説明

清掃用具

【課題】ナイロンの集塵性、耐久性に注目し繰り返し洗浄を繰り返した後でも風合い・集塵性が損なわれず且つ、耐久性に優れる清掃用具を提供する。
【解決手段】鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸を用いたパイルを備えた清掃用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドとポリエステルの芯鞘型複合短繊維を用いた紡績糸を用いてなる、集塵性に優れた耐摩耗性、風合い変化の少ない清掃用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モップなどの清掃用具としては、コットンやリネンなどの天然繊維が、その特有の風合いの点から用いられていた。
【0003】
しかしながら、これら天然繊維は、使用毎に繊維収縮に伴い風合いが硬化し、また、腐敗による繊維の脱落、異臭が発生し、さらに合成繊維に比べ耐久性が著しく悪いなどのデメリットを有していた。
【0004】
これらを背景に近年では、耐久性の優れる合成繊維を使用した清掃用具が見直され、特に、繰り返し使用でき、耐久性に優れるナイロンが見直されている。ナイロンは、静電気を帯びやすいという性質から、集塵性に優れ、清掃用具には非常に好適である。
【0005】
しかしながら、ナイロンは洗濯後の収縮が高く、収縮前後で風合いが硬化し、また使用をしているうちに、集塵性が低下し、さらにパイル部分にヘタリが生じるという問題があった。
【0006】
一方、収縮を抑えた繊維として、芯にポリエステルを、鞘側にナイロンを配した繊維が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−31926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決しようとするものであり、繰り返し洗浄を繰り返した後でも、風合い・集塵性が損なわれず、且つ、ヘタリが生じにくい清掃用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は次の構成を有する。
(1) 鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸を用いたパイルを備えた清掃用具。
(2) 該紡績糸の単繊度が、0.5デシテックス以上、7.0デシテックス以下である上記(1)に記載の清掃用具。
(3) 該芯成分/該鞘成分の重量%割合が10/90以上、80/20以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の清掃用具。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れた風合い、集塵性の耐久性に優れ、さらには、長期の使用後においても、パイル部分のヘタリを生じにくい清掃用具を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の清掃用具には、紡績糸が用いられる。本発明の清掃用具においては、繊維同士の摩擦による静電気が集塵性に大きく影響することから、フィラメントよりも繊維の動きの多い短繊維使いの紡績糸が用いられる。
【0011】
また、該芯鞘型複合繊維と他合繊、単繊維繊度、異形断面繊維等の違う繊維を混綿しても良い。
【0012】

本発明においては、鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸を用いる。
【0013】
鞘成分に使用するポリアミドとしては、ナイロン66、ナイロン6や、セバシン酸、イソフタル酸を酸成分として用いたものや、パラキシレンジアミドなどを用いたポリアミド、あるいはこれらを用いた共重合ポリアミド等が用いられる。中でも、コストの面からナイロン6が好ましく用いられる。
【0014】
バージンチップを使用したポリアミドでも良いが、再循環ポリアミドも経済的な点で好適に使用できる。ここでいう再循環ポリアミドとは工場で発生したナイロン6屑を回収し、解重合反応させ、ナイロン6のモノマーであるε-カプロラクタムに戻し再重合させたものであり、いわゆるケミカルリサイクルナイロン6のことを意味する。マテリアルリサイクル化されたポリアミドでも好適に使用できる。
【0015】
芯成分に使用するカチオン系ポリエステルとしては、例えばスルフォン化芳香族ジカルボン酸変性ポリエステルとし、スルフォン基を有する化合物がポリエステルの連鎖または末端の一部に含まれた変性ポリエステル等が用いられる。より具体的にはポリエチレンテレフタレートあるいはポリブチレンテレフタレート、あるいはこれらを主成分とする共重合ポリエステルなどにスルフォン化芳香族ジカルボン酸、あるいはその塩を共重合させてなる変性ポリエステルなどを用いることができる。スルフォン化芳香族ジカルボン酸の代表的なものとしては、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルが挙げられる。5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルは、ポリアミドとの親和性が悪いため、静電気が生じやすく、その結果集塵性効果が上がることから好ましく用いられる。
【0016】
5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルは、テレフタル酸とともに共重合成分として用いられるが、その割合は、テレフタル酸に対し2.0〜10.0mol重量%であることが好ましい。5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルを用いる割合が低いと、集塵性等の点で所望の効果が充分に得られない場合がある。逆に用いる割合が高すぎると、変性ポリエステルの結晶構造が乱れ機械的特性の低下を招く傾向がある。
【0017】
芯:鞘の複合比率(重量%)は、静電性、風合い、紡糸性・紡績性、工程通過性、染色性の観点から、芯:鞘=10:90〜80:20の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは芯:鞘=20:80〜50:50の範囲内である。
【0018】
芯比率が70%以上になることにより紡糸時に鞘割れが発生する場合がある。また逆に芯成分が15%を下回ると鞘成分であるポリアミド系ポリマーの影響が強くなり静電性が悪くなり、集塵効果が得られにくくなる傾向がある。
【0019】
本発明の紡績糸の単繊度は、0.5デシテックス以上、7.0デシテックス以下であることが好ましい。0.5デシテックスより細くなるとモップパイルにした際の風合いがソフトになり過ぎるため毛倒れが強くなり集塵性が低下する傾向がある。逆に繊度が7.0デシテックスを越えるとパイル自体が硬くなり、清掃時に細部にまでパイルが入りにくくなるため、集塵性に影響が出る場合がある。より好ましくは、0.8デシテックス以上、4.4デシテックスである。
【0020】

