説明

清掃用シート及びその製造方法

【課題】熱融着性長繊維及び熱融着シートを接合する接合部によって熱融着性長繊維の自由度が制限されず、ゴミ捕集性に優れた清掃用シートを提供すること。
【解決手段】
本発明の清掃用シート1Aは、基材シート2の少なくとも一方の表面上に、実質的に一方向に配向する長繊維31が集合した長繊維束3を少なくとも1個備える清掃用シートである。この長繊維束3は、長繊維31の配向方向と交差する方向に、直線状に延びる繊維接合部32により、長繊維31同士が接合されて形成されている。清掃用シート1Aは、このように形成された長繊維束3を基材シート2にシート接合部21を介して接合することにより形成されている。清掃用シート1Aは、繊維接合部32の全て又は繊維接合部32の少なくとも一部が基材シート2と接合されていないものである

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に一方向に配向する長繊維が集合した長繊維束を少なくとも1個備える清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッド部及びヘッド部に連結された柄を有する清掃具におけるヘッド部に装着されて使用される清掃用シートとして、無数本の長繊維を備えた清掃用シートが知られている。
例えば、引用文献1には、一方向に延びる無数の熱融着性長繊維が、これと交差する方向に連続的に伸び、且つ熱融着性長繊維の延びる方向に間欠的に複数配設された溶着部によって、熱融着シートに接合されて形成された清掃用シートが開示されている。
【0003】
しかしながら、引用文献1に記載の清掃用シートは、連続的に伸びる溶着部によって熱融着性長繊維及び熱融着シートが接合されているため、隣り合う溶着部同士の間では、熱融着性長繊維の自由度が制限されてしまい、ゴミ捕集性を向上させることが難しい。
【0004】
引用文献2には、熱融着性長繊維の自由度を向上させるために、隣り合う溶着部同士の間で無数の熱融着性長繊維を切断し、熱融着性長繊維の長さを二分する工程を含む清掃用シートの製造方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、引用文献2に記載の製造方法で製造された清掃用シートは、熱融着性長繊維及び熱融着シートが連続的に伸びる溶着部によってのみ接合され、一体化されているため、熱融着性長繊維からなる長繊維束の状態では、自由に動くことができず、ゴミ捕集性を向上させることが難しい。
【0006】
【特許文献1】特開平9−135798号公報
【特許文献2】特開平9−149873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、熱融着性長繊維及び熱融着シートを接合する接合部によって長繊維束の自由度が制限されず、熱融着性長繊維の自由度が向上し、ゴミ捕集性に優れた清掃用シートを提供すること及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材シートの少なくとも一方の表面上に、実質的に一方向に配向する長繊維が集合した長繊維束を少なくとも1個備える清掃用シートであって、前記長繊維束は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に、直線状に延びる繊維接合部により、前記長繊維同士が接合されて形成されており、該長繊維束を前記基材シートにシート接合部を介して接合し、前記繊維接合部の全て又は前記繊維接合部の少なくとも一部は基材シートと接合されていない清掃用シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、一方向に配向する前記長繊維の集合体を巻き出し、所定幅に拡幅し、前記長繊維の配向方向と交差する方向に延びる前記繊維接合部により、前記長繊維同士を接合し、一体化した長繊維束を形成する長繊維束形成工程と、前記長繊維の配向方向と同方向に連続した帯状の前記基材シートの少なくとも一方の表面上に供給する長繊維束供給工程と、前記長繊維束と帯状の前記基材シートとを前記シート接合部を介して接合することにより積層体を形成する積層体形成工程と、前記積層体を所要の長さに切断して個々の清掃用シートを得る清掃用シート形成工程とを少なくとも有する清掃用シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の清掃用シートによれば、熱融着性長繊維及び熱融着シートを接合する接合部によって長繊維束の自由度が制限されず、熱融着性長繊維の自由度が向上し、ゴミ捕集性を高めることができる。また、本発明の製造方法によれば、該清掃用シートを容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の清掃用シートの好ましい一実施形態について、図1〜図5に基づいて説明する。
