説明

清掃用シート

【課題】ゴミの拭き取り能力に優れると共に、一旦捕捉したゴミに対する保持能力にも優れ、清掃効率を向上できる清掃用シートを提供する。
【解決手段】多数の透孔5を有する可撓性シート2と、可撓性シート2の内面側に位置し、静電気によるゴミ吸着能力を有する帯電性シート3とからなり、可撓性シート2の一端部2a及び他端部2bを帯電性シート3に接合してそれぞれ第1接合部6、第2接合部7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除の用具として用いられる清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床、壁、窓枠や、室内に設置される机、照明器具、電化製品などに付着したゴミ、埃を拭い取る道具として、清掃機能のあるシートを柄の先に取り付けて清掃を行うようにした清掃具が知られている。このような清掃具に取り付けて用いられる清掃用シートとして、不織布シートに長繊維を、間欠的に配設された複数の溶着線によって接合してなる清掃用シートが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、繊維を必要な厚さに積層して相互に交絡させてなる不織布を材料として用いて形成した清掃用シートも知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−135798号公報
【特許文献2】特開平10−225408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者においては、繊維表面が清掃面として形成され、また後者においては、不織布表面が清掃面として形成されるが、いずれもゴミの拭き取り能力が小さく、清掃効率に劣るという欠点があった。即ち、繊維や不織布は、材質的に柔軟なものであるので、ゴミを捕捉する能力が十分でなく、被清掃面におけるゴミを完全には拭き取ることができないという問題点があった。
またこのような従来の清掃用シートにおいては、ゴミを保持する能力も小さく、一旦捕捉したゴミが途中で落下するという不具合があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、ゴミの拭き取り能力に優れると共に、一旦捕捉したゴミに対する保持能力にも優れ、清掃効率を向上できる清掃用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)多数の透孔を有する可撓性シートと、可撓性シートの内面側に位置し、静電気によるゴミ吸着能力を有する帯電性シートとからなり、可撓性シートの一端部及び他端部を帯電性シートに接合してそれぞれ第1接合部、第2接合部を形成してなることを特徴とする清掃用シート、
(2)可撓性シートを緩ませた状態で、可撓性シートの一端部及び他端部を帯電性シートに接合してなる前記(1)記載の清掃用シート、
(3)可撓性シートと帯電性シートの接合部である第1接合部と第2接合部の間において、可撓性シートと帯電性シートを接合する、少なくとも1つの接合線が形成されている前記(1)又は(2)記載の清掃用シート、
(4)可撓性シートと帯電性シートの第1接合部及び第2接合部のそれぞれに、清掃器具に取り付けるための取付片を接合してなる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の清掃用シート、
(5)接合線は、接着剤が施されたゴム線状体に沿って形成されている前記(3)又は(4)記載の清掃用シート、
(6)帯電性シートは、コロナ放電処理を施してなるものである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の清掃用シート、
(7)帯電性シートはプラスチックシートからなる前記(1)〜(6)のいずれかに記載の清掃用シート、
(8)可撓性シートは不織布シートからなる前記(1)〜(7)のいずれかに記載の清掃用シート、
(9)帯電性シートの表裏両面に可撓性シートをそれぞれ緩ませた状態で接合してなる前記(1)〜(8)のいずれかに記載の清掃用シート、
(10)帯電性シートと一方の可撓性シートとの間に取付片を接合してなる前記(1)〜(9)のいずれかに記載の清掃用シート