上記の本発明の鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸においては、他の繊維を混綿しても良く、例えば、異なる単繊維繊度を有する繊維や、異形断面繊維等が用いられる。
【0021】
本発明の紡績糸に用いる単繊維の形態としては、同心円上の丸形断面に限らず、星形、H型、三角断面などの多角形状や楕円形状であってもよい。また芯部が単一の芯でなく多芯状のものであっても良いが、芯成分が鞘成分に完全に包囲されていることは必要である。芯成分が外部に露出していると芯成分と鞘成分の分離や、剥離を生じさせるため好ましくない。
【0022】
上記の本発明の鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸においては、他の繊維を混綿しても良く、例えば、異なる単繊維繊度を有する繊維や、異形断面繊維等が用いられる。
【0023】
本発明においては、上記の鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸とともに、他の糸を合糸してパイルとして用いることも可能である。他の糸として、熱接着繊維が好ましく用いられ、熱融解により熱固定されて用いられる。熱固定することにより、パイルの撚り戻りや形態維持ができ、清掃用具として安定した集塵性、風合いを維持することができる。
【0024】
本発明に使用する熱接着繊維としては、ポリプロピレンや熱溶融ポリアミド、共重合ポリアミドなどが好適に用いられる。熱溶融ポリアミド、共重合ポリアミドとしては、融点又は軟化点が230℃以下であることが好ましい。230℃を超える融点、軟化点を有する重合体を使用すると、溶融特性の低下等が見られる場合がある。
【0025】
ポリアミドとしては、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロンエラストマー、メタキシレンジアミンとアジピン酸より形成されるポリアミド等が挙げられ、これらを用いて共重合されたポリアミドも好ましく用いられる。
【0026】
上記の本発明の鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸においては、他の繊維を混綿しても良く、例えば、異なる単繊維繊度を有する繊維や、異形断面繊維等が用いられる。
【0027】
紡績糸を用いてモップにした際の風合いは紡績糸に加える撚り数が大きく影響してくる。良好な風合い、集塵性、撚り戻りの少ないモップ用紡績糸を得るためには、紡績糸に加えられる下撚り数を80〜300T/Mとするのが好ましく、より好ましくは100〜200T/Mである。また、上撚り数は50〜150T/Mが好ましく、より好ましくは70〜100T/Mである。
【0028】
本発明においては、鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸をパイルとして用いるが、キャンパス地としては従来公知のものなど、特に限定されることなく用いられる。中でもパイルと同浴で染色できるポリアミド素材が、コスト面でも好適に使用される。キャンパス地の織組織についても特に限定されるものではなく、パイル糸条の太さに合わせた織物密度のものが好ましく用いられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。
【0030】
実施例での評価方法を下記に示す。
1.耐久性能
モップを用い10m2の床を10分/日清掃し、その都度、パイルが保持している粉塵を取り除いた。この残留した粉塵を除去しないと清掃回数を重ねる毎に集塵性能が劣化していくこととなる。
【0031】
パイル部の風合い変化、清掃に影響を及ぼす様なヘタリが発生するまでの日数を調査し、以下のとおり評価した。
◎ ・・・・・ 3ヶ月間連続使用でもヘタリおよび風合い硬化なし。
○ ・・・・・ 2ヶ月間連続使用でヘタリおよび風合い変化。
× ・・・・・ 1ヶ月間連続使用でヘタリおよび風合い変化。
2.熱水収縮率