【0012】
第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1〜図5に示すように、基材シート2の少なくとも一方の表面上に、実質的に一方向に配向する長繊維31が集合した長繊維束3を少なくとも1個備える清掃用シートである。この長繊維束3は、長繊維31の配向方向と交差する方向に、直線状に延びる繊維接合部32により、長繊維31同士が接合されて形成されている。清掃用シート1Aは、このように形成された長繊維束3を基材シート2にシート接合部21を介して接合し、繊維接合部32の少なくとも一部は基材シート2と接合されていない清掃用シートである。
また、清掃用シート1Aの複数個のシート接合部21は、長繊維31の配向方向と交差する方向に間欠的に配置されている。
【0013】
第1実施形態の清掃用シート1Aについて、詳述する。
清掃用シート1Aは、基材シート2の両面上又は片面上に、片面につき、長繊維束3を、好ましくは2個〜30個備えている。
以下、基材シート2の両面上に、片面につき、長繊維束3を2個備えている清掃用シート1Aについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
上記基材シート2は、図1,図2に示すように、長方形状であり、基材シート2の長さは、10cm〜60cmであり、基材シート2の幅は、5cm〜40cmである。清掃用シート1Aは、基材シート2の両面上に、長繊維束3がシート接合部21を介して配置されている。
【0015】
上記長繊維束3を構成する長繊維31は、通常、製造時におけるその素材の搬送方向に配向している。
ここで、「長繊維31が実質的に一方向に配向する」とは、製造上の誤差、長繊維31が捲縮加工されたこと等によって、一部の長繊維31の配向方向が、その他の大部分の長繊維31の配向方向からずれた場合を排除しない意味である。
【0016】
上記長繊維束3は、第1実施形態の清掃用シート1Aにおいては、図3に示すように、無数本の長繊維31を、長繊維31の配向方向と直交する方向に連続的に延びる1本の繊維接合部32により接合して形成されている。長繊維束3は、図3に示すように、巨視的に見て長方形状である。
【0017】
上記長繊維束3は、第1実施形態の清掃用シート1Aにおいては、図1,図2に示すように、基材シート2の両面上それぞれに、長繊維束3の長手方向と基材シート2の長手方向とが一致するように、配置されている。また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1,図2に示すように、2つの長繊維束3を、基材シート2の幅方向に、実質的に間隔を開けることなく並列して配置している。長繊維束3の長さは、基材シート2の長さと同じであり、長繊維束3の幅は、2cm〜30cmである。本実施形態においては、2つの長繊維束3の幅の合計幅より、基材シート2の幅の方が広く、基材シート2における長繊維束3よりも幅方向外方の領域(以下「フラップ22」という)は、清掃具のヘッド部に装着される際に用いられる部分となる(詳細は後述)。
【0018】
上記長繊維31は、長繊維束3において、埃の絡み取り性の観点から、繊維接合部32の1cmあたり、片側に1000本〜50000本設けられていることが好ましく、5000本〜40000本設けられていることが更に好ましい。
【0019】
上記長繊維31の繊維長は、埃の絡み取り性の観点から、好ましくは5〜150mm、更に好ましくは10〜120mmである。長繊維31の繊維長とは、繊維接合部32から長繊維31の先端までの長さである。本実施形態においては、このような繊維長を有する長繊維31を繊維集合体(トウ)の状態で用いる。繊維集合体(トウ)は、公知の開繊装置を用いて十分に開繊しておくことが好ましい。また、長繊維31の太さは、特に臨界的ではないが、埃の絡み取り性や清掃対象面への傷付き防止性の観点から、0.1〜200dtex、特に2〜30dtexであることが好ましい。
また、長繊維31としては、捲縮性繊維を用いると、埃の絡み取り性が一層向上するので好ましい。
また、長繊維31としては、製品としての外観の向上、付着汚れの見え易さの向上等のため、白色以外の色(例えば、オレンジ色、水色)のものを用いることもできる。
【0020】
上記繊維接合部32は、長繊維束3を形成するためのものであり、本実施形態においては、繊維接合部32の少なくとも一部が、基材シート2とは接合されていない。繊維接合部32は、熱融着又はホットメルト接着剤により形成されており、本実施形態においては、長繊維31を熱融着することにより形成されている。繊維接合部32は、図1〜図3に示すように、長繊維31の配向方向と直交する方向に、即ち、基材シート2の長手方向に、1本の連続した直線状に形成されている。繊維接合部32の長さは、図1〜図3に示すように、基材シート2の長さと同じであり、繊維接合部32の幅は、図1〜図3に示すように、0.5mm〜10mmである。