を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、多数の透孔を有する可撓性シートと、可撓性シートの内面側に位置し、静電気によるゴミ吸着能力を有する帯電性シートとからなり、可撓性シートを帯電性シートに接合して構成したものであるから、静電気による電気的吸引力を利用して被清掃面のゴミを吸着除去することができ、ゴミの拭き取り能力を顕著に向上できる。
本発明によれば、通常は捕捉しにくい比較的大きなゴミであっても、静電気による吸着作用により容易に捕捉できる効果がある。
また、一旦捕捉したゴミを、静電気の電気的吸引力により可撓性シート表面に保持することができる。或いは一旦捕捉したゴミを、透孔を通して可撓性シートと帯電性シートとの間に保持することができる。その結果、本発明によれば、一旦捕捉したゴミの脱落を防止でき、清掃効率を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】清掃用シートの平面図である。
【図2】図1のA−A線縦断面図である。
【図3】清掃用シートの製造方法を示す縦断面模式図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】ゴム線状体を用いた清掃用シートの一部切欠平面図である。
【図10】図9のB−B線縦断面図である。
【図11】ゴム線状体を用いた清掃用シートの分解縦断面図である。
【図12】ゴム線状体を用いた清掃用シートの製造方法を示す縦断面模式図である。
【図13】コロナ放電処理方法を示す説明図である。
【図14】可撓性シートを緩ませた状態で帯電性シートに接合することの意味を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明清掃用シートの実施形態を示す平面図、図2は、図1におけるA−A線縦断面図である。清掃用シート1は、可撓性シート2と帯電性シート3と取付片4とから構成され、全体として長方形状に形成されている。
可撓性シート2には、多数の透孔5が設けられており、また帯電性シート3は、可撓性シート2の内面側に位置して設けられている。ここにおいて、清掃時に可撓性シート2が被清掃面と接触する面を可撓性シート2の外面といい、この外面とは反対方向の内側に位置する面を可撓性シート2の内面という。
【0011】
清掃方向(図1、図2において、矢印C、D方向)における可撓性シート2の一端部2a及び他端部2bは、帯電性シート3に接合され、それぞれ第1接合部6、第2接合部7が形成される。
可撓性シート2を帯電性シート3に接合するに当って、図2に示すように、可撓性シート2を緩ませた状態で帯電性シート3に接合することが好ましい。ここで緩ませた状態とは、可撓性シート2と帯電性シート3が接合している状態において、その接合部から両シート2、3を剥がして分離し、それぞれを平らな状態に展開し、この展開体における可撓性シート2の一方の接合部(第1接合部6)から他方の接合部(第2接合部6)までの長さをLとし、帯電性シート3の一方の接合部(第1接合部6)から他方の接合部(第2接合部6)までの長さをLとしたとき、L>Lの関係を有することをいう。
【0012】
上記の点を図14に基づき別の角度から説明すると、可撓性シート2の長さをLとし、帯電性シート3の長さをLとしたとき、可撓性シート2の長さLの方が帯電性シート3の長さLよりも長い関係にある。帯電性シート3上に可撓性シート2を各端部相互が合致するように重ね合わせ、各端部相互を接合して第1接合部6、第2接合部7を形成すると、同図の矢印下方に示されているように、可撓性シート2は長さが長い分だけ緩んだ状態で接合される。そのため、可撓性シート2と帯電性シート3との間に空隙8が形成される。
【0013】
図2に示す可撓性シート2と帯電性シート3との接合関係は、上記した通り可撓性シート2が緩んだ状態で接合されており、可撓性シート2と帯電性シート3との間に空隙部8が形成されている。このような接合構造により、清掃用シートには可撓性シート2による膨出部23が形成される。尚、膨出部23は、図2に示すようなアーチ形に立ち上がった形態のものを必ずしも意味するものではなく、アーチ形に立ち上がらず不定形な形状を有するものも含む意味である。
【0014】
本実施形態においては、可撓性シート2は帯電性シート3を挟んで該帯電性シート3の表裏両面に接合されており、この場合、裏面側の可撓性シート2はその一端部2a及び他端部2bが、取付片4を介して帯電性シート3に接合されている。この裏面側の可撓性シート2も緩んだ状態で帯電性シート3に接合されており、同様に両シート間に空隙8が形成されている。このような構造により、清掃用シートには、その表裏両面に膨出部23が形成される。
