説明

清水液防錆処理装置

【目的】 本発明は、主要な防錆樹脂タンクの取付、移動などが簡単にでき、その装置の稼働率を著しく向上させること。
【構成】 本体ケース1内に、塵などを取るフィルタ3と、陰イオン交換樹脂をタンク本体90内に充填して防錆処理する防錆樹脂タンク9とを備えていること。清水槽101からの清水液をフィルタ3と記防錆樹脂タンク9との順にポンプ2を介して管路に対して循環可能に構成されている。前記本体ケース1の左右側に設けられたタンク受皿上7,7に防錆樹脂タンク9,9が載置されていること。一方側の防錆樹脂タンク9のみが管路に接続されて機能し、他方側の防錆樹脂タンク9は予備設置されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要な防錆樹脂タンクの取付、移動などが簡単にでき、その装置の稼働率を著しく向上させることができる清水液防錆処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ワイヤー放電加工機において、清水液中における鉄等の腐食を防ぐことができる技術が開発されている。特に、特許文献1では、ワイヤー放電加工機の加工槽の源流にあたる清水槽(水槽)内における鉄の腐食を良好に防止することができるものである。この腐食イオン樹脂は、具体的には、放電加工水の水処理用イオン交換樹脂として、亜硝酸イオンとともに、炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび水酸化イオンのうちの1種以上を固定した陰イオン交換樹脂である。
【特許文献1】特開2002−301624
【0003】
そして、防食したい水(清水液又は加工液)を通すと、硫酸(水素)イオン及び塩化物イオンなどの腐食性イオンが除去され、代って亜硝酸イオンが溶離して、この溶離液中で金属(特に鉄)は有効に防食されるものである。その陰イオン交換樹脂は、防錆樹脂タンクのタンク本体内に充填されており、この防錆樹脂タンクのみの存在で、防食処理をしているため、該防錆樹脂タンクの存否によって、防食処理の稼働率に大きく影響してくる。さらに、その防錆樹脂タンクは、重さも重く(例えば、約20kg)、取扱いが面倒であったことも相乗的な不都合な点となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、防錆樹脂タンク自体の改善・改良は検討したが、その改良は困難性があった。このため、その防錆樹脂タンクの構造はついては、従来技術を認めつつ、稼動率向上と、取扱性の改善を図ることにある。このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、防食処理の稼働率に上げつつ、防錆樹脂タンクの取扱性の優れたものを提供することを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、本体ケース内に、塵などを取るフィルタと、陰イオン交換樹脂をタンク本体内に充填して防錆処理する防錆樹脂タンクとを備え、清水槽からの清水液を前記フィルタと前記防錆樹脂タンクとの順にポンプを介して管路に対して循環可能に構成され、前記本体ケースの左右側に設けられたタンク受皿上に前記防錆樹脂タンクが載置され、該一方側の防錆樹脂タンクのみが前記管路に接続されて機能し、他方側の防錆樹脂タンクは予備設置されてなることを特徴とする清水液防錆処理装置としたことにより、前記課題を解決した。
【0006】
請求項2の発明を、請求項1において、前記防錆樹脂タンクは筒状大型をなし、該防錆樹脂タンクの中間部が、保持バンドにて着脱自在に止められてなることを特徴とする清水液防錆処理装置としたことにより、前記課題を解決した。また、請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記タンク受皿は、底部と高さの低い立上り縁と取付片とからなり、該取付片が前記本体ケースの左右側の側壁面に固着されてなることを特徴とする清水液防錆処理装置としたことにより、前記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1,2又は3において、稼動状態の前記防錆樹脂タンクにのみ取付けられているタンク流入ホース及びタンク流出ホースは、予備の前記防錆樹脂タンクに取付可能としてなることを特徴とする清水液防錆処理装置としたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明においては、電源スイッチをオフとし、本発明の装置を停止状態としておき、ここで、予備の防錆樹脂タンクにつなぎ、前記電源スイッチをオンすることのみで、続けて防食処理作業ができ、ひいては防食処理作業の稼働率を上げつつ、防錆樹脂タンクの取扱性を優れたものにできる。特に、従来では、予備タンクとして設置していても、瞬時に交換することもできない状況であり、稼働率を著しく低下させていた原因を解消できた。さらに、請求項2及び3においては、請求項1と同様の効果を奏する。請求項4の発明では、交換がすぐにできる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明すると、図1乃至図2は清水液防錆処理装置であって、本体ケース1内には、未処理液を所定量保存しておくタンク2aを備えたポンプ2と、フィルタ3が、それぞれ入力ホース4a及び管体4bを介して連結されている。前記フィルタ3からは、連結ホース4cを介して前記本体ケース1の上面に設けた未処理の清水液がそこから流出する未処理液流入カプラ5aに連通している。また、該未処理液流入カプラ5aに併設して処理済の清水液がそこに流入する処理液流出カプラ5bも設けられている。さらに、前記本体ケース1の上面には、清水側から入力される原液入力カプラ6aが、また、該原液入力カプラ6aに併設して処理済の清水液を清水槽101側に送るための処理液出力カプラ6bが設けられている。該処理液出力カプラ6bと前記処理液流出カプラ5bは、短管4dを介して連通している。
【0009】
前記フィルタ3は、図4(A)に示すように、入口部31aと出口部31bを備えた本体部31の下方側に、筒状フィルタ32が設けられている。その外周に、透明状の外ケース33が取り付けられている。前記筒状フィルタ32はゴミ汚れなどを取るものであり、所用使用時間となると、前記前側小型扉13の透明窓13aから見て、汚れ状態を確認して、その前記筒状フィルタ32を適宜交換する。前記本体ケース1の左右側には、後述の防錆樹脂タンク9を載置するタンク受皿7,7が設けられている。該タンク受皿7は具体的には、平板状の底部7aの周囲に高さの低い立上り縁7bが形成され、該立上り縁7b及び前記底部7aに連続した垂直状の取付片7cが、前記本体ケース1の左右側の側壁面12にボルト,ビスなどの固着具7dにて固着されている。