【0021】
上記シート接合部21は、長繊維束3を基材シート2に接合するためのものであり、熱融着又はホットメルト接着剤により形成されており、本実施形態においては、長繊維31を基材シート2に熱融着することにより形成されている。本実施形態においては、複数個のシート接合部21は、図1,図2に示すように、長繊維31の配向方向と直交する方向に、即ち、基材シート2の長手方向に、一直線上に、隣り合うシート接合部21と間欠的に配置されており、全体としてシート接合部群23を形成している。隣り合うシート接合部21との間隔は、略等間隔である。
【0022】
上記シート接合部21は、図1,図2に示すように、シート接合部21とそれに隣り合 うシート接合部21との間隔が、10mm〜45mmであることが好ましく、15mm 〜40mmであることが更に好ましい。隣り合うシート接合部21同士の間隔が、10 mm以下であると、長繊維束の自由度が低くなり、45mm以上であると、長繊維束の 自由度が高くなり過ぎるためである。
また、上記シート接合部21それぞれの大きさは、図1,図2に示すように、長繊維31の配向方向に長く形成されている。シート接合部21それぞれの長さは、図1,図2に示すように、2mm〜50mmであり、シート接合部21それぞれの幅は、図1,図2に示すように、0.5mm〜10mmである。
【0023】
本実施形態においては、繊維接合部32は、図4に示すように、シート接合部21と接合されており、図4,図5に示すように、繊維接合部32の少なくとも一部が、基材シート2とは接合されていない。シート接合部21それぞれは、図1,図2に示すように、繊維接合部32上に配されており、シート接合部21と繊維接合部32とが接するように設けられている。具体的には、シート接合部21それぞれは、図1,図2に示すように、繊維接合部32と直角に接しており、図4に示すように、長繊維束3を基材シート2に接合させている。また、隣り合うシート接合部21,21同士の間は、図5に示すように、長繊維束3と基材シート2とが接合させておらず、基材シート2から長繊維束3が離れている。即ち、繊維接合部32の中で、シート接合部21と接する部分のみが、基材シート2と接合されており、その他の部分(繊維接合部32の中のシート接合部21と接しない部分)では、基材シート2と接合されておらず、基材シート2から長繊維束3が離れている。
【0024】
第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1,図2に示すように、2本のシート接合部群23,23を有しており、シート接合部群23,23同士の間において、基材シート2を複数個の線状カット部24でカットして形成されている。線状カット部24は、図1,図2に示すように、基材シート2の長手方向に、不連続部が交互に配された並行する2本の不連続線状、いわゆる千鳥形状に配されている。
【0025】
第1実施形態の清掃用シート1Aの形成材料について説明する。
上記基材シート2は、その長手方向に柔軟性を有しており、清掃対象面に沿って追随し易くなっている。そのため、基材シート2に接合されている長繊維束3も、清掃対象面に沿って追随し易くなるので、清掃用シート1Aによるゴミ、埃等の捕捉効果が高くなっている。
基材シート2としては、従来の清掃用シートに用いられている不織布等の繊維シートを用いることができる。特に、エアスルー不織布又はスパンボンド不織布が好ましい。また、基材シート2の形成材料は、不織布、ネット状シート、フィルム、合成紙又はそれらの複合材料でもよい。
【0026】
上記長繊維31としては、熱溶着性合成繊維、複合繊維、それらを熱処理して得られるような捲縮繊維を用いることができる。また、長繊維31には、必要に応じて油剤含浸処理や帯電防止処理、帯電処理、親水化処理等を施しても良い。
【0027】
上述した本発明の第1実施形態の清掃用シート1Aを使用した際の作用効果について説明する。
第1実施形態の清掃用シート1Aは、基材シート2を利用して、図6に示すように、ヘッド部41及びヘッド部41に連結された柄42を備えた清掃具4におけるヘッド部41に装着されて使用される。
図6に示す清掃具4は、本実施形態の清掃用シート1Aが装着可能なヘッド部41、及びヘッド部41に自在継手43を介して連結された棒状の柄42から構成されている。ヘッド部41の装着面(底面)は、平面視で長方形状であり、通常の使用態様においては、清掃具4は、ヘッド部41をその幅方向に移動(特に往復移動)させて清掃を行う。つまり、清掃具4の清掃方向は、ヘッド部41の幅方向である。
【0028】