清掃用シートの表裏両面に膨出部23を形成した場合には、清掃時に、一方の面がゴミ付着により汚れ、清掃能力が低下した時、これをひっくり返して他方の面を清掃面として用いることができて経済的である。
【0015】
可撓性シート2は外力で撓むことのできる柔軟性材料からなり、このような材料としては、不織布シート、プラスチックシートなどが用いられるが、不織布シートを用いることが好ましい。不織布シートの材質としては、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアースルー不織布、ポイントボンド不織布などを用いることができる。
【0016】
不織布の構成材料である繊維としては、レーヨン、綿或いはナイロンなどの親水性繊維や、ポリプロピレン、アクリル或いはポリエステルなどの親油性繊維が、単独で又はそれらを混合して用いられる。
一方、プラスチックシートを用いる場合、その材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等が挙げられる。
【0017】
可撓性シート2に設けられる透孔5の形状は、円形、楕円形、四角形、菱形等任意であり、また透孔5の大きさは、透孔5が例えば円形の場合、直径1mm〜5mmが好ましく、直径2mm〜4mmが更に好ましい。
【0018】
帯電性シート3は、静電気によるゴミ吸着能力を有するもので、この帯電性シート3としては、摩擦により静電気を発生する材料からなるシート、或いは静電気の帯電処理を施してなるシートが用いられる。摩擦により静電気を発生する材料からなるシートとして、プラスチックシートが好ましい。プラスチックシートの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0019】
一方、静電気の帯電処理を施してなるシートとしては、例えば、後述するコロナ放電処理を施してなるシートが用いられる。このような帯電処理に用いられるシートとしては、それ自身、摩擦により静電気を発生することができる材質のものであることが好ましい。
このように、摩擦により静電気を発生することができる材質からなるシートに帯電処理を施して、これを帯電性シート3として用いた場合は、仮に、帯電処理後、静電気が何らかの原因により放電して帯電電荷量が減少した場合でも、清掃時の可撓性シート2と帯電性シート3との摩擦により静電気が発生することにより、静電気によるゴミ吸着作用を有する清掃用シートとしての機能を維持することができる。
【0020】
摩擦により静電気を発生することができる材質からなるシートに帯電処理を施す場合、この帯電処理に用いられるシートとしては、プラスチックシートが好ましく、この場合、プラスチックシートの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0021】
帯電性シート3の厚みは任意であり、シートという概念に限定されるものではなく、フイルムという概念も含むものである。
【0022】
取付片4は、帯電性シート3と裏面側の可撓性シート2の一方の端部側及び他方の端部側のそれぞれの位置に、帯電性シート3と裏面側の可撓性シート2の間に一端が挟まれる形で接合されている。取付片4は、本発明清掃用シートを清掃器具の台板に取り付けて固定するためのシート片である。
【0023】
取付片4の材料としては、不織布シート、プラスチックシートなどが用いられるが、不織布シートを用いることが好ましい。不織布シートの材質としては、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等、可撓性シート2と同様の材質のものを用いることができる。
また、プラスチックシートの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、塩化ビニル等が挙げられる。
【0024】
可撓性シート2と帯電性シート3との第1接合部6及び第2接合部7が形成される部位には、表面側の可撓性シート2と帯電性シート3と取付片4と裏面側の可撓性シート2との相互重なり部が形成され、この相互重なり部は接合一体化されて積層シート接合部20、21を形成している。上記相互重なり部を接合する手段としては、後述するように熱融着、接着剤による接着、超音波シールによる接合でもよい。