【0010】
前記防錆樹脂タンク9は、図4(B)に示すように、陰イオン交換樹脂91が、上下が閉鎖して円筒状のタンク本体90内に充填されている構成である。該タンク本体90の上端には、入口部92aと出口部92bがそれぞれ独立して設けられている。前記入口部92aの直下にロート部93が設けられている。該ロート部93は、ラッパ状をなし、周囲に多数の細かい円弧状スリット94aが形成され、ゴミなどを除去できるようになっている。94は出力杆として構成されている。該出力杆94の下端は、前記陰イオン交換樹脂91が詰まった下端位置まで埋め込まれており、該下端には、円弧状スリット94aが多数形成され、この箇所から清水化した液が上昇してゆく。図4(C)に示すように、前記円弧状スリット94aの隙間は、前記陰イオン交換樹脂91はベレット状の小粒が飛び出さないように小さく形成されている。
【0011】
前記タンク本体90の下端には、載置状態が安定するように下面が円板状をなす筒状載置部95が設けられている。96aはタンク流入ホースであって、この一端は前記未処理液出力カプラ5aに接続され、他端は防錆樹脂タンク9の入口部92aに接続されている。また、タンク流出ホース96bの一端は前記防錆樹脂タンク9の出口部92bに接続され、他端は前記処理液出力カプラ6bに接続されている。
【0012】
図1において、本発明とワイヤーカット装置との関連図であり、101は清水槽、102はワイヤー放電加工用の加工槽、103は汚水槽であり、本発明の前記原液入力カプラ6aに前記清水槽101からの清水液が流入し、本発明の前記処理液出力カプラ6bから、前記清水槽101に処理済液としての清水液が流出する。この状態において常時稼動している。
【0013】
そこで、本発明の清水液防錆処理装置の作用状態について説明する。前記防錆樹脂タンク9の陰イオン交換樹脂91内に、腐食性イオン〔特に硫酸(水素)イオンおよび塩化物イオン〕を有した未処理清水を通すと、その腐食性イオンが除去され、代って亜硝酸イオンが溶離する。この溶離液中で金属(特に鉄)は有効に防食される。この陰イオン交換樹脂91は、通水の前後において、通水前の水中に存在していた陰イオンと亜硝酸イオンの当量モル伝導度の違いに起因する僅かな変化しか生じないので、伝導度が規制されるというワイヤーカット装置(ワイヤー放電加工機など)に適している。
【0014】
実際の使用について説明する。何らかの原因などで、前記透明窓13aを介して前記フィルタ3の色が変色した場合には、清水液そのものも、汚れた状態であるために、通常は、防錆樹脂タンク9にも、浄化能力の期限が来たものとして交換する。この場合、直ぐに、予備の防錆樹脂タンク9を使用する。具体的には、まず、電源スイッチをオフとし、今まで、使用していた防錆樹脂タンク9の入口部92a及び出口部92bに取り付けていた前記タンク流入ホース96a及びタンク流出ホース96bの一端を外す[図3(A)参照]。
【0015】
今度は、予備の防錆樹脂タンク9の入口部92a及び出口部92bに前記タンク流入ホース96a及びタンク流出ホース96bの一端を取り付ける。具体的には、図3(B)に示すように、前記タンク流入ホース96a及びタンク流出ホース96bの一端を、外して、今度は、交差するようにして、取り付けるのみであり、殆ど、瞬時にできる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、大量の清水液防錆処理にも利用可能性が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の概要を示す斜視図及び構成図である。
【図2】本発明の裏面側から見た本体ケース内の構成部材の斜視図である。
【図3】(A)はホースを外した本発明の要部を示す斜視図、(B)はホースを付け替えた本発明の要部を示す斜視図である。
【図4】(A)はフィルタの断面図、(B)は防錆樹脂タンクの断面図、(C)は防錆樹脂タンク内の出力杆の荷担した下端箇所の斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1…本体ケース、12…側壁面、2…ポンプ、3…フィルタ、7…タンク受皿、
7a…底部、7b…立上り縁、7c…取付片、8…保持バンド、
9…防錆樹脂タンク、90…タンク本体、91…陰イオン交換樹脂、
96a…タンク流入ホース、96b…タンク流出ホース、101…清水槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に、塵などを取るフィルタと、陰イオン交換樹脂をタンク本体内に充填して防錆処理する防錆樹脂タンクとを備え、清水槽からの清水液を前記フィルタと前記防錆樹脂タンクとの順にポンプを介して管路に対して循環可能に構成され、前記本体ケースの左右側に設けられたタンク受皿上に前記防錆樹脂タンクが載置され、該一方側の防錆樹脂タンクのみが前記管路に接続されて機能し、他方側の防錆樹脂タンクは予備設置されてなることを特徴とする清水液防錆処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記防錆樹脂タンクは筒状大型をなし、該防錆樹脂タンクの中間部が、保持バンドにて着脱自在に止められてなることを特徴とする清水液防錆処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記タンク受皿は、底部と高さの低い立上り縁と取付片とからなり、該取付片が前記本体ケースの左右側の側壁面に固着されてなることを特徴とする清水液防錆処理装置。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、稼動状態の前記防錆樹脂タンクにのみ取付けられているタンク流入ホース及びタンク流出ホースは、予備の前記防錆樹脂タンクに取付可能としてなることを特徴とする清水液防錆処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−5585(P2010−5585A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170651(P2008−170651)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000115935)イースタン技研株式会社 (4)
【Fターム(参考)】