第1実施形態の清掃用シート1Aは、基材シート2の長手方向と、清掃具4のヘッド部41の長手方向とを同方向に、基材シート2の中心点とヘッド部41の中心点とを一致させて、ヘッド部41の装着面(底面)に装着される。次に、基材シート2におけるフラップ22,22をヘッド部41の上面側に折り返す。更にフラップ22を、ヘッド部41における、放射状のスリットを有する可撓性の複数のシート保持部44内に押し込む。これによって清掃用シート1Aを清掃具4のヘッド部41に固定することができる。尚、基材シート2がネット状シートから形成されている場合には、基材シート2とシート保持部44との係合力が高い点で好ましい。本実施形態の清掃用シート1Aは、この状態で、例えば、フローリングの掃き清掃に用いることができる。従って、基材シート2の幅方向と一致する長繊維束3の長繊維31の配向方向は、実質的に、清掃具30の清掃方向に配向している。
【0029】
第1実施形態の清掃用シート1Aによれば、清掃具4のヘッド部41に装着した状態で、通常のモップ用の清掃具と同様に、フローリング部屋の掃き掃除(床掃除)等の清掃に供することができる。
第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1及び図2に示すように、長繊維束3を形成するための繊維接合部32と、長繊維束3を基材シート2に接合するためのシート接合部21とが別個に存在する。そして、清掃用シート1Aは、図5に示すように、隣り合うシート接合部21,21同士の間では、長繊維束3と基材シート2とが接合させておらず離れており、長繊維束3が、シート接合部21により拘束されることがない。即ち、隣り合うシート接合部21,21同士の間では、長繊維束3を構成する長繊維31の自由度が、シート接合部21によって制限されることがないため、清掃用シート1Aのゴミ捕集性が向上する。
【0030】
また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1,図2に示すように、シート接合部21それぞれの大きさが、長繊維31の配向方向に長く形成されている。そのため、長繊維31同士の絡みを防止でき、清掃用シート1Aのゴミ捕集性が向上する。また、シート接合部21それぞれの大きさが、清掃具30の清掃方向に配向しているため、シート接合部21が清掃対象物に引っ掛かることがなく、清掃用シート1Aの捲り上がりを防止することができる。
【0031】
また、第1実施形態の清掃用シート1Aは、図1,図2に示すように、その基材シート2の長手方向に千鳥形状に形成された複数個の線状カット部24を備えているため、基材シートの自由度が高くなり、繊維束3の自由度も高くなるため、清掃性能が向上する。
【0032】
本発明の第2実施形態の清掃用シートについて、図7に基づいて説明する。
第2実施形態の清掃用シート1Bについては、第1実施形態の清掃用シート1Aと異なる点について説明する。特に説明しない点は、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様であり、第1実施形態の清掃用シート1Aの説明が適宜適用される。
【0033】
第2実施形態の清掃用シート1Bの複数個の繊維接合部32’は、図7に示すように、長繊維31の配向方向と直交する方向に、即ち、基材シート2の長手方向に、不連続部33が交互に配された並行する2本の不連続線状(いわゆる千鳥状)に形成されており、全体として繊維接合部群を形成している。第3実施形態においては、2本の繊維接合部群34a,34bを備えている。
【0034】
第2実施形態の清掃用シート1Bの複数個の繊維接合部32’は、図7に示すように、基材シート2の幅方向から見て、別の繊維接合部群34a,34bを形成する隣り合う繊維接合部32’,32’の末端同士が重なっている。図7に示すように、繊維接合部群34aを構成する繊維接合部32’の末端と、それに隣り合う別の繊維接合部群34bを構成する繊維接合部32’の末端とが重なっており、繊維の接合の観点から、間隔wは、0mm〜10mmであることが好ましく、0mm〜5mmであることが更に好ましい。繊維接合部群34aを構成する繊維接合部32’と、それに隣り合う別の繊維接合部群34bを構成する繊維接合部32’との距離dは、繊維束の自由度の観点から、1mm〜50mmであることが好ましく、10mm〜40mmであることが更に好ましい。また、繊維接合部32’それぞれの長さlは、図7に示すように、5mm〜100mmである。第2実施形態の清掃用シート1Bの長繊維束3は、このような繊維接合部32’により形成されている。
【0035】
第2実施形態の清掃用シート1Bのシート接合部21’それぞれは、本実施形態においては、図7に示すように、繊維接合部32’上に配されており、シート接合部21’と繊維接合部32’とが接している。具体的には、シート接合部21’それぞれは、図7に示すように、繊維接合部32’と直角に交差している。
【0036】
上述した本発明の第2実施形態の清掃用シート1Bを使用した際の作用効果について説明する