総綛長100mの試料を採り、0.1g/1.1デシテックスの初加重を加え、綛の初期長さ(L1)を測定し、初加重を除いた後に100℃の熱水中に30分間浸漬し、吸水紙で綛の水分を除去させた後、自然乾燥させ水分が完全に乾燥したことを確認した後に、再び0.1g/1.1デシテックスの初加重を加え、綛長(L2)を再度測定する。熱水収縮率は下記の算出式により算出する。
【0032】
熱水収縮率(%) =[(L1−L2)/L1]×100
3.集塵性
モップを用いて床掃除を行い集塵性能に関しての官能評価を実施した。
◎・・・・・ 抜群の集塵性 (一掃後に粉塵の残留なし)
○・・・・・ 良好な集塵性 (一掃後に微量の粉塵の残留あり)
×・・・・・ 集塵性不良 (一掃後、大量の粉塵の残留あり)
4.風合い
モップを30回繰り返し家庭洗濯し初期風合いからの風合い変化に関する官能評価を実施した。
◎・・・・・ 初期風合いと変化なく良好な風合いである。
○・・・・・ 初期風合いから少し曲げ剛性が高くなり粗硬感が生じる。
×・・・・・ 初期風合いから著しく風合いが硬くなっている。
[実施例1]
芯成分に5−ナトリウムスルフォンイソフタル酸ジメチルを8.0mol%共重合したポリエステル、鞘成分にナイロン6を用い、芯鞘複合割合(重量%)を芯:鞘=3:7とし、紡糸速度1300m/分で紡糸した。その後、3.0倍に延伸し、捲縮した後に等長にカットし紡績性油剤を付与した、単繊維繊度1.3デシテックス、繊維長38mmの同心の芯鞘複合繊維からなる複合繊維原綿を得た。
【0033】
続いて、この複合繊維を100%用いて通常のリング紡績工程にて紡績し、精紡工程にて下撚り数をZ方向に450T/M施し、英式番手5s(1063デシテックス)の紡績糸を得た。
【0034】
次に上記紡績糸を5本と、95℃湿熱溶融ポリアミド共重合樹脂よりなる熱接着フィラメント繊維(110デシテックス/24f)2本とを、S方向に撚り合わせて合糸し、総繊度6000デシテックスのモップ用糸条を得た後、スチームセットを施し撚り戻りがないように加工を施した。
【0035】
このモップ用糸条を綛状にし、熱水中(熱水温度98℃)に5分間浸漬し、パイル糸条を接着せしめ、水分を脱水処理にて処理した後、乾燥(100℃×20分)し、パイル形状に加工した。その後、ナイロン6織物をキャンパス地とし、モップ用糸条をパイル長10cm、20本/cmとし、同じくナイロン6の縫い糸にて縫製結合させ、パイル糸条数約2300本のモップを得た。
【0036】
いずれの工程でもローラーへの巻き付き、糸切れも少なく工程通過性は問題なかった。
比較例1
2本の綿糸と共に溶融温度120℃の熱接着ポリエチレンフィラメント(220デシテックス/48f)を用い、S方向に300T/Mの撚りを加え合糸し、この合糸したモップ用糸条を綛状にし、スチームセッター(温度:130℃,圧力:3.5kg/m)にて5分間スチーム処理をした。得られた紡績糸を用いた他は、実施例1と同様にして、モップを得た。
比較例2
ナイロン6繊維を100%用いた他は実施例1と同一の条件・工程・処理を施し、同様の規格であるモップを得た。
【0037】
実施例、比較例で得られた各モップにてついての集塵性、寸法安定性、風合い、耐久性についての評価結果を下表に示す。
【0038】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘成分がポリアミド、芯成分がカチオン系ポリエステルからなる紡績糸を用いたパイルを備えた清掃用具。
【請求項2】
該紡績糸の単繊度が、0.5デシテックス以上、7.0デシテックス以下である請求項1記載の清掃用具。
【請求項3】
該芯成分/該鞘成分の重量%割合が10/90以上、80/20以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の清掃用具。

【公開番号】特開2008−295704(P2008−295704A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144606(P2007−144606)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】