【0025】
上記したように、帯電性シート3として、摩擦により静電気を発生する材料からなるシート或いは摩擦により静電気を発生する材料からなるシートに静電気の帯電処理を施してなるシートが用いられる。
【0026】
ここで、帯電性シート3が、摩擦により静電気を発生する材料からなるシートである場合の本発明実施形態について説明する。
本発明清掃用シートを清掃器具の台板下面に取り付けて固定し、この清掃器具を被清掃面に対して、図1における矢印C、D方向に動かして清掃を行う。
本発明清掃用シートは、図2に示すように、可撓性シート2を緩ませた状態で帯電性シート3に積層してあるので、矢印C、D方向に動かしたとき、可撓性シート2の緩みに起因して、清掃器具の動きに合わせて可撓性シート2が撓み、それにより可撓性シート2と帯電性シート3との間に摩擦が生じ、この両シートの摩擦によって帯電性シート3に静電気が発生する。
【0027】
帯電性シート3に静電気が発生することにより、被清掃面のゴミを電気的に吸引し、この吸引されたゴミは可撓性シート2の表面に付着し、捕捉される。
可撓性シート2には多数の透孔5が穿設されているので、帯電性シート3に発生した静電気は可撓性シート2によって遮蔽されることなくゴミを吸引できる。電気的に吸引されたゴミはその大部分が可撓性シート2の表面に付着するが、一部は透孔5を通って空隙8内に入り込む。
【0028】
本実施形態によれば、清掃時に可撓性シート2が被清掃面との摩擦によって変形して撓み、この可撓性シート2の動きによって可撓性シート2と帯電性シート3との間に摩擦が生じ、この両シートの摩擦によって帯電性シート3に静電気が発生するものであるから、静電気を確実に発生させることができる。
【0029】
上記構成と異なる構成として、可撓性シート2を設けずに、帯電性シート3が清掃面となるように構成した場合、帯電性シート3と被清掃面との接触圧が大きくなるよう清掃用シートを強く被清掃面に押し付けるようにしないと十分に静電気が発生しないという不具合があり、静電気の確実な発生という点では難点がある。また、被清掃面の材質によっては、帯電性シート3との間で摩擦を起こしても静電気が発生しないか、発生しても静電気量が少ないという問題点もある。
更に、静電気によるゴミの捕集が進んだ場合、帯電性シート3は付着したゴミで覆われ、それにより静電気吸引力が弱まってしまうという不具合もある。
【0030】
本発明は、被清掃面に接する側に可撓性シート2を設け、この可撓性シート2の内面側に帯電性シート3を設け、可撓性シート2の撓みによる可撓性シート2と帯電性シート3の摩擦を利用して静電気を発生するようにしたので、清掃用シートを必要以上に強く被清掃面に押し付けなくても確実に静電気を発生することができる。
また、帯電性シート3と被清掃面との摩擦による静電気を利用するものではないので、被清掃面の材質に関係なく静電気を発生することができる.即ち、摩擦は可撓性シート2と帯電性シート3の間で行なわれるため、被清掃面の材質がどのような材質であっても静電気の発生が可能であり、しかもゴミ吸着に必要な静電気量を常に発生することが可能である。
【0031】
更に、帯電性シート3の外面側には可撓性シート2が積層されているから、静電気によるゴミの捕集が進んだ場合でも、ゴミの大部分は可撓性シート2表面に付着するから、帯電性シート3が、捕集されたゴミで覆われ静電気吸引力が弱まるということがなく、ゴミ吸着に必要な静電気吸引力を保持できるという効果がある。
また、一旦捕捉したゴミを、静電気の電気的吸引力により可撓性シート2表面に保持することができる。或いは一旦捕捉したゴミを、透孔5を通して可撓性シート2と帯電性シート3との間に保持することができる。その結果、本発明によれば、一旦捕捉したゴミの脱落を防止でき、清掃効率を向上できる効果がある。
【0032】
本発明清掃用シートを清掃具に取り付けて被清掃面に対する清掃を行った場合、清掃用シートが被清掃面のゴミを物理的に捕捉するだけでなく、静電気の作用によってゴミを電気的に捕捉することができる。本発明清掃用シートによれば、物理的に捕捉し難いゴミであっても静電気の作用により容易に捕捉できるという利点がある。
ゴミが物理的に捕捉される場合、透孔5形成面がゴミ捕捉に有効に働く。即ち、可撓性シート2には、透孔5が多数形成されていることにより、一種の粗面状態となっており、そのためゴミが透孔5に引っ掛かりやすく、ゴミ捕捉機能を増大することができる。