第2実施形態の清掃用シート1Bによれば、清掃具4のヘッド部41に装着した状態で、通常のモップ用の清掃具と同様に、フローリング部屋の掃き掃除(床掃除)等の清掃に供することができる。
第2実施形態の清掃用シート1Bは、第1実施形態の清掃用シート1Aと同様の効果が得られる。即ち、隣り合うシート接合部21’,21’同士の間では、長繊維束3を構成する長繊維31の自由度が、シート接合部21’によって制限されることがないため、清掃用シート1Bのゴミ捕集性が向上する。
【0037】
次に、本発明の清掃用シートの製造方法を、その好ましい一実施態様について、上述した図1〜図3に示す第1実施形態の清掃用シート1Aを製造する場合を例にして、図8を参照しながら説明する。
【0038】
第1実施態様の製造方法においては、下記(1)〜(6)の工程を経て、清掃用シート1Aを製造する。
(1)長繊維束形成工程
(2)長繊維束切断工程
(3)長繊維束供給工程
(4)積層体形成工程
(5)清掃用シート形成工程
(6)カット部形成工程
【0039】
(1)長繊維束形成工程
本工程は、図8に示すように、一方向に配向する長繊維31の集合体を巻き出し、拡幅ロール50により所定幅方向に拡幅し、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と交差する方向に延びる繊維接合部32により、長繊維31同士を接合し、一体化した長繊維束3を形成する工程である。
繊維接合部32は、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と直交する方向に、実質的に連続して延びる中央連続シール線132である。本工程においては、繊維接合部32となる中央連続シール線132は、第1加熱エンボス機51により押圧されて形成されており、巻き出した長繊維31の集合体の長繊維31の配向方向に、間欠的に形成されている。中央連続シール線132は、ヒートシール、超音波シール等の公知のシール手段により剥離不能に行う。
【0040】
(2)長繊維束切断工程
本工程は、図8,図3に示すように、一体化した長繊維束3を所要の長さに切断する工程である。本工程においては、隣り合う中央連続シール線132,132間を、長繊維31の配向方向(長繊維31の搬送方向)と直交する方向に、第1カッター61により押圧し、長繊維31を切断することにより、図3に示す長繊維束3が得られる。
【0041】
(3)長繊維束供給工程
本工程は、図8に示すように、所要の長さに切断した長繊維束3を、連続した帯状の不織布102の少なくとも一方の表面上に供給する工程である。図8,図1に示すように、連続した帯状の不織布102を巻き出し、帯状の不織布102の外面側上及び内面側上の両面に、長繊維束3を、長繊維31の配向方向と同方向に供給する。尚、不織布102は、基材シート2となる。
【0042】
(4)積層体形成工程
本工程は、図8に示すように、所要の長さに切断した長繊維束3と帯状の不織布102とをシート接合部21を介して接合することにより積層体5を形成する工程である。図8,図1に示すように、シート接合部21となるサイド非連続シール線121は、第2加熱エンボス機52により押圧されて形成されており、長繊維31の配向方向と直交する方向に、即ち、不織布102の搬送方向と直交する方向に、間欠的に形成されている。また、図8,図1に示すように、間欠的に形成されたサイド非連続シール線121それぞれの大きさは、長繊維31の配向方向に長く、サイド非連続シール線121は、中央連続シール線132と直角に接して形成されている。サイド非連続シール線121のシール手段は、中央連続シール線と同様である。
【0043】
(5)清掃用シート形成工程
本工程は、図8に示すように、積層体5を所要の長さに切断して個々の清掃用シート1Aを得る工程である。帯状の不織布102は、その幅に比べて、搬送方向に短くなるように、第2カッター62により押圧されて、切断される。積層体5は、長繊維束3が、帯状の基材シート2の両面上に、片面につき、2個〜30個配置されるように切断されることが好ましく、第1実施態様においては、長繊維束3が、片面につき2束配置された清掃用シート1Aを得ている。
【0044】
(6)カット部形成工程
本工程は、隣り合うサイド非連続シール線121,121の間を、長繊維31の配向方向と直交する方向(不織布102の搬送方向)に、千鳥状にスリットカットすることにより線状カット部24を形成する工程である。本工程は、(4)積層体形成工程と(5)清掃用シート形成工程との間で行われる工程である。
【0045】
第1実施態様の製造方法においては、下記工程(7)を更に有していることが好ましい。
(7)長繊維を3次元方向にランダムに起毛するように開繊する工程
本工程は、積層体形成工程の後に行われる。本工程は、積層体5の長繊維束3に対して、エアブローを行い、繊維層11を開繊させて起毛させる工程である。
【0046】
