放部15に目詰りが生じ、あるいは液溜り部14に大気の滞留が生じても、液徐放機構16の全体で略均等に液剤を徐放させる状態に容易に復元させることが可能になる。また必要に応じて液徐放部から一時的に多くの液剤を放出させることも可能になる。
【0043】
すなわち、本実施形態によれば、例えば多孔質素材からなる液徐放部15に目詰りが生じ、あるいは液溜り部14に大気の滞留が生じて、液剤を略均等に塗布することができなくなったら、中空弾性体22の球体部36を押圧して圧縮変形させれば、タンク部13に収容された液剤の静水面には相当の圧力が負荷されるので、この静水面に負荷された圧力が液溜まり部14へ伝達されて、多孔質素材からなる液徐放部15を通過する液剤の液圧を増大することになる。この増大した液圧によって、液徐放部15の目詰りや液溜り部14での大気の滞留を容易に解消させることが可能になる。また、一時的に多くの液剤を放出させる際も、中空弾性体22の球体部36を押圧して圧縮変形させれば、多孔質素材からなる液徐放部15を通過する液剤の液圧が増大するので、この増大した液圧によって、より多くの液剤を液徐放部15から吐出させることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態の清掃具10によれば、液徐放部15は、清掃ヘッド11の清掃面となる底面17aに臨むようにして、略矩形平面形状を備える清掃ヘッド11の短辺(短手)方向X(図3参照)から、即ち図の矢印X’方向から見た清掃ヘッド11の幅の略全幅に亘って連続して設けられている。したがって、清掃作業を行う際に清掃ヘッド11が動かされる主たる方向となる清掃ヘッド11の短手方向Xに清掃ヘッド11を動かせば、液溜まり部14を介して液徐放部15の天面部15aの全体に亘って上方から略均等な静水圧が負荷された状態で、液剤が、液徐放部15の下端面15cから清掃ヘッド11の長手方向Yの略全幅に亘って偏在することなく略均等に清掃シートに供給されることになり、これによって液剤を被清掃面へ略均等に塗布する操作を容易にして、清掃作業の効率の向上や清掃の仕上がりの向上に効果的に寄与することが可能になる。
液徐放部15を清掃ヘッド11から着脱可能としたことで、液徐放部15が汚れたときの交換あるいは洗浄を容易に行うことができ、液徐放部15を連続して設けたことでさらに容易に着脱することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、液溜まり部と液徐放部とからなる液徐放機構は、清掃ヘッドに着脱交換可能なカートリッジタイプの部材である必要は必ずしもなく、清掃ヘッドに一体として組み込まれているものであっても良い。液徐放部のみを着脱交換可能に構成しても良い。タンク部に収容された液剤の静水面に圧力を負荷する加圧手段は、圧縮変形可能な中空弾性体である必要は必ずしもなく、例えばタンク部の内周面に沿って摺動可能に設けられたピストン部材等であっても良い。さらに、タンク部は、柄の把持部の一部として取り付ける必要は必ずしもなく、例えば柄の側部に別部材として設けることもできる。
【0046】
また、液剤は、静水圧によって液徐放部に送られるものの他、ポンプなどの加圧手段により、液剤に直接間接に圧力が加えられるものであっても良い。清掃具は、清掃ヘッドに柄を連結することなく清掃ヘッドを直接把持して清掃作業を行うものであっても良い。清掃ヘッドの底面は、略矩形形状を備えている必要は必ずしも無く、例えば長円形状等、清掃作業に適したその他の種々の形状を備えていても良い。
【0047】
さらに、清掃ヘッドの底面に臨むようにして設けられる液徐放部を、少なくとも一方向から見た清掃ヘッドの幅の略全幅に亘って設ける形態としては、例えば図8(a)〜(f)に示すような種々のものを例示することができ、このうち、帯状に連続するものとして、(a)、(c)、(d)、(e)を挙げることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 清掃具
11 清掃ヘッド
12 柄
13 タンク部
14 液溜まり部
15 液徐放部
16 液徐放機構
17 清掃クッション
17a 清掃クッション部の底面(清掃ヘッドの底面、清掃面)
18 ユニバーサルジョイント
19 ヘッド本体
20 シート保持部
21 液供給パイプ
22 中空弾性体(加圧手段)
24 パイプ装着部
25 装着用凹嵌部
26 パイプ挿通スリーブ
28 スリット溝
29 蓋部材
30 蓋部材の固定スリーブ部
31 蓋部材の蓋本体部
32 ヒンジ部
35 基盤部
36 球体部
37 通気流路
39 導出穴
40 開閉レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃ヘッドに清掃シートを取着して用いる清掃具であって、
前記清掃ヘッドは、液溜まり部と、該液溜まり部に供給された液剤を圧力の作用によって多数の微細流路を通過させつつ前記清掃ヘッドの清掃面に徐々に放出させる液徐放部とからなる液徐放機構を備えており、
前記液徐放部は、前記清掃ヘッドの清掃面に臨むようにして、少なくとも一方向から見た前記清掃ヘッドの幅の略全幅に亘って設けられており、
前記液溜まり部は、ほぼ前記液徐放部に対応する長さと幅をもって、前記清掃ヘッドの幅全体に亘って連続して設けられている清掃具。
【請求項2】
前記液徐放部は、略T字形断面形状を有する請求項1記載の清掃具。
【請求項3】
前記ヘッド本体の内部には、下面側に向けて開口する装着用凹嵌部が設けられており、該装着用凹嵌部には、これの下方から、前記液溜まり部を上方に配置しつつ前記液徐放機構が挿入される請求項1又は2記載の清掃具。
【請求項4】
前記液徐放部は前記清掃ヘッドの清掃面に臨むようにして帯状に設けられている請求項1〜3のいずれか1項記載の清掃具。
【請求項5】
前記液徐放部は連続して設けられている請求項4記載の清掃具。
【請求項6】
前記清掃ヘッドの清掃面は略矩形形状を備えており、前記液徐放部は、前記清掃面の長辺に平行又は略平行に延設して設けられている請求項1〜5のいずれか1項記載の清掃具。
【請求項7】
前記清掃ヘッドに柄が連結されており、該柄は、液供給パイプを介して前記液溜まり部と連通するタンク部を備えており、該タンク部には、収容された前記液剤の静水面に圧力を負荷する加圧手段が設けられている請求項1〜6のいずれか1項記載の清掃具。
【請求項8】
前記加圧手段は、前記タンク部と連通する中空内部を備えると共に、外気からの空気の流入を許容し、外気への空気の流出を遮断する機能を有する逆止弁と中空弾性体からなり、該中空弾性体を圧縮変形させることにより、前記液剤の静水面に圧力を負荷する請求項7記載の清掃具。
【請求項9】
前記タンク部と前記液溜まり部とを連通する前記液供給パイプに、開閉バルブが取り付けられている請求項7又は8記載の清掃具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223588(P2012−223588A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150045(P2012−150045)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【分割の表示】特願2008−104470(P2008−104470)の分割
【原出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】