【0033】
次に、帯電性シート3が、静電気の帯電処理を施してなるシートである場合の本発明実施形態について説明する。
帯電処理としては、コロナ放電処理を行なうことが好ましい。コロナ放電処理を行なうには図13に示すような公知のコロナ放電処理装置が用いられる。
この装置は、外周が絶縁体層9で覆われた絶縁ロール10と、この絶縁ロール10と対向して一定の間隔をあけて配置された放電電極11と、この放電電極11と電気的に接続された高圧トランス12と、発信機装置13と、絶縁ロール10の前後に配置されたニップロール14及びガイドロール15とから構成される。
【0034】
このコロナ放電処理装置は、高圧トランス12と発信機装置13とからなる高周波電源より、放電電極11と絶縁ロール10との間に高周波・高電圧出力を印加することにより、放電電極11と絶縁ロール10との間にコロナ放電を発生させるものである。
本発明の帯電性シート3(帯電処理シート)を製造するための原反シート16をニップロール14及びガイドロール15とによって搬送し、放電電極11と絶縁ロール10との間に通して移動させる。放電電極11と絶縁ロール10との間にはコロナ放電が生じているので、原反シート16が放電電極11と絶縁ロール10との間を通過する際に該原反シート16にコロナ放電処理が施される。
このコロナ放電処理によって、原反シート16に静電気が帯電し、帯電処理シートとしての帯電性シート3が得られる。
【0035】
本発明の清掃用シートにおいて、帯電性シート3が帯電処理シートである場合、摩擦により静電気を発生させなくても、静電気による作用を発揮でき、しかも一定の静電気量を利用できるという効果がある。
上記のコロナ放電処理において、原反シート16として、摩擦により静電気を発生する材質のもの(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックシート)を用いた場合は、コロナ放電処理により帯電した静電気及び摩擦により発生する静電気を利用できる。
【0036】
即ち、コロナ放電処理によって静電気が帯電している帯電性シート3を用いて図2に示すごとき清掃用シートを製造し、この清掃用シートを用いて清掃を行なう場合、通常は帯電性シート3に帯電している静電気で十分ゴミを吸着除去できる。仮に静電気の放電が起こって帯電性シート3の帯電電荷量が減少した場合でも、清掃作業時の可撓性シート2と帯電性シート3との摩擦により静電気が発生するので、放電による帯電電荷量の減少を摩擦により発生する静電気で補うことができ、所定のゴミ吸着機能を維持できる。
【0037】
図2に示す清掃用シートの製造方法の一例を図3に基づき説明する。
上下に所定間隔を置いて配置された一対の原反ロールから、原反シートとしての可撓性シート2、2が、それぞれ上下に所定間隔を置いて並んだ状態で搬送工程に繰り出され、まず抜き穴工程においてそれぞれの可撓性シート2、2に多数の透孔5が穿設される。次いで、多数の透孔5が形成されたそれぞれの可撓性シート2、2は、上下に所定間隔を置いて配置された一対の型17、17にそれぞれ案内される。それぞれの型17、17は、円弧上の湾曲面18aを有し、この湾曲面18aの左右両下端部には平坦な側板部18bが設けられている。
それぞれの型17、17に案内された各可撓性シート2、2は、シート左右両側端部が押えロール24によって押えられ、これによりシート中心部分が型17、17の形状に沿って湾曲状に形成される。
【0038】
一方、上下の型17、17の間に、帯電性シート3及び取付片形成用シート19が案内供給される。尚、取付片形成用シート19とは、取付片4を形成するためのシートであり、後述する切断工程で所定寸法に裁断されたときに、取付片4を形成するものである。
このようにして、中心部分が湾曲状に形成された上下一対の可撓性シート2、2と、可撓性シート2、2の間に供給された帯電性シート3及び取付片形成用シート19が相互に積層され、この積層シートは次工程の熱融着工程に送られる。
【0039】
可撓性シート2と帯電性シート3との第1接合部6、第2接合部7が形成される部位には、上部の可撓性シート2、帯電性シート3、取付片形成用シート19及び下部の可撓性シート2の相互重なり部が形成される。この相互重なり部は、熱融着工程において加熱刃により熱融着されて接合一体化され、積層シート接合部20、21が形成される。