上述した図7に示す第2実施形態の清掃用シート1Bを製造する第2実施態様の製造方法について、その好ましい一実施態様を説明する。
第2実施態様の製造方法は、第1実施態様の製造方法の(1)長繊維束形成工程及び(4)積層体形成工程が異なる以外、第1実施態様の製造方法と同様であり、第1実施態様の製造方法の説明が適宜適用される。
【0047】
第2実施態様の製造方法は、(1)長繊維束形成工程において、繊維接合部32’が、長繊維31の配向方向と直交する方向(不カット部形成工程織布102の搬送方向)に、千鳥状に延びる中央非連続シール線132’として形成されている。
【0048】
また、第2実施態様の製造方法は、(4)積層体形成工程において、サイド非連続シール線121’は、中央非連続シール線132’と直角に交差して形成されている。
【0049】
本発明の清掃用シートは、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シートに何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。また、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シートにおける各構成要件は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、適宜組み合わせて実施できる。
【0050】
例えば、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シート1A,1Bにおいては、図1,図2,図7に示すように、複数個の繊維接合部32,32’は、長繊維31の配向方向と直交する方向にに延びているが、長繊維31の配向方向と交差していれば良い。
【0051】
また、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シート1A,1Bにおいては、図1,図2,図4,図5に示すように、繊維接合部32は、シート接合部21と接合されており、繊維接合部32の少なくとも一部が、基材シート2とは接合されていないが、繊維接合部32及びシート接合部21が全く別の位置に設けられ、繊維接合部32が、シート接合部21と接合されておらず、繊維接合部32の全てが、基材シート2と接合されていなくても良い。
【0052】
また、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シート1A,1Bにおいては、シート接合部21、21’それぞれの大きさが、異なるように設けられても良い。
【0053】
また、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シート1A,1Bにおいては、シート接合部21、21’は、繊維接合部32,32’上に配されているが、配されていなくても良い。、
【0054】
また、上述の第1又は第2実施形態の清掃用シート1A,1Bにおいては、シート接合部21、21’は、隣り合うシート接合部21,21’との間の距離が、略等間隔であったが、距離を変えても良い。例えば、清掃用シートの中央部に位置する隣り合うシート接合部21,21’との距離を、長手方向両端部に位置するものより広くしても良い。
【0055】
また、本発明の清掃用シートの製造方法は、前述した第1及び第2実施態様に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0056】
例えば、上述の第1又は第2実施態様の製造方法は、(1)長繊維束形成工程と(3)長繊維束供給工程との間に、(2)長繊維束切断工程を備えているが、切断せずに、長繊維束形成後、直接、長繊維束供給工程に供給しても良い。
また、(4)積層体形成工程と(5)清掃用シート形成工程との間に、(6)カット部形成工程を備えているが、備えてなくても良い。
また、(2)長繊維束切断工程において、長繊維束3が一対となる2本の中央連続シール線132,132を有するように、2本の中央連続シール線132,132毎に切断され、(6)カット部形成工程において、一対の中央連続シール線132,132の間をスリットカットすることにより線状カット部24を形成しても良い。
また、2)長繊維束切断工程において、長繊維束3を2本の中央連続シール線132,132を有するように切断し、2本の中央連続シール線132,132間の繊維は切断せずに、(6)カット部形成工程において、一対の中央連続シール線132,132の間をスリットカットすることにより線状カット部24を形成しても良い
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0058】
〔実施例1〕
図1又は図2に示す清掃用シートを製造した。長繊維束3を構成する長繊維31として、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンからなる太さ2.2dtexの芯鞘型熱融着性複合繊維を用いた。該複合繊維の繊維束(トウ):5g(約16万本)を開繊装置で開繊し、長さ280mm、幅80mmに広げる。長繊維31がバラバラにならないように、長繊維束3の幅方向中央部に、その長手方向(長繊維31の配向方向と直交する方向)の全長に亘って延びるように、1本の繊維接合部32を施し接合する。繊維接合部32の幅は、3mmである。繊維接合部32の接合法は、熱融着法である。尚、長繊維束3の幅方向は、長繊維31の配向方向と一致する。
長繊維束3の長手方向に延びる繊維接合部32によって、長繊維束3は、基材シート2に接合されていない状態において、長繊維31の集合状態が維持される。
【0059】
基材シート2として、坪量40g/m2のエアスルー不織布を用いた。構成繊維は、芯がポリエチレンテレフタレート、鞘がポリエチレンからなる芯鞘型熱融着性複合繊維(2.2dtex×51mm)であった。基材シート2の寸法は、長さ:285mm×幅:205mmであった。
【0060】
基材シート2の片面に2個の長繊維束3,3を、実質的に間隔を開けることなく並列させて、シート接合部21を施し接合させた。シート接合部21の接合法は、熱融着法である。シート接合部21の長さは、長繊維31の配向方向に長く、20mmであり、その幅は、3mmである。複数個のシート接合部21は、長繊維31の配向方向と直交する方向に、即ち、基材シート2の長手方向に、一直線状に、間欠して形成されており、具体的には、隣り合うシート接合部21同士の間隔が、30mmとなるように形成されている。また、シート接合部21それぞれは、繊維接合部32と直角に接して形成されている。
【0061】
〔実施例2〕
実施例2は、実施例1に比して、隣り合うシート接合部21同士の間隔を変更した以外は実施例1と同じである。実施例2の隣り合うシート接合部21同士の間隔は、40mmである。
〔実施例3〕
実施例3は、実施例2と同様に、隣り合うシート接合部21同士の間隔を変更した以外は実施例1と同じである。実施例3の隣り合うシート接合部21同士の間隔は、10mmである。
〔比較例1〕
比較例1は、実施例1に比して、シート接合部21が、長繊維31の配向方向と直交する方向に、間欠して形成されておらず、繊維接合部32上を、繊維接合部32と同方向に連続する一直線で形成されている。即ち、シート接合部21と繊維接合部32とは、同形・同大であり同じ位置に形成されている。それ以外は実施例1と同じである。
〔比較例2〕
比較例2は、実施例1に比して、隣り合うシート接合部21同士の間隔を変更した以外は実施例1と同じである。比較例2の隣り合うシート接合部21同士の間隔は、5mmである。
〔比較例3〕
比較例3は、実施例1に比して、隣り合うシート接合部21同士の間隔を変更した以外は実施例1と同じである。比較例3の隣り合うシート接合部21同士の間隔は、50mmである。
【0062】
〔髪の毛の捕集性〕
実施例及び比較例の清掃用シートを図6に示す清掃具4に装着して、髪の毛が散布された8畳のフローリング部屋について掃き掃除を行い、髪の毛の捕集性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:髪の毛を完全に捕集することができた。
○:髪の毛が若干残るが、髪の毛をほぼ捕集することができた。
△:一部の髪の毛が捕集できずに残ることがあった。
×:約半分程度の髪の毛が捕集できずに残った。
【0063】
〔パンくずの捕集性〕
実施例及び比較例の清掃用シートを図6に示す清掃具4に装着して、パンくずが散布された8畳のフローリング部屋について掃き掃除を行い、パンくずの捕集性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:パンくずを完全に捕集することができた。
○:パンくずが若干残るが、パンくずをほぼ捕集することができた。
△:一部のパンくずが捕集できずに残ることがあった。
×:約半分程度のパンくずが捕集できずに残った。
【0064】
各実施例及び比較例についての評価結果を下記〔表1〕に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
〔表1〕に示す評価結果から明らかなように、各実施例では、髪の毛のような細かいゴミのみならず、パンくずのような比較的大きなゴミまで捕集することができる。また、比較例1では、シート接合部21と繊維接合部32とが、実質的に同じ箇所に直線状に設けられており、長繊維束3が、シート接合部21により拘束されるため、パンくずの捕集性が低下する。また、比較例2では、隣り合うシート接合部21の間隔が狭いため、長繊維束3を構成する長繊維31の自由度が、シート接合部21によって制限される。そのため、パンくずの捕集性が低下する。また、比較例3では、隣り合うシート接合部21の間隔が広いため、繊維束の繊維自由度が高くなりすぎ繊維が凝集してしまう。そのため、パンくずの捕集性が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態である清掃用シートの斜視図である。