熱融着された積層シートは次いで、切断工程に送られ、所定の寸法に裁断され、かくして図2に示すごとき構造を有する清掃用シートが得られる。
このようにして得られた清掃用シートにおいて、上部の可撓性シート2は、上記表面側の可撓性シート2として構成され、下部の可撓性シート2は、上記裏面側の可撓性シート2として構成され、また取付片形成用シート19は、取付片4として構成される。
【0040】
上記実施形態において、積層シート接合部20、21を形成するための接合手段として熱融着を例にあげて説明したが、熱融着以外に例えば接着剤による接着、超音波シールによる接合等、公知の接合手段を採用することが可能である。
接着剤により接合を行なう場合、接着剤として公知の接着剤を用いることができ、例えば、ホットメルト型接着剤、二液硬化型接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤等を用いることができるが、ホットメルト型接着剤を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の別の実施形態として、図4に示すように、可撓性シート2と帯電性シート3の接合部である第1接合部6と第2接合部7の間において、可撓性シート2と帯電性シート3を接合する接合線22を形成することができる。
接合線22は、熱融着、接着剤による接着、超音波シールによる接合等の手段により形成できる。
図4は、接合線22が1つ設けられた実施形態を示しており、このように1つの接合線22を設けることにより、2つの膨出部23が形成される。接合線22の数は任意であり、1つまたは2以上の接合線22を設け、複数の膨出部23を形成することができる。
【0042】
複数の膨出部23を形成することにより、静電気によるゴミ吸着領域が複数に分割され、それにより特に摩擦により静電気を発生する場合にゴミ捕捉機能を向上できる。
即ち、個々の膨出部23が帯電性シート3との間で摩擦を起こすことにより、清掃用シート全体で均一な摩擦が行なわれ、その結果、ゴミ吸着力が清掃用シートの部位によって異なるということはなく、シート全面で均一なゴミ捕捉を行うことができる。
【0043】
本発明は、図5に示すように、帯電性シート3として幅寸法の大きなシートを用い、可撓性シート2との接合部である第1接合部6及び第2接合部7のそれぞれの外側に延長して外方に突出している部分を取付片4として構成することができる。
このように構成すれば、別体としての取付片を設ける必要がなく、部品点数を減らし、コスト低減を図れる利点がある。
【0044】
本発明は、帯電性シート3の表裏両面に可撓性シート2を接合する形態のものに限定されず、図6〜図8に示すように、帯電性シート3の表面側にのみ可撓性シート2を接合する形態のものでもよい。 このような形態においては、膨出部23は清掃用シートの一方の面にのみ形成されることになる。
図6は、膨出部23が1つである場合を、図7は、膨出部23が複数である場合を、図7は、帯電性シート3の外側延長部が取付片4として構成される場合を、それぞれ示している。
【0045】
図9は本発明の他の実施形態を示すもので、ゴム線状体を用いて細分化された膨出部を形成したものである。
図9、図10に示すように、清掃用シートには、接着剤を周面に施してなる複数のゴム線状体25に沿って形成された接合線22と、この接合線22に交叉する多数の線状凹部26とが形成されており、接合線22と線状凹部26とで囲まれる領域が膨出部23として構成されている。接合線22と線状凹部26とで囲まれる領域は多数形成されているので、この実施形態においては、清掃用シートに多数の細分化された膨出部23が形成される。
【0046】
ゴム線状体25とは、細い紐状のゴム弾性体をいい、このゴム線状体25の材質として、ポリウレタンゴム、スチレンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられるが、伸縮性、耐油性、耐候性の点で、ポリウレタンゴムを用いることが好ましい。
ゴム線状体25の太さとしては、300〜900デシテックスのものを用いることができ、550〜650デシテックスのものが好ましい。ポリウレタンゴムとして例えば、東レ・デュポン株式会社製のポリウレタンゴムを用いることができる。
また、ゴム線状体25の伸び倍率は、1.2倍〜4倍のものを用いることができ、2倍〜3倍のものが好ましい。ここで、ゴム線状体25の伸び倍率とは、ゴム線状体25を引っ張ったとき何倍の長さに伸びるかを表わすものであり、引っ張り力を加えない状態におけるゴム線状体25の長さをSとし、これを最大に引っ張ったときの最大伸長長さをTとしたとき、T/Sがゴム線状体25の伸び倍率となる。
ゴム線状体25は、断面形状が円形のものでも、四角形などの多角形状のものでもよい。
【0047】
ゴム線状体25の周面には接着剤が施される。接着剤としては、公知の接着剤を用いることができ、例えば、ホットメルト型接着剤、二液硬化型接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤などを用いることができるが、ホットメルト型接着剤を用いることが好ましい。ホットメルト型接着剤として例えば、国民淀粉化学(上海)有限公司製のホットメルト型接着剤(商品番号:5Q122E、DMC5266)を用いることができる。
【0048】
図11に示すように、可撓性シート2と帯電性シート3との間にゴム線状体25が介在され、ゴム線状体25の周面に付着されている接着剤によって、ゴム線状体25を介して可撓性シート2と帯電性シート3とが接合される。この接合に当って、可撓性シート2を緩ませた状態で帯電性シート3に接合する。
また、可撓性シート2の一端部及び他端部を熱融着、接着剤による接着等の接合手段により帯電性シート3に接合して、それぞれ第1接合部6、第2接合部7を形成する。
上記の如く、接着剤が施されたゴム線状体25が配置された部位に接合部が形成され、この接合部において接合線22が形成される。また、これにより複数の膨出部23が形成される。
【0049】
接着剤が施されたゴム線状体25により可撓性シート2と帯電性シート3を接合するに当り、ゴム線状体25を所定の引っ張り力で引き伸ばし、このようにゴム線状体25が引き伸ばされた状態でゴム線状体25を可撓性シート2と帯電性シート3の間に介在し、両シート2、3をゴム線状体25に施された接着剤により接合する。
このようにして、ゴム線状体25を介して接着剤により可撓性シート2と帯電性シート3を接合した後、ゴム線状体25に対する引っ張り力を解除し、ゴムの復元力により元の長さに収縮させる。
【0050】
ゴム線状体25の収縮により、可撓性シート2と帯電性シート3は収縮方向に引っ張られ、それに伴って可撓性シート2と帯電性シート3に多数のヒダ27ができる(図10)。線状凹部26は、これらヒダ27間にできた凹状の溝部である。
尚、図9には、線状凹部26が規則的に平行に配列されている態様が図示されているが、線状凹部26は、ゴムの復元力により、ゴム線状体25が収縮した際、ヒダ27が形成されることに伴って形成されるものであるので、必ずしもこのような規則的な配列状態になるとは限らず、不規則な配列状態となる場合も当然含まれる。
【0051】
図12には、本実施形態における清掃用シートを製造するための装置が示されている。この装置は、多数の湾曲成形面34aを備えた型28と、この型28の下方に配置されたロール29とからなり、可撓性シート2は型28の上面に導かれ、型面形状に沿った多数の湾曲面を有する形状に成形される。
型28の下面における、湾曲成形面34a相互間の基底部34bに、周面に接着剤を施した複数のゴム線状体25が所定の引っ張り力により引き伸ばされた状態で導かれ、更にこれらのゴム線状体25の下方に帯電性シート3が導かれる。
上方より押えロール30が降下し、この押えロール30は可撓性シート2を下方に押し付けて型28の開口部31を通り、押えロール30とロール29との間で可撓性シート2、ゴム線状体25、帯電性シート3を押圧し、ゴム線状体25に施した接着剤により、ゴム線状体25を介して可撓性シート2と帯電性シート3を接合する。
これにより図11に示すような、可撓性シート2と帯電性シート3との積層体である第1積層体32が得られる。
【0052】
図12に示す製造装置の下方に、同様な製造装置が上下対称の姿態で設置され、上記したと同様な方法で、ゴム線状体25を介在した可撓性シート2と帯電性シート3との積層体である第2積層体33が得られる(図11)。
ゴム線状体25に対する引っ張り力を解除してゴム線状体25を収縮させた後、取付片形成用シート19が、第1積層体32と第2積層体33の間に導かれ(図11)、各積層体32、33の側端部と取付片形成用シート19との相互重なり部を熱融着、接着剤による接着等の接合手段により接合一体化する。
【0053】