【図2】図1に示す清掃用シートの平面図である。
【図3】図1に示す清掃用シートにおける長繊維束の形態を示す平面図である。
【図4】図2に示す清掃用シートのX1−X1線の部分断面図である。
【図5】図2に示す清掃用シートのX2−X2線の部分断面図である。
【図6】図1に示す清掃用シートを清掃具に装着した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態である清掃用シートの斜視図である。
【図8】本発明の清掃用シートの製造方法を一実施態様の全容を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1A,1B 清掃用シート
2 基材シート
21,21’ シート接合部
22 フラップ
23 シート接合部群
24 線状カット部
3 長繊維束
31 長繊維
32,32’ 繊維接合部
33 不連続部
34a,34b 繊維接合部群
4 清掃具
41 ヘッド部
42 柄
43 自在継手
44 シート保持部
50 拡幅ロール
51 第1加熱エンボス機
52 第2加熱エンボス機
61 第1カッター
62 第2カッター
102 不織布
121,121’ サイド非連続シール線
132,132’ 中央連続シール線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの少なくとも一方の表面上に、実質的に一方向に配向する長繊維が集合した長繊維束を少なくとも1個備える清掃用シートであって、
前記長繊維束は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に、直線状に延びる繊維接合部により、前記長繊維同士が接合されて形成されており、該長繊維束を前記基材シートにシート接合部を介して接合し、前記繊維接合部の全て又は前記繊維接合部の少なくとも一部は基材シートと接合されていない清掃用シート。
【請求項2】
複数個の前記シート接合部は、前記長繊維の配向方向と交差する方向に間欠的に配置されている請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記シート接合部それぞれの大きさは、前記長繊維の配向方向に長い請求項1又は2に記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記シート接合部は、前記繊維接合部上に配されている請求項1〜3の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記繊維接合部は、1本の連続した直線状に、又は不連続部が交互に配された並行する2本の不連続線状に形成されている請求項1〜4の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記繊維接合部は、前記シート接合部と接合されており、該繊維接合部の少なくとも一部は前記基材シートと接合されていない請求項1〜5の何れかに記載の清掃用シート。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の清掃用シートの製造方法であって、
一方向に配向する前記長繊維の集合体を巻き出し、所定幅に拡幅し、前記長繊維の配向方向と交差する方向に延びる前記繊維接合部により、前記長繊維同士を接合し、一体化した長繊維束を形成する長繊維束形成工程と、
前記長繊維の配向方向と同方向に連続した帯状の前記基材シートの少なくとも一方の表面上に供給する長繊維束供給工程と、
前記長繊維束と帯状の前記基材シートとを前記シート接合部を介して接合することにより積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体を所要の長さに切断して個々の清掃用シートを得る清掃用シート形成工程と
を少なくとも有する清掃用シートの製造方法。
【請求項8】
一体化した前記長繊維束を所要の長さに切断する長繊維束切断工程と、
所要の長さに切断した前記長繊維束を、前記長繊維の配向方向と同方向に連続した帯状の前記基材シートの少なくとも一方の表面上に供給する長繊維束供給工程有する請求項7に記載の清掃用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−254536(P2009−254536A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106357(P2008−106357)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】