上記の如くして、清掃用シートには、ゴム線状体25に沿って接合線22が形成され、この接合線22に交叉するように線状凹部26が形成されており、接合線22と線状凹部26とで囲まれる領域が膨出部23として構成されている。
この実施形態によれば、清掃用シートに多数の細分化された膨出部23が形成されているので、静電気によるゴミ吸着領域が更に細かく区画形成され、シート全面で均一なゴミ捕捉を行う機能を一段と向上することができる。
また、膨出部23はその1つ1つが形態的に独立した突出状体として形成されるので、各膨出部23の周囲に溝部が形成される。捕捉されたゴミはこの溝部に集められるので、ゴミの捕集機能を高めると共に、捕捉したゴミの脱落を防止できる効果がある。
【0054】
上記の実施形態において、第2積層体33を設けず、第1積層体32のみを設け、この第1積層体32に取付片4を接合して、片面にのみ膨出部23が形成された清掃用シートとして構成することもできる。
【0055】
本発明は、可撓性シート2を緩ませた状態で帯電性シート3に接合する態様のものに限定されず、可撓性シート2を緩ませることなく帯電性シート3に重ね合わせ、その状態で可撓性シート2の一端部及び他端部を帯電性シート3に接合する態様のものであってもよい。
この実施形態によれば、可撓性シート2の緩みに起因した膨出部23は形成されず、従って、清掃時の可撓性シート2と帯電性シート3との摩擦力は、膨出部23を備えた形態のものに比べて小さいが、帯電性シート3が帯電処理を行った帯電処理シートである場合には、前記実施形態のものと同様、静電気によるゴミ吸着機能を十分に発揮できるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 清掃用シート
2 可撓性シート
2a 可撓性シートの一端部
2b 可撓性シートの他端部
3 帯電性シート
5 透孔
6 第1接合部
7 第2接合部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の透孔を有する可撓性シートと、可撓性シートの内面側に位置し、静電気によるゴミ吸着能力を有する帯電性シートとからなり、可撓性シートの一端部及び他端部を帯電性シートに接合してそれぞれ第1接合部、第2接合部を形成してなることを特徴とする清掃用シート。
【請求項2】
可撓性シートを緩ませた状態で、可撓性シートの一端部及び他端部を帯電性シートに接合してなる請求項1記載の清掃用シート。
【請求項3】
可撓性シートと帯電性シートの接合部である第1接合部と第2接合部の間において、可撓性シートと帯電性シートを接合する、少なくとも1つの接合線が形成されている請求項
1又は2記載の清掃用シート。
【請求項4】
可撓性シートと帯電性シートの第1接合部及び第2接合部のそれぞれに、清掃器具に取り付けるための取付片を接合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項5】
接合線は、接着剤が施されたゴム線状体に沿って形成されている請求項3又は4記載の清掃用シート。
【請求項6】
帯電性シートは、コロナ放電処理を施してなるものである請求項1〜5のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項7】
帯電性シートはプラスチックシートからなる請求項1〜6のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項8】
可撓性シートは不織布シートからなる請求項1〜7のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項9】
帯電性シートの表裏両面に可撓性シートをそれぞれ緩ませた状態で接合してなる請求項1〜8のいずれかに記載の清掃用シート。
【請求項10】
帯電性シートと一方の可撓性シートとの間に取付片を接合してなる請求項1〜9のいずれかに記載の清掃用シート。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−227176(P2010−227176A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75725(P2009−75725)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(595007552)
【Fターム(参考)】